(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】植物由来の有効成分に基づく、眼保護作用を有する組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20220509BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20220509BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220509BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220509BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220509BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220509BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20220509BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220509BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220509BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220509BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K31/7048
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61P27/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019559416
(86)(22)【出願日】2018-01-17
(86)【国際出願番号】 IB2018050277
(87)【国際公開番号】W WO2018134738
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】102017000004599
(32)【優先日】2017-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519259478
【氏名又は名称】セーフナット エス. アール. エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ボニーナ、フランセスコ パオロ
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-524439(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101199670(CN,A)
【文献】特表2014-514366(JP,A)
【文献】特開2014-118378(JP,A)
【文献】特開2012-036146(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02070545(EP,A1)
【文献】YORULMAZ, A. et al.,Phenolic profiles of Turkish olives and olive oils,European Journal of Lipid Science and Technology,2012年,Vol.114, No.9,pp.1083-1093,DOI: 10.1002/ejlt.201100186
【文献】MOSCA, Monica et al.,Ocular tissues and fluids oxidative stress in hares fed on verbascoside supplement,International Journal of Food Sciences and Nutrition,2014年,Vol.65, No.2,pp.235-240,DOI: 10.3109/09637486.2013.836742
【文献】Cyanidin-3-glucoside and its phenolic acid metabolites attenuate visible light-induced retinal degeneration in vivo via activation of Nrf2/HO-1 pathway and NF-κB supression,WANG, Yong et al.,Molecular Nutrition & Food Research,2016年03月15日,Vol.60, No.7,pp.1564-1577,DOI: 10.1002/mnfr.201501048
【文献】COUGNARD-GREGOIRE, Audrey et al.,Olive Oil Consumption and Age-Related Macular Degeneration: The Alienor Study,PLOS ONE,2016年07月28日,Vol.11, No.7,pp.1-17,DOI: 10.1037/journal.pone.0160240
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/FSTA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてのシアニジン3-O-グルコシド及びベルバスコシ
ドを、生理学的に許容されるアジュバント及び/又は添加剤と共に含
み、
