(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】乗客コンベアの消毒システムおよび消毒方法
(51)【国際特許分類】
B66B 31/02 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
B66B31/02 A
(21)【出願番号】P 2021045889
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松田 康伸
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129179(JP,A)
【文献】特開2019-108191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの乗降部に設けられ、乗車する利用者を撮影して温度情報を含む画像情報を生成するサーモカメラと、
乗客コンベアの手すりベルトの近傍に設けられ、手すりベルトを持っている利用者の手を含む領域を撮影する範囲検出カメラと、
前記サーモカメラから出力された画像情報から発熱している利用者を検出する異常発熱検出部と、
前記範囲検出カメラから出力された画像情報から利用者が触れた手すりベルトの範囲を検出する利用者接触箇所検出部と、
前記異常発熱検出部から出力される異常信号と、前記利用者接触箇所検出部から出力される検出信号と、乗客コンベア制御装置から出力される乗客コンベアの運転情報と、に基づいて、当該乗客コンベアにおける手すりベルトの消毒範囲を算出して消毒範囲情報を生成する情報処理部と、
を備える乗客コンベアの消毒システム。
【請求項2】
前記情報処理部から出力される消毒範囲情報から、前記手すりベルトを消毒する必要がある場合に、前記手すりベルトを回転駆動する巻上機の回転数情報と、前記消毒範囲情報と、に基づいて、消毒するタイミングを検出する消毒制御部と、
前記消毒制御部から出力される消毒指令信号に従って消毒液を噴霧する噴霧器と、
前記消毒範囲情報から、前記手すりベルトを消毒する必要がある場合に、前記巻上機の回転数情報と、前記消毒範囲情報と、に基づいて、前記噴霧器から手すりベルトに噴霧された消毒液を乾燥させる乾燥機と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの消毒システム。
【請求項3】
前記情報処理部は、前記範囲検出カメラによる検出途中で前記利用者の手を検出不能になった場合に、撮影済みの範囲の情報を使用して暫定の消毒範囲を算出する、請求項1又は2に記載の乗客コンベアの消毒システム。
【請求項4】
前記乗客コンベアは、当該乗客コンベアの運行情報が監視センターによって常時監視されている、請求項1~3の何れか1項に記載の乗客コンベアの消毒システム。
【請求項5】
乗客コンベアの乗降部に設けられたサーモカメラにより、乗車する利用者を撮影して温度情報を含む画像情報を生成し、
乗客コンベアの手すりベルトの近傍に設けられた範囲検出カメラにより、手すりベルトを持っている利用者の手を含む領域を撮影し、
異常発熱検出部により、前記サーモカメラから出力された画像情報から発熱している利用者を検出し、
利用者接触箇所検出部により、前記範囲検出カメラから出力された画像情報から利用者が触れた手すりベルトの範囲を検出し、
前記異常発熱検出部から出力される異常信号と、前記利用者接触箇所検出部から出力される検出信号と、乗客コンベア制御装置から出力される乗客コンベアの運転情報と、に基づいて、当該乗客コンベアにおける手すりベルトの消毒範囲を算出して消毒範囲情報を生成し、
前記消毒範囲情報に基づき、前記手すりベルトに向けて噴霧器から消毒液を噴霧する、乗客コンベアの消毒方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアの消毒システムおよび消毒方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータに代表される乗客コンベアにおいて、利用者がエスカレータを利用する際には、安全のために手すりベルトを持つように案内している。ウイルス感染が流行する時期に手すりベルトが正しく消毒されていない状況では利用者が感染する可能性がある。すなわち、発熱している利用者や、ウイルス感染している利用者が罹患している状態で手すりベルトを触ってしまうと、次に同じ位置を触った利用者に感染させてしまう恐れがある。また、手すりベルトを消毒する際には大量の消毒薬が必要になり、消毒薬の貯蔵量が不足しないように定期的な補充が必要になる。消毒薬の補充のために、エスカレータを停止させると利用者の利便性を損なってしまう恐れがある。
