(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】固体電池のための固体電解質材料、固体電解質、および固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20220506BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220506BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20220506BHJP
H01B 1/10 20060101ALI20220506BHJP
C01B 25/14 20060101ALI20220506BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20220506BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01B1/06 A
H01B1/10
C01B25/14
H01M10/0585
(21)【出願番号】P 2020551886
(86)(22)【出願日】2018-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2018057672
(87)【国際公開番号】W WO2019185115
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】509043571
【氏名又は名称】トヨタ・モーター・ヨーロッパ
【氏名又は名称原語表記】TOYOTA MOTOR EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】オーティエ,ジョフロア
(72)【発明者】
【氏名】ディ・ステファノ,ダビデ
(72)【発明者】
【氏名】フィリンチャク,ヤロスラブ
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/041374(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/041375(WO,A1)
【文献】特開2015-069855(JP,A)
【文献】特開2013-041749(JP,A)
【文献】特開2003-206110(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103401017(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0370398(US,A1)
【文献】特開2013-37896(JP,A)
【文献】STEFANO Di, et al.,Superionic diffusion through frustrated energy landscape,online,2017年08月08日,[令和3年11月10日検索], <URL: https://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/1708/1708.02997.pdf>
【文献】KIM Youngsik, et al.,Lithium Intercalation into ATi2(PS4)3 (A=Li,Na,Ag),ELECTROCHEMISTRY COMMUNICATIONS,2008年,Vol.10,pp.497-501
【文献】BUM Ryong Shin, et al.,All-Solid-State Rechargeable Lithium Batteries Using LiTi2(PS4)3 Cathode with Li2S-P2S5 Solid Electrolyte,JOURNAL OF THE ELECTROCHEMICAL SOCIETY,2014年,Vol.161 No.1,pp.154-159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01B 1/00-1/24
C01B 25/00-25/46
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電池(10)のための固体電解質材料であって、
化学式XM
2(PS
4)
3を有し、式中、Pはリンであり、Sは硫黄であり、Xはリチウム(Li)
であり、Mは
リチウムとアルミニウムとの混合物(
Li+Al)であり、
CuKα線を使用するX線回折測定において2θ=13.64゜(±1゜)、16.48゜(±1゜)、および22.18゜(±1゜)の位置にピークを呈し、
I
Aが13.64°(±1゜)におけるピークの任意単位での強度であり、かつI
Bが23.34°(±1゜)におけるピークの任意単位での強度である場合に、(I
A-I
B)/(I
A+I
B)>0である、固体電解質材料。
【請求項2】
