(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】円筒状加熱式たばこ製品
(51)【国際特許分類】
A24C 5/34 20060101AFI20220506BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20220506BHJP
【FI】
A24C5/34 A
A24F40/20
(21)【出願番号】P 2021540760
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(86)【国際出願番号】 JP2020030866
(87)【国際公開番号】W WO2021033637
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2019150242
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】荒栄 和正
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/215781(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/050717(WO,A1)
【文献】特表2002-522786(JP,A)
【文献】特開平09-325123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24C 5/34
A24D 1/20
A24D 3/17
A24F 40/20
A24F 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径5.4mmから7.8mmの複数のセクションからなる円筒状加熱式たばこ製品であって、
長さ4mm以上8mm以下の少なくとも1つのフィルターセクションと、
長さ8mm以上18mm以下の少なくとも1つのたばこセクションと、
を含み、
前記たばこセクションは、再構成たばこ又は再構成たばこ顆粒を含み、葉タバコの植物組織が保存されたたばこ原料を含まず、
周波数8GHzのマイクロ波を照射した際に、前記たばこセクションを透過したマイクロ波は-0.25(rad)~0.02(rad)の位相変化量を示す、
円筒状加熱式たばこ製品。
【請求項2】
直径5.4mmから7.8mmの複数のセクションからなる円筒状加熱式たばこ製品であって、
長さ4mm以上8mm以下の少なくとも1つのフィルターセクションと、
長さ8mm以上18mm以下の少なくとも1つのたばこセクションと、
を含み、
前記たばこセクションは、再構成たばこ又は再構成たばこ顆粒を含み、葉タバコの植物組織が保存されたたばこ原料を含まず、
前記たばこセクションは、周波数8GHzのマイクロ波が照射されると、-15.84(deg)以上、-5.88(deg)以下の位相変化をマイクロ波に与える、
円筒状加熱式たばこ製品。
【請求項3】
直径5.4mmから7.8mmの複数のセクションからなる円筒状加熱式たばこ製品であって、
長さ4mm以上8mm以下の少なくとも1つのフィルターセクションと、
長さ8mm以上18mm以下の少なくとも1つのたばこセクションと、
を含み、
前記たばこセクションは、再構成たばこ又は再構成たばこ顆粒を含み、葉タバコの植物組織が保存されたたばこ原料を含まず、
前記たばこセクションは、周波数8GHzのマイクロ波が照射されると、-15.84(deg)以上、-5.88(deg)未満の位相変化をマイクロ波に与える、
円筒状加熱式たばこ製品。
【請求項4】
直径5.4mmから7.8mmの複数のセクションからなる円筒状加熱式たばこ製品であって、
長さ4mm以上8mm以下の少なくとも1つのフィルターセクションと、
長さ8mm以上18mm以下の少なくとも1つのたばこセクションと、
を含み、
前記たばこセクションは、再構成たばこ又は再構成たばこ顆粒を含み、葉タバコの植物組織が保存されたたばこ原料を含まず、
前記たばこセクションは、周波数8GHzのマイクロ波が照射されると、-15.84(deg)以上、-7.32(deg)以下の位相変化をマイクロ波に与える、
円筒状加熱式たばこ製品。
【請求項10】
前記たばこセクションは再生たばこを含まない、請求項1から5のいずれか1項に記載の円筒状加熱式たばこ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状加熱式たばこ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
細長い円筒容器内に(例えば顆粒状の)再構成たばこが充填されて構成された喫煙物品が現在市販されている。このような喫煙物品の製造において、再構成たばこ、特に再構成たばこ顆粒の充填量を厳格に管理することが求められている。
【0003】
従来、紙巻たばこの製造工程では、たばこロッドを挟んで一対の静電電極を対向配置し、この一対の静電電極間の静電容量から刻みたばこの充填量を計測する装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、被測定物にマイクロ波を照射し、被測定物を透過したマイクロ波の振幅と位相の比に基づいて当該被測定物の特性を評価する装置も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-346747号公報
【文献】特開2015-161597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱式たばこ製品に含まれる再構成たばこは、従来の紙巻きたばこのたばこ原料と異なり、種々の添加物を含む。種々の添加物は照射されたマイクロ波の振幅と位相を変化させて外乱する。従来の方法では外乱を排除できない。
【0006】
再構成たばこが充填されて構成された加熱式たばこ製品のたばこセクション・たばこロッドは、従来の紙巻たばこのたばこロッドより、たばこ原料の密度が大きく、たばこ原料の充填密度も大きい。そのため、このような加熱式たばこ製品には、従来の紙巻きたばこで公知のマイクロ波を照射する方式でのたばこ原料の密度測定方法が適用できない。特にマイクロ波の周波数帯が異なる。
【0007】
再構成たばこが充填されて構成された加熱式たばこ製品では、たばこ原料として再構成たばこを含むたばこセクションとたばこ原料を含まない材料セクション、フィルターセクションが連続する。加熱式たばこ製品の製造工程において、たばこ原料を含まない材料セクション、フィルターセクションは、照射されたマイクロ波の振幅と位相をたばこ原料と異なる値で変化させ外乱する。従来の方法では外乱を排除できない。
