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特許7066892冷却装置、基板処理装置、冷却方法、および基板処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】冷却装置、基板処理装置、冷却方法、および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220506BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20220506BHJP
   F25D 13/00 20060101ALI20220506BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
H01L21/304 648K
H01L21/302 101B
F25D13/00 Z
F25D11/00 101B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021042062
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2021184457
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2020087862
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】出村 健介
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-526430(JP,A)
【文献】特開2006-189215(JP,A)
【文献】特開2018-026436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/3065
F25D 13/00
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流通可能な流路と、
前記流路に設けられた凝縮器と、
前記流路に設けられた熱交換器と、
前記凝縮器と前記熱交換器との間の、前記流路に設けられたコンプレッサと、
前記凝縮器から前記熱交換器に流入する前記冷媒を冷却する冷却器と、
前記熱交換器にガスを供給し、前記冷媒との熱交換により、前記ガスを冷却可能なガス冷却部と、
冷却された前記ガスの温度を検出可能な第1の温度計と、
前記熱交換器に流入する前記冷媒の温度を検出可能な第2の温度計と、
前記冷却器によって、前記熱交換器に流入する前記冷媒を冷却する温度の制御が可能な第1の制御部と、
を備え、
前記第1の制御部は、前記熱交換器に流入する前記冷媒を冷却する温度を、前記第1の温度計で検出された温度に基づいて制御する第1の制御と、前記第2の温度計で検出された温度に基づいて制御する第2の制御とを切り替えて制御する冷却装置。
【請求項2】
前記第1の制御部は、
前記熱交換器に供給される前記ガスの流量が予め定めた値以上の場合には、前記第1の制御を行い、
前記熱交換器に供給される前記ガスの流量が予め定めた値未満の場合には、前記第2の制御を行う請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷却装置と、
基板を載置して回転可能な載置部と、
前記基板の洗浄を行う面に液体を供給可能な液体供給部と、
前記基板の前記載置部側の面に、前記冷却装置により冷却されたガスを供給可能な冷却部と、
前記基板の回転数、前記液体の供給量、および、前記冷却装置の第1の制御部を制御可能な第2の制御部と、
を備えた基板処理装置。
【請求項4】
熱交換器に冷媒を流入し、供給されたガスとの間の熱交換により、前記ガスを冷却する冷却方法であって、
前記熱交換器に流入する前記冷媒の温度を、冷却された前記ガスの温度に基づいて制御する第1の制御と、前記熱交換器に流入する前記冷媒の温度に基づいて制御する第2の制御とを切り替えて制御するガスの冷却方法。
【請求項5】
請求項4に記載のガスの冷却方法を用いて、基板の処理を行う基板処理方法であって、
前記基板処理方法は、
前記基板を載置部に搬入する工程と、
前記基板の一方の面に液体を供給する工程と、
前記基板の他方の面に冷却された前記ガスを供給する工程と、
前記基板の面上にある前記液体の少なくとも一部を凍結させる工程と、
凍結させた前記液体を解凍させる工程と、
前記液体を解凍させた前記基板を乾燥させる工程と、
乾燥させた前記基板を載置部から搬出する工程と、
を有し、
前記液体の少なくとも一部を凍結させる工程においては、前記ガスの冷却方法における第1の制御によってガスの冷却を行い、
前記基板を搬入する工程、解凍する工程、乾燥する工程、搬出する工程においては、前記ガスの冷却方法における第2の制御によって前記ガスの冷却を行う基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷却装置、基板処理装置、冷却方法、および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、基板の洗浄装置、エッチング装置などにおいては、低温のガスを処理の対象物に供給して対象物の温度を下げて処理を行う場合がある。この様な技術においては、例えば、液体窒素などの低温の液体を蒸発させて低温のガスを発生させ、発生させたガスを対象物に供給している。
【0003】
しかしながら、液体窒素などの低温の液体は、長期間の保存や必要量の増減への対応が困難であり、ランニングコストも高いという問題がある。そのため、冷却装置を用いてガスを冷却し、冷却したガスを対象物に供給する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ところで、低温のガスを対象物に供給することは、冷却が必要な処理を行っている間だけでよい。例えば、対象物の処理と処理との合間などでは、低温のガスを供給する必要はない。そのため、冷却が必要な処理中と、対象物の処理と処理との合間とで供給するガスの量を同じにすると、無駄に消費されるガスの量が増加することになる。
【0005】
また、対象物の処理によっては、一連の処理において、冷却が必要な処理と必要でない処理が混在する場合がある。そのため、冷却が必要な処理中と冷却が不要な処理中とで供給するガスの量を同じにすると、無駄に消費されるガスの量が増加することになる。そこで、対象物の処理と処理との合間や、冷却が不要な処理中において、低温のガスの供給を停止、あるいは供給量を少なくすることが考えられる。
【0006】
ところが、対象物の処理中あるいは対象物の処理と処理の合間において低温のガスの供給を停止、あるいは供給量を少なくすると、冷却装置の故障が多発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実用新案登録第3211245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、低温のガスの供給を停止、あるいは供給量を少なくしても、冷却装置の故障の発生を抑制することができる冷却装置、基板処理装置、冷却方法、および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る冷却装置は、冷媒が流通可能な流路と、前記流路に設けられた凝縮器と、前記流路に設けられた熱交換器と、前記凝縮器と前記熱交換器との間の、前記流路に設けられたコンプレッサと、前記凝縮器から前記熱交換器に流入する前記冷媒を冷却する冷却器と、前記熱交換器にガスを供給し、前記冷媒との熱交換により、前記ガスを冷却可能なガス冷却部と、冷却された前記ガスの温度を検出可能な第1の温度計と、前記熱交換器に流入する前記冷媒の温度を検出可能な第2の温度計と、前記冷却器によって、前記熱交換器に流入する前記冷媒を冷却する温度の制御が可能な第1の制御部と、を備えている。前記第1の制御部は、前記熱交換器に流入する前記冷媒を冷却する温度を、前記第1の温度計で検出された温度に基づいて制御する第1の制御と、前記第2の温度計で検出された温度に基づいて制御する第2の制御とを切り替えて制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、低温のガスの供給を停止、あるいは供給量を少なくしても、冷却装置の故障の発生を抑制することができる冷却装置、基板処理装置、冷却方法、および基板処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る冷却装置を備えた基板処理装置を例示するための模式図である。