【0003】
従来、エスカレータの手すりベルトに付着したウイルスを消毒する手段としては、利用者がエスカレータに乗り込むために進入してくることを検出した場合に、その利用者が触れる手すりベルトを先行して消毒する機能を備え、利用者の手に菌が付着するのを防止する消毒装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3212608号
【文献】特開平9-208173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術はセンサによる利用者検知であるが、進入する利用者だけでなく、利用者の所持する物も検知してしまうため、消毒範囲が広範囲になってしまい、検出精度が悪いものであった。
【0006】
また、上記従来技術では、利用者が触れる手すりベルトの位置を想定して事前に消毒するため、利用者がエスカレータへ乗車後にエスカレータ上で歩行して昇降した場合は、消毒をしていない範囲の手すりベルトに接触することになるため、利用者のウイルス感染拡大を防止するための安全対策としては十分ではなかった。
【0007】
本発明の実施形態は、利用者が触れた手すりベルトの範囲を的確に消毒することができ、利用者のウイルス感染拡大を抑制することが可能な乗客コンベアの消毒システムおよび消毒方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための実施形態は、乗客コンベアの乗降部に設けられ、乗車する利用者を撮影して温度情報を含む画像情報を生成するサーモカメラと、乗客コンベアの手すりベルトの近傍に設けられ、手すりベルトを持っている利用者の手を含む領域を撮影する範囲検出カメラと、前記サーモカメラから出力された画像情報から発熱している利用者を検出する異常発熱検出部と、前記範囲検出カメラから出力された画像情報から利用者が触れた手すりベルトの範囲を検出する利用者接触箇所検出部と、前記異常発熱検出部から出力される異常信号と、前記利用者接触箇所検出部から出力される検出信号と、乗客コンベア制御装置から出力される乗客コンベアの運転情報と、に基づいて、当該乗客コンベアにおける手すりベルトの消毒範囲を算出して消毒範囲情報を生成する情報処理部と、を備える乗客コンベアの消毒システムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の乗客コンベアの消毒システムが適用されるエスカレータの構成図。
【
図2】第1実施形態の乗客コンベアの消毒システムの構成を示すブロック図。
【
図3A】第1実施形態の乗客コンベアの消毒システムの処理手順を示すフローチャート。
【
図3B】第1実施形態の乗客コンベアの消毒システムの処理手順を示すフローチャート。
【
図4】第1実施形態の乗客コンベアの消毒システムにおいて範囲検出カメラによる検出途中で利用者の手を検出不能になった場合の処理手順を示すフローチャート。
【
図5】第2実施形態の乗客コンベアの消毒システムの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
《実施形態の構成》
以下の実施形態では、乗客コンベアとしてエスカレータを例として説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る乗客コンベアの消毒システムおよび消毒方法を適用したエスカレータの構成例を示す概略図である。なお、以下では建屋内に設置された1機のエスカレータ(昇降機)ESを例示して説明するが、複数のエスカレータが設置されてなる場所にも適用可能である。また、ビル内に限らず、歩道橋や駅舎などに設置されたエスカレータであっても良い。さらに、動く歩道等の水平型エスカレータにも適用可能である。
【0011】
図1に示すように、エスカレータ1は、当該エスカレータ1を循環する手すりベルト2を備える。また、当該エスカレータ1を制御するエスカレータ制御装置10と、当該エスカレータを利用する利用者検出装置20と、利用者が掴んだ手すりベルト2を消毒するための消毒制御装置30とを備える。
【0012】
図2に示すように、実施形態の乗客コンベアの消毒システムは、前述したエスカレータ制御装置10と、利用者検出装置20と、消毒制御装置30と、サーモカメラ40と、範囲検出カメラ50とを備える。
【0013】
エスカレータ制御装置10は、エスカレータ1の運転を制御する運転制御部11と、運転制御部11によって制御される巻上機12と、巻上機12の回転数を計測するためのパルスジェネレータ(PG)13を備える。運転制御部11はパルスジェネレータ13の回転数情報を消毒制御装置30へ出力する機能と、運転情報を利用者検出装置20へ出力する機能を備える。
