(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】クロノグラフリセットシステム
(51)【国際特許分類】
G04F 7/08 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
G04F7/08 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021025037
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2021-02-19
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャンーフィリップ・ロシャ
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-118082(JP,A)
【文献】特開2009-150891(JP,A)
【文献】特開2008-46128(JP,A)
【文献】特開2007-263939(JP,A)
【文献】特開2007-24899(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1890205(EP,A1)
【文献】スイス国特許発明第704752(CH,B5)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04F 7/00 - 13/06
G04B 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロノグラフをリセットするためのシステム(1)であって、少なくとも、分ホイールセット(4)を有する分カウンタと、クロノグラフホイールセット(3)を備える秒カウンタとを備える、クロノグラフカウントギアトレイン(2)が設けられ、前記分ホイールセット(4)は、カム形状を構成し、前記分ホイールセットの中心軸(24)に取り付けられたハートピース(14)を含み、前記クロノグラフホイールセット(3)は、前記クロノグラフホイールセットの中心軸(23)に取り付けられたハートピース(13)を含み、前記システム(1)は、ブロック手段(11)によってブロックされた状態に保持されるハンマ(6)を備え、前記ハンマ(6)は、前記ホイールセット(3、4)の様々な前記ハートピースと接触する前記クロノグラフをリセットするために、前記ハンマ(6)が前記ブロック手段(11)によってブロックされる非アクティブ位置から、および、前記ハンマ(6)がブロック解除された場合、アクティブ位置から移動でき、
前記システム(1)は、リセット制御手段(12)と、前記クロノグラフをリセットするために使用される前記ハンマ(6)との間に接続された可撓性要素(10)を備え、前記可撓性要素は、前記制御手段(12)の変位中、前記ブロック手段(11)によって前記ハンマ(6)をブロック解除する前に、エネルギを蓄積し、前記ハンマ(6)がブロック解除された場合、前記クロノグラフをリセットするために、蓄積されたこのエネルギを復元し、前記ハンマ(6)を駆動するように構成され、
前記システムは、前記ハンマ(6)が、第1の長手方向開口部(7)および第2の長手方向開口部(8)と平行に取り付けられ
、前記ハンマ(6)の前記第1の長手方向開口部(7)における第1のねじ(17)、および前記ハンマ(6)の前記第2の長手方向開口部(8)における第2のねじ(18)である固定ロッドが配置され、前記ハンマは、前記非アクティブ位置から前記アクティブリセット位置へ直線的に移動し、2つの前記ねじ(17、18)は
、計時器のベースまたはフレームまたはプレートに設けられたねじ山にねじ込まれ
ている、システム(1)。
【請求項2】
前記可撓性要素(10)は、第1の端部(10a)によって、前記クロノグラフをリセットするために使用されるハンマ(6)に連結され、前記可撓性要素(10)の第2の端部(10b)は、計時器のベースまたはフレームまたはプレートに取り付けられた前記制御手段(12)に固定されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記可撓性要素(10)の前記第1の端部(10a)は、前記ハンマ(6)のフラットな端部に形成された細長開口部(9)に挿入されたロッドまたはピン(19)によって接続されることを特徴とする、請求項2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