【0008】
再構成たばこが充填されて構成された加熱式たばこ製品において、たばこ原料としての再構成たばこ、再構成たばこ顆粒、再構成たばこシートの充填量は、消費者が1本の加熱式たばこ製品を嗜むことで得られる官能や喫味体験の水準や消費者が1本の加熱式たばこ製品を嗜むことが出来る回数と連動している可能性が高いと考えられるため、たばこ原料の量を1本毎に全数管理して規格内に保証することが求められる。従来の方法が適用できないこと、加熱式たばこ製品の非常に高速(1500本/分以上)の製造速度に対応し得る密度測定方法がなかったことから、再構成たばこが充填されて構成された加熱式たばこ製品のたばこ原料の量を適正量内に保証できなかった。
【0009】
したがって、再構成たばこが充填されて構成された加熱式たばこ製品において、たばこ原料の量が適正量内に品質管理された加熱式たばこ製品が求められている。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、適正量の再構成たばこ、特に再構成たばこ顆粒が充填された喫煙物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、直径5.4mmから7.8mmの複数のセクションからなる円筒状加熱式たばこ製品であって、長さ4mm以上8mm以下の少なくとも1つのフィルターセクションと、長さ8mm以上18mm以下の少なくとも1つのたばこセクションと、を含み、周波数8GHzのマイクロ波を照射した際に、前記たばこセクションを透過したマイクロ波は-0.25(rad)~0.02(rad)の位相変化量を示す、円筒状加熱式たばこ製品である。
【0012】
また、本発明の他の一態様は、直径5.4mmから7.8mmの複数のセクションからなる円筒状加熱式たばこ製品であって、長さ4mm以上8mm以下の少なくとも1つのフィルターセクションと、長さ8mm以上18mm以下の少なくとも1つのたばこセクションと、を含み、前記たばこセクションは、周波数8GHzのマイクロ波が照射されると、-15.84(deg)以上、-5.88(deg)以下の位相変化をマイクロ波に与える、円筒状加熱式たばこ製品である。
【0013】
また、本発明の他の一態様は、直径5.4mmから7.8mmの複数のセクションからなる円筒状加熱式たばこ製品であって、長さ4mm以上8mm以下の少なくとも1つのフィルターセクションと、長さ8mm以上18mm以下の少なくとも1つのたばこセクションと、を含み、前記たばこセクションは、周波数8GHzのマイクロ波が照射されると、-15.84(deg)以上、-5.88(deg)未満の位相変化をマイクロ波に与える、円筒状加熱式たばこ製品である。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、直径5.4mmから7.8mmの複数のセクションからなる円筒状加熱式たばこ製品であって、長さ4mm以上8mm以下の少なくとも1つのフィルターセクションと、長さ8mm以上18mm以下の少なくとも1つのたばこセクションと、を含み、前記たばこセクションは、周波数8GHzのマイクロ波が照射されると、-15.84(deg)以上、-7.32(deg)以下の位相変化をマイクロ波に与える、円筒状加熱式たばこ製品である。
【0015】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記フィルターセクションと前記たばこセクションは長手方向に交互に配置されている。
【0016】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記たばこセクションは再構成たばこ又は再構成たばこ顆粒を含む。
【0017】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記たばこセクションは刻みたばこを含まない。
【0018】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記たばこセクションは膨化たばこを含まない。
【0019】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記たばこセクションは再生たばこを含まない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、適正量の再構成たばこが充填された喫煙物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る円筒状加熱式たばこ製品の概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、喫煙物品のたばこセクションに充填されている再構成たばこの重量を測定するための測定装置の概略構成図である。
【
図3】マイクロ波を用いて喫煙物品を測定した結果の一例である。
【
図4】マイクロ波を用いて喫煙物品を測定した結果の一例である。
【
図5】マイクロ波を用いて喫煙物品を測定した結果の一例である。
【
図6】マイクロ波を用いて喫煙物品を測定する際の配置の一例である。
【
図7】再構成たばこ顆粒の充填量と位相変化量の相関をプロットしたグラフである。
【
図8A】試料B-1についての位相変化量とその期待値との正規確率プロットである。
【
図8B】試料B-2についての位相変化量とその期待値との正規確率プロットである。
【
図8C】試料B-3についての位相変化量とその期待値との正規確率プロットである。
【
図8D】試料B-4についての位相変化量とその期待値との正規確率プロットである。
【
図8E】試料B-5についての位相変化量とその期待値との正規確率プロットである。
【
図8F】試料B-6についての位相変化量とその期待値との正規確率プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る円筒状加熱式たばこ製品の概略構成図であり、その長手方向に沿った断面を示している。加熱式たばこ製品100は、直径が例えば5.4mmから7.8mmの円筒形状を有し、複数のフィルターセクション120と複数のたばこセクション140が交互に長手方向に並んで構成されている。フィルターセクション120とたばこセクション140の円筒側面は、フィルターセクション120とたばこセクション140がばらばらにならないように、外装紙160によって一体的に被覆されている。
【0024】
フィルターセクション120は、例えばアセテート繊維からなり、たばこセクション140から発生したエアロゾルを濾過する働きを有する。フィルターセクション120は、付加的に活性炭を含んでもよい。加熱式たばこ製品100の長手方向におけるフィルターセクション120の長さは、例えば4mm以上8mm以下とすることができる。
