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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20220509BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
A61F13/511 200
A61F13/15 145
A61F13/15 390
A61F13/15 340
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017229064
(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公開番号】P2019097660
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196645
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 陽子
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 哲宏
【審査官】武井 健浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-079510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61F 15/16-15/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体と、前記トップシートの身体側表面に設けられる立体ギャザーと、を有する吸収性物品の製造方法であって、
基体不織布に弱酸性の薬液をオンラインで塗布した後、基体不織布の身体側表面に立体ギャザーをホットメルト接着剤で接合してトップシートを作製する工程Aと、
工程Aの後に、衣類側から順に、前記バックシート、前記吸収体、前記トップシート、を積層する工程Bと、を有し、
前記工程Aにおいて、前記薬液が前記基体不織布に塗布される際の前記薬液由来の水分塗布量が0.5g/m以上3.5g/m以下であり、
前記基体不織布に前記薬液を塗布した後に、乾燥装置による乾燥を行わず、かつ、前記基体不織布に前記薬液を塗布してから、前記工程Bにおいて、前記トップシートを前記吸収体の身体側に積層するまでの時間は、4秒以内であることを特徴とする、吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されており、これにより、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収される。これらの吸収性物品には、テープタイプの紙おむつ、パンツタイプの紙おむつ、尿取りパッド、軽失禁パッドなど、用途に応じて様々な種類が存在する。
【0003】
ところで、ヒトの肌の表面は、天然保湿成分であるアミノ酸や乳酸等の酸や、皮脂由来の脂肪酸等により、pHが約4.5以上6.5以下の弱酸性に保たれているが、吸収性物品の着用時において、排尿されると尿に含まれる尿素等が分解し、弱アルカリ性のアンモニア等が発生し、皮膚へのストレスやかぶれが生じる原因となる。そのため、肌と当接するトップシートに弱酸性の薬液を塗布した吸収性物品が検討されている。
【0004】
このような、吸収性物品としては、例えば、自然皮膚pH値を長時間保つことができる吸水性物品において:(a)少なくとも部分的に液体浸透性のトップシートと;(b)当該トップシートと結合したバックシートと;(c)当該トップシートとバックシートに狭持された吸水性コアとで構成され;当該トップシート又は吸水コアの一部、あるいは両者の一部に、pH制御材を、自然皮膚pH値を長時間保つのに必要十分な量だけを乾燥時に追加して有することを特徴とする吸水性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2003-516778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、弱酸性の薬液が塗布されたトップシートを得る方法として、あらかじめ弱酸性の薬液が塗布されたトップシートの元となる基体不織布を購入する方法と、基体不織布に製造工程においてオンラインで弱酸性の薬液を塗布する方法があるが、コストを抑え基体不織布の選択性を広げるために、基体不織布にオンラインで弱酸性の薬液を塗布することが好ましい。また、基体不織布に塗布される弱酸性の薬液は、有効成分だけでなく、有効成分を希釈するための水分を相当量含有し、例えば、トップシートに立体ギャザーを接合する時点や、衣類側から順に、バックシート、吸収体、トップシートを積層する時点において、トップシートに薬液由来の水分が多く含まれていると、トップシートを各部材に接合する際のホットメルト接着剤等による接着性が低下する原因となる。このため、トップシートの基体不織布に薬液が塗布される場合には、薬液塗布後に乾燥工程を設けなければならない場合があり、乾燥装置を設けることにより、コスト的な負担や配置スペースに関する問題が生じる場合があった。一方で、薬液中の水分含有量が低すぎると、乾燥後の有効成分である弱酸性成分の塗布量を適正にするために、コーターヘッドから基体不織布に塗工する薬液の塗布量自体を少なくしなければならないため、塗布量の調整が難しくなり、また、塗布量の誤差による影響も大きくなるため、安定的に製造するために薬液はある程度の水分を含有することが好ましい。したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、弱酸性の薬液が塗布されたトップシートを備える吸収性物品を低コストで安定的に製造できる、吸収性物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。吸収性物品の製造工程において、基体不織布に弱酸性の薬液をオンラインで塗布してトップシートを作製し、薬液が基体不織布に塗布される際の、薬液由来の水分塗布量を所定量に調整し、薬液を塗布した後に、乾燥装置による乾燥を行わないことにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体と、を有する吸収性物品の製造方法であって、基体不織布に弱酸性の薬液をオンラインで塗布してトップシートを作製する工程Aと、工程Aの後に、衣類側から順に、前記バックシート、前記吸収体、前記トップシート、を積層する工程Bと、を有し、前記工程Aにおいて、前記薬液が前記基体不織布に塗布される際の前記薬液由来の水分塗布量が3.5g/m以下であり、前記基体不織布に前記薬液を塗布した後に、乾燥装置による乾燥を行わないことを特徴とする、吸収性物品の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収性物品の製造方法では、基体不織布に弱酸性の薬液をオンラインで塗布してトップシートを作製する工程と、薬液がトップシートに塗布される際の、薬液由来の水分塗布量が3.5g/m以下であり、薬液を塗布した後に、乾燥装置による乾燥を行わないため、本発明によれば、弱酸性の薬液が塗布されたトップシートを備える吸収性物品を低コストで安定的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<吸収性物品の製造方法>