前記可撓性要素は、その第1の端部(10a)とその第2の端部(10b)との間の形状が弧状であり、この弧状の形状は、前記制御手段(12)の外部活性化オルガン(B)の方向にあることを特徴とする、請求項2に記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記制御手段(12)は、制御レバー(12)であり、前記制御レバー(12)の中央開口部を通過する固定要素(22)によって回転可能に取り付けられ、前記計時器の前記ベースまたは前記フレームまたは前記プレートに固定されることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項6】
フラット形状の前記制御レバー(12)は、前記制御レバー(12)の前記中央開口部を通過する
前記固定要素(22)であるねじ(22)によって回転可能に取り付けられ、前記計時器の前記ベースまたは前記フレームまたは前記プレートの対応するねじ山に固定されることを特徴とする、請求項5に記載のシステム(1)。
【請求項7】
押しボタン(B)をさらに備え、
前記制御レバー(12)は、前記
ねじ(22)によって画定される軸(22)の第1の側に第1の部分を備え、その軸上に、前記可撓性要素(10)の前記第2の端部(10b)が、スタッドボルト(40)などの固定手段(40)によって固定され、前記制御レバー(12)は、前記第1の側と反対の軸の第2の側に第2の部分を備え、その一端で、
前記押しボタン(B)が作動可能に設けられることを特徴とする、請求項6に記載のシステム(1)。
【請求項8】
前記ブロック手段(11)は、前記ハンマ(6)に回転可能に取り付けられたフックオルガン(11)を備え、前記ハンマ(6)を案内するための前記第2のねじ(18)は、前記フックオルガン(11)の中央開口部を通過して、前記制御手段(12)の方向における前記ハンマ(6)の上部側にあり、前記フックオルガン(11)は、前記第2の長手方向開口部(8)の近くおよび2つの長手方向開口部(7、8)の間の前記ハンマ(6)に垂直に固定されたピン(26)に引っ掛けるためのフックを備える第1の端部(11a)を備え、前記フックオルガン(11)は、前記回転軸(18)に対して前記第1の端部と反対側に第2の端部(11b)を備え、ロッド(21)は、前記第2の端部(11b)を通して取り付けられ、リセット操作において前記制御手段(12)の一部によって押されるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項9】
前記制御手段(12)は、
前記制御手段(12)の前記中央開口部を通過するねじ(22)によって回転可能に取り付けられ、前記計時器の前記ベースまたは前記フレームまたは前記フレームにおける対応するねじに固定的にねじ込まれる制御レバー(12)であり、前記制御レバーは、前記可撓性要素(10)の前記第2の端部(10b)の前記固定軸(22)の第1の側にある第1の部分を備え、前記制御レバー(12)は、前記第1の側と反対の軸の第2の側に第2の部分を備え、その一端で押しボタン(B)を作動させることができ、前記制御レバー(12)の前記第2の部分の内側端部(12’)は、前記クロノグラフのリセット時に、前記ハンマ(6)を駆動させるために蓄積されたエネルギを復元するために、前記押しボタンが押された場合、前記フックオルガン(11)の前記第2の端部(11b)の前記ロッド(21)が、前記
制御レバー
(12)の前記第2の部分の内側端部(12’)によって押される前に、前記第1の端部(11a)の前記フックが、前記ハンマ(6)の前記ピン(26)へ引っ掛からなくなるまで、前記可撓性要素が、エネルギを蓄積できるように、前記フックオルガン(11)の前記第2の端部に面し、前記第2の端部から離れて配置されることを特徴とする、請求項8に記載のシステム(1)。
【請求項10】