前記ベルバスコシドとシアニジン-3-O-グルコシドとの相互重量比(mutual weight ratio)が、1:1~1:20の範囲にある、
網膜に影響を及ぼす視覚障害又は眼疾患の予防及び/又は治療における使用のためのニュートラシューティカル(nutraceutical)組成物又は医薬組成物。
【請求項2】
前記ベルバスコシドとシアニジン-3-O-グルコシド
との相互重量比(mutual weight ratio)が
、1:4~1:10の範囲にある、請求項1に記載のニュートラシューティカル組成物又は医薬組成物。
【請求項3】
経口溶液、経口エマルジョン、経口懸濁液、カプセル、錠剤、粉末又は顆粒の形態である、請求項1又は請求項
2に記載のニュートラシューティカル組成物又は医薬組成物。
【請求項4】
網膜に影響を及ぼす視覚障害又は眼疾患の予防及び治療において、同時に、順々に、又は別々に使用するための、シアニジン3-O-グルコシドとベルバスコシドとの組み合わせ
製品であって、前記ベルバスコシドとシアニジン-3-O-グルコシドとの相互重量比が1:1~1:20の範囲にある、前記組み合わせ製品。
【請求項5】
前記ベルバスコシドとシアニジン-3-O-グルコシド
との相互重量比が
、1:4~1:10の範囲にある、請求項
4に記載のシアニジン3-O-グルコシドとベルバスコシドとの組み合わせ
製品。
【請求項6】
前記視覚障害が、夜間視力の変化、グレアの変化及び網膜の光感度の変化からなる群から選択される、請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の組成物又は組み合わせ
製品。
【請求項7】
前記眼疾患が、黄斑症、網膜症、老化による網膜変性及びジストロフィーからなる群より選択される、請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の組成物又は組み合わせ
製品。
【請求項8】
前記眼疾患が、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症及び加齢変性黄斑症からなる群より選択される、請求項
7に記載の組成物又は組み合わせ
製品。
【請求項9】
シアニジン-3-O-グルコシドが30mg/日~500mg/日の範
囲の一日量で投与され、ベルバスコシドが10mg/日~100mg/日の範
囲の一日量で投与される、請求項1~請求項
8のいずれか一項に記載の組成物又は組み合わせ
製品。
【請求項10】
シアニジン-3-O-グルコシドが100mg/日の一日量で投与される、及び/又は、ベルバスコシドが50mg/日の一日量で投与される、請求項9に記載の組成物又は組み合わせ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシアニジン-3-O-グルコシド(cyanidin-3-O-glucoside)とベルバスコシド(verbascoside)との組み合わせ、又は前記2つの活性成分に富む(enriched)植物由来の抽出物に基づいた、視覚に対する保護作用を有するニュートラシューティカル(nutraceutical)組成物又は医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、老化による視覚障害の観点、並びに眼疾患の治療及び/又は予防において保護剤として作用するそれらの能力のために、植物起源のポリフェノール化合物に対して特に関心が持たれている。このうち、多くの研究はアントシアノシド化合物、自然界の種々の植物中に存在する着色物質(ビルベリー、マルベリー、ブラックベリー、オレンジ、黒ジャガイモ、黒トウモロコシなど)に関するものである。60年代から80年代にかけて、アントシアニンを豊富に含む食品の摂取がもたらす視力への有益な効果について、様々な科学的研究が行われた(Kalt Wet al., 2010)。
【0003】
これまでに得られた結果は、時に議論の余地があったとしても、視覚及び異なる視覚変性に関与するいくつかの分子生化学的メカニズムに対してこれらの物質がどのように作用し得るかを示した。
【0004】
Matsumoto H.らによって実施されたIn vitro試験(Matsumoto H. et al., 2003)では、異なる化学構造を有するアントシアノシド化合物が、桿体中に存在する感光性タンパク質であるロドプシンの再生において評価された(ロドプシンは、11-シス-レチナール型から11-トランス-レチナール型へ立体配座変化する際、視覚神経インパルスに関与する生化学的事象及びメディエーターのカスケードを活性化する)。Matsumoto H.らによって得られた結果から、種々のアントシアノシド化合物の中で、シアニジン-3-O-グルコシドのようなグルコシル化形態がロドプシン再生動態のより大きな増加を誘導し、暗所での視覚能力及び適応の改善をもたらすことが観察された(Nakaishi H. et al., 2000)。さらに、ceilモデルを用いて実施された多数のインビトロ研究では、網膜色素上皮細胞に対する酸化ストレスによって誘導される損傷からの、様々な食物源から得られるアントシアノシド化合物の強力な保護効果が実証されている(Wang Y. et al., 2015; Liu Y. et al., 2012; Sun M. et al., 2015)。
【0005】
実際、網膜色素上皮(RPE)は、網膜活性に必須の機能を発揮し、加齢変性黄斑症、網膜剥離又は網膜ジストロフィーなどの様々な眼疾患を引き起こし得る結果をもたらす、眼組織で産生される酸素のラジカル種によって誘発される損傷に、特に感受性でありことが知られている。
【0006】
アントシアノシド化合物、特にシアニジン-3-O-グルコシドが眼の変性の予防及び治療に及ぼす効果は、これらの化合物が別の重要な眼組織、網膜神経節細胞に及ぼす保護作用とも相関しているようである。