図2】冷却装置の系統図である。
図3】基板処理装置の作用について例示をするためのタイミングチャートである。
図4】本実施の形態に係る冷却装置を備えた他の基板処理装置を例示するための模式図である。
図5】他の基板処理装置で処理する基板の構造を例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施の形態に係る冷却装置は、例えば、基板の洗浄装置、エッチング装置などに用いることができる。ただし、冷却装置の用途はこれらに限定されるわけではなく、例えば、加熱処理された基板に低温のガスを供給して冷却する場合にも用いることができる。つまり、低温のガスを対象物に供給する用途に用いることができる。
【0013】
ここでは、一例として、基板100の洗浄に用いることができる冷却装置20について説明する。そのため、以下に例示をする基板100は、例えば、半導体ウェーハ、インプリント用テンプレート、フォトリソグラフィ用マスク基板、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)に用いられる板状体などとすることができる。ただし、基板100の用途はこれらに限定されるわけではない。例えば、基板100は、有機膜を焼成するために用いることができる。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る冷却装置20を備えた基板処理装置1を例示するための模式図である。
なお、「冷却装置20を備えた基板処理装置1」とは、基板処理装置1内に冷却装置20が内蔵されている場合だけでなく、冷却装置20と基板処理装置1とが各々別体で、基板処理装置1に冷却装置20が配管等を介して接続されている場合も含む。
【0015】
本実施の形態に係る基板処理装置1は、基板100の表面に洗浄処理液を供給し、その洗浄処理液を冷却して凍結させたのち解凍、排出することで、基板100の表面に存在する汚染物を洗浄する装置である。
なお、汚染物は、パーティクルや異物等である。
【0016】
図2は、冷却装置20の系統図である。
図1に示すように、基板処理装置1には、載置部2、冷却装置20、冷却ガス供給部3、液体供給部4、筐体6、送風部7、排気部9、および制御部10(第2の制御部の一例に相当する)が設けられている。
【0017】
載置部2は、載置台2a、回転軸2b、および駆動部2cを有する。
載置台2aは、筐体6の内部に設けられている。載置台2aは、板状を呈している。載置台2aの一方の主面には、基板100を保持する複数の突出部2a1が設けられている。複数の突出部2a1の上には、基板100が載置される。基板100を載置する際には、基板100の、洗浄を行う面が、載置台2a側とは反対の方を向くようにする。洗浄を行う面は、例えば、凹凸部が形成された面であり、凹凸部は例えばパターンとすることができる。
【0018】
複数の突出部2a1は、基板100の周縁を保持する。載置台2aの中央部分には、載置台2aの厚み方向を貫通する孔2a2が設けられている。
【0019】
回転軸2bの一方の端部は、載置台2aの孔2a2に嵌合されている。回転軸2bの他方の端部は、筐体6の外部に設けられている。回転軸2bは、筐体6の外部において駆動部2cと接続されている。
【0020】
回転軸2bは、筒状を呈している。回転軸2bの載置台2a側の端部には、吹き出し部2b1が設けられている。吹き出し部2b1の開口は、基板100が載置台2aに載置されると、基板100の載置部2側の面に対向する。なお、載置台2aの孔2a2および後述の冷却ノズル3cの先端を吹き出し部2b1と呼ぶこともある。
【0021】
回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部は閉塞している。回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部には、後述の冷却ノズル3cが挿入されている。回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部と、冷却ノズル3cとの間には、図示しない回転軸シールが設けられている。そのため、回転軸2bは、冷却ノズル3cを固定した状態で回転可能である。また、回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部は、図示しない回転軸シールにより気密となるように封止されている。
【0022】
駆動部2cは、筐体6の外部に設けられている。駆動部2cは、回転軸2bと接続されている。駆動部2cの回転力は、回転軸2bを介して載置台2aに伝達される。そのため、駆動部2cにより載置台2a、ひいては載置台2aに載置された基板100を回転させることができる。また、駆動部2cは、回転の開始と回転の停止のみならず、回転数(回転速度)を変化させることができる。駆動部2cは、例えば、サーボモータなどの制御モータを備えたものとすることができる。
【0023】
冷却装置20は、ガスを冷却し、冷却したガス(冷却ガス3d)を冷却ガス供給部3に供給する。
図2に示すように、冷却装置20には、循環部21、ガス冷却部22、および制御部24(第1の制御部の一例に相当する)を設けることができる。
【0024】
循環部21は、コンプレッサ21a、凝縮器21c、冷却器21e、熱交換器21f、および温度計21h(第2の温度計の一例に相当する)を有する。循環部21には、冷媒Lが流通可能な流路(配管)が設けられている。コンプレッサ21a、凝縮器21c、冷却器21e、熱交換器21f、および温度計21hは、流路に設けることができる。
【0025】
コンプレッサ21aは、凝縮器21cと熱交換器21fとの間の、流路に設けられている。コンプレッサ21aは、気体状となっている冷媒Lを凝縮器21cに向けて送り出すことで、凝縮器21cと熱交換器21eとの間で冷媒Lを循環させる。冷媒Lは、例えば、フロン、アルゴン、クリプトンなどを混合したものとすることができる。
【0026】
凝縮器21cは、コンプレッサ21aから送られてきた気体状の冷媒Lを冷却して凝集させる。凝縮器21cは、気体状の冷媒Lを液体状の冷媒Lにする。例えば、凝縮器21cには、後述の冷媒冷却部23により冷却液が供給される。凝縮器21cは、気体状の冷媒Lと冷却液との間で熱交換を行うことで、気体状の冷媒Lを液体状の冷媒Lにすることができる。なお、液冷式の凝縮器21cを例示したが、空冷式の凝縮器21cなどとすることもできる。
【0027】
冷却器21eは、例えば、凝縮器21cにより液状とされ、熱交換器21fに流入する液状の冷媒Lを冷却する。冷却器21eには、例えば、蒸発器やカスケードコンデンサなどの既知の冷却機などを用いることができる。また、蒸発器やカスケードコンデンサを多段に組み合わせた構造とすることもできる。冷却器21eには、冷媒Lが蒸発しやすいように冷媒Lの圧力を低下させる(冷媒Lを膨張させる)不図示の膨張弁やキャピラリーチューブが設けられている。また、冷却器21eは、冷媒Lを冷却するだけでなく、加熱するための加熱部も取り付けることができる。
【0028】
熱交換器21fは、凝縮器21cにより液体状となった冷媒Lと熱交換を行う。熱交換器21fは、冷媒Lによって冷却され、冷却された熱交換器21fが冷却対象のガスとの間で熱交換を行う。液体状の冷媒Lは、熱交換器21fとの熱交換によって蒸発する。気体状となった冷媒Lはコンプレッサ21aに流入し、コンプレッサ21aにより凝縮器21cに送られる。
【0029】
温度計21hは、熱交換器21fに流入する液体状の冷媒Lの温度を検出する。温度計21hは、配管の中を流れる液体状の冷媒Lの温度を直接検出するものとしてもよいし、配管の温度を検出することで、液体状の冷媒Lの温度を間接的に検出するものとしてもよい。温度計21hは、例えば、熱電対などとすることができる。
【0030】
ガス冷却部22は、熱交換器21fにガスを供給し、熱交換器21fにより冷却されたガス(冷却ガス3d)を冷却ガス供給部3(接続部3a)に供給する。すなわち、ガス冷却部22は、熱交換器21fにガスを供給し、冷媒Lとの熱交換により、ガスを冷却することができる。
