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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】異常不随意運動障害の処置のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4375 20060101AFI20220506BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
A61K31/4375 ZMD
A61P1/04
A61P1/08
A61P3/02
A61P3/04
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/20
A61P25/22
A61P25/24
【請求項の数】 31
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021132745
(22)【出願日】2021-08-17
(62)【分割の表示】P 2017546819の分割
【原出願日】2016-03-07
(65)【公開番号】P2021183630
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】62/175,112
(32)【優先日】2015-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/129,616
(32)【優先日】2015-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/180,012
(32)【優先日】2015-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515247864
【氏名又は名称】オースペックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・スタムラー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ファンチン・ファン
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/047167(WO,A1)
【文献】特表2012-503010(JP,A)
【文献】特表2013-501810(JP,A)
【文献】特表2013-502227(JP,A)
【文献】FRANK, Samuel,BMC Neurology,2009年,Vol. 9, No. 62,pp 1-10,DOI: 10.1186/1471-2377-9-62
【文献】CHEN, Jack J. et al.,Clinical Therapeutics,2012年,Vol. 34, No. 7,pp. 1487-1504,DOI: 10.1016/j.clinthera.2012.06.010
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)対象に、少なくとも1日あたり6mgのデューテトラベナジンの初期日量を投与する工程;
b)1週間後、初期日量によって達成された異常不随意運動の制御の程度及び初期日量の忍容性を決定する工程;
c)異常不随意運動が軽減されず、初期日量が忍容性である場合、デューテトラベナジンの日量を、その後の日量に対して6mg/日以上ずつ上方に増加させる工程;
d)場合により、異常不随意運動の制御の程度が十分となり、デューテトラベナジンの日量が忍容性となるまで、工程b)及びc)を繰り返す工程;並びに
e)その後の量が忍容されない場合、日量を、その後の日量に対して6mg/日以上ずつ下方に減少させる工程
により、対象における異常不随意運動を処置するのに使用するためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項2】
前記異常不随意運動が、運動障害に関連し、又は運動障害によって引き起こされる、請求項1に記載の異常不随意運動を処置するのに使用するためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項3】
忍容性が、抑鬱、不安、不眠、眠気、疲労、目眩、不穏、焦燥、易刺激性、静座不能、遅発性ジスキネジー、嚥下、パーキンソニズム、嘔吐及び悪心の1つ又は複数の対象レベルの評価によって決定される、請求項1又は2に記載の異常不随意運動を処置するのに使用するためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項4】
デューテトラベナジンの日量は、1用量又は2用量で投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の異常不随意運動を処置するのに使用するためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項5】
デューテトラベナジンの初期日量は、6mg、12mg、18mg、24mg、30mg、36mg、42mg、及び48mgから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の異常不随意運動を処置するのに使用するためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項6】
デューテトラベナジンの初期日量は、第1の用量と第2の用量とからなる2用量で投与され、
第1の用量は6mgであり、第2の用量は6mgである;
第1の用量は9mgであり、第2の用量は9mgである;
第1の用量は12mgであり、第2の用量は12mgである;
第1の用量は15mgであり、第2の用量は15mgである;
第1の用量は18mgであり、第2の用量は18mgである;
第1の用量は21mgであり、第2の用量は21mgである;又は
第1の用量は24mgであり、第2の用量は24mgである、請求項1~5のいずれか一項に記載の異常不随意運動を処置するのに使用するためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項7】
投与されるデューテトラベナジンの日量は、強力なCYP2D6阻害剤を同時に受けている対象については、48mg以下であるか、又は36mg以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の異常不随意運動を処置するのに使用するためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項8】
前記異常不随意運動が、ハンチントン病と関連する舞踏病であり、前記舞踏病が、統一ハンチントン病評価尺度(UHDRS)の総合最大舞踏病(Total Maximal Chorea(TMC))スコアによる測定で少なくとも0.5ポイント低下する、又は、
前記異常不随意運動が、舞踏病であり、舞踏病が、少なくとも10%、少なくとも15%、若しくは少なくとも20%軽減される、請求項1~7のいずれか一項に記載の異常不随意運動を処置するのに使用するためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項9】
前記処置は、対象のQTcF値を有意に変化させない、請求項1~8のいずれか一項に記載の異常不随意運動を処置するのに使用するためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項10】
a)テトラベナジンの日量を中止する工程;
b)次の日、テトラベナジンの既存の総日量の30%~70%であり、少なくとも6mg/日であるデューテトラベナジンの初期日量を対象に投与する工程;
c)1週間後、重水素置換されたテトラベナジンの初期日量を用いて達成された異常不随意運動の制御の程度及び初期量の忍容性を決定する工程;
d)異常不随意運動の制御の程度が、対象がテトラベナジンを受けていた時の制御と比べて同等であるか、又は不十分であり、初期量が忍容性である場合、デューテトラベナジンの日量をその後の日量に対して6mg/日以上ずつ上方に増加させる工程;
e)1週間後、場合により、異常不随意運動が減少し、量が忍容性であるという条件で、工程c)及び工程d)を反復する工程;並びに
f)場合により、その後の量が忍容性でない場合、日量をその後の日量に対して6mg/日ずつ下方に減少させる工程
を含む、異常不随意運動の制御のためのテトラベナジンの既存の日量を受けている対象を、テトラベナジンからデューテトラベナジンに移行させることにより異常不随意運動を処置するのに使用するためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項11】
前記異常不随意運動が、運動障害に関連し、又は運動障害によって引き起こされる、請求項10に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項12】
運動障害が、ハンチントン病であり、異常不随意運動が、ハンチントン病と関連する舞踏病である、請求項10又は11に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項13】
忍容性が、抑鬱、不安、不眠、眠気、疲労、目眩、不穏、焦燥、易刺激性、静座不能、遅発性ジスキネジー、嚥下、パーキンソニズム、嘔吐及び悪心の1つ又は複数の対象レベルの評価によって決定される、請求項10~12のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項14】
異常不随意運動の制御の程度が十分であり、デューテトラベナジンの日量が忍容性となるまで、工程c)及び工程d)を反復する、請求項10~13のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項15】
デューテトラベナジンの日量は、1用量又は2用量で投与される、請求項10~14のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項16】
デューテトラベナジンの初期日量は、1用量で投与される、請求項10~14のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項17】
デューテトラベナジンの初期日量は、第1の用量と第2の用量とからなる2用量で投与され、
第1の用量は6mgであり、第2の用量は6mgである;
第1の用量は9mgであり、第2の用量は9mgである;
第1の用量は12mgであり、第2の用量は12mgである;
第1の用量は15mgであり、第2の用量は15mgである;
第1の用量は18mgであり、第2の用量は18mgである;
第1の用量は21mgであり、第2の用量は21mgである;
第1の用量は24mgであり、第2の用量は24mgである;
第1の用量は27mgであり、第2の用量は27mgである;
第1の用量は30mgであり、第2の用量は30mgである;
第1の用量は33mgであり、第2の用量は33mgである;
第1の用量は36mgであり、第2の用量は36mgである;又は
第1の用量は39mgであり、第2の用量は39mgである、請求項10~14のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項18】
テトラベナジンの既存の総日量は、12.5mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、6mgである;
テトラベナジンの既存の総日量は、25mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、12mgである;
テトラベナジンの既存の総日量は、37.5mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、18mgである;
テトラベナジンの既存の総日量は、50mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、24mgである;
テトラベナジンの既存の総日量は、62.5mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、30mgである;
テトラベナジンの既存の総日量は、75mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、36mgである;
テトラベナジンの既存の総日量は、87.5mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、42mgである;又は
テトラベナジンの既存の総日量は、100mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、48mgである、
請求項10に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項19】
投与されるデューテトラベナジンの日量は、強力なCYP2D6阻害剤を同時に受けている対象については、48mg以下であるか、又は36mg以下である、請求項10~18のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項20】
前記異常不随意運動が、ハンチントン病と関連する舞踏病であり、前記舞踏病が、統一ハンチントン病評価尺度(UHDRS)の総合最大舞踏病(Total Maximal Chorea(TMC))スコアによる測定で少なくとも0.5ポイント低下する、又は、
前記異常不随意運動が、舞踏病であり、舞踏病が、少なくとも10%、少なくとも15%、若しくは少なくとも20%軽減される、請求項10~19のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項21】
前記処置は、対象のQTcF値を有意に変化させない、請求項10~20のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項22】
異常不随意運動を処置が、以下の1つまたは複数:
舞踏病を少なくとも10%軽減する;
運動機能を少なくとも10%改善する;
身体機能を改善する;
嚥下を改善する;
平衡を改善する;
遅発性ジスキネジーを有する対象における異常不随意運動を軽減する;
運動性チックを軽減する;
声帯/発音性チックを軽減する;
運動性及び声帯/発音性チックを軽減する;
トゥレット症候群を有する対象の障害を軽減する;
トゥレット症候群の重症度を低下させる;
トゥレット症候群を有する対象における患者の重症度の全般的印象を低下させる;並びに
対象の、患者の変化の臨床上の全般的印象を大幅に、又は非常に大幅に改善する
を達成するのに十分な期間にわたって、治療上有効量のデューテトラベナジンを対象に投与することにより、運動障害を有するヒト対象における異常不随意運動の制御を維持することを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項23】
前記処置が、運動障害を有するヒト対象における異常不随意運動の制御の維持をもたらす、請求項1~2のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項24】
異常不随意運動の制御の程度が十分であり、デューテトラベナジンの日量が忍容性である場合、対象に維持用量を投与する、請求項1~2のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項25】
前記運動障害はハンチントン病、遅発性ジスキネジー、及びトゥレット症候群から選択される、請求項2又は11に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項26】
前記異常不随意運動は、舞踏病、ハンチントン病と関連する舞踏病、静座不能、ジスキネジー、振戦、チック、及びトゥレット症候群と関連するチックから選択される、請求項2又は11に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項27】
デューテトラベナジンの日量は、24~48mg若しくは36~48mgである、又はデューテトラベナジンの日量は、6mg、12mg、18mg、24mg、30mg、36mg、42mg、及び48mgから選択される、請求項4又は15に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項28】
デューテトラベナジンの日量の増加が、6mg又は12mgである、請求項1~27のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項29】
デューテトラベナジンの日量の増加が、6mgである、請求項1~27のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項30】
デューテトラベナジンの日量の増加が、12mgである、請求項1~27のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【請求項31】
患者の状態の改善が生じたら、維持用量を投与する、請求項1~30のいずれか一項に記載の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年3月6日に出願された米国仮特許出願第62/129,616号、2015年6月12日に出願された米国仮特許出願第62/175,112号、及び2015年6月15日に出願された米国仮特許出願第62/180,012号の優先権の利益を主張し、それぞれの開示はあたかもその全体が本明細書に記載されたかのように参照により本明細書に組込まれる。
【0002】
重水素置換されたベンゾキノリン化合物のための新規投薬レジメン、並びに異常不随意運動障害、異常筋肉活動、運動障害、及び関連状態の処置のための方法が本明細書に開示される。
【背景技術】
【0003】
運動障害は、運動の速度、流暢さ、質、及び容易さに影響する神経学的状態である。運動障害を、2つの基本的カテゴリー:運動の障害又は過剰の運動(それぞれ、「ジスキネジー」及び「運動過剰症」又は「過剰運動障害」と呼ばれる)を特徴とするもの、並びに運動の遅さ、又は運動の欠如(「運動機能低下」、「動作緩慢」又は「無動症」と呼ばれる)を特徴とするものに分類することができる。「過剰」運動障害の例は、ハンチントン病(HD)と関連するものなどの舞踏病であるが、パーキンソン病(PD)は、遅く、意図的な運動、又は更には定位置での麻痺を特徴とすることが多いため、「運動機能低下」と分類することができる。過剰運動障害と運動機能低下障害は両方とも、対象の生活の質に重度に影響し、日常の仕事を困難にし得る。更に、運動障害は、対象の肉体的な痛みを引き起こし、事故の確率を増大させ得る。
【0004】
例えば、舞踏症は、全ての筋肉群に影響し、ある体領域から別の体領域に無作為に流動し得る異常な、不随意の、突然の運動である;多くの異常不随意運動と同様、それは運動障害と代替的に呼ばれることが多い。舞踏病は、ハンチントン病の特質である。米国では、見積もりで30,000人がハンチントン病を有する。HDを有する90%もの患者が舞踏病を経験し、それは、これらの患者の約70%において中等度から重度である。その日常機能の有意な阻害及び患者に対する傷害のリスクの増大を考慮すれば、それは重篤な状態であると医師によって考えられている。その初期段階では、舞踏病は、話すこと、書くこと、並びに食事、着衣、及び入浴などの日常生活の活動の障害に寄与し得る。その後期段階では、舞踏病は、転倒又は物体への打ちつけに由来する重篤な傷害のリスクの増大と共に、歩行不安定及び姿勢制御不良を引き起こし得る。舞踏病及びパーキンソン病の重症度は、HDを有する後期段階の患者における転倒と独立に関係することが示されている。嚥下障害は、HDの構成要素であり、反復性誤嚥性肺炎、体重低下、及び行動障害をもたらし得る。
【0005】
米国神経学会の指針は、「ハンチントン病は、依然として神経保護及び症候処置を必要とする破壊的な神経変性疾患である」及び「舞踏病の処置は、ハンチントン病管理の重要な部分である」と指摘する。52人の国際専門家の調査は、彼らが以下の理由:88%の肉体的傷害、81%の平衡感覚障害、77%の社会的孤立、及び77%の仕事の支障から、舞踏病を処置すると示した。この指針にも拘わらず、舞踏病を有するHD患者は処置されないことが多い。
【0006】
HDと関連する舞踏病の処置のための米国で唯一のFDAに認可された療法は、VMAT2の阻害剤であるテトラベナジン(XENAZINE(登録商標))である。テトラベナジンは、身体運動を調節するニューロンにおける、ドーパミンなどのモノアミンのシナプス前濃度を低下させる。Lundbeckによる2013年11月のプレゼンテーションによれば、米国では約30,000人がHDに罹患し、約200,000人の個人が遺伝子を有し、HDを発症するリスクを有し得るが、この療法を受けたのは約4,000人の患者に過ぎない。HDの舞踏病を有する患者の実質的な大部分は、テトラベナジンによる処置を受けていない。更に、2011年の医師とのインタビューに基づけば、HDの舞踏病以外の過剰運動障害におけるテトラベナジンの使用は、その使用の最大で半分を占め得ると見積もられ、これはわずか2,000人のHD患者がテトラベナジンを受けていることを示している。更に、Baylor College of Medicineからの報告によれば、2006年~2009年にテトラベナジンで処置された349人の過剰運動障害患者のうちのわずか78人が舞踏病を有する患者であることが示された。明らかに、運動障害のための有効な処置が実質的に必要であり、利用可能な療法によっては部分的にしかこの必要は満たされていない。
【0007】
舞踏病に加えて、全体的な運動症状における障害も、日常機能を重度に破壊する。国立神経疾患・脳卒中研究所は、総合運動スコア(Total Motor Score(TMS))における統一ハンチントン病評価尺度(Unified Huntington's Disease Rating Scale(UHDRS))の運動機能評価を、HDの評価におけるコアアウトカムであると考えている。米国のHD患者における全ての現在採用している大規模第2b/3相無作為化臨床試験は、その主要評価項目としてUHDRS-TMSを用いている。UHDRS-TMSと、睡眠、休息、食事、仕事、娯楽及び過去時に関する機能的尺度、歩行、可動性、ボディケア及び運動、社会的相互作用、コミュニケーション、物理的次元、及び心理社会的次元との有意な相関が、HD患者において示されている。UHDRS-TMSスコアが高いほど、仕事を実行する、財政を管理する、安全に運転する、子供を管理する、及びボランティアを行う可能性が統計的に低い。TMSが1ポイント悪化するごとに、これらのある特定の仕事を完了することができる可能性が有意に5%~10%低下した。UHDRS-TMSは、36項目短文式健康調査(SF-36)を含む尺度に基づく機能的障害の独立予測因子である。
【0008】
また、米国では、見積もりで500,000人の患者が運動障害である遅発性ジスキネジーを有し、異常筋肉活動を経験する。遅発性ジスキネジーは、典型的には、精神状態を処置するために用いられる、ドーパミン受容体遮断剤などの、神経弛緩薬などのある特定の薬物、並びに様々な胃腸障害を処置するために用いられる、メトクロプラミドなどの薬物により誘導され得る急速な、反復的な、型通りの運動として現れる過剰運動障害である。これらの患者は、大部分は精神科医及び運動障害の神経科医によって管理され、遅発性ジスキネジーのためのFDAに認可された処置は存在しない。
【0009】
また、米国では、見積もりで100,000人の子供がトゥレット症候群と関連するチック(異常不随意運動又は発声)を有し、見積もりで27%が中等度から重度と分類されている。この障害のピーク重症度は約12歳であり、見積もりで13%~22%の罹患した子供が成人のようにチックのための薬剤を摂取し続けている。30年以上、トゥレット症候群と関連するチックを処置するために導入された新規薬物はわずかである; 2つの認可された神経弛緩薬及び1つの最近認可されたドーパミンアンタゴニストは、不十分な点があることが特定され得る。例えば、これらの処置は、他の有害事象のうちでも、遅発性ジスキネジーなどの永続的な神経学的欠損を引き起こすリスクを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第8,524,733号
【文献】米国特許出願公開第20100130480号
【文献】米国特許出願公開第20120003330号
【文献】PCT/US2014/066740
【文献】WO2008058261
【文献】WO2011153157
【文献】米国特許第8,039,627号
【文献】WO2014120654
【文献】米国特許出願第14/030,322号
【文献】WO 2005077946
【文献】WO 2008/058261
【文献】EP 1716145
【文献】米国特許第2,830,993号
【文献】米国特許第3,045,021号
【文献】WO 2007130365
【文献】WO 2008058261
【文献】米国特許出願公開第2014/0336386号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Savaniら、Neurology 2007、68(10)、797頁
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【文献】Boldtら、Synth. Commun.、2009、(39)、3574~3585頁
【文献】Rishelら、J. Org. Chem.、2009、(74)、4001~4004頁
【文献】DaSilvaら、Appl. Radiat. Isot.、1993、44(4)、673~676頁
【文献】Poppら、J. Pharm. Sci.、1978、67(6)、871~873頁
【文献】Ivanovら、Heterocycles 2001、55(8)、1569~1572頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、異常筋肉活動、異常不随意運動及び他の関連障害の処置のための改良された組成物、投薬レジメン、及び方法が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書に開示されるのは、対象における異常不随意運動を処置する方法であって、
a)対象に、少なくとも約6mg/日を含む重水素置換されたテトラベナジンの初期日量を投与する工程;
b)約1週間後、初期日量を用いて達成された異常不随意運動の制御の程度(単に「制御度」ともいう)及び初期日量の忍容性を決定する工程;
c)異常不随意運動の制御の程度が不十分であり、初期日量が忍容性である場合、重水素置換されたテトラベナジンの日量をその後の日量に対して6mg/日以上ずつ上方に増加させる工程;
d)場合により、異常不随意運動の制御の程度が十分となり、重水素置換されたテトラベナジンの日量が忍容性となるまで、工程b)及び工程c)を反復する工程;並びに
e)その後の量が不忍容性である場合、日量をその後の日量に対して6mg/日以上ずつ下方に減少させる工程
を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】First-HD試験からのデューテトラベナジン又はプラセボを摂取する患者において観察された平均舞踏症スコアの変化を示す図である。
図2】デューテトラベナジン及びプラセボに関する経時的な嚥下障害におけるベースラインからの平均変化(質問票により決定される)を提示する図であり、デューテトラベナジン処置に関して嚥下の有意な改善を示している。
図3】First-HD試験からのデューテトラベナジン及びプラセボに関する経時的な体重(kg)におけるベースラインからの平均変化を提示する図である。
図4図4Aは、First-HD試験からの、プラセボ群と比較したデューテトラベナジン処置された対象に関する平均総合行動スコアを示す図である。 図4Bは、First-HD試験からの、プラセボ群と比較したデューテトラベナジン処置された対象に関する不安を示す図である。 図4Cは、First-HD試験からの、プラセボ群と比較したデューテトラベナジン処置された対象に関する強迫行動を示す図である。
図5】ARC-HD試験からの、テトラベナジンからデューテトラベナジンに切り替えた患者において観察された平均舞踏病スコアの変化、及び舞踏病スコアに対応するテトラベナジン又はデューテトラベナジンの平均日用量を示す図である。図面中、第8週での星印(*)は、p=0.0252を示す。
図6】ARC-HD試験からの、テトラベナジンからデューテトラベナジンに切り替えた患者において観察された平均総合運動スコアの変化を示す図である。
図7】ARC-HD試験からの、テトラベナジンからデューテトラベナジンに切り替えた患者における経時的な嚥下障害のベースラインからの平均変化(質問票により決定される)を提示する図であり、デューテトラベナジン処置に関して嚥下の改善に向かう傾向を示している。
図8】患者の変化の全般的印象(Patient Global Impression of Change(PGIC))及び変化の臨床上の全般的印象(Clinical Global Impression of Change(CGIC))の7ポイントのLikert尺度上で大幅に改善した、又は非常に大幅に改善した処置された対象のパーセントとしての遅発性ジスキネジー試験からの遅発性ジスキネジー患者における非盲検長期データを示す図である。
図9】ベースラインから第8週での処置終了及び第9週でのウォッシュアウトまでの、トゥレット症候群パイロット試験において処置された対象における運動、声帯、及び組み合わせた総合チックスコアの平均変化を示す図である。上の線(三角)は声帯チックスコアを表す;中央の線は運動(四角)チックスコアを表し、下の線(菱形)は総合(運動と声帯の組合せ)チックスコアを表す。デューテトラベナジンを用いる処置は、運動チックと声帯チックの両方を低下(改善)させた。
図10】ベースラインから第8週までの、トゥレット症候群パイロット試験において処置された対象におけるトゥレット症候群の臨床上の全般的印象(Tourette Syndrome Clinical Global Impression)変化を示す図である。改善は、TS-CGIスコアの減少により測定される。
図11】第8週での、トゥレット症候群パイロット試験において処置された対象におけるトゥレット症候群患者の変化の全般的印象を示す図である。改善は、TS-PGICスコアの正の増加により測定され、例えば、1は最小限の改善を示し、2は大幅な改善を示し、3は非常に大幅な改善を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に開示されるのは、対象における異常不随意運動を処置する方法であって、
a)対象に、少なくとも約6mg/日を含む重水素置換されたテトラベナジンの初期日量を投与する工程;
b)約1週間後、初期日量を用いて達成された異常不随意運動の制御の程度(単に「制御度」ともいう)及び初期日量の忍容性を決定する工程;
c)異常不随意運動の制御の程度が不十分であり、初期日量が忍容性である場合、重水素置換されたテトラベナジンの日量をその後の日量に対して6mg/日以上ずつ上方に増加させる工程;
d)場合により、異常不随意運動の制御の程度が十分となり、重水素置換されたテトラベナジンの日量が忍容性となるまで、工程b)及び工程c)を反復する工程;並びに
e)その後の量が不忍容性である場合、日量をその後の日量に対して6mg/日以上ずつ下方に減少させる工程
を含む方法である。
【0016】
また、対象における異常不随意運動を処置する方法であって、
a)対象に、少なくとも約6mg/日のデューテトラベナジンの初期日量を投与する工程;
b)約1週間後、初期日量を用いて達成された異常不随意運動の制御の程度及び初期日量の忍容性を決定する工程;
c)異常不随意運動が軽減されず、初期日量が忍容性である場合、デューテトラベナジンの日量をその後の日量に対して6mg/日ずつ上方に増加させる工程;
d)約1週間後、場合により、異常不随意運動が軽減され、デューテトラベナジンの日量が忍容性であるという条件で、工程b)及び工程c)を反復する工程;並びに
e)その後の量が忍容されない場合、日量をその後の日量に対して少なくとも6mg/日ずつ下方に減少させる工程
を含む方法も開示される。
【0017】
ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、運動障害によって引き起こされる。
【0018】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、静座不能、無動症、運動失調、アテトーシス、バリスム、動作緩慢、脳性麻痺、舞踏病、大脳皮質基底核変性症、ジスキネジー(例えば、発作性)、眼瞼痙攣、書痙(手ジストニア)、喉頭ジストニア(痙攣性発声障害)、及び顎口腔ジストニアを含むジストニア(全身性、分節性、又は限局性)、本態性振戦、ゲニオスパスム(geniospasm)、遺伝性痙性対麻痺、ハンチントン病、多系統萎縮症(シャイ・ドレーガー症候群)、ミオクローヌス、パーキンソン病、パーキンソン病レボドパ誘導性ジスキネジー、パーキンソニズム、進行性核上麻痺、むずむず脚症候群、レット症候群、痙性斜頸(頸部ジストニア)、脳卒中に起因する痙攣、脳性麻痺、多発性硬化症、脊髄又は脳傷害、常同運動障害、常同症、シデナム舞踏病、共同運動、遅発性ジスキネジー、チック、トゥレット症候群、及びウィルソン病から選択される。
【0019】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、過剰運動障害である。
【0020】
ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、舞踏病、静座不能、ジスキネジー、振戦、及びチックから選択される。
【0021】
ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、舞踏病である。ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、ハンチントン病と関連する舞踏病である。ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、チックである。ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、トゥレット症候群と関連するチックである。
【0022】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー、トゥレット症候群と関連するチック、ジストニア、及びパーキンソン病レボドパ誘導性ジスキネジーから選択される。
【0023】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー、及びトゥレット症候群から選択される。
【0024】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病である。
【0025】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病と関連する舞踏病である。
【0026】
ある特定の実施形態においては、初期又はその後の日量の減少又は停止の非存在は、その日量が忍容性であることを示す。ある特定の実施形態においては、忍容性は、抑鬱、不安、不眠、眠気、疲労、目眩、不穏、焦燥(「アジテーション(agitation)」ともいう)、易刺激性、静座不能、遅発性ジスキネジー、嚥下、パーキンソニズム、嘔吐及び悪心の1つ又は複数の対象レベルの評価によって決定される。ある特定の実施形態においては、上述の1つ又は複数が生じる場合、用量は忍容されない。ある特定の実施形態においては、眠気又は目眩が生じる場合、用量は忍容されない。
【0027】
ある特定の実施形態においては、重水素置換されたテトラベナジンは、デューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンは、プラス異性型のデューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のデューテトラベナジンは、アルファ異性体である。ある特定の実施形態においては、VMAT2阻害剤は、プラス異性型のテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のテトラベナジンは、アルファ異性体である。
【0028】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、異常不随意運動の十分な制御を提供するテトラベナジンの既存の総日量の約30%~約70%である。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、異常不随意運動の十分な制御を提供するテトラベナジンの既存の総日量の約40%~約60%である。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、異常不随意運動の十分な制御を提供するテトラベナジンの既存の総日量の約45%~約55%である。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、異常不随意運動の十分な制御を提供するテトラベナジンの既存の総日量の約30%~約50%である。
【0029】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、1用量又は2用量で投与される。
【0030】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、約48mg、約54mg、約60mg、約66mg、約72mg、及び約78mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。
【0031】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、第1の用量と第2の用量とからなる2用量で投与される。
【0032】
ある特定の実施形態においては、
第1の用量は約6mgであり、第2の用量は約6mgである;
第1の用量は約9mgであり、第2の用量は約9mgである;
第1の用量は約12mgであり、第2の用量は約12mgである;
第1の用量は約15mgであり、第2の用量は約15mgである;
第1の用量は約18mgであり、第2の用量は約18mgである;
第1の用量は約21mgであり、第2の用量は約21mgである;
第1の用量は約24mgであり、第2の用量は約24mgである;
第1の用量は約27mgであり、第2の用量は約27mgである;
第1の用量は約30mgであり、第2の用量は約30mgである;
第1の用量は約33mgであり、第2の用量は約33mgである;
第1の用量は約36mgであり、第2の用量は約36mgである;及び