【0007】
Tanakaら(Tanaka J. et al., 2013)によって実施されたin vitro及びin vivo研究はシアニジン-3-O-グルコシドを含有する黒稲からのアントシアノシド抽出物での処理がツニカマイシン処理によって誘導される細胞ラジカル種の過剰産生を阻害し、カスパーゼ-3活性化プロセスの阻害によって細胞生存率を増加させ、その結果、緑内障、糖尿病性網膜症、網膜虚血などの様々な眼の病理による潜在的な細胞死が減少することを示した(Kalt W. et al., 2010)。しかしながら、文献において矛盾するデータを報告する研究がある。実際、視覚に対するアントシアノシドの効果は、用量依存的であるように思われる。
【0008】
Levy Y. & Glovinsky Y.によると、16人の健康なボランティアにおける研究においては、ブルーベリーの液果から抽出されたアントシアノシドの12mg、24mg及び36mgの用量での錠剤の投与は、薄明視又は暗所視野の中心視力の改善にいかなる効果も示さなかった。同様に、18人の健康なボランティアにおける研究において、Zadok D.らは、12mg及び24mgのブルーベリーのアントシアノシドの投与が視覚的改善をもたらさなかったことを確認した。Muth E. R.らによっても、アントシアノシド(25%で滴定した160mgのブルーベリー抽出物)の投与後のコントラスト感度と夜間視力に関する二重盲検試験で、効果の欠如が確認された。
【0009】
ベルバスコシドはフェニプロパノイドのファミリーに属するポリフェノール化合物であり、マーレインやオリーブ樹などの様々な植物種に存在し、抗炎症活性、抗酸化活性、抗菌活性、抗ウイルス活性などを有することが知られている。
【0010】
最近、この生物活性化合物の視覚に対する潜在的な保護作用を評価したのは、わずか数件のin vivo及び臨床試験のみであった。得られた結果は、この化合物が、経口投与後、組織及び眼液を天然の酸化プロセスから保護し、さらに、モルモット角膜上皮に誘導された病変の瘢痕化を局所的に促進することができることを示した(Mosca M. et al., 2014; Ambrosone L. et al., 2014)。
【発明の概要】
【0011】
本発明の著者らはこのたび、網膜上皮細胞の保護作用及び細胞生存率の増加に関して、シアニジン-3-O-グルコシドとベルバスコシドとの間の驚くべき相乗作用を同定した。
【0012】
本発明の目的は、活性成分としてのシアニジン-3-O-グルコシド及びベルバスコシド(cyanidin-3-O-glucoside and verbascoside)、又は、シアニジン-3-O-グルコシドに富む前記植物抽出物及びベルバスコシドに富む前記植物抽出物(plant extracts, each enriched in cyanidin-3-O-glucoside and verbascoside as active ingredients)を、生理学的に許容されるアジュバント及び/又は添加剤と共に含む、網膜に影響を及ぼす視覚障害又は疾患の予防及び/又は治療に使用するためのニュートラシューティカル(nutraceutical)組成物又は医薬組成物に関する。
【0013】
本発明の組成物中又は組み合わせ中に存在する2つの活性成分又はそれらに富む植物抽出物(two active ingredients or their enriched plant extracts)では、ベルバスコシド:シアニジン3-O-グルコシドの相互重量比(mutual weight ratio)が1:1~1:20の範囲、好ましくは1:4~1:10の範囲にある。
【0014】
本発明のさらなる目的は、網膜に影響を及ぼす視覚障害又は眼疾患の予防及び治療において、同時に、順々に、又は別々に使用するための、シアニジン3-O-グルコシドとベルバスコシドとの組み合わせ、又は、シアニジン-3-O-グルコシドとベルバスコシドとに富む植物抽出物に関する。
【0015】
本発明は特に、シアニジン-3-O-グルコシドとベルバスコシドとの組み合わせに関し、ここで、前記2つの活性成分又は前記2つに富む植物抽出物は、1:1~1:20の範囲、好ましくは1:4~1:10の範囲である、相互重量比を維持して、組み合わせて投与される。
【0016】
シアニジン-3-O-グルコシドに富む植物抽出物は、好ましくは黒米(Oryza sativa L.) 抽出物、赤オレンジ(Citrus Sinensis L. Osbeck)抽出物、黒マルベリー(Morus nigra L.) 抽出物、ブラックベリー(Ruulbus ulmifolius S.) 抽出物、及び黒トウモロコシ(Zea Mays L.) 抽出物、又はアントシアノシド物質を含有する別の植物源の抽出物から選択される。
【0017】
本発明によれば、黒米のハイブリッド品種を用いることもできる。
【0018】
本発明によれば、シアニジン-3-O-グルコシドに富む植物抽出物とは、2~30重量%(w/w)の範囲のシアニジン-3-O-グルコシド含有量を有する抽出物を指す。
【0019】
ベルバスコシドに富む植物抽出物はマーレイン(Verbascum L.) 抽出物、オリーブ樹(Olea europaea L.) 抽出物、又はベルバスコシドを含有する別の植物源の抽出物から選択されることが好ましいが、これらに限定されない。本発明によれば、ベルバスコシドに富む植物抽出物は、ベルバスコシド含有量が0.2~20重量部(w/w)の範囲である抽出物を指す。それぞれの植物抽出物の活性成分の濃縮(enrichment)は、好ましくはナノ限外濾過技術の手段によって、又は吸着樹脂の使用を伴って行われる。
【0020】
本発明によるベルバスコシド又はシアニジン-3-O-グルコシドに富む植物抽出物は、液体又は粉末(すなわち、乾燥又は凍結乾燥した)の形態であり得る。