【0031】
ガス冷却部22は、流路22a、流量制御部22b、流路22d、吐出口22eおよび温度計22c(第1の温度計の一例に相当する)を有する。流路22aは、後述するガス供給部25と熱交換器21fとを接続する部材である。流路22aは、公知の配管を用いることができる。例えば、材料としてステンレスや銅を用いることができる。流路22aは、ガス供給部25から供給されたガスを熱交換器21fへと供給する。流路22aには、流量制御部22bが設けられる。
【0032】
流量制御部22bは、熱交換器21fに供給するガスの流量を制御する。流量制御部22bは、例えば、MFC(Mass Flow Controller)などとすることができる。また、流量制御部22bは、ガスの供給圧力を制御することでガスの流量を間接的に制御するものであってもよい。この場合、流量制御部22bは、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などとすることができる。
【0033】
流路22dは、熱交換器21fと吐出口22eとを接続する部材である。流路22dは、公知の配管を用いることができる。例えば、材料としてステンレスや銅を用いることができる。流路22dは、熱交換器21fによって冷却されたガス(冷却ガス3d)を吐出口22eへと供給する。
【0034】
吐出口22eは、冷却ガス3dが吐出される吐出口である。吐出口22eは、後述の基板処理装置1の接続部3aを介して冷却ガス供給部3へと接続される。吐出口22eには、温度計22cが設けられている。
【0035】
温度計22cは、吐出口22eにおける冷却ガス3dの温度を検出する。温度計22cは、吐出口22eの中を流れる冷却ガス3dの温度を直接検出するものとしてもよいし、吐出口22eの温度を検出することで、冷却ガス3dの温度を間接的に検出するものとしてもよい。温度計22cは、例えば、熱電対などとすることができる。なお、吐出口22eを流れる冷却ガス3dの温度あるいは、配管の温度が測定できるものであればよい。
【0036】
ガス供給部25は、冷却されるガスを冷却装置20に向けて供給する供給源である。ガス供給部25は、例えば、不図示の接続部を介して、流量制御部22bが設けられた流路22aと接続される。
【0037】
ガス冷却部22に供給されるガスは、基板100を必要な温度に冷却出来るものであればよく、適宜選定される。例えば、基板100の材料と反応しにくく、基板100の処理に必要な温度が得られ、必要な温度において気体でいられるガスである。ガス冷却部22に供給されるガスは、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスとすることができる。この場合、比熱の高いガスを用いれば基板100の冷却時間を短縮することができる。例えば、ヘリウムガスを用いれば基板100の冷却時間を短縮することができる。また、比較的安価な窒素ガスを用いれば基板100の処理費用を低減させることができる。ガス供給部25は、例えば、ガスが収納された高圧ボンベ、ガスを供給可能な工場配管などとすることができる。
【0038】
冷媒冷却部23は、凝縮器21cに冷却液を供給する。冷却液には特に限定がない。冷却液は、例えば、水などとすることができる。
冷媒冷却部23は、供給源23a、および流量制御部23bを有する。
供給源23aは、凝縮器21cの冷却液を供給する。供給源23aは、例えば、冷却液を収納するタンクとポンプなどの供給装置とすることができる。また、供給源23aは、例えば、冷却液を供給する工場配管などとすることもできる。なお、凝縮器21cから流出した冷却液は、前述したタンクに戻したり、工場のドレインに排出したりすることができる。
【0039】
流量制御部23bは、凝縮器21cに供給する冷却液の流量を制御する。また、流量制御部23bは、冷却液の供給と供給の停止を切り替える機能を有することもできる。
なお、凝縮器21cが液冷式の場合の冷媒冷却部23を例示したが、ガス冷方式でも良く、あるいは空冷式でもよい。凝縮器21cが空冷式の場合には、冷媒冷却部23は、例えば、送風ファンなどとすることができる。
【0040】
制御部24は、冷却装置20に設けられた各要素の動作を制御する。
制御部24は、例えば、流量制御部22bを制御して、冷却されるガスの供給量を制御する。また、冷却器21eを制御して、冷媒Lの温度を制御する。
【0041】
また、制御部24は、基板100を処理する際の冷却ガス3dの目標温度である第1の設定温度を予め記憶することができる。なお、第1の設定温度は、目標温度を含む温度範囲を持たせてもよい。
【0042】
また、制御部24は、後述する、第2の設定温度および、しきい値を予め記憶することができる。なお、第1の設定温度、第2の設定温度および、しきい値は、オペレータが不図示の入力装置を用いて制御部24に入力可能となっている。
【0043】
次に、図1に戻って、基板処理装置1に設けられた他の要素について説明する。
図1に示すように、冷却ガス供給部3は、基板100の洗浄を行う面とは反対側の面(載置台2a側の面)に冷却ガス3dを直接供給する。
【0044】
冷却ガス供給部3は、接続部3a、配管3b、冷却ノズル3c、および温度計3e(第1の温度計の一例に相当する)を有する。接続部3aおよび配管3bは、筐体6の外部に設けられている。
接続部3aは、冷却装置20の吐出口22eと配管3bを接続する部材である。
【0045】
配管3bは、中空の円筒状で、冷却装置20と冷却ノズル3cとを接続する。配管3bの一端は、接続部3aを介して、冷却装置20に接続されている。配管3bの他端は、不図示の接続部を介して冷却ノズル3cに接続されている。配管3bは、公知の材料を用いることができる。例えば、ステンレスや銅を用いることができる。
【0046】
冷却ノズル3cは、筒状を呈し、回転軸2bに隙間を介して挿入されている。冷却ノズル3cは、冷却ガス3dを基板100に供給する。冷却ノズル3cから吐出された冷却ガス3dは、基板100の載置部2側の面に直接供給される。
【0047】
温度計3eは、冷却ノズル3cにおける冷却ガス3dの温度を検出する。温度計3eは、冷却ノズル3cの吐出口の近傍に設けることが好ましい。この様にすれば、基板100の載置部2側の面に供給された冷却ガス3dの温度と、温度計3eにより検出された冷却ガス3dの温度との差を小さくすることができる。
【0048】
温度計3eは、冷却ノズル3cの中を流れる冷却ガス3dの温度を直接検出するものとしてもよいし、冷却ノズル3cの温度を検出することで、冷却ガス3dの温度を間接的に検出するものとしてもよい。温度計3eは、例えば、熱電対などとすることができる。なお、冷却ノズル3cを流れる冷却ガス3dの温度あるいは配管の温度が計測できるものであれば良い。
【0049】
液体供給部4は、基板100の洗浄を行う面に液体101を供給する。液体101は、例えば、水(例えば、純水や超純水など)や、水を主成分とする液体などとすることができる。
【0050】
水を主成分とする液体とする場合、水以外の成分が余り多くなると、体積増加に伴う物理力を利用することが難しくなるので、汚染物の除去率が低下するおそれがある。そのため、水以外の成分の濃度は、5wt%以上、30wt%以下とすることが好ましい。
【0051】
液体供給部4は、液体収納部4a、供給部4b、流量制御部4c、および液体ノズル4dを有する。
【0052】
液体収納部4aは、液体101を収納する。
供給部4bは、配管を介して、液体収納部4aに接続されている。供給部4bは、液体101を液体ノズル4dに向けて供給する。供給部4bは、例えば、ポンプなどとすることができる。
【0053】
流量制御部4cは、配管を介して、供給部4bに接続されている。流量制御部4cは、供給部4bにより供給された液体101の流量を制御したり、液体101の供給と停止を切替えたりする。流量制御部4cは、例えば、流量制御弁とすることができる。
【0054】
液体ノズル4dは、筒状を呈し、筐体6の内部に設けられている。液体ノズル4dの一方の端部は、配管を介して、流量制御部4cに接続されている。液体ノズル4dの他方の端部は、基板100の洗浄を行う面に対向している。液体ノズル4dから吐出した液体101は、基板100の洗浄を行う面に供給される。