前記クロノグラフはさらに、時ホイールセット(5)を備える時カウンタを備え、前記時ホイールセットのハートピースは、前記時ホイールセットの中心軸に取り付けられ、前記システムは、前記ブロック解除されたハンマ(6)が、前記可撓性要素(10)によって、その第1の端部(10a)から、前記ホイールセット(3、4、5)の様々な前記ハートピース(13、14、15)の方向に押され、前記ハンマ(6)が、3つの接触部分(16a、16b、16c)、すなわち、前記ハンマ(6)上に配置され、前記クロノグラフホイールセット(3)の前記ハートピース(13)と接触する第1の接触部分(16a)と、前記ハンマ(6)上に配置され、前記時ホイールセット(5)の前記ハートピース(15)と接触する第2の接触部分(16b)と、前記可撓性要素(10)の第1の端部(10a)の近くの前記ハンマ(6)上に配置され、前記分ホイールセット(4)の前記ハートピース(14)と接触する第3の接触部分(16c)とを備える、請求項9に記載のシステム(1)。
【請求項11】
前記第1の接触部分(16a)および前記第2の接触部分(16b)は、前記第1の長手方向開口部(17)の近くの前記ハンマ(6)上の軸(37)の周りに回転可能に取り付けられたアセンブリを形成し、前記第1の接触部分(16a)と前記第2の接触部分(16b)との間に、前記アセンブリの中央開口部を一定のクリアランスを伴って通過する角度止め(36)が配置されることを特徴とする、請求項10に記載のシステム(1)。
【請求項12】
前記第3の接触部分(16c)は、U字形の金属ストリップによって接続され、前記接触部分(16c)の反対側のその端部は、スタッドボルト(43)によって前記ハンマ(6)の上端に固定されることを特徴とする、請求項10に記載のシステム(1)。
【請求項13】
前記第3の接触部分(16c)の位置を調整するために、前記ハンマ(6)の前記上端に対応する穴に調整偏心器(44)が固定されることを特徴とする、請求項12に記載のシステム(1)。
【請求項14】
前記第3の接触部分(16c)は、いわゆる可撓性ペインであり、前記可撓性ペインは、前記ハートピース(14)と接触する力を調整するために使用される
複数の可撓性ブレード(46)を備えることを特徴とする、請求項10に記載のシステム(1)。
【請求項15】
これらの可撓性ブレード(46)はいわゆる前記可撓性ペインの中央部分のいずれかの側に配置され、互いに実質的に平行であり、いわゆる前記可撓性ペインは、固定前に位置を調整するために、長方形の開口部において、前記ハンマ(6)の一端に、ねじまたはスタッドボルト(43)によって固定されることを特徴とする、請求項14に記載のシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロノグラフリセットシステムに関する。このシステムは、少なくとも、分ホイールセットを有する分カウンタと、クロノグラフホイールセットを備える秒カウンタとを備える、クロノグラフカウントギアトレインが設けられる。このシステムは、ブロック手段によってブロックされた状態に保持されるハンマを備え、ハンマは、様々なホイールセットと接触するクロノグラフをリセットするために、ハンマがブロック手段によってブロックされる非アクティブ位置から、および、ハンマがブロック解除された場合、アクティブ位置から移動できる。
【背景技術】
【0002】
一般に、クロノグラフ機構は、クロノグラフホイールセットまたは秒カウンタによる秒から、分カウンタによる分まで、および任意選択で、時カウンタによる時まで、時間をカウントすることを可能にするクロノグラフカウントギアトレインを備える。各カウンタは、対応する目盛りにおいて変位するインジケータオルガンを備える。クロノグラフがリセットされると、インジケータオルガンは通常、各目盛りのゼロに対応する角度位置にインデクスを付される。この目的のために、各インジケータオルガンは、一般に、ギアトレインの対応する要素の軸によって動かされる。ギアトレイン要素とその軸との間の接続は摩擦によるものであり、これらの2つのオルガンが、特定のトルクを超えて、独立した角変位を可能にする。インジケータオルガンは、ハートピース機構と、対応するハンマとによってインデクスを付される。摩擦接続と、ハートピース機構およびハンマ機構の使用とは、様々なカウンタをリセットするときに供給されるトルクが大きくなる可能性があり、多くのエネルギが消費されることを意味する。
【0003】
ちなみに、従来のクロノグラフ計時器では、「バックリング」デバイスと呼ばれるデバイスがよく使われる。そのようなデバイスは、押しボタンを押すとハードポイントを作成し、ハードポイントを通過すると、慣性効果によってリセット機能が実行される。なお、押されてハードポイントを通過したばねは、リセット機能全体で負の摩擦効果があり、大量のエネルギが消費されることに留意されたい。