【0025】
たばこセクション140は、連続する2つのフィルターセクション120の間に設けられた空洞部分に、所定量の再構成たばこ145が充填されることによって構成されている。再構成たばこ145は、乾燥させた葉タバコを一旦粉末にし、多糖類や炭酸カルシウム等のバインダーと混錬したものを、再度シート状や顆粒状など所定の形に成形して得られるたばこ材料である。例えば、葉タバコの粉末とバインダーとの混錬物を押し出し成形することで、顆粒状の再構成たばこ145を得ることができる。加熱式たばこ製品100の長手方向におけるたばこセクション140の長さは、例えば8mm以上18mm以下とすることができる。
【0026】
ここで、葉タバコから再構成たばこを製造する方法について、より詳しく説明する。
【0027】
葉タバコは、栽培種としてのNicotiana tabacum種とNicotiana rustica種のタバコ植物、野生種としてのNicoatiana属のタバコ植物の葉・葉柄・茎・花からなる。Nicotiana tabacum種には大別して黄色種、バーレー種、オリエント種の栽培品種が知られる。
【0028】
葉タバコを乾燥させたものが乾燥葉たばこである。乾燥葉たばこは、たばこ製造業におけるたばこ原料である。乾燥葉たばこは、たばこ製造工程中で、ラミナ:葉肉・葉脈と、ステム:葉脈・葉柄・茎に分離される。
【0029】
葉肉、一部の茎・葉柄・葉脈は裁刻され刻みたばことなる。刻みたばこにおいては、葉タバコの植物組織又は維管束構造は保存されている。
【0030】
茎・葉柄・葉脈、一部の葉肉を圧縮減圧処理で膨らませたものが膨化たばこである。膨化たばこは、同様に裁刻されて刻みたばこに混和される。膨化たばこにおいて、葉タバコの植物組織又は維管束構造は拡張されて保存されている。
【0031】
たばこ製造工程において破損した乾燥葉たばこ・刻みたばこ又は膨化たばこの断片・粉塵は、溶解され、漉いて、再生たばこ又は再生たばこシートへ再生される。再生たばこは、同様に裁刻されて刻みたばこに混和される。再生たばこにおいて、葉タバコの植物組織又は維管束構造又は細胞壁構造は保存されている。
【0032】
葉タバコ・乾燥たばこ葉・刻みたばこ・膨化たばこ又は再生たばこを、粉砕・磨砕して混和すると、均質化たばこが得られる。
【0033】
均質化たばこに、添加物として以下に例示するような結合剤・ゲル化剤・架橋剤・香料・親水性香料・親油性香料・粘度調整剤・保湿剤または補強材を混錬し、液体・ゲル・ゾルまたは軟弱な固体であるスラリーとした後、乾燥処理・脱水処理・抄造処理・押出成形することで、再構成たばこが得られる。
【0034】
結合剤やゲル化剤は、例えば天然高分子・ゼラチン・コンドロイチン流酸塩、多糖類や多糖類塩:アルギン酸塩・カラギーナン・ジェランガム・グアーガム・アガロース・ソルビトール・転化糖・デンプン・デキストリン・でんぷん分解物・酸化デンプンを用いることができる。架橋剤は、例えば無機塩・カルシウム塩・炭酸カルシウム・カリウム塩・炭酸カリウム・マグネシウム塩、炭酸マグネシウム・ナトリウム塩・炭酸ナトリウム・クエン酸トリエチルを用いることができる。香料は、例えば植物精油・葉タバコ抽出液・葉タバコ磨砕液・メンソール、合成香料、天然香料、精油などでよく、また親油性、親水性を問わず用いることができる。親油性香料は、例えばバニリン、エチルバニリン、グアリナロール、チモル、メチルサリシレート、リナロール、オイゲノール、メントール、クローブ、アニス、シナモン、ベルガモット油、ゼラニウム、レモン油、スペアミント油、ショウガオールを用いることができる。親水性香料は、例えばグリセリン、プロピレングリコール、エチルアセテート、イソアミルアルコールを用いることが出来る。粘度調整剤は、例えば水・油脂・脂肪酸・親水性溶媒・アルコール・エタノール・グリセリン・プロピレングリコールを用いることができる。保湿剤は、例えば水・グリセリン・プロピレングリコールを用いることができる。補強材は、例えばたばこ繊維・たばこセルロース繊維・木質パルプ・セルロース繊維・非たばこセルロース繊維等)を用いることができる。
【0035】
均質化たばこと、結合剤やゲル化剤・架橋剤・香料・粘度調整剤を混錬した液体又はゲルの再構成たばこスラリーを、シート状に成型したものが再構成たばこシートである。再構成たばこスラリーを漉いたものが再構成たばこ抄造シート、平板上に展開した再構成たばこスラリーを乾燥・脱水したものが再構成たばこスラリーシート(再構成たばこキャストシート)である。
【0036】
均質化たばこと、結合剤やゲル化剤・架橋剤・香料・粘度調整剤を混錬したゲル又は軟弱な固体である再構成たばこスラリーを押出成形したもの、さらに乾燥したもの、さらに粉砕したもの又は液体・ゲル・ゾル・軟弱な固体である再構成たばこスラリーから造粒したものが、再構成たばこ顆粒である。
【0037】
均質化されたたばこ材料シートを製造するための多数の再構成プロセスが当業界で周知である。これらには、例えばUS-A-3、860、012号に記載されているタイプの製紙プロセス、例えばUS-A-5、724、998号に記載されているタイプのキャスティングまたは「キャストリーフ」プロセス、例えばUS-A-3、894、544号に記載されているタイプの軟塊再構成プロセス、および例えばGB-A-983、928号に記載されているタイプの押出プロセスが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
一般に、押出プロセスおよび軟塊再構成プロセスにより製造された均質化されたたばこ材料シートの密度は、キャスティングプロセスにより製造した均質化されたたばこ材料シートの密度よりも大きい。再構成たばこシート、再構成たばこ顆粒は、均質化するため破砕・磨砕される工程で葉タバコの植物組織、細胞壁構造が破壊され、さらに添加物が細胞壁構造内を充填することから単位容積当たりの重量(嵩密度)又は単位面積当たりの重量(坪量)が大きい。例えば、再構成たばこスラリーシートは、室温26℃、湿度60%の条件下で、約100g/m2~約300g/m2の坪量を持ちうる。また例えば、再構成たばこ顆粒は、室温26℃、湿度60%の条件下で、約40g/100ml~約60g/100mlの嵩比重を持ち得る。
【0039】
再構成たばこは、葉たばこの植物組織・維管束構造・細胞壁構造が磨砕により失われていること、混錬してセルロース繊維の走行方向が乱雑になっていることから、刻みたばこ・膨化たばこ・再生たばこと比して弾性が劣る。特に再構成たばこ顆粒は、弾性が殆ど認められない脆弱な顆粒である。
【0040】