第1の用量は約39mgであり、第2の用量は約39mgである。
【0033】
ある特定の実施形態においては、
第1の用量は約6mgであり、第2の用量は約6mgである;
第1の用量は約9mgであり、第2の用量は約9mgである;
第1の用量は約12mgであり、第2の用量は約12mgである;
第1の用量は約15mgであり、第2の用量は約15mgである;
第1の用量は約18mgであり、第2の用量は約18mgである;
第1の用量は約21mgであり、第2の用量は約21mgである;及び
第1の用量は約24mgであり、第2の用量は約24mgである。
【0034】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg~約78mgである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、約48mg、約54mg、約60mg、約66mg、約72mg、及び約78mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。
【0035】
ある特定の実施形態においては、投与されるデューテトラベナジンの日量は、強力なCYP2D6阻害剤を同時に受けている対象については、約48mg以下であるか、又は約36mg以下である。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、フルオキセチン、パロキセチン、ブプロピオン、キニジン、シナカルセット、及びリトナビルから選択される。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、パロキセチン、フルオキセチン、及びブプロピオンから選択される。
【0036】
ある特定の実施形態においては、舞踏病制御の程度は、総合最大舞踏病(Total Maximal Chorea(TMC))スコア上での少なくとも0.5ポイントの低下によって改善される。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも1ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも1.5ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも2.0ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも2.5ポイントである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも8.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも10.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも12.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも12.7の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも14.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。
【0037】
ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも10%軽減される。ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも15%軽減される。ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも20%軽減される。
【0038】
ある特定の実施形態においては、運動機能が改善される。ある特定の実施形態においては、運動機能は、総合運動スコア(TMS)上での少なくとも1ポイントの低下によって改善される。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも2ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも3ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも4ポイントである。
【0039】
ある特定の実施形態においては、ジストニアが改善される。ある特定の実施形態においては、歩行が改善される。ある特定の実施形態においては、姿勢不安定が軽減される。ある特定の実施形態においては、処置は、パーキンソニズムの症状を軽減する。
【0040】
ある特定の実施形態においては、処置は、平衡を悪化させない。ある特定の実施形態においては、処置は平衡を改善する。
【0041】
ある特定の実施形態においては、処置は、身体機能を改善する。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、改善される。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、ベースラインから改善される。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、未処置の対象と比較して改善される。
【0042】
ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC尺度上で非常に大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、CGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、CGIC尺度上で非常に大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC及びCGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC及びCGIC尺度上で非常に大幅に改善される。
【0043】
ある特定の実施形態においては、処置は、嚥下を改善する。
【0044】
ある特定の実施形態においては、処置は、不眠、抑鬱、不安、焦燥、自殺念慮、静座不能、易刺激性、又は疲労の有意な増大を引き起こさない。
【0045】
ある特定の実施形態においては、処置は、パーキンソニズム又は嚥下障害の有意な症状を引き起こさない。
【0046】
ある特定の実施形態においては、処置は、QT間隔を有意に延長させない。ある特定の実施形態においては、処置は、QTcF値を有意に変化させない。ある特定の実施形態においては、QTcFの最大増加は5ms未満である。
【0047】
また、組合せが相互に排他的でないという条件で、上記の段落[0014]~[0045]中の任意の実施形態を、これらの実施形態のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる実施形態も提供される。本明細書で用いられる場合、一方が他方と重複することができないものと定義される場合、2つの実施形態は「相互に排他的」である。また、本明細書又は段落[0014]~[0045]中の上記実施形態のいずれかに記載される、対象における異常不随意運動を処置するためのデューテトラベナジンの使用も提供される。また、本明細書又は段落[0014]~[0045]中の上記実施形態のいずれかに記載される、対象における異常不随意運動を処置するための薬剤の製造におけるデューテトラベナジンの使用も提供される。また、本明細書又は段落[0014]~[0045]中の上記実施形態のいずれかに記載される、対象における異常不随意運動を処置するためのデューテトラベナジンを含む組成物も提供される。
【0048】
また、異常不随意運動の制御のためのテトラベナジンの既存の総日量を受けている対象を移行させる方法であって、
a)対象に、テトラベナジンの既存の総日量の約30%~約70%であり、少なくとも約6mg/日である重水素置換されたテトラベナジンの初期日量を投与する工程;
b)テトラベナジンの日量を同時に中止する工程;
c)場合により、約1週間後、重水素置換されたテトラベナジンの初期日量を用いて達成された異常不随意運動の制御の程度及び初期量の忍容性を決定する工程;
d)場合により、異常不随意運動の制御の程度が、対象がテトラベナジンを受けていた時の制御と同等であるか、又は不十分であり、初期量が忍容性である場合、日量をその後の日量に対して6mg/日以上ずつ上方に増加させる工程;
e)場合により、異常不随意運動の制御の程度が改善され、初期量が忍容性となるまで、工程c)及び工程d)を反復する工程;並びに
f)場合により、その後の量が不忍容性である場合、日量をその後の日量に対して6mg/日以上ずつ下方に減少させる工程
を含む方法も提供される。
【0049】
また、異常不随意運動の制御のためのテトラベナジンの既存の日量を受けている対象を、テトラベナジンからデューテトラベナジンに移行させる方法であって、
a)テトラベナジンの日量を中止する工程;
b)次の日、対象に、テトラベナジンの既存の日量の約30%~約70%であり、少なくとも約6mg/日である、デューテトラベナジンの初期日量を投与する工程;
c)約1週間後、重水素置換されたテトラベナジンの初期日量を用いて達成された異常不随意運動の制御の程度及び初期量の忍容性を決定する工程;
d)異常不随意運動の制御の程度が、対象がテトラベナジンを受けていた時の制御と同等であるか、又は不十分であり、初期量が忍容性である場合、日量をデューテトラベナジンのその後の日量に対して6mg/日ずつ上方に増加させる工程;
e)約1週間後、場合により、異常不随意運動が減少し、量が忍容性であるという条件で、工程c)及び工程d)を反復する工程;並びに
f)場合により、その後の量が忍容性でない場合、日量をその後の日量に対して6mg/日ずつ下方に減少させる工程
を含む方法も提供される。
【0050】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、テトラベナジンの既存の総日量の約40%~約60%であり、少なくとも約6mg/日である。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、テトラベナジンの既存の総日量の約45%~約55%であり、少なくとも約6mg/日である。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、テトラベナジンの既存の総日量の約30%~約50%であり、少なくとも約6mg/日である。
【0051】
ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、運動障害により引き起こされる。
【0052】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、静座不能、無動症、運動失調、アテトーシス、バリスム、動作緩慢、脳性麻痺、舞踏病、大脳皮質基底核変性症、ジスキネジー(例えば、発作性)、眼瞼痙攣、書痙(手ジストニア)、喉頭ジストニア(痙攣性発声障害)、及び顎口腔ジストニアを含むジストニア(全身性、分節性、又は限局性)、本態性振戦、ゲニオスパスム、遺伝性痙性対麻痺、ハンチントン病、多系統萎縮症(シャイ・ドレーガー症候群)、ミオクローヌス、パーキンソン病、パーキンソン病レボドパ誘導性ジスキネジー、パーキンソニズム、進行性核上麻痺、むずむず脚症候群、レット症候群、痙性斜頸(頸部ジストニア)、脳卒中に起因する痙攣、脳性麻痺、多発性硬化症、脊髄又は脳傷害、常同運動障害、常同症、シデナム舞踏病、共同運動、遅発性ジスキネジー、チック、トゥレット症候群、及びウィルソン病から選択される。
【0053】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、過剰運動障害である。
【0054】
ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、舞踏病、静座不能、ジスキネジー、振戦、及びチックから選択される。
【0055】
ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、舞踏病である。ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、ハンチントン病と関連する舞踏病である。ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、チックである。ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、トゥレット症候群と関連するチックである。
【0056】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー、トゥレット症候群と関連するチック、ジストニア、及びパーキンソン病レボドパ誘導性ジスキネジーから選択される。
【0057】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー、及びトゥレット症候群から選択される。
【0058】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病である。
【0059】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病と関連する舞踏病である。
【0060】
ある特定の実施形態においては、初期又はその後の日量の減少又は停止の非存在は、その日量が忍容性であることを示す。ある特定の実施形態においては、忍容性は、抑鬱、不安、不眠、眠気、疲労、目眩、不穏、焦燥、易刺激性、静座不能、遅発性ジスキネジー、嚥下、パーキンソニズム、嘔吐及び悪心の1つ又は複数の対象レベルの評価によって決定される。ある特定の実施形態においては、上述の1つ又は複数が生じる場合、用量は忍容されない。ある特定の実施形態においては、眠気又は目眩が生じる場合、用量は忍容されない。
【0061】
ある特定の実施形態においては、重水素置換されたテトラベナジンは、デューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンは、プラス異性型のデューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のデューテトラベナジンは、アルファ異性体である。ある特定の実施形態においては、VMAT2阻害剤は、プラス異性型のテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のテトラベナジンは、アルファ異性体である。
【0062】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、1用量又は2用量で投与される。
【0063】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、約48mg、約54mg、約60mg、約66mg、約72mg、及び約78mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg~約78mgである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、約48mg、約54mg、約60mg、約66mg、約72mg、及び約78mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。
【0064】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、第1の用量と第2の用量とからなる、2用量で投与される。
【0065】
ある特定の実施形態においては、
第1の用量は約6mgであり、第2の用量は約6mgである;
第1の用量は約9mgであり、第2の用量は約9mgである;
第1の用量は約12mgであり、第2の用量は約12mgである;
第1の用量は約15mgであり、第2の用量は約15mgである;
第1の用量は約18mgであり、第2の用量は約18mgである;
第1の用量は約21mgであり、第2の用量は約21mgである;
第1の用量は約24mgであり、第2の用量は約24mgである;
第1の用量は約27mgであり、第2の用量は約27mgである;
第1の用量は約30mgであり、第2の用量は約30mgである;
第1の用量は約33mgであり、第2の用量は約33mgである;
第1の用量は約36mgであり、第2の用量は約36mgである;及び
第1の用量は約39mgであり、第2の用量は約39mgである。
【0066】
ある特定の実施形態においては、
第1の用量は約6mgであり、第2の用量は約6mgである;
第1の用量は約9mgであり、第2の用量は約9mgである;
第1の用量は約12mgであり、第2の用量は約12mgである;
第1の用量は約15mgであり、第2の用量は約15mgである;
第1の用量は約18mgであり、第2の用量は約18mgである;
第1の用量は約21mgであり、第2の用量は約21mgである;及び
第1の用量は約24mgであり、第2の用量は約24mgである。
【0067】
ある特定の実施形態においては、
テトラベナジンの既存の総日量は、約12.5mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、約6mgである;
テトラベナジンの既存の総日量は、約25mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、約12mgである;
テトラベナジンの既存の総日量は、約37.5mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、約18mgである;
テトラベナジンの既存の総日量は、約50mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、約24mgである;
テトラベナジンの既存の総日量は、約62.5mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、約30mgである;
テトラベナジンの既存の総日量は、約75mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、約36mgである;
テトラベナジンの既存の総日量は、約87.5mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、約42mgである;又は
テトラベナジンの既存の総日量は、約100mgであり、デューテトラベナジンの初期日量は、約48mgである。
【0068】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg~約78mgである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、約48mg、約54mg、約60mg、約66mg、約72mg、及び約78mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。
【0069】
ある特定の実施形態においては、投与されるデューテトラベナジンの日量は、強力なCYP2D6阻害剤を同時に受けている対象について、約48mg以下であるか、又は約36mg以下である。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、フルオキセチン、パロキセチン、ブプロピオン、キニジン、シナカルセット、及びリトナビルから選択される。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、パロキセチン、フルオキセチン、及びブプロピオンから選択される。
【0070】
ある特定の実施形態においては、舞踏病の制御は、総合最大舞踏病(TMC)スコア上での少なくとも0.5ポイントの低下によって改善される。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも1ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも1.5ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも2.0ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも2.5ポイントである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも8.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも10.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも12.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも12.7の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも14.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。
【0071】
ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも10%軽減される。ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも15%軽減される。ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも20%軽減される。
【0072】
ある特定の実施形態においては、運動機能が改善される。
【0073】
ある特定の実施形態においては、運動機能は、総合運動スコア(TMS)上での少なくとも1ポイントの低下により改善される。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも2ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも3ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも4ポイントである。
【0074】
ある特定の実施形態においては、ジストニアが改善される。ある特定の実施形態においては、歩行が改善される。ある特定の実施形態においては、姿勢不安定が軽減される。ある特定の実施形態においては、処置は、パーキンソニズムの症状を軽減する。
【0075】
ある特定の実施形態においては、処置は、対象の平衡を悪化させない。ある特定の実施形態においては、処置は平衡を改善する。
【0076】
ある特定の実施形態においては、処置は、身体機能を改善する。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、改善される。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、ベースラインから改善される。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、未処置の対象と比較して改善される。
【0077】
ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC尺度上で非常に大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、CGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、CGIC尺度上で非常に大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC及びCGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC及びCGIC尺度上で非常に大幅に改善される。
【0078】
ある特定の実施形態においては、処置は、嚥下を改善する。
【0079】
ある特定の実施形態においては、処置は、不眠、抑鬱、不安、焦燥、自殺念慮、静座不能、易刺激性、又は疲労の有意な増大を引き起こさない。
【0080】
ある特定の実施形態においては、処置は、有意なパーキンソニズム又は嚥下障害を引き起こさない。
【0081】
ある特定の実施形態においては、処置は、QT間隔を有意に延長させない。ある特定の実施形態においては、処置は、QTcF値を有意に変化させない。ある特定の実施形態においては、QTcFの最大増加は5ms未満である。
【0082】
また、組合せが相互に排他的でないという条件で、上記の段落[0047]~[0080]中の任意の実施形態を、これらの実施形態のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる実施形態も提供される。また、本明細書又は段落[0047]~[0080]中の上記実施形態のいずれかに記載される、異常不随意運動の制御のために既存の総日量のテトラベナジンを受けている対象を移行させるためのデューテトラベナジンの使用も提供される。また、本明細書又は段落[0047]~[0080]中の上記実施形態のいずれかに記載される、異常不随意運動の制御のために既存の総日量のテトラベナジンを受けている対象を移行させるための薬剤の製造におけるデューテトラベナジンの使用も提供される。また、本明細書又は段落[0047]~[0080]中の上記実施形態のいずれかに記載される、異常不随意運動の制御のために既存の総日量のテトラベナジンを受けている対象を移行させる際の使用のためのデューテトラベナジンを含む組成物も提供される。
【0083】
また、VMAT2阻害剤の日量の投与を含む対象における運動障害を処置する方法であって、
舞踏病が、少なくとも10%軽減され、以下のいずれか1つ若しくは複数が当てはまる:
運動機能が少なくとも10%改善される;
対象の身体機能が改善される;
嚥下が改善される;
平衡が悪化しない;
処置が不眠、抑鬱、不安、焦燥、自殺念慮、静座不能、易刺激性、疲労、パーキンソニズム若しくは嚥下障害の有意な増大を引き起こさない;及び
QTcFの最大増加が5ms未満である;
又は、運動機能が少なくとも10%改善され、以下のいずれか1つ若しくは複数が当てはまる:
舞踏病が少なくとも10%軽減される;
対象の身体機能が改善される;
嚥下が改善される;
平衡が悪化しない;
処置が不眠、抑鬱、不安、焦燥、自殺念慮、静座不能、易刺激性、疲労、パーキンソニズム若しくは嚥下障害の有意な増大を引き起こさない;及び
QTcFの最大増加が5ms未満である、
方法も提供される。
【0084】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、静座不能、無動症、運動失調、アテトーシス、バリスム、動作緩慢、脳性麻痺、舞踏病、大脳皮質基底核変性症、ジスキネジー(例えば、発作性)、眼瞼痙攣、書痙(手ジストニア)、喉頭ジストニア(痙攣性発声障害)、及び顎口腔ジストニアを含むジストニア(全身性、分節性、又は限局性)、本態性振戦、ゲニオスパスム、遺伝性痙性対麻痺、ハンチントン病、多系統萎縮症(シャイ・ドレーガー症候群)、ミオクローヌス、パーキンソン病、パーキンソン病レボドパ誘導性ジスキネジー、パーキンソニズム、進行性核上麻痺、むずむず脚症候群、レット症候群、痙性斜頸(頸部ジストニア)、脳卒中に起因する痙攣、脳性麻痺、多発性硬化症、脊髄又は脳傷害、常同運動障害、常同症、シデナム舞踏病、共同運動、遅発性ジスキネジー、チック、トゥレット症候群、及びウィルソン病から選択される。
【0085】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、過剰運動障害である。
【0086】
ある特定の実施形態においては、ジストニアが改善される。ある特定の実施形態においては、歩行が改善される。ある特定の実施形態においては、姿勢不安定が軽減される。ある特定の実施形態においては、処置は、パーキンソニズムの症状を軽減する。
【0087】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー、及びトゥレット症候群と関連するチックから選択される。
【0088】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病である。ある特定の実施形態においては、運動障害は、舞踏病である。ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病と関連する舞踏病である。
【0089】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、チックである。ある特定の実施形態においては、運動障害は、トゥレット症候群と関連するチックである。
【0090】
ある特定の実施形態においては、VMAT2阻害剤は、重水素置換されたテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、重水素置換されたテトラベナジンは、デューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンは、プラス異性型のデューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のデューテトラベナジンは、アルファ異性体である。ある特定の実施形態においては、VMAT2阻害剤は、プラス異性型のテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のテトラベナジンは、アルファ異性体である。ある特定の実施形態においては、VMAT2阻害剤は、バルベナジンである。
【0091】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、1用量又は2用量で投与される。
【0092】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg~約78mgである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、約48mg、約54mg、約60mg、約66mg、約72mg、及び約78mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。
【0093】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、第1の用量と第2の用量とからなる、2用量で投与される。
【0094】
ある特定の実施形態においては、
第1の用量は約6mgであり、第2の用量は約6mgである;
第1の用量は約9mgであり、第2の用量は約9mgである;
第1の用量は約12mgであり、第2の用量は約12mgである;
第1の用量は約15mgであり、第2の用量は約15mgである;
第1の用量は約18mgであり、第2の用量は約18mgである;
第1の用量は約21mgであり、第2の用量は約21mgである;
第1の用量は約24mgであり、第2の用量は約24mgである;
第1の用量は約27mgであり、第2の用量は約27mgである;
第1の用量は約30mgであり、第2の用量は約30mgである;
第1の用量は約33mgであり、第2の用量は約33mgである;
第1の用量は約36mgであり、第2の用量は約36mgである;及び
第1の用量は約39mgであり、第2の用量は約39mgである。
【0095】
ある特定の実施形態においては、
第1の用量は約6mgであり、第2の用量は約6mgである;
第1の用量は約9mgであり、第2の用量は約9mgである;
第1の用量は約12mgであり、第2の用量は約12mgである;
第1の用量は約15mgであり、第2の用量は約15mgである;
第1の用量は約18mgであり、第2の用量は約18mgである;
第1の用量は約21mgであり、第2の用量は約21mgである;及び
第1の用量は約24mgであり、第2の用量は約24mgである。
【0096】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg~約78mgである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、約48mg、約54mg、約60mg、約66mg、約72mg、及び約78mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。
【0097】
ある特定の実施形態においては、投与されるデューテトラベナジンの日量は、強力なCYP2D6阻害剤を同時に受けている対象については、約48mg以下であるか、又は約36mg以下である。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、フルオキセチン、パロキセチン、ブプロピオン、キニジン、シナカルセット、及びリトナビルから選択される。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、パロキセチン、フルオキセチン、及びブプロピオンから選択される。
【0098】
ある特定の実施形態においては、舞踏病制御は、総合最大舞踏病(TMC)スコア上での少なくとも0.5ポイントの低下によって改善される。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも1ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも1.5ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも2.0ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも2.5ポイントである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも8.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも10.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも12.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも12.7の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも14.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。
【0099】
ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも10%軽減される。ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも15%軽減される。ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも20%軽減される。
【0100】
ある特定の実施形態においては、運動機能が改善される。
【0101】
ある特定の実施形態においては、運動機能は、総合運動スコア(TMS)上での少なくとも1ポイントの低下によって改善される。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも2ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも3ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも4ポイントである。
【0102】
ある特定の実施形態においては、ジストニアが改善される。ある特定の実施形態においては、歩行が改善される。ある特定の実施形態においては、姿勢不安定が改善される。ある特定の実施形態においては、処置は、パーキンソニズムの症状を軽減する。
【0103】
ある特定の実施形態においては、処置は、対象の平衡を悪化させない。ある特定の実施形態においては、処置は平衡を改善する。
【0104】
ある特定の実施形態においては、処置は、身体機能を改善する。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、改善される。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、ベースラインから改善される。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、未処置の対象と比較して改善される。
【0105】
ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC尺度上で非常に大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、CGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、CGIC尺度上で非常に大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC及びCGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC及びCGIC尺度上で非常に大幅に改善される。
【0106】
ある特定の実施形態においては、処置は、嚥下を改善する。
【0107】
ある特定の実施形態においては、処置は、不眠、抑鬱、不安、焦燥、自殺念慮、静座不能、易刺激性、又は疲労の有意な増大を引き起こさない。
【0108】
ある特定の実施形態においては、処置は、有意なパーキンソニズム又は嚥下障害を引き起こさない。
【0109】
ある特定の実施形態においては、処置は、QT間隔を有意に延長させない。ある特定の実施形態においては、処置は、QTcF値を有意に変化させない。ある特定の実施形態においては、QTcFの最大増加は5ms未満である。
【0110】
また、段落[0082]~[0108]中の上記実施形態のいずれかに記載された実施形態であって、
舞踏病が、少なくとも10%軽減され、以下のいずれか2つ以上が当てはまる:
運動機能が少なくとも10%改善される;
対象の身体機能が改善される;
嚥下が改善される;
平衡が悪化しない;
処置が不眠、抑鬱、不安、焦燥、自殺念慮、静座不能、易刺激性、疲労、パーキンソニズム若しくは嚥下障害の有意な増大を引き起こさない;及び
QTcFの最大増加が5ms未満である;
又は、運動機能が少なくとも10%改善され、以下のいずれか2つ以上が当てはまる:
舞踏病が少なくとも10%軽減される;
対象の身体機能が改善される;
嚥下が改善される;
平衡が悪化しない;
処置が不眠、抑鬱、不安、焦燥、自殺念慮、静座不能、易刺激性、疲労、パーキンソニズム若しくは嚥下障害の有意な増大を引き起こさない;及び
QTcFの最大増加が5ms未満である、
実施形態も提供される。
【0111】
また、段落[0082]~[0108]中の上記実施形態のいずれかに記載された実施形態であって、
舞踏病が、少なくとも10%軽減され、以下のいずれか3つ以上が当てはまる:
