(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】二重特異性抗体およびその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220509BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220509BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20220509BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/46 ZNA
C07K16/30
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2020540284
(86)(22)【出願日】2019-01-07
(86)【国際出願番号】 CN2019070655
(87)【国際公開番号】W WO2019184549
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-07-17
(31)【優先権主張番号】201810263832.0
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520262652
【氏名又は名称】▲広▼州▲愛▼思▲邁▼生物医▲薬▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼文▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼翠娟
(72)【発明者】
【氏名】▲韋▼雪梅
(72)【発明者】
【氏名】▲羅▼▲トウ▼▲暉▼
【審査官】中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104829728(CN,A)
【文献】特表2014-514287(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0015615(KR,A)
【文献】特表2014-517844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K1/00-19/00
C12N15/00-15/90
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号21の重鎖可変領域(VH)配列と、配列番号22の軽鎖可変領域(VL)配列とを有するCD3に結合する抗原結合領域を含む、抗体または抗体断片。
【請求項2】
配列番号9に示される重鎖配列と、配列番号11に示される軽鎖配列とを含む、請求項1に記載の抗体または抗体断片。
【請求項3】
前記の抗体は、二重特異性抗体または多重特異性抗体である、請求項1または請求項2に記載の抗体または抗体断片。
【請求項4】
腫瘍抗原標的に結合する別の抗原結合領域をさらに含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片。
【請求項5】
前記の腫瘍抗原標的はHER2である、請求項4に記載の抗体または抗体断片。
【請求項6】
前記の抗体は、Her2-OB1(配列番号1)、Her2-OB2(配列番号3)、Her2-OB3(配列番号5)、およびHer2-OB4(配列番号7)からなる群から選択される重鎖配列を含む、請求項5に記載の抗体または抗体断片。
【請求項7】
前記の抗体は、Her2-OB4(配列番号7)の重鎖配列を含む、請求項6に記載の抗体または抗体断片。
【請求項8】
前記の抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、Fd断片、Fd’断片、Fv断片、dAb断片、F(ab’)2断片およびscFv断片からなる群から選択される、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片。
【請求項9】
2つの重鎖および1つの軽鎖を有する二重特異性抗体であって、第1重鎖は、N末端からC末端へとscFv-ヒンジ領域-Fcを有し;第2重鎖は、N末端からC末端へとVH-CH1-ヒンジ領域-Fcを有し;前記の軽鎖は、N末端からC末端へとVL-CLを有し、前記の第1重鎖のscFvの抗原結合ドメインは腫瘍抗原標的に結合し、前記の第2重鎖のVH-CH1は、前記の軽鎖のVL-CLと共に、免疫エフェクター細胞の表面にあるシグナル伝達経路受容体に結合する別の抗原結合領域を形成し、前記の第2重鎖のVHは配列番号21の配列を有し、前記の軽鎖のVLは配列番号22の配列を有する、二重特異性抗体。
【請求項10】
前記の第2重鎖は配列番号9の配列を有し、前記の軽鎖は配列番号11の配列を有する、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
前記の第1重鎖のscFvは、N末端からC末端へとCh4D5モノクローナル抗体のVH領域、リンカーペプチド[(GGGGS)×N、N=3、4、5]、およびCh4D5モノクローナル抗体のVL領域を有し、または、N末端からC末端へとCh4D5モノクローナル抗体のVL領域、リンカーペプチド[(GGGGS)×N、N=3、4、5]、およびCh4D5モノクローナル抗体のVH領域を有する、請求項9または請求項10に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
前記の第1重鎖は、Her2-OB1(配列番号1)、Her2-OB2(配列番号3)、Her2-OB3(配列番号5)、およびHer2-OB4(配列番号7)からなる群から選択される配列を有する、請求項9
または請求項10に記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
前記の第1重鎖はHer2-OB4(配列番号7)の配列を有する、請求項9
または請求項10に記載の二重特異性抗体。
【請求項14】
SP34マウス由来モノクローナル抗体におけるCD3分子結合領域と比較して、前記の二重特異性抗体におけるCD3分子結合領域の熱変性温度は高い、請求項9~請求項13のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項15】
前記の第1重鎖、第2重鎖および軽鎖のうち少なくとも1つは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来する、請求項9~請求項14のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に抗体および癌の治療方法に関する。具体的に、本発明は、CD3および腫瘍抗原標的(例えば、HER2)と標的とする二重特異性抗体、前記の抗体の調製方法およびその使用に関する。さらに、本発明は、前記の抗体を含む組成物および前記の抗体を用いて癌を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界中の悪性腫瘍の罹患率および死亡率は年々増加しており、そのうえ、若年化の傾向もある。市場には多くの抗腫瘍薬があるが、腫瘍の治癒が難しいだけでなく、多くの副作用も有するため、患者の予後および生活の質に深刻な影響を与える。したがって、腫瘍細胞に特異的な殺傷効果が強く、正常細胞に与える影響が小さい抗腫瘍薬の開発は、次世代の新薬開発のホットスポットとなった。
【0003】
抗腫瘍薬は、化学医薬品とバイオ医薬品に分けられる。化学医薬品には、アルキル化剤、代謝拮抗剤などが含まれ、バイオ医薬品には、モノクローナル抗体、抗体薬物複合体、および二重特異性抗体などが含まれる。その中で、二重特異性抗体は、人工的に設計された抗体であり、2つの異なる抗原結合部位の成分で構成され、2つの異なる抗原結合部位と同時に結合することができる。このような特別な機能によって、腫瘍の免疫療法において幅広い応用があると考えられる。