【0021】
網膜に影響を及ぼす視覚障害は、夜間視力の変化、グレアの変化、網膜の光感度の変化からなる群から選択され得、一方、網膜に影響を及ぼす眼疾患は、黄斑症、網膜症、加齢による網膜変性、及びジストロフィーからなる群から選択され得る。前記眼疾患は、好ましくは色素性網膜炎、糖尿病性網膜症又は加齢変性黄斑症である。本発明による組み合わせ又は組成物は明らかに、前記眼疾患の治療のためのアジュバントとして、アドホック薬物療法に関連して使用することができる。
【0022】
前記組成物又は組み合わせは、好ましくは経口投与に適しており、さらにより好ましくは経口溶液、経口エマルジョン、経口懸濁液、カプセル、錠剤又は粉末の形態である。経口投与のために、2つの抽出物の好ましい全濃度範囲は、最終組成物の10重量%~90重量%で変動し得る。
【0023】
本発明の組成物又は組み合わせに存在する活性成分は、1回又は複数回の投与において、以下の1日投与量範囲内で経口投与することができる:
シアニジン-3-O-グルコシド:30mg/日~500mg/日、好ましくは100mg/日、ベルバスコシド:10mg/日~500mg/日、好ましくは25mg/日。
【0024】
本発明のいくつかの好ましい実施形態を、例示的であるが非限定的な目的で説明するが、その説明は添付の図面を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】シアニジン-3-O-グルコシド抽出物、ベルバスコシド抽出物を、単独、及び互いに組み合わせた存在下における、H
2O
2での処理後の、網膜色素上皮細胞の細胞生存率(MTTアッセイ)のパーセンテージに関するヒストグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を限定するものではなく例示として、本発明による組成物のいくつかの例及びそれらの使用を以下に提供する。
【0027】
実施例1:シアニジン-3-O-グルコシド及びベルバスコシドに富む抽出物の調製
シアニジン-3-O-グルコシドに富むアントシアノシド植物抽出物を得るための例示的な抽出方法を以下に記載する。
【0028】
工程a:(黒米又は黒トウモロコシからの抽出):米もしくはトウモロコシの全穀粒又は該穀粒の外表面を剥脱することによって得られる着色果皮のみを、室温で、塩酸(0.1%HCl)を用いた酸性pHで、水性溶液又は水性アルコール溶液(10~60%)で、浸軟すること。浸軟プロセスは、ソックスレー抽出システムの助けを借りて行うこともできる。
【0029】
工程b:(黒米又は黒トウモロコシからの抽出):存在する活性物質の収率を上げる(favour the recovery)ために、新しい抽出溶媒を用いて、同じ植物マトリックス上で、第2次の抽出を行うこと。
【0030】
工程c:得られた抽出物を回収し、有機溶媒が完全に除去されるまで、50~60℃以下の温度で、真空下で濃縮すること。
【0031】
ステップd:(赤オレンジ果汁、ブラックベリー果汁、マルベリー果汁、又はステップcで得られた黒米もしくは黒色トウモロコシからの抽出物):前記果汁又はステップcから得た液体生成物を限外濾過システム(最適カットオフ値10,000ダルトン)に通してアントシアノシド化合物を精製し、その後ナノ濾過システム(推奨カットオフ値200ダルトン)に通すことで濃縮すること。
【0032】
工程e:塩酸(0.1%HCl)を用いた酸性pHで、水性溶液又は水性アルコール溶液(50~90%)での溶出によって、マクロ多孔質吸着剤樹脂Amberlite XAD-7又は別の同様の吸着剤樹脂上を、工程dから得られた生成物を通過させることにより、アントシアノシド物質を単離すること。
【0033】
工程f:続いて、マルトデキストリン又は別の技術的支持体を用いて、噴霧乾燥又は凍結乾燥により乾燥すること。
【0034】
得られたアントシアノシド抽出物は、その主成分であるシアニジン-3-O-グルコシドの含有量が2~30%w/wの範囲である。
【0035】
ベルバスコシドに富むポリフェノール植物抽出物を得るための例示的な抽出方法を以下に記載する:
【0036】
工程a:(植物マトリックスからの抽出):40~60℃の温度で、水性溶液又は水性アルコール溶液(10~60%)、pH値約4~5の酸を用いて、新鮮な又は乾燥したマトリックスを浸軟すること。浸軟プロセスは、ソックスレー抽出システムの助けを借りて行うこともできる。
【0037】
工程b:存在する活性物質の収率を上げるために、新しい抽出溶媒を用いて、同じ植物マトリックス上で、第2次の抽出を行うこと。
【0038】
工程c:得られた抽出物を回収し、有機溶媒が完全に除去されるまで、50~60℃以下の温度で、真空下で濃縮すること。
【0039】
工程d:塩酸(0.1%HCl)を用いた酸性pHで、水性溶液又は水性アルコール溶液(30~70%)での溶出によって、マクロ多孔質吸着剤樹脂Amberlite XAD-7又は別の同様の吸着剤樹脂上を、得られた生成物を通過させることにより、フラボノイド化合物を精製すること。
【0040】
工程e:得られた抽出物を、有機溶媒が完全に除去されるまで、50~60℃以下の温度で真空下で濃縮し、続いて適切な技術的支持体、例えばマルトデキストリンを用いて、噴霧乾燥又は凍結乾燥により乾燥すること。
【0041】
得られたポリフェノール抽出物は、その主成分であるベルバスコシドの含有量が0.2~20%w/wの範囲である。
【0042】
実施例2:製剤例
異なる相互重量比を有するアントシアノシド抽出物(シアニジン-3-O-グルコシド)及びポリフェノール抽出物(ベルバスコシド)の組み合わせを含む、経口使用のための異なる製剤(錠剤、カプセル、粉末)が、以下に例示される。
【0043】
I)経口用製剤例