運動機能が少なくとも10%改善される;
対象の身体機能が改善される;
嚥下が改善される;
平衡が悪化しない;
処置が不眠、抑鬱、不安、焦燥、自殺念慮、静座不能、易刺激性、疲労、パーキンソニズム若しくは嚥下障害の有意な増大を引き起こさない;及び
QTcFの最大増加が5ms未満である;
又は、運動機能が少なくとも10%改善され、以下のいずれか3つ以上が当てはまる:
舞踏病が少なくとも10%軽減される;
対象の身体機能が改善される;
嚥下が改善される;
平衡が悪化しない;
処置が不眠、抑鬱、不安、焦燥、自殺念慮、静座不能、易刺激性、疲労、パーキンソニズム若しくは嚥下障害の有意な増大を引き起こさない;及び
QTcFの最大増加が5ms未満である、
実施形態も提供される。
【0112】
また、組合せが相互に排他的でないという条件で、上記の段落[0082]~[0110]中の任意の実施形態を、これらの実施形態のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる実施形態も提供される。また、本明細書又は段落[0082]~[0110]中の上記実施形態のいずれかに記載される、対象における運動障害を処置するためのVMAT2阻害剤の使用も提供される。また、本明細書又は段落[0082]~[0110]中の上記実施形態のいずれかに記載される、対象における運動障害を処置するための薬剤の製造におけるVMAT2阻害剤の使用も提供される。また、本明細書又は段落[0082]~[0110]中の上記実施形態のいずれかに記載される、対象における運動障害を処置する際に使用するためのVMAT2阻害剤を含む組成物も提供される。
【0113】
また、対象における異常不随意運動を処置する方法であって、
a)対象の異常不随意運動を十分に軽減する;及び
b)対象の症状である不安、嚥下、体重、易刺激性、全体的行動、及び強迫行動のうちの1つ又は複数を改善する
様式で、VMAT2阻害剤の初期日量を対象に投与する工程を含む方法も提供される。
【0114】
更なる実施形態においては、方法は、
c)約1週間後、初期日量を用いて達成された異常不随意運動の制御の程度及び初期日量の忍容性を決定する工程;
d)異常不随意運動の制御の程度が不十分であり、初期日量が忍容性である場合、重水素置換されたテトラベナジンの日量をその後の日量に対して6mg/日以上ずつ上方に増加させる工程;
e)場合により、異常不随意運動の制御の程度が十分となり、重水素置換されたテトラベナジンの日量が忍容性となるまで、工程b)及び工程c)を反復する工程;並びに
f)その後の量が不忍容性である場合、日量をその後の日量に対して6mg/日以上ずつ下方に減少させる工程
を更に含む。
【0115】
また、対象における異常不随意運動を処置する方法であって、
a)対象の異常不随意運動を十分に軽減する;及び
b)対象の症状である抑鬱、不眠、眠気、疲労、目眩、不穏、焦燥、静座不能、パーキンソニズム、悪心、不安、嚥下障害、体重増加、易刺激性、及び強迫行動のうちの1つ又は複数を改善する、
デューテトラベナジンの日量を対象に投与する工程を含む方法も提供される。
【0116】
ある特定の実施形態においては、方法は、
c)処置の約1週間後、デューテトラベナジンの日量(初期日量)を用いて達成された異常不随意運動の制御の程度及び初期日量の忍容性を決定する工程;
d)異常不随意運動が軽減されず、初期日量が忍容される場合、重水素置換されたテトラベナジンの日量をその後の日量に対して少なくとも6mg/日ずつ上方に増加させる工程;
e)1週間後、場合により、異常不随意運動が軽減され、重水素置換されたテトラベナジンの日量が忍容されるという条件で、工程b)及び工程c)を反復する工程;並びに
f)その後の量が忍容されない場合、日量をその後の日量に対して6mg/日ずつ下方に減少させる工程
を更に含む。
【0117】
ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、運動障害により引き起こされる。
【0118】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病と関連する舞踏病、遅発性ジスキネジー、トゥレット症候群と関連するチック、ジストニア、及びパーキンソン病レボドパ誘導性ジスキネジーから選択される。
【0119】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病と関連する舞踏病、遅発性ジスキネジー、及びトゥレット症候群と関連するチックから選択される。
【0120】
ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病と関連する舞踏病である。
【0121】
ある特定の実施形態においては、異常筋肉活動は、チックである。ある特定の実施形態においては、異常筋肉活動は、トゥレット症候群と関連するチックである。
【0122】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、対象の症状である不安、嚥下、体重、易刺激性、全体的行動、及び強迫行動のうちの1つ又は複数を改善する。ある特定の実施形態においては、運動障害は、ハンチントン病と関連する舞踏病であり、デューテトラベナジンの日量は、対象の症状である抑鬱、不眠、眠気、疲労、目眩、不穏、焦燥、静座不能、パーキンソニズム、悪心、不安、嚥下障害、体重増加、易刺激性、及び強迫行動のうちの1つ又は複数を改善する。ある特定の実施形態においては、運動障害は、遅発性ジスキネジー及びトゥレット症候群から選択され、デューテトラベナジンの日量は、対象の症状である抑鬱、不眠、眠気、疲労、目眩、不穏、焦燥、静座不能、パーキンソニズム、悪心、不安、嚥下障害、易刺激性、及び強迫行動のうちの1つ又は複数を改善する。
【0123】
ある特定の実施形態においては、初期又はその後の日量の減少又は停止の非存在は、その日量が忍容性であることを示す。ある特定の実施形態においては、忍容性は、抑鬱、不安、不眠、眠気、疲労、目眩、不穏、焦燥、易刺激性、静座不能、遅発性ジスキネジー、嚥下、パーキンソニズム、嘔吐及び悪心の1つ又は複数の対象レベルの評価によって決定される。ある特定の実施形態においては、上述の1つ又は複数が生じる場合、用量は忍容されない。ある特定の実施形態においては、眠気又は目眩が生じる場合、用量は忍容されない。
【0124】
ある特定の実施形態においては、VMAT2阻害剤は、重水素置換されたテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、重水素置換されたテトラベナジンは、デューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンは、プラス異性型のデューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のデューテトラベナジンは、アルファ異性体である。ある特定の実施形態においては、VMAT2阻害剤は、プラス異性型のテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のテトラベナジンは、アルファ異性体である。ある特定の実施形態においては、VMAT2阻害剤は、バルベナジンである。
【0125】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、1用量又は2用量で投与される。
【0126】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、約48mg、約54mg、約60mg、約66mg、約72mg、及び約78mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。
【0127】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの初期日量は、第1の用量と第2の用量とからなる、2用量で投与される。
【0128】
ある特定の実施形態においては、
第1の用量は約6mgであり、第2の用量は約6mgである;
第1の用量は約9mgであり、第2の用量は約9mgである;
第1の用量は約12mgであり、第2の用量は約12mgである;
第1の用量は約15mgであり、第2の用量は約15mgである;
第1の用量は約18mgであり、第2の用量は約18mgである;
第1の用量は約21mgであり、第2の用量は約21mgである;
第1の用量は約24mgであり、第2の用量は約24mgである;
第1の用量は約27mgであり、第2の用量は約27mgである;
第1の用量は約30mgであり、第2の用量は約30mgである;
第1の用量は約33mgであり、第2の用量は約33mgである;
第1の用量は約36mgであり、第2の用量は約36mgである;及び
第1の用量は約39mgであり、第2の用量は約39mgである。
【0129】
ある特定の実施形態においては、
第1の用量は約6mgであり、第2の用量は約6mgである;
第1の用量は約9mgであり、第2の用量は約9mgである;
第1の用量は約12mgであり、第2の用量は約12mgである;
第1の用量は約15mgであり、第2の用量は約15mgである;
第1の用量は約18mgであり、第2の用量は約18mgである;
第1の用量は約21mgであり、第2の用量は約21mgである;及び
第1の用量は約24mgであり、第2の用量は約24mgである。
【0130】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg~約78mgである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、約48mg、約54mg、約60mg、約66mg、約72mg、及び約78mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。
【0131】
ある特定の実施形態においては、投与されるデューテトラベナジンの日量は、強力なCYP2D6阻害剤を同時に受けている対象については、約48mg以下であるか、又は約36mg以下である。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、フルオキセチン、パロキセチン、ブプロピオン、キニジン、シナカルセット、及びリトナビルから選択される。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、パロキセチン、フルオキセチン、及びブプロピオンから選択される。
【0132】
ある特定の実施形態においては、舞踏病制御は、総合最大舞踏病(TMC)スコア上での少なくとも0.5ポイントの低下によって改善される。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも1ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも1.5ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも2.0ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも2.5ポイントである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも8.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも10.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも12.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも12.7の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも14.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。
【0133】
ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも10%軽減される。ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも15%軽減される。ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも20%軽減される。
【0134】
ある特定の実施形態においては、運動機能が改善される。
【0135】
ある特定の実施形態においては、運動機能は、総合運動スコア(TMS)上での少なくとも1ポイントの低下によって改善される。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも2ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも3ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも4ポイントである。
【0136】
ある特定の実施形態においては、ジストニアが改善される。ある特定の実施形態においては、歩行が改善される。ある特定の実施形態においては、姿勢不安定が改善される。ある特定の実施形態においては、処置は、パーキンソニズムの症状を軽減する。
【0137】
ある特定の実施形態においては、処置は、対象の平衡を悪化させない。ある特定の実施形態においては、処置は平衡を改善する。
【0138】
ある特定の実施形態においては、処置は、身体機能を改善する。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、改善される。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、ベースラインから改善される。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、未処置の対象と比較して改善される。
【0139】
ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC尺度上で非常に大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、CGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、CGIC尺度上で非常に大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC及びCGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC及びCGIC尺度上で非常に大幅に改善される。
【0140】
ある特定の実施形態においては、処置は、嚥下を改善する。
【0141】
ある特定の実施形態においては、処置は、不眠、抑鬱、不安、焦燥、自殺念慮、静座不能、易刺激性、又は疲労の有意な増大を引き起こさない。
【0142】
ある特定の実施形態においては、処置は、有意なパーキンソニズム又は嚥下障害を引き起こさない。
【0143】
ある特定の実施形態においては、処置は、QT間隔を有意に延長させない。ある特定の実施形態においては、処置は、QTcF値を有意に変化させない。ある特定の実施形態においては、QTcFの最大増加は5ms未満である。
【0144】
また、組合せが相互に排他的でないという条件で、上記の段落[0112]~[0142]中の任意の実施形態を、これらの実施形態のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる実施形態も提供される。また、本明細書又は段落[0112]~[0142]中の上記実施形態のいずれかに記載される、対象における異常不随意運動を処置するためのVMAT2阻害剤の使用も提供される。また、本明細書又は段落[0112]~[0142]中の上記実施形態のいずれかに記載される、対象における異常不随意運動を処置するための薬剤の製造におけるVMAT2阻害剤の使用も提供される。また、本明細書又は段落[0112]~[0142]中の上記実施形態のいずれかに記載される、対象における異常不随意運動を処置する際に使用するためのVMAT2阻害剤を含む組成物も提供される。
【0145】
また、VMAT2阻害剤の日量の投与を含む、ハンチントン病を有する対象における舞踏病を軽減する、及び運動機能を改善する方法も提供される。
【0146】
ある特定の実施形態においては、VMAT2阻害剤は、重水素置換されたテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、重水素置換されたテトラベナジンは、デューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンは、プラス異性型のデューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のデューテトラベナジンは、アルファ異性体である。ある特定の実施形態においては、VMAT2阻害剤は、プラス異性型のテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のテトラベナジンは、アルファ異性体である。ある特定の実施形態においては、VMAT2阻害剤は、バルベナジンである。
【0147】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、1用量又は2用量で投与される。
【0148】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、約48mg、約54mg、約60mg、約66mg、約72mg、及び約78mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。
【0149】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、第1の用量と第2の用量とからなる、2用量で投与される。
【0150】
ある特定の実施形態においては、
第1の用量は約6mgであり、第2の用量は約6mgである;
第1の用量は約9mgであり、第2の用量は約9mgである;
第1の用量は約12mgであり、第2の用量は約12mgである;
第1の用量は約15mgであり、第2の用量は約15mgである;
第1の用量は約18mgであり、第2の用量は約18mgである;
第1の用量は約21mgであり、第2の用量は約21mgである;
第1の用量は約24mgであり、第2の用量は約24mgである;
第1の用量は約27mgであり、第2の用量は約27mgである;
第1の用量は約30mgであり、第2の用量は約30mgである;
第1の用量は約33mgであり、第2の用量は約33mgである;
第1の用量は約36mgであり、第2の用量は約36mgである;及び
第1の用量は約39mgであり、第2の用量は約39mgである。
【0151】
ある特定の実施形態においては、
第1の用量は約6mgであり、第2の用量は約6mgである;
第1の用量は約9mgであり、第2の用量は約9mgである;
第1の用量は約12mgであり、第2の用量は約12mgである;
第1の用量は約15mgであり、第2の用量は約15mgである;
第1の用量は約18mgであり、第2の用量は約18mgである;
第1の用量は約21mgであり、第2の用量は約21mgである;及び
第1の用量は約24mgであり、第2の用量は約24mgである。
【0152】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg~約78mgである。ある特定の実施形態においては、投与されるデューテトラベナジンの日量は、強力なCYP2D6阻害剤を同時に受けている対象については、約48mg以下であるか、又は約36mg以下である。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、フルオキセチン、パロキセチン、ブプロピオン、キニジン、シナカルセット、及びリトナビルから選択される。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、パロキセチン、フルオキセチン、及びブプロピオンから選択される。
【0153】
ある特定の実施形態においては、舞踏病制御は、総合最大舞踏病(TMC)スコア上での少なくとも0.5ポイントの低下によって改善される。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも1ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも1.5ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも2.0ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも2.5ポイントである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも8.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも10.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも12.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも12.7の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも14.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。
【0154】
ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも10%軽減される。ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも15%軽減される。ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも20%軽減される。
【0155】
ある特定の実施形態においては、運動機能が改善される。
【0156】
ある特定の実施形態においては、運動機能は、総合運動スコア(TMS)上での少なくとも1ポイントの低下によって改善される。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも2ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも3ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも4ポイントである。
【0157】
ある特定の実施形態においては、ジストニアが改善される。ある特定の実施形態においては、歩行が改善される。ある特定の実施形態においては、姿勢不安定が改善される。ある特定の実施形態においては、処置は、パーキンソニズムの症状を軽減する。
【0158】
ある特定の実施形態においては、処置は、対象の平衡を悪化させない。ある特定の実施形態においては、処置は平衡を改善する。
【0159】
ある特定の実施形態においては、処置は、身体機能を改善する。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、改善される。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、ベースラインから改善される。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、未処置の対象と比較して改善される。
【0160】
ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC尺度上で非常に大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、CGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、CGIC尺度上で非常に大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC及びCGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC及びCGIC尺度上で非常に大幅に改善される。
【0161】
ある特定の実施形態においては、処置は、嚥下を改善する。
【0162】
ある特定の実施形態においては、処置は、不眠、抑鬱、不安、焦燥、自殺念慮、静座不能、易刺激性、又は疲労の有意な増大を引き起こさない。
【0163】
ある特定の実施形態においては、処置は、有意なパーキンソニズム又は嚥下障害を引き起こさない。
【0164】
ある特定の実施形態においては、処置は、QT間隔を有意に延長させない。ある特定の実施形態においては、処置は、QTcF値を有意に変化させない。ある特定の実施形態においては、QTcFの最大増加は5ms未満である。
【0165】
また、組合せが相互に排他的でないという条件で、上記の段落[0144]~[0163]中の任意の実施形態を、これらの実施形態のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる実施形態も提供される。また、本明細書又は段落[0144]~[0163]中の上記実施形態のいずれかに記載される、ハンチントン病を有する対象における舞踏病及び運動機能の改善のためのVMAT2阻害剤の使用も提供される。また、本明細書又は段落[0144]~[0163]中の上記実施形態のいずれかに記載される、ハンチントン病を有する対象における舞踏病及び運動機能の改善のための薬剤の製造におけるVMAT2阻害剤の使用も提供される。また、本明細書又は段落[0144]~[0163]中の上記実施形態のいずれかに記載される、ハンチントン病を有する対象における舞踏病及び運動機能の改善における使用のためのVMAT2阻害剤を含む組成物も提供される。
【0166】
また、VMAT2阻害剤の約日量の投与を含む、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー、又はトゥレット症候群を有する対象における運動機能を改善する方法も提供される。ある特定の実施形態においては、VMAT2阻害剤は、重水素置換されたテトラベナジンである。
【0167】
ある特定の実施形態においては、対象は、ハンチントン病を有する。ある特定の実施形態においては、対象は、遅発性ジスキネジーを有する。ある特定の実施形態においては、対象は、トゥレット症候群を有する。
【0168】
ある特定の実施形態においては、重水素置換されたテトラベナジンは、デューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンは、プラス異性型のデューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のデューテトラベナジンは、アルファ異性体である。ある特定の実施形態においては、VMAT2阻害剤は、プラス異性型のテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のテトラベナジンは、アルファ異性体である。
【0169】
ある特定の実施形態においては、VMAT2阻害剤は、バルベナジンである。
【0170】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、1用量又は2用量で投与される。
【0171】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、約48mg、約54mg、約60mg、約66mg、約72mg、及び約78mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。
【0172】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、第1の用量と第2の用量とからなる、2用量で投与される。
【0173】
ある特定の実施形態においては、
第1の用量は約6mgであり、第2の用量は約6mgである;
第1の用量は約9mgであり、第2の用量は約9mgである;
第1の用量は約12mgであり、第2の用量は約12mgである;
第1の用量は約15mgであり、第2の用量は約15mgである;
第1の用量は約18mgであり、第2の用量は約18mgである;
第1の用量は約21mgであり、第2の用量は約21mgである;
第1の用量は約24mgであり、第2の用量は約24mgである;
第1の用量は約27mgであり、第2の用量は約27mgである;
第1の用量は約30mgであり、第2の用量は約30mgである;
第1の用量は約33mgであり、第2の用量は約33mgである;
第1の用量は約36mgであり、第2の用量は約36mgである;及び
第1の用量は約39mgであり、第2の用量は約39mgである。
【0174】
ある特定の実施形態においては、
第1の用量は約6mgであり、第2の用量は約6mgである;
第1の用量は約9mgであり、第2の用量は約9mgである;
第1の用量は約12mgであり、第2の用量は約12mgである;
第1の用量は約15mgであり、第2の用量は約15mgである;
第1の用量は約18mgであり、第2の用量は約18mgである;
第1の用量は約21mgであり、第2の用量は約21mgである;及び
第1の用量は約24mgであり、第2の用量は約24mgである。
【0175】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg~約78mgである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、約48mg、約54mg、約60mg、約66mg、約72mg、及び約78mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。ある特定の実施形態においては、投与されるデューテトラベナジンの日量は、強力なCYP2D6阻害剤を同時に受けている対象については、約48mg以下であるか、又は約36mg以下である。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、フルオキセチン、パロキセチン、ブプロピオン、キニジン、シナカルセット、及びリトナビルから選択される。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、パロキセチン、フルオキセチン、及びブプロピオンから選択される。
【0176】
ある特定の実施形態においては、舞踏病制御は、総合最大舞踏病(TMC)スコア上での少なくとも0.5ポイントの低下によって改善される。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも1ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも1.5ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも2.0ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMCスコアの低下は、少なくとも2.5ポイントである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも8.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも10.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも12.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも12.7の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。ある特定の実施形態においては、改善は、少なくとも14.0の処置前の「ベースライン」TMCスコアを超えるものである。
【0177】
ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも10%軽減される。ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも15%軽減される。ある特定の実施形態においては、舞踏病は、少なくとも20%軽減される。
【0178】
ある特定の実施形態においては、運動機能が改善される。
【0179】
ある特定の実施形態においては、運動機能は、総合運動スコア(TMS)上での少なくとも1ポイントの低下によって改善される。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも2ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも3ポイントである。ある特定の実施形態においては、TMSスコアの低下は、少なくとも4ポイントである。
【0180】
ある特定の実施形態においては、ジストニアが改善される。ある特定の実施形態においては、歩行が改善される。ある特定の実施形態においては、姿勢不安定が改善される。ある特定の実施形態においては、処置は、パーキンソニズムの症状を軽減する。
【0181】
ある特定の実施形態においては、処置は、対象の平衡を悪化させない。ある特定の実施形態においては、処置は平衡を改善する。
【0182】
ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC尺度上で非常に大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、CGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、CGIC尺度上で非常に大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC及びCGIC尺度上で大幅に改善される。ある特定の実施形態においては、対象は、PGIC及びCGIC尺度上で非常に大幅に改善される。
【0183】
ある特定の実施形態においては、処置は、身体機能を改善する。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、改善される。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、ベースラインから改善される。ある特定の実施形態においては、対象の身体機能は、SF-36身体機能尺度により測定された場合、未処置の対象と比較して改善される。
【0184】
ある特定の実施形態においては、処置は、嚥下を改善する。
【0185】
ある特定の実施形態においては、処置は、不眠、抑鬱、不安、焦燥、自殺念慮、静座不能、易刺激性、又は疲労の有意な増大を引き起こさない。
【0186】
ある特定の実施形態においては、処置は、有意なパーキンソニズム又は嚥下障害を引き起こさない。
【0187】
ある特定の実施形態においては、処置は、QT間隔を有意に延長させない。ある特定の実施形態においては、処置は、QTcF値を有意に変化させない。ある特定の実施形態においては、QTcFの最大増加は5ms未満である。
【0188】
また、組合せが相互に排他的でないという条件で、上記の段落[0165]~[0186]中の任意の実施形態を、これらの実施形態のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる実施形態も提供される。また、本明細書又は段落[0165]~[0186]中の上記実施形態のいずれかに記載される、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー、又はトゥレット症候群を有する対象における運動機能を改善するためのデューテトラベナジン、又はVMAT2阻害剤の使用も提供される。また、本明細書又は段落[0165]~[0186]中の上記実施形態のいずれかに記載される、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー、又はトゥレット症候群を有する対象における運動機能を改善するための薬剤の製造における、デューテトラベナジン、又はVMAT2阻害剤の使用も提供される。また、本明細書又は段落[0165]~[0186]中の上記実施形態のいずれかに記載される、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー、又はトゥレット症候群を有する対象における運動機能を改善する際に使用するためのデューテトラベナジン、又はVMAT2阻害剤を含む組成物も提供される。
【0189】
また、デューテトラベナジンの約日量の投与を含む、トゥレット症候群を有する対象における運動性チック又は発音性チックを軽減する方法も提供される。
【0190】
ある特定の実施形態においては、チックは、運動性チックである。
【0191】
ある特定の実施形態においては、チックは、発音性チックである。
【0192】
ある特定の実施形態においては、対象は、6~16歳の年齢である。ある特定の実施形態においては、対象は、12~18歳の年齢である。ある特定の実施形態においては、対象は、6~18歳の年齢である。
【0193】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg~約48mgである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。ある特定の実施形態においては、投与されるデューテトラベナジンの日量は、強力なCYP2D6阻害剤を同時に受けている対象については、約48mg以下であるか、又は約36mg以下である。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、フルオキセチン、パロキセチン、ブプロピオン、キニジン、シナカルセット、及びリトナビルから選択される。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、パロキセチン、フルオキセチン、及びブプロピオンから選択される。
【0194】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、食物と共に投与される。
【0195】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、少なくとも2用量に分割される。
【0196】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、第1の用量と第2の用量とからなる2つの等しい用量で投与される。
【0197】
ある特定の実施形態においては、運動性チック又は発音性チックは、イェール全般的チック重症度尺度(Yale Global Tic Severity Scale)の総合チックスコアにより測定された場合、25%以上軽減される。
【0198】
