(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】低エネルギー硬化性オフセット及び凸版印刷インク並びに印刷プロセス
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20220509BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C09D11/101
B41M3/14
(21)【出願番号】P 2019524922
(86)(22)【出願日】2017-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2017081377
(87)【国際公開番号】W WO2018104231
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-04
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ホゲット, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】シャブリエ, ステファン
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-502330(JP,A)
【文献】特表2011-507006(JP,A)
【文献】特表2015-526311(JP,A)
【文献】特表2009-517490(JP,A)
【文献】特開2010-076272(JP,A)
【文献】特表2010-521330(JP,A)
【文献】特開2007-204543(JP,A)
【文献】国際公開第2016/153035(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/115600(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0330296(US,A1)
【文献】特表2006-522839(JP,A)
【文献】特表2007-509787(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102753631(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/101
B41M 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材又はセキュリティ文書にセキュリティ特徴を印刷するための、40℃及び1000s
-1で2.5~25Pa・sの範囲の粘度を有する低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクであって、前記低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で、
i)10重量%~80重量%のラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物;
ii)1重量%~20重量%の式(I)の1種又は複数の光開始剤;
【化1】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14は、同一又は互いに異なり、水素、C
1~C
4-アルキ
ル、並びにハロゲンからなる群から選択される)
iii)1重量%~60重量%の、発光材料、磁性材料、IR吸収材料、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数の機械可読材料
;
iv)0.5重量%~20重量%の1種又は複数の充填剤及び/又は増量剤
;並びに
v)パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、フルオロカーボンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、カルナウバワックス、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数のワックス
を含む、低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インク。
【請求項2】
前記式(I)におけるC
1
~C
4
-アルキルが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル及びシクロブチルから選択される、請求項1に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インク。
【請求項3】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14は、同一又は互いに異なり、フッ素、塩素、及び臭素からなる群から選択される、請求項1に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インク。
【請求項4】
前記1種又は複数の光開始剤の少なくとも1種が式(II)のものである、請求項
1に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インク。
【化2】
【請求項5】
前記1種又は複数の充填剤及び/又は増量剤が、炭酸塩、シリカ、タルク、粘土、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インク。
【請求項6】
前記ラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物が、1種又は複数のラジカル硬化性(メタ)アクリレートオリゴマー及び1種又は複数のラジカル硬化性(メタ)アクリレートモノマーからなる、請求項1~
5のいずれか一項に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インク。
【請求項7】
a)1種若しくは複数の染料、及び/又はb)無機顔料、有機顔料、若しくはそれらの混合物をさらに含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インク。
【請求項8】
a)請求項1~7のいずれか一項に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクをオフセット印刷又は凸版印刷によって塗布して、被覆物又は層を形成するステップと、
b)前記被覆物又は層をUVランプ(280~400nm)を用いて少なくとも50mJ/cm
2の線量で硬化させるステップと
を含む、オフセット又は凸版印刷プロセスによって基材にセキュリティ特徴を印刷するプロセス。
【請求項9】
b)ステップで、少なくとも100mJ/cm
2の線量で硬化させる請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
40℃及び1000s
-1で2.5~25Pa・sの範囲の粘度を有する低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクを製造するための、前記低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で、1重量%~20重量%の量での請求項1~
6のいずれか一項に記載の1種又は複数の光開始剤の使用であって、前記低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクが、セキュリティ文書にセキュリティ特徴を印刷するのに適しており、
i)10重量%~80重量%のラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物;
ii)1重量%~60重量%の、発光材料、磁性材料、IR吸収材料、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数の機械可読材料
;
iii)0.5重量%~20重量%の1種又は複数の充填剤及び/又は増量剤
;並びに
iv)パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、フルオロカーボンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、カルナウバワックス、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数のワックス
を含む、使用。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクから作製した被覆物又は層を含むセキュリティ特徴。
【請求項12】
請求項11に記載の1種又は複数のセキュリティ特徴を含むセキュリティ文書。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[001]本発明は、セキュリティ文書を偽造及び違法複製から保護する分野に関する。本発明は、低エネルギーラジカル硬化性オフセット及び凸版印刷インク並びにセキュリティ文書にセキュリティ特徴を製造するプロセスの分野に関する。
【0002】
[発明の背景]