本発明は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置される吸収体と、を有する吸収性物品の製造方法である。なお、本明細書において、身体側表面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、衣類側表面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。さらに、本明細書の説明において、流れ方向とは、吸収性物品の製造において、基体不織布が進行する方向を指す。本発明の吸収性物品の製造方法によれば、テープ止めタイプの紙おむつ、パンツ型タイプの紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りバッド、軽失禁パッド、軽失禁ライナー等の吸収性物品を製造することができる。
【0011】
本発明の吸収性物品の製造方法は、基体不織布に弱酸性の薬液をオンラインで塗布してトップシートを作製する工程Aと、工程Aの後に、衣類側から順に、バックシート、吸収体、トップシート、を積層する工程Bと、を有する。ここで、本発明の吸収性物品の製造方法において、基体不織布に薬液を塗布した後に、乾燥装置による乾燥を行わない。そのため、吸収性物品の生産コストを下げることができ、省スペース化も実現できる。
【0012】
[工程A]
工程Aは、基体不織布に弱酸性の薬液をオンラインで塗布してトップシートを作製する工程である。基体不織布にオンラインで塗布してトップシートを作製することにより、あらかじめ弱酸性の薬液が塗布されたトップシートを購入して用いるよりも、コストを低減でき、基体不織布の選択性も広げることができる。
【0013】
(薬液)
工程Aにおいて、薬液が基体不織布に塗布される際の、薬液由来の水分塗布量が3.5g/m以下であり、0.5g/m以上3.5g/m以下であることが好ましい。また、薬液が基体不織布に塗布される際の、薬液由来の水分塗布量が上記の範囲であることにより、薬液を塗布した後に、乾燥装置による乾燥を行わなくても、ホットメルト接着剤等により各種部材を接合する際の接着性の低下を防ぐことができる。また、液量が少なすぎることによる塗布ムラも起こらない。
【0014】
基体不織布に薬液を塗布する方法としては、スロットダイ方式、スプレー方式、ロールコーター方式、グラビヤ方式、フレキソ方式が挙げられるが、基体不織布に満遍なく均一に塗布できるスロットダイ方式を用いることが好ましい。なお、基体不織布に塗布される薬液由来の水分塗布量は、薬液中の水分含有量、ライン速度、塗布装置のポンプの送り流量に適宜調整することができる。スロットダイ方式の場合には、コーターヘッドへの送液に使用するポンプとして、マイクロポンプ、ギアポンプ、一軸ねじポンプ、ローブポンプ、ダイアフラムポンプなどが使用できるが、脈動の少ないポンプを使用することが好ましい。また、塗布する薬液が弱酸性であるため、コーターヘッド、ポンプ及びタンクは耐酸性のある素材を使用することが好ましい。
【0015】
また、生産効率を低下させないために、基体不織布に薬液を塗布してから工程Bにおいてトップシートを吸収体の身体側に積層するまでの時間は4秒以内であることが好ましい。このように、基体不織布に薬液を塗布してから工程Bにおいてトップシートを吸収体の身体側に積層するまでの時間が短く設定されていても、乾燥装置による乾燥を行わずに、工程Bにおけるホットメルト接着剤等により各種部材を接合する際の接着性の低下を防ぐことができる。
【0016】
弱酸性の薬液の有効成分としては、有機酸を含有することが好ましい。また、有機酸だけではなく、有機酸塩を含有することによりpH緩衝能が良好となり、排尿後においても肌のpHを弱酸性に維持することができる。また、有機酸のpKa(酸解離定数)が3.0以上6.0以下であることが好ましい。この範囲の有機酸を用いることで、肌のpHを弱酸性に維持することが可能となる。また、薬液のpHを所定範囲とするためには有機酸と有機酸塩の混合割合を適宜調整すればよい。
【0017】
有機酸の具体例としては、アクリル酸、アジピン酸、アスコルビン酸、安息香酸、クエン酸、グルタミン酸、グルタル酸、コハク酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、p-ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。特に、有機酸として、安価で安全性が高く、製品とした場合に実質的に無臭であるリンゴ酸又はクエン酸が好ましい。有機酸塩としては、薬液に用いるのと同一種の有機酸の塩を用いることが好ましい。
【0018】
薬液の有効成分である有機酸および有機酸塩の塗布量は0.004g/m2以上0.040g/m2以下であることが望ましい。上記の範囲に調整することにより、基体不織布に塗布される際の薬液由来の水分塗布量を上記の範囲にしたとしても、肌を弱酸性に維持するための有効成分を十分に備えたトップシートを得ることができる。薬液を塗布した不織布は0.01%のブロモチモールブルー(BTB)水溶液をスプレーすることで塗布ムラと不織布のpHを確認することができる。本発明ではBTBによる染色で黄色になるpH4前後になる量を目標とした。
【0019】
[基体不織布]
トップシートは、肌と当接するシートとなることから、トップシートの元となる基体不織布には、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、エアスルー法、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法等の公知の加工法によって得られた親水性不織布又はこれらを積合した複合不織布を用いることができる。また、基体不織布には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。
【0020】
[工程B]
工程Bは、衣類側から順に、バックシート、吸収体、トップシート、を積層する工程である。各部材を積層した後は、製品形状にカットして吸収性物品を得ることができる。各部材を一体化させる手段としては、ホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いることができる。以下、各部材について説明する。
