(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】脛骨用骨切りガイド装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/15 20060101AFI20220506BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
A61B17/15
A61B17/56
(21)【出願番号】P 2021536433
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 IB2019057272
(87)【国際公開番号】W WO2020049421
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】102018000008346
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ・フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルドニ・マッシミリアノ
(72)【発明者】
【氏名】ベッカリ・アレッシオ
(72)【発明者】
【氏名】ブルガッシ・ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル・スティーブン
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-030536(JP,A)
【文献】米国特許第06077270(US,A)
【文献】特表2013-521991(JP,A)
【文献】米国特許第05704941(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0234466(US,A1)
【文献】特表2016-506824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/15
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術用ソーを受け入れて案内するように設けられたスロット(39)を有するガイド治具(32)と、
脛骨プラトー(100)における点または領域と接触するように設けられた第1の接触子(11)と、
脛骨プラトー(100)における点または領域と接触するように設けられた第2の接触子(12)と、
を備え、前記第1の接触子(11)および前記第2の接触子(12)が、互いにおよび前記ガイド治具(32)に対して共通の回転軸心(X)回りに回転することが可能であり、前記第1の接触子(11)は、第1のスライド平面(P1)内に含まれる第1のスライド方向(S1)に沿って前記第2の接触子(12)および前記ガイド治具(32)に対して並進することが可能であり、前記第2の接触子(12)は、前記第1のスライド平面(P1)と平行な第2のスライド平面(P2)内に含まれる第2のスライド方向(S2)に沿って前記第1の接触子(11)および前記ガイド治具(32)に対して並進することが可能である、脛骨用骨切りガイド装置(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のガイド装置(10)において、前記回転軸心(X)、前記第1のスライド平面(P1)および前記第2のスライド平面(P2)が、前記ガイド治具(32)の前記スロット(39)に対して予め設定された傾きをそれぞれ有する、ガイド装置(10)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガイド装置(10)において、前記第1のスライド平面(P1)および前記第2のスライド平面(P2)が、前記回転軸心(X)と直交する、ガイド
装置(10)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のガイド装置(10)において、前記第1の接触子(11)が、前記第1のスライド平面(P1)に対して傾いた第1の接触方向(D1)に沿って延びて脛骨プラトー(100)における点または領域と接触するように構成された第1の端部(14)を有しており、前記第1のスライド平面(P1)への前記第1の接触方向(D1)の射影は、前記第1のスライド方向(S1)に対して傾いている、ガイド装置(10)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のガイド装置(10)において、前記第2の接触子(12)が、前記第2のスライド平面(P2)に対して傾いた第2の接触方向(D2)に沿って延びて脛骨プラトー(100)における点または領域と接触するように構成された第1の端部(21)を有しており、前記第2のスライド平面(P2)への前記第2の接触方向(D2)の射影は、前記第2のスライド方向(S2)に対して傾いている、ガイド装置(10)。
【請求項6】
請求項4を引用する請求項5に記載のガイド装置(10)において、前記第1の接触子(11)と前記第2の接触子(12)は、予め設定された距離で前記回転軸心(X)に沿って離間し、前記回転軸心(X)と平行な方向における前記第1の接触子(11)の前記第1の端部(14)の延び
と前記回転軸心(X)と平行な方向における前記第2の接触子(12)の前記第1の端部(21)の延び
は、前記第1の接触子(11)と前記第2の接触子(12)の使用時に、同じ高さに到達するように、あるいは、脛骨プラトー(100)の軟骨及び/又は骨の摩耗を補償するために別々の高さに到達するように、選択される、ガイド装置(10)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のガイド装置(10)において、さらに、
前記ガイド治具(32)に挿設することが可能な、前記第1の接触子(11)および前記第2の接触子(12)用の支持体(27)、
を備え、前記支持体(27)は締結部材(31)を具備し、当該締結部材(31)は、前記第1および前記第2の接触子(11,12)を当該支持体(27)に対して回転および並進させることが可能な自由位置状態と、前記第1および前記第2の接触子(11,12)を当該支持体(27)に対して定位置に保持する固定状態との間で切り替えることが可能である、ガイド装置(10)。
【請求項8】
請求項7に記載のガイド装置(10)において、前記ガイド治具(32)が、前記支持体(27)を相異なる位置に受け入れて保持するように互いに離設された複数の拘束部材(33)を具備する、ガイド装置(10)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のガイド装置(10)において、さらに、
髄外または髄内アライメントガイド(41)、
を備え、前記ガイド治具(32)は、前記アライメントガイド(41)と接続されることによって当該アライメントガイド(41)で動かすことが可能になる、ガイド装置(10)。
【請求項10】
請求項9に記載のガイド装置(10)において、前記アライメントガイド(41)が、前記回転軸心(X)と平行な方向に沿った前記ガイド治具(32)の並進、および互いに直交し前記回転軸心(X)と直交する2つの軸回りの当該ガイド治具(32)の回動を引き起こす調節部材(50)を具備する、ガイド装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脛骨骨切り用のガイド装置、特には膝関節再建外科手術の脛骨用骨切りガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
膝関節再建手術では、しばしば、人工膝関節を設置して関節の機能を回復することが必要になる。
【0003】
このような人工膝関節は、典型的に、大腿骨への固定用に設計された人工膝関節大腿骨コンポーネント、脛骨への固定用に設計された人工膝関節脛骨コンポーネント、および膝の回動運動を覆うように設計されたカップリング表面を備える。