以下、従来の紙巻きたばこの構造と本発明の実施形態に係る加熱式たばこ製品の構造を対比して説明する。
【0041】
従来の紙巻たばこにおいて、たばこロッドは、たばこ原料を巻紙で巻いて構成される。巻紙とたばこ原料は、共働で外力に抗し、たばこロッドの構造を維持する。巻紙は長軸方向への引張力に対する応力を担い、たばこ原料は長軸方向の圧縮力・長軸を横断する面と平行なせん断力への応力を担い、たばこロッドの構造を維持する。たばこ原料は砕片の混合物であるが個々の砕片が有する弾性が応力を担う。たばこロッドは一般的に40mm以上100mm以下の長さである。
【0042】
紙巻きたばこのたばこロッド部が含むたばこ原料は、刻みたばこ・膨化たばこ・再生たばこシートの混合物であり、一般的に、主原料は刻みたばこであり、副原料は膨化たばこや再生たばこシートである。
【0043】
紙巻きたばこにおいて、刻みたばこ・膨化たばこ・再生たばこシートは、葉タバコの植物組織、細胞壁構造が保存され、細胞壁構造内に添加物を含まないことから、その混合物であるたばこ原料の密度は小さい。刻みたばこ・膨化たばこ・再生たばこシートは、弾性が優れることから、たばこロッドの構造を維持するために必要な量は少ない。紙巻きたばこのたばこロッドにおけるたばこ原料の充填密度は一般的に約0.2g/cm3である。
【0044】
例えば、代表的な紙巻たばこのある製品におけるたばこ原料は、刻みたばこが主原料であり72.5重量%、膨化たばこが副原料であり18.1重量%を占め、再生たばこシートが9.2重量%を占め、たばこロッド部に含まれる刻みたばこ・膨化たばこ・再生たばこシートの混合物であるたばこ原料は0.216g/cm3の充填密度である。また例えば、代表的な紙巻たばこの別の製品におけるたばこ原料は、刻みたばこが主原料であり72.8重量%、膨化たばこが副原料であり22.4重量%、再生たばこシートが副原料であり4.8重量%を占め、たばこロッド部に含まれる刻みたばこ・膨化たばこ・再生たばこシートの混合物であるたばこ原料は0.191g/cm3の充填密度である。
【0045】
本発明の実施形態に係る加熱式たばこ製品において、たばこ原料を含む部位は、たばこセクション・たばこロッド・たばこカプセルの形態で良い。たばこ原料は再構成たばこ、再構成たばこシート・再構成たばこスラリーシート・再構成たばこ抄造シート・再構成たばこ顆粒でよい。たばこロッドは、再構成たばこシート・再構成たばこスラリーシート・再構成たばこ抄造シートを断片として巻紙で包んで良い。
【0046】
再構成たばこは、弾性が劣ることから、紙巻きたばこのように巻紙と共働して外部からの圧縮力・せん断力への応力を担う能力に劣り、加熱式たばこ製品の構造維持を担う能力が劣る。加熱式たばこ製品の再構成たばこが構造維持を担う能力に劣る欠点は、加熱式たばこ製品の設計で補う。
【0047】
例えば、たばこセクション構造では、2つのアセテート繊維セクション(フィルターセクション120)を適宜の間隔で配置し、その間を巻紙で繋いだ構造をとり、再構成たばこには構造維持を担わせない。好ましい間隔は18mm以内である。
【0048】
また例えば、たばこロッド構造では、従来の紙巻きたばこにおけるたばこ原料の密度(0.2g/cm3)を超える0.25g/cm3以上、好ましくは0.26g/cm3以上または0.27g/cm3以上、更に好ましくは0.3g/cm3以上の、従来の紙巻きたばこより高い充填密度で再構成たばこを充填する。また例えば、たばこカプセル構造では、外力に抗し得る硬質のプラスチック製カプセル内部に再構成たばこ顆粒を充填し、再構成たばこは抗力に関与しない。
【0049】
本発明の実施形態に係る加熱式たばこ製品において、たばこ原料を含む部位は、たばこロッド・たばこセクションで良い。たばこセクション・たばこロッドの構造維持のため、たばこ原料、再構成たばこ顆粒・再構成たばこシート、再構成たばこスラリーシート、再構成たばこ抄造シートを、紙巻きたばこより高密度で充填する必要がある。しかしながら、充填密度が高すぎる場合、加熱式たばこ製品中を流通する空気流が高くなる、すなわち通気抵抗が高くなり過ぎて吸引が困難となる。
【0050】
本発明の実施形態に係る加熱式たばこ製品において、たばこセクション140は、再構成たばこ・再構成たばこシート・再構成たばこ顆粒を含む。加熱式たばこ製品は、1つのたばこセクション140と、たばこセクション140との通気性を有する1又は2つのアセテート繊維セクション(フィルターセクション120)が、長軸方向に連続する棒状物品であって良い。たばこセクション140とアセテート繊維セクションは連接して良い。たばこセクション140とアセテート繊維セクションは、たばこを含まずアセテート繊維も含まないインターセクションと連接して良い。
【0051】
加熱式たばこ製品は、たばこセクション140とアセテート繊維セクション(フィルターセクション120)を繰り返し単位として、長軸方向に順に連接した第1種連続棒状物品、又は、たばこセクション140とインターセクションとアセテート繊維セクション(フィルターセクション120)を繰り返し単位として、長軸方向に順に連接した第2種連続棒状物品を得た後、第1種又は第2種連続棒状物品を、アセテート繊維セクションの凡そ中間の位置またはアセテート繊維セクションとたばこセクション140の連接面を切断することで得られる。
【0052】
第1種連続棒状物品は、次の方法1-1又は1-2で得られる。(方法1-1)略水平方向へ運動するU字状に成型された巻紙上に、定間隔を設けてアセテート繊維セクション、特に予め巻取紙で包まれた略円筒形のアセテート繊維セクションを載置し、次にアセテート繊維セクション間に再構成たばこ顆粒を充填する。再構成たばこ顆粒を充填した後、巻紙の両端を重ね合わせ、シール糊で巻紙の辺縁を接着して第1種連続棒状物品を得る。(方法1-2)略水平方向へ運動するU字状に成型された巻紙上に、アセテート繊維セクション、特に予め巻取紙で包まれた略円筒形のアセテート繊維セクションを載置し、再構成たばこシートセクション、特に予め巻取紙で包まれた略円筒形の再構成たばこセクション140を載置した後、巻紙の両端を重ね合わせ、シール糊で巻紙の辺縁を接着して第1種連続棒状物品を得る。
【0053】
第2種連続棒状物品は、次の方法2で得られる。(方法2)たばこ原料を巻紙で巻いて構成される。たばこ原料の主原料は再構成たばこである。加熱式たばこ製品のたばこロッド部又はたばこカプセル部は、見かけ密度の大きい原料で構成されている。特に、再構成たばこシートを含むたばこセクション140が含む再構成たばこシート量は、再構成たばこシートを定長に切断することで定量を含ませ得るが、再構成たばこ顆粒を含むたばこセクション140が含む再構成たばこ量は、定量が困難である。
【0054】