【0014】
利用者検出装置20は、異常発熱検出部21と、利用者接触箇所検出部22と情報処理部23とを備える。消毒制御装置30は、消毒制御部31と、噴霧器32と、消毒液タンク33と、乾燥機34とを備える。
【0015】
サーモカメラ40は、利用者がエスカレータ1に乗り込もうとして進入してきた際に、その利用者の体温を測定する。利用者の肌が露出している顔を撮影する必要がある。エスカレータ1の場合、利用者は横2列に並んで乗ることが多いため、サーモカメラ40は乗込口の左右に一対が望ましく、または中央に1か所の設置が望ましい。
【0016】
範囲検出カメラ50は、進入して状態した利用者が掴まった手すりベルト2を撮影する。この範囲検出カメラ50も手すりベルト2が検出できるよう、乗込口付近に設置される。
【0017】
異常発熱検出部21は、サーモカメラ40で撮影した画像情報から利用者がウイルスなどに感染し発熱しているかを検出する。
【0018】
利用者接触箇所検出部22は、範囲検出カメラ50で撮影した画像情報から利用者と手すりベルト接触箇所を検出する。
【0019】
情報処理部23は、異常発熱検出部21から出力される異常信号と、利用者接触箇所検出部22から出力される検出信号と、エスカレータ制御装置10から出力される運転情報と、を活用して異常発熱した利用者が接触した手すりベルトの位置を算出する。また、算出した消毒範囲情報を消毒制御装置30へ出力する機能を備える。
【0020】
消毒制御部31は、利用者検出装置20から出力される消毒範囲情報と、エスカレータ制御装置10から出力されるパルス情報に基づき、消毒動作を制御する。
【0021】
噴霧器32は、消毒制御部31から出力される指令信号に従って消毒液を手すりベルト2に向けて噴霧する。消毒液タンク33は、噴霧器32に接続され、噴霧する消毒液を備蓄する。
【0022】
乾燥機34は、消毒制御部31から出力される指令信号に従って手すりベルト2に噴霧された消毒液を乾燥させる。消毒液が噴霧された手すりベルト2をそのままにしておくと、次の利用者が手すりベルトに触れた場合に不快に感じるため、送風機等で構成される乾燥機34で乾燥させることが望ましい。
【0023】
《実施形態の処理手順》
図3A、
図3Bは、同実施形態における利用者を検出してから消毒を行うまでの処理を示すフローチャートである。
【0024】
図1に示したように、エスカレータを利用する利用者検出装置20と、その利用者が掴んだ手すりベルト2を消毒するための消毒制御部31が接続された状態にある。
【0025】
エスカレータ制御装置10では、巻上機12に設置されたパルスジェネレータ13から巻上機12の回転状態を示すパルス情報(回転数情報)が運転制御部11へ入力されている。また、運転制御部11は、運転しているときの各信号状態を含めた運転情報を利用者検出装置20へ、パルスジェネレータ13から取得したパルス情報を消毒制御装置30へ、それぞれを常時出力している。
【0026】
この状態で、利用者がエスカレータに乗車しようと接近してくると、利用者はサーモカメラの撮影範囲に映り込んでくることから、サーモカメラ40で利用者の体温を検温し(ステップS1)、画像情報を異常発熱検出部21へ送信する。このとき、サーモカメラ40はエスカレータに進入してくる利用者を撮影できる向き、角度に設置されているものとする。
【0027】
画像情報を受信した異常発熱検出部21は、利用者の体温が閾値を超えているか判定を行い、発熱検知有無を判断する(ステップS2)。利用者の体温が閾値を超えておらず、発熱を検出しなかった場合(ステップS2NO)は、次の利用者の画像情報受信に備える。利用者の体温が閾値を超えており、発熱を検出した場合(ステップS2YES)は、情報処理部23へ異常信号を出力する。
【0028】
エスカレータに乗り込んだ利用者は、手すりベルト2に掴まった状態で乗車するが、利用者が掴まっている位置は、範囲検出カメラ50で撮影する(ステップS3)。範囲検出カメラ50で撮影した情報は、画像情報として利用者接触箇所検出部22へ出力される。
【0029】
利用者接触箇所検出部22は、画像情報から利用者の手を検出した場合(ステップS4YES)は、利用者の手の移動速度を測定(ステップS5)し、範囲検出カメラ50で利用者の手を検出できなかった場合(ステップS4NO)は、検出できるまで処理を繰り返す。検出された利用者の手の移動速度は、検出信号として情報処理部23へ出力する。
【0030】
情報処理部23は、異常発熱検出部21からの異常信号と、利用者接触箇所検出部22からの検出信号と、エスカレータ制御装置10からの運転情報と、を用いて、利用者が接触している手すりベルト2の接触範囲を算出し(ステップS6)、消毒範囲情報として消毒制御装置30へ出力する。