[002]カラーフォトコピー及び印刷の品質が絶え間なく向上するのに伴い、複製できる効果を有さない、銀行券、有価文書又はカード、輸送機関チケット又はカード、税金票、及び製品ラベルなどのセキュリティ文書を、偽造、改ざん、又は違法複製から保護する試みにおいて、これらの文書に様々なセキュリティ手段を組み込むことが従来の習慣となっている。セキュリティ手段の典型的な例としては、光学的に可変な顔料、磁性又は磁化可能な薄膜干渉顔料、干渉被覆された粒子、サーモクロミック顔料、フォトクロミック顔料、発光性、赤外線吸収性、紫外線吸収性又は帯磁性化合物を含む、セキュリティスレッド、ウィンドウ、繊維、プランシェット、箔、デカール、ホログラム、すかし、セキュリティインクが挙げられる。
【0003】
[003]機械可読インク、例えば、磁気インク、発光インク、及びIR吸収インクなどは、セキュリティ文書に内密の追加セキュリティ特徴を付与するための、セキュリティ文書、特に銀行券の印刷分野において広く使用されてきた。内密のセキュリティ特徴により実現される、偽造及び違法複製からのセキュリティ文書の保護は、そのような特徴がその特徴の検出のために特殊な機器及び知識を通常必要とするという考えに依拠している。セキュリティ並びに偽造、改ざん、及び違法複製からの有価文書及び有価商品の保護する分野において、機械可読セキュリティインクを、高粘性又はペースト状インクを使用する印刷プロセス、例えば、オフセット印刷、凸版印刷、及び凹版印刷(当技術分野では彫刻鋼製ダイ又は銅版印刷とも呼ばれる)などを含む様々な印刷プロセスによって塗布することが当技術分野で既知である。偽造及び違法複製からセキュリティ文書を保護する分野において、UVラジカル硬化性着色オフセット印刷インク及びUVラジカル硬化性着色凸版印刷インクが、セキュリティ特徴の形の薄層としてセキュリティ文書への塗布に使用されている。
【0004】
[004]インクが急速且つ効率的に乾燥しないと裏移りが生じる。裏移りは、印刷済み基材の積み重ね中に、乾燥又は硬化していない印刷インクが印刷物からはがれることで上に重ねられた印刷済み基材の裏に付着して起こる(例えば、米国特許第4,604,952号を参照)。これは、セキュリティ文書、特に、銀行券にセキュリティ特徴を印刷する際に特に問題となる。その理由は、前記文書が、次々に塗布される多数の重複している又は部分的に重複しているセキュリティ特徴を通常有するからである。先に塗布されたセキュリティ特徴、例えば、背景画像又はグラフィックパターンがまだ十分に乾燥していない場合、多段階印刷プロセス全体が遅れるだけでなく、また、そのようにして得られたセキュリティ特徴が裏移りを被る、又は任意の後続の印刷若しくはプロセス操作中に裏移りのために機械に汚れ跡がつく。
【0005】
[005]従来の銀行券印刷プロセスは、印刷されたばかりのインク層を乾燥させる期間で分けられる一連のステップにおいて、オフセット印刷、凹版印刷、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷、及び凸版印刷を含む印刷技術を使用する。
【0006】
[006]従来の銀行券印刷プロセス中、オフセットインクは多段階印刷プロセス全体の最初の諸ステップのうちの1ステップ中に塗布され、オフセット印刷の後に凹版印刷ステップが続く。セキュリティ特徴がオフセット印刷プロセスによって銀行券などのセキュリティ文書に印刷され、前記セキュリティ特徴が低い表面硬化特性を有する場合、後続の凹版印刷ステップは遅れるか又は裏移りを生じることがある。凹版(当技術分野では彫刻銅版印刷及び彫刻鋼製ダイ印刷とも呼ばれる)印刷プロセス中、印刷するパターン又は画像が彫刻された加熱プレートを有する彫刻鋼製シリンダに、インキングシリンダ(複数可)(又はシャブロンシリンダ)のインクが供給される。各インキングシリンダは、セキュリティ特徴を形成する少なくとも1色の対応する色でインク付けされている。インク付けされた凹版を基材と接触させ、インクを凹版印刷プレートの彫刻から印刷される基材に加圧下で転写して、インク層の厚さ及び基材のエンボス加工から生じるレリーフ形状の厚い印刷層を形成する。凹版印刷プロセスの際立った特徴の1つは、凹版印刷プレートの対応する浅い又はそれぞれ深い凹部を使用することによって基材に転写されるインクの厚さを数マイクロメートル~数十マイクロメートルまで変化させることができることである。したがって、どんな裏移り問題も回避するためには、凹版印刷を開始する前にオフセットインクを完全に乾燥させることが重要である。前記裏移り問題は、積み重ねられた印刷済み基材に高い圧力がかかるために後続の凹版印刷プロセスにとって顕著である。
【0007】
[007]従来の銀行券印刷プロセス中、凸版印刷インクは、多段階印刷プロセス全体の最終の諸ステップのうちの1ステップ中に塗布され、凸版印刷に続いて、例えば、切り取り道具又は断裁機を使用して、複数の銀行券を含むシートを切断して個々の流通銀行券を形成する切断プロセスが行われる。セキュリティ特徴が凸版印刷プロセスによって銀行券などのセキュリティ文書に印刷され、前記セキュリティ特徴が低い表面硬化特性を有する場合、後続の切断ステップは遅れるか又は裏移りを生じることがある。凸版印刷(当技術分野では凸版レリーフ印刷及びタイポグラフィとも呼ばれる)は、文字、数字、記号、線、又は点などの隆起した要素を含む硬質金属印刷プレートからインクを転写することからなる方法である。隆起した印刷要素を、ローラーを適用することによって一定の厚さのインク層で被覆する。次いで、インクを物品又は基材に転写する。凸版印刷技術は、銀行券の番号付け、即ち、1種又は複数の固有のシリアル番号を付与する目的で、通常使用される。したがって、どんな裏移り問題も回避するためには、切断ステップを開始する前に凸版印刷インクを完全に乾燥させることが重要である。前記裏移り問題は、積み重ねられた印刷済み基材に高い圧力がかかるために後続の切断ステッププロセスにとって顕著である。
【0008】
[008]UVラジカル硬化性インクはフリーラジカル機構によって硬化されるが、このフリーラジカル機構は、フリーラジカルを遊離し、次いで、重合を開始して層又は被覆物を形成する、1種又は複数のフリーラジカル光開始剤のエネルギーによる活性化からなる。既知のフリーラジカル光開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-アミノケトン、α-ヒドロキシケトン、酸化ホスフィン及び酸化ホスフィン誘導体、並びにベンジルジメチルケタールが挙げられる。
【0009】
[009]環境に優しい解決策を提供する目的で、低エネルギー(LE又はHUV)でインクを硬化するためのシステム及びUV水銀中圧ランプが開発されてきた。低エネルギー水銀中圧ランプは、UV-A及びUV-B領域に発光スペクトルを有し、UV-C発光ではUVエネルギーが5%未満である。前記システム及びランプは、中圧水銀ランプなどの従来のUVランプで生じるスペクトルのオゾン発生波長で放出される光の量を減少させる。
【0010】
[010]被覆物又はインク層のUV硬化効率は、前記硬化に使用される照射源の発光スペクトルと被覆物又はインク層に含まれる光開始剤の吸収スペクトルとの重なりだけでなく、照射源の発光スペクトルの強度、及び照射源の発光スペクトルの波長における光開始剤のモル吸収係数にも依存する。したがって、UV-LEランプを用いた従来使用されているフリーラジカル光開始剤を含む被覆物又はインク層のUV硬化は、UV-LEランプの発光スペクトルと前記の従来使用されているフリーラジカル光開始剤の吸収との重なりが乏しいために硬化効率が低減し、したがって、硬化の減速若しくは不足又は硬化不良をまねく。
【0011】
[011]機械可読セキュリティインクは多量の顔料を通常含むので、前記インクは硬化が特に困難である。その理由は、前記顔料のフィルター効果により光開始剤に利用可能なUV照射の量が低減されるからである。
【0012】
[012]UV-LEランプを用いたUV硬化の不十分な硬化特性を克服する目的で、アシル-ホスフィン光開始剤が、その赤色偏移吸収スペクトルのために使用されてきた。しかし、アシル-ホスフィン光開始剤は、酸素阻害に特に敏感であり、表面硬化又は薄層の硬化にはあまり効率的ではないことが既知である。被覆物層のUV硬化中の酸素阻害は、薄いUV硬化層にとって特に問題である。
【0013】
[013]したがって、低エネルギー硬化性着色オフセット及び凸版印刷インク、並びにセキュリティ文書に高速(即ち、工業用速度)でセキュリティ特徴を印刷するプロセスが依然として必要とされており、前記印刷セキュリティ特徴は、前記インクを280~400nmの放射波長(低エネルギーランプ)で硬化させた後、良好な表面硬化特性及び良好な完全硬化特性を兼ね備えたものである。
【0014】
[発明の概要]
[014]したがって、本発明の一目的は、前述の従来技術の欠陥を克服することである。これは、ラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクにおいて式(I)の1種又は複数の光開始剤を使用することによって実現され、ここで、前記ラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、40℃及び1000s-1で約2.5~約25Pa・sの範囲の粘度を有し、ラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物;発光材料、磁性材料、IR吸収材料、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数の機械可読材料;並びに1種又は複数の充填剤及び/又は増量剤を含む。