CuKα線を使用するX線回折測定において2θ=13.64゜(±1゜)、13.76゜(±1゜)、14.72°(±1゜)、15.36゜(±1゜)、15.90゜(±1゜)、16.48゜(±1゜)、17.42゜(±1゜)、17.56゜(±1゜)、18.58゜(±1゜)、および22.18゜(±1゜)の位置にピークを呈する、請求項1に記載の固体電解質材料。
【請求項3】
-20℃における前記固体電解質中でのリチウムの拡散係数は、3.0
×10
-12m
2/s以上である、請求項
1または2に記載の固体電解質材料。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の固体電解質材料を含む固体電解質(16)。
【請求項5】
請求項
4に記載の固体電解質(16)を含む固体電池(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電池に関し、より具体的には、式XM2(PS4)3(式中、XはLi、Na、Ag、またはMg0.5であり、MはTi、Zr、Ge、Si、Sn、または(X+Al)である)を有する硫黄を含む固体電解質を含む固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
固体電池によれば、エネルギー密度の高い組電池を実現できる可能性がある。
【0003】
固体電池のための固体電解質に用いる目的で、異なる材料が研究されている。特に関心がもたれているのは、硫黄を含み、かつ、CuKα線を使用するX線回折測定において2θ=15.08゜(±0.50゜)、15.28゜(±0.50゜)、15.92゜(±0.50゜)、17.5゜(±0.50゜)、18.24゜(±0.50゜)、20.30゜(±0.50゜)、23.44゜(±0.50゜)、24.48゜(±0.50゜)、および26.66゜(±0.50゜)の位置にピークを呈する材料である。こうした材料は、一般的に、リチウムイオン伝導率が良好である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、固体電解質として適用するためには、こうした材料のリチウムイオン伝導率を増大させることが依然として求められる。実際、リチウムのイオン伝導率を増大させることによって、固体電解質の電子伝導率を増大させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
よって、本開示の実施形態によれば、固体電池のための固体電解質材料が提供される。この固体電解質材料は、化学式XM2(PS4)3を有し、式中、Pはリンであり、Sは硫黄であり、Xはリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、銀(Ag)、またはマグネシウム(Mg0.5)であり、Mはチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ゲルマニウム(Ge)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、またはXとアルミニウムとの混合物(X+Al)であり、CuKα線を使用するX線回折測定において2θ=13.64゜(±1゜)、16.48゜(±1゜)、および22.18゜(±1゜)の位置にピークを呈し、IAが13.64°(±1゜)におけるピークの任意単位での強度であり、かつIBが23.34°(±1゜)におけるピークの任意単位での強度である場合に、(IA-IB)/(IA+IB)>0である。
【0006】
上述される化学式を有し、かつCuKα線を使用するX線回折測定において上述される通りのピークを呈する固体電解質材料は、当該固体電解質材料のXのイオン伝導率を増大させることのできる結晶構造を有する。
【0007】
このようにX種のイオン伝導率が増大すると、特に低温において、たとえば0℃(セ氏)よりも低温において、電池の急速充電が可能となる。
【0008】
この固体電解質材料の結晶は、斜方晶系(空間群Fddd(70))である。この結晶構造は、PS4四面体とMS6八面体とからなる。PS4とMS6とが端を共用することによって三次元(3D)骨格構造が形成されており、X種は、この3D骨格構造の格子間部位に位置している。
【0009】
複数の実施形態において、固体電解質材料は、CuKα線を使用するX線回折測定において2θ=13.64゜(±1゜)、13.76゜(±1゜)、14.72°(±1゜)、15.36゜(±1゜)、15.90゜(±1゜)、16.48゜(±1゜)、17.42゜(±1゜)、17.56゜(±1゜)、18.58゜(±1゜)、および22.18゜(±1゜)の位置にピークを呈する。
【0010】
複数の実施形態において、Xはリチウムである。
複数の実施形態において、Mはチタンである。
【0011】
複数の実施形態において、Mは(X+Al)である。
MがXとアルミニウムとの混合物である場合、Xの含有量が増加し、アルミニウムがあるために固体電解質材料の電気化学的安定性が増大する。