【0004】
人工膝関節大腿骨コンポーネントおよび脛骨コンポーネントの設置には、大腿骨および脛骨をそれぞれ骨切りし、設置人工膝関節を収容保持することのできる表面を得ることが求められる。
【0005】
膝関節は形状が複雑であるだけでなく、それに加わる機械的荷重の分布も複雑であるため、人工膝関節コンポーネントのアライメントを正確に行うことや、患者の脛骨上や大腿骨上での位置決めを確実に行うことが、極めて重要になる。
【0006】
この理由から、脛骨骨切り術を実施する際に患者の下肢アライメントを回復することのできる切断平面を、手術医によって形成可能とするためのガイド装置が開発されている。
【0007】
既知のガイド装置では、脛骨骨切り術を実施する際の切断平面の向きを、脛骨の機能軸に対して、すなわち、膝関節の中心と足首関節の中心とを通る軸に対して設定することが可能である。
【0008】
具体的に述べると、手術医は、ガイドロッドと脛骨の機能軸とのアライメントを行った後、切断平面の向きを、脛骨の内側顆、外側顆などの基準位置から当該切断平面までの近位側-遠位側軸に沿った距離を選び且つ内側-外側軸に対して当該切断平面を傾かせる(内反/外反角度)と共に前側-後側軸に対して当該切断平面を傾かせる(傾斜角度)ことによって決定する。
【0009】
医学研究では、ある割合の人口における下肢アライメントがニュートラルなアライメントからずれていること、すなわち、元来の関節ラインにある程度の生理的内反または外反が生じていることが強調されている。
【0010】
ニュートラルなアライメントからずれた状態で成長が止まっているこのような対象においては、人工膝関節の設置後のアライメントをニュートラルなアライメントとして修復すると不自然であり且つ悪影響を生じ得るので、患者の元来の関節ラインを保ったまま脛骨の運動学的アライメントを回復するほうが上手く行き得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、出願人は、手術医が脛骨の運動学的アライメント手術技法の適用を決めた際に、脛骨の機能軸とのアライメント用に構成されている既知のガイド装置では、正確かつ信頼度の高い適用が不可能になることに気付いた。
【0012】
実際、出願人は、手術医が患者の元来の関節ラインを保つことを決めても、従来技術のガイド装置では、内側-外側軸や前側-後側軸に対する切断平面の向きを補助なしの制御されていない様式で決定せざるを得ないこと、すなわち、切断平面と患者の元来の関節ラインとを目視で比較してアライメントを実施せざるを得ないことに気付いた。
【0013】
出願人は、このような補助なしの制御されていない様式による切断平面の向き決定では、脛骨骨切り術を終えた後に所望のアライメントを得るための修正が必要となるため、骨の損傷や手術の長時間化に繋がり得ることに気付いた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
出願人は、患者の元来の関節ラインに対する切断平面の向きを少なくとも内側-外側軸や前側-後側軸に沿って補助され、かつ制御された様式で決定するのを可能にする、脛骨骨切り用のガイド装置が利用出来れば有益であるということに気付いた。
【0015】
出願人は、患者の元来の関節ラインを決定するにあたって脛骨プラトー上の少なくとも2つの異なる点を直接参照することにより、このような2つの異なる点を切断平面の向きの基準として利用できるということを見出した。
【0016】
そして、出願人は、このような2つの異なる点の一方を内側顆上に、他方を外側顆上に選択することにより、内側-外側軸に対する切断平面の傾きについての正確な基準が得られることを見出した。
【0017】
そして、出願人は、このような2つの異なる点の両方を内側顆上または外側顆上に選択することにより、前側-後側軸に対する切断平面の傾きについての正確な基準が得られることを見出した。
【0018】
したがって、本発明は、第1の態様において、脛骨骨切り用のガイド装置であって、
手術用ソーの刃部を受け入れて案内するように設けられたスロットを有するガイド治具と、
脛骨プラトーにおける点または領域と接触するように設けられた第1の接触子と、
脛骨プラトーにおける点または領域と接触するように設けられた第2の接触子と、
を備え、前記第1の接触子および前記第2の接触子が、互いにおよび前記ガイド治具に対して共通の回転軸心回りに回転することが可能であり、前記第1の接触子は、第1のスライド平面内に含まれる第1のスライド方向に沿って前記第2の接触子および前記ガイド治具に対して並進することが可能であり、前記第2の接触子は、前記第1のスライド平面と平行な第2のスライド平面内に含まれる第2のスライド方向に沿って前記第1の接触子および前記ガイド治具に対して並進することが可能である、ガイド装置に関する。
【0019】
前記第1および前記第2の接触子を互いにおよび前記ガイド治具に対して回転させることが可能であると共に、前記第1の接触子を前記第1のスライド方向、前記第2の接触子を前記第2のスライド方向に沿って並進させることが可能なので、各接触子を脛骨プラトーにおけるどの領域にも届かせることができる。
【0020】
これにより、前記ガイド治具を患者の主要な内反/外反角度とアライメントさせるのに、かつ/あるいは、前記ガイド治具を患者の主要な傾斜角度とアライメントさせるのに、脛骨プラトー上のこれらの接触子を直接的かつ物理的な基準とすることが可能になる。これにより、補助され、かつ制御された様式で前記切断治具を患者の関節ラインとアライメントさせることが可能となり、前記ガイド治具の客観的な運動学的アライメントを手術医が実施できるようになる。
【0021】
同じように前記第1および前記第2の接触子を用いることで、前記切断治具を配置するための切断高位を決定することも可能となり、内反/外反角度と切断高位、あるいは、傾斜角度と切断高位を同時に客観的に決定することができるようになる。
【0022】
具体的に述べると、前記第1の接触子を脛骨プラトーの内側顆上の予め選択された点と接触するように配置し、前記第2の接触子を外側顆上の予め選択された点と接触するように配置することにより、前記ガイド治具を(当該ガイド治具と共に前記手術用ソーのための前記スロットも)、これら2つの予め選択された点を通過する仮想直線とアライメントさせることが可能となる。このような2つの点を、当該点同士を通過する仮想直線が患者の元来の関節ラインと平行になるように選択することにより、前記ガイド治具を(内側-外側軸に対して傾かせて)患者の関節ラインの内反/外反角度とアライメントさせることができると同時に、当該ガイド治具を(近位側-遠位側軸に沿った)最適な切断高位に配置することができる。
【0023】
前記第1の接触子と前記第2の接触子を、脛骨プラトーの内側顆及び外側顆の一方における前側位置の予め選択された点、後側位置の予め選択された点にそれぞれ接触するように配置することにより、前記ガイド治具を(当該ガイド治具と共に前記手術用ソーのための前記スロットも)(前側-後側軸に対して傾かせることにより)、このような2つの点を通過する仮想直線とアライメントさせることが可能となる。これらの2つの点を、当該点同士を通過する仮想直線が患者の元来の傾斜ラインと平行になるように選択することにより、前記ガイド治具を患者の元来の傾斜角度とアライメントさせることができると同時に、当該ガイド治具を(近位側-遠位側軸に沿った)予め選択された切断高位に配置することができる。
【0024】
第2の態様において、脛骨骨切り方法は、
第1および第2の接触子が付いたガイド治具を用意する過程と、
前記第1の接触子を脛骨の内側顆における予め選択された点と接触するように配置し、前記第2の接触子を外側顆における予め選択された点と接触するように配置することにより、前記ガイド治具の内反/外反角度および切断高位を調節する過程と、
前記ガイド治具を脛骨に固定する過程と、
手術用ソーを前記ガイド治具に挿通して脛骨を切断する過程と、
を備える。
【0025】