【0015】
[015]本明細書において、基材又はセキュリティ文書にセキュリティ特徴を印刷するための、40℃及び1000s
-1で約2.5~約25Pa・sの範囲の粘度を有する低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクであって、低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で、
i)約10重量%~約80重量%のラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物;
ii)約1重量%~約20重量%の式(I)の1種又は複数の光開始剤;
【化1】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14は、同一又は互いに異なり、水素、C
1~C
4-アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロブチル)、並びにハロゲン、特に、フッ素、塩素、及び臭素からなる群から選択される)
iii)約1重量%~約60重量%の、発光材料、磁性材料、IR吸収材料、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数の機械可読材料;並びに
iv)約0.5重量%~約20重量%の1種又は複数の充填剤及び/又は増量剤
を含む、低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクを記載する。
【0016】
[016]本明細書において、本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクをオフセット印刷又は凸版印刷によって塗布して、被覆物又は層を形成するステップと、この被覆物又は層をUVランプ(280~400nm)を用いて少なくとも50mJ/cm2、好ましくは少なくとも100mJ/cm2の線量で硬化させるステップとを含む、オフセット又は凸版印刷プロセスによって基材にセキュリティ特徴を印刷するための製造プロセスを記載する。
【0017】
[017]本明細書において、本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクから作製した層又は被覆物を含むセキュリティ特徴も記載する。本明細書において、偽造又は不正行為からセキュリティ文書を保護するための本明細書に記載のセキュリティ特徴、及び本明細書に記載のセキュリティ特徴のうちの1種又は複数を含むセキュリティ文書の使用を記載する。
【0018】
[018]本明細書において、本明細書に記載の1種又は複数のセキュリティ特徴を含むセキュリティ文書も記載する。
【0019】
[019]本明細書において、40℃及び1000s-1で約2.5~約25Pa・sの範囲の粘度を有する低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクを製造するための、低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で、約1重量%~約20重量%の量での本明細書に記載の1種又は複数の光開始剤の使用であって、前記低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクが、セキュリティ文書にセキュリティ特徴を印刷するのに適しており、
i)約10重量%~約80重量%のラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物;
ii)約1重量%~約60重量%の、発光材料、磁性材料、IR吸収材料、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数の機械可読材料;並びに
iii)約0.5重量%~約20重量%の1種又は複数の充填剤及び/又は増量剤
を含む、使用も記載する。
【詳細な説明】
【0020】
定義
[020]以下の定義は、明細書本文及び特許請求の範囲において使用する用語の意味を明らかにするものである。
【0021】
[021]本明細書では、不定冠詞「a」は、1並びに1より多いことを表し、この冠詞が係る名詞が単数であることを必ずしも限定するものではない。
【0022】
[022]本明細書では、用語「約(about)」は、問題にされている量、値、又は限度が、示されている特定の値でもよく、又はその近傍にある他の値でもよいことを意味する。一般に、ある値を示す用語「約」は、その値の±5%以内の範囲を示すことを意図する。例として、語句「約100」は、100±5の範囲、即ち、95~105の範囲を示す。一般に、用語「約」が使用される場合、本発明による同様の結果又は効果が表示値の±5%の範囲内で得られることを期待することができる。しかし、用語「約」が補われた特定の量、値、又は限度は、まさにその量、値、又は限度、即ち、「約」の補足なしのそれ自体も開示することを本明細書では意図している。
【0023】
[023]本明細書では、用語「及び/又は(and/or)」は、その群の要素のうちのすべて又は1つだけのいずれかが存在し得ることを意味する。例えば、「A及び/又はB」は、「Aのみ若しくはBのみ、又はA及びBの両方」を意味する。「Aのみ」の場合、その用語は、Bが存在しない、即ち、「Aのみで、Bはない」可能性もカバーする。
【0024】
[024]本明細書では、用語「1又は複数(one or more)」は、1、2、3、4などを意味する。
【0025】
[025]本明細書では、用語「含む(comprising)」は、非排他的及び無制限であることを意図する。したがって、例えば、化合物Aを含むインク溶液は、Aに加えて他の化合物を含んでいてもよい。しかし、用語「含む」はまた、その特定の実施形態として、「から本質的になる(consist essentially of)」及び「からなる(consist of)」というより限定的な意味も含み、したがって、例えば、「化合物Aを含むインク溶液」は、化合物Aから(本質的に)なることもある。
【0026】
[026]本発明の説明が「好ましい(preferred)」実施形態/特徴に言及する場合、これらの「好ましい」実施形態/特徴の組合せが技術的に意味がある限り、これらの「好ましい」実施形態/特徴の組合せも開示されていると考えるものとする。
【0027】
[027]用語「セキュリティ特徴」は、認証目的に使用することができる画像、パターン、又はグラフィック要素を示すのに使用する。
【0028】
[028]用語「セキュリティ文書」は、少なくとも1つのセキュリティ特徴によって偽造又は不正行為から通常保護されている文書を指す。セキュリティ文書の例として、有価文書及び有価商品が挙げられるが、それらだけに限らない。
【0029】
[029]本発明の特定の実施形態の説明を、例示及び説明の目的のために示す。それらは網羅的であること又は開示された正確な形態に本発明を限定することを意図せず、明らかに多くの改変及び変更が上記の教示に照らして可能である。例示的な実施形態は、本発明の原理及びその実際的用途を最もよく説明するために選択且つ記載されており、それによって、当業者が、本発明、及び企図する特定の用途に適するような様々な改変を含む様々な実施形態を最もよく使用できるようにする。
【0030】
[030]本発明は、オフセット印刷プロセス又は凸版印刷プロセスによってセキュリティ文書にセキュリティ特徴を製造(印刷)するための低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクを提供する。本発明は、本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクから作製した被覆物又は層を含むセキュリティ特徴、及び本明細書に記載の1種又は複数のセキュリティ特徴を含むセキュリティ文書をさらに提供する。
【0031】
[031]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、40℃及び1000s-1で約2.5~約25Pa・sの範囲の粘度を有し、粘度は、ハーケロトビスコ(Haake Roto-Visco)RV1においてコーン2cm0.5°で測定する。
【0032】
[032]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、ラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物を含む。本明細書に記載のラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物は、本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で、約10重量%~約80重量%、好ましくは約20重量%~約80重量%の量で存在する。
【0033】
[033]ラジカル硬化性化合物はフリーラジカル機構によって硬化されるが、このフリーラジカル機構は、フリーラジカルを遊離し、次いで、重合を開始して層又は被覆物を形成する、1種又は複数の光開始剤のエネルギーによる活性化からなる。
【0034】