【0055】
筐体6は、箱状を呈している。筐体6の内部にはカバー6aが設けられている。カバー6aは、基板100に供給され、基板100が回転することで基板100の外部に排出された液体101を受け止める。カバー6aは、筒状を呈している。カバー6aの、載置台2a側とは反対側の端部(図1での上方の端部)は、カバー6aの中心に向けて屈曲している。そのため、基板100の上方に飛び散る液体101の捕捉を容易とすることができる。
【0056】
また、筐体6の内部には仕切り板6bが設けられている。仕切り板6bは、カバー6aの外面と、筐体6の内面との間に設けられている。
【0057】
筐体6の底面側の側面には排出口6cが設けられている。使用済みの冷却ガス3d、筐体6内の空気7a、使用済みの液体101は、排出口6cから筐体6の外部に排出される。排出口6cには排気管6c1が接続され、排気管6c1には使用済みの冷却ガス3d、筐体6内の空気7aを排気する排気部9が接続されている。また、排出口6cには使用済みの液体101を排出する排出管6c2も接続されている。排出口6cは、載置部2に載置される基板100よりも下方に設けられている。
【0058】
送風部7は、筐体6の天井面に設けられている。なお、送風部7は、筐体6の天井側の側面に設けることもできる。送風部7は、ファンなどの送風機とフィルタを備えたものとすることができる。フィルタは、例えば、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)などとすることができる。送風部7は、仕切り板6bと筐体6の天井との間の空間に空気7a(外気)を供給する。
【0059】
制御部10は、CPUなどの演算部と、メモリなどの記憶部とを備えたものとすることができる。制御部10は、記憶部に格納されている制御プログラムに基づいて、基板処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。
制御部10は、例えば、流量制御部4cを制御して、液体101の供給量を制御する。また、制御部10は、駆動部2cを制御して、基板100を回転させる。例えば、制御部10は、基板100を回転させて、供給された液体101が、基板100の全領域に行き渡るように制御したり、液体101を基板100上から排出させたりする。
【0060】
また、制御部10は、冷却装置20の制御部24を制御することができる。例えば、流量制御部22bを制御して、冷却ガス3dの流量を変化させるよう制御部24に指令を出す。
【0061】
(基板処理動作)
次に、基板処理装置1の動作(作用)について図3を用いて説明する。
図3は、基板処理装置1の作用について例示をするためのタイミングチャートである。
なお、図3は、基板100が6025クオーツ(Qz)基板(152mm×152mm×6.35mm)、液体101が純水の場合である。
【0062】
前述のように、本実施の形態に係る基板処理装置1は、基板100の表面に洗浄処理液を供給し、その洗浄処理液を冷却して凍結させたのち解凍、排出することで、基板100の表面に存在する汚染物の洗浄処理を行う。
図3に示すように、この洗浄処理は、洗浄を行う基板処理工程と、洗浄対象の基板100を基板処理装置1内に搬入/搬出する基板搬入/搬出工程とに分けられる。
【0063】
基板処理装置1は、基板処理工程において、予め筐体6内に搬入された基板100の表面の洗浄を行う面に液膜を形成し、その液膜を冷却して凍結させる凍結工程を行う。その後、解凍した液膜を除去して乾燥させる解凍・乾燥工程を行うことで、基板100の表面の洗浄を行う面を洗浄する。基板100の洗浄後、処理済みの基板100を筐体6から搬出し、未処理の基板100を筐体6に搬入する基板搬入/搬出工程を行う。
以下、凍結工程、解凍・乾燥工程、基板搬入/搬出工程の順で説明する。
【0064】
まず、凍結工程において、制御部10は、流量制御部4cを制御して、液体ノズル4dから液体101を基板100に供給する。次に、駆動部2cを制御して、基板100を回転させて基板100上に液膜を形成する。
【0065】
次に、制御部10は、冷却装置20の制御部24に、基板100に対して冷却ガス3dを供給するよう指令を出す。制御部24は、流量制御部22bを制御して、窒素ガスを熱交換器21fに供給する。供給された窒素ガスは、熱交換器21fにより冷却され、冷却ノズル3cから吐出される。この冷却された窒素ガスが冷却ガス3dである。本実施形態では、冷却ガス3dは、液膜を凍結させるのに必要な温度、流量で基板100へと吐出される。例えば、-120℃~30℃、40NL/min~200NL/min程度の流量で冷却ノズル3cから基板100へと吐出され、基板100上の液膜が凍結される。なお、この時、液体101の基板100への供給は停止している。
【0066】
次に、解凍・乾燥工程において、制御部10は、冷却装置20の制御部24に冷却ガス3dの供給を停止するよう指令を出す。制御部24は、流量制御部22bを制御して、冷却ガス3dの供給を停止させる。そして、制御部10は、流量制御部4cを制御して、液体101を基板100に再び供給して凍結した液膜を解凍させる。解凍後は、液体101の基板100への供給を停止し、基板100の回転により基板100を乾燥させる。乾燥後は、基板100の回転を停止する。
凍結工程と解凍・乾燥工程を合わせて基板処理工程と呼ぶ。したがって、解凍・乾燥工程が完了し基板100が乾燥されると、基板100を洗浄する処理が完了したことになる。
【0067】
次に、基板搬入/搬出工程において、筐体6の図示しない搬入搬出口を介して、処理済みの基板100が筐体6の外部へ搬出される。処理済みの基板100の搬出が完了したら、未処理の基板100の有無を確認する。未処理の基板100が存在すれば、未処理の基板100が筐体6の内部に搬入され、載置台2aの複数の突出部2a1の上に載置される。そして、上記基板処理工程に戻って上記の処理が繰り返される。
【0068】
未処理の基板100が無ければ、制御部10は、処理済みの基板100を搬出した後、基板処理装置1の動作を停止させる。
【0069】
以上、図3に示すように、本実施形態において、冷却装置20による冷却ガス3dは、凍結工程において供給され、解凍・乾燥工程および基板搬入/搬出工程において停止される。
【0070】
なお、基板処理装置1の稼働開始時、冷却装置20も動作を開始する。この時、制御部24は、ガスの温度目標値である第1の設定温度を参照し、第2温度計21hの温度が第1の設定温度になるように冷却器21eを制御する。制御部24が冷却器21eを制御することによって、冷媒Lの温度が調整される。
【0071】
そして、基板処理時は、制御部24は、温度計22c(冷却装置20出口温度)の検出値が第1の設定温度となるように冷却器21eを制御する。これにより、処理に必要な温度の冷却ガス3dを基板100に供給することができる。
【0072】
(冷却装置の故障について)
ここで、基板100の処理と処理との合間、本実施形態では、基板搬入/搬出工程において、冷却ガス3dを基板処理装置1に供給する必要は無い。また、冷却が不要な処理、本実施形態では解凍・乾燥工程においても冷却ガス3dを基板処理装置1に供給する必要は無い。したがって、基板100を処理するときの冷却ガス3dの供給量と同じ量を対象物の処理と処理との合間および、冷却が不要な処理中に基板処理装置1に供給することは、消費される冷却ガス3dの量が増加することにつながる。
【0073】
また、基板100の搬入・搬出においては、供給される冷却ガス3dによって、基板100の位置がずれたりして基板100が保持できないおそれがある。また、基板100の解凍・乾燥においては、冷却ガス3dによる冷却が続くと、解凍・乾燥時間が増加するおそれがある。
【0074】
そこで、基板100の処理と処理との合間あるいは、基板100の冷却が不要な処理において、冷却ガス3dの供給を停止あるいは、ガスの供給量を少なくして、消費される冷却ガス3dの量を減少させた。しかし、基板100の処理と処理の合間あるいは基板100の冷却が不要な処理において低温のガスの供給を停止、あるいは供給量を少なくすると、冷却装置20の故障が多発した。
【0075】