従来の紙巻きたばこ製造業において公知のマイクロ波を用いた密度測定装置は、密度の小さい刻みたばこ・膨化たばこ・再生たばこの混合物であるたばこ原料を測定対象にするものであり、紙巻たばこより密度の大きい再構成たばこが充填されて構成された加熱式たばこ製品のたばこセクション140の密度測定に用いることはできず、再構成たばこが含む葉タバコ由来の植物組織ではない添加物がマイクロ波を位相変化させることから、密度測定ができるマイクロ波の波長は異なるものである。
【0055】
<実施例1>加熱式たばこ製品の製造工程、および加熱式たばこ製品試料の試作
図1に示される加熱式たばこ製品100は、次のようにして製造される。上部に開口を有するようにU字形に湾曲させた外装紙160の内側に、複数のフィルターセクション120が所定の間隔で配置される。フィルターセクション120に挟まれた空の部分をキャビティ部と呼ぶ。外装紙160とその内側に配置された複数のフィルターセクション120は、搬送装置(例えば
図2に示される搬送部210)によって搬送される。搬送装置の上方には、振動コンベアが設置されている。振動コンベアにはバッファタンクから再構成たばこ顆粒が供給され、搬送装置上を移動するキャビティ部と同期した所定のタイミング、及びキャビティ部への充填量に応じた所定のレートで再構成たばこ顆粒が振動コンベアに設けられたたばこ供給穴から落下するように、搬送装置及び振動コンベアの制御が行われる。こうしてフィルターセクション120間のキャビティ部に再構成たばこ145が充填されることで、たばこセクション140が形成され、その後、外装紙160の上部開口が封じられることにより、
図1の加熱式たばこ製品100が完成する。
【0056】
このように多数のフィルターセクション120とたばこセクション140が連なった加熱式たばこ製品100は、後述する再構成たばこの充填量検査の後に、各フィルターセクション120の真ん中部分で長手方向に垂直に切断されることで、個々のカプセル102に分離される。1つのカプセル102が、1回の喫煙で使用される単位である。喫煙時には、このカプセル102のたばこセクション140を電気式ヒータ等で加熱することで、再構成たばこ145からたばこ成分を含んだエアロゾルが発生する。
【0057】
図2は、加熱式たばこ製品100のたばこセクション140に充填されている再構成たばこ145の重量を測定するための測定装置200の概略構成図である。測定装置200は、搬送部210、送信アンテナ220、受信アンテナ230、演算部(例えばプロセッサを備えるコンピュータ)240、及び記憶部(例えばコンピュータ可読記憶デバイス)250を備える。例えば、測定装置200は、上述のように加熱式たばこ製品100及びカプセル102を製造する製造装置の一部として、組み込むことが可能である。このような測定装置200は、例えば、八光オートメーション株式会社(福岡県所在)から、顆粒検査装置(型番HMW-GM100)として入手可能である。
【0058】
<実施例2>加熱式たばこ製品試料Aのマイクロ波位相変化量の測定、および検量線1の取得
図2に示されるように、フィルターセクション120とたばこセクション140が連なった加熱式たばこ製品100が、搬送部210によって搬送される。搬送部210上の加熱式たばこ製品100に対して、送信アンテナ220から、周波数が例えば8GHz以上24GHz以下のマイクロ波が連続的に照射され、加熱式たばこ製品100を透過したマイクロ波が、受信アンテナ230によって受信される。マイクロ波が透過した物質の誘電率に応じて、マイクロ波の位相に変化が生じる。加熱式たばこ製品100がない時に受信アンテナ230で受信されるマイクロ波の位相をφ1とし、加熱式たばこ製品100のたばこセクション140を透過して受信アンテナ230で受信されたマイクロ波の位相をφ2とする。演算部240は、受信されたマイクロ波の位相差Δφ=φ2-φ1に基づいて、加熱式たばこ製品100の各たばこセクション140に充填されている再構成たばこ145の重量を算出する。以下、マイクロ波の位相から再構成たばこの重量を特定する方法について説明する。
【0059】
図3は、位相差Δφ=φ2-φ1を、既知の様々な重量(100mgから400mg)の再構成たばこ145がたばこセクション140に充填されている加熱式たばこ製品100について測定した結果の一例である。測定には周波数8GHzのマイクロ波が用いられている。
図3の横軸はたばこセクション140に含まれる再構成たばこ145の重量を示し、縦軸は位相差Δφを示す。この測定例のように、位相差Δφと再構成たばこ145の重量は線形の関係にあることが分かる(より具体的に、再構成たばこ145の重量が0mgから400mgまで増加すると、位相差Δφは0.02(rad)から-0.25(rad)へ線形的に減少する)。したがって、事前に
図3のような測定結果を取得しておけば、被測定物である加熱式たばこ製品100について測定された位相差Δφの値から、たばこセクション140に含まれる再構成たばこ145の重量を求めることができる。
【0060】
具体的には、演算部240は、事前に取得した
図3のような測定結果から検量線(
図3の例ではy=-0.0007x+0.017)を特定し、得られた検量線の係数(
図3の例では-0.0007と0.017)を記憶部250に格納しておく。次いで、演算部240は、記憶部250から検量線の係数を読み出し、被測定物である加熱式たばこ製品100について測定された位相差Δφの値を検量線に当てはめることで、各たばこセクション140に充填されている再構成たばこ145の重量を算出する。
【0061】
たばこセクション140に充填されている再構成たばこ顆粒の量によっては、たばこセクション140内で再構成たばこ顆粒が動くことでその分布に偏りが生じ、マイクロ波の位相φ2が変動してしまうことが起こり得る。
図4及び
図5は、たばこセクション140内での再構成たばこ顆粒の偏りの影響を示す実験結果の一例である。この実験では、
図6に示されるように加熱式たばこ製品100を水平面Hから所定角度傾けた状態で、たばこセクション140を透過したマイクロ波の位相φ2を測定した。再構成たばこ145の充填量が少ない場合、加熱式たばこ製品100を水平面Hから傾けた状態では、たばこセクション140内の再構成たばこ顆粒によって作られる面は、
図6に示されるように加熱式たばこ製品100の長手方向に対して斜めになり、たばこセクション140内で再構成たばこ顆粒の分布が偏ると考えられる。
図4及び
図5において、横軸は加熱式たばこ製品100の水平面からの傾き角を示し、縦軸は測定されたマイクロ波の位相φ2を示す。
【0062】