【発明の概要】
【0004】
一態様において、本発明は、GXP2の重鎖可変領域(VH)配列(配列番号21)およびGXP2の軽鎖可変領域(VL)配列(配列番号22)を有する、CD3に結合する抗原結合領域を含む抗体または抗体断片に関する。
【0005】
一部の実施形態において、前記の抗体または抗体断片は、配列番号9に示される重鎖配列および配列番号11に示される軽鎖配列を含む。
【0006】
一部の実施形態において、前記の抗体は、二重特異性抗体または多重特異性抗体である。
【0007】
一部の実施形態において、前記の抗体または抗体断片は、腫瘍抗原標的に対する別の抗原結合領域をさらに含む。一部の実施形態において、前記の腫瘍抗原標的はHER2である。
【0008】
一部の実施形態において、前記の抗体または抗体断片は、Her2-OB1(配列番号1)、Her2-OB2(配列番号3)、Her2-OB3(配列番号5)、およびHer2-OB4(配列番号7)からなる群から選択される重鎖配列を含み、好ましくは、前記の抗体または抗体断片は、Her2-OB4(配列番号7)の重鎖配列を含む。
【0009】
一部の実施形態において、前記の抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、Fd断片、Fd’断片、Fv断片、dAb断片、F(ab’)2断片およびscFv断片からなる群から選択される。
【0010】
一態様において、本発明は、2つの重鎖および1つの軽鎖を有する二重特異性抗体に関する。ここで、第1重鎖は、N末端からC末端までscFv-ヒンジ領域-Fcを有し;第2重鎖は、N末端からC末端までVH-CH1-ヒンジ領域-Fcを有し;前記の軽鎖は、N末端からC末端までVL-CLを有する。前記の第1重鎖のscFvの抗原結合ドメインは腫瘍抗原標的に結合する。前記の第2重鎖のVH-CH1は、前記の軽鎖のVL-CLと共に、免疫エフェクター細胞の表面にあるシグナル伝達経路受容体に結合する別の抗原結合領域を形成する。
【0011】
前記の二重特異性抗体の一部の実施形態において、前記の腫瘍抗原標的はHER2であり、前記のシグナル伝達経路受容体はCD3である。
【0012】
前記の二重特異性抗体の一部の実施形態において、前記の第2重鎖のVHは配列番号21の配列を有し、前記の軽鎖のVLは配列番号22の配列を有する。
【0013】
前記の二重特異性抗体の一部の実施形態において、前記の第2重鎖はGXP2-VH-OA(配列番号9)の配列を有し、前記の軽鎖はGXP2-VL(配列番号11)の配列を有する。
【0014】
前記の二重特異性抗体の一部の実施形態において、前記の第1重鎖のscFvは、N末端からC末端までCh4D5モノクローナル抗体のVH領域、リンカーペプチド[(GGGGS)×N、N=3、4、5]、およびCh4D5モノクローナル抗体のVL領域を有し、または、N末端からC末端までCh4D5モノクローナル抗体のVL領域、リンカーペプチド[(GGGGS)×N、N=3、4、5]、およびCh4D5モノクローナル抗体のVH領域を有する。
【0015】
前記の二重特異性抗体の一部の実施形態において、前記の第1重鎖は、Her-OB1(配列番号1)、Her-OB2(配列番号3)、Her-OB3(配列番号5)およびHer-OB4(配列番号7)からなる群から選択される配列を有する。好ましくは、前記の第1重鎖はHer-OB4(配列番号7)の配列を有する。
【0016】
前記の二重特異性抗体の任意の実施形態において、前記の第2重鎖のCH2は、L234A、L235Aの変異を含んでも良い。一部の実施形態において、前記の第1重鎖のCH2は、L234A、L235Aの変異を含んでも良い。
【0017】
前記の二重特異性抗体の任意の実施形態において、前記の第2重鎖のCH3は、T394D、P395D、P396Dの変異を含んでも良く、且つ前記の第1重鎖のCH3は、P395K、P396K、V397Kの変異を含んでも良く;または、前記の第2重鎖のCH3は、P395K、P396K、V397Kの変異を含んでも良く、且つ前記の第1重鎖のCH3は、T394D、P395D、P396Dの変異を含んでも良い。
【0018】
一部の実施形態において、本発明の二重特異性抗体の第1重鎖および第2重鎖からなるキメラFc領域は、対応する抗体の野生型Fc領域と比較して、Fc受容体への結合が低下する。
【0019】
一部の実施形態において、マウス由来モノクローナル抗体と比較して、本発明の二重特異性抗体がCD3分子に結合したものの熱変性温度は高くなる。一部の実施形態において、そのCD3に結合したものの熱変性温度の上昇は、ΔTが少なくとも5℃上昇することを示す。一部の実施形態において、そのCD3に結合したものの熱変性温度の上昇は、ΔTが少なくとも10℃上昇することを示す。一部の実施形態において、そのCD3に結合したものの熱変性温度の上昇は、ΔTが少なくとも12℃上昇することを示す。一部の実施形態において、そのCD3に結合したものの熱変性温度の上昇は、ΔTが少なくとも5~15℃上昇することを示す。一部の実施形態において、そのCD3に結合したものの熱変性温度の上昇は、ΔTが少なくとも10~15℃上昇することを示す。
【0020】
一部の実施形態において、本発明の二重特異性抗体は腫瘍殺傷活性を有する。一部の実施形態において、前記の腫瘍は、HER2陽性腫瘍である。一部の実施形態において、前記の腫瘍は、乳癌、胃癌、卵巣癌、前立腺癌、および肺癌から選択される腫瘍である。一部の実施形態において、腫瘍殺傷活性は、インビトロ腫瘍殺傷試験で試験される。一部の実施形態において、腫瘍殺傷活性は、マウスにおけるインビボ腫瘍モデルで試験される。
【0021】
前記の二重特異性抗体の任意の実施形態において、前記の第1重鎖、第2重鎖および/または軽鎖は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に由来する。一部の実施形態において、前記の第1重鎖、第2重鎖および/または軽鎖は、IgG1に由来する。
【0022】
別の態様において、本発明は、本発明の二重特異性抗体の第1重鎖、第2重鎖および/または軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の核酸分子を含むベクターをコードすることに関する。
【0024】
一態様において、本発明は、本発明の核酸分子を含む宿主細胞に関する。一部の実施形態において、前記の宿主細胞は、293F細胞およびCHO細胞から選択される。
【0025】
別の態様において、本発明は、本発明の抗体または抗体断片、或いは二重特異性抗体、および前記の抗体または抗体断片、或いは二重特異性抗体にコンジュゲートされた部分を含む抗体複合体(drug conjugate)に関する。一部の実施形態において、前記のコンジュゲートされた部分は、細胞毒素、放射性同位元素、蛍光標識物質、発光物質、発色物質、および酵素から選択される。
【0026】
一部の実施形態において、本発明の抗体または抗体断片、或いは二重特異性抗体にコンジュゲートして抗体複合体を形成する部分は、細胞毒素である。一部の実施形態において、前記の細胞毒素は、コルヒチン、エムタンシン(emtansine)、メイタンシノイド(maytansinoid)、オーリスタチン(auristatin)、ビンデシン(vindesine)、チューブリシン(tubulysin)などからなる群から選択される。
【0027】
一部の実施形態において、本発明の抗体または抗体断片、或いは二重特異性抗体にコンジュゲートして抗体複合体を形成する部分は、放射性同位元素である。一部の実施形態において、前記の放射性同位元素は、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32などの放射性同位体からなる群から選択される。
【0028】