本発明者は、検討の結果、以下の知見を得た。まず、冷却ガス3dの供給を停止あるいは供給量を少なくすると、冷却ガス3dの供給系(例えば、ガス冷却部22および冷却ガス供給部3)の温度が上昇していることが判明した。また、冷却ガス3dの供給系の温度が上昇することで、冷媒Lが凝固するおそれがあることも判明した。
【0076】
冷却ガス3dの供給系は、周囲の空気と接している。このため、冷却ガス3dの供給系は周囲の空気から熱を受け取っている。一方、冷却ガス3dの供給系の内部を冷却ガス3dが流れている場合、冷却ガス3dと冷却ガス3dの供給系との間で熱伝導が発生する。このため、冷却ガス3dの供給系は、冷却ガス3dからも熱を受け取っている。
【0077】
冷却ガス3dの温度が周囲の空気の温度より十分低い場合、冷却ガス3dの供給系の温度と冷却ガス3dの温度がほぼ同じ値となる。したがって、温度計22cが冷却ガス3dの供給系の温度を検出する場合でも、その検出値を冷却ガス3dの温度と見なすことができる。このため、制御部24が温度計22cの検出値を第1の設定温度となるように冷却器21eを制御すれば、基板100に供給される冷却ガス3dの温度を、第1の設定温度を含んだ目標範囲内の値とすることができる。
【0078】
すなわち、制御部24は、温度計22cの検出値が目標範囲内の温度(第1の設定温度)になるように冷媒Lの温度を調整する第1の制御方法を実行すればよい。
【0079】
ところが、冷却ガス3dの供給系の内部を冷却ガス3dが流れていない場合、冷却ガス3dと冷却ガス3dの供給系との間で熱伝導が発生しない。このため、冷却ガス3dの供給系は、冷却ガス3dから熱を受け取ることがなく、周囲の空気からのみ熱を受け取ることになる。したがって、冷却ガス3dの供給系の内部を冷却ガス3dが流れている場合に対し、冷却ガス3dの供給系の温度が上昇する。そして、冷却ガス3dの供給系の温度は、最終的にその周囲の空気の温度とほぼ同じ値となる。
【0080】
このように、冷却ガス3dの供給系の内部を冷却ガス3dが流れていない場合、温度計22cの検出値は、冷却ガス3dの温度でなく冷却ガス3dの供給系の温度となる。これは、冷却ガス3dの温度を直接検出する場合でも同じである。そして、温度計22cの検出値は、基板100を処理する際の冷却ガス3dの目標温度である第1の設定温度よりも高い温度を維持する。したがって、制御部24が温度計22cの検出値に基づいて、第1の制御方法を実行すると、温度計22cの検出値が実際には冷却ガス3dの供給系の温度を示しているので、冷媒Lが冷却されるのみである。冷媒Lが冷却されると、冷媒Lの温度は、より低い温度となる。
【0081】
しかし、冷媒Lの温度を下げても、温度計22cの検出値はほとんど変わらない。よって、制御部24は、さらに冷媒Lの温度を下げるために冷却器21eを制御する。
【0082】
液体状の冷媒Lの温度が低くなり過ぎると、液体状の冷媒Lが凝固し易くなる。液体状の冷媒Lが凝固すると、冷媒Lが循環する配管が詰まるおそれがある。冷媒Lが循環する配管が詰まると、冷媒Lを循環させるコンプレッサ21aなどが故障するおそれがある。また、凝縮器21c、熱交換器21fなどの冷媒Lが流通する流路に設けられる各ユニットも故障するおそれがある。なお、冷媒Lの凝固する状態には、冷媒Lの一部が凝固する状態も含まれる。
【0083】
制御部24が冷却器21eを制御して冷媒Lを必要以上に冷却することは、冷却ガス3dの供給系の内部を冷却ガス3dが少量流れている場合にも発生する。冷却ガス3dの供給系の内部を流れる冷却ガス3dは、冷却ガス3dの供給系から熱を吸収する。冷却ガス3dの流量が少なくなるほど、単位流量当たりの冷却ガス3dが冷却ガス3dの供給系から受け取る熱が多くなる。冷却ガス3dが受け取る熱が多くなると、冷却ガス3dの温度増加量も大きくなる。つまり、冷却ガス3dの流量が少ないほど、冷却ガス3dの温度増加量が大きくなる。
【0084】
冷却ガス3dの温度増加量が大きくなり過ぎると、第1の設定温度の温度範囲を上回ってしまう可能性がある。したがって、冷却ガス3dの供給を停止した場合だけでなく、冷却ガス3dの供給量が少量の場合も考慮する必要がある。
【0085】
ここで、冷却ガスの供給系に断熱部材を設け、冷却ガスの供給系が周囲の空気から熱を受け取ることを防ぐ方法が考えられる。しかし、冷却ガスの供給系に断熱部材を設けたとしても、周囲の空気から熱を受け取ることを完全に防ぐことはできない。
【0086】
上記の知見に基づき、本発明者は、冷却装置20の故障を防ぐため、冷却ガス3dの供給量にしきい値を予め設けた。冷却ガス3dの供給量がしきい値以下の場合には、制御部24は、温度計21hの検出値に基づいて冷媒Lの温度が第2の設定温度を含む温度範囲内となるように冷却器21eを制御する第2の制御方法に制御を切替える。
【0087】
第2の制御方法は、冷媒Lの温度調整を熱交換器に入る直前の冷媒Lの温度に基づいて、冷媒Lが凝固しない温度範囲に設定された第2の設定温度になるように冷媒Lの温度を調整する制御方法である。制御部24が第1の制御方法から第2の制御方法に切り替えることで、温度管理する対象が冷却ガス3dから冷媒Lに切り替わる。例えば、冷却ガス3dの供給系の内部を冷却ガス3dが流れていない状態あるいは少量しか流れていない状態であって、制御部24が温度計22cの検出値に基づいて冷媒Lを冷却する場合に、制御部24は、変化しないあるいは変化しにくい温度計22cの検出値を変化させようとして冷媒Lを過剰に冷却する。制御部24が上記の切り替えを行うことで、冷媒Lを過剰に冷却し過ぎることがなくなる。したがって、冷媒Lに凝固が生じて冷却装置20が故障することが無い。
【0088】
すなわち、制御部24が、温度計22cの検出値に基づいて目標範囲内の温度に検出値がなるように冷媒Lの温度を調整する第1の制御方法を実行しても、温度計22cの検出値を目標範囲内に調整することができない場合、第2の制御方法に切り替えることで、温度管理する対象を切り替えることができる。そのため、変化しないあるいは変化しにくい温度計22cの検出値を変化させようとして冷媒Lを過剰に冷却し、冷媒Lに凝固が生じて冷却装置20が故障することが無い。
【0089】
ここで、予め定める値であるしきい値は、前述の通り、冷却装置20の故障を防ぐための値である。具体的には、第1の制御方法から第2の制御方法に切り替えるための基準となる値である。本実施形態では、しきい値は、冷却ガス3dが冷却ガス3dの供給系から熱を受け取って温度上昇し、到達した冷却ガス3dの温度が第1の設定温度の範囲内となる冷却ガス3dの供給量である。例えば、しきい値は、30NL/minである。
【0090】
しきい値は、ガス冷却部22および冷却ガス供給部3の配管径や配管長によって異なる。しきい値は、予め実験により求めておけばよい。例えば、冷却ガス3dを十分大きな供給量で供給し、温度計22cの検出値が第1の設定温度の温度範囲内となった状態とする。つぎに、冷却ガス3dの供給量を徐々に減少させ、温度計22cの検出値が第1の設定温度の温度範囲から外れてしまったときの供給量をしきい値とすればよい。
【0091】
第2の設定温度は、冷媒Lが凝固しない温度範囲である。第2の設定温度も予め実験により求めておけばよい。例えば、冷媒Lが凝固する温度を公知のカスケードコンデンサを用いて冷媒Lを冷却して求め、その温度よりも高い温度範囲とすればよい。なお、第2の設定温度は、冷却装置20の故障の発生を抑制できればよい。例えば、冷媒Lの凝固が一部生じていてもよい場合もある。このような場合の温度も温度範囲の中に含めることができる。
【0092】
次に、基板処理装置1における冷却装置20の作用について例示をする。
【0093】
凍結工程において、冷却装置20の制御部24は、基板処理装置1の制御部10の指令から冷却ガス3dの供給量のデータ(例えば、150NL/min)を入手する。制御部24は、入手した冷却ガス3dの供給量がしきい値以上かどうか判断する。しきい値を30NL/minとした場合、冷却ガス3dの供給量は、しきい値以上となる。制御部24は、冷却装置20の吐出口22eに設けられた温度計22cからの検出値に基づいて冷却器21eを制御して、温度計22cからの検出値と第1の設定温度との差が許容範囲内になるように冷却ガス3dの温度を温度調整する(第1の制御方法)。
【0094】