図4の実験結果から、直径5.4mmの加熱式たばこ製品100については、再構成たばこ顆粒の充填量が200mg又は240mgの場合に、たばこセクション140を透過したマイクロ波の位相φ2は加熱式たばこ製品100の傾き角にあまり依存しないことが分かる。同様に、
図5の実験結果から、たばこセクション140の長さが8mmの加熱式たばこ製品100については、たばこセクション140を透過したマイクロ波の位相φ2は加熱式たばこ製品100の傾き角にあまり依存しないことが分かる。これは、これらの寸法の構成においてはたばこセクション140への再構成たばこ顆粒の充填率が高いため、たばこセクション140内で再構成たばこ顆粒の偏りが生じにくいためである。また、
図4の実験結果からは、加熱式たばこ製品100の傾き角がおよそ30°以下であれば、マイクロ波の位相φ2は傾き角によらずほぼ一定であることも分かる。したがって、たばこセクション140内での再構成たばこ顆粒の偏りが小さいという仮定の下では、位相差Δφの値から再構成たばこ145の充填重量を比較的良好な精度で算出することができる。
【0063】
<実施例3>加熱式たばこ製品試料Bの試作
再構成たばこ顆粒の量が0.0mg、50.0mg、100.0mg、150.0mg、200.0mg、250.0mg、300.0mgである7種類の加熱式たばこ製品(試料B1~B7)を製造することを目標に、以下の手順で加熱式たばこ製品の試料を試作した。試料B1~B7の再構成たばこ顆粒の充填密度は、0.0mg/cm3、87.3mg/cm3、174.6mg/cm3、262.0mg/cm3、349.3mg/cm3、436.6mg/cm3、523.9mg/cm3を目標とした。
【0064】
材料として、次のものが用意された。外装紙として、ボビンに巻き取られた坪量150g/m2で、厚さ220μm、サンドラミS52/#85、幅26.5mm、長さ1000mの巻紙(型番)が用意された(日本製紙パピリア製)。再構成たばこ顆粒として、バーレー種および黄色種およびオリエント種の乾燥葉タバコを粉砕した粉末、香料、添加物または保湿剤または粘度調整剤として水と炭酸カルシウムを混錬した再構成たばこスラリーを押出成形後に粉砕し、メッシュサイズ250~710に粒径分布が整えられた再構成たばこ顆粒が用意された。フィルターセクションとして、アセテート繊維をフィルター成形紙で巻き取った外周長24.5mm、直径7.8mm、長さ4mmのフィルターセクションが用意された(日本フィルター工業製)。糊として、酢酸ビニル糊およびホットメルト糊が用意された。
【0065】
図1に示される加熱式たばこ製品100は、以上の材料から次のとおり製造された。
【0066】
外装紙160は、搬送装置を含む製造機械に架装されボビンから連続的に繰り出され、図示しない糊塗布装置により、搬送方向と略平行な方向で連続的に、酢酸ビニル糊が0.8mm~1.0mmの幅で、ホットメルト糊が0.5mm幅で、外装紙160の上面に塗布された。搬送装置(例えば
図2に示される搬送部210)によって外装紙160はその長手方向へ搬送された。
【0067】
外装紙160が下に凸に湾曲させられた後、その幅方向の中央付近に、フィルターセクション120が、外装紙160の長手方向に所定の間隔(この場合は12mm)の間隔を設けて配置された。
【0068】
外装紙160とフィルターセクション120は、搬送部210により引き続き長手方向へ移動させられながら、外装紙160の端縁が上へ向くよう曲げられ、外装紙160と配置されたフィルターセクション120は、上方が開いたU字状の外装紙160の溝をフィルターセクション120が区画する形態となった(この区画は、工程終了時にキャビティ部となるので、便宜上キャビティ部と称する)。
【0069】
搬送部210の上方には、ベルトコンベアが設置された。ベルトコンベアにはバッファタンクから再構成たばこ顆粒が供給され、搬送装置上を移動するキャビティ部と同期した所定のタイミング、及びキャビティ部への充填量に応じた所定のレートで、再構成たばこ顆粒が振動コンベアに設けられたたばこ供給穴から落下するように、搬送装置及びベルトコンベアの制御が行われた。これにより、搬送部210上のキャビティ部に、再構成たばこ顆粒がたたばこ供給穴を通して上方から充填され、たばこセクション140が形成された。
【0070】
上へ向くよう曲げられた外装紙160の片側の端縁近傍に、図示しない糊塗布装置により、搬送方向と略平行な方向で連続的に、酢酸ビニル糊が0.8mm~1.0mmの幅で、ホットメルト糊が0.5mm幅で、塗布された。糊が塗布された外装紙160の片側の端縁は、外装紙160の他方の端縁近傍と重ね合わせられ、外装紙160は2つの端縁近傍で約2.0mmの幅で貼り合わされた。
【0071】
以上の工程を経て、円筒状に成形された連続棒状の加熱式たばこ製品の中間体を得た。連続棒状の加熱式たばこ製品の中間体は、たばこセクション140を6区画分含むように定長に切断されて、長さ120mm、直径7.8mm、円周長24.5mmの加熱式たばこ製品100を得た。
【0072】
搬送部210上の加熱式たばこ製品の中間体は、測定装置200により、マイクロ波の位相変化量を測定された。測定対象物に照射されたマイクロ波と受信されたマイクロ波では、マイクロ波が透過した加熱式たばこ製品100の各たばこセクション140の誘電率に応じて、マイクロ波の位相に変化が生ずるので、その位相変化量を測定された。経時的に得られる測定結果は、演算部240を介して、位相変化量データとして記憶部250に記憶された。加熱式たばこ製品100は、測定装置200に対向して設けられた送信アンテナ220と受信アンテナ230の2つのアンテナの間を通過する際に、送信アンテナ220から周波数8GHzのマイクロ波を照射され、受信アンテナ230で加熱式たばこ製品100のたばこセクション140を透過したマイクロ波が受信された。位相φ0のマイクロ波が加熱式たばこ製品100に照射されたとき、フィルターセクション120を透過したマイクロ波の位相はφ1に変化し、たばこセクション140を透過したマイクロ波の位相がφ2に変化した。φ1からφ2への変化は、加熱式たばこ製品100が、たばこセクション140とフィルターセクション120が交互に整列する構造から、周期的な変化であった。
【0073】
記憶部250には測定装置200の受信・送信アンテナから切断部までの経路長を登録しておく。経路長はたばこセクション140の全長の整数倍、この場合3倍とした。記憶部250には、予め加熱式たばこ製品100の全長、たばこセクション140の長さ、フィルターセクション120の長さ、および加熱式たばこ製品100の全長に占める各セクションの比率を登録しておく。
【0074】