【0012】
複数の実施形態において、Xはリチウムであり、Mはチタンである。
複数の実施形態において、Xはリチウムであり、Mはリチウムとアルミニウムとの混合物(Li+Al)である。
【0013】
複数の実施形態において、Xがリチウムである場合、-20℃における固体電解質材料中でのリチウムの拡散係数は3.0.10-12m2/s(1秒あたりの平方メートル)以上である。
【0014】
拡散係数は、Stejskal-Tannerの式:
I=I0exp(-γ2g2δ2(Δ-δ/3)D) (1)
によって得られ、式中、Iは勾配ありのシグナル強度、I0は拡散強調なしのシグナル強度、γはプロトン磁気回転比、gは勾配パルスの強度、δはパルスの持続時間、Δは2つの勾配パルスの立ち上がりの間の時間、Dは拡散係数である。
【0015】
固体電解質材料中でのリチウムの拡散係数は、7Liパルス磁場勾配(PFG)核磁気共鳴(NMR)によって測定される。測定は、155.6MHzにおいて、Diff60拡散プローブを備えたAvance III HD分光計(Bruker Biospin)を使用して行なわれる。拡散係数Dは、Δを6ms(ミリ秒)~500msで変動させ、温度範囲253.15K(ケルビン)(-20℃)~353.15K(80℃)において、勾配強度gを0~25Tm-1(1メートルあたりのテスラ)で変動させ、パルス磁場勾配gの持続時間δを1ms~2.5msで変動させることによって測定される。
【0016】
また、本開示は、このような固体電解質材料を含む固体電解質をも提供する。
また、本開示は、このような固体電解質を含む固体電池をも提供する。
【0017】
また、本開示は、固体電池のための固体電解質材料の製造方法であって、固体電解質材料は、化学式XM2(PS4)3を有し、式中、Pはリンであり、Sは硫黄であり、Xはリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、銀(Ag)、またはマグネシウム(Mg0.5)であり、Mはチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ゲルマニウム(Ge)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、またはXとアルミニウムとの混合物(X+Al)であり、当該方法は、
・粉末を混合して粉末混合物を得る工程と、
・粉末混合物を75時間以上500時間以下にわたり焼結プラトー温度において焼結させることによって、固体電解質材料を得る工程とを含み、
固体電解質材料は、CuKα線を使用するX線回折測定において2θ=13.64゜(±1゜)、16.48゜(±1゜)、および22.18゜(±1゜)の位置にピークを呈し、IAが13.64°(±1゜)におけるピークの任意単位での強度であり、かつIBが23.34°(±1゜)におけるピークの任意単位での強度である場合に、(IA-IB)/(IA+IB)>0である、方法をも提供する。
【0018】
複数の実施形態において、固体電解質材料は、CuKα線を使用するX線回折測定において2θ=13.64゜(±1゜)、13.76゜(±1゜)、14.72°(±1゜)、15.36゜(±1゜)、15.90゜(±1゜)、16.48゜(±1゜)、17.42゜(±1゜)、17.56゜(±1゜)、18.58゜(±1゜)、および22.18゜(±1゜)の位置にピークを呈する。
【0019】
複数の実施形態において、この成分が容器の中に入れられ、アルゴン下にて、100Pa以下、好ましくは50Pa以下の圧力において封止される。
【0020】
複数の実施形態において、当該方法は、粉末混合物をアモルファス化することによってアモルファス化粉末混合物を得る工程を含む。
【0021】
複数の実施形態において、焼結は、500℃以下、好ましくは400℃以下の焼結プラトー温度を含む。
【0022】
粉末混合物がアモルファス化されることによって、粉末混合物の反応性が高くなり、粉末混合物を500℃以下の温度において焼結させることができる。
【0023】
複数の実施形態において、焼結のプラトー時間は、100時間以上、好ましくは150時間以上であり、400時間以下、好ましくは300時間以下である。
【0024】
複数の実施形態において、粉末混合物は、25MPa以上、好ましくは50MPa以上、より好ましくは75MPa以上、かつ500MPa以下、好ましくは400MPa以下、より好ましくは300MPa以下の圧力において加圧されて、生成物が形成される。
【0025】
複数の実施形態において、Xはリチウムである。
複数の実施形態において、Mはチタンである。
【0026】
複数の実施形態において、Mは(X+Al)である。
MがXとアルミニウムとの混合物である場合、Xの含有量が増加し、アルミニウムがあるために固体電解質材料の電気化学的安定性が増大する。
【0027】
複数の実施形態において、Xはリチウムであり、Mはチタンである。