【0004】
これらの条件下では、様々なカウンタをリセットするためにのみ消費されるこのエネルギを補償できる手段を見つける必要がある。追加のバレルを使用して必要なエネルギを供給できるが、計時器の他の基本要素と比較して過密の問題が観察される。したがって、クロノグラフをリセットするために利用できる他の機構を有することが重要である。
【0005】
特許出願である欧州特許出願公開第2884350A2号明細書は、クロノグラフ腕時計をリセットするためのデバイスを説明している。このデバイスは、特にハンマおよびハンマブロック手段を備える。ばねは、制御手段と各ハンマとの間に配置される。リセットハンマは、互いに独立して回転し、対応するリセットカムと連携して、クロノグラフをリセットできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願公開第2884350A2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、クロノグラフリセットシステム、特に計時器を提供することにより、従来技術の欠点を克服することである。本発明の目的は、具体的には、クロノグラフをリセットするためにハンマがブロック解除されたとき、このエネルギを復元するために、ハンマに連結された、埋め込みばねなどの可撓性要素のエネルギの蓄積から利益を得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、独立請求項1に定義された特徴を備えるクロノグラフリセットシステムに関する。
【0009】
リセットシステムの特定の実施形態は、従属請求項2から15に定義される。
【0010】
本発明によるクロノグラフリセットシステムの利点は、第1の端部によって、ハンマの上端に固定され、第2の端部によって、計時器のベースまたはフレームまたはプレートに回転可能に取り付けられた制御レバーの第1の部分に固定された可撓性要素を備えるという事実にある。クロノグラフのリセット操作中に、制御レバーの第2の部分において、押しボタンなどの外部活性化オルガンが押されると、レバーがその回転軸の周りで回転し、したがって、埋め込みばねなど、可撓性要素の第2の端部を一定の力で駆動させ、これによって、この操作中にエネルギを蓄積できる。
【0011】
本発明によるクロノグラフリセットシステムの別の利点は、好ましくは、計時器のベースまたはフレームまたはプレートに回転可能に取り付けられたフックオルガンであるハンマをブロックし、第1の端部においてフックが固定ピンに引っ掛かるときに、ハンマに取り付けられた固定ピンによってハンマをブロックするための手段を、クロノグラフリセットシステムが備えるという事実にある。制御レバーの第2の部分の一端によって、フックオルガンの第2の端部を押す前に、制御レバーの第2の部分のこの端部は、フックオルガンの第2の端部から最初は離れて面している。したがって、制御レバーの第2の部分を押す押しボタンの動作中に、可撓性要素に応力がかかり、フックオルガンの第2の端部が押される前でさえもエネルギを蓄積する。この可撓性要素は、フックオルガンの第1の端部のフックが、ブロックピンと接触しなくなるまでエネルギを蓄積する。その後、ハンマは、クロノグラフのリセットの操作を復元する十分なエネルギを蓄積した可撓性要素の第1の端部によって駆動される。
【0012】
このように、システムは、クロノグラフをリセットする機能を実行するために可撓性要素によってエネルギを蓄積することを可能にし、また、クロノグラフをリセットするためにハンマをブロック解除したとき、フックオルガンによって、摩擦のない明確なトリガを可能にする。
【0013】
クロノグラフリセットシステムの目的、利点、および特徴は、特に以下の図面に関して、以下の説明においてよりよく示されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1a】本発明によるクロノグラフのリセット操作前のクロノグラフリセットシステムの底面図である。
【
図1b】本発明によるクロノグラフのリセット操作前のクロノグラフリセットシステムの3次元底面図である。
【
図2】本発明によるクロノグラフのリセット操作のために、ハンマをブロック解除する直前のクロノグラフリセットシステムの底面図である。
【
図3a】本発明によりハンマがブロック解除された後のクロノグラフのリセット操作中のクロノグラフリセットシステムの底面図である。