ある特定の実施形態においては、運動性チック又は発音性チックは、トゥレット症候群の臨床上の全般的印象(TS-CGI)上で2ポイント以上軽減される。
【0199】
ある特定の実施形態においては、運動性チック又は発音性チックは、トゥレット症候群患者の重症度の全般的印象(TS-PGIS)上で1ポイント以上軽減される。ある特定の実施形態においては、運動性チック又は発音性チックは、トゥレット症候群患者の重症度の全般的印象(TS-PGIS)上で2ポイント以上軽減される。
【0200】
ある特定の実施形態においては、軽減は、ベースラインから少なくとも2週間までである。
【0201】
ある特定の実施形態においては、軽減は、ベースラインから少なくとも4週間までである。ある特定の実施形態においては、軽減は、ベースラインから少なくとも8週間までである。ある特定の実施形態においては、軽減は、ベースラインから少なくとも12週間までである。
【0202】
また、組合せが相互に排他的でないという条件で、上記の段落[0188]~[0200]中の任意の実施形態を、これらの実施形態のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる実施形態も提供される。また、本明細書又は段落[0188]~[0200]中の上記実施形態のいずれかに記載される、トゥレット症候群を有する対象における運動性又は発音性チックを軽減するためのデューテトラベナジン、又はVMAT2阻害剤の使用も提供される。また、本明細書又は段落[0188]~[0200]中の上記実施形態のいずれかに記載される、トゥレット症候群を有する対象における運動性又は発音性チックを軽減するための薬剤の製造における、デューテトラベナジン、又はVMAT2阻害剤の使用も提供される。また、本明細書又は段落[0188]~[0200]中の上記実施形態のいずれかに記載される、トゥレット症候群を有する対象における運動性又は発音性チックを軽減する際に使用するためのデューテトラベナジン、又はVMAT2阻害剤を含む組成物も提供される。
【0203】
また、デューテトラベナジンの約日量の投与を含む、トゥレット症候群を有する対象における運動性又は発音性チックを軽減する方法も提供される。
【0204】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg~約48mgである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、6mg~48mgである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。ある特定の実施形態においては、投与されるデューテトラベナジンの日量は、強力なCYP2D6阻害剤を同時に受けている対象については、約48mg以下であるか、又は約36mg以下である。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、フルオキセチン、パロキセチン、ブプロピオン、キニジン、シナカルセット、及びリトナビルから選択される。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、パロキセチン、フルオキセチン、及びブプロピオンから選択される。
【0205】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、食物と共に投与される。
【0206】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、少なくとも2用量に分割される。
【0207】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、第1の用量と第2の用量とからなる2つの等しい用量で投与される。
【0208】
ある特定の実施形態においては、対象は、6~16歳の年齢である。ある特定の実施形態においては、対象は、12~18歳の年齢である。ある特定の実施形態においては、対象は、6~18歳の年齢である。
【0209】
ある特定の実施形態においては、運動性及び発音性チックは、イェール全般的チック重症度尺度の総合チックスコアにより測定された場合、25%以上軽減される。
【0210】
ある特定の実施形態においては、運動性チック又は発音性チックは、トゥレット症候群の臨床上の全般的印象上で2ポイント以上軽減される。
【0211】
ある特定の実施形態においては、軽減は、ベースラインから少なくとも2週間までである。ある特定の実施形態においては、軽減は、ベースラインから少なくとも4週間までである。ある特定の実施形態においては、軽減は、ベースラインから少なくとも8週間までである。ある特定の実施形態においては、軽減は、ベースラインから少なくとも12週間までである。
【0212】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンは、プラス異性型のデューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のデューテトラベナジンは、アルファ異性体である。
【0213】
ある特定の実施形態においては、処置は、QT間隔を有意に延長させない。ある特定の実施形態においては、処置は、QTcF値を有意に変化させない。ある特定の実施形態においては、QTcFの最大増加は5ms未満である。
【0214】
また、組合せが相互に排他的でないという条件で、上記の段落[0202]~[0212]中の任意の実施形態を、これらの実施形態のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる実施形態も提供される。また、本明細書又は段落[0202]~[0212]中の上記実施形態のいずれかに記載される、トゥレット症候群を有する対象における運動性又は発音性チックを軽減するためのデューテトラベナジン、又はVMAT2阻害剤の使用も提供される。また、本明細書又は段落[0202]~[0212]中の上記実施形態のいずれかに記載される、トゥレット症候群を有する対象における運動性又は発音性チックを軽減するための薬剤の製造における、デューテトラベナジン、又はVMAT2阻害剤の使用も提供される。また、本明細書又は段落[0202]~[0212]中の上記実施形態のいずれかに記載される、トゥレット症候群を有する対象における運動性又は発音性チックを軽減する際に使用するためのデューテトラベナジン、又はVMAT2阻害剤を含む組成物も提供される。
【0215】
また、デューテトラベナジンの約日量の投与を含む、トゥレット症候群を有する対象における、対象のトゥレット症候群患者の重症度の全般的印象(TS-PGIS)により測定された場合、チックの重症度を低下させる方法も提供される。ある特定の実施形態においては、方法は、a)デューテトラベナジンの日量を投与する工程;及びb)4週毎に少なくとも1回、TS-PGISを用いてチックの重症度を評価する工程を含む。更なる実施形態においては、方法は更に、c)TS-PGISを用いてチックの重症度を評価した後、デューテトラベナジンの日量が忍容性である場合、デューテトラベナジンの日量を少なくとも6mg/日ずつ増加させる工程;d)TS-PGISが更に低下しなくなる、又はデューテトラベナジンの日量が忍容されるまで、工程b)及びc)を反復する工程;並びにe)その後の量が忍容されない場合、デューテトラベナジンの日量を6mg/日ずつ下方に減少させる工程を含む。
【0216】
ある特定の実施形態においては、チックは運動性チックである。
【0217】
ある特定の実施形態においては、チックは発音性チックである。
【0218】
ある特定の実施形態においては、対象は、6~16歳の年齢である。ある特定の実施形態においては、対象は、12~18歳の年齢である。ある特定の実施形態においては、対象は、6~18歳の年齢である。
【0219】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、6mg~48mgである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、食物と共に投与される。
【0220】
ある特定の実施形態においては、チックの重症度は、少なくとも2週毎にTS-PGISを用いて評価される。ある特定の実施形態においては、チックの重症度は、少なくとも毎週、TS-PGISを用いて評価される。ある特定の実施形態においては、チックの重症度は、少なくとも毎月、TS-PGISを用いて評価される。ある特定の実施形態においては、チックの重症度は、少なくとも3カ月毎にTS-PGISを用いて評価される。
【0221】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、2用量に分割される。
【0222】
ある特定の実施形態においては、低下は、ベースラインから少なくとも2週間までである。ある特定の実施形態においては、低下は、ベースラインから少なくとも4週間までである。ある特定の実施形態においては、低下は、ベースラインから少なくとも8週間までである。ある特定の実施形態においては、低下は、ベースラインから少なくとも12週間までである。
【0223】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンは、プラス異性型のデューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のデューテトラベナジンは、アルファ異性体である。
【0224】
ある特定の実施形態においては、処置は、QT間隔を有意に延長させない。ある特定の実施形態においては、処置は、QTcF値を有意に変化させない。ある特定の実施形態においては、QTcFの最大増加は5ms未満である。
【0225】
また、組合せが相互に排他的でないという条件で、上記の段落[0214]~[0223]中の任意の実施形態を、これらの実施形態のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる実施形態も提供される。また、本明細書又は段落[0214]~[0223]中の上記実施形態のいずれかに記載される、対象のトゥレット症候群患者の重症度の全般的印象(TS-PGIS)により測定された場合、チックの重症度を低下させるためのデューテトラベナジンの使用も提供される。また、本明細書又は段落[0214]~[0223]中の上記実施形態のいずれかに記載される、対象のトゥレット症候群患者の重症度の全般的印象(TS-PGIS)により測定された場合、チックの重症度を低下させるための製造における、デューテトラベナジンの使用も提供される。また、本明細書又は段落[0214]~[0223]中の上記実施形態のいずれかに記載される、対象のトゥレット症候群患者の重症度の全般的印象(TS-PGIS)により測定された場合、チックの重症度を低下させる際に使用するためのデューテトラベナジンを含む組成物も提供される。
【0226】
また、運動障害を有するヒト対象における異常不随意運動の制御を維持する方法であって、以下の1つ又は複数を行うのに十分な期間にわたって、治療上有効な日量のデューテトラベナジンを対象に投与する工程を含む方法も提供される:舞踏病を少なくとも10%軽減する;運動機能を少なくとも10%改善する;身体機能を改善する;嚥下を改善する;平衡を改善する;遅発性ジスキネジーを有する対象における異常不随意運動を軽減する;運動性チックを軽減する;声帯/発音性チックを軽減する;運動性及び声帯/発音性チックを軽減する;トゥレット症候群を有する対象における障害を軽減する;トゥレット症候群の重症度を低下させる;トゥレット症候群を有する対象における患者の重症度の全般的印象を低下させる;並びに対象の、患者の変化の臨床上の全般的印象を大幅に、又は非常に大幅に改善する。
【0227】
ある特定の実施形態においては、障害は、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー、及びトゥレット症候群から選択される。
【0228】
ある特定の実施形態においては、上記の評価項目のそれぞれにおける改善は、以下のように測定される:舞踏病の軽減は、統一ハンチントン病評価尺度(UHDRS)又はその下位尺度により測定される; 舞踏病の軽減は、UHDRSの総合最大舞踏病(TMC)スコアにより測定される;運動機能の改善は、UHDRSの総合運動スコア(TMS)スコアにより測定される;身体機能の改善は、SF-36身体機能尺度により測定される;嚥下の改善は、嚥下障害質問票(SDQ)により測定される;平衡の改善は、バーグバランステスト(Berg Balance Test(BBT))により測定される;遅発性ジスキネジーを有する対象における異常不随意運動の軽減は、AIMSにより測定される;トゥレット症候群を有する対象における運動性チックの軽減は、YGTSSのMTSSにより測定される;トゥレット症候群を有する対象における声帯/発音性チックの軽減は、YGTSSのVTSSにより測定される;総合(運動性及び声帯/発音性)チックの軽減は、YGTSSのTTSにより測定される;障害の軽減は、YGTSSの障害スコアにより測定される;トゥレット症候群の重症度の低下は、YGTSSの全般的重症度スコアにより測定される;並びにトゥレット症候群を有する対象における患者の重症度の全般的印象の低下は、TS-PGISにより測定される。
【0229】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg~約78mgである。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、約48mg、約54mg、約60mg、約66mg、約72mg、及び約78mgから選択される。ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンの日量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mg、約30mg、約36mg、約42mg、及び約48mgから選択される。ある特定の実施形態においては、投与されるデューテトラベナジンの日量は、強力なCYP2D6阻害剤を同時に受けている対象については、約48mg以下であるか、又は約36mg以下である。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、フルオキセチン、パロキセチン、ブプロピオン、キニジン、シナカルセット、及びリトナビルから選択される。ある特定の実施形態においては、強力なCYP2D6阻害剤は、パロキセチン、フルオキセチン、及びブプロピオンから選択される。
【0230】
ある特定の実施形態においては、十分な期間は、少なくとも4週間である。ある特定の実施形態においては、十分な期間は、少なくとも8週間である。ある特定の実施形態においては、十分な期間は、少なくとも12週間である。
【0231】
ある特定の実施形態においては、関連する尺度又は複数の尺度における軽減又は改善は、ベースラインを少なくとも10%超える。ある特定の実施形態においては、関連する尺度又は少なくとも1つの尺度における軽減又は改善は、ベースラインを少なくとも20%超える。ある特定の実施形態においては、関連する尺度又は少なくとも1つの尺度における軽減又は改善は、ベースラインを少なくとも30%超える。ある特定の実施形態においては、関連する尺度又は少なくとも1つの尺度における軽減又は改善は、ベースラインを少なくとも40%超える。ある特定の実施形態においては、関連する尺度又は少なくとも1つの尺度における軽減又は改善は、ベースラインを少なくとも50%超える。
【0232】
ある特定の実施形態においては、障害はハンチントン病である。ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、ハンチントン病と関連する舞踏病である。
【0233】
ある特定の実施形態においては、障害は遅発性ジスキネジーである。
【0234】
ある特定の実施形態においては、障害はトゥレット症候群である。ある特定の実施形態においては、異常不随意運動は、トゥレット症候群と関連するチックである。
【0235】
ある特定の実施形態においては、デューテトラベナジンは、プラス異性型のデューテトラベナジンである。ある特定の実施形態においては、プラス異性型のデューテトラベナジンは、アルファ異性体である。
【0236】
ある特定の実施形態においては、処置は、QT間隔を有意に延長させない。ある特定の実施形態においては、処置は、QTcF値を有意に変化させない。ある特定の実施形態においては、QTcFの最大増加は5ms未満である。
【0237】
また、組合せが相互に排他的でないという条件で、上記の段落[0225]~[0235]中の任意の実施形態を、これらの実施形態のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる実施形態も提供される。また、本明細書又は段落[0225]~[0235]中の上記実施形態のいずれかに記載される、運動障害を有するヒト対象における異常不随意運動の制御を維持するためのデューテトラベナジンの使用も提供される。また、本明細書又は段落[0225]~[0235]中の上記実施形態のいずれかに記載される、運動障害を有するヒト対象における異常不随意運動の制御を維持するための薬剤の製造における、デューテトラベナジンの使用も提供される。また、本明細書又は段落[0225]~[0235]中の上記実施形態のいずれかに記載される、運動障害を有するヒト対象における異常不随意運動の制御を維持するためのデューテトラベナジンを含む組成物も提供される。
【0238】
組成物
テトラベナジン(Nitoman、Xenazine、Ro 1-9569)、1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-2H-ベンゾ[a]キノリンは、小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)阻害剤である。テトラベナジンは、ハンチントン病の処置のために一般的に処方される(Savaniら、Neurology 2007、68(10)、797頁;及びKenneyら、Expert Review of Neurotherapeutics 2006、6(1)、7~17頁)。テトラベナジンは、メトキシ基のO-脱メチル化、並びにイソブチル基のヒドロキシル化を含む、広範な酸化的代謝を受ける(Schwartzら、Biochem. Pharmacol.、1966、15、645~655頁)。テトラベナジンの投与と関連する有害効果としては、神経弛緩薬性悪性症候群、眠気、疲労、神経過敏、不安、不眠、焦燥、混乱、起立性低血圧、悪心、目眩、抑鬱、及びパーキンソニズムが挙げられる。
【0239】
【化1】
【0240】
重水素濃縮テトラベナジン類似体
d6-テトラベナジン(デューテトラベナジン、SD-809、又はDTBZと同等)は、現在臨床開発中であるテトラベナジンの重水素化類似体である。米国特許第8,524,733号、米国特許出願公開第20100130480号、及び米国特許出願公開第20120003330号。
【0241】
【化2】
【0242】
デューテトラベナジンを用いる本明細書に開示される全ての方法及び組成物において、デューテトラベナジンを、組成物がDと指定される位置のそれぞれで少なくとも90%が重水素濃縮された医薬組成物の一部として投与又は製剤化することができる。ある特定の実施形態においては、組成物は、Dと指定される位置のそれぞれで少なくとも95%が重水素濃縮されている。ある特定の実施形態においては、組成物は、Dと指定される位置のそれぞれで少なくとも98%が重水素濃縮されている。
【0243】
ヒトにおいては、以下に示されるように、d6-テトラベナジンは、以下の構造(+異性体を示す)を有するd6-α-HTBZ及びd6-β-HTBZ(+及び-異性体の混合物として)と呼ばれる主要な活性ジヒドロテトラベナジン(HTBZ)代謝物に肝臓中で急速かつ広範に変換される(非同位体濃縮されたテトラベナジンと同様)。これらの代謝物は、臨床効能を誘導すると考えられる。
【0244】
【化3】
【0245】
重水素置換されたテトラベナジンは、上記に開示されたデューテトラベナジンに加えて、米国特許第8,524,733号、米国特許出願公開第20100130480号、及び米国特許出願公開第20120003330号、並びに2014年11月14日に出願されたPCT/US2014/066740に開示された化合物を含む。そのような化合物の例は、以下の構造式に与えられる。
【0246】
本発明のある特定の実施形態においては、化合物は、構造式I:
【0247】
【化4】
【0248】
又はその塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ
(式中、
R1~R27は、水素及び重水素からなる群から独立に選択され;並びに
R1~R27のうちの少なくとも1つは重水素である)
を有する。
【0249】
ある特定の実施形態においては、式Iは、単一のエナンチオマー、(+)-エナンチオマーと(-)-エナンチオマーとの混合物、約90重量%以上の(-)-エナンチオマーと約10重量%以下の(+)-エナンチオマーとの混合物、約90重量%以上の(+)-エナンチオマーと約10重量%以下の(-)-エナンチオマーとの混合物、個々のジアステレオマー、又はそのジアステレオマーの混合物を含んでもよい。
【0250】
本発明のある特定の実施形態においては、化合物は、構造式II:
【0251】
【化5】
【0252】
又はその塩
(式中、
R28~R46及びR48~R56は、水素及び重水素からなる群から独立に選択され;
R47は、水素、重水素、-C(O)O-アルキル及び-C(O)-C1~6アルキル、又は生理的条件下で切断可能な基からなる群から選択され、ここで、前記アルキル又はC1~6アルキルは、-NH-C(NH)NH2、-CO2H、-CO2アルキル、-SH、-C(O)NH2、-NH2、フェニル、-OH、4-ヒドロキシフェニル、イミダゾリル、及びインドリルからなる群から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよく、R46置換基は、重水素で更に置換されていてもよく;
R28~R56のうちの少なくとも1つは、重水素であるか、又は重水素を含有する)
を有する。
【0253】
ある特定の実施形態においては、式IIの化合物は、アルファ立体化学を有する。
【0254】
更なる実施形態においては、式IIの化合物は、ベータ立体化学を有する。
【0255】
また更なる実施形態においては、式IIの化合物は、アルファ立体異性体とベータ立体異性体との混合物である。また更なる実施形態においては、アルファ/ベータ立体異性体の比は、少なくとも100:1、少なくとも50:1、少なくとも20:1、少なくとも10:1、少なくとも5:1、少なくとも4:1、少なくとも3:1、又は少なくとも2:1である。また更なる実施形態においては、ベータ/アルファ立体異性体の比は、少なくとも100:1、少なくとも50:1、少なくとも20:1、少なくとも10:1、少なくとも5:1、少なくとも4:1、少なくとも3:1、又は少なくとも2:1である。
【0256】
ある特定の実施形態においては、R50~R56が重水素である場合、R1~R49のうちの少なくとも1つは、重水素である。
【0257】
本発明のある特定の実施形態においては、化合物は、構造式III:
【0258】
【化6】
【0259】
又はその塩、立体異性体、若しくはラセミ混合物
(式中、
R57~R83は、水素及び重水素からなる群から独立に選択され;並びに
R57~R83のうちの少なくとも1つは、重水素である)
を有する。
【0260】
本発明のある特定の実施形態においては、化合物は、構造式IV:
【0261】
【化7】
【0262】
又はその塩、ジアステレオマー、又はジアステレオマーの混合物
(式中、
R84~R110は、水素及び重水素からなる群から独立に選択され;並びに
R84~R110のうちの少なくとも1つは、重水素である)
を有する。
【0263】
重水素置換されたテトラベナジン代謝物は、上記に開示されたd6-α-HTBZ及びd6-β-HTBZに加えて、以下の構造式に開示される化合物を含む。
【0264】
ジヒドロテトラベナジンに適用される用語「アルファ-ジヒドロテトラベナジン」、「α-ジヒドロテトラベナジン」、又は用語「アルファ」若しくは「アルファ立体異性体」又は記号「α」は、以下に示される構造式を有するジヒドロテトラベナジン立体異性体のいずれか、又はその混合物を指す:
【0265】
【化8】
【0266】
式IIの化合物に適用される用語「アルファ」若しくは「アルファ立体異性体」又は記号「α」は、以下に示される式IIの化合物の立体異性体のいずれか、又はその混合物を指す:
【0267】
【化9】
【0268】
ジヒドロテトラベナジンに適用される用語「ベータ-ジヒドロテトラベナジン」、「β-ジヒドロテトラベナジン」、又は用語「ベータ」若しくは「ベータ立体異性体」又は記号「β」は、以下に示される構造式を有するジヒドロテトラベナジン立体異性体のいずれか、又はその混合物を指す:
【0269】
【化10】
【0270】
式IIの化合物に適用される用語「ベータ」若しくは「ベータ立体異性体」又は記号「β」は、以下に示される式IIの化合物の立体異性体のいずれか、又はその混合物を指す:
【0271】
【化11】
【0272】
用語「3S,11bSエナンチオマー」又は用語「3R,11bRエナンチオマー」は、以下に示される構造式を有するd6-テトラベナジンM4代謝物立体異性体のいずれかを指す:
【0273】
【化12】
【0274】
ある特定の実施形態においては、化学構造を、3S,11bSエナンチオマー又は3R,11bRエナンチオマーのいずれかとして描くことができるが、本明細書の本文は、3S,11bSエナンチオマー、3R,11bRエナンチオマー、そのラセミ混合物、又は上述の全てを記載することを意図することができることを示すこともある。
【0275】
式Iの化合物に適用される用語「(3S,11bS)-エナンチオマー」又は「(3R,11bR)-エナンチオマー」は、以下に示される式IIIの化合物の立体異性体のいずれかを指す:
【0276】
【化13】
【0277】
用語「ジアステレオマーの混合物」とは、以下に示される構造式を有するd6-テトラベナジンM1代謝物立体異性体のいずれかを指す:
【0278】
【化14】
【0279】
ある特定の実施形態においては、化学構造を、上記に示されたジアステレオマーの1つとして描くことができるが、本明細書の本文は、それぞれ個々のジアステレオマー若しくはその混合物、又は上述の全てを記載することを意図することができることを示すこともある。
【0280】
式IVの化合物に適用される用語「ジアステレオマーの混合物」とは、以下に示される式IVの化合物の立体異性体の混合物を指す:
【0281】
【化15】
【0282】
更なる重水素濃縮テトラベナジン類似体としては、バルベナジンの類似体が挙げられる。バルベナジン(NBI-98854、CAS#1025504-59-9、(S)-(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-2,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル2-アミノ-3-メチルブタノエート)は、VMAT2阻害剤である。バルベナジンは、遅発性ジスキネジーを含む運動障害の処置のために現在調査中である。WO2008058261;WO2011153157;及び米国特許第8,039,627号。(+)-α-ジヒドロテトラベナジンのバリンエステルであるバルベナジンは、ヒトにおいては、ハンチントン病の処置のために現在用いられているテトラベナジンの活性代謝物である(+)-α-ジヒドロテトラベナジンにゆっくりと加水分解される。Savaniら、Neurology 2007、68(10)、797頁;及びKenneyら、Expert Review of Neurotherapeutics 2006、6(1)、7~17頁。
【0283】
【化16】
【0284】
バルベナジンのバリンエステルの加水分解により形成されるジヒドロテトラベナジンは、メトキシ基のO-脱メチル化、並びにイソブチル基のヒドロキシル化を含む、広範な酸化的代謝を受ける(Schwartzら、Biochem. Pharmacol.、1966、15、645~655頁)。バルベナジンの投与と潜在的に関連する有害効果としては、神経弛緩薬性悪性症候群、眠気、疲労、神経過敏、不安、不眠、焦燥、混乱、起立性低血圧、悪心、目眩、抑鬱、及びパーキンソニズムが挙げられる。
【0285】
バルベナジンの重水素置換類似体としては、WO2014120654に開示されたものが挙げられる。そのような化合物の例は、以下の式に与えられる。
【0286】
本発明のある特定の実施形態においては、化合物は、構造式I:
【0287】
【化17】
【0288】
又はその塩
(式中、
R1~R19及びR21~R29は、水素及び重水素からなる群から独立に選択され;
R20は、水素、重水素、-C(O)O-アルキル及び-C(O)-C1~6アルキル、又は生理的条件下で切断可能な基からなる群から選択され、ここで、前記アルキル又はC1~6アルキルは、-NH-C(NH)NH2-、-CO2H、-CO2アルキル、-SH、-C(O)NH2、-NH2、フェニル、-OH、4-ヒドロキシフェニル、イミダゾリル、及びインドリルからなる群から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよく、R20置換基は、重水素で更に置換されていてもよく;
R1~R29のうちの少なくとも1つは、重水素であるか、又は重水素を含有する)
を有する。
【0289】
ある特定の実施形態においては、式Vの化合物は、(+)-アルファ立体化学を有する。
【0290】
ある特定の実施形態においては、式Vの化合物は、(-)-アルファ立体化学を有する。
【0291】
更なる実施形態においては、式Vの化合物は、(+)-ベータ立体化学を有する。
【0292】
更なる実施形態においては、式Vの化合物は、(-)-ベータ立体化学を有する。
【0293】
また更なる実施形態においては、式Iの化合物は、アルファ立体異性体とベータ立体異性体との混合物である。また更なる実施形態においては、アルファ/ベータ立体異性体の比は、少なくとも100:1、少なくとも50:1、少なくとも20:1、少なくとも10:1、少なくとも5:1、少なくとも4:1、少なくとも3:1、又は少なくとも2:1である。また更なる実施形態においては、ベータ/アルファ立体異性体の比は、少なくとも100:1、少なくとも50:1、少なくとも20:1、少なくとも10:1、少なくとも5:1、少なくとも4:1、少なくとも3:1、又は少なくとも2:1である。
【0294】
ある特定の実施形態においては、本明細書に開示されるのは、構造式VI:
【0295】
【化18】
【0296】
又はその塩若しくは立体異性体
(式中、
R1~R19及びR21~R39は、水素及び重水素からなる群から独立に選択され;
R1~R19及びR21~R39のうちの少なくとも1つは、重水素である)
の化合物である。
【0297】
本発明のある特定の実施形態においては、化合物は、構造式VII:
【0298】
【化19】
【0299】
又はその塩若しくは立体異性体
(式中、
R20は、-C(O)O-アルキル及び-C(O)-C1~6アルキル、又は生理的条件下で切断可能な基からなる群から選択され、ここで、前記アルキル又はC1~6アルキルは、-NH-C(NH)NH2、-CO2H、-CO2アルキル、-SH、-C(O)NH2、-NH2、フェニル、-OH、4-ヒドロキシフェニル、イミダゾリル、及びインドリルからなる群から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよく、R20置換基は重水素で更に置換されていてもよい)
を有する。
【0300】
また、本明細書に開示される化合物は、限定されるものではないが、炭素については13C又は14C、硫黄については33S、34S、又は36S、窒素については15N、及び酸素については17O又は18Oなどの、他の元素に関するあまり一般的でない同位体を含有してもよい。
【0301】
重水素速度論的同位体効果
重水素(D)は、その核の中にプロトンとニュートロンの両方を含有する、水素(H)の天然に存在する、非放射性の安定な同位体である。ニュートロンの存在は、Hと比較した場合、Dの質量を倍加させ、次いで、C-H共有結合と比較してC-D共有結合の振動周波数を増大させる。共有結合の振動周波数の増大は、その結合を破壊するのに必要とされる活性化エネルギーの増大、その結果として、結合強度の増大をもたらす。この増大した共有結合強度は、ある特定の例においては、速度論的同位体効果(KIE)として知られるものをもたらす共有結合切断の動力学を変化させ得る。共有結合切断の様々な量子力学的側面を含むある特定の条件下では、共有的C-H結合の共有的C-D結合による置き換えは、意味がある重水素KIEをもたらし得る。CYP450基質である薬物に関する大きい重水素KIEは、ある特定の例においては、その薬物の薬物動態パラメータの改善をもたらし、潜在的には、重水素化された薬物と重水素化されていない薬物との差異をもたらし得る。デューテトラベナジンにおける共有的C-D結合は、テトラベナジンと比較してデューテトラベナジンの活性代謝物のO-脱メチル化を減速させるのに十分に大きい重水素KIEを同時に提供するように作用するいくつかの化学的及び生物学的基準を満たす。この重水素KIEの規模は、事前に予測することができず、したがって、テトラベナジン中のC-H共有結合の、C-D共有結合による置き換えが、顕著な、及び/又は改善された生物学的差異をもたらしたかどうかを前もって知ることはできなかったことに留意することが重要である。
【0302】
デューテトラベナジン又はd6-テトラベナジンは、VMAT2阻害剤である。
【0303】
d6-テトラベナジンにおいては、6個の水素原子が、上述の図面に示されたように重水素原子で置き換えられている。d6-テトラベナジンが安定な共有結合を形成し、そのトリデューテロメチル基(-CD3)は、共有結合した安定な部分であり、その結合はメチル基(-CH3)と比較して差異又は特質を有さないことの実質的な証拠がある。
【0304】
第1に、C-D結合の共有的性質を、赤外(IR)分光法などの分光方法により確立することができる。約2000~2300cm-1でのC-Dストレッチの特徴的なIR吸収(Miller及びCorcelli、2009)が、タンパク質研究のための部位特異的及び非摂動プローブとして研究者によって用いられることが多い(Miller及びCorcelli、2009;Zimmermannら、2011)。d6-テトラベナジンは、C-Dストレッチに起因する2060~2250cm-1での異なるIR吸収を有する。これらの吸収バンドは、非重水素化型のテトラベナジンのIRスペクトルには存在しない。
【0305】
第2に、d6-テトラベナジンは、テトラベナジンの塩形態ではない。デューテトラベナジンの質量スペクトルは、m/z 324.18[M+1]でプロトン化された分子イオンを示す。これは、無傷の分子としてのd6-テトラベナジンの予測された質量数と一致する。
【0306】
第3に、d6-テトラベナジン中の重水素原子は、通常の生理的条件下で水素と交換しない。非コンジュゲート化脂肪族C-H結合のpKaは、45~50の範囲にあり、これは、平衡時に、解離した種の、解離していない種に対する比は、10~45未満であることを意味する。比較すると、テトラベナジンのメトキシ基のC-H結合、及び延長線上で考えると、d6-テトラベナジンのメトキシ基のC-D結合は、更に酸度が低く、pKa値は50に達する。これは、デューテトラベナジン中のいずれかの重水素原子が水素原子との交換を潜在的に開始することができる前に、水性溶液を、45を超えるpHに増大させる必要があることを意味する。
【0307】
最後に、d6-テトラベナジン又はデューテトラベナジンを、臨床試験においてヒトに投与し、複数の酵素的プロセスと共に様々なin vitroでのインキュベーションにかけた。既知の活性代謝物並びに更なる下流の代謝物を、LC/MS/MS法により、in vitroのインキュベート及び/又はヒト血漿中でモニタリングした。これらの代謝物を合成し、予想されたトリデューテロメチル基(-CD3)を含有することを確認し、デューテトラベナジン中の共有的C-D結合が安定であり、デューテトラベナジンの下流の代謝物中に持ち込まれることを確認した。デューテトラベナジンは、d0-テトラベナジンと比較して異なる薬物動態プロファイルを有する。
【0308】
重水素速度論的同位体効果(KIE)のため、低分子薬物中の共有的C-H結合におけるHのDによる置き換えは、シトクロムP450アイソザイム(CYP450)などの酵素による切断のためにより多くのエネルギーを必要とすることにより、薬物の代謝を減弱させる能力を有する(Baillie、1981)。重水素KIEの規模は、破壊されるC-H結合の性質及びその結合の切断がCYPアイソザイムによる薬物の酸化的代謝における律速段階であるかどうかに応じて変化する。
【0309】
この様式で代謝を減弱させることにより、排出半減期(t1/2)、曝露(AUC[血漿レベル-時間曲線下面積])、ピーク血漿濃度(Cmax)を、非重水素化形態の薬物と比較して変化させることができる(Kushnerら、1999; Baillie、1981)。薬物中の特定の位置でのDのHへの置換もまた、重水素化された親薬物の重水素含有代謝物の破壊を減弱させる能力を有する。重要な酸化的代謝部位の多くの重水素置換は、いかなる効果ももたらさない;かくして、重水素化がin vivoで関連する可能性がある転帰を有するかどうかを決定するためには、経験的データが必要である。テトラベナジンは、CYP450酵素による酸化的代謝を受けるいくつかのC-H共有結合を含有する。上述の理由の全てから、より長い半減期を有する薬剤は、より高い効能、より良好な安全性及び忍容性、生活の質の改善並びに長期間の費用節約の可能性をもたらし得る。様々な重水素化パターンを用いて、(a)望ましくない代謝物を減少させる、若しくは除去する、(b)親薬物の半減期を増大させる、(c)所望の効果を達成するのに必要とされる用量数を減少させる、(d)所望の効果を達成するのに必要とされる用量を減少させる、(e)いずれかが形成される場合、活性代謝物の形成を増加させる、(f)特定の組織における有害な代謝物の産生を減少させる、並びに/又は(g)多剤併用が意図されるにしても、意図されないにしても、多剤併用のためのより有効な薬物及び/若しくはより安全な薬物を作出することができる。重水素化手法は、テトラベナジンの代謝を減速させ、患者間変動性を減弱させる能力を証明した。
【0310】
省略形及び定義
本開示の理解を容易にするために、本明細書で用いられるいくつかの用語及び省略形を以下のように定義する。
【0311】
本明細書で引用される全ての刊行物及び参考文献は、その全体が参照により本明細書に明示的に組込まれる。しかしながら、組込まれる刊行物又は参考文献と、本文献に明示的に記載若しくは定義されるものとの両方に見出される任意の類似する、又は同一の用語に関しては、本文献に明示的に記載される用語の定義又は意味が全ての点で制御するものとする。