測定装置200が取得した周期的で連続的な生データを演算部240で処理し、加熱式たばこ製品100の各たばこセクション140の中心位置を基準とした、たばこセクション140の長さである12mmの±5%の区間内、つまりフィルターセクション120とたばこセクション140が当接する位置から6.0mm±0.6mm前後の区間内で、位相変化量のピークを検出し,ピークの位相変化量値を抽出して、たばこセクションの位相変化量とした。さらに、位相変化量のピークの数を捉えて計数した。演算部240によるこれらの処理結果は、記憶部250へ記憶された。これにより、各たばこセクション140とその位相変化量を照合できるようにした。
【0075】
次の実施例4に十分な本数(少なくとも100本以上)の加熱式たばこ製品100の試料が製造される毎に、振動コンベアから落下する再構成たばこ顆粒の1分間当たり供給量(供給速度)は、記録された位相変化量データと前出の検量線から目標顆粒充填量を満たすと予測される供給速度へ振動コンベアの振動数を調整することで調速された。こうして、目標とする顆粒充填量を有する加熱式たばこ製品100の試料B-1、2、3、4、5、6、7が順に製造された。その他の工程条件は変更されなかった。再構成たばこ顆粒の充填量が300.0mgを目標とする試料B-7は、再構成たばこ顆粒が全て充填される前にキャビティ部がたばこ供給穴の直下を通過して適切に充填されなかった。そのため、試料B-7は次の実施例4から除外した。試料B-1~6の目標顆粒重量と、各試料の連続して製造された100本の加熱式たばこ製品100について測定された位相変化量の平均値を表1に示す。
【0076】
【0077】
<実施例4>加熱式たばこ製品試料B1~6の再構成たばこ顆粒の重量測定
上記の実施例3で得られた少なくとも100本の試料B-1~6から、無作為にそれぞれ10本の試料が選ばれ、1本ずつ上皿天秤(メトラートレド製ME4001T/00)で重量を測定された。試料の重量から、再構成たばこ顆粒以外の材料である外装紙・フィルターセクション・糊の重量が差し引かれ、試料1本に充填されていた再構成たばこ顆粒の実測重量が算出された。算出された再構成たばこ顆粒の重量をキャビティ部の個数6個で除して1個のキャビティ部が含む再構成たばこ顆粒の重量が算出された。試料B-1~6の目標顆粒重量と、1個のキャビティ部が含む再構成たばこ顆粒の平均重量、顆粒密度を表2に示す。
【0078】
【0079】
表2から明らかなように、8GHzのマイクロ波を照射して得られたたばこセクション140の位相変化量を指標にして目標顆粒重量で製造された加熱式たばこ製品100は、目標値顆粒重量と実測の顆粒重量の階差5%以内であった。また、顆粒密度、すなわちたばこ原料従来の紙巻たばこより高い密度でたばこ原料を充填することが可能であった。
【0080】
<実施例5>データ解析
上記の実施例3と4で得られた、試料B-1~6の位相変化量と再構成たばこ顆粒の重量の線形性を検証するために、再構成たばこ重量と位相変化量(Δ[rad])を線形近似して相関係数を算出した。
y=-0.0007x+0.0033、R2=0.9954
【0081】
X軸に実施例4で取得した試料B-1~6の再構成たばこ顆粒の充填量、Y軸に実施例3で取得した試料B-1~6の位相変化量をとってプロットしたグラフを
図7に示す。線形近似式と相関係数、
図7から明らかなように、8GHzのマイクロ波を照射して得られた位相変化量を指標にして、それぞれの目標顆粒重量で製造した加熱式たばこ製品100の試料は、たばこセクション140の位相変化量が0.00から-10.00(deg)の範囲で、位相変化量と顆粒重量が線形関係にあることが示された。したがって、事前に
図3のような測定結果を取得しておけば、被測定物である加熱式たばこ製品100について測定された位相差Δφの値から、たばこセクション140に含まれる再構成たばこ145の重量を求めることができることが裏付けられた。
【0082】
紙巻たばこの製造工程を熟知する発明者らは、大量生産された紙巻たばこは、例えば1000本~10000本単位の製造ロットでは、ロット全体としてはたばこ材料の充填量が規格内におさまるものの、個々の紙巻たばこ製品では稀に規格外へ逸脱することもあり、製造工程の後段の品質管理工程で抜取り検査により規格外ロットを排除して品質管理していることを知っていた。
【0083】
発明者らは、再構成たばこが充填されて構成された加熱式たばこ製品では、たばこ原料(再構成たばこ、再構成たばこ顆粒、再構成たばこシート)の充填量が、消費者が1本の加熱式たばこ製品を嗜むことで得られる官能や喫味体験の水準や、消費者が1本の加熱式たばこ製品を嗜むことが出来る回数と連動している可能性が高く、たばこ原料の量を1本毎に全数管理して規格内に保証する課題を認識していた。しかしながら、紙巻たばこの製造工程で周知のたばこ材料の測定方法が、加熱式たばこの製造工程に適用できないこと、加熱式たばこ製品の非常に高速(1500本/分以上)の製造速度に対応し得る密度測定方法がなかったことから、加熱式たばこ製品のたばこ原料の量を規格内に保証できなかった。
【0084】
そこで発明者らは、加熱式たばこ製品に充填されるたばこ原料(再構成たばこ・再構成たばこ顆粒・再構成たばこシート)の1本当たりの充填量の分布は、正規分布に従う可能性があると仮説を立て、実施例3で得られた試料B-1~6で、8GHzのマイクロ波照射により得られる1本毎の位相変化量が正規分布に従うことが確認されれば、加熱式たばこ製品の製造中に同時に1本毎に得られる位相変化量について、有限個の平均値と標準偏差と照らし合わせて、製造された加熱式たばこの再構成たばこ顆粒の充填量を、全数規格内に保証する品質管理ができると着想した。
【0085】
そこで、試料B-1~6について横軸に位相変化量、縦軸に期待値をとって正規確率プロットを描き、各試料の連続して製造された100本の加熱式たばこ製品試料の位相変化量が正規分布に従うことを検証した。結果を
図8A~8Fに示す。描かれた正規確率プロットでは、試料B-1~6の位相変化量の測定値と期待値は直線に整列した。また、試料B-1~6の基本統計量を算出したところ、次の表3のようになり、平均値、中央値、最頻値がほぼ同一であることが確認された。8GHzのマイクロ波照射により得られる加熱式たばこ製品1本毎の位相変化量は、正規分布に従うことが確認された。
【0086】
【0087】
従って、加熱式たばこ製品は、たばこセクションを透過した周波数8GHzのマイクロ波の位相変化量を測定し、経時的に得られる実測データの平均値μと標準偏差σを指標として品質管理ができる。加熱式たばこ製品は、たばこセクションを透過した周波数8GHzのマイクロ波の位相変化量の実測データにもとづき、μ±3σ、μ±2σ、μ±σの位相変化量を管理水準として、再構成たばこ顆粒の充填量を管理することが出来る。