第3の態様において、脛骨骨切り方法は、
第1および第2の接触子が付いたガイド治具を用意する過程と、
前記第1および前記第2の接触子を脛骨の内側顆及び外側顆の一方において前側-後側軸に沿って離間した2つの予め選択された点と接触するように配置することにより、前記ガイド治具の傾斜角度および切断高位を調節する過程と、
前記ガイド治具を脛骨に固定する過程と、
手術用ソーを前記ガイド治具に挿通して脛骨を切断する過程と、
を備える。
【0026】
第2および第3の態様におけるガイド治具は、本発明の第1の態様におけるガイド治具またはガイド装置であり得る。
【0027】
「補助され、かつ制御された」アライメントまたは位置決めとは、仮想線と実物とを目視で比較せずに行う一義的なアライメントまたは位置決めのことを意味し、特には、実物同士(例えば、接触子と骨の一部)の接触で決まるアライメントまたは位置決めのことを意味する。
【0028】
本発明で参照し得る解剖学的基準系として、一般的な解剖学的基準系を、本明細書および添付の特許請求の範囲においても用いる。
【0029】
具体的に述べると、重力ベクトルと平行な鉛直軸を、近位側-遠位側軸と称する。近位側-遠位側軸と直交して患者の身体を左側から右側へと貫通する軸を、内側-外側軸と称する。内側-遠位側軸および近位側-遠位側軸と直交する軸を、前側-後側軸と称する。
【0030】
患者の身体の、近位側-遠位側軸と前側-後側軸の両方を含んだ対称平面(つまり、患者の身体を右部と左部とに分割する平面)を、矢状面と称する。近位側-遠位側軸および内側-外側軸を含んで患者の身体の質量中心を通る鉛直平面(つまり、患者の身体を前部と後部とに分割する平面)を、前頭面または冠状面と称する。矢状面および前頭面と直交して患者の身体の質量中心を通る平面(つまり、患者の身体を上部と下部とに分割する平面)を、水平面または横断面と称する。
【0031】
「前側」とは、前側-後側軸に沿って患者の身体の前部に向いていることを意味する。「後側」とは、前側-後側軸に沿って患者の身体の後部に向いていることを意味する。「上側」とは、近位側-遠位側軸に沿って患者の身体の上部(頭部)に向いていることを意味する。「下側」とは、近位側-遠位側軸に沿って患者の身体の下部(足部)に向いていることを意味する。「内側」とは、内側-外側軸に沿って矢状面側に向いていることを意味する。「外側」とは、内側-外側軸に沿って矢状面から遠ざかる方向を意味する。
【0032】
前側-後側方向とは、患者の身体の前部から後部へ(又は後部から前部へ)向いた方向のことである。近位側-遠位側方向とは、患者の身体の下部から後部へ(又は後部から下方へ)向いた方向のことである。内側-外側方向とは、患者の身体の左部から右部へ(又は右部から左部へ)向いた方向である。
【0033】
肢や骨について言及する際の「近位側」とは患者の心臓に最も近い端部のことを意味し、「遠位側」とは患者の心臓から最も離れた端部のことを意味する。
【0034】
整形学的用語の「内反」とは、骨又は肢の遠位側部分が内向きの(矢状面側に向かう)角度を有していることを意味する。整形学的用語の「外反」とは、骨又は肢の遠位側部分が外向きの(矢状面とは反対側を向く)角度を有していることを意味する。「内反/外反角度」とは、前頭面上を通る内側-外側軸と、前頭面と直交して内側顆における予め選択された点と外側顆における予め選択された点とを通過する、参照平面の前頭面状の外形線との間に形成される角度のことを意味する。
【0035】
「傾斜角度」とは、矢状面上を通る前側-後側軸と、矢状面と直交して内側顆及び外側顆の一方の前側-後側方向に互いに離間した2つの予め選択された点を通過する、参照平面の矢状面上の外形線のとの間に形成される角度のことを意味する。
【0036】
本発明は、3つの任意の態様において、下記の好ましい構成の1つ以上を単独で又は組合せで備え得る。
【0037】
好ましくは、各接触子に、各々のスライド方向に沿った並進と前記回転軸心回りの回転との、前記ガイド治具に対する2つの自由度が存在する。
【0038】
好ましくは、前記回転軸心、前記第1のスライド平面および前記第2のスライド平面は、前記ガイド治具の前記スロットに対して予め設定された傾きをそれぞれ有する。
【0039】
換言すると、前記回転軸心および2つの前記スライド平面は、前記ガイド治具に対して固定されていることが好ましい。
【0040】
好ましくは、前記第1および前記第2のスライド平面は、前記回転軸心と直交する。
【0041】
これにより、前記回転軸心に沿って測定される前記第1および前記第2の接触子の高さは、前記第1および前記第2のスライド方向に沿った前記第1および前記第2の接触子の並進中に変化しない。
【0042】
好ましくは、前記回転軸心は、前記ガイド治具の前記スロットと直交する。好ましくは、前記第1および前記第2のスライド平面は、前記ガイド治具の前記スロットと平行である。
【0043】
これにより、前記回転軸心に対する前記ガイド治具の前記スロットの当初の傾きも考慮して計算したうえで、前記ガイド治具の前記スロットが取らなければならない傾斜角度および/または内反/外反角度が、前記第1および前記第2の接触子で直接定まることになる。
【0044】
変形例として、予め設定された内反/外反角度または予め設定された傾斜角度を前記ガイド治具に与えるべく、前記回転軸心を当該ガイド治具の前記スロットに対して傾かせていてもよい。
【0045】
具体的に述べると、前記回転軸心と前記ガイド治具の前記スロットにより規定される平面内に含まれる前側-後側軸とが形成する角度を、90°ではない予め定められた角度にするようにしてもよい。この場合の前記ガイド治具は、90°とこの予め定められた角度との差分に略等しい値の予め設定された傾斜角度を有することになる。
【0046】
これに加えて又はこれに代えて、前記回転軸心と前記ガイド治具の前記スロットにより規定される平面内に含まれる内側-外側軸とが形成する角度を、90°ではない予め定められた角度にするようにしてもよい。この場合の前記ガイド治具は、90°とこの予め定められた角度との差分に略等しい値の予め設定された内反/外反角度を有することになる。
【0047】
好ましくは、前記第1の接触子は、前記第1のスライド平面に対して傾いた第1の接触方向に沿って延びて脛骨プラトーにおける点または領域と接触するように構成された第1の端部を有しており、前記第1のスライド平面への前記第1の接触方向の射影は、前記第1のスライド方向に対して傾いている。
【0048】
好ましくは、前記第2の接触子は、前記第2のスライド平面に対して傾いた第2の接触方向に沿って延びて脛骨プラトーにおける点または領域と接触するように構成された第1の端部を有しており、前記第2のスライド平面への前記第2の接触方向の射影は、前記第2のスライド方向に対して傾いている。
【0049】
換言すると、前記第1の接触子の前記第1の端部および/または前記第2の接触子の前記第1の端部は、内側方向または外側方向(すなわち、矢状面側に又は矢状面とは反対側に)傾いたものであり得る。
【0050】
これにより、前記第1の接触子および/または前記第2の接触子は、脛骨プラトーの除外されるであろう領域や届かせ難い領域(例えば、脛骨プラトーの脛骨稜に極めて近い前部領域や後部領域等)に届くことができるようになる。
【0051】
好ましくは、前記第1の接触子と前記第2の接触子は、予め設定された距離で前記回転軸心に沿って離間し、前記回転軸心と平行な方向における前記第1の接触子の前記第1の端部の延びは、前記回転軸心と平行な方向における前記第2の接触子の前記第1の端部の延びから予め設定された量を差し引いたものに等しい。
【0052】
これにより、前記第1の接触子と前記第2の接触子とを、共通の回転軸心内で回転可能となるよう重ね置くことができる。
【0053】