一部の実施形態において、本発明の抗体または抗体断片、或いは二重特異性抗体にコンジュゲートして抗体複合体を形成する部分は、例えば、FITC、luciferase、HRPなどのような蛍光標識物質、発光物質、および発色物質から選択される。
【0029】
一部の実施形態において、本発明の抗体または抗体断片、或いは二重特異性抗体にコンジュゲートして抗体複合体を形成する部分は、例えば、細菌、真菌、植物または動物由来の酵素活性毒素などの酵素(その活性断片および/またはバリアントを含む)である。
【0030】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の抗体または抗体断片、二重特異性抗体または抗体複合体と、必要におじて薬学的に許容される担体、界面活性剤および/または希釈剤とを含む医薬組成物に関する。
【0031】
一部の実施形態において、本発明の抗体または抗体断片、二重特異性抗体または抗体複合体に加えて、前記の医薬組成物は、1つまたは複数の他の治療薬をさらに含む。一部の実施形態において、前記の他の治療剤は、オプジーボ(Opdivo)、キイトルーダ(Keytruda)、テセントリク(Tecentriq)、イミフィンジ(Imfinzi)、ヤーボイ(Yervoy)などの他の腫瘍免疫薬からなる群から選択される。
【0032】
一態様において、本発明は、疾患の治療のための医薬品の調製における、本発明の抗体または抗体断片、二重特異性抗体、抗体複合体または医薬組成物の使用に関する。一部の実施形態において、前記の疾患は癌であり、好ましくはHER2陽性の癌である。
【0033】
一部の実施形態において、前記の癌症は、乳癌、胃癌、卵巣癌、前列腺癌、肺癌からなる群から選択される。
【0034】
別の態様において、本発明は、HER2陽性の癌を治療するための本発明の抗体または抗体断片、二重特異性抗体、抗体複合体または医薬組成物に関する。
【0035】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の抗体または抗体断片、二重特異性抗体、抗体複合体または医薬組成物を被験者に投与する工程を含む、疾患の治療方法に関する。
【0036】
一部の実施形態において、前記の疾患は癌であり、好ましくはHER2陽性の癌である。一部の実施形態において、前記の癌は、乳癌、胃癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌からなる群から選択される。
【0037】
一態様において、本発明は、配列番号21のアミノ酸配列を有するポリペプチドに関する。別の態様において、本発明は、配列番号22のアミノ酸配列を有するポリペプチドに関する。
【0038】
一態様において、本発明は、配列番号9のアミノ酸配列を有するポリペプチドに関する。別の態様において、本発明は、配列番号11のアミノ酸配列を有するポリペプチドに関する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、本発明の二重特異性抗体の分子構造の模式図である。
【
図2】
図2A~2Bは、プロテインAで精製した二重特異性抗体のSDS-PAGE電気泳動図である。
図2Aは、非還元SDS-PAGE電気泳動図であり、
図2Bは還元SDS-PAGE電気泳動図である。ここで、Mはタンパク質分子量マーカーであり、レーン2~7は異なるコレクションチューブ内の二重特異性抗体サンプルである。
【
図3】
図3は、二重特異性抗体HER2×GXP2、HER2×GXP、HER2×C31、および対照hIgGのヒトCD3抗原に対する結合活性のELISA検出結果である。
【
図4】
図4は、二重特異性抗体HER2×GXP2、HER2×GXP、HER2×C31、および対照hIgGのヒトHER2抗原に対する結合活性のELISA検出結果である。
【
図5】
図5は、異なる温度で30分間処理した後の、二重特異性抗体HER2×GXP2、HER2×GXP、およびHER2×C31のヒトCD3抗原に対する結合活性のELISA検出結果である。これは、異なる温度での二重特異性抗体の熱安定性を反映している。
【
図6A】
図6A~6Dは、37℃および40℃のインキュベーターに異なる日で置いて後、非還元および還元SDS-PAGEによって二重特異性抗体の安定性および分解を検出した結果である。
図6A:37℃、非還元SDS-PAGE;
図6B:37℃、還元SDS-PAGE;
図6C:40℃、非還元SDS-PAGE;
図6D:40℃、還元SDS-PAGE。
【
図6B】
図6A~6Dは、37℃および40℃のインキュベーターに異なる日で置いて後、非還元および還元SDS-PAGEによって二重特異性抗体の安定性および分解を検出した結果である。
図6A:37℃、非還元SDS-PAGE;
図6B:37℃、還元SDS-PAGE;
図6C:40℃、非還元SDS-PAGE;
図6D:40℃、還元SDS-PAGE。
【
図6C】
図6A~6Dは、37℃および40℃のインキュベーターに異なる日で置いて後、非還元および還元SDS-PAGEによって二重特異性抗体の安定性および分解を検出した結果である。
図6A:37℃、非還元SDS-PAGE;
図6B:37℃、還元SDS-PAGE;
図6C:40℃、非還元SDS-PAGE;
図6D:40℃、還元SDS-PAGE。
【
図6D】
図6A~6Dは、37℃および40℃のインキュベーターに異なる日で置いて後、非還元および還元SDS-PAGEによって二重特異性抗体の安定性および分解を検出した結果である。
図6A:37℃、非還元SDS-PAGE;
図6B:37℃、還元SDS-PAGE;
図6C:40℃、非還元SDS-PAGE;
図6D:40℃、還元SDS-PAGE。
【
図7】
図7A~7Cは、SDS-PAGEとELISAによる、凍結および解凍を繰り返した二重特異性抗体の安定性実験の結果である。
図7A:非還元および還元SDS-PAGEの結果;
図7B:CD3 ELISA結果;
図7C:HER2 ELISA結果。
【
図8】
図8A~8Dは、サイトカイン放出に対する二重特異性抗体の影響を示す。ドナー#1およびドナー#2由来のPBMCサンプルにおける、二重特異性抗体HER2×GXP2と対照CD3モノクローナル抗体による処理後のサイトカインTNF-αおよびIL-6の放出に関するELISAの結果を示す。
図8A:ドナー#1、IL-6;
図8B、ドナー#1、TNF-α;
図8C:ドナー#2、IL-6;
図8D:ドナー#2、TNF-α。
【
図9】
図9A~9Dは、異なる濃度の二重特異性抗体により媒介されるT細胞のインビトロ腫瘍殺傷実験の結果である。
図9A:標的細胞はSKBR-3細胞であり;
図9B:標的細胞はNCI-N87細胞であり;
図9C:標的細胞はMCF-7細胞であり;
図9D:標的細胞は293F細胞である。
【
図10】
図10は、動物腫瘍モデルにおいて異なる用量の二重特異性抗体がインビボでの腫瘍増殖を阻害した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
用語および略語
本明細書で特に定義されていない限り、本発明で使用される科学用語や技術用語およびそれらの略語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解される意味を有するものである。以下、本明細書で使用される用語および略語の一部が挙げられる。
【0041】
抗体:antibody,Ab;
免疫グロブリン:immunoglobulin,Ig;
重鎖:heavy chain,HC;
軽鎖:light chain,LC;
重鎖可変領域:heavy chain variable domain,VH;
重鎖定常領域:heavy chain constant domain,CH;
軽鎖可変領域:light chain variable domain,VL;
軽鎖定常領域:light chain constant domain,CL;