- カプセル(ベルバスコシド:シアニジン-3-0-グルコシド抽出物の比1:4)
【0044】
【0045】
調製方法
幾何学的希釈の規則に従って抽出物をラクトースと混合し、次いでカプセルの中に分配する。
【0046】
【0047】
調製方法
アントシアノシドとポリフェノール抽出物とを混合し、クエン酸及びアラビアガムで酸性化した造粒溶液を使用して、当該技術分野に従って流動床造粒を進行させる。顆粒を固化防止剤(タルク、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム)と混合し、打錠機を用いて混合物を圧縮する。シェラック及びタルクで錠剤の第1のコーティングを塗布し、続いて、変性予備ゼラチン化デンプン、グリセリン及びタルクでコーティングする。
- 経口用粉末(ベルバスコシド:シアニジン-3-0-グルコシド抽出物の比1:20)
【0048】
【0049】
調製方法
幾何学的希釈の規則に従って抽出物をマルトデキストリンと混合し、次いで小袋又はバッグの中に分配する。
【0050】
実施例3:インビトロ細胞モデルを用いた、アントシアノシド抽出物(シアニジン-3-O-グルコシド)及びポリフェノール抽出物(ベルバスコシド)の保護活性に関する研究
本研究の目的は、アントシアノシド植物抽出物(シアニジン‐3‐O‐グルコシド)及びポリフェノール抽出物(ベルバスコシド)が、網膜色素上皮細胞に対して、個々に又は互いに組み合わされて及ぼす保護作用のin vitro評価であった。
【0051】
実験プロトコルは、酸化ストレス状態にさらされた網膜上皮細胞に対して抽出物が及ぼす保護作用を評価することができるインビトロ細胞モデルの使用を提供した。
【0052】
材料及び方法
網膜色素上皮(RPE)は、下方の脈絡膜及び上方の視覚網膜細胞に強固に付着した色素細胞の層からなり、網膜の生理学的解剖学的機能状態を維持するために不可欠な種々の機能を有する。色素性網膜炎、生理学的老化プロセスによる網膜変性、黄斑症及びジストロフィーなどの様々な眼疾患は、網膜色素上皮の機能の変化に由来又は起因し得る。
【0053】
ARPE-19細胞株(ATCC CRL-2302)は、インビトロ研究モデルとして使用されるヒト網膜色素上皮(RPE)細胞の株である。
【0054】
これらの細胞を、10%(v/v)の胎児牛血清(FBS)及び1%(v/v)のペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質を添加したダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)-HAM F12中で、37℃の5%CO2雰囲気中で培養した。
【0055】
細胞生存率測定試験
RPE細胞をトリプシン処理し、血球計で計数し、MTTアッセイのためにウェル上にプレーティングし、37℃の5%CO2雰囲気中で24時間インキュベートした後、以下の表1に示すように、個々に又は組み合わせて使用される各抽出物で1時間処理した。続いて、0.3mMのH2O2を37℃で24時間添加した。
【0056】
【0057】
細胞生存率は、H2O2で処理した後、テトラゾリウム塩の比色分析によって測定した。これは、ミトコンドリアコハク酸デヒドロゲナーゼによって3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)を還元する細胞の能力を評価するものである。MTTは細胞に入り、ミトコンドリア中に進行し、そこで着色した不溶性産物であるホルマザンへと還元される。色を可視化するために、着色したホルマザン顆粒をDMSO添加によって可溶化する。MTT切断反応は細胞の完全な完全性(complete integrity)を必要とし、その代謝活性の程度に比例する。このアッセイは、37℃の5%C02中で、培地に5mg/mlで可溶化されたテトラゾリウム塩の溶液20μl及び培地180μlと共に細胞を3時間インキュベートした後、上清を除去し、マイクロプレート分光光度計(Titertek Multiscan、Flow Laboratories)を用いて570nmの波長について測定する。細胞生存率は、未処理対照区に対しての光学密度のパーセンテージとして表した。実験は、各試料について3回行った。
【0058】
結果
MTTアッセイから得られたデータでは、アントシアノシド抽出物(シアニジン-3-O-グルコシド)(C)及びポリフェノール抽出物(ベルバスコシド)(V)の両方が個々に使用される場合、ヒト網膜色素上皮(RPE)細胞の生存率を、H202での処理によって誘導される障害から保護することができることが示された(表1)。
【0059】
組み合わせて使用される両抽出物(C/V)でのRPE細胞の処理は細胞生存率の有意な増加を引き起こし、相乗効果を伴う(
図1及び表1を参照)。以下の表2は、対照区(CTRL)に対する細胞生存率%及びH
2O
2での処理に対する細胞生存率%(RPE)として表される平均細胞増殖値(MTT)を示す。
【0060】
【0061】
実施例4:健康なボランティアに関する臨床試験
本二重盲検無作為化試験では、視力、網膜感度及びコントラスト視力の改善を検証するために、精製シアニジン100mg及びバーバコサイド25mgを含有する調製物を経口投与して得られたIn vivo結果が示されている。
【0062】
患者
50人の健康なボランティアを登録し、正視(球面等価0.50ジオプトリー)である30~40歳の間の男性20人及び女性20人(平均年齢36歳)を、眼疾患がないことを以下の試験で確認して選択した。
- 前眼部及び眼底の細隙灯顕微鏡検査
- 圧平眼圧測定
- 縮瞳及び毛様体筋麻痺の回復(Refraction in miosis and cycloplegia)
- 照度400ルクスとしてSbisaコンピューター視力表で6メートルの自然視力