これら2つの接触子を重ね置いた場合、当該接触子同士は、互いに平行かつ近位側-遠位側方向に離れた各平面上に位置することになる。前記第2の接触子の前記第1の端部を前記第1の接触子の前記第1の端部よりも(予め決められた量だけ)短くすることにより、前記ガイド治具の正確な運動学的アライメントを形成するようにこれら2つの第1の端部を脛骨プラトーの相異なる領域へと接触させることが可能になる。
【0054】
患者の脛骨プラトーに軟骨及び/又は骨の摩耗が生じていない場合、先述の予め決められた量は、近位側-遠位側方向において前記第1の接触子と前記第2の接触子とを隔てる距離に等しくなり得る。これにより、前記第1の接触子の前記第1の端部と前記第2の接触子の前記第1の端部は、内側-外側軸および前側-後側軸を含む一つの平面上に位置するようになり、すなわち、同じ高さに位置することになる。
【0055】
患者の脛骨プラトーに軟骨及び/又は骨の摩耗が生じている場合、先述の予め決められた量は、近位側-遠位側方向において前記第1の接触子と前記第2の接触子とを隔てる距離から軟骨及び/又は骨の欠損したぶんの高さに等しい量を差し引いたものに等しくなり得る。このように、前記接触子の前記第1の端部同士が別々の高さに位置することで、脛骨プラトーの軟骨及び/骨の摩耗が補償される。
【0056】
好ましくは、前記ガイド治具に前記第1および前記第2の接触子用の支持体を挿設することが可能であり、当該支持体は締結部材を具備し、当該締結部材は、前記第1および前記第2の接触子を当該支持体に対して回転および並進させることが可能な自由位置状態と、前記第1および前記第2の接触子を当該支持体に対して定位置に保持する固定状態との間で切り替えることが可能である。
【0057】
これにより、前記第1および前記第2の接触子を前記支持治具に対して前記回転軸心回りに互いに独立して回転させたり前記第1のスライド方向、第2のスライド方向に沿ってそれぞれ互いに独立して並進させたりすることでこれら2つの接触子の脛骨プラトー上での正確な位置決めが可能となるだけでなく、当該2つの接触子を到達位置にてロックすることで、前記ガイド治具の向き決定の基準位置として機能させることも可能になる。
【0058】
好ましくは、前記第1の接触子と前記第2の接触子の両方に対して作用しうる、単一の支持体が設けられる。
【0059】
好ましくは、前記ガイド治具は、前記支持体を相異なる位置に受け入れて保持するように互いに離設された複数の拘束部材を具備する。
【0060】
これにより、患者の主要骨格および実施すべき具体的な脛骨骨切り術に応じて、前記支持体を前記ガイド治具の予め決められた種々の領域に対応付けることが可能になる。
【0061】
好ましくは、髄外または髄内アライメントガイドが設けられて、前記切断治具は、前記アライメントガイドと接続されることによって当該アライメントガイドで動かすことが可能になる。
【0062】
これにより、前記ガイド治具の運動学的アライメント作業中、当該ガイド治具を患者の脛骨に対して位置決めしたり当該ガイド治具を支えたりすることが可能になる。
【0063】
好ましくは、前記アライメントガイドは、前記回転軸心と平行な方向に沿った前記ガイド治具の並進、および互いに直交し前記回転軸心と直交する2つの軸回りの当該ガイド治具の回動を引き起こす調節部材を具備する。
【0064】
好ましくは、前記ガイド治具は、前記アライメントガイドと一緒に動くように当該アライメントガイドの近位側の端部と一体化する。
【0065】
好ましくは、前記調節部材は、前記アライメントガイドに直接的に作用するものであり、当該アライメントガイドに作用して前記ガイド治具の向きを患者の脛骨の関節ラインと平行にすることが可能である。
【0066】
髄外アライメントガイドが使用可能である場合、前記調節部材としては、当該アライメントガイドの遠位側の端部を3つの互いに直交する調節方向に沿って並進させることが可能なものが想定される。好ましくは、このような3つの互いに直交する方向は、それぞれ、前側-後側方向、近位側-遠位側方向または内側-外側方向と平行または一致する。
【0067】
好ましくは、第1の調節方向は近位側-遠位側方向に略向いており、前記調節部材をこのような第1の調節方向に作動させると、前記ガイド治具が近位側-遠位側方向に並進し、当該ガイド治具を配置するための切断高位の選択が可能になる。
【0068】
好ましくは、第2の調節方向は前側-後側方向に略向いており、前記調節部材をこのような第2の調節方向に作動させると、前記ガイド治具が略内側-外側軸回りに回動し、当該ガイド治具を配置するための傾斜角度の選択が可能になる。
【0069】
好ましくは、第3の調節方向は内側-外側方向に略向いており、前記調節部材をこのような第3の調節方向に作動させると、前記ガイド治具が略前側-後側軸回りに回動し、当該ガイド治具を配置するための内反/外反角度の選択が可能になる。
【0070】
好ましくは、前記調節部材は、前記第1および前記第2の接触子が脛骨プラトーにおける前記切断治具の運動学的アライメント用に予め選択された点と接触するように作動される。
【0071】
手術医が内反/外反角度との補助され、かつ制御されたアライメント実施を決めた場合、好ましくは、傾斜角度がまず調節される。
【0072】
この場合、好ましくは、まず、矢状面視で前記切断治具の前記スロットが内側顆または外側顆と平行になるように、当該切断治具が略内側-外側軸回りに回動させられる。
【0073】
好ましくは、2つの前記接触子が、内側顆上の点と外側顆上の点との2つの予め選択された点に配置されるように回動および並進させられる。
【0074】
前記切断治具を略前側-後側軸回りに回動させたり近位側-遠位側方向に並進させたりして2つの前記接触子をそれら2つの予め選択された点と接触させることにより、内反/外反角度および切断高位が設定される。
【0075】
手術医が傾斜角度との補助され、かつ制御されたアライメント実施を決めた場合、好ましくは、内反/外反角度がまず調節される。
【0076】
この場合、好ましくは、まず、正面視で前記切断治具の前記スロットが患者の関節ラインと平行になるように、当該切断治具が略前側-後側軸回りに回動させられる。
【0077】
好ましくは、2つの前記接触子が、内側顆及び外側顆の一方における2つの予め選択された各点に配置されるように回動および並進させられる。
【0078】
このとき、前記切断治具を略内側-外側軸回りに回動させたり近位側-遠位側方向に並進させたりして2つの前記接触子をそれら2つの予め選択された点と接触させることにより、傾斜角度および切断高位が設定される。
【0079】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら行う、本発明の好適な実施形態についての以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】本発明を詳しく説明するのに役立つ基準軸および基準平面の斜視図である。
【
図2】本発明における、脛骨骨切り用のガイド装置の一部の構成要素の斜視図である。
【
図4】
図2の脛骨骨切り用のガイド装置を脛骨の近位側部分に適用した斜視図である。
【
図5】
図4の脛骨骨切り用のガイド装置が別の動作態様にあるときの斜視図である。
【
図6】
図4の脛骨骨切り用のガイド装置の水平面図である。
【
図7】
図5の脛骨骨切り用のガイド装置の斜視図である。
【
図8】
図4及び
図5の脛骨骨切り用のガイド装置の一部の構成要素の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
本発明にかかる脛骨骨切り用のガイド装置の全体に、符号10を付す。
【0082】
図1には、患者の身体を基準として、矢状面SP,前頭面または冠状面FP、さらには、水平面または横断面HPが描かれている。
【0083】
矢状面SPは、略鉛直であり、理想的には人体を2つの対称的な半割部分に分割する。前頭面FPは、略鉛直であり、理想的には人体を前部と後部とに分割する。水平面FPは、略水平であり、理想的には人体を上部と下部とに分割する。
図1に示すように、矢状面SP、前頭面FPおよび水平面HPは、互いに直交する。
【0084】