抗原結合断片:antigen binding fragment,Fab;
ヒンジ領域:hinge region;
Fc断片:fragment crystallizable region,Fc region;
モノクローナル抗体:monoclonal antibodies,mAbs;
抗体依存性細胞傷害作用:antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity,ADCC;
補体依存性細胞傷害作用:complement dependent cytotoxicity,CDC;
ナチュラルキラー細胞:natural killing cell,NK細胞;
二重特異性抗体:bispecific antibody,BsAb;
T細胞受容体:T cell receptor,TCR;
主要組織適合遺伝子複合体:major histocompatibility complex,MHC;
相補性決定領域:complementarity determining region,CDR,抗体の抗原相補的結合領域を指し;
免疫受容活性化チロシンモチーフ:immunoreceptor tyrosine-based activation motif,ITAM;
ヒト上皮成長因子受容体2型:human epidermalgrowth factor receptor-2,HER2;
一本鎖可変領域抗体断片(一本鎖抗体とも言う):single-chain variable fragment,scFv;
養子免疫療法:adoptive cellular immunotherapy,ACI;
リンホカイン活性化キラー細胞:lymphokine-activated killer cell,LAK細胞;
腫瘍浸潤リンパ球:Tumor Infiltrating Lymphocyte,TIL細胞;
サイトカイン誘導キラー細胞:cytokine-induced killer cell,CIK細胞;
キメラ抗原受容体発現T細胞免疫療法:Chimeric Antigen Receptor T-Cell Immunotherapy,CAR-T。
【0042】
本明細書において、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、互いに交換して使用してもよく、アミノ酸残基からなるポリマーを指す。1つのアミノ酸のカルボキシ末端ともう1つのアミノ酸のアミノ末端は、脱水縮合によって互いに結合し、ペプチド結合を形成する。ポリペプチド鎖およびタンパク質は、化学的に合成してもよく、組換えで発現させてもよく、且つその最小アミノ酸長の制限はない。
【0043】
本明細書で使用される「アミノ酸」とは、20種類の天然に存在するアミノ酸、またはある特定の位置に現れる可能性がある任意の非天然アミノ酸類似体を指す。
【0044】
本明細書で使用される「アミノ酸変異」とは、ポリペプチド鎖におけるあるアミノ酸の付加、置換、挿入、および/または欠失を指す。
【0045】
本明細書で使用される「抗体」は、全長抗体および抗体断片を含み、生物由来の天然抗体、遺伝子工学によって得られる抗体、または組換え技術によって得られる抗体に関する。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体などを含む。また、「抗体」という用語は、マウス化抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体なども含まれる。
【0046】
「抗体断片」または「抗原結合断片」という用語は、(i)VL、CL、VHおよびCH1ドメインを有するFab断片であるFab’断片;(ii)CH1ドメインのC末端に1つまたは複数のシステイン残基を有するFab’断片;(iii)VHおよびCH1ドメインを有するFd断片;(iv)VHおよびCH1ドメインと、CH1ドメインのC末端にある1つまたは複数のシステイン残基とを有するFd’断片;(v)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインを有するFv断片;(vi)VHまたはVLドメインからなるdAb断片;(vii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab’断片を含む二価の断片であるF(ab’)2断片;(viii)一本鎖可変断片(scFv)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「抗体断片」は、上記の抗体断片だけでなく、完全抗体から改変された抗体、および組換えDNA技術によって合成された新しい抗体も含まれる。
【0047】
本明細書で使用される「二重特異性抗体」とは、2つの異なる抗原結合部位の成分から構成され、2つの異なる抗原結合部位に同時に結合することができる人工的に設計される抗体を指す。
【0048】
本明細書で使用される「Fc」または「Fc領域」または「Fc断片」は、IgA、IgDおよびIgGのCH2とCH3ドメイン、またはIgEおよびIgMのCH2、CH3とCH4ドメインがヒンジ領域を介してからなるポリペプチドを指す。Fc断片の分解は可変であるが、通常、ヒトIgGの重鎖のFc断片は、A231からそのカルボキシ末端までのポリペプチドを指す。
【0049】
本明細書で使用される「ヒンジ領域」とは、抗体のCH1とCH2との間に位置し、プロリンが豊富で、伸張や屈曲されやすいポリペプチド鎖を指す。周知のIgGヒンジ領域は、216~230番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド鎖である。
【0050】
本明細書で使用される「IgG」とは、確認された免疫グロブリンγ遺伝子によってコードされる抗体を指し、ヒトIgGには、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4が含まれる。
【0051】
本明細書で使用される「EC50」という用語、すなわち最大50%効果濃度(concentration for 50% of maximal effect)は、最大効果の50%に対応する抗体の濃度を指す。
【0052】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」は、ヒト化免疫グロブリン(アクセプター抗体)における一部またはすべてのCDR領域を非ヒト抗体(ドナー抗体)におけるCDR領域で置き換えることによって得られる抗体または抗体断片を指し、ここで、ドナー抗体は、所望の特異性、親和性または反応性を有する非ヒト(例えば、マウス、ラットまたはウサギ)抗体であってもよい。また、アクセプター抗体のフレームワーク領域(FR)における一部のアミノ酸残基は、抗体の1つまたは複数の特性をさらに改善または最適化するように、対応する非ヒト抗体のアミノ酸残基または他の抗体のアミノ酸残基で置き換えられる。
【0053】
本明細書で使用される「エピトープ」または「抗原決定基」とは、抗原における免疫グロブリンまたは抗体と特異的に結合される部位を指す。抗原決定基は抗原性物質の表面に存在することが多いが、一部は抗原性物質の内部に存在し、酵素または他の方法で処理されて初めて露出される。エピトープまたは抗原決定基は、通常、例えば、アミノ酸、炭水化物または糖側鎖のような分子の化学活性を有する表面の基で構成され、一般的に、特定の3次元構造特性や特定の部位および特性を有する。エピトープは「線形的」または「構造的」であっても良い。線形エピトープにおいて、タンパク質と相互作用分子(例えば、抗体)との間のすべての相互作用部位は、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線形的に存在する。構造的エピトープにおいて、相互作用部位は、互いに離れているタンパク質のアミノ酸残基にまたがって存在する。天然の抗原性物質は、複数種類および複数の決定基を有しても良い。抗原分子が大きいほど、決定基の数が多くなる。