【0031】
消毒制御装置30の消毒制御部31は、利用者検出装置20から出力される消毒範囲情報と、エスカレータ制御装置10から出力されるパルス情報から消毒位置を算出し(ステップS7)、図示しない内部記憶部へ消毒位置を記録する(ステップS8)。
【0032】
このとき、エスカレータ制御装置10から出力されるパルス情報は、常時出力されているため(ステップS9)、消毒制御部31は記録した消毒位置とパルス情報を比較して消毒位置が接近しているかを確認する(ステップS10)。
【0033】
消毒位置が接近していない場合(ステップS10NO)は、ステップS9の処理へ戻り、接近している場合(ステップS10YES)は、消毒液噴霧指令を噴霧器32へ出力する(ステップS11)。これによって、噴霧器32は消毒液タンク34に備蓄している消毒液を噴霧する(ステップS12)。
【0034】
その後、消毒制御部31は、乾燥機34に対して乾燥動作指令を出力する(ステップS13)。これによって、手すりベルト2に噴霧された消毒液が乾燥される。
【0035】
次に、ステップS8と同様に、エスカレータ制御装置10から出力されるパルス情報を取得し(ステップS14)、消毒制御部31は記録した消毒位置とパルス情報を比較して消毒位置を通過したかどうかを確認する(ステップS15)。
【0036】
消毒位置を通過していない場合(ステップS15NO)は、ステップS14の処理へ戻り、通貨した場合(ステップS15YES)は、噴霧器32への消毒液噴霧指令を停止する(ステップS16)。
【0037】
その後、消毒制御部31は、乾燥機34へ対して乾燥動作停止指令を出力し、(ステップS17)一連の消毒動作が完了する。
【0038】
図4は、同実施形態における利用者の手を範囲検出カメラ50で検出できなくなってしまった場合の処理を示すフローチャートである。なお、
図3Aと同一処理部分には同一ステップ番号を付して説明を省略もしくは簡素化する。また、ステップS9以下の処理は
図3Bと同様であるため、図示は省略し、
図3Bを援用して説明する。
【0039】
エスカレータに乗り込んだ利用者が、手すりベルト2につかまった状態で乗車すると、利用者が掴まっている位置を範囲検出カメラ50で撮影する(ステップS3)。範囲検出カメラ50で撮影した情報は、画像情報として利用者接触箇所検出部22へ出力される。
【0040】
利用者接触箇所検出部22は、画像情報から利用者の手を検出した場合(ステップS4YES)は、利用者の手の移動速度を測定(ステップS5)し、範囲検出カメラ50で利用者の手を検出できなかった場合(ステップS4NO)は、検出できるまで処理を繰り返す。検出された利用者の手の移動速度は、検出信号として情報処理部23へ出力される。
【0041】
情報処理部23は、異常発熱検出部21からの異常信号と、利用者接触箇所検出部22からの検出信号と、を用いて、手すりベルト2を掴んでいる利用者の手を上階へ到達するまで検出できたかを確認し、上階へ到達するまで検出できていた場合(ステップS20YES)は、エスカレータ制御装置10からの運転情報を用いて、利用者が接触している手すりベルト2の接触範囲を算出し(ステップS6)、消毒範囲情報として消毒制御装置30へ出力する。
【0042】
消毒制御装置30の消毒制御部31は、利用者検出装置20から出力される消毒範囲情報と、エスカレータ制御装置10から出力されるパルス情報から消毒位置を算出し(ステップS7)、図示しない内部記憶部へ消毒位置を記録する(ステップS8)。
【0043】
上階へ到達するまで検出できなかった場合(ステップS20NO)は、範囲検出カメラ50で撮影できた範囲のデータと、エスカレータ制御装置10からの運転情報と、を用いて、利用者の手の移動速度から暫定の接触範囲を算出し(ステップS21)、消毒範囲情報として消毒制御装置30へ出力する。
【0044】
消毒制御装置30の消毒制御部31は、利用者検出装置20から出力される暫定の消毒範囲情報と、エスカレータ制御装置10から出力されるパルス情報から消毒位置を算出する(ステップS22)。次に、その算出した位置を、範囲検出カメラ50で撮影できていない範囲の不確定要素を含めた暫定の接触範囲として、消毒位置とその前後1mを消毒範囲に追加し(ステップS23)、図示しない内部記憶部へ消毒位置を記録する(ステップS8)。ここで、不確定要素とは、範囲検出カメラ50にて撮影できなかった部分において、その利用者が踏段を昇る/降りるなど、エスカレータ上を移動している場合が考えられるため、その対策として念のために追加する範囲である。