図1には、さらに、互いに直交した近位側-遠位側軸PDA、内側-外側軸MLAおよび前側-後側軸APAが描かれている。近位側-遠位側軸PDAは、矢状面SP内と前頭面FP内とに含まれており、内側-外側軸MLAは、水平面HP内と前頭面FP内とに含まれており、前側-後側軸APAは、水平面内と矢状面SP内とに含まれている。
【0085】
特に
図2を参照すると、ガイド装置10は、脛骨プラトー100における点または領域と接触するように設けられた第1および第2の接触子11,12を備える。
【0086】
第1の接触子11は、第1の端部14、第1の端部14の反対側にある第2の端部15、および第1の端部14と第2の端部15との間に延びる中央部位16を有する細長い本体13を備える。
【0087】
中央部位16は、第1の接触子11を第1のスライド方向S1に沿って並進させて第1の端部14と固定された基準との間の相対距離を変えられるようにするためのスロット17を有している。
【0088】
図2に示すように、第1のスライド方向S1は第1のスライド平面P1内に含まれている。
【0089】
第2の端部15は、把持領域18を有している。把持領域18は、ユーザ(例えば、手術医等)が把持することで第1の接触子11を第1のスライド方向S1に沿って動かしたり回転軸心X回りに動かしたりできるように構成されている。把持領域18は、把持し易いようにローレット加工が施されている(すなわち、複数の凸部及び凹部が設けられている)。
【0090】
第1の端部14は、テーパ状であり、丸みを帯びた又は尖った接触領域19で終端している。接触領域19は、脛骨プラトー100における(点状の)狭小領域と接触するように設けられている。
【0091】
第1の端部14は、前記第1の接触子の第1のスライド方向S1と一致しない第1の接触方向D1に沿って延びている。
【0092】
具体的に述べると、
図6に詳しく示すように、第1の接触方向D1は、第1のスライド方向S1に対して内側方向または外側方向に傾いており、第1のスライド方向S1からみて矢状面SP側に又は矢状面SPとは反対側に逸れている。換言すると、第1のスライド平面P1への第1の接触方向D1の射影と第1のスライド方向S1とが形成する角度A1は、0°でない。
【0093】
このような角度A1は、約5°~約90°、好ましくは約10°~約60°、より好ましくは約30°であり得る。いずれにせよ、内側方向または外側方向への前記傾きや角度A1は、脛骨プラトー100の主要骨格および当該脛骨プラトー上の手術医が前記ガイド治具のアライメントの基準として選択することを決めた点の位置に応じて選ぶことができる。
【0094】
図3に詳しく示すように、第1の接触方向D1は、さらに、第1のスライド方向S1に対して遠位側方向にも傾いており、第1のスライド方向S1に対して水平面HPから離れるように逸れている。換言すると、第1のスライド方向S1を含んで第1のスライド平面P1と直交する平面への第1の接触方向D1の射影と第1のスライド方向S1とが形成する角度A2は、0°でない。このような角度A2は、約5°~約90°、好ましくは約10°~約60°、より好ましくは約45°であり得る。いずれにせよ、このような角度A2は、脛骨プラトー100の主要骨格および当該脛骨プラトー上の手術医が前記ガイド治具のアライメントの基準として選択することを決めた点の位置に応じて選ぶことができる。
【0095】
第2の接触子12は、第1の端部21、第1の端部21の反対側にある第2の端部22、および第1の端部21と第2の端部22との間に延びる中央部位23を有する細長い本体20を備える。
【0096】
中央部位23は、第2の接触子12を第2のスライド方向S2に沿って並進させて第1の端部21と固定された基準との間の相対距離を変えられるようにするためのスロット24を有している。
【0097】
図2に示すように、第2のスライド方向S2は第2のスライド平面P2内に含まれている。
【0098】
第2の端部22は、把持領域25を有している。把持領域25は、手術医が把持することで第2の接触子12を第2のスライド方向S2に沿って動かしたり回転軸心X回りに動かしたりできるように設けられている。把持領域25は、把持し易いようにローレット加工が施されている(すなわち、複数の凸部及び凹部が設けられている)。
【0099】
第1の端部21は、テーパ状であり、、丸みを帯びた又は尖った接触領域26で終端している。接触領域26は、脛骨プラトー100における(点状の)狭小領域と接触するように設けられている。
【0100】
第1の端部21は、第2の接触子12の第2のスライド方向S2と一致しない第2の接触方向D2に沿って延びている。
【0101】
具体的に述べると、
図6に詳しく示すように、第2の接触方向D2は、第2のスライド方向S2に対して内側方向または外側方向に傾いており、第2のスライド方向S2に対して矢状面SP側に又は矢状面SPとは反対側に逸れている。換言すると、第2のスライド平面P2への第2の接触方向D2の射影と第2のスライド方向S2とが形成する角度B1は、0°でない。このような角度B1は、約5°~約90°、好ましくは約10°~約60°、より好ましくは約30°であり得る。いずれにせよ、内側方向または外側方向への前記傾きや角度B1は、脛骨プラトー100の主要骨格および当該脛骨プラトー上の手術医が前記ガイド治具のアライメントの基準として選択することを決めた点の位置に応じて選ぶことができる。
【0102】
図3に詳しく示すように、第2の接触方向D2は、さらに、第2のスライド方向S2に対して遠位側方向にも傾いており、第2のスライド方向S2に対して水平面HPから離れるように逸れている。換言すると、第2のスライド方向S2を含んで第2のスライド平面P2と直交する平面への第2の接触方向D2の射影と第2のスライド方向S2とが形成する角度B2は、0°でない。このような角度B2は、約5°~約90°、好ましくは約10°~約60°、より好ましくは約45°であり得る。いずれにせよ、このような角度B2は、脛骨プラトー100の主要骨格および当該脛骨プラトー上の手術医が前記ガイド治具のアライメントの基準として選択することを決めた点の位置に応じて選ぶことができる。
【0103】
例えば、患者の内反/外反角度とのガイド装置10の補助され、かつ制御されたアライメントの場合には、第1の接触子11の第1の端部14の第1の接触方向D1を内側方向に傾かせるとともに第2の接触子12の第1の端部21の第2の接触方向D2を外側方向に傾かせる(あるいは、第1の接触子11の第1の端部14の第1の接触方向D1を外側方向に傾かせるとともに第2の接触子12の第1の端部21の第2の接触方向D2を内側方向に傾かせる)ことによりこれら2つの第1の端部14,21同士を実質的に収束させるという選択が可能である。
【0104】
患者の傾斜角度とのガイド装置10の補助され、かつ制御されたアライメントの場合には、第1の接触子11の第1の端部14の第1の接触方向D1と第2の接触子12の第1の端部21の第2の接触方向D2を同じ方向に傾かせることが可能である。
【0105】
ガイド装置10は、さらに、第1の接触子11および第2の接触子12用の支持体27を備える。
【0106】
支持体27は、略円筒形状であり、第1の接触子11および第2の接触子12が共通の回転軸心X回りに回転するのを可能にする。
【0107】
回転軸心Xは、近位側-遠位側方向と略一致している。
【0108】
第1の接触子11は、スロット17で支持体27の中央部位28へと差し込まれる。中央部位28の寸法は、例えば、当該スロットを支持体27に対して第1のスライド方向S1に沿ってスライドさせることが可能な寸法等とされる。支持体27の中央部位28には、第1の接触子11の中央部位16が載置される肩部29が設けられている(
図3)。肩部29は、支持体27への第1の接触子11の差込み度合いの末端停止部を形成する。
【0109】
第2の接触子12も、第1の接触子11と重ね置きになるように、スロット24で支持体27の中央部位28へと差し込まれる。第1の接触子11と第2の接触子12との間には摩擦防止ワッシャ30が配置されて、当該摩擦防止ワッシャ30に第2の接触子12が載置される(