【0054】
本明細書で使用される「特異的に結合」とは、抗体とその抗原との間の反応のような、2つの分子間のランダムでない結合反応を指す。一部の実施形態において、ある抗原に特異的に結合する抗体(または、ある抗原にする特異性を有する抗体)とは、抗体が約10-5M未満(例えば、約10-6M、10-7M、10-8M、10-9Mまたは10-10M未満)の親和力(KD)でこの抗原に結合することを意味する。本発明の一部の実施形態において、「標的」という用語は、特異的結合を指す。
【0055】
本明細書で使用される「KD」とは、抗体と抗原との間の結合親和性を表すために使用される特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を指す。解離定数が小さいほど、抗体と抗原との結合が強くなり、抗体と抗原との間の親和性が高くなる。一般に、抗体は、約10-5M未満(例えば、約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、または10-10M未満)の解離定数(KD)で抗原に結合する。
【0056】
本明細書で使用される「ベクター(Vector)」という用語は、ポリヌクレオチドを挿入することができる核酸ビヒクルを指す。ベクターは、挿入されたポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を発現できる場合、発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、形質転換、形質導入またはトランスフェクションなどの方法によって宿主細胞に導入され、それが運ぶ遺伝物質因子を宿主細胞で発現させる。ベクターは、当業者に対して公知であり、(1)プラスミド;(2)ファージミド;(3)コスミド;(4)例えば、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体;(5)λファージやM13ファージなどのファージ、および(6)動物ウイルスなどが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターとして使用される動物ウイルスとして、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(例えば、SV40)が挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択因子、およびレポーター遺伝子などの発現を制御する複数の因子を含んでもよいが、これらに限定されない。さらに、ベクターは、複製起点を含んでもよい。
【0057】
抗体は、抗原が体を刺激して免疫応答を引き起こした後、形質細胞によって分泌される、抗原に特異的に結合できる免疫グロブリンであり、自然に産生されるため、毒性や副作用が少ない。ここ10年間で、従来のモノクローナル抗体は、腫瘍免疫療法において大きな成功を収めた。2016年末までに、世界で63種の抗体系医薬品が発売され、2016年の世界の抗体売上高は1000億米ドルを超えた。2016年に世界で販売された上位10個の医薬品のうち、7個はバイオ医薬品であり、そのうち6個は抗体系医薬品で、世界の医薬品の売上高の20%以上を占めている。モノクローナル抗体の作用機序には、成長シグナルの遮断、腫瘍血管新生の遮断、アポトーシスの誘導、免疫細胞の活性化による免疫効果の発生が含まれる。その中で、モノクローナル抗体は、主にFcが免疫細胞(例えば、NK細胞、単核細胞など)表面のFcγR(Fcγ受容体)に結合して細胞を活性化させ、ADCC(antibody dependent cellular cytotoxicity、抗体依存性細胞傷害作用)、ADCP(antibody dependent cellular phagocytosis、抗体依存性細胞貪食)を増強したり、Fcが補体タンパク質C1qに結合してCDC(complement dependent cytotoxicity、補体依存性細胞傷害作用)を増強したりすることで、細胞殺傷効果を発揮する。
【0058】
抗体医薬品の低い毒性および高い特異性が従来の化学療法と異なることは、その成功の優勢であるが、抗体医薬品は全体的な有効性が低いという問題に直面している。さらに、抗体医薬品の治療効果も薬剤耐性に悩まされ、腫瘍異質性および腫瘍細胞自体の複数のシグナル伝達経路による制御により、単一の標的の免疫療法が薬剤耐性になりやすくなる。これらの問題は、モノクローナル抗体の作用機序に関連する。モノクローナル抗体は、自体のFc断片を介してNK細胞の表面のFc受容体に結合することで、NK細胞を活性化して腫瘍を殺傷する。しかしながら、ヒトFc受容体には遺伝子多型があり、高親和性受容体(VV遺伝子型)を発現する人はわずか20%程度を占めるが、低親和性受容体を発現する人は、モノクローナル抗体の効果に対する応答率が低くなる。これらは、集団におけるモノクローナル抗体の全体的な応答率が高くないことを決定する。同時に、NK細胞は全免疫細胞PBMCの合計の5~8%程度しか占めておらず、モノクローナル抗体医薬品は、腫瘍殺傷の過程で他の免疫細胞の役割を果たすことができない。
【0059】
現在、T細胞は、腫瘍殺傷にとって最も重要な免疫細胞であると一般に考えらる。CD8+細胞傷害性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞などを含むT細胞は、PBMCの総数の20%以上を占める。腫瘍患者の体内において特異的な抗腫瘍細胞免疫を確立するために、腫瘍関連抗原とT細胞活性化シグナル伝達経路受容体を同時に結合できる多数の二重特異性抗体が設計された。このクラスの二重特異性抗体の一方の端は、T細胞またはその他の免疫細胞の受容体分子(例えば、CD3、TCR、CD28、CD16、NKG2Dなど)に結合し、もう一方の端は、腫瘍細胞の標的に結合され、これより、免疫T細胞が腫瘍細胞を認識して結合することを促進し、免疫連鎖を形成して腫瘍細胞を除去する。
【0060】
本発明者らは、CRIS-7、UCHT-1、TRX4、OKT3、MEM-57、SP34、HiT3aを含む複数の抗ヒトCD3複合体マウス抗体について、詳細な分析および比較を行った。また、そのうちの1つのマウス抗体GXP(SP34)は、配列の最適化、ヒト化が行われた。
【0061】
GXP(SP34)は、抗ヒトCD3マウスモノクローナル抗体であり、複数の特許に開示されており、一部の企業もそのヒト化を実施した(US9587021、PCT/US20121038219)。本発明者らは、VHおよびVLフレームワーク領域の配列をヒト化し、マウス由来の重鎖および軽鎖におけるすべてのCDR1、CDR2およびCDR3配列を変化させずに保った。もう1つの重要な原則は、抗体の構造安定性および抗原親和性への影響を減らすために、それぞれのCDR領域のN末端またはC末端付近のマウス由来の配列をできるだけ保持することである。
【0062】
本発明者らが特定した前記抗体の最終的なヒト化配列は、GXP2と命名され、野生型抗体と比較して、本発明によって最適化されたこのCD3マウス抗体のヒト化配列GXP2は、多くの独特の特性と優位性が得られる。これらの新しい特性によって、この新しいヒト化抗体は、抗体医薬品の開発により適する。具体的には、マウス由来の抗体または他のヒト化配列と比較して、本発明の最適化された抗体配列は、抗体タンパク質の発現が著しく増加し、熱安定性も大幅に向上し、CD3抗原への親和性および結合性も向上し、二重特異性抗体の調製に用いた場合、より強力な腫瘍殺傷活性を示した。本発明に開示されたヒト化配列は、他社のヒト化配列よりも多くの利点と特徴を有し、新しい抗腫瘍医薬品の調製に用いた場合、より優れた腫瘍殺傷活性を示し、且つ物理的および化学的安定性も大幅に改善され、抗腫瘍医薬品のスクリーニングおよび開発により適する。この創造的な成果は、本発明の有益な効果および極めて高い医療応用価値を有する。