【
図3b】本発明によりハンマがブロック解除された後のクロノグラフのリセット操作中のクロノグラフリセットシステムの3次元底面図である。
【
図4】本発明によるリセットシステムの分カウンタギアトレインを主に示すクロノグラフカウントギアトレインの3次元図である。
【
図5】本発明によるリセットシステムの分時カウンタギアトレインを主に示すクロノグラフカウントギアトレインの3次元図である。
【
図6】本発明によるクロノグラフのリセット操作前のクロノグラフリセットシステムの別の実施形態の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明では、この技術分野でよく知られているクロノグラフリセットシステムの要素が簡単にのみ説明される。
【0016】
図1aおよび
図1bは、リセット操作前の位置にクロノグラフをリセットするためのシステム1の主な要素の底面図を示す。また、これは通常、以下に説明される
図4および
図5に詳細に示されるクロノグラフカウントギアトレイン2で構成される。リセットシステム1は、独自のムーブメント、つまり独自のバレルで自律的であり得る基本時間ムーブメントおよびクロノグラフムーブメントを備える計時器に搭載されると考慮され得る。しかしながら、計時器の基本的な動きを使用するために、クロノグラフが提供されてもよい。
【0017】
リセットシステム1は、通常は秒ホイールセットであるクロノグラフホイールセット3を備え、これは、
図4および
図5のクロノグラフカウントギアトレイン2の一部である。このクロノグラフカウントギアトレインは、特に、分ホイールセット4を備える分カウンタと、クロノグラフホイールセット3を備える秒カウンタとを備える。クロノグラフカウントギアトレインはまた、時ホイールセット5を備える時カウンタを備え得る。クロノグラフまたは秒ホイールセット3は、クロノグラフホイールセットの中心軸23に取り付けられたハートピース13を含み、このハートピース13は、カム形状を構成する。分ホイールセット4は、中心軸24に取り付けられたハートピース14を含む。最後に、時モジュール5は、中心軸25に取り付けられたハートピース15を含む。
【0018】
クロノグラフを装備された計時器は、通常、計時器のフレームまたはプレート上において摩擦で回転するように取り付けられたクロノグラフホイールセットを備えることに留意されたい。これは、クロノグラフをリセットするときに、クロノグラフリセット表示まで、この目的のために設けられた開口部における軸による摩擦によってのみ保持されるホイールセットを、十分なトルクで回転させることができるのを意味する。
【0019】
リセットシステム1は、主に、リセット制御手段12と、クロノグラフをリセットするために使用されるハンマ6の端部との間に接続された、埋め込みばねであり得る可撓性要素10を備える。可撓性要素10は、制御手段12の変位中、ブロック手段11によってブロックされたハンマ6をブロック解除する前に、エネルギを蓄積し、ハンマ6がブロック解除された場合、クロノグラフをリセットするために、蓄積されたこのエネルギを復元し、ハンマ6を駆動するように構成される。
【0020】
主に、可撓性要素10は、第1の端部10aによってハンマ6、たとえば、クロノグラフをリセットするために使用されるハンマ6の端部に連結される。ピン19は、可撓性要素10の第1の端部10aに挿入され、ハンマ6のフラットな上端に形成された細長開口部9に収容される。可撓性要素10の第2の端部10bは、計時器のベースまたはフレームまたはプレートに取り付けられ、クロノグラフのリセット操作中に使用される制御手段12に固定される。埋め込みばねなどの可撓性要素10は、その第1の端部10aとその第2の端部10bとの間の形状が弧状である。制御手段12に作用できる押しボタンなどの外部活性化オルガンBの方向に弧状であるこの形状は、クロノグラフをリセットする前に蓄積されるエネルギを高めるように適合され得る。
【0021】