図3)。摩擦防止ワッシャ30は、支持体27への第2の接触子11の差込み度合いの末端停止部を形成する。
【0110】
支持体28は、自由位置状態と固定状態との間で切り替えることが可能な締結部材31を具備する。締結部材31が自由位置状態であるとき、回転軸心X回りの第1および第2の接触子11,12の自由回転、ならびに第1のスライド方向S1、第2のスライド方向S2のそれぞれに沿った第1および第2の接触子11,12の自由並進が可能である。締結部材31が固定状態であるとき、これら2つの接触子が支持体27に対して定位置に摩擦で保持される。締結部材31の一例は、回転軸心Xと平行な方向に第2の接触子12を第1の接触子11へ押し付けてこれら2つの接触子を到達位置にて摩擦でロックする、支持体27と同軸の押圧エレメント(例えば、ばね等)であり得る。しかしながら、当業者であれば、この目的に対して別の種類の締結部材31が用いられてもよいことが分かるであろう。
【0111】
ガイド装置10は、支持体27を切離し可能に受け入れて保持する拘束部材33が設けられたガイド治具32を備える。
【0112】
拘束部材33は、支持体27の端部35を受け入れて保持するように構成された複数の座部34を備える。座部34は、ガイド治具32の上面に設けられている。座部34同士は、患者の脛骨プラトーの骨格および当該脛骨プラトー上の手術医が接触対象として選択した点に応じて当該手術医が最も適した座部を選ぶことができるように、つまり、接触子11,12とガイド治具32との最も適切な相対位置を選ぶことができるように、互いに距離を空けて設けられている。
【0113】
支持体27の端部35を任意の座部34に嵌挿させることにより、支持体27をガイド治具32と一体化させることができる。換言すると、支持体27を拘束部材33に挿設させた状態では、支持体27をガイド治具32に対して並進させることが出来ない。好ましくは、支持体27を拘束部材33に挿設させた状態で、支持体27をガイド治具32に対して回転軸心X回りに回転させることが可能である。これにより、ガイド治具32への前記支持体の組付作業が容易になる。
【0114】
各々の座部34は、支持体27の端部35との当接部36を有する。当接部36は、回転軸心Xと平行な方向に支持体27を座部34へと差し込む際の末端停止部を形成する。さらに、当接部36によって、ガイド治具32に対する2つの接触子11,12の高さが決まる。なお、前記支持体を拘束部材33に挿設させると、このような高さは一定のままで変わらない。
【0115】
支持体27の端部35内には、ペグ(図示せず)が設けられ得る。当該ペグを各座部34に実現されたアーチ状に延びるハウジング(図示せず)へスナップ留めすることにより、ガイド治具32に対する支持体27の、回転軸心Xに沿った並進が阻止される。しかしながら、当業者であれば、この目的に対して別の種類の拘束機構が用いられてもよいことが分かるであろう。
【0116】
いずれにせよ、支持体27は、ガイド治具32の座部34から当該支持体を取り外すための解除機構37を具備する。添付の図面に示す実施形態では、解除機構37が、前記拘束機構に作用するボタン38を備える。一例として、ボタン38は、前記支持体の端部35の前記ペグに作用するばね(図示せず)を作動させることで、当該ペグを座部34の前記ハウジングから脱離させ得る。
【0117】
ガイド治具32は、さらに、脛骨骨切り用の手術用ソーを受け入れて案内するように構成されたスロット39を有する。スロット39は、前記手術用ソーをガイド治具32に通すことができるように、切断平面CPに沿ってガイド治具32を貫通している。支持体27をガイド治具32に嵌め込んだ状態では、切断平面CPが回転軸心Xと直交する。
【0118】
ガイド治具32には、回転軸心Xと略直交する方向に沿ってガイド治具32を貫通する複数の貫通孔40(
図4及び
図8に詳しく図示)が設けられている。換言すると、貫通孔40は、切断平面CPと略平行に延びている。後で詳しく説明するように、貫通孔40は、ガイド治具32を患者の脛骨に拘束するための固定ネイル101(
図8に図示)を受け入れるように構成されている。
【0119】
添付の図面に示す実施形態では、ガイド装置10が、ガイド治具32を患者の脛骨に対して位置決めするための髄外アライメントガイド41を備える。
【0120】
アライメントガイド41は、遠位側位置に位置して患者の足首に拘束されるように構成された固定部42、およびガイド治具32に拘束されるように構成された本体部43を有する(
図7)。近位側-遠位側方向におけるアライメントガイド41の延びは、患者の脛骨の長さに略等しい。
【0121】
固定部42は、当該固定部42でアライメントガイド41へと着脱可能に拘束される、2つの端部44a,44bを有した可撓性エレメント44を具備する。可撓性エレメント44は、患者の足首周りにリング状に閉じて留められるように構成されている。
【0122】
本体部43は、近位側位置に位置した連結部材45を具備する。連結部材45は、ガイド治具32と協働し、当該ガイド治具32をアライメントガイド41に拘束して当該アライメントガイド41と当該ガイド治具32とのあらゆる相対運動を阻止するように構成されている。連結部材45は、アライメントガイド41のうち、固定部42とは反対側に位置している。
【0123】
図5に詳しく示すように、連結部材45は、アライメントガイド41と一体化したスライド部46を備える。スライド部46は、ガイド治具32に設けられた溝部47に挿入可能である。スライド部46を溝部47に挿入することで、内側-外側方向および近位側-遠位側方向におけるガイド治具32とアライメントガイド41との相対運動が阻止されるようになる。連結部材45には、さらに、ロック-ロック解除装置48が設けられている。ロック-ロック解除装置48は、ガイド治具32がアライメントガイド41に対して前側-後側方向に動くのを阻止することによって当該ガイド治具32が当該アライメントガイド41から外れてしまうのを防ぐ固定状態と、ガイド治具32がアライメントガイド41に対して前側-後側方向にスライドするのを可能にすることで当該ガイド治具32を当該アライメントガイド41から取り外せるようにするロック解除状態との間で切り替えることが可能である。
【0124】
図5の実施形態において、ロック-ロック解除装置48は、手術医が操作することのできる可動スライダ49を備える。可動スライダ49は、自身が取る位置に応じて、スライド部46を機械的干渉で溝部47内に固定したり、スライド部46を溝部47内でスライドさせることができるようにしたりする(溝部47からのスライド部46の取外しを可能にする)。
【0125】
アライメントガイド41は、さらに、患者の脛骨に対するガイド治具32の相対位置を変化させることが可能な調節部材50(
図7に図示)を具備する。
【0126】
具体的に述べると、調節部材50は、ガイド治具32が近位側-遠位側方向に並進したり、当該ガイド治具が前側-後側方向回りに回動したり、ガイド治具32が内側-外側方向回りに回動したりするのを可能にする。
【0127】
この目的のために、調節部材50は、アライメントガイド41の固定部42-本体部43間に作用してこれら2つの部分同士の相対位置を変化させる。
【0128】
具体的に述べると、調節部材50は、本体部43を固定部42に対して内側-外側方向に並進させることが可能な第1の並進機構51を含む。第1の並進機構51は、例えば、固定部42及び本体部43の一方に設けられたガイドレール(図示せず)と固定部42及び本体部43の他方に設けられた前記ガイドレール用の摺動溝(図示せず)とを具備し得て、前記摺動溝内で前記ガイドレールを摺動させることにより、内側-外側方向への本体部43の、固定部42に対する並進が決まる。第1の並進機構51は、さらに、前記ガイドレールを前記摺動溝に対してロックするロックピン(図示せず)を具備し得る。