【0312】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途具体的に記述されない限り、複数の項目を指してもよい。
【0313】
値の範囲が開示され、「n1からn2まで」又は「n1~n2」(ここで、n1及びn2は数字である)の表記が用いられる場合、別途特定されない限り、この表記はその数字自体と、その間の範囲とを含むことが意図される。この範囲は、端の値の間及びそれを含む整数又は連続数であってもよい。
【0314】
2つ以上の項目の一覧において用いられる場合の用語「及び/又は」は、列挙される項目のいずれか1つを、単独で、又は列挙される項目のいずれか1つ若しくは複数の組合せで用いることができることを意味する。例えば、「A及び/又はB」の表現は、AとBのいずれか又は両方、すなわち、Aのみ、Bのみ、又はAとBの組合せを意味することが意図される。表現「A、B及び/又はC」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの組合せ、AとCの組合せ、BとCの組合せ、又はAとBとCの組合せを意味することが意図される。
【0315】
化合物の量、用量、時間、温度などの測定可能な値を言う場合に本明細書で用いられる用語「約」は、特定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%、又は更には0.1%の変動を包含することを意味する。
【0316】
本明細書で用いられる用語「異常」とは、正常な活動又は特徴とは異なる活動又は特徴を指す。
【0317】
本明細書で用いられる用語「異常筋肉活動」とは、健康な対象における筋肉活動とは異なる筋肉活動を指す。異常活動は、正常活動と比較して低下又は増加していてもよい。筋肉活動の増加は、過剰な異常運動、過剰な正常運動、又は両方の組合せをもたらし得る。
【0318】
用語「有害事象」(「AE」)は、薬物を投与された患者における任意の望ましくない医学的出来事を意味し、それがこの処置との因果関係を有するかどうかは関係がない。したがって、有害事象は、この試験の過程で発生する、若しくは重症度を悪化させる任意の好ましくなく意図されない身体的兆候、症状、若しくは検査パラメータ、又は試験薬物と関連すると考えられるか否かに関わりなく、試験下にある疾患若しくは任意の併発症の有意な悪化であり得る。新しい状態又は元々存在する状態の悪化は、有害事象であると考えられる。試験登録前に存在し、この試験の間に悪化しない安定慢性状態(関節炎など)は、有害事象とは考えない。軽度のAEは、対象の活動を制限しないものである;中等度のAEは、通常の活動のいくらかの制限を引き起こすものである;及び重度のAEは、対象が通常の活動を実行することができなくなるものである。
【0319】
「処置関連有害事象」は、医師又は臨床医の判断において、投与された薬物と関連する有害事象である。そのような決定は、はい/いいえの質問に単純化されないことが多いことが理解されるべきであり、投薬との事象の出現の近さ、薬物の用量の中止又は減少の際のAEの消失、及びAEを説明する他の因子(例えば、元々存在する状態、環境因子など)の失敗などの、多かれ少なかれAEが処置関連性であることの連続に依拠し得る。
【0320】
用語「CYP2D6阻害剤」とは、CYP2D6を阻害し、したがって、他の基質化合物を代謝するために利用できなくする薬物を指す;CYP2D6により代謝される薬物と、CYP2D6阻害剤との同時投与は、この薬物の血漿濃度は多いため、注意をもって、また頻繁には減少した用量で実行するべきである。CYP2D6阻害剤としては、アミオダロン、セレコキシブ、クロロキン、クロルプロマジン、シメチジン、シタロプラム、クロミプラミン、コデイン、デイアビルジン、デシプラミン、デキストロプロポキシフェン、ジルチアゼム、ドキソルビシン、エンタカポン(高用量)、フルオキセチン、フルフェナジン、フルバキサミン、ハロペリドール、ラベタロール、ロベリン、ロムスチン、メタドン、ミベフラジル、モクロベミド、ノルツロキセリン、パロキセチン、ペルフェナジン、プロパフェノン、キナクリン、キニジン、ラニチジン、リスペリドン、リトナビル、セリンドール、セルトラリン、チオリダジン、バルプロ酸、ベンラファキシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、及びヨヒンビンが挙げられる。強力なCYP2D6阻害剤としては、フルオキセチン、アロキセチン、ブプロピオン、キニジン、シナカルセット、及びリトナビルが挙げられる。
【0321】
異常筋肉活動又は異常不随意運動(例えば、舞踏病)の制御を参照して本明細書で用いられる用語「程度」は、「レベル」と同義であることを意味する。
【0322】
本明細書で用いられる用語「障害」とは、全てヒト若しくは動物の身体又は正常機能を悪化させるその部分の1つの異常な状態を反映し、典型的には、兆候及び症状を区別することにより現れる点で、用語「疾患」、「症候群」及び「状態」(医学的状態の場合)と一般的に同義であり、互換的に用いられることが意図される。
【0323】
用語「処置する」、「処置すること」及び「処置」は、障害又は障害と関連する1つ若しくは複数の症状を軽減すること、若しくは無効化すること、又は障害自体の原因を軽減すること、若しくは根絶させることを含むことを意味する。本明細書で用いられる場合、障害の「処置」に対する参照は、防止を含むことが意図される。
【0324】
用語「防止する」、「防止すること」及び「防止」は、障害、及び/若しくはその付随する症状の開始を遅延させる、若しくは不可能にする、対象が障害を獲得しないようにする、又は障害を獲得する対象のリスクを軽減する方法を指す。
【0325】
用語「忍容性である」及び「忍容性」とは、患者における眠気、易刺激性、疲労、嘔吐及び悪心などの低率の有害事象をもたらす重水素置換されたテトラベナジン(例えば、デューテトラベナジン)又は他の薬物(例えば、重水素置換されたVMAT阻害剤、若しくはバルベナジン)の量を指し、ここで、有害事象は、重水素置換されたテトラベナジン若しくは他の薬物の用量減少、重水素置換されたテトラベナジン若しくは他の薬物の停止、又は重水素置換されたテトラベナジン若しくは他の薬物の離脱をもたらさない。重水素置換されたテトラベナジンはまた、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー又はトゥレット症候群などの疾患又は状態を有する患者における抑鬱、不安、自殺念慮、パーキンソニズムなどの任意の基礎となる症状が悪化しない場合、忍容性であると考えられる。忍容性である、及び忍容性はまた、規則的(例えば、日)用量における下方調整、又は例えば、有害効果に起因する用量の停止を必要としないデューテトラベナジン(又は適用可能な場合、他の薬物)の量も指す。忍容量は、対象間で、また、疾患の経過又は処置の経過にわたる対象の中で変化してもよい。
【0326】
対象における異常筋肉活動又は異常不随意運動(例えば、舞踏病)の制御を参照して本明細書で用いられる用語「十分な」とは、対象にとって観察可能な、満足のいく制御のレベルを指す。対象と相談する臨床医、治験責任医師は、異常筋肉活動又は異常不随意運動(例えば、舞踏病)の十分なレベルの制御がいつ達成されたかを決定する。典型的には、一定量の薬物により提供される異常筋肉活動又は異常不随意運動の制御レベルの十分性は、その量の忍容性により影響され、制御の観察可能な増加をもたらす最大忍容量(「最適」量)であることが多い。デューテトラベナジンの量を、舞踏病の制御が十分となるまで、対象が「臨床的に意味がある」有害事象(試験薬と関連し、a)強度が中等度若しくは重度であるか、又はb)重篤な有害事象(SAE)の基準を満たすと定義される)と定義されるプロトコールを経験するまで、又は最大許容用量に達するまで、週ベースで増加させることができる。十分なレベルは、対象間で、また、疾患の経過又は処置の経過にわたって対象の中で変化してもよい。
【0327】
化合物を用いる処置により対象又は複数の対象においていくらかの品質が低下する、改善されるなどするレベル、程度、又は量を参照して用いられる語句「改善する」、「により改善される」、「低下する」、「により低下する」などは、未処置の対象又は複数の対象と比較したものであることを意味する。或いは、そのように明示的に記述される場合、これらの語句は、標準治療を用いて処置された対象又は複数の対象と比較したものであってもよい。そのような評価基準を、当業界で公知の関連する尺度又は評価を参照して作製することができる(例えば、障害制御及び/又は障害根絶の評価項目尺度、並びにLikertの尺度の本明細書に提供される例を参照されたい)。
【0328】
本明細書で用いられる用語「異常不随意運動」は、運動障害と関連する、又はそれにより引き起こされる不随意運動を含む。
【0329】
用語「対象」とは、限定されるものではないが、霊長類(例えば、ヒト、サル、チンパンジー、ゴリラなど)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、スナネズミ、ハムスター、フェレットなど)、ウサギ目、ブタ(例えば、ブタ、ミニブタ)、ウマ、イヌ、ネコなどの動物を指す。用語「対象」及び「患者」は、例えば、ヒト患者などの哺乳動物対象を参照して本明細書で互換的に用いられる。
【0330】
GTS-QOLは、2つの部分からなる。第1の部分は、典型的には、チックが対象の生活にどのように影響するかの様々な態様の27個の質問評価であり、それぞれ、問題なし、わずかな問題、中等度の問題、顕著な問題、又は重大な問題の5つの選択の尺度で評定される。例えば、日常生活の身体/活動(ADL)下位尺度などの、これらの態様のいくつかを組み合わせる下位尺度に注目することができる。第2の部分は、対象の生活満足度の単純な評定であり、100は非常に満足、0は非常に不満足である。
【0331】
SF-36身体機能スコア。SF-36は、健康に関連する生活の質を評価するために用いられる36項目短文式健康調査である(Ware、1996)。SF-36は、特定の集団の比較及び様々な疾患の相対的負荷の比較において有用であった。SF-36は、HD患者において評価され、強固な構築妥当性及び試験-再試験の信頼性を有することが示され、また、年齢一致対照及び10項目の身体機能尺度(Ho、2004)上での基準データから識別することもできた。SF-36全体をこの試験において施行したが、身体機能尺度(PF-10としても公知である)を重要な副次的評価項目として分析した。身体機能尺度は、身体活動に関する対象の把握された健康関連制限を検査するSF-36の10項目のサブセットである。SF-36身体機能スコアは、対象が歩くこと、階段を登ること、入浴すること、又は衣服を着ることなどの日常的な身体活動を実施するその能力を評定する10項目の尺度である。舞踏病が基本的な運動技術、歩行、及び歩くことを阻害する可能性を考慮すると、機能がより悪化した対象がこの評価基準上でより多い利益を経験するとは予想されない。
【0332】
トゥレット症候群患者の重症度の全般的印象(TS-PGIS)は、新規な5ポイントの尺度であり、1はチックなしを示し、2は軽度のチック(苦痛を伴わず、目立たず、又は日常生活を阻害しない)を示し、3は中等度(苦痛を伴い、目立し、時には日常生活を阻害し得る)を示し、4は顕著(非常な苦痛を伴い、目立ち、日常生活を阻害する)を示し、及び5は重篤(重度に苦痛を伴い、常に目立ち、多くの日常活動を妨げる)を示す。
【0333】
無チック間隔(Tic-Free Interval)は、5ポイントの尺度であり、1は最後のチック以来少なくとも1日の間隔を示し、2は最後のチック以来6時間~1日未満の間隔を示し、3は最後のチック以来1時間~6時間未満の間隔を示し、4は最後のチック以来5分~1時間未満の間隔を示し、5は最後のチック以来5分未満を示す。
【0334】
TS-CGIは、臨床医によりスコア化される7ポイントの尺度であり、1は正常又はチックなしを示し、2はチックが存在しても、存在しなくてもよいことを示し、3は気づいても、気づかなくてもよい、個体に注意を促さず、苦痛又は障害と関連しない軽度の観察可能な運動性及び/又は発音性チックを示し、4は常に気づき、個体に注意を促し、いくらかの苦痛又は障害と関連し得る中等度の観察可能な運動性及び/又は発音性チックを示し、5は破壊的であり、常に個体に注意を促し、常に有意な苦痛又は障害と関連する顕著な、過剰の運動性及び/又は発音性チックを示し、6は破壊的であり、常に個体に注意を促し、傷害又は日常機能を実行する不能性と関連する重篤な、極端に過剰の運動性及び/又は発音性チックを示し、7は極端なまともに生活できないほどのチックを示す。
【0335】
YGTSSは、運動性及び発音性チックの様々な態様及び重症度の包括的評価である。一態様においては、5つのカテゴリー(数、頻度、強度、複雑性、及び干渉)のそれぞれを、運動性及び発音性チックの両方について0から5までスコア化し、声帯チック重症度スコア(VTSS)と運動性チック重症度スコア(MTSS)のそれぞれについて0~25のチック重症度スコアをもたらす。総合すると、これらのものは、総合チック重症度(TTS)スコアを含む。別に、患者の生活の障害は、0~50の尺度でスコア化され、0は障害なしを示し、10は最少であり、20は軽度であり、30は中等度であり、40は顕著であり、50は重度であり、障害スコアを得る。障害スコアをTTSスコアに追加する場合、これはYGTSSの完全な全般的重症度スコア(GSS)を含む。
【0336】
トゥレット症候群患者の変化の全般的印象(TS-PGIC)は、7ポイントの尺度であり、-3は非常に大幅な悪化を示し、-2は大幅な悪化を示し、-1は最小限の悪化を示し、0は変化なしを示し、1は最小限の改善を示し、2は大幅な改善を示し、3は非常に大幅な改善を示す。
【0337】
GTS-QOLは2つの部分からなる。第1の部分は、典型的には、チックが対象の生活にどのように影響するかの様々な態様の27個の質問評価であり、それぞれ、問題なし、わずかな問題、中等度の問題、顕著な問題、又は重大な問題の5つの選択の尺度で評定される。第2の部分は、対象の生活満足度の単純な評定であり、100は非常に満足、0は非常に不満足である。
【0338】
無チック間隔は、5ポイントの尺度であり、1は最後のチック以来少なくとも1日の間隔を示し、2は最後のチック以来6時間~1日未満の間隔を示し、3は最後のチック以来1時間~6時間未満の間隔を示し、4は最後のチック以来5分~1時間未満の間隔を示し、5は最後のチック以来5分未満を示す。
【0339】
用語「VMAT2」とは、モノアミン、特に、ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、及びヒスタミンなどの神経伝達物質を、細胞質ゾルからシナプス小胞に輸送するように作用する内在性膜タンパク質である、小胞モノアミントランスポーター2を指す。
【0340】
用語「VMAT2媒介性障害」は、異常なVMAT2活性を特徴とする障害を指す。VMAT2媒介性障害は、VMAT2をモジュレートすることによって完全に、又は部分的に媒介され得る。特に、VMAT2媒介性障害は、VMAT2の阻害が、基礎となる障害に対するいくらかの効果をもたらす、例えば、VMAT2阻害剤の投与が、処置される少なくともいくらかの患者においていくらかの改善をもたらすものである。
【0341】
用語「VMAT2阻害剤」、「VMAT2を阻害する」又は「VMAT2の阻害」とは、VMAT2の機能を変化させる本明細書に開示される化合物の能力を指す。VMAT2阻害剤は、阻害剤とVMAT2との間に可逆性若しくは不可逆性の共有結合を形成することにより、又は非共有結合した複合体の形成によりVMAT2の活性を遮断するか、又は低下させることができる。そのような阻害は、特定の細胞型においてのみ現れるか、又は特定の生物学的事象に付随するものであってもよい。用語「VMAT2阻害剤」、「VMAT2を阻害する」又は「VMAT2の阻害」はまた、VMAT2と天然の基質との間で複合体が形成される確率を低下させることにより、VMAT2の機能を変化させることを指す。
【0342】
本明細書に開示される化合物は、治療的に許容される塩として存在してもよい。本明細書で用いられる用語「治療的に許容される塩」は、本明細書に定義されるように治療的に許容される本明細書に開示される化合物の塩又は両性イオン形態を表す。塩を、化合物の最終的な単離及び精製の間に、又は適切な化合物と、好適な酸若しくは塩基とを反応させることにより別々に調製することができる。治療的に許容される塩としては、酸及び塩基付加塩が挙げられる。
【0343】
薬学的に許容される塩の調製における使用のための好適な酸としては、限定されるものではないが、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アシル化アミノ酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ホウ酸、(+)-ショウノウ酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、D-グルクロン酸、L-グルタミン酸、α-オキソ-グルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、過塩素酸、リン酸、L-ピログルタミン酸、糖酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、及び吉草酸が挙げられる。
【0344】
薬学的に許容される塩の調製における使用のための好適な塩基としては、限定されるものではないが、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化亜鉛、又は水酸化ナトリウムなどの無機塩基;並びに第1級、第2級、第3級、及び第4級脂肪族及び芳香族アミン、例えば、L-アルギニン、ベネタミン、ベンザチン、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、2-(ジエチルアミノ)-エタノール、エタノールアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、イソプロピルアミン、N-メチル-グルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、L-リシン、モルホリン、4-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリン、メチルアミン、ピペリジン、ピペラジン、プロピルアミン、ピロリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン、ピリジン、キヌクリジン、キノリン、イソキノリン、第2級アミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N-メチル-D-グルカミン、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、及びトロメタミンなどの有機塩基が挙げられる。
【0345】
対象となる発明の化合物について生の化学物質として投与することが可能であってよいが、それらを医薬組成物として提供することも可能である。したがって、本明細書に開示される1つ若しくは複数のある特定の化合物、又はその1つ若しくは複数のその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、若しくは溶媒和物と共に、1つ若しくは複数の薬学的に許容されるその担体及び場合により、1つ又は複数の他の治療成分を含む医薬組成物が本明細書に提供される。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。周知の技術、担体、及び賦形剤のいずれかを、好適なものとして、また当業界で理解されるように;例えば、Remington's Pharmaceutical Sciencesに記載のように用いることができる。本明細書に開示される医薬組成物を、当業界で公知の任意の様式で、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作製、粉末化、乳化、封入、捕捉又は圧縮プロセスを用いて製造することができる。また、医薬組成物を、遅延、長期、延長、持続、パルス、制御、加速及び急速、標的化、プログラム放出、並びに胃貯留剤形を含む、改変放出剤形として製剤化することもできる。これらの剤形を、当業者には公知の従来の方法及び技術に従って調製することができる。
【0346】
組成物は、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、関節内、及び髄内など)、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸及び局所(皮膚、頬、舌下及び眼内を含む)投与にとって好適なものを含むが、最も好適な経路は、例えば、レシピエントの状態及び障害に依存し得る。組成物を、便宜上、単位剤形として提供することができ、製薬業界で周知の任意の方法により調製することができる。典型的には、これらの方法は、対象となる発明の化合物又はその薬学的な塩、プロドラッグ、若しくは溶媒和物(「活性成分」)を、1つ又は複数の補助成分を構成する担体と結合させる工程を含む。一般的には、活性成分を、液体担体又は微細に分割された固体担体又はその両方と均一かつ密接に結合させた後、必要に応じて、生成物を所望の製剤に形状化させることにより組成物を調製する。
【0347】
経口投与にとって好適な本明細書に開示される化合物の製剤を、それぞれ、所定量の活性成分を含有するカプセル、カシェ若しくは錠剤などの個別単位として;粉末若しくは顆粒として;水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として;又は水中油液体エマルジョン若しくは油中水液体エマルジョンとして提供することができる。また、活性成分を、ボーラス、舐剤又はペーストとして提供することもできる。
【0348】
経口的に用いることができる医薬調製物としては、錠剤、ゼラチン製の押し込み型カプセル、並びにゼラチンと、グリセロール又はソルビトールなどの可塑剤とから作られる軟質密閉カプセルが挙げられる。錠剤を、場合により、1つ又は複数の補助成分を用いる圧縮又は成型により作製することができる。好適な機械中で、場合により、結合剤、不活性希釈剤、又は潤滑剤、界面活性剤又は分散剤と混合した、粉末又は顆粒などの自由流動形態にある活性成分を圧縮することにより、圧縮錠剤を調製することができる。好適な機械中で、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末状化合物の混合物を成型することにより、成型錠剤を作製することができる。場合により、錠剤をコーティング又はスコア化し、その中の活性成分の低速又は制御放出を提供するように製剤化することができる。経口投与のための全ての製剤は、そのような投与にとって好適な剤形にあるべきである。押し込み型カプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び場合により、安定剤と混合した活性成分を含有してもよい。軟質カプセルにおいては、活性化合物を、脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解又は懸濁することができる。更に、安定剤を添加してもよい。糖衣錠コアは、好適なコーティングと共に提供される。この目的のために、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を含有してもよい濃縮糖溶液を用いることができる。同定のため、又は活性化合物用量の異なる組合せを特徴付けるために、錠剤又は糖衣錠コーティングに染料又は色素を添加してもよい。
【0349】
化合物を、注射、例えば、ボーラス注射又は連続輸注による非経口投与のために製剤化することができる。注射のための製剤を、単位剤形、例えば、アンプル中又は複数用量容器中に、保存剤を添加して提供することができる。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンなどの形態を取ってもよく、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの処方剤を含有してもよい。製剤を、単位用量又は複数用量容器、例えば、密封アンプル及びバイアル中に提供してもよく、使用直前に、滅菌液体担体、例えば、生理食塩水若しくは滅菌発熱源非含有水の添加のみを必要とする粉末形態又は凍結-乾燥(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時注射溶液及び懸濁液を、以前に記載された種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
【0350】
非経口投与のための製剤は、酸化防止剤、バッファー、静菌剤及び製剤を意図されるレシピエントの血液と等張性にする溶質を含有してもよい活性化合物の水性及び非水性(油性)滅菌注射溶液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含んでもよい水性及び非水性滅菌懸濁液を含む。好適な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの、懸濁液の粘度を増大させる物質を含有してもよい。場合により、懸濁液は、好適な安定剤又は高濃縮溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増大させる薬剤を含有してもよい。
【0351】
以前に記載された製剤に加えて、化合物を、デポー調製物として製剤化することもできる。そのような長期作用製剤を、埋込み(例えば、皮下若しくは筋肉内)により、又は筋肉内注射により投与することができる。かくして、例えば、化合物を、好適なポリマー物質若しくは疎水性物質(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)若しくはイオン交換樹脂と共に、又は難溶性誘導体、例えば、難溶性塩として製剤化することができる。
【0352】
頬又は舌下投与のために、組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、又はゲル剤の形態を取ってもよい。そのような組成物は、スクロース及びアカシア又はトラガカントなどの香料基剤中に活性成分を含んでもよい。
【0353】
また、化合物を、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、又は他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する坐剤又は停留浣腸などの直腸組成物中で製剤化することもできる。
【0354】
本明細書に開示されるある特定の化合物を、局所的に、すなわち、非全身投与によって投与することができる。これは、化合物が血流に有意に進入しないような、表皮又は口腔への本明細書に開示される化合物の外部的な適用並びに耳、眼及び鼻へのそのような化合物の滴下を含む。対照的に、全身投与は、経口、静脈内、腹腔内及び筋肉内投与を指す。
【0355】
局所投与にとって好適な製剤としては、ゲル、湿布、ローション、クリーム、軟膏又はペーストなどの、皮膚から炎症部位への浸透にとって好適な液体又は半液体調製物、及び眼、耳又は鼻への投与にとって好適な滴下剤が挙げられる。
【0356】
吸入による投与のために、化合物を、インサフレーター、ネブライザ、加圧パック又はエアロゾルスプレーを送達する他の従来の手段から送達することができる。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適なガスなどの好適な推進剤を含んでもよい。加圧エアロゾルの場合、一定量を送達するためのバルブを提供することにより、用量単位を決定することができる。或いは、吸入又は送気による投与のために、本発明による化合物は、乾燥粉末組成物、例えば、化合物と、ラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物の形態を取ってもよい。粉末組成物を、吸入器又はインサフレーターを補助として粉末を投与することができる単位剤形、例えば、カプセル、カートリッジ、ゼラチン又はブリスターパック中に提供することができる。
【0357】
好ましい単位用量製剤は、活性成分の、本明細書の以下に記載されるような有効用量、又はその適切な画分を含有するものである。
【0358】
化合物を、0.1~500mg/kg/日の用量で経口的に、又は注射により投与することができる。ヒト成人のための用量範囲は、一般に、5mg~2g/日である。個別単位で提供される錠剤又は他の形態の提供物は、便利には、そのような用量で、又は複数の用量、例えば、5mg~500mg、通常、約10mg~200mgを含有する単位として有効である一定量の1つ又は複数の化合物を含有してもよい。
【0359】
単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される宿主及び特定の投与様式に応じて変化する。
【0360】
ある特定の実施形態においては、本明細書に開示される化合物を、その全体が参照により本明細書に組込まれる2013年9月18日に出願された米国特許出願第14/030,322号に開示された製剤及び方法のいずれかを用いて製剤化又は投与することができる。
【0361】
化合物を、様々な様式で、例えば、経口的、局所的に、又は注射により投与することができる。患者に投与される化合物の正確な量は、担当医の責任である。任意の特定の患者のための特定の用量レベルは、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的健康、性別、食事、投与の時間、投与経路、排出速度、薬物の組合せ、処置される正確な障害、及び処置される障害の重症度などの様々な因子に依存する。また、投与経路は、障害及びその重症度に応じて変化してもよい。
【0362】
患者の状態が医師の裁量で改善しない場合、化合物の投与を、慢性的に、すなわち、患者の障害の症状を改善するか、又はさもなければ制御若しくは制限するために、患者の生涯を通してなど、長期間にわたって行ってもよい。
【0363】
患者の状態が医師の裁量で改善する場合、化合物の投与を、ある特定の時間長にわたって連続的に、又は一時的に停止(すなわち、「休薬日」)して行ってもよい。
【0364】
一度、患者の状態の改善が生じたら、必要に応じて、維持用量を投与する。その後、用量若しくは投与頻度、又はその両方を、症状の関数として、改善された障害が保持されるレベルまで減少させることができる。しかしながら、患者は、症状の再発時に長期ベースの間欠的処置を必要とし得る。
【0365】
VMAT2媒介性障害を処置する方法であって、そのような障害を有するか、又は有すると疑われる対象に、治療上有効量の本明細書に開示される化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグを投与する工程を含む方法が本明細書に開示される。
【0366】
VMAT2媒介性障害としては、限定されるものではないが、慢性過剰運動障害、ハンチントン病、半側バリスム、老人性舞踏病、チック障害、遅発性ジスキネジー、ジストニア、トゥレット症候群、抑鬱、がん、関節リウマチ、精神病、多発性硬化症、喘息、及び/又はVMAT2阻害剤の投与により減少させる、軽減する、若しくは防止することができる任意の障害が挙げられる。
【0367】
異常筋肉活動、異常不随意運動、又は運動障害を処置する方法であって、そのような障害を有するか、又は有すると疑われる対象に、治療上有効量の本明細書に開示される化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグを投与する工程を含む方法も本明細書に開示される。
【0368】
運動障害としては、静座不能、無動症、運動失調、アテトーシス、バリスム、動作緩慢、脳性麻痺、舞踏病、大脳皮質基底核変性症、ジスキネジー(例えば、発作性)、眼瞼痙攣、書痙(手ジストニア)、喉頭ジストニア(痙攣性発声障害)、及び顎口腔ジストニアを含むジストニア(全身性、分節性、又は限局性)、本態性振戦、ゲニオスパスム、遺伝性痙性対麻痺、ハンチントン病、多系統萎縮症(シャイ・ドレーガー症候群)、ミオクローヌス、パーキンソン病、パーキンソン病レボドパ誘導性ジスキネジー、パーキンソニズム、進行性核上麻痺、むずむず脚症候群、レット症候群、痙性斜頸(頸部ジストニア)、脳卒中に起因する痙攣、脳性麻痺、多発性硬化症、脊髄又は脳傷害、常同運動障害、常同症、シデナム舞踏病、共同運動、遅発性ジスキネジー、チック、トゥレット症候群、及びウィルソン病が挙げられる。
【0369】
ある特定の実施形態においては、異常筋肉活動、異常不随意運動、又は運動障害を処置する方法は、(1)化合物若しくはその代謝物の血漿レベルの個体間変動の減少;(2)用量単位あたりの化合物の平均血漿レベルの増加若しくは化合物の少なくとも1つの代謝物の平均血漿レベルの低下;(3)対象における少なくとも1つのシトクロムP450若しくはモノアミンオキシダーゼアイソフォームの阻害及び/若しくはそれによる代謝の減少;(4)対象における少なくとも1つ多型的に発現されるシトクロムP450アイソフォームによる代謝の減少;(5)少なくとも1つの障害制御及び/若しくは障害根絶評価項目の統計的に有意な改善;(6)障害の処置中の臨床効果の改善;(7)主要臨床利益としての異常栄養若しくは肝臓パラメータの、再発の防止、若しくは減少若しくは出現の遅延、又は(8)対応する非同位体濃縮化合物と比較した、任意の診断的肝胆汁機能評価項目の有害な変化の減少若しくは消失をもたらすために、対象に、治療上有効量の本明細書に開示される化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグを投与する工程を含む。
【0370】
ある特定の実施形態においては、対応する非同位体濃縮化合物と比較して、約5%を超えて、約10%を超えて、約20%を超えて、約30%を超えて、約40%を超えて、又は約50%を超えて、本明細書に開示される化合物、若しくはその代謝物の血漿レベルの個体間変動は減少する;本明細書に開示される化合物の平均血漿レベルは増加する;本明細書に開示される化合物の代謝物の平均血漿レベルは減少する;本明細書に開示される化合物によるシトクロムP450若しくはモノアミンオキシダーゼアイソフォームの阻害は減少する;又は少なくとも1つの多型的に発現されるシトクロムP450アイソフォームによる本明細書に開示される化合物の代謝は減少する。
【0371】
本明細書に開示される化合物、又はその代謝物の血漿レベルを、Liら、Rapid Communications in Mass Spectrometry 2005、19、1943~1950頁; Jindalら、Journal of Chromatography, Biomedical Applications 1989、493(2)、392~7頁; Schwartzら、Biochemical Pharmacology 1966、15(5)、645~55頁; Mehvarら、Drug Metabolism and Disposition 1987、15(2)、250~5頁; Robertsら、Journal of Chromatography, Biomedical Applications 1981、226(1)、175~82頁;及びそこに引用される任意の参考文献により記載された方法又はその行われる任意の改変を用いて測定することができる。
【0372】
哺乳動物対象におけるシトクロムP450アイソフォームの例としては、限定されるものではないが、CYP1A1、CYP1A2、CYP1B1、CYP2A6、CYP2A13、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C18、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1、CYP2G1、CYP2J2、CYP2R1、CYP2S1、CYP3A4、CYP3A5、CYP3A5P1、CYP3A5P2、CYP3A7、CYP4A11、CYP4B1、CYP4F2、CYP4F3、CYP4F8、CYP4F11、CYP4F12、CYP4X1、CYP4Z1、CYP5A1、CYP7A1、CYP7B1、CYP8A1、CYP8B1、CYP11A1、CYP11B1、CYP11B2、CYP17、CYP19、CYP21、CYP24、CYP26A1、CYP26B1、CYP27A1、CYP27B1、CYP39、CYP46、及びCYP51が挙げられる。
【0373】
哺乳動物対象におけるモノアミンオキシダーゼアイソフォームの例としては、限定されるものではないが、MAOA、及びMAOBが挙げられる。
【0374】
シトクロムP450アイソフォームの阻害は、Koら(British Journal of Clinical Pharmacology、2000、49、343~351頁)の方法により測定される。MAOAアイソフォームの阻害は、Weylerら(J. Biol Chem. 1985、260、13199~13207頁)の方法により測定される。MAOBアイソフォームの阻害は、Uebelhackら(Pharmacopsychiatry、1998、31、187~192頁)の方法により測定される。
【0375】
哺乳動物対象における多型的に発現されるシトクロムP450アイソフォームの例としては、限定されるものではないが、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、及びCYP2D6が挙げられる。
【0376】
肝臓ミクロソーム、シトクロムP450アイソフォーム、及びモノアミンオキシダーゼアイソフォームの代謝活性は、本明細書に記載の方法によって測定される。
【0377】
障害制御及び/又は障害根絶評価項目の改善、又は臨床効果の改善の例としては、限定されるものではないが、
b. 統一ハンチントン病評価尺度(UHDRS)スコアの改善;
c. UHDRSの総合最大舞踏病(TMC)スコアの改善;
d. UHDRSの総合運動スコア(TMC)の改善;
e. 患者の変化の全般的印象(PGIC)スコアの改善;
f. 変化の臨床上の全般的印象(CGIC)スコアの改善;
g. 構音障害スコアを含む、統一パーキンソン病評価尺度スコアの改善;
h. 異常不随意運動尺度(AIMS)スコアの改善;
i. Goetzのジスキネジー評価尺度スコアの改善;
j. 統一ジスキネジー評価尺度スコアの改善;
k. PDQ-39パーキンソン病質問票スコアの改善;
l. 全般的霊長類ジスキネジー評価尺度スコアの改善;
m. バーグバランステストスコアの改善;
n. SF-36スコアの身体機能尺度の改善;
o. 入院不安及び抑鬱尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS))スコアの低下;