【0063】
したがって、一態様において、本発明は、GXP2の重鎖可変領域(VH)配列(配列番号21)およびGXP2の軽鎖可変領域(VL)配列(配列番号22)を有すCD3に結合する抗原結合領域を含む、抗体または抗体断片に関する。一実施形態において、抗体または抗体断片は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であっても良い。別の実施形態において、抗体または抗体断片は、キメラ抗体または抗体断片、CDR移植抗体または抗体断片、ヒト化抗体または抗体断片、または完全ヒト抗体または抗体断片であっても良い。
【0064】
一部の実施形態において、前記の抗体または抗体断片は、配列番号9に示される重鎖配列および配列番号11に示される軽鎖配列を含む。
【0065】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、腫瘍抗原標的に対する別の抗原結合領域をさらに含む二重特異性抗体または多重特異性抗体である。一部の実施形態において、前記の腫瘍抗原標的は、ヒト上皮成長因子受容体2型(human epidermal growth factor receptor-2,HER2)である。
【0066】
特定の癌に関連する多くの腫瘍関連抗原がすでに確認された。本明細書で使用される「腫瘍抗原標的」という用語は、癌細胞による発現差異があるため、癌細胞を標的とするために利用することができる抗原を指す。癌抗原は、明らかな腫瘍特異的免疫応答を潜在的に刺激できる抗原である。これらの抗原の一部は、正常細胞によってコードされるが、必ずしも正常細胞によって発現されるとは限らない。これらの抗原は、正常細胞では通常サイレントである(即ち、発現しない)もの、分化のある段階でのみ発現するもの、および胚や胎児抗原などの特定の時点に発現するものとして特徴付けられる。他の癌抗原は、癌遺伝子(例えば、活性化されたras癌遺伝子)、抑制遺伝子(例えば、突然変異体p53)、および内部欠失または染色体転座から生じる融合タンパク質などの突然変異細胞遺伝子によってコードされる。また、他の癌抗原は、RNA腫瘍ウイルスおよびDNA腫瘍ウイルスが持つ遺伝子などのウイルス遺伝子によってコードされても良い。多くの腫瘍抗原は、複数の固形腫瘍に基づいて定義された。例えば、免疫によって定義されたMAGE1、2、3、MART-1/Melan-A、gp100、癌胎児性抗原(CEA)、HER-2、ムチン(即ち、MUC-1)、前立腺特異抗原(PSA)および前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)である。さらに、B型肝炎ウイルス(HBV)、エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)などのウイルスタンパク質は、それぞれ肝細胞癌、リンパ腫および子宮頸癌の発生に重要な役割を果たすことが示された。しかし、腫瘍は、一連の異なる免疫逃避機構を利用したり、その恩恵を受けたりして、癌患者の免疫系が腫瘍抗原を認識または応答できないことがよくある。通常、精巣、胎盤、および卵巣の精母細胞または精原細胞に関連する癌抗原の例の一部としては、癌・精巣(CT)抗原BAGE、GAGE、MAGE-1、およびMAGE-3、NY-ESO-1、SSXを挙げられる。これらの抗原は、黒色腫、リンパ腫、肺癌、膀胱癌、結腸癌および乳癌に存在する(例えば、Butterfield et al.,J.Immunotherapy 2008;31:294-309;Markowicz et al.,J Clin Oncol 27:15s,2009に記載)。メラニン細胞、上皮組織、前立腺および結腸で一般的に見られる癌抗原には、分化抗原Gp100、Melan-A/Mart-1、チロシナーゼ、PSA、CEAおよびMammaglobin-Aも含まれる。これらの抗原は、黒色腫、前立腺癌、結腸癌、および乳癌に存在する。一部の癌抗原は、通常低レベルで発現されるが、癌では過剰発現される共有抗原である。過剰発現される癌抗原の例としては、食道、肝臓、膵臓、結腸、乳房、卵巣、膀胱、および前立腺癌に見られるp53、HER-2/neu、livin、およびサバイビンが挙げられる。また、黒色腫、非小細胞肺癌、腎臓癌の1つ以上に関連するβ-カテニン-m、β-アクチン/4/m、ミオシン/m、HSP70-2/mおよびHLA-A2-R170Jなどの他の癌抗原は独特である。その他の癌抗原は、腎臓、腸、結腸直腸組織などの上皮組織で一般的に見られる腫瘍に関連する炭水化物抗原である。これらの癌抗原には、黒色腫、神経芽細胞腫、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、および前立腺癌に見られるGM2、GD2、GD3、MUC-1、sTn、abd globo-Hが含まれる。他の腫瘍抗原、エピトープペプチドおよびそれらの説明は、米国特許No.7,906,620;7,910,692;8,097,242;7,935,531;8,012,468;8,097,256;8,003,773;Tartour et al.,Immunol Lett 2000;74(1):1-3に記載した。本明細書は、その全体が参照により組み込まれる。一部の実施形態において、完全癌抗原が使用されるが、他の実施形態において、癌抗原のエピトープペプチド(タンパク質の分解消化または組換えによって調製された)が使用される。従って、本明細書に記載の組成物および方法とともに使用される腫瘍または癌抗原の非限定的な例としては、Her2、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、β-カテニン-m、B細胞成熟抗原(BCMA)、α-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、癌抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン(calretinin)、MUC-1、上皮細胞膜抗原(EMA)、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、マンマグロビンA(Mammaglobin A)、黒色腫関連抗原(MAGE)、CD34、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、総嚢胞性疾患流体タンパク質(gross cystic disease fluid protein)(GCDFP-15)、EBV、gp100、HMB-45抗原、タンパク質melan-A(Tリンパ球により認識された黒色腫抗原;MART-1)、livin、サバイビン、myo-D1、筋肉特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメント、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリフォスファターゼ、シナプス小胞タンパク質、チログロブリン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナーゼアイソザイムM2型の二量体(腫瘍M2-PK)、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)EphA2、CSPG4、CD138、FAP(線維芽細胞活性化タンパク質)、CD171、kappa、lambda、5T4、αvβ6インテグリン、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD123、EGFR、EGP2、EGP40、EpCAM、fetal