【0045】
このとき、エスカレータ制御装置10から出力されるパルス情報は、常時出力されているため(ステップS9)、消毒制御部31は記録した消毒位置とパルス情報を比較して消毒位置が接近しているかを確認する(ステップS10)。ここでの消毒位置は、上記のように暫定範囲の前後1mを含めた位置である。
【0046】
消毒位置が接近していない場合(ステップS10のNO)は、ステップS9の処理へ戻り、接近している場合(ステップS10YES)は、消毒液噴霧指令を噴霧器32へ出力する(ステップS11)。噴霧器32は消毒液タンク34に備蓄している消毒液を噴霧する(ステップS12)。
【0047】
その後、消毒制御部31は、乾燥機34へ対して乾燥動作指令を出力する(ステップS13)。
【0048】
次に、ステップS8と同様に、エスカレータ制御装置10から出力されるパルス情報を取得し(ステップS14)、消毒制御部31は記録した消毒位置とパルス情報を比較して消毒位置を通過したかどうかを確認する(ステップS15)。ここでの消毒位置は、上記のように暫定範囲の前後1mを含めた位置である。
【0049】
消毒位置を通過していない場合(ステップS15NO)は、ステップS14の処理へ戻り、通貨した場合(ステップS15YES)は、噴霧器32への消毒液噴霧指令を停止する(ステップS16)。
【0050】
その後、消毒制御部31は、乾燥機34に対して乾燥動作停止指令を出力し(ステップS17)、一連の消毒動作が完了する。
【0051】
以上のように本実施形態によれば、エスカレータ1に設置された消毒システムを用いて、利用者の発熱状態を検出し、接触範囲を確認して消毒を行うことで、利用者をウイルス感染から守り、安全にエスカレータ1を利用できる環境を提供することが可能となる。
【0052】
なお、以上の実施形態では、下階から上階に移動するエスカレータ1を例に説明したが、上階から下階に移動するエスカレータ1であってもよいことは言うまでもない。この場合には、サーモカメラ40および範囲検出カメラ50は上階の乗込口付近に設置される。また、
図4に示す処理手順の説明においても、ステップS20に「上階到着」とあるのを「下階到着」と読み替えればよい。
【0053】
<第2実施形態>
図5に示すように、第2実施形態では、エスカレータ制御装置10が回線網60を介して監視センター70と接続される構成となっている。なお、他の構成は
図2に示した第1実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0054】
エスカレータ制御装置10内には監視部14が設置されており、この監視部14が回線網60を介して監視センター70と接続されている。監視部14は、常時、運転制御部11から消毒液残量や、消毒実施情報を取得して監視センター70に提供する。また、必要に応じて監視センター70からの制御信号を受信し、受信した監視センター70からの制御信号を運転制御部11へ供給するようになっている。
【0055】
この場合、監視センター70から消毒指令をエスカレータ制御装置10に出力することで、遠隔操作によってエスカレータ1の消毒を制御することが可能になる。
【0056】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…エスカレータ、2…手すりベルト、10…エスカレータ制御装置、11…運転制御部、12…巻上機、13…パルスジェネレータ(PG)、14…監視部、20…利用者検出装置、21…異常発熱検出部、22…利用者接触箇所検出部、23…情報処理部、30…消毒制御装置、31…消毒制御部、32…噴霧器、33…消毒液タンク、34…乾燥機、40…サーモカメラ、50…範囲検出カメラ、60…回線網、70…監視センター
【要約】
【課題】 利用者を感染から守り、乗客コンベアを安全かつ安心して利用できる環境を提供する。
【解決手段】 乗客コンベアの乗降部に設けられ、乗車する利用者を撮影して温度情報を含む画像情報を生成するサーモカメラと、乗客コンベアの手すりベルトの近傍に設けられ、手すりベルトを持っている利用者の手を含む領域を撮影する範囲検出カメラと、前記サーモカメラから出力された画像情報から発熱している利用者を検出する異常発熱検出部と、前記範囲検出カメラから出力された画像情報から利用者が触れた手すりベルトの範囲を検出する利用者接触箇所検出部と、前記異常発熱検出部から出力される異常信号と、前記利用者接触箇所検出部から出力される検出信号と、乗客コンベア制御装置から出力される乗客コンベアの運転情報と、に基づいて、当該乗客コンベアにおける手すりベルトの消毒範囲を算出して消毒範囲情報を生成する情報処理部と、を備える。
【選択図】
図2