【0129】
例えばガイド治具32を手で保持したり切断治具32を脛骨に固定ネイルで固定したりして当該ガイド治具32が内側-外側方向に並進しないようにした状態で、本体部43を固定部42に対して内側-外側方向に並進させると、ガイド治具32が前側-後側方向回りに回動する。実際、アライメントガイド41の固定部42は(患者の足首に拘束されていて)並進できないものの(可撓性エレメント44による拘束の範囲内で)回動が可能なので、(ガイド治具32を並進できないようにした状態で)本体部43と固定部42との間で相対的な並進が発生すると、アライメントガイド41が(したがって、ガイド治具32も)回動するという点に留意されたい。
【0130】
調節部材50は、さらに、本体部43を固定部42に対して前側-後側方向に並進させることが可能な第2の並進機構52を含む。具体的に述べると、第2の並進機構52は、本体部43が(固定部42に対して前側-後側方向に動くことのできない)第1の並進機構51に対して前側-後側方向に並進するのを可能にする。第2の並進機構52は、第1の並進機構51及びアライメントガイド41の前記本体部の本体部43の一方に設けられたガイドレール(図示せず)と第1の並進機構51及び本体部43の他方に設けられた前記ガイドレール用の摺動溝(図示せず)とを具備し得て、前記摺動溝内で前記ガイドレールを摺動させることにより、前側-後側方向への本体部43の、第1の並進機構51に対する並進(したがって、固定部42に対する並進)が決まる。第2の並進機構52は、さらに、前記ガイドレールを前記摺動溝に対してロックするロックピン(図示せず)を具備し得る。
【0131】
例えばガイド治具32を手で保持したり切断治具32を脛骨に固定ネイルで固定したりして当該ガイド治具32が前側-後側方向に並進しないようにした状態で、本体部43を固定部42に対して前側-後側方向に並進させると、ガイド治具32が内側-外側方向回りに回動する。実際、この場合も、アライメントガイド41の固定部42は(患者の足首に拘束されていて)並進できないものの(可撓性エレメント44による拘束の範囲内で)回動が可能なので、(ガイド治具32を並進できないようにした状態で)本体部43と固定部42との間で相対的な並進が発生すると、アライメントガイド41が(したがって、ガイド治具32も)回動するという点に留意されたい。
【0132】
調節部材50は、さらに、本体部43を固定部42に対して近位側-遠位側方向に並進させることが可能な第3の並進機構53を含む。具体的に述べると、第3の並進機構53は、本体部43が(固定部42に対して近位側-遠位側方向に動くことのできない)第1および第2の並進機構51,52に対して近位側-遠位側方向に並進するのを可能にする。第3の並進機構53は、第2の並進機構52及び本体部43の一方に設けられたガイドレール(図示せず)と第2の並進機構52及び本体部43の他方に設けられた前記ガイドレール用の摺動溝(図示せず)とを具備し得て、前記摺動溝内で前記ガイドレールを摺動させることにより、近位側-遠位側方向への本体部43の、第2の並進機構52に対する並進(したがって、固定部42に対する並進)が決まる。第3の並進機構53は、さらに、前記ガイドレールを前記摺動溝に対してロックするロックピン(図示せず)を具備し得る。第3の並進機構53は、さらに、アライメントガイド41の固定部42に対する本体部43の、近位側-遠位側方向への並進を高精度に調節するための微調節装置54(
図7に図示)を具備し得る。
【0133】
本体部43を近位側-遠位側方向に並進させると、ガイド治具32と同じ方向及び向きの並進が生じる。
【0134】
ガイド装置10は、患者の元来の関節ラインとのガイド治具32の(すなわち、前記手術用刃体の挿通用のスロット39の)運動学的アライメントが要求される脛骨骨切り手術に利用することができる。
【0135】
具体的に述べると、患者の内反/外反角度とのガイド治具32の補助され、かつ制御された運動学的アライメントを手術医が実施したい場合、脛骨骨切り方法は以下のようになり得る。
【0136】
第1および第2の接触子11,12として、ガイド治具32に取り付けたときに脛骨プラトーの選択された各点に到達することが可能な、第1の接触方向D1を設けた第1の端部14を有する第1の接触子11および第2の接触方向D2を設けた第1の端部21を有する第2の接触子12が選択される。
【0137】
2つの接触子11,12の第1の端部14,21の長さは、(当該接触子の使用時に)同じ高さに到達するように、あるいは、脛骨プラトーの軟骨及び/又は骨の摩耗を補償するように選択される。
【0138】
次に、第1の接触子11が第2の接触子12の下方に位置するように、これら2つの接触子が支持体27に取り付けられる。支持体27は、ガイド治具32に組み付けられる。
【0139】
アライメントガイド41は、可撓性エレメント44で患者の足首に拘束させられる。
【0140】
前記支持体と接触子11,12とが付いたガイド治具32が、患者の脛骨の近位側の前側部分に近付けられる。
【0141】
脛骨のこのような部分は、骨切り術が可能となるように従来の手術方法で予め露出させられる。
【0142】
ガイド治具32がアライメントガイド41に連結されて、手術医は、正面と平行な平面上で患者の元来の関節ラインを定めるような内側顆の領域または点と外側顆の領域または点とに、第1および第2の接触子11,12を配置する。
【0143】
ガイド治具32(具体的には、スロット39)が患者の脛骨の傾斜角度と光学的にアライメントするよう、調節部材50を作動させてアライメントガイド41が調節される。
【0144】
この工程での上記アライメントは、補助なしの制御されていないアライメントであり、すなわち、内側顆及び外側顆の一方における2つの異なる点を前側-後側方向に繋ぐ、傾斜角度を表していると手術医が考える仮想線と、スロット39の向きとを目視で比較してアライメントを探し見つけ出すことによって行われる。
【0145】
傾斜角度とのガイド治具32のアライメントは、当該ガイド治具32が前側-後側方向に並進できないようにした状態で、第2の並進機構52を作動させることによって実施される。
【0146】
この所望のアライメントを達成した後、手術医は調節部材50を作動させて、元来の内反/外反角度とのガイド治具32の(すなわち、スロット39の)補助され、かつ制御されたアライメントを得ると共に当該ガイド治具を所定の切断高位に位置決めする。
【0147】
具体的に述べると、
図4に概略的に示すように、手術医は、第1および第2の接触子11,12の接触領域19,26が内側顆における予め選択された領域または点と外側顆における予め選択された領域または点とに接触するまで、第1の調節機構51および第3の調節機構53を(任意で、微調節装置54を)作動させる。
【0148】
この状態で、
図8に示すように、ガイド治具32の一部又は全ての貫通孔40に固定ネイル101を挿入した後、支持体27及び当該支持体27と一緒に第1および第2の接触子11,12をガイド治具32から取り外す。固定ネイル101は、ガイド治具32が脛骨と完全に一体化して脛骨に対して動くことが出来なくなるよう患者の脛骨にねじ込まれる。
【0149】
アライメントガイド41を取り外すことが可能となると共に、ガイド治具32のスロット39に手術用ソーを係合させて脛骨骨切り術を実施することが可能となる。骨切り時には、スロット39が、前記手術用ソーを脛骨に対して傾かせるガイドとして機能する。
【0150】
患者の傾斜角度とのガイド治具32の補助され、かつ制御された運動学的アライメントを手術医が実施したい場合、脛骨骨切り方法は以下のようになり得る。
【0151】
第1および第2の接触子11,12として、ガイド治具32に取り付けたときに脛骨プラトーの選択された各点に到達することが可能な、第1の接触方向D1を設けた第1の端部14を有する第1の接触子11および第2の接触方向D2を設けた第1の端部21を有する第2の接触子12が選択される。
【0152】