制御手段12は、好ましくは制御レバー、たとえばフラット制御レバーであり、これは好ましくは固定要素22によって回転可能に取り付けられ、これは正確には、制御レバーの中央開口部を通過するねじ22であり、計時器のベースまたはフレームまたはプレートの対応するねじ山に固定的にねじ込まれる。ねじ22によって画定される軸の周りに回転可能に取り付けられるこの制御レバー12は、軸の第1の側に第1の部分を備え、その軸上に、可撓性要素10の第2の端部10bが、スタッドボルト40または他の固定手段によって固定される。制御レバー12は、第1の側と反対の回転軸の第2の側に第2の部分をさらに備え、その一端で、クロノグラフをリセットするために押しボタンBを作動させることができる。本発明にしたがって以下に説明するように、ブロック位置では、ハンマ6は、ブロック手段11によってブロックされた状態に保持される。クロノグラフをリセットする直前に、押しボタンBは、制御レバー12の第2の回転部分を押し、したがって、ハンマ6の有効なブロック解除の前に、まず第2の端部10bから可撓性要素に作用して、エネルギの蓄積を実行する。これは、押しボタンBをさらに押すことによって引き起こる。
【0022】
ハンマ6は、好ましくは金属プレートであり、第1の長手方向開口部7および第2の長手方向開口部8と平行に取り付けられ、たとえば第1のねじ17および第2のねじ18である、配置された固定ロッド17、18である。これらの2つのねじ17、18は、この目的のために、図示しない計時器のベースまたはフレームまたはプレート上に提供されたねじにねじ込むことができるが、ハンマが、非アクティブなブロック位置とアクティブなリセット位置との間で自由に動くようにする。2つの長手方向開口部7、8は、好ましくは、ハンマ6の長さにわたって同じ長さであり、同じ線上にある。長手方向開口部の長さは、以下に説明するように、ハンマ6が、ホイールセット3、4の様々なハートピース13、14と接触するクロノグラフの、あるいはまたホイールセット5のハートピース15の、非アクティブなブロック位置およびアクティブなリセット位置を占めることができるように適合される。
【0023】
ハンマ6のブロック手段11は、好ましくは、ハンマ6に回転可能に取り付けられたフックオルガン11である。フラット形状のフックオルガン11は、第2のねじ18を通過する中央開口部を備え、そのねじ山は、押しボタンBが作用するハンマ6の上側として画定されるハンマ6の第2の長手方向開口部8にある。フックオルガン11は、第1の端部11aにおいて、第2の長手方向開口部8の近くの、ハンマ6の2つの長手方向開口部7、8の間にハンマ6に垂直に固定されたピン26に引っ掛けるためのフックを備える。第2のねじ18の回転軸に対して反対側に位置するフックオルガン11の第2の端部11bは、フックオルガン11の戻りばね31の第1の自由端が、フックオルガン11を、ハンマ6のブロック位置に戻すように作用できるロッド21を備える。戻りばね31の第2の端部は、計時器のベースまたはフレームまたはプレートに作られた対応するねじ山にねじ込まれたねじ51によって固定され得る。
【0024】
クロノグラフリセット操作の場合、回転制御レバー12の第2の部分の内側端部12’は、フックオルガン11の第2の端部11bに面して離れて配置される。クロノグラフのリセット操作のために押しボタンBが押されると、最初に、可撓性要素10は、押しボタンBを押した後、制御レバー12の回転によってエネルギを蓄積する。可撓性要素10は、制御レバー12の第2の部分の内側端部12’が、フックオルガン11の第2の端部11bを押す前に、フックオルガン11の第1の端部11aのフックが、もはやハンマ6のピン26に引っ掛からなくなるまで、すでにエネルギを蓄積しており、これにより、追加の摩擦なしに明確なトリガが可能になる。この状態では、ハンマ6は、もはやブロック位置になく、最初に可撓性要素10により、続いて押しボタンBに対するユーザの圧力により、蓄積されたエネルギを復元することによって、より容易にクロノグラフをリセットするように作用できる。
【0025】
ハンマ6をブロック解除する直前に可撓性要素10によって蓄積されたこのエネルギによって、クロノグラフのリセット操作が容易になる。ハンマ6は、可撓性要素10によって、その第1の端部10aから、様々なホイールセット3、4、5、特にホイールセットのハートピース13、14、15の方向に押される。この目的のために、そして利用可能な3つのホイールセットの場合、ハンマ6は、3つの接触部分16a、16b、16cを備える。ハンマ6上に配置された第1の接触部分16aは、クロノグラフホイールセット3のハートピース13に接触する。ハンマ6上に配置された第2の接触部分16bは、時ホイールセット5のハートピース15に接触する。