-照度400ルクスとしてPelli-RobsonチャートSbisaコンピューター視力表で6メートルのコントラスト視力
【0063】
患者を男性20人と女性20人の2群に分けた。20人の女性患者を、それぞれ2つの無作為化群である群A及び群Bに分けた。
【0064】
A群の20人の患者は対照として、ラクトース(不活性物質)を含有するカプセル製剤で4週間処置した。
【0065】
B群の20人の患者は、シアニジン-3-O-グルコシド(100mg)及びベルバスコシド(25mg)を含有するカプセル製剤で4週間処置された。
【0066】
材料及び方法
2群の患者を3群の検査に供した。
1) 視力検査。処置前後の自然視力及びコントラスト視力を評価し、ありうる視力の変化を評価する。
2) 視覚的ストレスに対する耐性の試験。グレア時間及びグレア後回復時間を測定し、視覚ストレスに対する網膜の適応能力を評価する。
3) 網膜感度試験。白色及び青色-黄色刺激により中心視野を検査する。
【0067】
視覚ストレス耐性試験
光ストレス後の視力を評価するために、患者は、保健省によって運転免許証の発行用に提供されるグレア試験及びグレア後回復試験を受けた。
【0068】
以下の試験を、本発明による組成物の管理ストレーションの4週間前後に行った:
- 標準化Sbisa視力表によるグレアテスト
- 標準化Sbisa視力表を用いたグレア後の回復試験。
【0069】
視力試験は、標準化コンピューターSbisa視力表を用い、スクリーンから50cmで、照度400ルクスとして、Snellen Chartを用いて、6メートルの距離で行った。
【0070】
標準化Sbisa視力表を用いたグレア試験
900ルーメン光を放射する2つのランプ(2つの20ワットランプで得られる)を視力表の側面に配置して、50センチメートルで測定される400~500ルクス視力表の照明に照明を追加する。
【0071】
2つのランプのスイッチを入れた後、被験者は、両眼視において、1/10以降に存在する文字の少なくとも50%を認識するように求められる。
【0072】
標準化Sbisa視力表を用いたグレア後回復試験
試験を実施するために、以下のものを使用した:300ルクスの照度を用いた50センチメートルでのSbisaコンピューター検眼法。光源は、ルクスメータセンサ(すなわち、適当なライトペン)に対して直交位置にあるとき、20cmで200ルクスの照度を生成する。
【0073】
検査は、屈折異常の矯正がありうる条件で2つの眼について単眼で行われ、最良の結果が評価にて考慮される。最大1分間暗所に適応させた後、1つの眼を覆い、光源を対側の眼から3cmの位置に10秒間置き、被験者にそれを見つめるように促す。ハイビーム源が取り除かれると、ライトが再びオンにされ、被験者は、最大30秒の時間内に4/10に対応するラインを即座に読み取るように求められ、確立された時間内に文字の50%が認識された場合、ラインは読み取られたとみなされる。相対ラインが提供された最大時間内に読み取られない場合、この手順は、他方の目に対して同様に繰り返される。
【0074】
30秒を超えない時間内で最良の結果を達成した眼を考慮する(保健省の特定ライセンス群2)。表Bはストップウォッチで測定された4/10に対応するラインを読み取るのに必要な、試験の開始から秒で表されている時間を示している。
【0075】
網膜感度試験
処置の4週間前後のありうる網膜感度の変化を評価するために、以下の視野試験も行った(Octopus 311 TOP G32 strategy、中心30度)。
- 白色光視野
- 青色-黄色視野
【0076】
両タイプの視野において、MS(平均感度)のみが分析された。これは、視野の種々の点において測定された感度値と、年齢について補正された正常値との間の差の算術平均である。
【0077】
白色及び青色-黄色刺激に対する光受容体の異なる応答を評価するために、両方の視野を実施することを決定した。青色-黄色視野計の使用は、青色に特異的なS錐体が緑内障において早期に影響を受けるものであることを多くの研究が示しているという事実に由来する。実際に、白色光は全ての円錐の応答を飽和させ、単一の円錐システムの応答における欠陥は他のもの欠陥によって補償することができる。青色-黄色視野は逆に、独立して15dBを提供し、従って、青色-黄色神経節系は他の細胞型が青色刺激に応答して介入するまで、必ず15dBの感度を失う。
【0078】
この方法を使用して、光受容体の発光メッセージを支持し増幅するために、網膜神経節細胞の活性の可能な増加を評価することが可能である。
【0079】
視野検査方法
試験は本発明による組成物の投与前及び処置の4週間後に、Octopus 311を用いて実施した。試験は、暗所で5分間順応させた後に行った。偽陽性を避けるために、最初の白色光試験を2回繰り返し、2回目の視野の網膜感度指数のみを考慮した。続いて、通常光の中での30分間の休止期間及び5分間の暗所での新たな順応の後、網膜神経節細胞の機能性を試験するために普遍的に使用されている青色-黄色視野を行った。この場合も、10分間隔で2回検査を行い、2回目の検査で得られた網膜感度指数を用いた。
【0080】
4週間の処置の終わりに、全患者(A群及びB群)の前眼部及び眼底を、細隙灯を用いて再検査し、起こり得る疾患又は副作用の発症を確認した。
【0081】
結果
得られた結果を以下の表にまとめる。
プラセボを投与したA群の患者を、本発明の組成物で4週間処置したB群の患者と比較した。
結果は、投与の月末に評価した。投与の数週間の間、プラセボ群又は本発明の組成物で処置したB群のいずれにおいても、一般的副作用や視覚上の副作用は観察されなかった。全ての患者が処置の月を完了した。
【0082】
表3は、処置前及び処置後の自然視力及びコントラスト視力の変化をまとめたものである。