AchR、FRα、GAGE、GD3、HLA-A1+MAGE1、MAGE-3、HLA-A1+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、Lewis-Y、Muc16、NCAM、NKG2D Ligands、NY-ESO-1、PRAME、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEMs、VEGFR2、EGFRvIII(上皮成長因子変異体III)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン(mesothelin)、PAP(前立腺酸性フォスファターゼ)、prostein、TARP(T細胞受容体γ代替リーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STRAP1(前立腺の6回膜貫通型上皮抗原1(six-transmembrane epithelial antigen of the prostate 1))、HSP70-2/mおよびHLA-A2-R170J、チロシナーゼ、異常なrasタンパク質または異常なp53タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
HER2は、ヒト上皮成長因子受容体ファミリー(ErbBファミリーとも呼ばれる)の2番目のメンバーである。このファミリーは、I型チロシンキナーゼに属し、HER1、HER2、HER3、およびHER4の4つのメンバーがあり、正常または異常な表皮細胞の成長、分化、および転移の調節に非常に重要な役割を果たすため、複数の腫瘍の発生や発展と密接に関連する。
【0068】
HER2は、ヒト染色体17q21に位置し、分子量185KDのチロシンキナーゼ活性を有する膜貫通タンパク質をコードする(Akiyama T et al.The product of the human c-erbB-2gene:a185-kilodalton glycoprotein with tyrosine kinase activity.Science.1986Jun 27;232(4758):1644-6)。HER2は、通常、胎児期にのみ発現し、成人後、乳房、胃腸管、腎臓および心臓などのごく少数の正常組織に微量発現する(Olayioye MA.Update on HER-2as a target for cancer therapy:intracellular signaling pathways of ErbB2/HER-2and family members.Breast Cancer Res.2001;3:385-9;Yamamoto T et al.Similarity of protein encoded by the human c-erbB-2gene to epidermal growth factor receptor.Nature.1986;319:230-4)。通常の状況において、細胞内のHER2遺伝子は不活性状態であり、2つのコピーのみを有する。遺伝子変異が発生すると、HER2遺伝子は活性化され、20倍以上増幅され、その後、転写およびタンパク質合成を増加させ、腫瘍のアポトーシスを阻害し、腫瘍細胞の増殖を促進し、さらに、腫瘍組織における血管やリンパ管の形成を促進することにより、腫瘍細胞の浸潤を促進することもできる。さらに、HER2タンパク質は、二量体化および自己リン酸化した後、PI3K/AKT経路およびRAS/MAPKシグナル伝達経路を活性化させ、細胞の無制限の増殖や分化を促進し、アポトーシスを阻害することで、細胞の発癌を促進する(Browne BC et al.HER-2signaling and inhibition in breast cancer.Curr Cancer Drug Targets 2009;9(3):419-38;Castaneda CA et al.The phosphatidyl inositol 3-kinase/AKT signaling pathway in breast cancer.Cancer Metastasis Rev 2010;29(4):751-9)。また、HER2の過剰発現は、複数の転移関連メカニズムを開始し、それにより、細胞遊走速度、侵襲性などを含む腫瘍細胞の遊走能力を高める。一般に、HER2遺伝子増幅(および/またはタンパク質の過剰発現)を示す腫瘍は、悪性度が高く、転移能力が強い。HER2遺伝子の過剰発現は、腫瘍の発生や発展と密接に関連するだけでなく、重要な臨床治療のモニタリング指標および予後の指標でもあり、腫瘍標的治療薬の重要な標的であることが分かる(Slamon DJ et al.Use of chemotherapy plus a momoclonal antibody against HER2for metastatic breast cancer that overexpression HER2.N Engl J Med.2001Mar 15;344(11):783-92)。
【0069】
研究によると、HER2の過剰発現が、乳癌、胃癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌などの複数の悪性腫瘍に存在することが分かった。20%~30%の原発性乳癌において、HER2遺伝子の増幅およびタンパク質の過剰発現が存在し、腫瘍細胞の悪性転移を引き起こす重要な因子である。HER2を過剰発現した乳癌患者は、病状が急速に進行し、化学療法の寛解期間が短く、内分泌療法の効果が悪く、無病生存率および全生存率は低いである。HER2陰性の転移性乳癌患者の生存率は17~22か月であるのに対し、HER2患者の生存率は8~10か月で、前者の半分にすぎないことが研究により示された(Slamon DJ et al.Science 1987;235:177-82)。
【0070】
胃癌は、中国の各種類の悪性腫瘍の中で第1位であり、且つ7%~34%の胃癌においてHER2が過剰発現する現象がある。胃癌の予後は悪く、進行胃癌の5年生存率はわずか5%~20%であり、生存期間中央値は1年以下である。研究から、胃癌におけるHER2陽性発現は、腫瘍の分化度、Lauren分類およびWHO分類に関連するが、性別、年齢、腫瘍の場所との相関関係がないことが示された。
【0071】
また、18%~43%の卵巣癌において、HER2が過剰発現する現象もある(GlenMark communication)。HER2陰性の卵巣癌患者(0/1+)と比較して、HER2陽性の患者(2+/3+)の全生存率は著しく低下することが報告された(Verri E et al.HER2/neuoncopprotein overexpression in epthelial ovarian cancer:evaluation of its precalence and prognostic significance.Oncology,2005,68:154-161)。
【0072】
さらに、前立腺癌や肺癌においても、HER2が過剰発現する現象がある。Signorettiらは、異なる臨床段階の前立腺癌サンプルにおけるDNA、RNAおよびタンパク質のレベルを測定したところ、異なる治療法を受けた患者間でHER2過剰発現の比率が異なり、前立腺癌の手術切除のみを受けた患者の25%、手術前に抗アンドロゲン療法を受けた患者の59%、アンドロゲン療法が失敗して骨転移(アンドロゲン依存性AI)を起こした患者の最大78%は、HER2が過剰発現したことを見出した。肺癌におけるHER2の過剰発現は、遺伝子の転写および転写後修飾と密接に関連する。
【0073】