第1の接触部分16aおよび第2の接触部分16bは、第1の長手方向開口部7の近くのハンマ6上の軸37の周りに回転可能に取り付けられたアセンブリを形成する。第1の接触部分16aと第2の接触部分16bとの間に角度止め36が設けられる。この止め36は、アセンブリの中央開口部内を、一定のクリアランスを伴って通過し、これにより、構成要素の幾何学的欠陥を補償できる。最後に、可撓性要素10の第1の端部10aの近くのハンマ6上に配置された第3の接触部分16cは、分ホイールセット4のハートピース14に接触する。この第3の接触部分16cは、U字形の金属ストリップによって接続され、接触部分の反対側のその端部は、スタッドボルト43または他の固定手段によってハンマ6の上端に固定される。第3の接触部分16cの位置を調整するために、ハンマ6の上端に対応する穴に調整偏心器44が固定される。
【0026】
クロノグラフのリセット終了時のこれらの3つのホイールセット3、4、5、および接触部分16a、16b、16cの位置は、
図3aおよび
図3bに明示的に示されるが、これらは、上記の
図1aおよび
図1bで説明したものと同じ要素を備えているので、詳細に説明されない。ハートピース13、14、15の各フラットは、それぞれの各接触部分16a、16b、16cによってゼロ位置に保持される。各長手方向開口部7、8にあるねじまたは他のロッド17、18は、リセット時、および押しボタンBが解放された後に、ハンマ6の非アクティブなブロック位置に配置される前に、長手方向開口部7、8の上端にある。各長手方向開口部7、8の長さは、各ねじ17、18が、ハンマ6のブロック中の非アクティブ位置、およびアクティブリセット位置から移動できるように決定される。
【0027】
純粋に説明の目的で、分針34は、図示されない計時器の文字盤上にクロノグラフ分を示すために、軸24上で摩擦的に接続されねばならない。時針35は、図示されない計時器の文字盤上にクロノグラフ時を示すために、軸25上で摩擦的に接続されねばならない。クロノグラフ秒表示についても同じことがなされ得るが、針は図示されない。
【0028】
押しボタンBが解放された後に可撓性要素10をその初期位置に戻すために、別の戻りばね32を有することができ、その自由端32aは、可撓性要素10の第2の端部10bの下の回転制御レバー12の第1の部分に作られたハウジング41において接触する。戻りばね32の他端32bは、ねじ42によって固定され、ねじ42は、計時器のベースまたはフレームまたはプレートに製造された対応するねじにねじ込まれる。可撓性要素10および押しボタンBが初期位置にあると、戻りばね31は、クロノグラフの次のリセット操作の前に、従来方式でフックオルガン11をハンマのブロック位置に押し込む。
【0029】
クロノグラフリセットシステムの底面図のみを示す
図2は、フックオルガン11の第1の端部11aのフックがハンマ6のブロックを解除する場合、ハンマ6のブロックを解除する直前に、可撓性要素10によって蓄積されたエネルギが例示的に見られるようにする。制御レバー12の回転により、可撓性要素10の第2の端部10bは時計回り方向に回転する傾向があり、可撓性要素10を真っ直ぐにし、したがってクロノグラフをリセットするときに復元されるエネルギを蓄積する。もちろん、
図2の他のすべての構成要素は、
図1aおよび
図1bを参照してすでに説明されているため、繰り返されない。
【0030】
以下の
図4および
図5は、クロノグラフカウントギアトレイン2を示し、これは、一方では
図4の分ギアトレインを備え、他方では
図5の時ギアトレインを備える。分ギアトレインおよび時ギアトレインのための様々なホイールが、点線で接続されて示される。主に
図4に示される分ギアトレインの場合、クロノグラフホイールセット3の軸23上に配置された第1の歯車62は、その直径が第1の歯車62の直径よりも大きい中間ホイール63と噛み合う。以下に説明する時ギアトレインを駆動するために、より小さな直径の第2の中間ホイール64が中間ホイール63上に配置される。中間ホイール63よりも直径が小さい第3の同軸近位中間ホイール65は、分ホイールセット4の軸24に取り付けられた大きなホイール66を駆動できる。もちろん、各ホイールの寸法は、第1のインジケータオルガンを用いた秒から、図示されない文字盤における針34のように、第2のインジケータオルガンを用いた分へと切り替わるために、カウントされ表示される時間にしたがって決定される。
【0031】