【0083】
表4は、処置前後のグレア試験及びグレア試験後の回復で測定された視覚ストレス耐性データをまとめたものである。
【0084】
表5は、処置前後の網膜感度の変化を示す。
【0085】
3つの表では、4週間プラセボを服用した患者のA群で得られた結果が常に並置されている。
【0086】
統計解析
2群で得られた結果を、標準偏差及びスチューデントTで統計的に分析した。
【0087】
【0088】
視力試験は実質的に、本発明による組成物での処置が、視力の改善が10分の10(1.0)未満において起こり得ることがこの研究では除外されないとしても、中心視力を10分の10を超えて改善するものではないことを示した。一方、コントラスト視力は、処置の4週間後に、処置前の測定値に対して改善する。
【0089】
【0090】
グレア試験及びグレア後回復試験では、本発明の組成物で処置したB群が対照区A群よりも視力の回復率が高いことが示されている。
【0091】
【0092】
白色光及び青色-黄色光の視野の両方において、本発明の組成物で処置したB群は、対照区A群に対して網膜感度(MS =平均感度)が改善していた。
【0093】
統計
結論として、視覚検査は、完全に健康で10分の10の正常な視力を有する被験者のサンプルから始まり、コントラスト視力において改善を示した。コントラスト視力が最良に知覚されていることは、網膜感度閾値の改善の明確な指標である。処置された被験者は、プラセボで処置された被験者よりも高いコントラスト色調を知覚することができる。
【0094】
グレア及びグレア試験後の回復は、光ストレスに耐える網膜能力が、シアニジン及びベルバスコシドでの処置後に有意に改善することを示した。この改善は、本発明による組成物で処置した後のロドプシンのより高い再生速度によって説明される。
【0095】
網膜感度試験は、網膜神経節細胞のより良好な機能のおかげで、桿体の青色-黄色感度の改善を示した。このデータは、コントラスト視力の改善と共に考慮されるべきである。
【0096】
両方の場合において、この効果は主に、桿体のシグナルを増幅して青色-黄色光感度を増し、錐体の感度を改善してコントラスト視力を増加させる、網膜神経節細胞の活性の増加に起因する。
【0097】
実施例5:眼疾患患者を対象とした臨床試験
黄斑浮腫は、黄斑毛細血管の透過性の変化による多因子性疾患である。血管損傷は、糖尿病、腎不全及び血液障害のような全身性疾患に起因し得る。
【0098】
一般に、すべての湿性黄斑変性は、特に網膜色素上皮及びブルッフ層の損傷が起こる場合に、黄斑浮腫を伴い、これは、網膜色素上皮と、毛細血管絨毛膜と呼ばれる層を覆う網膜層とを、解剖学的に分離する。この血管層はブルック層の保護がない場合、網膜層の内側に血液を広げ、視力が著しく低下するまで、網膜層を切り裂き、各層を互いから分離させる。
【0099】
眼疾患では、糖尿病又は高血圧による血管損傷が血管の透過化の増加を引き起こし、その結果、血管壁からの血漿の漏出を引き起こす。
【0100】
この異常は、眼科において網膜の蛍光血管造影で容易に見ることができる。この検査では、造影剤(フルオレセイン)の注入後に網膜血液循環が撮影される。
【0101】
血管壁への損傷は、血圧せいで微小動脈瘤を作り出すことによって低減される毛細血管構造の弱体化を伴い続ける。
【0102】
糖尿病性網膜症では、他の血管変化が生じる初期及び後期の両方において、滲出液及び微小動脈瘤が常に存在する。
【0103】
本研究では、シアニジン単独及びマーレインとの併用について、以下の眼疾患における抗炎症活性、抗浮腫活性、メタロプロテナーゼ阻害と共に、毛細血管保護活性を評価した。
- 黄斑浮腫
- 糖尿病性網膜症
- 乾性黄斑変性
- 湿性黄斑変性
【0104】
材料及び方法
同年齢の50人の患者4群について、無作為化二重盲検試験を実施した。
【0105】
シアニジンとシアニジン-マーレインの組み合わせとの有効性を評価するために、他の眼疾患及び全身血管疾患のない自発的患者を登録した。
【0106】
血管薬理学的相互作用を回避するために、160人の患者には、少なくとも3ヶ月間、血管保護剤又は抗血小板薬での処置がなされなかった。糖尿病患者は全て、少なくとも3ヶ月間、経口血糖降下剤で処置され、空腹時血糖200mg/dl以下とされた。
【0107】
患者群
40人の患者からなる4つのグループを、それぞれ以下のように分割した:
A群:多因子性黄斑浮腫:以下の疾患により、6ヶ月以上前に診断された慢性黄斑浮腫に罹患している、平均年齢58.2歳(男性15人及び女性25人):
術後黄斑浮腫患者10例
糖尿病性網膜症による黄斑浮腫患者20例
網膜静脈閉塞による黄斑浮腫10例
B群:非増殖性糖尿病網膜症患者40例:平均年齢59.9歳(男性17例、女性23例)
C群:乾燥黄斑変性症患者40例:65.2歳(男性20例、女性20例)
D群:湿性黄斑変性症患者40例:平均年齢65.4歳(男性18例、女性22例)
【0108】
患者は、病理学及び診断のために予め選択され、以下の眼の検査を受けた:
-細隙灯顕微鏡検査(CSO)
- OCT (OCT-SLO Optos)
-蛍光血管造影(Kowa SW50度)
- 自然視力及び矯正視力の検査(標準化コンピューターSbisa視力表)
【0109】
プロトコル
検査者及び患者には知られずに、40人の患者の各群を
・添加剤のみを含有するプラセボ錠剤で処置された20人の患者と、
・シアニジン-マーレイン錠(シアニジン400mg、ベルバスコシド100mgを2錠 に分配。すなわち、1錠はシアニジン200mg、ベルバスコシド50mgを含む)で処置された20人の患者と、に分けた。
【0110】
1錠を昼食用に、1錠を夕食用に、3ヶ月間連続的に与えた。処置の正確な実施を確実にするために、患者は7日おきに電話で定期的に連絡を受けた。
【0111】