p. コロンビア自殺重症度評価尺度(Columbia Suicide Severity Rating Scale(C-SSRS))スコアの低下;
q. 嚥下障害質問票(SDQ)スコアの改善;
r. バーンズ静座不能評価尺度(Barnes Akathisia Rating Scale(BARS))スコアの改善(低下);
s. エプワース眠気尺度(Epworth Sleeping Scale(ESS))スコアの低下;
t. 改変型頭頸部ジストニア24(CDQ-24)スコアの改善;
u. モントリオール認知機能評価(Montreal Cognitive Assessment(MoCA));
v. 運動性チック重症度、声帯チック重症度、総合チック重症度スコア(TTS)障害、及びその全般的重症度(GSS)スコアを含む、イェール全般的チック重症度尺度(YGTSS)スコアの改善;
w. 総合チック重症度スコア(TTS)の改善(低下);
x. トゥレット症候群の臨床上の全般的印象(TS-CGI)スコアの改善;
y. トゥレット症候群患者の重症度の全般的印象(TS-PGIS)スコアの改善;
z. 小児抑鬱調査票2(Children's Depression Inventory)(CDI-2;親及び自己の報告バージョン);
aa. 小児コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS);
bb. 小児Yale-Brown強迫観念-強迫行動尺度(CY-BOCS)スコア;
cc. 日常生活下位尺度スコアの身体/活動、視覚アナログ尺度(VAS)により測定される全体的生活満足度スコア、心理学的下位尺度スコア、強迫観念-強迫行動下位尺度スコア、及び/又はその認知下位尺度スコアを含む、ジルドラトゥレット症候群-生活の質(GTS-QOL)
が挙げられる。
【0378】
診断的肝胆汁機能評価項目の例としては、限定されるものではないが、アラニンアミノトランスフェラーゼ(「ALT」)、血清グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ(「SGPT」)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(「AST」又は「SGOT」)、ALT/AST比、血清アルドラーゼ、アルカリホスファターゼ(「ALP」)、アンモニアレベル、ビリルビン、ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ(「GGTP」、「γ-GTP」、又は「GGT」)、ロイシンアミノペプチダーゼ(「LAP」)、肝生検、肝臓超音波検査、肝臓核スキャン、5'-ヌクレオチダーゼ、及び血中タンパク質が挙げられる。肝胆汁評価項目は、「Diagnostic and Laboratory Test Reference」、第4版、Mosby、1999に記載されたような記述された正常レベルと比較される。
【0379】
ヒト処置にとって有用であることに加えて、本明細書に開示されるある特定の化合物及び製剤は、哺乳動物、げっ歯類などを含む、ペット、珍しい動物及び家畜の獣医学的処置にとっても有用であり得る。より好ましい動物としては、ウマ、イヌ、及びネコが挙げられる。
【0380】
組合せ療法
本明細書に開示される化合物を組み合わせるか、又はVMAT2媒介性障害の処置において有用な他の薬剤と組み合わせて用いることもできる。又は、ほんの一例に過ぎないが、本明細書に記載の化合物のうちの1つの治療有効性を、アジュバントの投与により増強することができる(すなわち、アジュバントそれ自体では、最小限の治療利益しか有することができないが、別の治療剤と組み合わせた場合、患者に対する全体の治療利益は増強される)。
【0381】
そのような他の薬剤、アジュバント、又は薬物を、それについて一般的に用いられる経路により、及び量で、本明細書に開示される化合物と同時に、又は連続的に投与することができる。本明細書に開示される化合物を1つ又は複数の他の薬物と同時に用いる場合、本明細書に開示される化合物に加えてそのような他の薬物を含有する医薬組成物を用いることができるが、必須ではない。
【0382】
ある特定の実施形態においては、本明細書に開示される化合物を、限定されるものではないが、レボドパなどの1つ又は複数のドーパミン前駆体と組み合わせることができる。
【0383】
ある特定の実施形態においては、本明細書に開示される化合物を、限定されるものではないが、カルビドパなどの1つ又は複数のDOPAデカルボキシラーゼ阻害剤と組み合わせることができる。
【0384】
ある特定の実施形態においては、本明細書に開示される化合物を、限定されるものではないが、エンタカポン及びトルカポンなどの1つ又は複数のカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤と組み合わせることができる。
【0385】
ある特定の実施形態においては、本明細書に開示される化合物を、限定されるものではないが、アポモルフィン、ブロモクリプチン、ロピニロール、及びプラミペキソールなどの1つ又は複数のドーパミン受容体アゴニストと組み合わせることができる。
【0386】
ある特定の実施形態においては、本明細書に開示される化合物を、限定されるものではないが、セレゲリン及びリルゾールなどの1つ又は複数の神経保護剤と組み合わせることができる。
【0387】
ある特定の実施形態においては、本明細書に開示される化合物を、限定されるものではないが、アマンチジンなどの1つ又は複数のNMDAアンタゴニストと組み合わせることができる。
【0388】
ある特定の実施形態においては、本明細書に開示される化合物を、限定されるものではないが、クロルプロマジン、レボメプロマジン、プロマジン、アセプロマジン、トリフルプロマジン、シアメマジン、クロルプロエタジン、ジキシラジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオプロパゼート、トリフルオペラジン、アセトフェナジン、チオプロペラジン、ブタペラジン、ペラジン、ペリシアジン、チオリダジン、メソリダジン、ピポチアジン、ハロペリドール、トリフルペリドール、メルペロン、モペロン、ピパムペロン、ブロムペリドール、ベンペリドール、ドロペリドール、フルアニゾン、オキシペルチン、モリンドン、セルチンドール、ジプラシドン、フルペンチキソール、クロペンチキソール、クロルプロチキセン、チオチキセン、ズクロペンチキソール、フルスピリレン、ピモジド、ペンフルリドール、ロキサピン、クロザピン、オランザピン、ケチアピン、テトラベナジン、スルピリド、スルトプリド、チアプリド、レモキシプリド、アミスルプリド、ベラリプリド、レボスルピリド、リチウム、プロチペンジル、リスペリドン、クロチアピン、モサプラミン、ゾテピン、プリピプラゾール、及びパリペリドンなどの1つ又は複数の抗精神病剤と組み合わせることができる。
【0389】
ある特定の実施形態においては、本明細書に開示される化合物を、限定されるものではないが、アルプラゾラム、アジナゾラム、ブロマゼパム、カマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロチアゼパム、クロキサゾラム、ジアゼパム、ロフラゼプ酸エチル、エスチゾラム、フルジアゼパム、フルニトラゼパム、ハラゼパム、ケタゾラム、ロラゼパム、メダゼパム、ダゾラム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、クロラゼプ酸カリウム、ピナゼパム、プラゼパム、トフィソパム、トリアゾラム、テマゼパム、及びクロルジアゼポキシドなどの1つ又は複数のベンゾジアゼピン(「マイナートランキライザー」)と組み合わせることができる。
【0390】
ある特定の実施形態においては、本明細書に開示される化合物を、オランザピン又はピモジドと組み合わせることができる。
【0391】
本明細書に開示される化合物を、限定されるものではないが、抗レトロウイルス剤;CYP3A阻害剤;CYP3A誘導剤;プロテアーゼ阻害剤;アドレナリン作動薬;抗コリン剤;肥満細胞安定剤;キサンチン;ロイコトリエンアンタゴニスト;糖質コルチコイド治療剤;局部又は全身麻酔剤;非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、例えば、ナプロキセン;抗細菌剤、例えば、アモキシシリン;コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)阻害剤、例えば、アナセトラピブ;抗真菌剤、例えば、イソコナゾール;敗血症治療剤、例えば、ドロトレコギン-α;ステロイド剤、例えば、ヒドロコルチゾン;局部又は全身麻酔剤、例えば、ケタミン;ノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)、例えば、アトモキセチン;ドーパミン再取込み阻害剤(DARI)、例えば、メチルフェニデート;セロトニン-ノルエピネフリン再取込み阻害剤(SNRI)、例えば、ミルナシプラン;鎮静剤、例えば、ジアゼファム;ノルエピネフリン-ドーパミン再取込み阻害剤(NDRI)、例えば、ブプロピオン;セロトニン-ノルエピネフリン-ドーパミン再取込み阻害剤(SNDRI)、例えば、ベンラファキシン;モノアミンオキシダーゼ阻害剤、例えば、セレギリン;視床下部リン脂質;エンドセリン変換酵素(ECE)阻害剤、例えば、ホスホラミドン;オピオイド、例えば、トラマドール;トロンボキサン受容体アンタゴニスト、例えば、イフェトロバン;カリウムチャネルオープナー;トロンビン阻害剤、例えば、ヒルジン;視床下部リン脂質;増殖因子阻害剤、例えば、PDGF活性のモジュレータ;血小板活性化因子(PAF)アンタゴニスト;抗血小板剤、例えば、GPIIb/IIIa遮断剤(例えば、アブドキシマブ、エプチフィバチド、及びチロフィバン)、P2Y(AC)アンタゴニスト(例えば、クロピドグレル、チクロピジン及びCS-747)、及びアスピリン;抗凝固剤、例えば、ワルファリン;低分子量ヘパリン、例えば、エノキサパリン;第VIIa因子阻害剤及び第Xa因子阻害剤;レニン阻害剤;中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤;バソペプシダーゼ阻害剤(デュアルNEP-ACE阻害剤)、例えば、オマパトリラット及びゲモパトリラット;HMG CoAリダクターゼ阻害剤、例えば、プラバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、NK-104(イタバスタチン、ニスヴァスタチン、又はニスバスタチンとしても知られる)、及びZD-4522(ロスバスタチン、又はアタバスタチン又はビサスタチンとしても知られる);スクアレン合成酵素阻害剤;フィブレート;胆汁酸抑制剤、例えば、ケストラン;ナイアシン;抗アテローム性動脈硬化症剤、例えば、ACAT阻害剤;MTP阻害剤;カルシウムチャネル遮断剤、例えば、ベシル酸アムロジピン;カリウムチャネル活性化因子;アルファ-ムスカリン剤;ベータ-ムスカリン剤、例えば、カルベジロール及びメトプロロール;抗不整脈剤;利尿剤、例えば、クロロチアジド、ヒドロキオロチアジド、フルメチアジド、ヒドロフルメチアジド、ベンドロフルメチアジド、メチルクロロチアジド、トリキオロメチアジド、ポリチアジド、ベンゾチアジド、エタクリン酸、トリクリナフェン、クロルサリドン、フロセニルド、ムソリミン、ブメタニド、トリアムテレン、アミロリド、及びスピロノラクトン;血栓溶解剤、例えば、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、組換えtPA、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、及びアニソイル化プラスミノゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体(APSAC);抗糖尿病剤、例えば、ビグアニド(例えば、メトフォルミン)、グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース)、インスリン、メグリチニド(例えば、レパグリニド)、スルホニルウレア(例えば、グリメピリド、グリブリド、及びグリピジド)、チオゾリジンジオン(例えば、トログリタゾン、ロシグリタゾン及びピオグリタゾン)、及びPPAR-ガンマアゴニスト;ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト、例えば、スピロノラクトン及びエプレレノン;成長ホルモン分泌促進剤;aP2阻害剤;ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えば、PDE III阻害剤(例えば、シロスタゾール)及びPDE V阻害剤(例えば、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル);タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤;抗炎症剤;抗増殖剤、例えば、メトトレキサート、FK506(タクロリムス、Prograf)、ミコフェノール酸モフェチル;化学療法剤;免疫抑制剤;抗がん剤及び細胞傷害剤(例えば、アルキル化剤、例えば、窒素マスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、エチレンイミン、及びトリアゼン);代謝拮抗剤、例えば、葉
酸アンタゴニスト、プリン類似体、及びピリジン類似体;抗生物質、例えば、アントラサイクリン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ダクチノマイシン、及びプリカマイシン;酵素、例えば、L-アスパラギナーゼ;ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ホルモン剤、例えば、糖質コルチコイド(例えば、コルチゾン)、エストロゲン/抗エストロゲン剤、アンドロゲン/抗アンドロゲン剤、プロゲスチン、及び黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト、及び酢酸オクトレオチド;微小管破壊剤、例えば、エクテイナシジン;微小管安定化剤、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、及びエポチロンA-F;植物由来産物、例えば、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、及びタキサン;並びにトポイソメラーゼ阻害剤;プレニル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;並びにシクロスポリン;ステロイド、例えば、プレドニゾン及びデキサメタゾン;細胞傷害薬、例えば、アザチプリン及びシクロホスファミド;TNF-アルファ阻害剤、例えば、テニダップ;抗TNF抗体又は可溶性TNF受容体、例えば、エタネルセプト、ラパマイシン、及びレフルニミド;並びにシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤、例えば、セレコキシブ及びロフェコキシブ;並びに混合剤、例えば、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、ミトタン、ヘキサメチルメラミン、金化合物、白金配位複合体、例えば、シスプラチン、サトラプラチン、及びカルボプラチンなどの他のクラスの化合物と組み合わせて投与することもできる。
【0392】
かくして、別の態様において、ある特定の実施形態は、VMAT2媒介性障害の処置を必要とする対象におけるそのような障害を処置するための方法であって、前記対象に、前記障害の処置のための少なくとも1つの更なる薬剤と共に、前記対象における前記障害を軽減するか、又は防止するのに有効な本明細書に開示される一定量の化合物を投与する工程を含む方法を提供する。関連する態様において、ある特定の実施形態は、VMAT2媒介性障害の処置のための1つ又は複数の更なる薬剤と共に本明細書に開示される少なくとも1つの化合物を含む治療組成物を提供する。
【0393】
化合物を調製するための一般的合成方法
本明細書に開示される化合物を、当業者には公知の方法及びその日常的な改変により、並びに/又は米国特許出願公開第20100130480号(段落[0093]~[0121])、米国特許出願公開第20120003330号(段落[0104]~[0162])、WO 2005077946; WO 2008/058261; EP 1716145; Leeら、J. Med. Chem.、1996、(39)、191~196頁; Kilbournら、Chirality、1997、(9)、59~62頁; Boldtら、Synth. Commun.、2009、(39)、3574~3585頁; Rishelら、J. Org. Chem.、2009、(74)、4001~4004頁; DaSilvaら、Appl. Radiat. Isot.、1993、44(4)、673~676頁; Poppら、J. Pharm. Sci.、1978、67(6)、871~873頁; Ivanovら、Heterocycles 2001、55(8)、1569~1572頁;米国特許第2,830,993号;米国特許第3,045,021号; WO 2007130365; WO 2008058261(これらはその全体が本明細書に組込まれる)、及びそこに引用される参考文献に記載されたものと類似する手順、及びその日常的な改変に従って調製することができる。
【0394】
同位体水素を、組込み率が予め決定される重水素化された試薬を用いる合成技術;及び/又は組込み率が平衡条件により決定され、反応条件に応じて高く変動し得る交換技術により本明細書に開示される化合物中に導入することができる。三重水素又は重水素が既知の同位体含量の三重水素化又は重水素化された試薬により直接的かつ特異的に挿入される合成技術は、高い三重水素又は重水素存在量をもたらすことができるが、必要とされる化学物質によって制限され得る。他方で、交換技術は、より低い三重水素又は重水素組込みをもたらすことができ、その同位体は分子上の多くの部位にわたって分布することが多い。
【0395】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物の特定例としては、米国特許出願公開第20100130480号の段落[0122]及び米国特許出願公開第20120003330号の段落[0163](参照により本明細書に組込まれる)に記載された一覧から選択される化合物が挙げられる。
【0396】
非同位体濃縮類似体と比較した本明細書に開示されるある特定の化合物のin vitroでの代謝特性の変化及びそのような変化を決定する方法は、米国特許出願公開第20100130480号の段落[0125]及び米国特許出願公開第20120003330号の段落[0165]~[0185](参照により本明細書に組込まれる)に記載されている。
【0397】
製剤
化合物を、例えば、米国特許出願公開第2014/0336386号に開示されたような、当業界で公知の方法により、本明細書に開示される投薬レジメン及び方法における使用のために製剤化することができる。これらの製剤の例を、以下に提供する。
【0398】
15mgのd6-テトラベナジン胃浸食性長期放出(小錠剤)(製剤A)。以下のTable 1(表1)は、15mgの(RR,SS)-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジ(メトキシ-d3)-3-(2-メチルプロピル)-2H-ベンゾ[a]キノリジン-2-オンを含む350mgの総重量の胃浸食性顆粒製剤錠剤の成分を開示する。
【0399】
【表1】
【0400】
d6-テトラベナジン(粉砕したもの)を、高剪断造粒機中でマンニトール粉末、微結晶性セルロース、PVP K29/32及びTween 80(ポリソルベート80)と混合し、最初に高い推進及び切断速度で5分間乾燥混合する。高い推進速度及び低い切断速度で混合しながら、精製水を混合粉末に添加して、材料を顆粒化する。高い推進及び高い切断速度での更なる混合及び水添加を、所望の顆粒化エンドポイントが達成されるまで続ける。得られる顆粒を湿式篩い分けにかけて、大きすぎる塊を破壊し、材料を流動床乾燥機に添加し、所望のL.O.D.(乾燥減量)が達成されるまで60℃で乾燥する。乾燥した材料を、#20のメッシュスクリーンを通して篩いにかけ、大きすぎる材料を、20メッシュのサイズのちょうど下の粒径に粉砕する。乾燥し、サイズ分けされた材料を、拡散混合機(V-Blender)中で噴霧乾燥されたマンニトール及びPOLYOX(登録商標)N60Kと混合し、そこで15分間ブレンドする。次いで、ステアリン酸マグネシウムを、#30のメッシュスクリーンに通し、V-Blender中のブレンドされた材料に添加する。次いで、内容物を3分間潤滑させ、錠剤圧縮のために排出する。パンチ並びに所望の形状及びサイズの金型を装着した回転式打錠機を用いて、潤滑されたブレンドを、350mgの理論重量の錠剤に圧縮する。
【0401】
7.5mgのd6-テトラベナジン胃浸食性長期放出(小錠剤)(製剤A)。以下のTable 2(表2)は、7.5mgのd6-テトラベナジンを含む350mgの総重量の胃浸食性顆粒製剤錠剤の成分を開示する。例1について記載されたものと同じプロセスである。
【0402】
【表2】
【0403】
15mgのd6-テトラベナジン胃貯留性長期放出(大錠剤)(製剤B)。以下のTable 3(表3)は、15mgのd6-テトラベナジンを含む700mgの総重量の胃貯留性製剤錠剤の成分を開示する。胃貯留性錠剤は、長さ約0.7087インチ及び幅0.3071インチの寸法を有し、それぞれの反対側に0.0540インチのカップ深さの丸い端部を有する細長いカプセルである。
【0404】
【表3】
【0405】
7.5mgのd6-テトラベナジン胃貯留性長期放出(大錠剤)(製剤B)。以下のTable 4(表4)は、7.5mgのd6-テトラベナジンを含む700mgの総重量の胃貯留性製剤錠剤の成分を開示する。胃貯留性錠剤は、長さ約0.7087インチ及び幅0.3071インチの寸法を有し、それぞれの反対側に0.0540インチのカップ深さの丸い端部を有する細長いカプセルである。例1について記載されたものと同じプロセスである。しかし、理論圧縮重量は700mgである。
【0406】
【表4】
【0407】
6mgのd6-テトラベナジン即時放出錠剤。以下のTable 5(表5)は、6mgのd6-テトラベナジンを含む125mgの総重量の即時放出錠剤の成分を開示する。
【0408】
【表5】
【0409】
d6-テトラベナジン(粉砕したもの)を、高剪断造粒機中でマンニトール粉末、微結晶性セルロース、グリコール酸ナトリウムデンプン、PVP K29/32及びTween 80(ポリソルベート80)と混合し、最初に高い推進及び切断速度で5分間乾燥混合する。高い推進速度及び低い切断速度で混合しながら、精製水を混合粉末に添加して、材料を顆粒化する。高い推進及び高い切断速度での更なる混合及び水添加を、所望の顆粒化エンドポイントが達成されるまで続ける。得られる顆粒を湿式篩い分けにかけて、大きすぎる塊を破壊し、材料を流動床乾燥機に添加し、所望のL.O.D.(乾燥減量)が達成されるまで60℃で乾燥する。乾燥した材料を、#20のメッシュスクリーンを通して篩いにかけ、大きすぎる材料を、20メッシュのサイズのちょうど下の粒径に粉砕する。乾燥し、サイズ分けされた材料を、噴霧乾燥されたマンニトール及びグリコール酸ナトリウムデンプンと混合する。
【0410】
デューテトラベナジンを用いる本明細書に開示される全ての方法及び組成物において、デューテトラベナジンを、上記のTable 1~5(表1~表5)に開示された医薬組成物の一部として投与又は製剤化することができる。
【0411】
臨床試験及び結果
First-HD
First-HDは、HDと関連する舞踏病を有する対象におけるデューテトラベナジンの効能、安全性、及び忍容性を評価するために設計された無作為化、二重盲検、プラセボ対照(コントロール)、平行群試験であった。この試験は、ハンチントン研究グループ(Huntington Study Group)と共同して米国及びカナダで行われた。
【0412】
試験設計
First-HDにおける対象を、1日1回、6mgで出発して、1日2回、24mgまでの用量で毎週、滴定して(48mgの総最大日用量)、デューテトラベナジン又はプラセボで処置した。合計90人の対象(各群45人)を、13週にわたる評価のために登録した。対象は、最大8週にわたって最適用量に個別に滴定され、4週にわたって最適用量で維持療法を受け、試験の最終週に試験薬から離脱した。
【0413】
対象の素質並びに人口動態及びベースライン特性
無作為化された90人の対象のうち、87人の対象が試験を完了した。試験集団は、HDと関連する舞踏病を有する対象について典型的なものであった。ベースラインで、対象の平均年齢は53.7歳であった。対象の大部分は白人(92.2%)であり、男性(55.6%)であった。対象集団間の平均CAG反復長は、43.9であった。ベースラインで、平均TMCスコアは、全集団において12.7であった(8.0~19.5の範囲)。
【0414】
試験評価項目及び測定値
試験に関する主要効能評価項目は、UHDRSの最大舞踏病スコアにおけるベースラインから維持療法までの変化(第9週と第12週の値の平均)であった。総合最大スコア、又はTMCは、7つの体領域:顔、口/舌、胴体、及び四肢における舞踏病の医師に基づく定量的評価であり、スコアが高いほど、より重篤な舞踏病を示す。これは、2008年にテトラベナジンを考慮し、認可した時のFDAにより受け入れられたもの(NDA 21894)と同じ評価項目である。
【0415】
UHDRSの総合運動スコア(TMS)は、First-HDにおける更なる効能評価項目として事前に指定された。TMSは、ジストニア、歩行、パーキンソニズム、及び姿勢不安定などの、舞踏病以外の特徴的な運動異常に対処する項目を含む、HDの全ての運動特徴を評価する。
【0416】
TMCスコアの変化の臨床関連性を、ベースラインから処置の終わり(第12週)までの変化を評価する4つの事前に指定された副次的評価項目と共に評価した。これらの副次的評価項目を、階層的様式で試験した:
1. 患者の変化の全般的印象(PGIC)に基づく処置の成功;
2. 変化の臨床上の全般的印象(CGIC)に基づく処置の成功;
3. SF-36の身体機能尺度;及び
4. バーグバランステスト(BBT)により評価される平衡。
【0417】
PGIC及びCGICは、初期療法後の特定の訪問時に対象の全体的なHD症状を評価するための、それぞれ、対象及び治験責任医師に尋ねる単項目の質問票である。両評価は、応答が非常に大幅な悪化(-3)から非常に大幅な改善(+3)までの範囲である7ポイントのLikert尺度を使用して、療法に対する全体的応答を評価する。患者及び医師に、「あなたの(又は対象の)全体的なハンチントン病の症状に関して、あなたは試験薬を開始する直前と比較して、あなた自身(又は対象)をどのように記述するか」と尋ねた。これらの尺度による処置の成功を、第12週での大幅な改善又は非常に大幅な改善の評定と定義した。第12週で応答しなかった対象は、処置の失敗と見なした。
【0418】
有害事象(AE)及び処置とのその潜在的な関連もモニタリングした。特定の焦点のAEのカテゴリーは、テトラベナジン使用と関連することが公知のものを含んでいた:
・精神障害:不眠、抑鬱/激越性鬱病、異常な夢、焦燥、不安、自殺念慮、衝動強迫、衝動的行動、及び睡眠障害;
・神経系障害:眠気、目眩、静座不能/不穏、認知障害、流涎症、ジスキネジー、片頭痛、頭痛、意識喪失、及び気絶(失神);
・全身性障害:易刺激性、疲労、歩行障害、胸痛、及び意気消沈;並びに
・胃腸障害:下痢、口渇、便秘、悪心、上腹部痛、消化不良、頻回排便、胃腸痛、嘔吐、嚥下障害、鼓腸、及び唾液分泌過多。
【0419】
AE報告に加えて、評価尺度を用いて、過剰のモノアミン枯渇に起因する潜在的な無症状毒性についてモニタリングした。そのような安全性尺度を、テトラベナジン開発プログラムにおいて用いた。First-HDにおいて適用されたこれらの尺度は、入院不安及び抑鬱尺度(HADS)、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)、嚥下障害質問票(SDQ)、統一パーキンソン病評価尺度(構音障害の項目)(UPDRS[構音障害])、バーンズ静座不能評価尺度(BARS)、及びエプワース眠気尺度(ESS)を含んでいた。更に、認知、行動、及び機能評価基準を含むUHDRSを、重要な訪問時に実施した。
【0420】
嚥下障害はHDを有する患者における一般的な問題であるため、嚥下障害質問票(SDQ)を予め用いて、試験中の嚥下障害を評価した。この15項目の評価を、パーキンソン病を有する患者において検証したところ、異なる病因から生じる嚥下障害を有する患者を同定するための高感度かつ高精度の手段であることが示された。SDQは、パーキンソン病における嚥下障害を評価するために国立神経疾患・脳卒中研究所共通データエレメントにより推奨され、かくして、HDを有する患者がその病気の一部として動作緩慢及び他のパーキンソン病症状を有し得ることを考慮すれば、彼らについても関連する。
【0421】
バイタルサイン(血圧、心拍数、呼吸数、及び体温)における少しの変動を、試験中に観察した。
【0422】
結果
処置期間の終わりでの平均用量は、デューテトラベナジン群においては39.7mg(SD 9.3mg、12~48mgの範囲)及びプラセボ群においては43.3mg(7.6mg、12~48mgの範囲)であった。CYP2D6機能が悪化した10人のデューテトラベナジン群の対象(不全代謝者、又は強力なCYP2D6阻害薬にある)についての平均用量は、34.8mg(3.8mg、30~42mgの範囲)出あった。全体的な順守率は、プラセボ群及びデューテトラベナジン群について、それぞれ、94.1%及び95.1%であった。
【0423】
デューテトラベナジンを用いる処置により、全ての評価項目において改善が得られ、有害事象の発生が減少した。以下の結果において、DTBZ=デューテトラベナジン、CI=信頼区間(t分布に基づく);SD=標準偏差;最小二乗平均及びp値を、処置の効果の両側検定から、並びに処置に関する項及び共変量としてのベースラインスコアを用いる共変量モデルの分析から得た。
【0424】
総合最大舞踏病スコア(TMC)。デューテトラベナジンを用いる処置により、最大舞踏病スコアの強固な改善が得られた。所与の時点でのTMCスコアは、UHDRSの項目12から決定される。TMCの変化は、ベースラインと維持療法値との差異である。ベースライン値は、スクリーニングと0日目の値の平均であり、維持療法値は、第9週と第12週の値の平均である。主要評価項目について、デューテトラベナジンを受ける対象は、プラセボと比較して、ベースラインから維持療法までのTMCスコア上で2.5単位の有意な低下を達成した(p<0.0001)。最大舞踏病のこの低下は、プラセボと比較して21パーセンテージポイントの低下を示した(p<0.0001)。デューテトラベナジン(DTBZ)を、テトラベナジンの日用量の約半分で投与した。したがって、デューテトラベナジンの効能は、テトラベナジンの日用量の約半分で達成された。
【0425】
【表6】
【0426】
総合運動スコア(TMS)。更に、プラセボと比較して、4.0のTMSの統計的に有意な改善が観察された。TMS改善はTMCスコア改善(-2.5単位)よりも規模において大きかったという事実は、舞踏病の軽減に加えて、HDの他の運動症状に対するデューテトラベナジン処置の利益を示唆している。この改善の大部分は舞踏病に起因するものであったが、総合最大ジストニアスコアも寄与し、デューテトラベナジンは0.9(SE 0.24)ポイント対プラセボ0.1(SE 0.32)ポイントの改善であった(p=0.02)。ベースラインから維持療法まで、TMCは、デューテトラベナジン群において37%改善したのに対し、プラセボ群において16%の改善であった(p<0.0001)。他のUHDRS運動構成要素の変化は、デューテトラベナジン群とプラセボ群との間でパーキンソニズムサブスコア(指タップ;回内運動/回外運動;硬直;動作緩慢;歩行;継ぎ足歩行;及び後方突進プルテストスコア)の変化に有意差がないなど、処置群間で有意に異ならなかった。
【0427】
【表7】
【0428】
総合運動スコア:テトラベナジンとの比較。対照的に、12週のプラセボ対照試験において、テトラベナジンは、UHDRSのTMCスコアを改善することが証明されたが、テトラベナジン処置は、TMSの統計的に有意な改善を示すことはできなった(Huntington Study Group、2006)。これらの結果は、テトラベナジンはHDと関連する舞踏病を制御するが、患者は舞踏病に対する観察された利益を相殺する運動機能の低下の可能性を経験し得ることを示唆する。
【0429】
結論。したがって、デューテトラベナジンは、一般に、運動障害の処置のための優れた選択であり得る。デューテトラベナジンがテトラベナジンの日用量の約半分で効能を達成したことは注目に値する。
【0430】
患者の変化の全般的印象(PGIC)及び変化の臨床上の全般的印象(CGIC)。療法の終わりに、51%(45人のうちの23人)のデューテトラベナジン処置対象が、プラセボ群の20%(45人のうちの9人)と比較して、PGICに基づいて大幅に改善したか、又は非常に大幅に改善した(p=0.0020)。類似する知見が処置する医師によって観察され、42%(45人のうちの19人)のデューテトラベナジン処置対象がプラセボ群の13%(45人のうちの6人)の対象と比較して、CGICに基づいて処置の成功が達成されたと評価された(p=0.0022)。これらの結果は、デューテトラベナジン処置対象がHDの全体的な症状に対する臨床的に意味がある利益を経験し、その処置する臨床医も利益を観察することができたことを示している。
【0431】
これらの医師及び患者による評価スコアの改善は、TMC及びTMSにより測定される改善がHD症状の改善になることを示し、デューテトラベナジンの臨床利益を更に支持する。
【0432】
【表8】
【0433】
SF-36身体機能スコア。SF-36の身体機能スコアは、多くの疾患状態において用いられてきた患者により報告される手段であり、HDと共に生きる患者と関連する身体活動を評価するため、重要な副次的評価項目として選択した。10項目の身体機能スコアは、入浴、着衣、食料品の持ち上げ又は運搬、1つ又は複数の階段の上昇、曲げ、膝立ち、100ヤード以上の歩行、及び中等度から激しい活動などの、自己看護に関して患者に質問する。SF-36身体機能スコアは、HDと共に生きる人々により経験される障害を測定することが示されている。
【0434】
SF-36身体機能スコアにおけるベースラインから第12週までの平均変化を以下に提供し、デューテトラベナジンにより処置された対象は、プラセボ群における3.61単位の悪化と比較して、処置された患者においてベースラインよりも0.74の平均改善を示した(4.3単位の差異)。ベースライン時により重篤な舞踏病を有する対象においては(TMC>集団の中央値、又はTMC>12;n=49)、身体機能に対するデューテトラベナジンの利益は、より顕著であり、プラセボよりも7.1単位の平均改善を示した(p=0.0075)。
【0435】
SF-36身体機能スコアに関するベースラインから第12週までの変化により、SD-809で処置された対象がプラセボで処置された対象と比較して身体機能がより大きく改善されたことが示された(p=0.03)。舞踏病のベースライン重症度によるSF-36の分析により、SD-809が、より重篤な舞踏病を有する対象においてより大きい利益を有することが示された(p=0.0075)。舞踏病が基本的な運動技術、歩行、及び歩くことを阻害する可能性を考慮すると、より悪化した機能を有する対象がこの評価基準でより大きい利益を経験することは予想外ではない。
【0436】
舞踏病が患者の生活の質及び身体機能に対して有する有意な負の影響を考慮すると、日常生活の活動を実行する能力の対象の評価における統計的に有意な改善は、デューテトラベナジンの臨床利益を更に支持する。
【0437】
【表9】
【0438】
バーグバランステスト。舞踏病を処置するために現在用いられる多くの薬剤は平衡を悪化させ得るため、BBTは、舞踏病の軽減が平衡に対する影響を有するかどうかを評価するために用いられた平衡の14項目の評価である。BBTを、安全性評価基準及び効能評価項目として評価した。以下にまとめるように、デューテトラベナジンは処置の終わりに平衡を悪化させず、実際、データは数値的にデューテトラベナジンに有利であったが、改善は統計的に有意なものではなかった(p=0.1415)。更に、試験経過中に観察されたBBTに関してデューテトラベナジンとプラセボとの間に統計的有意差はなかった。
【0439】
【表10】
【0440】
有害事象。デューテトラベナジンは、一般的に良好に忍容された。有害事象(AE)の全体的な割合は、デューテトラベナジン群とプラセボ群との間で同じであり、各群の(60.0%)の対象が少なくとも1つのAEを経験した。試験において死亡はなかった。デューテトラベナジン群において2つの重篤なAE(胆嚢炎及び激越性鬱病)を有する1人の対象があり、プラセボ群において1つの重篤なAE(慢性閉塞性肺疾患、又はCOPDの再燃)を有する1人の対象があった。デューテトラベナジン群における重篤なAEを経験する同じ対象は、重篤なAEとは考えられない自殺念慮も報告し、次いで、焦燥のAEに起因して試験から離脱した。プラセボ群においては、1人の対象がコロンビア自殺重症度評価尺度上で自殺念慮を報告し、1人の対象が心房細動のAEに起因して試験から離脱した。良好な忍容性の証拠は、用量減少、用量停止及び離脱をもたらす同じ割合のAEによって更に示される。最後に、CYP2D6遺伝子状態は、この試験における投薬又はAEの割合に影響しなかった。予想通り、遺伝学又は併用薬による、不全代謝者はわずかに少なく投与され、更なるAEを示さなかったが、これは、デューテトラベナジン投与を、高価な遺伝子型決定に依拠することなく臨床的に管理することができるという見解を支持する。
【0441】
【表11】
【0442】
HDを有する患者にとって特に重要な領域である、精神及び神経系体組織の間でも同様の割合のAEが観察された。精神、神経系、胃腸及び他の全身障害のある特定の器官別大分類においてAEを報告する対象の数を、以下のTable 12(表12)に列挙する。これらの体組織はHDを有する患者において観察される基礎となる症状の多くを含み、テトラベナジンについて観察される頻繁なAEでもあったため、それらは強調表示されている。デューテトラベナジン処置された対象は、低い割合の不眠、抑鬱、不安、焦燥、自殺念慮、静座不能、易刺激性、及び疲労を有し、これらの割合はプラセボ処置された対象において観察される発生率と同様であるか、又はそれより低かった。重要なことに、パーキンソニズム又は嚥下障害のAEは、デューテトラベナジン群においては報告されなかった。デューテトラベナジン群において観察された最も一般的なAEは、眠気であり、対象の11.1%において観察されたのに対して、プラセボ群においては4.4%であり、又は薬物-プラセボの差異は6.7%であった。