複数の実施形態において、Xはリチウムであり、Mはリチウムとアルミニウムとの混合物(Li+Al)である。
【0028】
複数の実施形態において、Xがリチウムである場合、-20℃における固体電解質材料中でのリチウムの拡散係数は3.0.10-12m2/s(1秒あたりの平方メートル)以上である。
【0029】
また、本開示は、固体電池のための固体電解質の製造方法であって、上記に定義されるとおりに固体電解質材料を製造する工程を含む、方法をも提供する。
【0030】
上述される要素および明細書中に記載される要素は相反する記載がない限り組み合わせてもよいことが意図される。
【0031】
上述される概要および以下の詳細な説明はいずれも具体例であって、説明のみを目的として記載されており、請求項に記載される本開示の範囲を限定するものではないことが理解される。
【0032】
本明細書に援用されかつ本明細書の一部を構成している添付の図面は、本開示の実施形態を例示するものであり、かつ、本明細書の記載とともに本明細書の基本的な思想を説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本開示の実施形態に係る固体電池の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る固体電解質材料のX線回折スペクトルである。
【
図4】本開示の実施形態に係る固体電解質材料の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
以下に、本開示の例示的な実施形態が詳細に参照され、これら実施形態の例が添付の図面中に示される。すべての図面を通して、同一または類似の部品や部分には可能な限り同一の参照番号が用いられている。
【0035】
図1は、本開示の実施形態に係る固体電池10の一例を示す概略断面図である。
図1中、固体電池10は、第1のセル20Aと、第1のセル20Aに隣接して第2のセル20Bとを含む。第1のセル20Aおよび第2のセル20Bは、セル積層体22を形成する。セル20Aおよびセル20Bはそれぞれ、正極12と負極14とを含む。セル10は、正極12と負極14との間に配置された固体電解質16をさらに含み、正極12、固体電解質16、および負極14は、2つの集電体18の間に配置されている。固体電解質16は、上記で定義される通りである。
【0036】
集電体18は、ステンレス鋼、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、または銅(Cu)、またはこれらの材料を含む合金で作られていてよい。この列記は限定的なものではない。2つの集電体18は同じ材料で作られていてもよい、または、2つの集電体は異なる材料で作られていてもよい。たとえば、正極側の集電体がAlで作られ、負極側の集電体がCuで作られていてもよい。
【0037】
固体電池10は、セル積層体22を封入する容器24を含む。
図1中、セル積層体22は第1のセル20Aと第2のセル20Bとを含み、隣り合う2つのセル10は集電体18を共用する。セル積層体22は、さらなるセル10を含んでもよい。固体電池10の要素のうち、本開示を理解するために必要とされないものは省略されており、本開示中には記載されていない。
【0038】
図1の固体電池10は概略である。固体電池10は隣接するセル20A、20Bを多数含んでもよいことが理解される。
【0039】
図2は、本開示の実施形態に係る固体電解質材料である試料1のX線回折スペクトルを示す。ピークの強度は任意単位で示されており、度で表される2θ値の関数として示されている。
【0040】
図2中に見られ得るように、試料1は、CuKα線を使用するX線回折測定において2θ=13.64゜(±1゜)、13.76゜(±1゜)、14.72°(±1゜)、15.36゜(±1゜)、15.90゜(±1゜)、16.48゜(±1゜)、17.42゜(±1゜)、17.56゜(±1゜)、18.58゜(±1゜)、および22.18゜(±1゜)の位置にピークを呈する。
【0041】
図3は、比較用の試料である試料2のX線回折スペクトルを示す。
試料1および試料2はいずれも、LiTi
2(PS
4)
3固体電解質材料である。
【0042】
I
Aは13.64°(±1゜)におけるピークの任意単位での強度であり(
図1を参照)、I
Bは23.34°(±1゜)におけるピークの任意単位での強度である(
図2を参照)。
【0043】
図2中に示されるように、試料1については、(I
A-I
B)/(I
A+I
B)=1である。
【0044】
図3中に示されるように、試料2については、(I
A-I
B)/(I
A+I
B)=-1である。
【0045】
試料1および試料2について、固体電解質材料中でのリチウムの拡散係数が、-20℃において測定された。
【0046】
拡散係数は、Stejskal-Tannerの式:
I=I0exp(-γ2g2δ2(Δ-δ/3)D) (1)