[034]記載のラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物は、好ましくは、1種又は複数のラジカル硬化性(メタ)アクリレートオリゴマー及び1種又は複数のラジカル硬化性(メタ)アクリレートモノマーからなる。本発明の文脈における用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート並びに対応するメタクリレートを指す。本明細書に記載のラジカル硬化性(メタ)アクリレートオリゴマーは、好ましくは、ポリエポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化オイル、(メタ)アクリル化エポキシ化オイル、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、脂肪族又は芳香族ポリウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリアミノ(メタ)アクリレート、ポリアクリル酸(メタ)アクリレート、ポリアクリレートエステル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、ポリエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、脂肪族又は芳香族ポリウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリアミノ(メタ)アクリレート、ポリアクリル酸(メタ)アクリレート、ポリアクリレートエステル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群れから選択される。本明細書に記載のラジカル硬化性(メタ)アクリレートモノマーは、好ましくは、2(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、C12/C14アルキル(メタ)アクリレート、C16/C18アルキル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、オクチルデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ジ(メタ)アクリレート、エステルジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそれらのエトキシ化同等物、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)クリレート、及びそれらのエトキシ化同等物、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、さらにより好ましくは、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ペンタエリトリトールトリアクリレート(pentaerytritol triacrylate)(PTA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0035】
[035]本明細書に記載の(メタ)アクリレート化合物を含む本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、1種又は複数のビニルエーテル及び/又はそれらのエトキシ化同等物をさらに含むことができる。適切なビニルエーテルは、エチルビニルエーテル(EVE)、n-ブチルビニルエーテル(NBVE)、イソ-ブチルビニルエーテル(IBVE)、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)、2-エチルヘキシルビニルエーテル(EHVE)、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル(BDDVE)、ジエチレングリコールジビニルエーテル(DVE-2)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(DVE-3)、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(CHDM-ジ)、ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル(CHDM-モノ)からなる群から選択することができる。
【0036】
[036]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、式(I)の1種又は複数の光開始剤を含む。
【化2】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14は、同一又は互いに異なり、水素、C
1~C
4-アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロブチル)、並びにハロゲン、特に、フッ素、塩素、及び臭素からなる群から選択される)
【0037】
[037]好ましい一実施形態によれば、本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、式(I)の1種又は複数の光開始剤を含み、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は、同一又は互いに異なり、水素、C1~C4-アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロブチル)、並びにハロゲン、特に、フッ素、塩素、及び臭素からなる群から選択される。
【0038】
[038]好ましい一実施形態によれば、本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、式(I)の1種又は複数の光開始剤を含み、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14は、水素である。言い換えると、1種又は複数の光開始剤は、式(II)のものである。
【化3】
【0039】
[039]本発明がまた、原子のうちの1種又は複数が同位体変種で置き換えられている化合物、例えば、1個若しくは複数個の水素原子が2H若しくは3Hで置き換えられている化合物、並びに/又は1個若しくは複数個の炭素原子が14C若しくは13Cで置き換えられている化合物に及ぶこともさらに認識されよう。
【0040】
[040]本明細書に記載の光開始剤として適切な構造(II)の化合物は、Rahn、スイスからゲノキュア(Genocure)PBZ(CAS番号2128-93-0)として市販されている。
【0041】
[041]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクに含まれる1種又は複数の光開始剤は、本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で、好ましくは約1重量%~約20重量%、より好ましくは約1重量%~約15重量%の総量で存在する。
【0042】
[042]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、1種又は複数の不活性樹脂(即ち、重合反応に関与しない樹脂)をさらに含むことができる。不活性樹脂を本明細書に記載のラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの粘度の調整に使用すると、本明細書に記載のラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクで調製したインク層のガラス転移温度を低下させることができ、或いは本明細書に記載のラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクで調製したインク層の付着性を増大させることができる。1種又は複数の不活性樹脂は、炭化水素(例えば、スチレン系炭化水素樹脂など)、アクリル(例えば、アクリルコポリマーなど)、スチレンアリルアルコール、フェノール樹脂、ロジン変性樹脂、ケトン樹脂、アルキド樹脂、及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。本明細書に記載の1種又は複数の不活性樹脂は、存在する場合、本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性湿式オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で、約0.1重量%~約10重量%の量、好ましくは約0.5重量%~約2重量%の量で、本明細書に記載の低エネルギー硬化性湿式オフセット又は凸版印刷インク中に存在する。
【0043】
[043]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、効率的な硬化を実現するために1種又は複数の光開始剤と共に1種又は複数の増感剤を、さらに含むことができる。適切な増感剤の典型的な例としては、イソプロピル-チオキサントン(ITX)、1-クロロ-2-プロポキシ-チオキサントン(CPTX)、2-クロロ-チオキサントン(CTX)、2-メトキシチオキサントン(MeOTX)及び2,4-ジエチル-チオキサントン(DETX)、それらのポリマー誘導体、並びにそれらの混合物が挙げられるが、それらだけに限らない。本明細書に記載の1種又は複数の増感剤は、存在する場合、本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で、約0.1重量%~約5重量%の量、好ましくは約0.5重量%~約2重量%の量で低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インク中に存在する。