【0443】
【表12】
【0444】
安全性。AEの報告に加えて、評価尺度を用いて、過剰のモノアミン枯渇に起因する潜在的な無症状毒性についてモニタリングした。そのような安全性尺度を、テトラベナジン開発プログラムにおいて用いた。First-HDで適用されたこれらの尺度は、入院不安及び抑鬱尺度(HADS)、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)、嚥下障害質問票(SDQ)、統一パーキンソン病評価尺度(構音障害の項目)(UPDRS[構音障害])、バーンズ静座不能評価尺度(BARS)、及びエプワース眠気尺度(ESS)を含んでいた。更に、認知、行動、及び機能評価基準を含むUHDRSを、重要な訪問時に実施した。
【0445】
これらの安全性尺度は、尺度上での群間差が小さく、臨床的に意味がなかったため、デューテトラベナジンが抑鬱、不安、自殺傾向、静座不能、眠気、又は発話困難を引き起こさないことを示した。事実、HDを有する患者における罹病及び死亡の重要な原因である嚥下機能は、プラセボと比較してデューテトラベナジン処置された対象において有意に改善することが示され、運動機能において見られる改善と一致していた。この改善の臨床関連性を、以下に記載する。
【0446】
嚥下障害。嚥下障害はHDを有する患者における一般的な問題であるため、嚥下障害質問票(SDQ)を予め用いて、試験中の嚥下障害を評価した。この15項目の評価を、パーキンソン病を有する患者において検証したところ、異なる病因から生じる嚥下障害を有する患者を同定するための高感度かつ高精度の手段であることが示された。SDQは、パーキンソン病における嚥下障害を評価するために国立神経疾患・脳卒中研究所共通データエレメントにより推奨され、かくして、HDを有する患者がその病気の一部として動作緩慢及び他のパーキンソン病症状を有し得ることを考慮すれば、彼らについても関連する。図2は、経時的なSDQにおけるベースラインからの平均変化を提示し、プラセボと比較して、デューテトラベナジン処置を用いた場合に嚥下の有意な改善を示している。
【0447】
更なるUHDRS評価。UHDRS評価尺度を、First-HD試験を通して評価して、安全性についてモニタリングした。UHDRS運動評価(パートI)のパーキンソニズムサブスコアの評価は、デューテトラベナジン又はプラセボを用いて処置された対象においてパーキンソニズムの証拠を同定しなかったが、これは、錐体外路症状のAEの非存在と一致していた。これらの結果は、UPDRS構音障害質問上でのいずれかの処置群における意味がある変化の欠如によって更に支持された。
【0448】
UHDRS認知評価(パートII)の結果はまた、ベースラインからの意味がある変化又は処置群間での一致した傾向を示さなかったが、これは、処置による認知機能の低下がないことを示している。
【0449】
UHDRS行動評価(パートIII)は、プラセボ群と比較して、デューテトラベナジン処置された対象について平均総合行動スコアの改善を示したが、その差異は統計的有意性を達成しなかった。重要なことに、憂鬱感、無気力、自尊心、易刺激性、攻撃的行動、自殺念慮、幻覚、又は妄想の悪化はなかった。全体的なスコアの改善は、不安及び強迫行動の差異によって誘導された(図4A図4C)。
【0450】
ベースライン時及び再度、第12週で評価された、UHDRS機能評価スコア(パートIV)、独立尺度スコア(パートV)及び総合機能的能力スコア(パートVI)は、いずれかの処置群におけるベースラインからの臨床的に関連する変化又は処置群間の差異を示さなかった。
【0451】
バイタルサイン(血圧、心拍数、呼吸数、及び体温)の少しの変動が試験中に観察された;これらの変化は、デューテトラベナジン及びプラセボ処置群において全体として類似し、臨床的に意味があると評価されなかった。一貫した群間差は観察されなかった。更に、低血圧、目眩、又は起立性がデューテトラベナジン処置と関連するという証拠はなかった。
【0452】
体重。プラセボ群と比較して、デューテトラベナジン処置は、プラセボよりも約2.1kgの平均体重増加をもたらした(第12週で、デューテトラベナジンについては+1.8(3.4)kgの体重の平均(SD)変化であるのに対して、プラセボにおいては-0.30(2.5)kgであった(処置効果、+2.1kg))。体重増加は、舞踏病患者における処置転帰及び健康の改善と相関し、食欲を抑制し得る不安などの機能又は行動症状の改善に加えて、部分的には、舞踏病の軽減をもたらし得る(ここで、嚥下の改善は食物のより良好な摂取をもたらすことができ、異常不随意運動の軽減に起因して用いられる低カロリーエネルギーと組み合わせた場合、体重増加ということになる)。
【0453】
有害事象及び安全性:テトラベナジンとの比較。テトラベナジンの変動する薬物動態は、その忍容性に影響し、その臨床使用を制限し得る。循環活性代謝物であるα-及びβ-ジヒドロテトラベナジンの半減期は短い。これらの短い半減期は、頻繁な投薬を必要とし、血漿濃度の大きな変動をもたらす。テトラベナジンと関連する高いピーク濃度及び血漿レベルの変動性は、しばしば観察される低い忍容性に寄与し得る。
【0454】
したがって、テトラベナジンに関する処方情報は、有害効果及び安全性の問題についての可能性に関するいくつかの警告書を含有する:
・箱入りの警告書は、テトラベナジンがHDを有する患者において抑鬱及び自殺念慮及び行動(自殺傾向)のリスクを増大させることを示す。
・眠気/鎮静状態、不眠、抑鬱、静座不能、不安、及び疲労などの、高い割合の処置中に発生した有害事象が、プラセボ処置された患者と比較して、テトラベナジンで処置された患者において観察された(以下のTable #を参照されたい)。
・テトラベナジンに無作為化された患者の52%(54人中28人)において、有害事象のため用量上昇を中止するか、又は試験薬の用量を減少させた。
・テトラベナジンの12週の無作為化対照試験において、パーキンソニズムを示唆する有害事象(例えば、パーキンソニズム、動作緩慢、筋緊張亢進、硬直)が、プラセボ患者の0%と比較してテトラベナジン患者の15%において観察された。
・警告書及び使用上の注意は、HDの基礎となる症状であり、ドーパミン作動性神経伝達の低下の既知の副作用である嚥下障害のリスクを記載する。12週の試験では低い割合の嚥下障害が報告されたが、非盲検試験では、テトラベナジン処置患者の8%~10%において嚥下障害が観察され、いくつかの事例は誤嚥性肺炎と関連していた。これらの事例が処置と関連していたかどうかは明らかではないが、FDAは、破壊的な臨床結果となり得る嚥下障害の事象が、テトラベナジンNDAにおいて有意に過小評価されている可能性があると懸念を表明した。注目すべきことに、過剰運動障害に関するテトラベナジンで処置された98人の患者の後ろ向き試験において、嚥下障害が患者の19%において観察された。
・50mgで、テトラベナジンは、QTc間隔の約8msの平均増加を引き起こした(90%両側信頼区間[CI]:5.0、10.4ms)。
【0455】
12週の対照試験において観察されたテトラベナジンの安全性プロファイルを、以下にまとめるように、処方情報に反映させる。
【0456】
【表13】
【0457】
デューテトラベナジンと比較して、テトラベナジンは、より多くの有害効果をもたらすと考えられる。
【0458】
ARC-HD
第2の臨床試験において、舞踏病が十分に制御された患者を、テトラベナジン処置からデューテトラベナジン処置に変換する方法を実行した。ハンチントン病において舞踏病を軽減するための代替手段(ARC-HD)は、舞踏病の処置のためにFDAに認可された用量のテトラベナジンを受けていた、又は成功裏に完了したFirst-HDを有する対象を参加するように招いた非盲検単一アーム試験であった。
【0459】
かくして、この試験は2つのコホートを含んでいた。ロールオーバーコホート(75人の対象)は、1週のウォッシュアウトを含む、上記のFirst-HD試験を成功裏に完了した;スイッチコホート(37人の対象)は、α及びβ代謝物の合計への同等の全身曝露を達成するように設計された変換方法に基づいて、テトラベナジンを用いる安定な投薬(8週以上)から、デューテトラベナジンに一晩で切り替えた。試験に関する他の重要な試験対象患者基準は、特徴的な運動検査特徴により示される、明白なHDの診断;スクリーニング時又はその前の拡張シトシンアデニングアニン(CAG)リピート(37以上)及び5以上の総合機能的能力(TFC)スコアの文書化;少なくとも20ヤードにわたって支援なしに歩き回ることができる(許可されたウォーカー又はケインなどの補助器具);並びに対象が、日常ベースで対象と相互作用し、試験薬投与を監督し、試験訪問時の出席を保証し、必要に応じて、評価に参加する信頼できる介護人を有すること、を含んでいた。重要な除外基準は、スクリーニング又はベースライン時の重篤な未処置又はきちんと処置されていない精神病(例えば、抑鬱);スクリーニング又はベースラインの30日以内のドーパミン受容体アンタゴニスト、ドーパミンアゴニスト、レボドパ、レセルピン、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体アンタゴニスト、又はモノアミンオキシダーゼ阻害剤の併用;並びに入院不安及び抑鬱尺度(HADS)の抑鬱下位尺度上で11以上のスコア、嚥下障害質問票(SDQ)上で11以上のスコア、又はスクリーニング若しくはベースライン時に3以上の統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)構音障害スコアを含んでいた。
【0460】
参加者は、58%が男性、95%が白人であり、54歳の平均年齢であった。ベースライン時の平均(SD)TMCスコアは12.2(4.6)であり、平均(SD)CAGリピート長は44(3.7)であった。
【0461】
試験設計
ARC-HDスイッチ試験における安定用量のテトラベナジンからデューテトラベナジンへの対象の変換に関する治験責任医師のための指針を、用量変換が効能の喪失又は有害事象の増加をもたらすリスクを最小化するように設計した。適用される変換方法は、デューテトラベナジン及びテトラベナジンに関する第1相薬物動態データのモデリング及びシミュレーションに基づくものであった。薬物動態分析の目的は、テトラベナジンの活性なアルファ及びベータ代謝物の定常状態での予測されたAUCより低いか、又はそれと等しいが、より低いCmaxを有する活性なα及びβ代謝物の定常状態での曝露を提供すると予測されるデューテトラベナジンの初期用量レジメンを同定することであった。
【0462】
第1相単施設、非盲検、交差臨床試験において、24人の健康なボランティアの対象のそれぞれに、単回用量の25mgのテトラベナジン及び15mgのデューテトラベナジンを受けた。この臨床試験の目的の1つは、テトラベナジンと比較したデューテトラベナジンの安全性を評価及び比較することであった。
【0463】
スイッチコホートの対象は完全なスクリーニング評価を完了した。続いて、試験に登録する資格がある対象を、そのテトラベナジン用量レジメンから、現行のテトラベナジンレジメンと同等であると予測されるデューテトラベナジン用量レジメンに変換した。対象は、0日目の真夜中を通して現行のテトラベナジンレジメンを受け、次の朝(試験の1日目)にその割り当てられたデューテトラベナジンレジメンに切り替えた。初期用量は、現行のテトラベナジン用量の約50%であるデューテトラベナジンの初期用量を示唆する、デューテトラベナジンとテトラベナジンとの第1相薬物動態比較により定義された変換方法に基づくものであった(Table 14(表14))。デューテトラベナジン処置の第1週後、舞踏病を十分に制御する用量が同定され、対象がプロトコールに定義された「臨床的に意味がある」有害事象を経験するか、又は最大許容用量に達するまで、6mg/日の増分で週に1回、デューテトラベナジンの用量を上方又は下方に調整した。治験責任医師は、対象及び介護人と相談して、十分なレベルの舞踏病制御がいつ達成されたかを決定した。対象がデューテトラベナジンに起因する「臨床的に意味がある」有害事象を経験した場合、治験責任医師は、用量減少又は停止が必要であるかどうかを決定した。
【0464】
【表14】
【0465】
ロールオーバーコホートの対象は、First-HDの終了において1週のウォッシュアウトを完了し、その間、平均TMCスコアはベースラインに戻った。これらの対象に関するデューテトラベナジン用量を、1日あたり6mgの出発用量から、舞踏病を制御し、良好に忍容される用量まで滴定した。
【0466】
両コホートについて、6mg、9mg、及び12mgの強度の経口錠剤を用いた。12mg以上の用量を、約10時間離して2つの分割用量で投与した。全ての試験処置レジメンを、食事と共に経口的に投与した。対象が強力なCYP2D6阻害剤(例えば、パロキセチン)を受けていない限り、デューテトラベナジンの最大合計日用量を1日あたり72mgに設定したが、強力なCYP2D6阻害剤を受けている場合、最大合計日用量は36mgであった。
【0467】
対象は、安全性を評価し、最適用量を確立するために、定期的なクリニック訪問に参加した。治験責任医師は、対象及び介護人と相談して、何時十分なレベルの舞踏病制御がいつ達成されたかを決定した;舞踏病の十分な制御になり、対象が臨床的に意味がある有害事象と定義されたプロトコールを経験するか、又は最大許容用量に達するまで、週ベースでDTBZの用量を増加させることができるた。長期処置の間に、全ての対象は安全性及び舞踏病制御の評価のために試験施設と定期的に接触した。長期処置は、デューテトラベナジンが米国で市販されるようになるまで継続する。
【0468】
ARC-HDスイッチにおいてテトラベナジンからデューテトラベナジン処置に変換された、テトラベナジンで十分に制御されていたHDと関連する舞踏病を有する合計37人の対象が、用量変換後に舞踏病制御の維持を評価するために行われた分析に含まれていた。この分析に含まれていた対象を、それぞれ、1日2回投与される、テトラベナジン処置からデューテトラベナジン日用量に変換し、それは以前のテトラベナジン総日用量の約30%~50%であった。
【0469】
結果
用量及び効能。以前の療法における差異及び2つのコホートにおけるデューテトラベナジン療法の開始後の舞踏病制御の予想される変化を考慮して、効能データをこれらの2つの群について別々にまとめる。2つのコホートからのデータを、第15週まで以下に提供する。この試験は進行中であるため、その後の週からのデータは依然として収集及び分析中であり、結果に含まれる患者数は、この段階で意味がある結論を引き出すにはあまりに少ない。
【0470】
用量-スイッチコホート。ベースライン時のTBZの平均用量は42mgであり、一晩のスイッチの後、デューテトラベナジンの平均用量は20mgであった。TBZからの切り替え後のデューテトラベナジンの平均日用量を、以下のTable 15(表15)に与える。
【0471】
【表15】
【0472】
用量-ロールオーバーコホート。ウォッシュアウト後のデューテトラベナジンの平均日用量及び6mg/日の初期用量を、以下のTable 16(表16)に与える。
【0473】
【表16】
【0474】
総合最大舞踏病(TMC)-スイッチコホート。デューテトラベナジンへの切り替えの1週間後、対象がその初期総日用量のデューテトラベナジンを依然として受けていた時点で、平均総合舞踏病スコアは、ベースラインから約1ポイント低下し(ベースラインからの平均±標準誤差[SE]変化は、-0.72±2.6であった)、これは、デューテトラベナジンがこれらの対象において舞踏病制御を維持したことを示している。35人の対象のサブセットも、舞踏病を有し、デューテトラベナジンへの切り替えの4週間後に評価した。このセットの対象において、ベースラインからの平均(±SE)変化は、第4週で-0.7±3.0であり、舞踏病制御の維持の更なる証明を提供する。更に、21人の患者からのデータは、第8週で利用可能になった;これらのデータは、TMCスコア上での-1.9±3.5単位のベースラインからの変化を示し、第15週では-1.2±4.1単位であった。結果を、以下のTable 17(表17)に与える。観察された平均舞踏病スコア及び舞踏病スコアに対応するテトラベナジン又はデューテトラベナジンの平均日用量の概要は、図6に提供される。
【0475】
【表17】
【0476】
総合最大舞踏病(TMC)-ロールオーバーコホート。第2週で、1.9(3.0)単位のベースラインから統計的に有意な平均(SD)低下が観察された(p<0.0001)。この効果は第15週まで持続し、その時点で、ベースラインからの平均(SD)低下は4.5(5.0)単位であった(p=0.0001)。これらの結果は、First-HDにおいてDTBZについて観察されたものと一致している。結果を、以下のTable 18(表18)に与える。
【0477】
【表18】
【0478】
総合運動スコア(TMS)-スイッチコホート。更に、TMSにより評価される全体的な運動症状は、用量変換後に維持され、-3.7(7.8)のTMSにおいてベースラインからの平均(SD)変化により示されるように、第8週で改善すると考えられた。結果を、以下のTable 19(表19)に与える。
【0479】
【表19】
【0480】
観察された平均舞踏病スコアの変化及び舞踏病スコアに対応するテトラベナジン又はデューテトラベナジンの平均日用量の概要を、図7に提供する。
【0481】
総合運動スコア(TMS)-ロールオーバーコホート。ベースラインからのTMSの統計的に有意な平均低下は、早くも第2週で観察され(3.9単位;p<0.0001)、第15週まで持続した(8.0単位;p=0.0001)。結果を、以下のTable 20(表20)に与える。
【0482】
【表20】
【0483】
平均TMS改善(スイッチコホートでは第8週で-3.7単位及びロールオーバーコホートでは第15週で-8.0単位)が平均TMCスコア改善(スイッチコホートでは第8週で-1.9単位及びロールオーバーコホートでは第15週で-4.5単位)よりも規模において大きかったという事実は、舞踏病の軽減に加えて、HDの他の運動症状に対してもDTBZ処置の利益を示唆している。
【0484】
他の重水素置換されたテトラベナジン及びバルベナジンは、舞踏病並びにハンチントン病及び他の運動障害と関連する他の症状、並びに一般的に、異常不随意運動の処置において有効であると予想される。
【0485】
有害事象。DTBZは一般的に良好に忍容され、ロールオーバー及びスイッチコホートの両方における安全性の結果は、First-HDにおいて観察される安全性プロファイルと一致していた。
【0486】
ロールオーバーコホートにおいて、39人(52.0%)の対象がAEを経験し、そのAEは、これらの39人の対象のうちの36人(92.3%)において軽度又は中等度の強度と評価された。ロールオーバーコホートにおける最も一般的なAEは、転倒(10人の対象、[13%])、眠気(6人[8%])、抑鬱(6人[8%])、及び不眠(6[8%])であった。ロールオーバーコホートにおける類似するパーセンテージの対象が、第8週から訪問カットオフ日まで(43.2%)と比較して、1日目から第8週まで(45.3%)にAEを経験した。5人の対象は、用量減少又は用量停止をもたらすAEを有していた。3人の対象は、重篤なAE(不安、大鬱、自殺念慮、脱水、脳症、及び自殺性鬱病)を経験し、これらの重篤なAEの1つ(大鬱)は試験の離脱をもたらした。更に3人の対象は、AE(舞踏病の悪化、自殺念慮、及び抑鬱)に起因して試験から離脱した。
【0487】
スイッチコホートにおいて、21人(56.8%)の対象が少なくとも1つのAEを経験し、そのAEは、21人の対象のうちの20人(95.2%)において軽度から中等度の強度と評価された。スイッチコホートにおける最も一般的なAEは、眠気(9人の対象[24%]、不安(3人[8%])、及び転倒(3人[8%])であった。これらの一般的な事象の大部分は、試験の最初の8週間に生じた(22人のスイッチ対象は訪問カットオフ日経由で第8週に到達した)。最も一般的なAEは、1日目から第1週まで、第2週から第4週まで、及び第5週から第8週まで類似する割合で生じた。テトラベナジンからデューテトラベナジンへの変換後の第1週を含む報告期間に舞踏病又は舞踏病の悪化の有害事象はなかった。2人の対象は重篤なAE(肺炎及び脱水)を経験し、AEに起因して試験から離脱した対象はなく、4人の対象は用量減少又は用量停止をもたらすAEを有していた。
【0488】
CYP2D6代謝が悪化した対象(強力なCYP2D6阻害剤を使用している対象及びCYP2D6不全代謝者を含む)においては、AEの全体の発生率は明らかに増加しなかった。
【0489】
いずれかのコホートにおいて全ての期間にわたって少なくとも4%の対象に発生する事象と定義される、頻繁な処置中に発生したAEを、以下のTable 21(表21)にまとめる。ロールオーバーコホートにおける全処置期間での最も一般的なAEは、転倒(10人の対象[13.3%])、眠気(6人[8.0%])、抑鬱(8人[10.7%])、及び不眠(6人[8.0%])であった。スイッチコホートにおける全処置期間での最も一般的なAEは、転倒(3人の対象[8.1%])、眠気(9人[24.3%]、しかし多くは一過的なものであり、用量調整を必要としなかった)、抑鬱(8人[10.7%])、及び不安(3人[8.1%])であった。観察される一般的な有害事象の種類は、First-HDにおけるデューテトラベナジン処置に関して観察されたものと一致していた。転倒は、舞踏病及びHDを有するこの試験集団において評価することが困難である;転倒の大部分は試験薬と関連するとは考えられなかった。
【0490】
【表21】
【0491】
更なる安全性評価基準。安全性尺度を試験設計に組込んで、デューテトラベナジン処置と関連する無症状毒性についてモニタリングした。これらのものは、UHDRS、SDQ、UPDRS構音障害質問、バーンズ静座不能評価尺度(BARS)、HADS、エプワース眠気尺度(ESS)、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)、及びモントリオール認知評価(MoCA(C))における観測値及び変化を含んでいた。安全性尺度の全体的分析により、この試験の訪問カットオフ日現在で、第28週までデューテトラベナジン処置に関するリスクの増大は示されなかった。8人のロールオーバー患者は、第28週で4つの認知評価基準のうちの2つ(MoCA及び発話流暢性タスク)において明らかに低下した。これらの変化は、AE(例えば、眠気、疲労、尿路感染)と関連することが多く、典型的には、機能的評価基準上での性能の低下と関連していなかった。バイタルサイン、ECG、又は臨床検査室評価の臨床的に関連する変化は、試験中に観察されなかった。体重に関して、ベースラインから第15週までに、体重はロールオーバーコホートでは増加し、スイッチコホートでは最小限に変化した。第15週の後、両コホートにおいて第28週で体重減少に向かう傾向があった(ロールオーバー、1.4kg;スイッチコホート、1.9kg)が、第28週の節目に到達した対象数の減少は、これらの結果の解釈を制限する。
【0492】
総合すると、この試験の結果は、HDと関連する舞踏病の処置のための、好ましい安全性プロファイルを有する有効な治療選択肢としてのデューテトラベナジンを支持する。結果は、舞踏病制御を失うことなく達成することができる、TBZから予測されたAUCが一致した用量のデューテトラベナジンへの一晩での切り替えの安全性を支持する。
【0493】
遅発性ジスキネジー
中等度から重篤な薬物誘導性遅発性ジスキネジー(TD)を有する男性及び女性の対象を含む非盲検、単一アーム試験を行って、デューテトラベナジンを用いる長期維持療法の安全性及び忍容性を評価し、TDの異常不随意運動の重症度を低下させるデューテトラベナジンの長期維持療法の効能を評価した。
【0494】
試験設計。試験対象患者基準は、以下を含んでいた:少なくとも18歳の年齢;中等度から重度のTDの処置に関する以前のデューテトラベナジン対照試験の完了の成功;少なくとも3カ月(又は60歳以上の年齢の対象においては1カ月)にわたるドーパミン受容体アンタゴニストの使用履歴;TDの臨床診断及び少なくとも3カ月にわたって症状を有する;基礎となる精神疾患を有する対象については、
・スクリーニングの前の30日以上にわたって精神活性薬(抗鬱剤については45日)において精神的に安定及び変化なし;
・長期作用型(デポー)薬剤を投与中の対象がスクリーニング前の3カ月以上にわたって安定療法(用量、頻度)にあった;並びに
・対象が試験への対象の参加を承知し、次の3カ月に対象の処置レジメン(薬物、用量、頻度)に対する変更を予測していない精神医療従事者を有する;
・処方薬を順守する履歴;試験薬全体を嚥下することができる;安定な環境で生活し、全ての試験手順を順守する必要がある場合に十分な監督を有する、全ての試験訪問に出席する、及び試験に安全に参加する;対象が完了させた評価尺度を理解する十分な読解能力がある;妊娠可能性がある女性の対象が、性的に活発な場合、スクリーニングから試験完了まで以下の許容可能な避妊方法の1つを使用することに同意する:
・スクリーニング前の少なくとも3カ月にわたって、環境が整ったIUD若しくは子宮内避妊システム;
・対象又はパートナーがスクリーニングから試験完了まで殺精子剤と共に遮断法を用いる;
・パートナーが登録の6カ月より前に実証された精管切除を受けている;又は
・スクリーニング前の少なくとも3カ月にわたる安定なホルモン避妊法(認可された経口、経皮、若しくはデポーレジメン)。
【0495】
除外基準は、以下を含んでいた:対象が、ベースラインの7日以内にテトラベナジンを、又はベースラインの30日以内に以下の薬剤のいずれか:レセルピン、α-メチル-p-チロシン(AMPT)、ボツリヌス毒素(ベースラインの3カ月以内)、及び強力な抗コリン活性を有する薬剤(トリヘキシルフェニジル、ベンゾトロピン、オルフェナドリン、プロシクリジン、及びビペリデン)、メトクロプラミド、プロメタジン、プロクロルペラジン、刺激剤(すなわち、メチルフェニダート、アンフェタミン/デキストロアンフェタミン、リスデキサンフェタミンなど)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、及び(MAOI)、レボドパ若しくはドーパミンアゴニストを受けている;対象が、ジスキネジーの重症度を評価するのを阻害し得るTD以外の神経状態を有する;ベースライン時に重篤な未処置の、又はきちんと処置されていない精神病;ベースライン時に積極的な自殺念慮;ベースラインの6カ月以内に以下のいずれかの履歴:自殺の考えの時点で両面性のレベルに関係なく特定の計画と共に自殺念慮に基づいて行動する以前の意図(C-SSRS上の質問5に対する正の回答)、自殺若しくは自殺行動を約束する以前の準備行動、又は以前の実際の、中断された、若しくは中止された自殺の試み;ベースライン時の入院不安及び抑鬱尺度(HADS)の抑鬱下位尺度上で11以上のスコア;対象が発達障害であるか、又は認知症の証拠がある;対象がベースライン時に不安定な、又は重篤な内科的疾患を有する;暴力行動の履歴(3カ月以内)又は存在;ベースライン時に12誘導心電図(ECG)上で450msを超える(男性)若しくは460msを超える(女性)、又は480msを超える(右脚ブロック[RBBB])QTcF値;正常上限(ULN)の2.5倍を超えるアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)若しくはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、ULNの2倍を超えるアルカリホスファターゼ(ALP)若しくは総ビリルビン(TBil)(しかし、メディカルモニターにより認可された場合、ジルベール症候群を有する対象は参加資格があり、2つ以上のこれらの分析物(AST、ALT、ALP、TBil)に異常がある対象は、メディカルモニターによって登録を認可される必要がある)、及び4秒を超えて延長されたプロトロンビン時間により示される、スクリーニング時の肝障害の証拠;B型肝炎表面抗原(HBsAg)陽性;Cockroft-Gault式により見積もられた場合、50mL/min未満のクレアチニンクリアランスにより示される、スクリーニング時の有意な腎障害の証拠;テトラベナジン又はデューテトラベナジンの成分のいずれかに対する既知のアレルギー;調査薬又はデバイス試験(適格なデューテトラベナジン試験以外)に参加し、ベースラインの30日(又は5薬物半減期)以内(いずれか長い方)に試験薬を受けている;対象がベースライン時に妊娠又は授乳中である;並びにベースライン時の違法薬物の使用の存在。
【0496】
用量レジメン。デューテトラレジメン錠剤を、6、9、12、15、及び18mgの用量強度で提供した。用量調整/滴定中に、デューテトラベナジンを、毎週、ブリスターカードで供給した。長期処置中に、デューテトラベナジンを、30カウントボトル中に供給した。試験薬を、以下のように投与した。全ての処置レジメンを、日中に約10時間間隔で、食事と共に1日2回(BID)投与した。出発用量は、親試験における以前の処置に関係なく、デューテトラベナジン12mg/日(6mg BID)であった。親試験からの以前の処置の割り当ては盲検のままであった。デューテトラベナジンの最大総日用量は、対象が強力なCYP2D6阻害剤(パロキセチン、フルオキセチン、又はブプロピオン)を投与中でない限り、48mg/日(24mg BID)であったが、前記阻害剤を投与中の場合、最大総日用量は36mg/日である。最大36mg/日の日用量を1個の錠剤としてBIDで与えたが、42mg/日及び48mg/日の日用量を、2個の錠剤としてBIDで与えた。滴定期間中に、デューテトラベナジンの用量を、1)ジスキネジーが十分に制御されるまで;2)対象がプロトコールに定義された臨床的に意味があるAE(試験薬と関連し、a)強度が中等度から重度である、若しくはb)SAEの基準を満たすと定義される)を経験するまで;又は3)最大許容用量に達するまで、6mg/日の増分で週ベースで増加させるべきである。対象が、デューテトラベナジンに起因する臨床的に意味があるAEを経験した場合、治験責任医師は、用量減少又は停止が必要であるかどうかを決定した。
【0497】
長期処置。長期処置期間に参加する全ての対象について、デューテトラベナジンの用量を、必要に応じて、AEを最小化しながらジスキネジー制御を最適化するために、1日あたり6mgの増分で調整(上方又は下方に)することができる。しかしながら、用量のそのような変化は、週1回よりも頻繁に生じてはならない。
【0498】
滴定期間(6週まで)。親試験を成功裏に完了した対象は、1週間のウォッシュアウト期間及び最終評価の後、この試験に登録する資格があった。対象が1週間にわたって試験薬又はプラセボを中止した時、彼らはこの試験においてデューテトラベナジン用量滴定を受けた。滴定中に、治験責任医師は、対象と相談して、十分なレベルのジスキネジー制御がいつ達成されたかを決定した。ジスキネジーの十分な制御が達成されるまで、試験薬と関連する臨床的に意味がある有害事象(a)強度が中等度若しくは重度である、又はb)重篤な有害事象)が生じるまで、又は最大許容用量に達するまで、週1回まで1日あたり6mgの増分で、デューテトラベナジンの用量を調整した(上方又は下方に)。対象がデューテトラベナジンに起因する臨床的に意味があるAEを経験した場合、治験責任医師は、用量減少又は中止が必要であるかどうかを決定した。安全性を評価し、ジスキネジーを十分に制御し、良好に忍容される試験薬の用量を確立するために、対象は、第1週及び第2週の臨床訪問時に電話による接触を受けた。対象は第2週の後に長期処置期間に入ったが、用量を最適化するために、第6週まで滴定を継続した。
【0499】
長期処置期間(52週まで)。長期処置中に、対象は、6週まで滴定を継続する。この期間中に、全ての対象は、安全性及びジスキネジー制御の評価のために、第3週(長期処置期間の最初の週)及び第5週に電話による接触を受け、第4、6、15、28、41、及び54週にクリニックに戻る。第6週での訪問までにジスキネジーを十分に制御し、良好に忍容される用量レベルを達成しなかった対象は、その用量を上方又は下方に更に調整するために、スケジュールにない訪問を行うか、又は電話による接触を行うべきである。用量調整のための臨床現場との相互作用は、電話による接触と臨床訪問との間で交互に行うべきである。長期処置中に、必要に応じて、デューテトラベナジンの更なる用量調整を行うことができるが、毎週よりも頻繁ではなく、1日あたり6mgの増分でのみ行う。用量調整は、対象及び介護人(好適な場合)によるAE及びジスキネジー制御の報告を含む全ての利用可能な情報、並びに利用可能な場合、評価尺度及び安全性評価に由来する情報に基づくべきである。
【0500】
処置後の安全性フォローアップ。全ての対象は、第54週での訪問時に試験薬を中止し、安全性、ジスキネジー制御、及び運動機能の評価のために第55週での最後の臨床訪問に戻る。この1週間のウォッシュアウト期間中に、対象は、禁止された併用薬を摂取すべきではない。また、対象は、AE及び併用薬使用を評価するために、試験薬の最後の投与の4週間後である第58週にフォローアップの電話による接触を受ける。
【0501】
安全性評価項目。安全性及び忍容性を、以下のパラメータ:有害事象(AE)、臨床検査、身体検査、バイタルサイン、12誘導ECG、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)パートIII(運動検査)、バーンズ静座不能評価尺度(BARS)、入院不安及び抑鬱尺度(HADS)、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)、エプワース眠気尺度(ESS)、及びモントリオール認知評価(MoCA(C))をモニタリングすることにより、試験を通して評価する。
【0502】
効能評価項目。効能を評価するために、以下の尺度を用いた、又は用いる:盲検化中央ビデオ評定により評価される、ベースラインから長期療法の終わり(第54週)までの異常不随意運動尺度(AIMS)スコア(項目1から7まで)の変化; 変化の臨床上の全般的印象(CGIC)に基づいて、長期療法の終わり(第54週)で処置成功である(処置の成功は大幅又は非常に大幅な改善と定義される)対象の割合;この試験のベースラインから長期療法の終わり(第54週)までの改変型頭頸部ジストニア(CDQ-24)スコアの変化;この試験のベースラインから長期療法の終わり(第54週)までのAIMSスコアが50%以上低下した対象の割合;患者の変化の全般的印象(PGIC)に基づく、長期療法の終わり(第54週)で処置成功である(処置成功は大幅又は非常に大幅な改善と定義される)対象の割合;この試験のベースラインから長期療法の終わり(第54週)までのAIMSスコアのパーセント変化;及び盲検化中央ビデオ評定により評価される、この試験のベースラインから長期療法の終わり(第54週)までのAIMSスコアの変化に基づく、10パーセンテージポイントずつの、ベースラインからの10%の改善から、ベースラインからの90%の改善までの範囲の応答者の累積割合。
【0503】
結果。結果を図9に与え、これは、試験の第6週までに、50%を超える対象がPGIC及びCGICに従って大幅又は非常に大幅に改善されたことを示す。
【0504】
ARM-TD
更なる臨床試験、遅発性ジスキネジーにおける運動軽減の目標(Aim to Reduce Movements in Tartive Dyskinesia(ARM-TD))を設計し、行って、中等度から重度の遅発性ジスキネジーの処置におけるSD-809(デューテトラベナジン)の効能を評価した。ARM-TD試験は、中等度から重度の遅発性ジスキネジーを有する全体で117人の患者の1:1の無作為化、二重盲検、プラセボ対照、平行群試験(104人の患者は試験を完了する)であった。
【0505】
対象を、以下のように試験への含有のためにスクリーニングした。試験対象患者基準は以下を含んでいた:18歳~75歳の年齢、包括的;少なくとも3カ月(又は60歳以上の対象においては、1カ月)にわたるドーパミン受容体アンタゴニストの使用履歴;TDの臨床診断、及びスクリーニング前の少なくとも3カ月にわたって症状を有していた;TD症状が対象にとって厄介であるか、又は機能障害を引き起こす;スクリーニング及びベースライン訪問時に、対象が、AIMSの項目8に基づいて治験責任医師により判定された場合に中等度又は重度の異常運動及び首席臨床試験医師により評価された場合に6以上の総合運動AIMSスコア(項目1から7までに基づく)を有する;基礎となる精神病を有する対象については、対象が、スクリーニング前に30日以上(抗鬱剤については45日)にわたって精神的に安定であり、精神活性薬(限定されるものではないが、神経弛緩薬、ベンゾジアゼピン、抗痙攣薬、及び気分安定剤を含む)に変化がない;長期作用型(デポー)薬剤を投与中の対象が、スクリーニング前に3カ月以上にわたって安定療法(用量、頻度)にあった;並びに対象が、試験への対象の参加を承知し、次の3カ月に対象の処置レジメン(薬物、用量、頻度)に対する変更を予測していない精神医療従事者を有する;処方薬を順守する履歴;試験薬全体を嚥下することができる;文書化されたインフォームドコンセント;対象が良好な一般的健康を有し、安定な環境で生活し、全ての試験評価を完了すると予想され、全ての試験手順を順守する必要がある場合に十分な監督を有し、全ての試験訪問に出席し、試験に安全に参加する;対象が完了させた評価尺度を理解する十分な読解能力がある;並びに妊娠可能性がある女性が、性的に活発な場合、スクリーニングから試験完了まで許容可能な避妊方法を使用することに同意する。
【0506】
除外基準は、以下を含んでいた:スクリーニング又はベースライン時に入院不安及び抑鬱尺度(HADS)の抑鬱下位尺度上で11以上のスコア; 発達障害であるか、又は認知症の証拠がある;スクリーニング又はベースライン時の不安定な、又は重篤な内科的疾患; 暴力行動の履歴(3カ月以内)又は存在;スクリーニング時に12誘導ECG上で450msを超える(男性)若しくは460msを超える(女性)、又は480msを超える(右脚ブロック[RBBB])QTcF値; 正常上限(ULN)の2.5倍を超えるAST若しくはALT、又はULNの2倍を超えるALP若しくは総ビリルビン(メディカルモニターにより認可された場合、ジルベール症候群を有する対象は参加資格があるが、これらのAST、ALT、ALP、TBilの2つ以上における異常は、メディカルモニターによって登録を認可される必要がある)、又は4秒を超えて延長されたプロトロンビン時間、又はHBsAg陽性により示されるような、スクリーニング時の肝障害の証拠; Cockroft-Gault式により見積もられた場合、50mL/min未満のクレアチニンクリアランスにより示される、スクリーニング時の有意な腎障害の証拠; テトラベナジン又はデューテトラベナジンの成分のいずれかに対する既知のアレルギー; 対象が、調査薬又はデバイス試験に参加し、スクリーニングの30日(又は5薬物半減期)以内(いずれか長い方)に試験薬を受けている;スクリーニング又はベースライン時に妊娠又は授乳中である;スクリーニング時の違法薬物の使用の認知された存在;DSM-Vにおいて定義された場合、以前の12カ月のアルコール若しくは物質の乱用の履歴、又は対象が試験を通じて物質乱用を自制することができない;並びに対象が安定用量のベンゾジアゼピンを受けている場合を除いて、スクリーニング又はベースライン時に薬物尿検査陽性である(アンフェタミン、バルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、フェンシクリジン、コカイン、若しくはアヘン剤について)。