によって得られ、式中、Iは勾配ありのシグナル強度、I0は拡散強調なしのシグナル強度、γはプロトン磁気回転比、gは勾配パルスの強度、δはパルスの持続時間、Δは2つの勾配パルスの立ち上がりの間の時間、Dは拡散係数である。
【0047】
固体電解質材料中でのリチウムの拡散係数は、7Liパルス磁場勾配(PFG)核磁気共鳴(NMR)によって測定される。測定は、155.6MHzにおいて、Diff60拡散プローブを備えたAvance III HD分光計(Bruker Biospin)を使用して行なわれる。拡散係数Dは、Δを6ms(ミリ秒)~500msで変動させ、温度範囲253.15K(ケルビン)(-20℃)~353.15K(80℃)において、勾配強度gを0~25Tm-1(1メートルあたりのテスラ)で変動させ、パルス磁場勾配gの持続時間δを1ms~2.5msで変動させることによって測定される。
【0048】
固体電解質材料中でのリチウムの拡散係数Dは、試料1については3.2.10-12m2/sに等しく、試料2については2.8.10-12m2/sに等しい。
【0049】
以下に、本開示の実施形態に係る固体電解質材料および/または固体電解質16の製造方法100が、
図4を参照して、試料1を例にとって記載される。
【0050】
工程102において、0.0396g(グラム)のLi2Sと、0.5745gのP2S5と、0.3859gのTiS2とが混合されて、粉末混合物が得られる。Li2S(99%、硫化リチウム、Sigma-Aldrich(登録商標))、P2S5(98%、五硫化リン、Sigma-Aldrich(登録商標))、およびTiS2(99.9%、二硫化チタン、Sigma-Aldrich(登録商標))は、純度99質量%以上の粉末である。
【0051】
工程104は必須の工程ではないが、この工程において、粉末混合物がプラネタリミル機(Fritsch、P7)中でアモルファス化される。アルゴン下において、直径10mm(ミリメートル)のジルコニウム製ボール18個の入った容量45mL(ミリリットル)のジルコニウム製容器の中に、粉末混合物を入れた。粉末混合物を、40時間かけて、370rpm(毎分回転数)においてアモルファス化して、アモルファス化粉末混合物を得た。
【0052】
工程106は必須の工程ではないが、この工程において、アモルファス化粉末混合物が、25MPa以上、好ましくは50MPa以上、より好ましくは75MPa以上、かつ500MPa以下、好ましくは400MPa以下、より好ましくは300MPa以下の圧力において加圧される。
【0053】
たとえば、アモルファス化粉末混合物100mgが200MPaにおいて加圧されて、加圧されたアモルファス化粉末混合物が形成される。
【0054】
工程108において、加圧されたアモルファス化粉末混合物が、密閉したガラスチューブ中で焼結される。
【0055】
たとえば、加圧されたアモルファス化粉末混合物100mgがガラスチューブ中に入れられ、このガラスチューブが、アルゴン下、非常に低圧において、たとえば30Paにおいて封止される。これが、400℃(セ氏)の焼結プラトー温度において、焼結のプラトー時間である300時間にわたって焼結されて、試料1の固体電解質材料および/または固体電解質16が得られる。
【0056】
この方法は、粉末混合物を成形して所望の形状の固体電解質16とする工程をさらに含んでよい。たとえば、この成形工程は、工程106に含まれてよい。粉末を成形して固体電解質16などの成形物とすることは、周知されている。
【0057】
試料2の製造方法は、工程108において、加圧されたアモルファス化粉末混合物の焼結のプラトー時間が8時間であったことを除いて、試料1の製造方法と類似している。
【0058】
請求項を含む本記載全体にわたって、「含む」という用語は、特記しない限り、「少なくとも1つ含む」と同義であるとして理解される。また、本記載(請求項を含む)中に示される範囲はいずれも、特記しない限り、当該範囲の両端の値を含むものとして理解される。記載された要素についての特定の値は、当業者に公知である許容製造公差または工業界における許容公差の範囲内であるものとして理解され、また、「実質的に」および/または「ほぼ」および/または「一般的に」という用語が使用されている箇所では、これらの用語の意味が上記の許容公差の範囲内にあるものとして理解される。
【0059】
国内、または国際、またはそれら以外の標準化団体が定める標準が参照されている箇所では(たとえばISOなど)、本明細書の優先日の時点で当該国内または国際標準化団体により定義された標準が参照されることが意図される。優先日以降に当該標準に加えられた実質的な変更によって、本開示および/または請求項の範囲および/または定義が変更されるものではない。
【0060】
本明細書中の開示は特定の実施形態を参照して記載されたものであるが、これらの実施形態は本開示の思想および用途についての例示を示すのみであることが理解される。
【0061】
本明細書および実施例は具体例として提示されるのみであり、本開示の真の範囲は以下の請求項により示される。