【0021】
[トップシート]
トップシートは、吸収体に向けて体液を速やかに通過させるものであり、吸収体を挟んで、バックシートに対向して配置される。強度、加工性及び液戻り量の点から、トップシート坪量は、15g/m以上200g/m以下であることが好ましい。トップシートの形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体へと誘導するために必要とされる、吸収体を覆う形状であればよい。なお、トップシートには、上記の薬液の他に、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、抗菌剤、保湿剤を含有させてもよい。
【0022】
[吸収体]
吸収体は、基材としての吸収性繊維と、高吸水性ポリマー(SAP)と、を含有する。なお、吸収体は、単層であっても複層であってもよい。
【0023】
(吸収性繊維)
吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体の基材としての吸収性繊維に、フラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、吸収体全体で、100g/m以上800g/m以下であることが好ましい。これにより、肌触りを損なわずに、より多くの体液を吸収させることができる。
【0024】
(SAP)
吸収体のSAPとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系共重合体、ポリアスパラギン酸塩系共重合体、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系共重合体が好ましい。
【0025】
吸収体に含有されるSAPの坪量は、吸収体全体で、50g/m以上500g/m以下であることが好ましい。また、SAPの重量は、吸収体全体に対して、15質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0026】
吸収体において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したもの、又は吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートであることが好ましい。
【0027】
また、吸収性物品は、SAP粒子の漏洩防止や吸収体の形状の安定化の目的から、吸収体を覆うキャリアシートを有していてもよい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、スパンボンド不織布、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0028】
[バックシート]
バックシートは、吸収体が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0029】
強度及び加工性の点から、バックシートの坪量は、15g/m以上40g/m以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシートには、通気性を持たせることが好ましい。バックシートに通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシートに穿孔のためにエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0030】
(立体ギャザー)
トップシートの身体側表面には、立体ギャザーが設けられていてもよい。この立体ギャザーは、トップシートとともに体液の閉じ込め空間を形成し、体液の漏れを防止できるようになっている。立体ギャザーは、立体ギャザーシートと、立体ギャザーシートの自由端部に沿って配された伸縮性弾性部材と、を備えていることが好ましい。伸縮性弾性部材としては、天然ゴム、合成ゴム、及びポリウレタン等からなる、糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができる。なお、トップシートと立体ギャザーの接合には、ホットメルト接着剤を用いることが好ましい。また、立体ギャザーのトップシートとの接合は、基体不織布に薬液を塗布した後であれば、バックシート、吸収体、トップシート、を積層する前工程と後工程のいずれのセクションで行ってもよい。ここで、立体ギャザーのトップシートとの接合を、バックシート、吸収体、トップシート、を積層する前工程で行う場合には、立体ギャザーが、薬液が塗布された基体不織布に最も速く接合する部材となるが、この場合でも、本発明においては、基体不織布に塗布される薬液由来の水分塗布量が上記の範囲に調整されているため、乾燥装置による乾燥を行わなくても、ホットメルト接着剤による接合性の低下を防ぐことができる。
【実施例
【0031】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0032】
(吸収性物品の製造)
ライン速度100m/分で流れ方向に進行する基体不織布(坪量20g/mの幅75mmの親水性のエアスルー不織布)に、スロットダイ(ノードソン社製)で0.25質量%のリンゴ酸を含有する薬液をオンラインで塗布したのち、乾燥装置による乾燥を行わずに5m走行させた後に、立体ギャザーをホットメルト接着剤で基体不織布の身体側表面に接合させて、トップシートを作製した。その後、基体不織布に薬液を塗布して3.6秒後に、各部材にホットメルト接着剤を塗布して、衣類側から順に、バックシート、吸収体、トップシートを積層し、所定の形状にカットして実施例1から5、比較例1の軽失禁パッドを製造した。なお、基体不織布に塗布された薬液由来の水分含有量を薬液中の水分含有量、ライン速度、塗布装置のポンプの送り流量から計算し、表1に示した。
【0033】
(接着性)
各実施例及び比較例に係る吸収性物品をそれぞれ10個用意し、各吸収性物品の立体ギャザーとトップシートの接着性について、立体ギャザーをトップシートから手で剥がしたときの強度を確認し、以下の基準により評価し、結果を表1に示した。
〇・・10個の吸収性物品の全ての接着性が良好であったとき
×・・接着性が良好でない吸収性物品が一つでもあったとき
【0034】
(塗布後のムラ)
塗工直後の基材不織布を吸収体の製造ラインに入る直前で取り出し、BTB溶液で呈色し、ムラがなく均一に発色しているかを目視で確認した。
【0035】
【表1】
【0036】
以上より、本発明によれば、弱酸性の薬液が塗布されたトップシートを備える吸収性物品を低コストで安定的に製造することができる。