したがって、温度計22cにより冷却ガス3dの温度は制御されているので、基板100に供給されている間の冷却ガス3dの温度のバラつきを小さくすることができる。その結果、基板100の温度、ひいては基板100上の液体101の温度を精度よく制御することができる。また、基板100が交換されても、冷却処理の再現性を向上させることができる。
【0095】
凍結工程と同様に、解凍・乾燥工程において、制御部24は、制御部10の指令から冷却ガスの供給量のデータ(停止:0NL/min)を入手する。そして、制御部24は、冷却ガスの供給量がしきい値以上かどうか判断する。しきい値を30NL/minとした場合、冷却ガス3dの供給量は、しきい値未満となる。制御部24は、判断結果に基づき、前述した第1の制御方法(温度計22cを用いた制御)から、温度計21hからの検出値に基づいて冷却器21eを制御する第2の制御方法に切替える。制御部24は、温度計21hからの検出値と第2の設定温度との差が許容範囲内になるように冷媒Lの温度を調整する。
【0096】
冷却ガス3dの供給量がしきい値未満のとき、冷却装置20の制御部24は、第2の制御方法を行うので、冷媒Lが凝固するのを抑制できる。その結果、無駄に消費されるガスの量を抑制でき、冷却装置の故障の発生を抑制することができる。
【0097】
解凍・乾燥工程に引き続き行われる基板搬入/搬出工程において、制御部10から冷却ガス3dの供給量に関する新たな指令は出ていない。そのため、制御部24は、流量制御部22bを制御して冷却ガス3dの供給停止を維持する。また、制御部24は、冷却装置20の循環部21を流れる冷媒Lの温度が第2の設定温度となるように、冷却器21eを制御する。つまり、制御部24は、解凍・乾燥工程から引き続き第2の制御方法を実施する。
【0098】
本実施形態の基板処理装置1では、冷却ガス3dの吐出部分の温度は、冷却ガス3dの供給を停止あるいは供給量を少なくしている解凍・乾燥処理工程および基板搬入/搬出工程のときに高くなる。そのため、解凍・乾燥処理工程および基板搬入/搬出工程において、制御部24が冷却ガス3dの吐出部分における温度に基づいて、従来のように冷却ガス3dの温度を第1の設定温度まで下げようと冷却装置20の動作を制御すると、冷却装置20の故障が多発した。
【0099】
そのため、本実施形態の基板処理装置1は、冷媒Lが流通可能な流路と、流路に設けられた凝縮器21cと、流路に設けられた熱交換器21fと、凝縮器21cと熱交換器21fとの間の流路に設けられたコンプレッサ21aと、凝縮器21cから熱交換器21fに流入する冷媒Lを冷却する冷却器21eと、熱交換器21fにガスを供給し、熱交換器21fとの熱交換により、ガスを冷却可能なガス冷却部22と、冷却されたガスの温度を検出可能な温度計22cと、熱交換器21fに流入する冷媒Lの温度を検出可能な温度計21hと、冷却される熱交換器21fに流入する冷媒Lの温度を冷却器21eを制御することで温度調整することが可能な制御部24とを備え、制御部24は、熱交換器21fに流入する冷媒Lの温度を、温度計22cで検出された温度に基づいて制御する第1の制御と、温度計21hで検出された温度に基づいて制御する第2の制御とを切り替えて制御することが可能な冷却装置20を備えている。
【0100】
冷却装置20を備えた基板処理装置1は、凍結処理工程においては、温度計22cからの検出値と第1の設定温度との差が許容範囲内になるように冷却ガス3dの温度を温度調整する第1の制御方法を実施することができる。そして、解凍・乾燥処理工程および基板搬入/搬出工程において基板処理装置1は、温度計21hからの検出値と第2の設定温度との差が許容範囲内になるように冷媒Lの温度を温度調整する第2の制御方法を実施することができる。
【0101】
基板100を冷却して行われる処理、例えば、凍結処理工程を連続で実施する場合において、第1の制御方法の実施によって各処理ごとに供給される冷却ガス3dの温度差を小さくできる。したがって、基板100ごとの除去率の差も小さくすることができる。また、冷却が不要な処理中あるいは基板100の処理と処理の合間、例えば解凍・乾燥処理工程および基板搬入/搬出工程において、第2の制御方法の実施によって冷媒Lが凝固することを抑制することができる。したがって、配管が詰まって冷却装置20が故障することを抑制すると共に、ガスの消費量を抑制することができる。
【0102】
なお、本実施形態の基板処理装置1では、基板搬入/搬出工程で冷却ガス3dの供給を停止させた。しかし、基板100の搬入および搬出に影響が無ければ、冷却ガス3dの供給量をしきい値以上の量であって、処理に必要な値よりも少ない量で供給するようにしてもよい。こうすることで、冷却ガス3dの供給系を周囲の温度より低く保つ保冷をすることができる。冷却ガス3dの供給系を保冷することで、冷却ガス供給部3が次の基板100を処理するために冷却ガス3dを供給する際、冷却ガス3dが第1の設定温度まで冷却される時間が短縮される。したがって、基板処理装置1の稼働率を向上させることができる。
【0103】
以上に説明したように、本発明の実施形態に係る冷却方法は、冷媒Lを蒸発させ、供給されたガスとの間の熱交換により、ガスを冷却する冷却方法である。本発明の実施形態に係る冷却方法は、供給されるガスの流量が所定の値以上の場合には、冷却されたガスの温度に基づいて、冷媒Lの温度を制御する。供給されるガスの流量が所定の値未満の場合には、蒸発前の冷媒Lの温度に基づいて、冷媒Lの温度を制御する。この様にすれば、液体状の冷媒Lが凝固するのを抑制することができる。したがって、配管が詰まることに起因する冷却装置20の故障の発生および、ガスの消費量を抑制することができる。
【0104】
(第2の実施形態)
次に、他の一例として、基板のエッチングに用いることができる冷却装置について説明する。
図4は、本実施の形態に係る冷却装置20を備えた基板処理装置11を例示するための模式図である。基板処理装置11は、電子部品などの微細構造体の製造に用いることができる基板処理装置である。具体的には、プラズマによる半導体基板のエッチングする装置である。
【0105】
(基板)
図5は、基板処理装置11で処理する基板200の構造を例示するための模式図である。基板200上には、メタル配線がされた配線層201が形成される。配線層201の上にSiO2などの絶縁膜202が形成される。絶縁膜202の上にレジストパターン203が形成される。レジストパターン203までが形成された基板200も基板200と呼ぶ。なお、基板200の用途はこれに限定されず、第1の実施の形態の基板100に対応する基板も適用可能である。
【0106】
図4に示すように、基板処理装置11には、チャンバ12、載置部13、冷却ガス供給部30、冷却部材15、加熱装置16、電源部17、プラズマ形成用ガス供給部18、減圧部19、制御部10a(第2の制御部の一例に相当する)、および冷却装置20を設けることができる。
【0107】
チャンバ12は、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な容器である。チャンバ12の内部には、プラズマPが発生する領域12eが設けられている。チャンバ12は、本体部12aと窓部12bを有する。本体部12aは、一端に開口部12cを有し、他端が閉塞された円筒状である。閉塞された他端は、チャンバ12の底面となる。本体部12aは、例えば、アルミニウムなどの導電性材料から形成される。
【0108】
本体部12aの、開口部12cに近い側面には、プラズマ生成用のガスGを供給するガス供給口12dが設けられる。また、本体部12aの閉塞された他端には、チャンバ12の内部のガスを排出する排気口12fが設けられている。
【0109】
窓部12bは、不図示のシール部材を介して開口部12cに設けられる。窓部12bは、例えば、石英などの絶縁物で形成される。
【0110】
載置部13は、チャンバ12の内部であって、チャンバ12の底面の上に設けることができる。載置部13は、電極13a、台座13b、加熱部13c、不図示の電源を有する。
【0111】
電極13aは、プラズマPが発生する領域12eの下方に設けることができる。電極13aの上面に基板200を載置することができる。
【0112】
台座13bは、電極13aと、チャンバ12の底面との間に設けることができる。台座13bは、電極13aと、チャンバ12との間を絶縁するために設けることができる。台座13bの内部には、加熱部13cと冷却部13eを設けることができる。
【0113】