図5は、主に、時ホイールを表す。クロノグラフホイールセット3の軸23上に配置された第1の歯車62は、その直径が第1の歯車62の直径よりも大きい中間ホイール63と噛み合う。より小さな直径の第2の中間ホイール64は、より大きな直径の第2の中間ホイール68と噛み合い、第2の中間ホイール68は、別の大きなホイール67を駆動することを意図された別の小さな中間ホイールを下に備え、その同軸上のより小さな直径の近位ホイールが、時ホイール69を駆動する。もちろん、各ホイールの寸法は、第1のインジケータオルガンを用いた秒から、図示されない文字盤における針35のように、第3のインジケータオルガンを用いた時へと切り替わるために、カウントされ表示される時間にしたがって決定される。
【0032】
また、
図4および
図5には、ホイールセット4、5のそれぞれの軸に直接接続されない分34および時35の表示針があることが認められ得る。分ホイールセット4および時ホイールセット5のハートピース14、15はおのおの、ホイール66、69の下に配置される。クロノグラフ計時器のこの技術分野では、分ギアトレインと時ギアトレインとの両方がよく知られている。他の詳細はこれ以上正確に説明されない。
【0033】
図6は、リセット操作前の位置にクロノグラフをリセットするためのシステム1の別の実施形態の主な要素の底面図を示す。したがって、
図1aで説明されたものと同じ要素は繰り返されないが、他方、新しい要素は、フックオルガン11および新しい第3の接触部分16cに関連して説明される。
【0034】
フックオルガン11は、第1の端部で軸45の周りに回転可能に取り付けられ、第2の端部11bは、制御レバー12の第2の部分の内側端部12’と接触する。フックオルガン11の中間部分の支持体11aは、ハンマ6のピン26と接触して配置される。
【0035】
新しい第3の接触部分16cは、いわゆる可撓性ペインであり、可撓性ペインは、ハートピース14と接触する力を調整するために使用される可撓性ブレード46を備える。これらの可撓性ブレード46は、いわゆる可撓性ペインの中央部分のいずれかの側に配置され、互いに実質的に平行である。このいわゆる可撓性ペインは、固定前に位置を調整するために、長方形の開口部において、ハンマ6の一端に、ねじまたはスタッドボルト43によって固定される。このいわゆる可撓性ペインのこの構成により、構成要素の幾何学的欠陥を補償し、ホイールセットの3つのハートピースにおける同一の接触によって正しいリセットを保証する(ハイパスタティックシステム)。この構成では、特に
図1a以降の図に示すように、もはや機械的な調整を使用する必要がない。
【0036】
このように与えられた上記の説明から、クロノグラフをリセットするためのリセットシステムの複数の変形実施形態は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって設計され得る。同一または異なる形状の1つまたは複数の可撓性要素から作られ、ハンマの一端と制御レバーとの間に配置されると規定され得る。それに加えて、クロノグラフをリセットするために、回転式であって、直線運動を伴わない1つまたは複数のハンマを有すると考慮され得る。
【符号の説明】
【0037】
1 リセットシステム
2 クロノグラフカウントギアトレイン
3 クロノグラフホイールセット
4 分ホイールセット
5 時ホイールセット
6 ハンマ
7 第1の長手方向開口部
8 第2の長手方向開口部
9 細長開口部
10 可撓性要素
10a 第1の端部
10b 第2の端部
11 フックオルガン
11a 第1の端部
11b 第2の端部
12 制御手段、制御レバー
12’ 内側端部
13 ハートピース
14 ハートピース
15 ハートピース
16a 第1の接触部分
16b 第2の接触部分
16c 第3の接触部分
17 ロッド、ねじ
18 ロッド、ねじ
19 ピン
21 ロッド
22 軸、固定要素、ねじ
23 軸
24 軸
25 軸
26 ピン
31 戻りばね
32 戻りばね
32a 自由端
32b 他端
34 分針
35 時針
36 角度止め
37 軸
40 固定手段、スタッドボルト
41 ハウジング
42 ねじ
43 スタッドボルト
44 調整偏心器
45 軸
46 可撓性ブレード
51 ねじ
62 歯車
63 中間ホイール
64 中間ホイール
65 中間ホイール
66 ホイール
67 ホイール
68 中間ホイール
69 時ホイール
B 押しボタン