【0044】
[044]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、特にその貯蔵中に前記インクを安定化させるために1種又は複数のUV安定剤をさらに含むことができる。適切なUV安定剤の典型的な例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、4-t-ブチルカテコール、4-t-ブチル-フェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル-フェノール(BHT)、ピロガロール、フェノチアジン(PTZ)、2,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、銅(II)塩(例えば、銅(II)フェノキシド、アセチルアセトン酸銅(II)、グルコン酸銅(II)、酒石酸銅(II)、酢酸銅(II)、カルバミン酸銅(II)、チオカルバミン酸銅(II)、ジチオカルバミン酸銅(II)、又はジメチルジチオカルバミン酸銅(II)など)、銅(I)塩(例えば、塩化銅(I)又は酢酸銅(I)など)、トリス[N-(ヒドロキシル-κO)-N-(ニトロソ-κO)ベンゼンアミネート]-アルミニウム、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらだけに限らない。本明細書に記載の1種又は複数のUV安定剤は、存在する場合、本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で、約0.1重量%~約5重量%の量、好ましくは約0.5重量%~約2重量%の量で低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インク中に存在する。
【0045】
[045]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、発光材料、磁性材料、IR吸収材料、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数の機械可読材料をさらに含む。本明細書では、用語「機械可読材料」は、デバイス又は機械、例えば、磁気検出器(機械可読材料が磁気的特性を有する場合)又はIRカメラ(機械可読材料がIR吸収特性を有する場合)などによって検出可能な少なくとも1つの独特な特性を示し、前記セキュリティ特徴の検出及び/又は認証用の特定の装置を使用して前記セキュリティ特徴を認証する手段を与えるために本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクから作製したセキュリティ特徴に含ませることができる材料を指す。本明細書に記載の1種又は複数の機械可読材料は、低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で、約1重量%~約60重量%、好ましくは約5重量%~約40重量%の量で存在する。
【0046】
[046]発光材料の典型的な例としては、無機顔料(発光イオンをドープした無機母体結晶又はガラス)、有機若しくは有機金属(有機配位子(複数可)を有する発光イオン(複数可)の錯体)物質が挙げられるが、それらだけに限らない。発光化合物は、発光化合物に作用するある種のエネルギーを吸収し、続いて、この吸収されたエネルギーを電磁放射線として少なくとも部分的に放出することができる。ある波長の光で露光し、放出された光を分析することによって発光化合物を検出する。ダウンコンバート性発光化合物は、より高い周波数(より短い波長)で電磁放射線を吸収し、より低い周波数(より長い波長)で少なくとも部分的にそれを再放出する。アップコンバート性発光化合物は、より低い周波数で電磁放射線を吸収し、より高い周波数で少なくとも部分的にその一部を再放出する。発光材料の光放出は、原子又は分子の励起状態から生じる。このような励起状態の放射減衰は特徴的な減衰時間を有し、それは材料に依存し、10-9秒~数時間に及ぶことがある。蛍光及びリン光化合物の両方が本発明に適している。リン光化合物の場合、減衰特性の測定も行なわれ、機械可読な特徴として使用することもできる。顔料形状の発光化合物がインクにおいて広く使用されている(米国特許第6565770号、国際公開第2008/033059A2号、及び国際公開第2008/092522A1号を参照されたい)。発光化合物の例としては、とりわけ、遷移金属イオン及び希土類イオンからなる群から選択される少なくとも1種の発光カチオンでドープされた、非発光カチオンの硫化物、酸硫化物、リン酸塩、バナジン酸塩など;希土類酸硫化物及び希土類金属錯体、例えば、国際公開第2009/005733A2号又は米国特許第7108742号に記載のものなどが挙げられる。無機化合物材料の例としては、La2O2S:Eu、ZnSiO4:Mn、及びYVO4:Ndが挙げられるが、それらだけに限らない。1種又は複数の発光材料は、存在する場合、低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で約1~約30重量%の量で存在することが好ましい。
【0047】
[047]磁性材料は、強磁性又はフェリ磁性タイプの特定の検出可能な磁気的特性を示し、それには、永久磁性材料(抗磁力Hc>1000A/mを有する硬質磁性材料)及び磁化可能材料(IEC60404-1(2000)に準拠して抗磁力Hc≦1000A/mを有する軟質磁性材料)が挙げられる。磁性材料の典型的な例としては、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、及びそれらの磁性合金、カルボニル鉄、二酸化クロムCrO2、磁性酸化鉄(例えば、Fe2O3;Fe3O4)、磁性フェライトM(II)Fe(III)2O4及びヘキサフェライトM(II)Fe(III)12O19、磁性ガーネットM(III)3Fe(III)5O12(イットリウム鉄ガーネットY3Fe5O12など)、並びに永久磁化したこれらの磁性同形置換物及び粒子(例えば、CoFe2O4)が挙げられる。他の材料の少なくとも1層に囲まれた(被覆された)磁性コア材料を含む磁性顔料粒子、例えば、国際公開第2010/115986A2号に記載のものなども本発明に使用することができる。1種又は複数の磁性材料は、存在する場合、低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で約5~約60重量%の量で存在することが好ましい。
【0048】
[048]赤外線(IR)吸収材料、即ち、電磁スペクトルの近赤外線(NIR)範囲、最も一般的には700nm~2500nmの波長範囲を吸収する材料は、印刷された文書に、認証の助けとなる追加の内密のセキュリティ要素を与えるための、セキュリティ用途におけるマーキング材料として広く知られ、使用されている。例えば、IR吸収特性を有するセキュリティ特徴は、決められた通貨紙幣の認識及びその認証の確認のために、特に、カラーコピー機で作製された複製品と区別するために、銀行及び販売用途における自動通貨処理装置(自動預金受払機、自動販売機など)によって使用される銀行券において実施されている。IR吸収材料としては、IR吸収無機材料、協同効果としてIR吸収を示すIR吸収原子又はイオン又は存在物を相当量含むガラス、IR吸収有機材料、並びにIR吸収有機金属材料(別個のカチオン及び/若しくは別個の配位子のいずれか又は両方が一緒になってIR吸収特性を有する、有機配位子(複数可)を有するカチオン(複数可)の錯体)が挙げられる。IR吸収材料の典型的な例としては、とりわけ、カーボンブラック、キノン-ジインモニウム又はアミニウム塩、ポリメチン(例えば、シアニン、スクアライン、クロコナイン)、フタロシアニン又はナフタロシアニン型(IR吸収π系)、ジチオレン、クアテリレンジイミド、金属(例えば、遷移金属又はランタニド)リン酸塩、六ホウ化ランタン、インジウムスズ酸化物、ナノ粒子形態のアンチモンスズ酸化物、及びドープされたスズ(IV)酸化物(SnO4結晶の協同特性)が挙げられる。遷移元素化合物を含み、その赤外線吸収が遷移元素原子又はイオンのd殻内での電子遷移の結果であるIR吸収材料、例えば、国際公開第2007/060133A2号に記載されているものも本発明に使用することができる。1種又は複数のIR吸収材料は、存在する場合、低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で約1~約40重量%の量で存在することが好ましい。
【0049】