加熱部13cは、電極13aを介して基板200を加熱することができる。加熱部13cは、例えば、ジュール熱を利用するもの、熱媒体を循環させるもの、赤外線を放射するものなどとすることができる。
【0114】
冷却部13eは、冷却ガス3dが流れる流路である。例えば、台座13bに形成される。冷却部13eの一端は、後述の冷却ガス供給部30(配管30b1)と接続する。冷却部13eの他端は、基板処理装置11の外部とつながる。これにより、冷却装置20から供給された冷却ガス3dは、配管を通り、装置の外部に排出される。冷却部13eは、電極13aを介して基板200を冷却することができる。
【0115】
冷却ガス供給部30は、チャンバ12(本体部12a)および載置部13と冷却装置20とを接続する。冷却ガス供給部30の内部を冷却ガス3dが流れる。本実施形態では、冷却ガス供給部30は、接続部30aと、配管30b1および配管30b2を有する。
【0116】
接続部30aは、分岐を有する配管である。
接続部30aの一端は、後述する冷却装置20と接続される。接続部30aの分岐した他端は、各々配管30b1および配管30b2に接続される。
【0117】
配管30b1は、前述の載置部13の冷却部13eに接続される。配管30b2は、後述の冷却部材15に接続される。配管30b1および配管30b2には、それぞれ冷却ガス3dの供給と停止を制御する不図示のバルブが設けられている。
【0118】
チャンバ12の側面には、冷却部材15、加熱装置16を設けることができる。冷却部材15は、本体部12aを冷却することができる。冷却部材15は、例えば、本体部15aと配管15bを有する。
【0119】
本体部15aは、チャンバ12の側面を覆っている。本体部15aは、熱伝導性の良い材料であればよく、例えば、薄い金属の板でできている。
【0120】
本体部15aの、チャンバ12と接する面とは反対の面には、配管15bが設けられている。配管15bは、一本の配管を本体部15aの表面あるいは内部に面に沿って折り曲げた構造となっている。配管15bの一端は、配管30b2と接続され、他端は、チャンバ12の外部に設けられる。これにより、冷却装置20から供給された冷却ガス3dは、配管を通り、装置の外部に排出される。配管15bの内部を冷却ガス3dが流れることで、配管15bが冷却される。その結果、本体部15aを介して、チャンバ12の側面が冷却される。
【0121】
加熱装置16は、冷却部材15を介して、チャンバ12を加熱する。加熱装置16は、例えば、冷却部材15の外周に設けられる。加熱装置16は、例えば、ジュール熱を利用するもの、熱媒体を循環させるもの、赤外線を放射するものなどとすることができる。
【0122】
電源部17は、チャンバ12の上部に設けられている。電源部17は、チャンバ12の内部にプラズマPを発生させるプラズマ発生部となる。電源部17は、例えば、公知のICPプラズマ源を用いることができる。
【0123】
プラズマ形成用ガス供給部18は、ガス供給口12dを介してチャンバ12の内部のプラズマPが発生する領域12eにガスGを供給することができる。
【0124】
減圧部19は、チャンバ12の内部が基板200の処理に必要な圧力となるように減圧することができる。減圧部19は、例えばターボ分子ポンプなどとすることができる。減圧部19は、不図示の配管を介して本体部12aに設けられた排気口12fに接続する。
【0125】
制御部10aは、制御部10と同様の構成とすることができる。制御部10aは、基板処理装置11に設けられた各要素の動作を制御することができる。例えば、制御部10aは、不図示の電源を制御して、電極13aや電源部17に高周波電力を印加する。
【0126】
制御部10aは、加熱部13c、冷却装置20および冷却ガス供給部30を制御して、電極13aに載置された基板200の温度を制御する。また、制御部10aは、加熱装置16、冷却装置20および冷却ガス供給部30を制御して、チャンバ12の温度を制御する。
【0127】
制御部10aは、プラズマ形成用ガス供給部18を制御して、ガスGのチャンバ12への供給と停止を制御する。また、制御部10aは、ガスGの供給量を制御してチャンバ12内の圧力を制御する。制御部10aは、冷却部材15でチャンバ12を冷却する時間を予め記憶する。冷却する時間は、予め実験で求めておけばよい。
【0128】
次に、基板処理装置11用いて、例えば、RIE(反応性イオンエッチング)による基板200のエッチングついて説明する。基板200の絶縁膜202は、レジストパターン203をマスクとしてエッチングされ、溝が形成される。
【0129】
まず、基板200をチャンバ12内に搬入し、チャンバ12を密閉する。その後、減圧部19によりチャンバ12内部を減圧する。所定の圧力となったら、プラズマ形成用ガス供給部18から反応性ガスであるガスGをチャンバ12内に供給する。次に、電源部17に高周波電圧を印加してプラズマを発生させる。
【0130】
プラズマ中に発生するイオンやラジカルによって、基板200の絶縁膜202がエッチング処理される。この時、ガスGと基板200との反応によって反応生成物が生成される。
【0131】
エッチング処理中に生成される反応生成物の生成状態を変えるため、絶縁膜202をエッチングする際に、載置部13またはチャンバ12もしくはその両方を冷却部13eまたは、冷却部材15もしくはその両方で冷却する。あるいは、載置部13またはチャンバ12もしくはその両方を加熱部13cまたは加熱装置16もしくはその両方で加熱する。
【0132】
基板200の温度によって、反応生成物の生成量が変わる。基板200を加熱することで反応が促進され、反応生成物が増える。生成された反応生成物は、基板200やチャンバ12の内壁に付着する。反応生成物の付着量は、基板200やチャンバ12の内壁の温度によって変わる。基板200やチャンバ12の内壁の温度が高いほど、付着しにくくなる。
【0133】
反応生成物は、エッチングにより絶縁膜202に形成される溝の側壁を保護する側壁保護膜となる。これによりエッチング形状を制御することができる。したがって、反応生成物を溝の壁部に付着させるため、載置部13の温度を制御して基板200を冷却する。以下に温度制御の一例を記載する。
【0134】
例えば、絶縁膜202をエッチングする前に、載置部13を-30℃まで冷却する。制御部10aは、冷却装置20の制御部24に冷却ガス3dを供給するように指令を出す。制御部24は、流量制御部22bを制御して冷却ガス3dをガス冷却部22に供給する。制御部24は、基板処理装置1の制御部10の指令から冷却ガス3dの供給量のデータ(例えば、100NL/min)を入手する。そして、制御部24は、冷却ガス3dの供給量としきい値とを比較を行う。その結果、冷却ガス3dの供給量がしきい値以上かどうか判断する。しきい値を30NL/minとした場合、しきい値よりも冷却ガス3dの供給量の方が大きい。したがって、制御部24は、温度計22cの信号に基づいて冷却ガス3dの温度を-30℃(第1の設定温度)になるよう冷却器21eを制御する。
【0135】
載置部13を冷却する間、制御部10aは、パーティクルの原因となるチャンバ12の内壁への反応生成物の付着を防止するため、加熱装置16を制御してチャンバ12を加熱する。この場合、配管30b2の不図示のバルブを閉じる。不図示のバルブを閉じることで、冷却ガス3dは、配管30b2の内部を流れなくなる。そして、配管15bの他端がチャンバ12の外部と接続されているので、配管15b内部の冷却ガス3dは、チャンバ12の外部へと排出される。この結果、冷却部材15により加熱装置16の加熱が妨げられるのを抑制される。
【0136】
次に、絶縁膜202をエッチング処理した後、制御部10aは、加熱部13cを制御して載置部13を室温まで加熱する。冷却された状態の基板200が大気中の空気と触れると結露が発生するおそれがある。結露が発生するとウォーターマークができたり、パーティクルが付着して基板200が不良となったりするおそれがある。載置部13を室温まで加熱することで、基板200の温度を室温とし、結露を防止する。また、チャンバが高温の状態で基板200を搬送する搬送アーム等をチャンバ内に投入すると、搬送アームが熱によって変形してしまうおそれがある。このような搬送トラブルを防止するため、チャンバ12を冷却し、室温に戻す。この場合、配管30b1の不図示のバルブを閉じ、配管30b2の不図示のバルブを開ける。