【0088】
例えば、μ±3σ、μ±2σ、μ±σを管理水準とすれば、基本統計量表(表3)で最小値-6.08を示した1本のB-1試料や、最大値-5.67を示した1本のB-1試料は管理水準を逸脱していることから製造工程で排除され、基本統計量表で最小値-7.15を示した1本のB-2試料や、最大値-7.58を示した1本のB-2試料は管理水準を逸脱していることから製造工程で排除され、基本統計量表で最小値-9.51を示した1本のB-3試料や、最大値-9.99を示した1本のB-3試料は管理水準を逸脱していることから製造工程で排除され、基本統計量表で最小値-11.59を示した1本のB-4試料や、最大値-12.28を示した1本のB-4試料は管理水準を逸脱していることから製造工程で排除され、基本統計量表で最小値-13.68を示した1本のB-5試料や、最大値-14.31を示した1本のB-5試料は管理水準を逸脱していることから製造工程で排除され、基本統計量表で最小値-15.45を示した1本のB-6試料や、最大値-16.09を示した1本のB-6試料は管理水準を逸脱していることから製造工程で排除される。
【0089】
従って、品質管理で排除されない加熱式たばこ製品は、試料B-1~6で実測されたデータに基づくと具体的には、位相変化量が-5.88±0.18[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-7.32±0.27[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-9.73±0.27[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-12.03±0.33[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-13.97±0.39[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-15.84±0.36[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品であって、このような加熱式たばこ製品は、再構成たばこ顆粒の充填量をμ±3σで品質管理がなされている。
【0090】
従って、品質管理で排除されない加熱式たばこ製品は、試料B-1~6で実測されたデータに基づくと具体的には、位相変化量が-5.88±0.12[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-7.32±0.18[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-9.73±0.18[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-12.03±0.22[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-13.97±0.26[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-15.84±0.24[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品であって、このような加熱式たばこ製品は、再構成たばこ顆粒の充填量をμ±2σで品質管理がなされている。
【0091】
従って、品質管理で排除されない加熱式たばこ製品は、試料B-1~6で実測されたデータに基づくと具体的には、位相変化量が-5.88±0.06[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-7.32±0.09[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-9.73±0.09[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-12.03±0.11[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-13.97±0.13[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品、位相変化量が-15.84±0.12[deg]の範囲内にある加熱式たばこ製品であって、このような加熱式たばこ製品は、再構成たばこ顆粒の充填量をμ±σで品質管理がなされている。
【0092】
8GHzのマイクロ波を照射して位相変化量を得ることにより、上記範囲内の位相変化量にある加熱式たばこ製品は、顆粒充填量の品質管理がなされた優れた加熱式たばこ製品である。そうした品質管理がなされた加熱式たばこ製品は、それらのみを次の包装工程に回すことができる。同様にそれらのみを倉庫へ保管することができる。同様に、それらのみを出荷することができる。同様に、それらのみを流通させることができる。同様に、それらのみを消費者は使用することが出来る。
【0093】
8GHzのマイクロ波を照射した際に、-0.25(rad)~0.02(rad)の位相変化量を示す加熱式たばこ製品は、消費者が期待する官能が品質管理により保証された優れた品質の加熱式たばこ製品である。
【0094】
実施例3と4に基づけば、8GHzのマイクロ波を照射した際に、-15.84(deg)以上、-5.88(deg)以下の位相変化量を示すたばこセクションを含む加熱式たばこ製品は、消費者が期待する官能が保証された優れた品質の加熱式たばこ製品である。
【0095】
実施例3と4に基づけば、8GHzのマイクロ波を照射した際に、-15.84(deg)以上、-5.88(deg)未満の位相変化量を示すたばこセクションを含む加熱式たばこ製品は、消費者が期待する官能が保証された優れた品質の加熱式たばこ製品である。
【0096】
実施例5に基づけば、8GHzのマイクロ波を照射した際に、-15.84±0.36(deg)の範囲内、または-15.84±0.24(deg)の範囲内、または-15.84±0.12(deg)の範囲内の位相変化量を示すたばこセクションを含む加熱式たばこ製品は、消費者が期待する官能が保証された優れた品質の加熱式たばこ製品である。
【0097】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0098】
100 加熱式たばこ製品
102 カプセル
120 フィルターセクション
140 たばこセクション
145 再構成たばこ
160 外装紙
200 測定装置
210 搬送部
220 送信アンテナ
230 受信アンテナ
240 演算部
250 記憶部