[049]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、1種又は複数の充填剤及び/又は増量剤を、低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で、約0.5~約20重量%、好ましくは約1~約10重量%の量でさらに含む。1種又は複数の充填剤及び/又は増量剤は、炭素繊維、タルク、マイカ(白雲母)、珪灰石、粘土(焼成粘土及び白陶土)、カオリン、炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムアルミニウム)、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム)、硫酸塩(例えば、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム)、チタン酸塩(例えば、チタン酸カリウム)、アルミナ水和物、シリカ(ヒュームドシリカも含む)、モンモリロナイト、グラファイト、アナターゼ、ルチル、ベントナイト、バーミキュライト、亜鉛華、硫化亜鉛、木粉、石英粉、天然繊維、合成繊維、並びにそれらの組合せからなる群から選択されることが好ましい。1種又は複数の充填剤及び/又は増量剤は、炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムアルミニウム)、シリカ、タルク、粘土、及びそれらの混合物からなる群から選択されることがより好ましい。
【0050】
[050]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、a)1種若しくは複数種の染料、及び/又はb)無機顔料、有機顔料、若しくはそれらの混合物をさらに含むことができる。インクに適する染料は、当技術分野で既知であり、反応性染料、直接染料、アニオン染料、カチオン染料、酸性染料、塩基性染料、食用染料、金属錯体染料、溶媒染料、及びそれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい。適切な染料の典型的な例としては、クマリン、シアニン、オキサジン、ウラニン、フタロシアニン、インドリノシアニン、トリフェニルメタン、ナフタロシアニン、インドナナフタロ(indonanaphtalo)-金属用染料、アントラキノン、アントラピリドン、アゾ染料、ローダミン、スクアリリウム染料、クロコニウム染料が挙げられるが、それらだけに限らない。本発明に適する染料の典型的な例としては、米国特許第5,074,914号、米国特許第5,997,622号、米国特許第6,001,161号、特開02-080470号公報、特開62-190272号公報、特開63-218766号公報に開示されている、C.I.アシッドイエロー1、3、5、7、11、17、19、23、25、29、36、38、40、42、44、49、54、59、61、70、72、73、75、76、78、79、98、99、110、111、121、127、131、135、142、157、162、164、165、194、204、236、245;C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、106、107、110、132、142、144;C.I.ベーシックイエロー13、28、65;C.I.リアクティブイエロー1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42;C.I.フードイエロー3、4;C.I.アシッドオレンジ1、3、7、10、20、76、142、144;C.I.ベーシックオレンジ1、2、59;C.I.フードオレンジ2;C.I.オレンジB;C.I.アシッドレッド1、4、6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、57、73、75、77、80、82、85、87、88、89、92、94、97、106、111、114、115、117、118、119、129、130、131、133、134、138、143、145、154、155、158、168、180、183、184、186、194、198、209、211、215、219、221、249、252、254、262、265、274、282、289、303、317、320、321、322、357、359;C.I.ベーシックレッド1、2、14、28;C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、253;C.I.リアクティブレッド1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、49、50、58、59、63、64、108、180;C.I.フードレッド1、7、9、14;C.I.アシッドブルー1、7、9、15、20、22、23、25、27、29、40、41、43、45、54、59、60、62、72、74、78、80、82、83、90、92、93、100、102、103、104、112、113、117、120、126、127、129、130、131、138、140、142、143、151、154、158、161、166、167、168、170、171、182、183、184、187、192、193、199、203、204、205、229、234、236、249、254、285;C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、8、9、11、55、81;C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、120、123、158、160、163、165、168、192、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、225、226、236、237、246、248、249;C.I.リアクティブブルー1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、46、77;C.I.フードブルー1、2;C.I.アシッドグリーン1、3、5、16、26、104;C.I.ベーシックグリーン1、4;C.I:フードグリーン3;C.I.アシッドバイオレット9、17、90、102、121;C.I.ベーシックバイオレット2、3、10、11、21;C.I.アシッドブラウン101、103、165、266、268、355、357、365、384;C.I.ベーシックブラウン1;C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、29、31、48、50、51、52、58、60、62、63、64、67、72、76、77、94、107、108、109、110、112、115、118、119、121、122、131、132、139、140、155、156、157、158、159、191、194;C.I.ダイレクトブラック17、19、22、32、39、51、56、62、71、74、77、94、105、106、107、108、112、113、117、118、132、133、146、154、168;C.I.リアクティブブラック1、3、4、5、6、8、9、10、12、13、14、18、31;C.I.フードブラック2;C.I.ソルベントイエロー19、C.I.ソルベントオレンジ45、C.I.ソルベントレッド8、C.I.ソルベントグリーン7、C.I.ソルベントブルー7、C.I.ソルベントブラック7;C.I.ディスパースイエロー3、C.I.ディスパースレッド4、60、C.I.ディスパースブルー3、及び金属アゾ染料が挙げられるが、それらだけに限らない。本発明に適する染料は、赤外線吸収染料でも発光染料でもよい。本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクにおいて使用する1種又は複数の染料は、存在する場合、低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で約1~約30重量%の量で存在することが好ましい。
【0051】
[051]有機及び無機顔料の典型的な例としては、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー42、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー173、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ48、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド67、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントブラウン6、C.I.ピグメントブラウン7、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントブラック11、C.I.ピグメントホワイト4、C.Iピグメントホワイト6、C.I.ピグメントホワイト7、C.I.ピグメントホワイト21、C.I.ピグメントホワイト22、アンチモンイエロー、クロム酸鉛、硫酸クロム酸鉛、モリブデン酸鉛、群青、コバルトブルー、マンガンブルー、酸化クロムグリーン、水和酸化クロムグリーン、コバルトグリーン、硫化セリウム、硫化カドミウム、硫化セレンカドミウム、亜鉛フェライト、バナジン酸ビスマス、プルシアンブルー、混合金属酸化物、アゾ、アゾメチン、メチン、アントラキノン、フタロシアニン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、チアジンインジゴ、ジオキサジン、イミノイソインドリン、イミノイソインドリノン、キナクリドン、フラバントロン、インダントロン、アントラピリミジン、及びキノフタロン顔料が挙げられるが、それらだけに限らない。本明細書に記載の無機顔料、有機顔料、又はそれらの混合物は、存在する場合、低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で約0.1~約45重量%の量で存在することが好ましい。