【0137】
この場合、制御部10aから制御部24への新たな指令は出ない。このため、制御部24は、流量制御部22bを制御して冷却した冷却ガス3dを100L/minで供給し続ける。また、温度計22cの信号に基づいて冷却ガス3dの温度を-30℃になるよう冷却器21eを制御する。(第1の制御方法)
【0138】
制御部10aは、予め記憶した冷却部材15でチャンバ12を冷却する時間が経過したら、制御部24に冷却ガス3dの供給を停止するよう指令を出す。
【0139】
指令を受け取った制御部24は、流量制御部22bを制御し冷却ガス3dの供給を停止する。また、制御部24は、冷却ガス3dの供給を停止する指令の信号から冷却ガス3dの供給量の情報を取得し、冷却ガス3dの供給量としきい値とを比較する。この場合、冷却ガス3dの供給量はゼロで、しきい値よりも小さい。したがって、制御部24は、温度計21hの信号に基づいて冷媒Lの温度が、冷媒Lが凝固しない温度範囲である第2の設定温度となるように冷却器21eを制御する。(第2の制御方法)
【0140】
基板200およびチャンバ12の温度が室温となったら、基板200を搬出し、未処理の基板200を搬入する。この間、制御部10aによる冷却ガス3dの供給量に関する新たな指令は出ていない。そのため、制御部24は、温度計21hの信号に基づいて冷媒Lの温度が第2の設定温度となるように冷却器21eを引き続き制御する。
【0141】
基板200を処理する際に、加熱手段や冷却手段を用いて基板200やチャンバ12の温度を調整する。冷却装置20を基板処理装置11に適用した場合、基板200またはチャンバ12を加熱しているときや基板200の出し入れをしているときには、冷却は必要ない。このため、制御部24は、基板200またはチャンバ12の冷却を止めるために冷却ガス3dの供給を止める。チャンバ12や載置部13の温度を処理に適正な温度に調整するために、制御部24は、チャンバ12や載置部13に供給される冷却ガス3dの温度を計測する。そして、制御部24は、必要な温度範囲となるように冷却装置20を制御する。
【0142】
チャンバ12や載置部13に供給される冷却ガス3dが停止される場合、チャンバ12や載置部13の温度は上昇する。したがって、温度を計測されるチャンバ12や載置部13に供給される冷却ガス3dの温度が目標範囲を逸脱して高くなると、冷却装置20は、供給する冷却ガス3dの温度を下げようとする。冷却ガス3dの供給は停止されているため、供給される冷却ガス3dの温度が目標範囲に戻ることはない。このため、冷却ガス3dの温度を下げることが過剰に行われ、冷却装置20が破損する。
【0143】
上記の実施形態では、チャンバ12や載置部13に供給する冷却ガス3dを停止したために、冷却ガス3dの供給量がしきい値を下回った場合には、制御部24は、第1の制御方法から、第2の制御方法に切り替える。これによって、チャンバ12や載置部13への冷却ガス3dの供給を停止しても、冷却装置20が冷却ガス3dの温度を過剰に下げようと動作することはない。したがって、冷却装置20が破損することが無い。なお、冷媒Lの温度は、冷却器21eで冷却された後の温度を検出するようにすると良い。なお、第1の制御方法は、チャンバ12や載置部13に供給する冷却ガス3dの温度を目標範囲に調整するように冷却装置20を制御することである。第2の制御方法は、冷却装置20の熱交換器21fに供給される前の冷媒Lの温度を第2の目標範囲(第2の設定値)に調整することである。
【0144】
なお、本実施形態ではエッチングについて記載したが、本実施形態の基板処理装置11は、プラズマを利用したアッシングや成膜にも用いることができる。
【0145】
前述の実施の形態では、基板の洗浄処理やエッチング処理を行う基板処理装置での本発明に係る冷却装置の適用を説明しているが、本発明に係る冷却装置が適用される装置はこれらに限られない。洗浄処理のように冷却が必要でない工程が存在する場合や、エッチング処理のように加熱と冷却が繰り返される場合の様に、冷却が間欠的に行われる工程を有する場合やその適用装置に適用することが可能である。
【0146】
例えば、被処理物の加熱処理を行うが、加熱処理時は冷却せず、被処理物を入れ替えるときには冷却を行うバッチ式のオーブンや焼成炉などが挙げられる。
【0147】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、基板処理装置1や基板処理装置11が備える各要素の形状、寸法、数、配置などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0148】
例えば、前述の実施の形態では、ガス冷却部22の吐出口22eに設けられた温度計22cからの信号に基づいて冷却装置20の動作を制御するようにしている。しかし、これに限られるものではない。例えば、基板処理装置1における冷却ガス供給部の冷却ノズル3cに設けられた温度計3eからの信号に基づいて冷却装置20の動作を制御してもよい。
【0149】
温度計3eの検出値は、ノズル3cの出口温度に相当する。したがって、温度計3eからの信号を用いると、基板100の載置部2側の面に供給される冷却ガス3dの温度と温度計3eにより検出された冷却ガス3dの温度との差を小さくできる。その結果、基板100の温度、ひいては基板100上の液体101の温度をより精度良く制御することができる。したがって、基板100の処理の再現性を向上させることができる。
【0150】
もちろん、基板処理装置11における載置部13やチャンバ12の温度を測定する温度計を設けても、温度計3e同様に扱うことができる。この場合でも、基板200の温度、チャンバ12の温度を精度良く制御できる。したがって、基板200の処理の再現性を向上させることができる。
【0151】
また、前述の実施の形態では、流量制御部22bが冷却装置内部に設けられている。しかし、これに限られるものではない。例えば、ガス供給部25と冷却装置20との間に設けるようにしてもよい。あるいは、冷却装置20と冷却ガス供給部3との間に設けるようにしてもよい。また、基板処理装置内部に設けてもよい。
【0152】
また、制御部10または制御部10aが流量制御部22bを制御するようにしてもよい。制御部10または制御部10aが流量制御部22bを制御する場合、制御部10から制御部24に指令が出ない。制御部24は、流量制御部22bから信号を取得し、冷却ガス3dの供給量の情報を取得するようにすればよい。
【0153】
また、前述の実施の形態では、基板処理装置と冷却装置に制御部が各々設けられている。しかし、これに限られるものではない。例えば、基板処理側の制御部だけとし、この制御部が冷却装置の動作も制御するようにしてもよい。
【0154】
また、前述の実施の形態では、第1の制御方法と第2の制御方法の切り替えを、制御装置10が出す冷却ガス3dを供給する指令に基づいて行っていた。けれども、冷却ガス3dの供給系に、冷却ガス3dの流量を検出する流量計を設け、この流量計の検出値による実際の冷却ガス3dの流量に基づいてもよい。この場合、ガス漏洩などで意図しない流量低下が起こっても対応できる。
【0155】
また、温度計22cの検出値と第1の設定温度とを比較することで、冷却装置20の制御を第1の制御方法とするか第2の制御方法とするか決定するようにしてもよい。この場合、しきい値は冷却ガス3dの供給状態や供給量でなく、冷却ガス3dの温度に対するものとなる。
【0156】
また、前述の実施の形態では、冷却装置が冷却ガスを基板処理装置に供給しているが、冷却ガスに代えて冷却液体とすることもできる。
【符号の説明】
【0157】
1 基板処理装置、2 載置部、2a 載置台、2b 回転軸、2c 駆動部、3 冷却ガス供給部、3a 接続部、3b 配管、3c 冷却ノズル、3d 冷却ガス、3e 温度計、4 液体供給部、4a 液体収納部、4b 供給部、4c 流量制御部、4d 液体ノズル、6 筐体、10 制御部、20 冷却装置、21 循環部、21a コンプレッサ、21c 凝縮器、21e 冷却器、21f 熱交換器、21h 温度計、22 ガス冷却部、22a 流路、22b 流量制御部、22c 温度計、22d 流路、22e 吐出口、23 冷媒冷却部、23a 供給源、23b 流量制御部、100 基板、101 液体
図1
図2
図3
図4
図5