2つの接触子11,12の第1の端部14,21の長さは、(当該接触子の使用時に)同じ高さに到達するように、あるいは、脛骨プラトーの軟骨及び/又は骨の摩耗を補償するように選択される。
【0153】
次に、第1の接触子11が第2の接触子12の下方に位置するように、これら2つの接触子11,12が支持体27に取り付けられる。支持体27は、ガイド治具32に組み付けられる。
【0154】
アライメントガイド41は、可撓性エレメント44で患者の足首に拘束させられる。
【0155】
支持体27と接触子11,12とが付いたガイド治具32が、患者の脛骨の近位側の前側部分に近付けられる。
【0156】
脛骨のこのような部分は、骨切り術が可能となるように従来の手術方法で予め露出させられる。
【0157】
ガイド治具32がアライメントガイド41に連結されて、手術医は、同じ顆(内側顆または外側顆)上の前側-後側方向に離間する予め選択された点と点に、第1および第2の接触子11,12を配置する。
【0158】
ガイド治具32(具体的には、スロット39)が患者の脛骨の内反/外反角度と光学的にアライメントするよう、調節部材50を作動させてアライメントガイド41が調節される。
【0159】
この工程での上記アライメントは、補助なしの制御されていないアライメントであり、すなわち、内側顆における点と外側顆における点との2つの点を繋ぐ、元来の内反/外反角度を表していると手術医が考える仮想線と、スロット39の向きとを目視で比較してアライメントを探し見つけ出すことによって行われる。
【0160】
内反/外反角度とのガイド治具32のアライメントは、当該ガイド治具32が内側-外側方向に並進できないようにした状態で、第1の並進機構51を作動させることによって実施される。
【0161】
この所望のアライメントを達成した後、手術医は調節部材50を作動させて、傾斜角度とのガイド治具32の(すなわち、スロット39の)補助され、かつ制御されたアライメントを得ると共に当該ガイド治具を所定の切断高位に位置決めする。
【0162】
具体的に述べると、
図5に概略的に示すように、手術医は、第1および第2の接触子11,12の接触領域19,26が内側顆及び外側顆の一方における予め選択された点と点とに接触するまで、第2の調節機構52および第3の調節機構53を(任意で、微調節装置54を)作動させる。
【0163】
この状態で、
図8に示すように、ガイド治具32の一部又は全ての貫通孔40に固定ネイル101を挿入した後、支持体27及び当該支持体27と一緒に第1および第2の接触子11,12をガイド治具32から取り外す。固定ネイル101は、ガイド治具32が脛骨と完全に一体化して脛骨に対して動くことが出来なくなるよう患者の脛骨にねじ込まれる。
【0164】
アライメントガイド41を取り外すことが可能となると共に、ガイド治具32のスロット39に手術用ソーを係合させて脛骨骨切り術を実施することが可能となる。骨切り時には、スロット39が、前記手術用ソーを脛骨に対して傾かせるガイドとして機能する。
【0165】
当然ながら、当業者であれば、特定の要件や偶発的な要件を満たす目的で、例えば手術医ではなく権限のあるユーザが前記ガイド装置を操作する等といった種々の変更や変形を前述の本発明に施すことが可能である。いずれも、添付の特許請求の範囲に定められた本発明の保護範囲内に包含されている。
なお、本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
[態様1]
手術用ソーを受け入れて案内するように設けられたスロット(39)を有するガイド治具(32)と、
脛骨プラトー(100)における点または領域と接触するように設けられた第1の接触子(11)と、
脛骨プラトー(100)における点または領域と接触するように設けられた第2の接触子(12)と、
を備え、前記第1の接触子(11)および前記第2の接触子(12)が、互いにおよび前記ガイド治具(32)に対して共通の回転軸心(X)回りに回転することが可能であり、前記第1の接触子(11)は、第1のスライド平面(P1)内に含まれる第1のスライド方向(S1)に沿って前記第2の接触子(12)および前記ガイド治具(32)に対して並進することが可能であり、前記第2の接触子(12)は、前記第1のスライド平面(P1)と平行な第2のスライド平面(P2)内に含まれる第2のスライド方向(S2)に沿って前記第1の接触子(11)および前記ガイド治具(32)に対して並進することが可能である、脛骨用骨切りガイド装置(10)。
[態様2]
態様1に記載のガイド装置(10)において、前記回転軸心(X)、前記第1のスライド平面(P1)および前記第2のスライド平面(P2)が、前記ガイド治具(32)の前記スロット(39)に対して予め設定された傾きをそれぞれ有する、ガイド装置(10)。
[態様3]
態様1または2に記載のガイド装置(10)において、前記第1のスライド平面(P1)および前記第2のスライド平面(P2)が、前記回転軸心(X)と直交する、ガイド措置(10)。
[態様4]
態様1から3のいずれかに記載のガイド装置(10)において、前記第1の接触子(11)が、前記第1のスライド平面(P1)に対して傾いた第1の接触方向(D1)に沿って延びて脛骨プラトー(100)における点または領域と接触するように構成された第1の端部(14)を有しており、前記第1のスライド平面(P1)への前記第1の接触方向(D1)の射影は、前記第1のスライド方向(S1)に対して傾いている、ガイド装置(10)。
[態様5]
態様1から4のいずれかに記載のガイド装置(10)において、前記第2の接触子(12)が、前記第2のスライド平面(P2)に対して傾いた第2の接触方向(D2)に沿って延びて脛骨プラトー(100)における点または領域と接触するように構成された第1の端部(21)を有しており、前記第2のスライド平面(P2)への前記第2の接触方向(D2)の射影は、前記第2のスライド方向(S2)に対して傾いている、ガイド装置(10)。
[態様6]
態様4および5に記載のガイド装置(10)において、前記第1の接触子(11)と前記第2の接触子(12)は、予め設定された距離で前記回転軸心(X)に沿って離間し、前記回転軸心(X)と平行な方向における前記第1の接触子(11)の前記第1の端部(14)の延びは、前記回転軸心(X)と平行な方向における前記第2の接触子(12)の前記第1の端部(21)の延びから予め設定された量を差し引いたものに等しい、ガイド装置(10)。
[態様7]
態様1から6のいずれかに記載のガイド装置(10)において、さらに、
前記ガイド治具(32)に挿設することが可能な、前記第1の接触子(11)および前記第2の接触子(12)用の支持体(27)、
を備え、前記支持体(27)は締結部材(31)を具備し、当該締結部材(31)は、前記第1および前記第2の接触子(11,12)を当該支持体(27)に対して回転および並進させることが可能な自由位置状態と、前記第1および前記第2の接触子(11,12)を当該支持体(27)に対して定位置に保持する固定状態との間で切り替えることが可能である、ガイド装置(10)。
[態様8]
態様7に記載のガイド装置(10)において、前記ガイド治具(32)が、前記支持体(27)を相異なる位置に受け入れて保持するように互いに離設された複数の拘束部材(33)を具備する、ガイド装置(10)。
[態様9]
態様1から8のいずれかに記載のガイド装置(10)において、さらに、
髄外または髄内アライメントガイド(41)、
を備え、前記ガイド治具(32)は、前記アライメントガイド(41)と接続されることによって当該アライメントガイド(41)で動かすことが可能になる、ガイド装置(10)。
[態様10]
態様9に記載のガイド装置(10)において、前記アライメントガイド(41)が、前記回転軸心(X)と平行な方向に沿った前記ガイド治具(32)の並進、および互いに直交し前記回転軸心(X)と直交する2つの軸回りの当該ガイド治具(32)の回動を引き起こす調節部材(50)を具備する、ガイド装置(10)。