【0052】
[052]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、合成ワックス、石油ワックス、及び天然ワックスからなる群から選択されることが好ましい1種又は複数のワックスをさらに含むことができる。1種又は複数のワックスは、アミドワックス、エルカ酸アミドワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フルオロカーボンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、フィッシャー-トロプシュワックス、シリコーン流体、蜜蝋、カンデリラワックス、モンタンワックス、カルナウバワックス、及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、フルオロカーボンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、カルナウバワックス、及びそれらの混合物からなる群から選択されることがより好ましい。1種又は複数のワックスは、存在する場合、低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクの総重量に対する重量%で約0.1~約5重量%の量で存在することが好ましい。
【0053】
[053]当業者に既知なように、本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、1種又は複数の溶媒及び/又は希釈液をさらに含むことができる。
【0054】
[054]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、添加剤をさらに含んでもよく、その添加剤としては、以下の成分:共開始剤、沈降防止剤、消泡剤、界面活性剤、及びインク分野で既知の他の加工助剤のうちの1種又は複数、並びにこれらの組合せが挙げられるが、それらだけに限らない。本明細書に記載の添加剤は、本明細書に記載の低エネルギー硬化性湿式オフセット印刷インク中に、粒子の寸法の少なくとも1つが1~1000nmの範囲にあるいわゆるナノ材料の形態を含めて、当技術分野で既知の量及び形態で存在することができる。
【0055】
[055]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、本明細書に記載の(メタ)アクリレート化合物の存在下において、本明細書に記載のすべての成分、本明細書に記載の1種又は複数の機械可読材料、本明細書に記載の1種又は複数の充填剤及び/又は増量剤、存在する場合には本明細書に記載の1種又は複数の染料、存在する場合には本明細書に記載の無機顔料、有機顔料、又はそれらの混合物、存在する場合には本明細書に記載の1種又は複数のワックス、及び存在する場合には1種又は複数の添加剤をすべて分散、混合、及び/又はミル粉砕するステップ、即ち、ペースト状組成物を形成するステップを含む方法によって、通常調製する。本明細書に記載の1種又は複数の光開始剤は、他のすべての成分の分散又は混合ステップ中にインクに添加してもよく、或いは後の段階で添加してもよい。
【0056】
[056]本明細書に記載するように、本明細書に記載のプロセスは、オフセット印刷又は凸版印刷によって本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクを塗布して、被覆物又は層を形成するステップと、この被覆物又は層をUVランプ(280~400nm)を用いて少なくとも50mJ/cm2、好ましくは少なくとも100mJ/cm2の線量で硬化させるステップとを含む。後述するように、線量は、EIT,Inc.、U.S.A.のUVパワーパック(Power Puck)(登録商標)II放射計を使用して測定することができる。
【0057】
[057]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクから作製した被覆物又は層は、Baldwin UV Ltd.英国、IST METZ GmbH、独国、又はDr.Honle AG、独国から選択することが好ましいUV LEランプを用いてUV硬化する。
【0058】
[058]試験した光開始剤の反応性をより明確に識別し、線量の関数として反応速度を調べるために、本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクを、UV-LEランプを用いて、搬送ベルト速度を変えることによって100mJ/cm2(典型的な工業用線量)及び50mJ/cm2の2種の線量で硬化した。
【0059】
[059]本明細書に記載のプロセスは、セキュリティ文書用の基材として適する基材にセキュリティ特徴を製造するのに特に適している。好ましい一実施形態によれば、セキュリティ特徴は、後に印刷又は加工される基材の背景印刷として使用される。これは、本明細書に記載のプロセスで印刷されたセキュリティ特徴、即ち、認証目的に役立つ画像、パターン、又はグラフィック要素の上に、さらなるセキュリティ特徴又は非セキュリティ特徴が、1種又は複数のさらなる印刷又は塗布の実施において印刷又は塗布され、本明細書に記載のプロセスで印刷したセキュリティ特徴とさらなるセキュリティ又は非セキュリティ特徴とが重なり合っていることを意味する。
【0060】
[060]基材の典型的な例としては、繊維系基材、好ましくは、セルロース繊維をベースとする基材、例えば、紙、紙含有材料、ポリマー系基材、複合材料(例えば、紙層とポリマーフィルムとを積層して得られた基材)、金属又は金属化材料、ガラス、セラミック、並びにそれらの組合せが挙げられるが、それらだけに限らない。ポリマー系基材の典型的な例は、エチレン又はプロピレン系のホモ及びコポリマー、例えば、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)、ポリカルボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリエチレンテレフタレート(PET)などから作製された基材である。複合材料の典型的な例としては、前述のものなどのポリマーを含む、少なくとも1層の紙層と少なくとも1層のポリマーフィルムとの多層構造(例えば積層体)、並びにセルロース繊維と合成ポリマー繊維との混合物をベースとする紙様基材が挙げられるが、それらだけに限らない。好ましい一実施形態では、セキュリティ特徴は、オフセット用紙及び信用発行紙(fiduciary paper)から選択される基材に印刷される。オフセット用紙は、寸法安定性、耐湾曲性、高表面強度、異物のない表面、及び高レベルの耐透湿性を含めた、紙をオフセット印刷に適させる特性を有する木材パルプセルロースから製造される。通常、オフセット用紙の坪量は、30g/m2~250g/m2、好ましくは50g/m2~150g/m2である。
【0061】
[061]信用発行紙(当技術分野ではセキュリティ紙とも呼ばれる)は、リグニンを含まない綿パルプセルロースから製造される。オフセット用紙と比較して、信用発行紙のさらなる特性としては、機械耐性の増強(特に引き裂き及び磨耗に対する耐性)、汚れに対する耐性、並びに微生物(細菌、ウイルス、及び菌類)による分解に対する処理が挙げられる。信用発行紙の機械耐性は、合成繊維を紙(綿ベース)パルプに導入することによって増強することができ、防汚性能は、銀行券のセキュリティ特徴を印刷又は塗布する前に防汚ポリマー層を被覆又は印刷することによって向上させることができる。通常、殺生物剤による処理は防汚処理と組み合わされる。典型的には、信用発行紙は、50~150g/m2、好ましくは80~120g/m2の坪量を有する。
【0062】
[062]さらに、オフセット用紙の代わりに信用発行紙を使用すると、偽造防止保護の追加要素が加えられる。その理由は、信用発行紙が、セキュリティ紙の製造業者しか入手できない特殊な製紙機械で製造され、信用発行紙が偽造者に流用されるのを防止するなど、サプライチェーンが保護されているからである。
【0063】
[063]用語「セキュリティ文書」は、偽造又は違法複製が企てられる可能性が潜在的に高くなるような価値を有し、1種又は複数のセキュリティ特徴によって偽造又は不正行為から通常保護されている文書を指す。セキュリティ文書の例として、有価文書及び有価商品が挙げられるが、それらだけに限らない。有価文書の典型的な例として、銀行券、権利書、チケット、小切手、バウチャー、収入印紙及び納税ラベル、協定書及びその他同種のもの、身分証明書、例えば、パスポート、IDカード、ビザ、銀行カード、クレジットカード、トランザクションカード、入構証、セキュリティバッジ、入場券、輸送機関チケット又は権利書などが挙げられるが、それらだけに限らない。
【0064】