【0507】
投薬。登録された患者は、デューテトラベナジン又はプラセボのいずれかを受け、6mgのデューテトラベナジンの出発用量(以前の試験と同様、12.5mgのテトラベナジンと同等である合計(α+β)-HTBZのAUCを提供する)から、12~48mg/日の最適用量まで、1週間あたり6mg/日の増分で6週間の経過にわたって滴定した。次いで、薬物を、12週の合計処置にわたって別の6週間にわたってその用量で投与した後、1週間のウォッシュアウト期間を行った。各群に対する無作為化は1:1であり、ドーパミン受容体アンタゴニストのベースライン使用(それに対して現在摂取していない)によって階層化した。デューテトラベナジン錠剤又はプラセボを、6、9、12、15、及び18mgの錠剤として供給し、朝及び夕方に(10時間間隔推奨;最小6時間間隔)食事と共にBIDで投与した。対象が臨床的に意味がある有害事象を経験した場合、最大1週間の用量停止を許容した。
【0508】
試験の目的及び評価項目。試験の目的は、遅発性ジスキネジーと関連する異常不随意運動の重症度を軽減する際のSD-809の効能並びに薬物誘導性遅発性ジスキネジーを有する対象におけるデューテトラベナジンを用いる滴定及び維持療法の安全性及び忍容性を評価することであった。主要効能評価項目は、盲検化中央ビデオ評定により評価された場合の、ベースラインから第12週までのAIMSスコア(項目1から7まで)の変化である。ベースラインAIMSスコアは、それぞれの対象について、0日目の評価と定義される。AIMSは、12の医師により投与され、スコア化された項目から構成される。項目1~10は、5ポイントの固定尺度で評定され、以下のものからなる:
・項目1~4は、口腔顔面運動を評価する;
・項目5~7は、四肢及び体幹ジスキネジーを取り扱う;
・項目8~10は、検査者により判定された全体的な重症度、及び運動及びそれと関連する苦痛の患者の自覚を取り扱う;並びに
・項目11~12は、歯及び/又は義歯と関連する問題に関するはい/いいえの質問であり、そのような問題はジスキネジーと勘違いされ得る。
【0509】
項目1から7まで(口腔顔面、四肢及び体幹運動)に由来する合計スコアが算出され、観察された運動を表すことができ、スコアが高いほど、ジスキネジーがより重症であることを示す。項目8を、全体的な重症度指標として用いることができる;項目9及び10は、患者の不能及び自覚に関する更なる情報を提供する;並びに項目11及び12は、口唇、顎、及び舌の運動を決定する際に有用であり得る情報を提供する。
【0510】
重要な副次的評価項目は、1)変化の臨床上の全般的印象(CGIC)に基づく、第12週で処置成功である対象の割合;2)患者の変化の全般的印象(PGIC)に基づく、第12週で処置成功である対象の割合;3)ベースラインから第12週までの改変型頭頸部ジストニア質問票(CDQ-24)の変化である。以前の試験に関して、PGIC/CGICによる処置成功を、第12週での非常に大幅な悪化から非常に大幅な改善までの範囲の、7ポイントのLikert尺度上での大幅な、又は非常に大幅な改善と定義することができる。CDQ-24は、頸部ジストニア(CD)及び眼瞼痙攣(BPS)の両方を含む、頭頸部ジストニアを有する患者における使用のために開発された疾患特異的な生活の質に関する質問票である。CDQ-24はCD及びBPSだけでなく、傷痕、精神的安定、疼痛、日常生活の活動、及び社会的/家族的生活などの、TDとも関連する領域を含むため、本試験における使用のためにそれを選択した。本試験について、CDQ-24を、質問が、生活の質に対するTD(CD/BPSとは反対)の影響により直接的に注目するように改変した。
【0511】
更なる副次的評価項目は、1)ベースラインから第12週までのAIMSスコア(中央評定)のパーセント変化;2)ベースラインから第12週までのAIMSスコア(中央評定)の変化に基づく、10パーセンテージポイントずつの、ベースラインからの10%の改善から、ベースラインからの90%の改善までの範囲の応答レベルに関する応答者の累積割合;3)ベースラインAIMSスコアがそれぞれの対象についての0日目の評価と定義される、ローカル評価者により評価される、ベースラインから第12週までのAIMSスコア(項目1から7まで)の変化を含んでいた。
【0512】
最後に、それぞれの臨床現場で、運動障害の評価を経験した治験責任医師は、TDの診断を確認する、全ての臨床評価を実施する、及び試験薬の用量の調整に関する決定を行う責任を負った。また、限定されるものではないが、UPDRS、BARS、HADS、C-SSRS、ESS、及びMoCAなどの有害事象報告及び他の評価基準により、安全性をモニタリングした。
【0513】
測定値及び統計値。全てのクリニック訪問時(スクリーニング、ベースライン、第2、4、6、9、及び12週時)に行ったAIMS評価のデジタルビデオ記録を、運動障害における専門家であり、処置群、ビデオの配列、及び治験責任医師のAIMSスコアについて盲検化された中央評価者対により評定した。従属変数としてのAIMSスコアの変化を含む反復測定値に関する線形混合モデル(MMRM)を用いて、分析を実行した。このモデルは、処置群、時点(5つのレベル:第2、4、6、9、及び12週)、時点相互作用による処置群、及び無作為化階層化変数に関する固定効果を含んでいた。非構造化共分散モデルを使用し、一次分析を、5%の有意性レベルの両側検定を用いて、第12週でデューテトラベナジン群とプラセボ群とを比較した。
【0514】
効能の結果。上の行のデータは、試験がその主要評価項目を満たすことを示していた。デューテトラベナジンを摂取する患者は、臨床的に意味がある効果について、プラセボにおける1.6ポイントと比較して、ベースラインから療法の終わりまでのAIMSスコア上で3.0ポイントの改善を達成した(p=0.0188)。更に、副次的評価項目は、数値的にデューテトラベナジンに有利であった。結果を、Table 22(表22)に与える。
【0515】
【表22】
【0516】
安全性の結果。試験はまた、低率の抑鬱、眠気、不眠及び静座不能などの、デューテトラベナジンに関する好ましい安全性及び忍容性プロファイルを示した。重篤な有害事象(SAE)を経験した(デューテトラベナジンにおいては4人の患者[6.9%]に対して、プラセボにおいては6人[10.2%]であった;いずれのSAEも処置と関連していなかった)、又は中止をもたらす有害事象を経験した(1人の患者[1.7%]に対して2人の患者[3.4%])のは、プラセボよりもデューテトラベナジンを摂取する患者において少なかった。この患者集団における神経精神的有害事象は、プラセボと比較してSD-809処置と稀に関連し、眠気/鎮静状態(9人[15.5%]対6人[10.2%])、不眠(4人[6.9%]対1人[1.7%])、静座不能(3人[5.2%]対0人[0.0%])を含んでいた。抑鬱/憂鬱感が各処置群で1人の患者によって報告され、自殺念慮がプラセボ群で1人の患者によって報告されたのに対して、SD-809群ではいなかった。3人の患者は、有害事象のため試験を中止した(デューテトラベナジン群では1人であったのに対して、プラセボ群では2人であった)。試験において報告された他の全ての副作用について、デューテトラベナジン群における比率は、プラセボ群と類似していたか、又はそれより低かった。3人以上の対象において観察された有害事象を含む、以下のTable 23(表23)に結果を示す。
【0517】
【表23】
【0518】
本明細書に開示される試験に基づいて、デューテトラベナジン、他の重水素置換されたテトラベナジン及びバルベナジンが、遅発性ジスキネジー並びに一般のジスキネジー、ジストニア、バリスム、無動症、及びパーキンソニズムなどの他の運動障害及び症状の処置において有効であり、本明細書に開示される投薬レジメン及び方法が有意な患者利益をもたらすと予想される。
【0519】
トゥレット症候群
トゥレット症候群(TS)は、チックと呼ばれる反復的な、常同的な、不随意の運動及び発声を特徴とする神経障害であり、DSM-V基準によれば、18歳前の幼児期に最初に現れる。運動性及び発音性チックを含む、TSと関連する症状の軽減におけるデューテトラベナジンの効能及び忍容性を証明するために、いくつかの試験が用いられたか、又は用いることができた。
【0520】
TS患者における安全性及び効能の非盲検パイロット試験
非盲検パイロット試験を、1)デューテトラベナジンを用いる処置の安全性及び忍容性を評価するため、並びに2)TSの運動性及び発音性チックを抑制するデューテトラベナジンの効能を評価するために行った。
【0521】
試験設計。試験対象患者基準(別途指摘しない限り、スクリーニング時のもの)は、以下のものを含んでいた:12~18歳の年齢、包括的;TSのDSM-Vによる診断及びスクリーニング前の3カ月以内に運動性及び発音性チックを示している;YGTSS上での19以上の総合チックスコア;4以上のTS-CGIスコア(中等度の疾患と一致);チック重症度及び頻度が少なくとも2週間にわたって安定であった;試験薬剤全体を嚥下することができる;投薬レジメンに忠実であり、全ての手順を順守する意思;医学的及び精神的履歴並びに身体及び神経学的検査により示された場合に良好な一般的健康にある;文書化されたインフォームドコンセント(対象及び親/保護者);並びに妊娠可能性がある女性の対象が、以前の少なくとも3カ月にわたって、禁欲、環境が整ったIUD又は子宮内システムを含む、試験完了まで許容可能な避妊方法を使用することに同意する;対象又はパートナーが殺精子剤と共に遮断法(例えば、コンドーム、ペッサリー、又は子宮頸管キャップ)を用いる;パートナーが登録の6カ月より前に実証された精管切除を受けている;以前の少なくとも3カ月にわたる安定なホルモン避妊法(認可された経口、経皮、又はデポーレジメン)。
【0522】
除外基準(別途指摘しない限り、スクリーニング又はベースライン時のもの)は以下を含んでいた:抑鬱、統合失調症、又は双極性障害などの、重篤な未処置の、又はきちんと処置されていない精神病(しかし、以前の少なくとも8週間にわたって安定用量にある場合、抗鬱剤療法を受けている対象は登録してもよい);自殺の考えの時点での両面性のレベルとは関係なく特定の計画と共に自殺念慮に基づいて行動する以前の意図(コロンビア自殺重症度評価尺度[C-SSRS]上の質問5に対する正の回答)、以前の準備活動若しくは行動、又は以前の実際の、中断された、若しくは中止された自殺の試みを含む、自殺の考え又は行動の履歴;対象が、スクリーニング又はベースラインの前の14日以内に以下の併用薬のいずれかを受けていた:テトラベナジン、神経弛緩薬(経口又はデポー、定型及び非定型;スクリーニングの3カ月以内のデポー)、グアンファシン又はクロニジン(スクリーニング又はベースラインの7日以内)、クロナゼパム、トピラメート、メトクロプラミド、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、レボドパ又はドーパミンアゴニスト、レセルピンなどのベンゾジアゼピン(スクリーニング又はベースラインの21日以内)、ボツリヌス毒素(スクリーニング又はベースラインの3カ月以内);対象が、チックの制御のために脳深部刺激で処置されている;治験責任医師の意見における、平均以下の知性又は知能;脳の進行性若しくは変性性神経障害又は構造的障害;それぞれの併発行動症状の処置のために1つを超える薬剤を受けている対象;対象が、QT間隔を延長させることが知られる薬物による処置を必要とする(しかし、シタロプラム及びエスシタロプラムは、認可されたラベルに従って投与された場合には許容される);12誘導心電図(ECG)上で440msを超えるQTcF値;試験薬の成分のいずれかに対する既知のアレルギー;スクリーニングの30日(又は5薬物半減期)以内(いずれか長い方)の調査薬又はデバイス試験への参加;妊娠又は授乳中;違法薬物の現在の使用;並びにDSM-Vにおいて定義された、以前の12カ月におけるアルコール若しくは物質の乱用の履歴、又は試験を通じて物質乱用を自制することができない。
【0523】
試験を完了する対象は、合計8週間にわたる試験薬による処置を受け、処置後4週間の安全性フォローアップを受けた。試験を通じて、独立した評価者が、イェール全般的チック重症度尺度(YGTSS)を用いてチックの重症度を、及びTS臨床全般的印象(TS-CGI)尺度を用いてチックの影響を評価した。独立した評価者は、薬剤又は有害事象(AE)の報告を含む、対象の臨床ケアの知識を有さない。
【0524】
用量レジメン。試験薬は5つの用量強度:6、9、12、15、及び18mgで利用可能であり、それらは全て、サイズ、形状、及び色(白色)において同一であった。試験の資格がある対象を、デューテトラベナジンによる処置に割り当て、チックを十分に抑制し、良好に忍容される試験薬の用量レベル(すなわち、最適用量)まで6週間にわたって滴定した。次いで、対象は、処置期間にわたってその用量レベルを維持した。CBIT(チックのための包括的行動介入)療法を受けていた対象を、療法がスクリーニング前に少なくとも4週間にわたって安定/進行中であり、試験の持続期間にわたって安定であると予想される限り、参加することを許可した。試験薬を、以下のように投与した。全ての処置用量を、食事と共に投与した。6mgの日用量を、1日1回、朝に与え、12mg以上の日用量を、分割用量で、1日の間に約10時間間隔で、1日2回投与した。出発用量は、午前中のデューテトラベナジン6mgであった。試験薬の用量を、場合により、滴定期間中に6mg/日の増分で毎週調整して、チックを抑制し、良好に忍容される用量レベルを同定した。用量減少は、6mg/日の増分であった。この試験では、第5週以降での訪問時のデューテトラベナジンの最大合計日用量は、36mg(18mg、1日2回[BID])であった。
【0525】
スクリーニング/ベースライン訪問。インフォームドコンセント/同意書を得た後、選択基準を満たした対象は、身体検査及び神経学的検査を含む包括的評価を受けた。次いで、対象は、チック重症度(独立評価者によって実施)及び内科的合併疾患のベースライン評価を受けた。この評価の後、選択基準を満たし続ける対象に、デューテトラベナジンを提供し、1日目に処置を開始し、次の日、ベースライン訪問を行うよう指示した。
【0526】
滴定期間(6週間)。対象及びその親/保護者は、滴定期間の第6週まで、電話による接触又はクリニック訪問のいずれかにより、臨床研究スタッフと毎週対話して、安全性を評価し、チックを十分に抑制し、良好に忍容されるデューテトラベナジンの用量を確立した。滴定中の安全性評価は、バイタルサインの評価、有害事象のモニタリング、並びに抑鬱及び自殺念慮及び行動に関する尺度の評定を含んでいた。直接会う試験訪問を、療法を開始した後、第2週及び第4週で予定化し、電話による接触を、療法を開始した後、第1、3、5、及び6週に予定化して、チック抑制及び有害事象を評価した。YGTSS及びTS-CGIを、独立評価者によって評価した。治験責任医師は、対象及び親/保護者と相談して、十分なレベルのチック抑制がいつ達成されたかを決定した。チックが十分に抑制されるまで、対象がプロトコールに定義された「臨床的に意味がある」AE(試験薬剤と関連し、(1)強度が中等度若しくは重度である、又は(2)重篤な有害事象[SAE]の基準を満たすAEと定義される)を経験するまで、又は最大許容用量に達するまで、デューテトラベナジンの用量を週ベースで増加させた。第5週での電話を含めてそれまで用量調整を行うことができたが、その前に安定用量に達した場合、対象は残りの滴定期間にわたって、及び維持投薬を通じて、その用量を継続した。一度、チックの十分な抑制が達成されたら、試験薬の用量を更に増加させなかった。対象が試験薬に起因する「臨床的に意味がある」AEを経験した場合、治験責任医師は、彼又は彼女の判断を用いて、用量減少又は停止が必要であるかどうかを決定した。用量調整は、AE及びチック抑制の対象及び親/保護者による報告、治験責任医師による安全性及び効能の臨床評価、並びに評価尺度からの情報を含む、全ての利用可能な情報に基づいて行った。滴定期間の終わりに、対象の用量を、維持期間のために確立した。
【0527】
維持期間(2週間)。対象は、次の2週間にわたってその維持用量を受け続けたが、AEのための用量減少は許可された。対象は、身体検査及び神経学的検査並びに独立評価者により評価されるYGTSS及びTS-CGIを含む全ての評価尺度の性能を含む完全な評価のために第8週でクリニックに戻った。対象は、第8週の訪問時に試験薬を中止した。
【0528】
フォローアップ(4週間)。対象は、安全性及びチック抑制の評価のために、第8週の訪問の1週間後に戻った。対象はまた、試験薬の最後の投与の4週間後に電話による接触でフォローアップを受けた。試験を完了した対象は、長期安全性試験が行われる場合、潜在的にそのような試験に参加する資格があった。
【0529】
薬物動態。PK下位調査を行って、21人の登録された対象のうちの最大9人において、デューテトラベナジン及びその代謝物のPKを評価した。PK下位調査中の対象は、第8週の訪問時に投与後6時間の経過にわたって、連続的なPK血液採取を受けた。PK下位調査に参加していない対象については、臨床検査のための採血時に第8週で単一のPK試料を取得した。
【0530】
安全性評価項目。安全性及び忍容性を、以下のパラメータ:有害事象(AE)、臨床検査、身体検査、バイタルサイン、12誘導ECG、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)、ベック鬱病調査票、第2バージョン(BDI-II)、及び小児Yale-Brown強迫観念-強迫行動尺度(CY-BOCS)をモニタリングすることにより、試験を通じて評価した。
【0531】
効能評価項目。以下の評価基準:イェール全般的チック重症度尺度(YGTSS)、YGTSSの総合チック重症度スコア(TTS)、YGTSSの全般的重症度スコア(GSS)、トゥレット症候群の臨床上の全般的印象(TS-CGI)、及びトゥレット症候群患者の変化の全般的印象(TS-PGIC)を用いて、効能を評価した。
【0532】
結果。初期の結果は、デューテトラベナジンがトゥレット症候群と関連するチックの処置において有効であることを示す。ベースラインから8週間の処置期間の終わりまで、運動性、声帯、総合チック重症度、及びイェール全般的総合チック重症度において一貫した改善傾向が観察された。この結果、総合チック重症度における-10.4単位の平均変化ということになった。更に、第8週後の処置の中止は、チックのわずかな増加をもたらした。結果を、以下のTable 24(表24)に与える;NDは、データがないことを示す。
【0533】
【表24A】
【0534】
【表24B】
【0535】
更に、予備的結果は、いくつかの他の関連する評価基準における改善を示す。PGICにおいては、1.8ポイントの平均改善が観察された(上記の7ポイントの尺度上で、1=最小限に改善、2=大幅な改善、3=非常に大幅な改善)が、これは、患者が8週間の処置後に全体的に改善されたことを示唆している(約75%が大幅に、又は非常に大幅に改善された)。TS-CGIにおいては、4.7のベースラインから、第8週での3.7までの平均改善が観察された(7ポイントの尺度上で、低いほど良好である)。最後に、有害事象プロファイルは、以前の試験と全体として一致すると考えられた。
【0536】
デューテトラベナジン、他の重水素置換されたテトラベナジン及びバルベナジンは、トゥレット症候群並びにチック、常同症、静座不能、ジスキネジー、及びむずむず脚症候群などの他の運動障害及び症状の処置において有効であり、本明細書に開示される投薬レジメン及び方法が有意な患者利益をもたらすと予想される。
【0537】
TS患者における安全性及び効能に関する12週の無作為化第2/3相試験
目的。この試験の主目的は、TSと関連する運動性及び発音性チックを軽減するデューテトラベナジンの効能を評価することである;この試験の副次的目的は、デューテトラベナジンを用いる滴定及び維持療法の安全性及び忍容性を評価することである。
【0538】
試験設計。これは、TSと関連するチックを有する患者を参加するよう招待した第2/3相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、平行群試験である。試験は、トゥレット症候群(TS)と関連するチックを有する6~16歳の年齢(包括的)の男性及び女性の患者を含む。患者を無作為化し、ベースライン時に年齢で層別化した[6~11歳、12~16歳]。各患者に関する試験薬の用量を最適レベルまで滴定した後、その用量で維持療法を行う。全体の処置期間は、12週間である。滴定期間は7週間であり、維持期間は5週間であり、その後、1週間のウォッシュアウト期間である。患者。
【0539】
試験対象患者基準。患者が以下の基準:ベースライン時に、6~16歳の年齢、包括的;ベースライン時に少なくとも44ポンド(20kg)の体重;TSに関する精神障害の診断及び統計マニュアル、第5版(DSM-V)診断基準を満たし、治験責任医師、患者及び介護人/成人の意見で、患者の活発なチックが苦痛又は障害を引き起こしている;スクリーニング及びベースライン時にYGTSS上で20以上のTTS;試験薬剤全体を嚥下することができる;患者及び介護人/成人が薬剤レジメンに忠実であり、全ての試験手順を順守する意思を有する;医学的及び精神的履歴並びに身体検査及び神経学的検査により示されるような、良好な全体的健康;試験及びその手順の性質を理解する能力、並びに設計通りに試験を完了すると予想される(治験責任医師の意見);インフォームドコンセント文書;妊娠可能性がある男性パートナーが、試験期間にわたって、及び試験薬の中止後30日間にわたって、避妊法(許容可能な避妊方法は、年に1%未満の失敗率であるもの、例えば、IUD、経口、埋込み型、経皮、若しくは注射によるホルモン避妊、殺精子剤と共に遮断法、及びパートナーの精管切除である)を使用しなければならない、妊娠可能性がある女性/少女(卵管結紮、子宮摘出、卵巣摘出により外科的に不妊(3カ月以上)ではない、又は先天的に不妊ではない)の全てを満たす場合、患者を試験に登録することができる。
【0540】
除外基準。患者が、以下の基準:チックの評価を曖昧にし得るTS以外の神経障害; 患者の主たる運動障害が、自閉症スペクトラム障害と関連する常同症(連続的に、同一の運動を反復する協調運動)である;双極性障害、統合失調症、又は別の精神障害の確定診断;スクリーニング又はベースライン時の臨床的に意味がある抑鬱(しかし、抗鬱剤療法を受けている患者は、スクリーニング前に少なくとも6週間にわたって安定用量にある場合、登録してもよい(禁止された抗鬱剤については以下の一覧を参照されたい));スクリーニングの2年以内の自殺の意図又は関連する行動の履歴:自殺の考えの時点で、両面性のレベルとは関係なく、特定の計画で自殺念慮に従って行動する以前の意図;以前の自殺準備活動又は行動;以前の実際の、中断された、又は中止した自殺の試みの履歴;自殺を完了した一等親血縁者;治験責任医師の意見で、障害の主要な原因である、ベースライン時の臨床的に意味があるOCD;患者が、スクリーニングの4週間以内にTSのためのCBIT又はOCDのためのCBTを受けている;患者が、スクリーニングの特定の除外ウィンドウ内にチックのための以下の併用薬のいずれかを受けている:
・3カ月以内:デポー神経弛緩薬、ボツリヌス毒素、又はテトラベナジン;
・21日以内:レセルピン;
・14日以内:モノアミンオキシダーゼ阻害剤、神経弛緩薬(経口)、定型及び非定型抗精神病薬、メトクロプラミド、レボドパ、及びドーパミンアゴニスト(注記:主な使用がチックのためでなく、投薬がスクリーニング前の少なくとも4週間にわたって安定的であった場合、ベンゾジアゼピンの使用は許可される;投薬がスクリーニング前の少なくとも4週間にわたって安定的であった場合、トピラメートの使用(最大200mg/日)は許可される;及び投薬がスクリーニング前の少なくとも4週間にわたって安定的であった場合、グアンファシン又はクロニジンの使用は許可される);
スクリーニング訪問の4週間以内のチックの軽減のための脳深部刺激、又は磁気刺激若しくは経頭蓋直接電流刺激による処置;スクリーニング又はベースライン時の不安定な、又は重篤な内科的疾患;患者が、QT間隔を延長することが知られる薬物(以下の一覧)を用いる処置を必要とする;スクリーニング時の12誘導ECG上で440msecを超えるQTcF間隔値;肝障害の証拠(スクリーニング時に正常範囲上限(ULN)の2.5倍を超えるAST若しくはALT又はスクリーニング時にULNの2倍を超えるALP若しくは総ビリルビン(Tbil)により示されるが、ジルベール症候群を有する患者及びAST、ALT、ALP、及びTbilのうちの2つ以上に異常がある患者は、メディカルモニターによって認可された場合、参加する資格がある);スクリーニング時にULNの1.5倍を超える血清クレアチニンにより示される、臨床的に意味がある腎障害の証拠;試験薬製品の成分のいずれかに対する既知のアレルギー;患者が、調査薬又はデバイス試験に参加し、ベースラインの30日以内又は5薬物半減期以内(いずれか長い方)に試験薬/介入を受けた;妊娠又は授乳中である;DSM-Vで定義される、以前の12カ月における認識されたアルコール又は物質乱用の履歴;薬物尿検査結果陽性又は試験を通じて物質乱用を自制することができない;並びに治験責任医師の意見で、患者を試験にとって適切でないものにする、スクリーニング時に実施されたMINI Kid Inventoryモジュールに基づくDSM-V診断、のいずれかを満たす場合、患者はこの試験に登録されない。
【0541】
禁止薬物としては、アジトロマイシン、クロロキン/メフロキン、クラリスロマイシン、ドムペリドン、ドロペリドール、エリスロマイシン、モキシフロキサシン、セボフルラン、プロブコール、スパルフロキサシン、クロルプロマジン、アリピプラゾール、ハロペリドール、マレイン酸アセナピン、ロキサピン、クロザピン、モリンドン、イロペリドン、ペルフェナジン、ルラシドン、ピモジド、オランザピン、プロクロルペラジン、オランザピン/フルオキセチン、チオリダジンパリペリドン、チオチキセン、ケチアピン、トリフルオペラジン、リスペリドン、プロメタジン含有化合物、ジプラシドン、及びチアプリドが挙げられる。
【0542】
効能評価項目。試験の主要効能評価項目は、ベースラインから第12週までの、イェール全般的チック重症度尺度(YGTSS)の総合チックスコア(TTS)の変化であり、その目標は運動性及び発音性/声帯チックを軽減することである。副次的効能評価項目は、全てベースラインから第12週までの、トゥレット症候群の臨床上の全般的印象(TS-CGI)スコア、トゥレット症候群患者の重症度の全般的印象(TS-PGIS)スコア、及びジルドラトゥレット症候群-生活の質(GTS-QOL)の日常生活の身体的/活動(ADL)下位尺度の変化である。
【0543】
安全性評価項目。安全性評価項目は、有害事象の発生;バイタルサインの観測値及びベースラインからの変化;小児抑鬱調査票2(CDI-2;親及び自己による報告バージョン)における観測値及びベースラインからの変化;小児コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)における観測値;心電図(ECG)パラメータにおける観測値及び臨床的に意味がある異常知見に関するスクリーニングからのシフト;並びに臨床検査パラメータ(血液学、化学、及び尿分析)における観測値及びスクリーニングからの変化である。
【0544】
滴定期間(7週間)。試験への参加の資格が依然としてある患者を、ベースライン訪問(1日目)時に無作為化し、その夕方(すなわち、試験訪問の後)に食事と共に盲検化された試験薬6mgを受ける。
【0545】
1)患者及び介護人/成人と相談した治験責任医師により決定された場合に、チックが最適に軽減されるまで;2)用量が忍容性でなくなるまで、試験薬の用量を増加させる。
【0546】
維持期間。滴定期間の終わりに、維持期間のための患者の用量を確立する。患者は、次の5週間にわたってその維持用量を受け続けるが、有害事象のための用量減少は許可される。患者は、安全性及び効能の評価のために第9週及び第12週にクリニックに戻る。第12週で、患者は、安全性及び効能評価基準を含む完全な評価を受ける。
【0547】
ウォッシュアウト期間。全ての患者は、第12週での訪問時に試験薬を中止し、安全性及びチック軽減の評価のために1週間後に戻る(第13週)。
【0548】
用量レジメン。上記で考察された通り、試験薬を、1日1回、6mgの出発用量で経口錠剤として投与し、滴定する。デューテトラベナジンの錠剤は、以下の用量強度:6、9、12、15、及び18mgで利用可能であり、印と色によって識別可能である。全ての患者において6mgの出発用量を1日目及び2日目の夕方に投与した後、第1週の残りについては午前中に投与する(体重が40kg未満である場合);試験薬全体を嚥下し、食事と共に摂取するべきである;その後、12mg以上の日用量を、2つの分割用量で1日2回、1日の間に約8~10時間空けて投与する;用量間で最小で6時間経過するべきである;患者が用量を逃し、それが次の用量の6時間以内である場合、逃した用量を飛ばすべきである;患者が夕方に初期の6mg用量を摂取する間に不眠を経験する場合、2日間にわたって朝の用量としてそれを摂取するように切り替えてもよい;第1週の後、用量増加は5日毎よりも頻繁に行うべきではない;並びに必要に応じて、用量減少は、6mgの増分にあるべきであることを確保するために指示書を提供する。
【0549】
盲検化及び無作為化。患者を、1:1の比のデューテトラベナジン又は釣り合う用量のプラセボによる処置を受けるように無作為に割り当てる。
【0550】
予想される結果。トゥレット症候群患者における上記試験において、6~48mgの忍容量のデューテトラベナジンの投与は、総合チック重症度、運動性及び発音性/声帯チックの両方、障害、及び/又は全般的重症度スコアを低下させる、生活の質、全体的な生活の満足、及び/又は患者による、若しくは臨床的な全般的印象変化を改善する、並びに無チック間隔を改善する(長くする)と予想される。安全性は、以前の試験において観察されたものと一致すると予想される。
【0551】
TS患者における安全性及び効能の長期非盲検第3相試験
目的。この試験の主目的は、デューテトラベナジンを用いる長期療法の安全性及び忍容性を評価することである;副次的目的は、効能を評価することである。
【0552】
試験設計。この試験は、デューテトラベナジンの上記臨床試験のいずれかへの参加を以前に完了したトゥレット症候群(TS)と関連するチックを有する男性及び女性の患者を含む。
【0553】
スクリーニング。インフォームドコンセント/同意書を、試験手順を実施する前に取得する。登録の時点で数カ月にわたって試験薬を除去され、医学的及び精神的な観点から安定である患者は、無作為化試験において上記のスクリーニング評価を受ける。患者の負荷を軽減するために、上記の無作為化試験において収集されたいくつかのデータを用いて、この非盲検試験における対応するデータを提供する。患者を、メディカルモニターの分別で再スクリーニングしてもよい。試験対象患者基準及び除外基準は、上記の試験のいずれかへの参加が試験対象患者基準であり、除外基準ではなく、DSM-V診断を不適格と見なすデータを、無作為化試験のスクリーニング訪問から取得することができるということを除いて、無作為化試験について上記で考察されたものと類似する。
【0554】
ベースライン訪問。上記の無作為化試験に登録された患者について、ベースライン訪問は、その試験の第13週での訪問と同時に行う。その試験のベースライン訪問についても特定されるものについて特定された第13週での評価は、繰り返す必要はない。全ての患者について、ベースライン訪問は、試験薬の予定された1回目の投与と同じ日(1日目)に行う。上記の無作為化試験において第12週で臨床的に意味がある検査値異常を示した患者については、第13週での値はこの試験におけるベースラインとして働く。そのような患者のロールオーバーは、メディカルモニターによって認可されなければならず、遅延してもよい。
【0555】
滴定期間(7週間)。パイロット試験からの患者は登録の時点で数カ月間にわたって試験薬を除去されているため、及び無作為化試験からの患者は1週間にわたって試験薬又はプラセボを中止しているため、全ての患者はこの試験における用量滴定を受ける。患者は、1日目の夕方に食事と共に6mgのデューテトラベナジンを受ける。
【0556】
維持期間(47週間)。滴定期間の終わりに、維持期間のための患者の初期用量を確立する。デューテトラベナジンの用量調整(上方又は下方)を、維持期間中に行うことができるが、必要に応じて、5日毎より頻繁ではなく、6mgの増分でのみ行うことができる。有害事象及びチック軽減の患者及び介護人/成人による報告、治験責任医師による安全性及び効能の臨床評価、患者の体重及びCYP2D6薬剤状態、並びに評価尺度に由来する情報などの、全ての利用可能な情報に基づいて、用量調整を行うべきである。維持期間中に、直接会う(クリニック内)試験訪問を、安全性及び効能の評価のために第8、15、28、41、及び54週で予定化する。第54週で、患者は無作為化試験において上記の完全な評価を受ける。
【0557】
ウォッシュアウト及びフォローアップ。全ての患者は、第54週での訪問時に試験薬を中止し、安全性及びチック軽減の評価のために1週間後(第55週)に戻る。患者は、ウォッシュアウト期間の終わりの1週間後(試験薬の最後の投与の2週間後[第56週])に安全性評価のためにフォローアップの電話による接触を受ける。
【0558】
用量レジメン。試験薬を、無作為化試験において上記のように投与する。
【0559】
試験評価項目。安全性評価項目は、無作為化試験において上記された通りである。効能評価項目は、無作為化試験において上記された主要及び副次的効能評価項目を含み、その目標は、運動性及び発音性/声帯チックの重症度を低下させることである。診査評価項目は、ベースラインから各訪問までの、無作為化試験において上記された通りのものである。
【0560】
予想される結果。トゥレット症候群患者における上記試験における、6~48mgの忍容量のデューテトラベナジンの投与は、総合チック重症度、運動性及び発音性/声帯チックの両方、障害、及び/又は全般的重症度スコアを低下させる、生活の質、全体的な生活の満足、及び/又は患者の変化の全般的印象、若しくは変化の臨床上の全般的印象を改善する、並びに無チック間隔を改善する(長くする)と予想される。安全性は、以前の試験において観察されたものと一致すると予想される。
【0561】
QT延長
HD及び異常不随意運動を含む他の障害を有する患者の処置における薬物間相互作用も重大な懸念であり得る。抑鬱は、HDにおける一般的な併存疾患であり、患者は、QT延長のリスクがあるシタロプラム及びエスシタロプラムなどの選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)で処置されることが多い。更に、頻繁な行動異常のため、いくつかの試験は、HDを有する患者が抗精神病薬による処置を受けることが多い(HDを有する患者の1/4~2/3は抗精神病薬を受けている)ことを示した。抗精神病薬は、QT間隔を延長することが知られている。FDAの指針によれば、QT間隔の延長は、心室細動へと暗転し、死亡をもたらし得る、トルサード・ド・ポアントなどの心不整脈の発生を促しやすい。米国処方情報によれば、テトラベナジンは、QT間隔を延長することが知られる薬剤と一緒に使用すべきではない。
【0562】
試験設計。テトラベナジンがQT間隔を増大させる既知のリスクを考慮して、処置群としてテトラベナジンを含む、デューテトラベナジンのTQT試験を、48人の健康なボランティアにおいて行った。これは、QTcF間隔のベースラインからの、プラセボ補正され、時間一致させた変化に基づく、心再分極に対する低用量(12mg)及び高用量(24mg)のデューテトラベナジンの効果を評価するための、単施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照及び陽性対照の6期間交差試験であった。アッセイ感度を、陽性対照として400mgのモキシフロキサシンを用いることにより確立した。
【0563】
重要な結果測定法は、QTc間隔に対する単回用量のデューテトラベナジンの効果を決定することであった。50mg用量のテトラベナジンは、テトラベナジンに関するTQT試験において用いられ、製品ラベルに警告及び使用上の注意をもたらす最大用量であるため、これを選択した。24mg用量のデューテトラベナジンは、50mgのテトラベナジンと同等の全身曝露(AUC)をもたらすが、ピーク濃度(Cmax)はより低いため、それを選択した。
【0564】
結果。デューテトラベナジンに関して、12mg及び24mgの用量は、それぞれ、2.8ms及び4.5msのQTcにおけるプラセボ補正された、時間一致させた最大の増加を誘導した。デューテトラベナジンに関して、QTcFのベースラインからのプラセボ補正された変化及び両側90%信頼区間の上界は、両方の用量レベルについて規制事項の閾値(5ms)より下であった。対照的に、テトラベナジン50mgに関するQTcFのベースラインからの最大時間一致、プラセボ調整された変化は、7.6msであり、テトラベナジン処方情報と一致していた。結果を、以下のTable 25(表25)に与える。
【0565】
【表25】
【0566】
上記の表において、ΔΔQTcFは、活性薬物とプラセボに関する、ベースラインからの最小二乗平均変化間の差異と定義される。デューテトラベナジンを、デューテトラベナジンプラセボと比較し(給食条件下で投与)、テトラベナジンを、テトラベナジンプラセボと比較した(絶食条件下で投与)。最大ΔΔQTcFは、デューテトラベナジンについては8時間の時点で、テトラベナジンについては3時間の時点で観察された。95%片側信頼区間の上限は、90%両側信頼区間の上限である。
【0567】
結論。これらの結果は、テトラベナジンと比較した、デューテトラベナジンと関連する異なる薬物動態プロファイル及び低いCmaxが、致死的不整脈のリスクを軽減することにより、デューテトラベナジンの安全性プロファイルを改善するという事実を支持する。
【0568】
上述の説明から、当業者であれば、本発明の本質的な特徴を確認することができ、その精神及び範囲から逸脱することなく、それを様々な使用及び条件に適合させるために本発明の様々な変更及び改変を行うことができる。
図1
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