以下の臨床パラメータを4群で評価した。
- 0.1~1.0の小数で測定される視力を有する最良の矯正視力(BSCA:best correct visual acuity)
- OCT黄斑トポグラフィーによる黄斑網膜浮腫(SM)の最大厚
- 眼底変異(OCT及びフルランジオグラフィー(flurangiography))。
【0112】
この評価は、処置前及び処置終了時にOCT及びフルランジオグラフィーを比較することによって行った。
【0113】
可能な変動は、ポジティブな意味である1~5の主観的スケール(+符号)及びネガティブな意味である1~5のスケール(符号)で評価された。視力の傾向だけでなく、処置前後の網膜の外観も評価した。
【0114】
特に、糖尿病性網膜症患者群において、網膜滲出液及び微小動脈瘤の数及びサイズにおいてありうる減少ならびに毛細血管脆弱性からの網膜内微小出血が観察され、評価され、最後に、蛍光血管造影で、フルオレセインの注射及び任意の毛細血管切断の3分後の網膜血管からの色素の拡散、増殖性網膜症を誘発する網膜虚血の兆候が評価された。
【0115】
統計解析
処置群の結果をプラセボ群と比較し、処置前後のBCVA(最良の矯正視力)値及び黄斑厚(SM)のΔを比較した。
【0116】
各群(プラセボ及び処置)の処置前及び処置後の差から得られたデルタを、標準偏差及びスチューデントTで統計的に分析した。
【0117】
結果
以下の表6及び表7に示される結果は、プラセボ群と比較しての、処置群Aにおける黄斑浮腫の改善におけるシアニジン+ベルバスコシドの組み合わせの明確な活性を示す。
【0118】
【0119】
【0120】
毛細血管保護の作用及び毛細血管の基底膜の修復は、マーレインの抗炎症作用及び抗浮腫作用と共にシアニジンに特徴的であり、浮腫の減少を正当化する。視力の改善はまた、ロドプシンサイクルの加速を通して網膜光受容体の代謝を促進する、シアニジンのさらなる作用によっても正当化される。シアニジン-マーレインの組み合わせで処置された群とプラセボとの間の比較結果は、2つの物質の組み合わせの明らかな有効性を示す。
【0121】
データ統計解析
A群で得られたデータの統計解析は、処置前後で得られたBCVA及びMSのデータの間に有意差を示し(p<0.05)、これはプラセボでは観察されない状態である。さらに、処置群におけるデルタBCVA及びデルタMSとして表されるBCVA及びMSの変動は、非処置群(プラセボ)で得られたものと有意に異なる(p<0.05)。
【0122】
以下の表8及び表9に示される結果は、プラセボ群と比較しての、処置群Bにおける非増殖性糖尿病網膜症の改善におけるシアニジン+ベルバスコシドの組み合わせの明確な活性を示す。
【0123】
【0124】
【0125】
この改善は、処置の前後で、視力の向上、並びに滲出液、微小出血及び微小動脈瘤の数の減少の両方として知覚される。実際に、シアニジンにより得られる血管透過性が減少すると、毛細血管を通る血漿の拡散に起因する滲出物の形成が減少し、また、ベルバスコシドとの相乗作用により、糖尿病性網膜症に典型的な網膜浮腫が減少する。視力の改善に加えて、シアニジン及びベルバスコシドの作用は、検査者の判断に基づいて行われた統計分析によって確認された網膜症の枠組みにおける全体的な改善を引き起こす。また、この群において、プラセボに供されたサンプルは有意な改善を示さず、むしろ、網膜症の進行により、視力が低下した(負のデルタ値の)症例が存在した。統計データは、処置群において、BVCA及びMS値が処置後にどのように有意に改善されるか(処置後対処置前、p<0.05)を示しており、この改善は、プラセボで観察されたもの(処置群のデルタBCVA及びデルタMVに対しての、プラセボ群のデルタBCVA及びデルタMS、p<0.05)と有意に異なる。
【0126】
表10及び表11に示される結果は、プラセボに比しての、処置群Cにおける乾燥黄斑変性の改善におけるシアニジン+ベルバスコシドの組み合わせの明確な活性を示す。
【0127】
この網膜疾患は現在、西洋世界で視力低下の最も頻繁な原因を代表しており、現在のところ部分的に解明されていない一連の作用メカニズムによって引き起こされる。
【0128】
シアニジン+ベルバスコシドの併用により3ヶ月で得られた視力の改善は、おそらく網膜光受容体の代謝の改善によるものであろう。しかし、ベルバスコシドで実証された強力な毛細血管保護及び網膜増殖因子(抗VEGF)の阻害は確かに、この障害を引き起こす眼疾患の長期治療において有益な役割を果たす。
【0129】
【0130】
【0131】
処置群はBCVA値及びSM値が初期値(処置前)に比して有意に変動していることを示し、プラセボ(デルタBCVA値及びデルタMS値)に比して処置前後で優れた改善があることを統計的に有意な形で示す。以下の表12及び表13に示される結果は、黄斑変性の最も重症の形態である滲出型の改善におけるシアニジン+ベルバスコシドの組み合わせの明確な活性を示す。
【0132】
滲出型は、黄斑変性に罹患している患者の約25%に見出すことができる。滲出型に典型的な新しい網膜下血管の形成は繊細な黄斑網膜構造の完全な破壊を引き起こし、網膜光受容体の破壊プロセスを加速する。
【0133】
【0134】
【0135】
データの統計解析
データの統計分析では、BCVA及びSMパラメータについて、処置の前後でプラセボ群において有意な改善が観察されないところ、懸案の組み合わせで処置された群においては処置前後で有意に異なる変動が得られる(p<0.05)ことを示す。また、この場合、実際に、処置群で得られたBCVAデルタ及びSMデルタの値は、プラセボで得られた値と有意に異なることが証明された(p<0.05)。
【0136】
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