[064]用語「有価商品」は、特に、医薬品、化粧品、電子機器、又は食品産業のための包装材料であって、その包装の中身が例えば正真正銘の薬物であることを保証するための1種又は複数のセキュリティ特徴を含み得る包装材料を指す。これらの包装材料の例として、ブランド認証ラベル、税金票、タンパーエビデンスラベル及び封印などのラベルが挙げられるが、それらだけに限らない。本明細書に記載のセキュリティ文書は、本明細書に記載のセキュリティ特徴の下又は上に1種又は複数の追加の層又は被覆物をさらに含むことができる。例えば、基材材料、表面凹凸、又は表面不均質性のために、基材と本明細書に記載のセキュリティ特徴との間の接着が不十分である場合、当業者に既知なように、基材とセキュリティ特徴との間に追加の層、被覆物、又は下塗りを付与することができる。
【0065】
[065]セキュリティ文書の偽造及び違法複製に対するセキュリティレベル及び耐性をさらに増大させる目的で、基材は、すかし、セキュリティスレッド、繊維、プランシェット、発光化合物、ウィンドウ、箔、デカール、被覆物、及びそれらの組合せを含有することができる。
【0066】
[066]本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクが塗布されている本明細書に記載の基材は、セキュリティ文書の固有の部分からなっていてもよく、或いは本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクは、例えば、セキュリティスレッド、セキュリティストライプ、箔、デカール、又はラベルなどの補助基材に塗布され、したがって別のステップでセキュリティ文書に移される。
【0067】
[067]本明細書において、本明細書に記載の低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクを製造するための本明細書に記載の1種又は複数の光開始剤の使用であって、前記低エネルギーラジカル硬化性オフセット又は凸版印刷インクが、セキュリティ文書にセキュリティ特徴を印刷するのに適している、使用も記載する。
【実施例】
【0068】
[068]次に、本発明を非限定的な例を参照し、より詳細に説明する。以下の実施例は、低エネルギーラジカル硬化性印刷インクの調製及び本発明による光開始剤の使用及び比較データについてより詳細に示している。
【0069】
[069]照射線量を、パワーパック(登録商標)II装置を使用して決定した。照射源(LE水銀中圧ランプ)を作動させた。照射される試料を受領するように設計した照射装置のベルトにパワーパック(登録商標)II装置を設置した。様々なベルト速度において照射源でパワーパック(登録商標)を照射した。パワーパック(登録商標)IIで測定したUVA、UVB、及びUVCの線量を合計することによって線量を得た。HUVランプタイプJ(Baldwin、オゾンフリーランプJ7804045):100m/分で50mJ/cm2、50m/分で100mJ/cm2を用いて、以下の値を得た。
ラジカル硬化性試験ワニスから作製した印刷及び硬化済み層の白色度に対する光開始剤の影響
【0070】
[070]表2のラジカル硬化性白色度試験ワニスを、印刷済み試験ワニス層のUV硬化後の白色度(Berger度で表示)に対する表1に記載の試験用光開始剤の影響を評価するために調製した。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
表2のラジカル硬化性白色度試験ワニスの調製
【0071】
[071]ラジカル硬化性透明白色度試験ワニスを、光開始剤を除いて、表2に記載の成分を、混合物の温度が60~65℃に達するまで混合機IKA T ULTRA TURRAXで混合することによって別個に調製した。
【0072】
[072]光開始剤を別個に添加し、得られた混合物を別個にスピードミキサー(Speedmixer)DAC150で3分間分散させ、ローアー(Loher)ミル(荷重7.5kgで3×50回転)で粉砕し、スピードミキサーDAC150で3分間再度分散させた。
印刷及び硬化方法
【0073】
[073]ラジカル硬化性透明白色度試験ワニスを、プルフバウ(Prufbau)において800Nで基材(信用発行紙、Papierfabrik Louisenthal GmbH)に別個に印刷して、印刷層を得た。ラジカル硬化性透明白色度試験ワニスを、Hgランプ(アクティプリントミニ(Aktiprint Mini)18.2)を用いて10m/分のベルト速度で別個に硬化乾燥させて、印刷及び硬化済み試験ワニス層を形成した。各試料に関して、印刷前後の基材を秤量することによって印刷及び硬化済み試験ワニス層の正確な量を計算した。すべての試料の印刷及び硬化済み試験ワニス層の重量は、2g/m2±3%であった。
【0074】
[074]印刷及び硬化済み試験ワニス層を担持する基材を暗所に5日間維持し、その後、前記試料の白色度をDC45分光光度計で別個に測定した。基材の白色度値(3つの測定の平均値)を、印刷及び硬化済み試験ワニス層の白色度値(3つの測定の平均値)から引いた。負値が大きいほど、印刷済み及び硬化インク層の黄変がより強く示された。各試料の白色度を表4に示す。
ラジカル硬化性黒色蛍光オフセット印刷インクから作製した層の硬化効率に対する光開始剤の影響
【0075】
[075]表3のラジカル硬化性黒色蛍光オフセット印刷インクを、前記インクの硬化に対する表1の光開始剤の影響を評価するために調製した。各光開始剤の硬化性能を対圧試験により評価した。
【表5】
表3のラジカル硬化性黒色蛍光オフセット印刷インクの調製
【0076】
[076]ラジカル硬化性黒色蛍光オフセット印刷インクを、光開始剤を除いて、表3に列挙した成分を室温においてスピードミキサー(商標)(Hauschild EngineeringのDAC150SP CM31)で混合することによって別個に調製した。得られたペーストをSDY300三本ロールミルにおいて3パス(第1パスは圧力5bar、第2及び第3パスは圧力11bar)で別個に粉砕した。
【0077】
[077]光開始剤を前述のようにして得たペーストに別個に添加し、このようにして得たインクをスピードミキサー(商標)(Hauschild EngineeringのDAC150SP CM31)において2500rpmの速度で室温で3分間混合し、ローアーミル(荷重7.5kgで3×50回転)で粉砕し、スピードミキサー(商標)で3分間再度混合した。
【0078】
[078]表2のラジカル硬化性黒色蛍光オフセット印刷インクの粘度を、40℃及び1000s-1で、ハーケロトビスコRV1においてコーン2cm0.5°、線速度30秒中0~1000sec-1増加で測定し、表4に示す。
印刷及び硬化方法
【0079】
[079]プルフバウを使用して、ラジカル硬化性黒色蛍光オフセット印刷インクをガーディアン(Guardian)(登録商標)基材(Innovia)にパターン(4.5cm×23cm)として1000Nの圧力で別個に印刷した(T=22℃、相対湿度=54%)。パターンを3部に分割し、各試料を、HUVランプタイプJ(Baldwin、オゾンフリーランプJ7804045)を使用して、2種の異なる照射線量下で乾燥させて、光開始剤の硬化性能を評価した。EIT,Inc.、U.S.A.のUVパワーパック(登録商標)II放射計を用いて測定した異なる試験線量に従って硬化乾燥機のベルト速度を選択した:線量50mJ/cm2では100m/分、線量100mJ/cm2では50m/分。試験した光開始剤の異なる反応性を識別し、線量の関数として反応速度を調べるために、2種の線量を選択した。
対圧による硬化試験
【0080】
[080]各試料に関して、乾燥試験は、印刷及び硬化済みインク層を担持する1枚の基材と前記印刷及び硬化済みインク層を担持する基材上に配置したブランク信用発行紙とからなるアセンブリを形成することによって、並びにこのように形成したアセンブリに、ORMAGインタグリオプローフプレス(Intaglio Proof Press)を用いて3.4barの対圧を80℃で加えることによって行った。印刷及び硬化済みインク層を担持する基材とブランク信用発行紙とを分離し、インク転写についてブランク信用発行紙の光学濃度を確認した。
【0081】
[081]ガーディアン(登録商標)基材上の未硬化インク層と接触した後のブランク信用発行紙の対圧試験の測定光学濃度(テシコンスペクトロデンスアドバンスド(Techkon SpectroDens Advanced)、ISO5-3ステータスE、Techkon GmbH Germany)を0%硬化と定義する。信用発行ブランク紙の測定光学濃度を100%硬化と定義する(裏移りなし)。異なる照射線量における各試料の測定光学濃度を表4に示す。
【0082】
[082]表5はすべての結果の概要を示す。
【表6】
【表7】
【0083】
[078]表4及び5に示すように、光開始剤P1(E1で使用)は、白色度試験だけでなく、非常に低い照射線量(50mJ/cm2)での対圧試験においても良好な結果をもたらした。光開始剤P9(C8で使用)及びP11(C12で使用)を含むインクはそれぞれ、低い照射線量(50mJ/cm2)での硬化性能に関して良好な結果をもたらしたが、100mJ/cm2に線量を増大しても、硬化性能はE1に匹敵するレベルまで増大しなかった。さらに、光開始剤P9(C8で使用)は、白色度に関して非常に劣った性能を示した。比較例P2~P8及びP12~P15はすべて、負の黄変性能(白色度試験における大きな負値)及び/又は劣った硬化性能をもたらした。