現在臨床で使用されているHER2標的薬としては、上記のようなトラスツズマブ(Trastuzumab、Herceptin(登録商標))、ペルツズマブ(Pertuzumab、Perjeta(登録商標))、およびアドトラスツズマブエムタンシン(Ado-trastuzumabemtansine、Kadcyla(登録商標))が挙げられる。これらの薬物は、一定の治療効果はあるが、依然として多くの制限がある。(1)約60~70%の患者がHerceptinに対する初期耐性(primary drug resistance)を示し;(2)約70%の患者がHerceptinによる治療の1年後に獲得耐性を獲得し;(3)Kadcylaの第一選択薬としての効果はHerceptinに及ばず、しかも非常に高価で、患者に大きな経済的負担を与える(GlenMark communication)。
【0074】
本発明は、モノクローナル抗体Ch4D5のアミノ酸配列(PDB Database#1N8E)を参照して、腫瘍標的Her2/neuに結合するScFv構造を設計、構築し、さらにVH-リンカー-VL、VL-リンカー-VH、およびVH-リンカー-VLにL234A、L235Aの変異を加えたものなどのいくつかの形式を設計した。具体的な設計は次のとおりである。
【0075】
第1実施形態において、腫瘍標的Her2に結合するscFvは、N末端からC末端まで、抗Her2抗体Ch4D5のVHが15アミノ酸の短いペプチドリンカー(GGGGS)×3に連結し、さらにCh4D5のVLと連結する。得られたscFvは、ヒンジ領域、およびOB変異配列(T394D、P395D、P396D)を持つFcに連結し、Her2に結合するScFv-Fc重鎖、即ちHer2-OB1(配列番号1)を形成する。
【0076】
第2実施形態において、腫瘍標的Her2に結合するscFvは、N末端からC末端まで、Ch4D5のVLが15アミノ酸の短いペプチドリンカー(GGGGS)×3に連結し、さらにCh4D5のVHに連結する。得られたscFvは、ヒンジ領域、およびOB配列を持つFcに連結し、Her2に結合するScFv-Fc重鎖、即ちHer2-OB2(配列番号3)を形成する。
【0077】
第3実施形態において、腫瘍標的Her2に結合するScFv-Fc重鎖の構造は、第1実施形態と同様であり、即ち、抗Her2抗体Ch4D5のVHが、15アミノ酸の短いペプチドリンカー(GGGGS)×3に連結し、さらにCh4D5のVLに連結する。得られたscFvは、ヒンジ領域、およびOB配列を持つFcに連結する。Her2-OB1(配列番号1)は、VL領域とヒンジ領域との間にNcoIおよびBg1IIマルチクローニングサイトが含まれるため、他の非ヒト由来アミノ酸TVAMVRが含まれる。この実施形態において、該配列は、ヒト抗体配列GEPKで置き換えられて、Her2に結合するScFv-Fc重鎖Her2-OB3(配列番号5)を形成する。
【0078】
第4実施形態は、第3実施形態に基づき、モノクローナル抗体Ch4D5重鎖のCH2領域にL234A、L235Aの変異を導入して、抗体のADCC機能およびCDC機能を低下させ、T細胞への損傷を回避する。得られた配列は、Her2-OB4(配列番号7)である。
【0079】
なお、以上の4種類のコンストラクトは、いずれもHer2/neuに対する高い親和力を示し、その中に、VH-リンカー-VL構造を有するOB1、OB3、OB4は、VL-リンカー-VH構造を有するOB2よりも高い親和力を示す。
【0080】
従って、一部の実施形態において、本発明の抗体または抗体断片は、Her2-OB1(配列番号1)、Her2-OB2(配列番号3)、Her2-OB3(配列番号5)、およびHer2-OB4(配列番号7)から選択される重鎖配列を含み、好ましくは、上記の抗体はHer2-OB4(配列番号7)の重鎖配列を含む。上記の重鎖配列は、高親和性でHER2に結合して、上記のGXP2のVH配列(配列番号21)およびGXP2のVL配列(配列番号22)(CD3に結合する抗原結合領域)と二重特異性抗体または多重特異性抗体を形成し、HER2陽性の乳癌、胃癌、卵巣癌、前立腺癌および肺癌などのHER2陽性癌の治療に用いられる。
【0081】
一部の実施形態において、前記の抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、Fd断片、Fd’断片、Fv断片、dAb断片、F(ab’)2断片、およびscFv断片から選択される。
【0082】
一態様において、本発明は、2つの重鎖および1つの軽鎖を有する二重特異性抗体に関し、ここで、第1重鎖は、N末端からC末端までscFv-ヒンジ領域-Fcを有し;第2重鎖は、N末端からC末端までVH-CH1-ヒンジ領域-Fcを有し;前記の軽鎖は、N末端からC末端までVL-CLを有し、前記の第1重鎖のscFvの抗原結合ドメインは腫瘍抗原標的に結合し、前記の第2重鎖のVH-CH1は、前記の軽鎖のVL-CLと共に、免疫エフェクター細胞の表面にあるシグナル伝達経路受容体に結合する別の抗原結合領域を形成する。
【0083】
図1は、本発明の二重特異性抗体の分子構造の模式図を示す。
【0084】
本発明において開示される二重特異性抗体は、構造について以下の特徴を有する。
【0085】
1.該二重特異性抗体分子は、2つの異なる抗原結合領域が含まれるため、一方は腫瘍関連抗原を特異的に認識でき、もう一方は免疫エフェクター細胞のシグナル経路標的を特異的に認識して結合できる。それは、人体の免疫細胞を特異的に捕捉し、腫瘍細胞の付近に連れて行くことができ、また、免疫細胞と腫瘍細胞との間に免疫効果の連鎖の形成を促進することで、T細胞、NK細胞、マクロファージなどの免疫細胞を活性化させ、腫瘍細胞を殺傷して除去する。
【0086】
2.該分子構造の1つの抗原結合領域はscFv構造で、もう1つの抗原結合領域はFab構造であるため、分子全体は2つの異なる重鎖および1つの軽鎖からなる。ここで、Fab結合領域を形成する1つの軽鎖は、この領域の重鎖可変領域としか結合できないので、軽鎖と対応する重鎖とのミスマッチは起こらない。
【0087】
3.該二重特異性抗体分子は非対称構造であるため、製造プロセスに生成される大量の目的生成物(ヘテロダイマー)と少量の非目的生成物(ホモダイマー)の分子量や電荷分布などは、いずれも大きな差異があり、下流の精製、分離に役立つ。
【0088】
前記の二重特異性抗体の一部の実施形態において、前記の腫瘍抗原標的はHER2であり、前記のシグナル伝達経路受容体はCD3である。一部の実施形態において、前記の第2重鎖のVHはGXP2のVH配列(配列番号21)を有し、前記の軽鎖のVLはGXP2のVL配列(配列番号22)を有する。
【0089】
前記の二重特異性抗体の一部の実施形態において、前記の第2重鎖はGXP2-VH-OAの配列(配列番号9)を有し、前記の軽鎖はGXP2-VLの配列(配列番号11)を有する。
【0090】
前記の二重特異性抗体の一部の実施形態において、前記の第1重鎖のscFvは、N末端からC末端までCh4D5モノクローナル抗体のVH領域、リンカーペプチド[(GGGGS)×N、N=3、4、5]、およびCh4D5モノクローナル抗体のVL領域を有するか、または、N末端からC末端までCh4D5モノクローナル抗体のVL領域、リンカーペプチド[(GGGGS)×N、N=3、4、5]、およびCh4D5モノクローナル抗体のVH領域を有する。
【0091】
前記の二重特異性抗体の一部の実施形態において、前記の第1重鎖は、Her-OB1(配列番号1)、Her-OB2(配列番号3)、Her-OB3(配列番号5)およびHer-OB4(配列番号7)からなる群から選択される配列を有する。ここで、好ましくは、前記の第1重鎖はHer-OB4(配列番号7)の配列を有する。
【0092】
前記の二重特異性抗体の任意の実施形態において、抗体のADCC機能およびCDC機能を低下させ、T細胞への損傷を回避するために、前記の第2重鎖のCH2および/または第1重鎖のCH2は、L234A、L235A変異を含んでも良い。
【0093】
WO2017034770A1において、1つの重鎖にP395K、P396K、V397Kの変異(OAと呼ばれる)を導入すること;もう1つの重鎖にT394D、P395D、P396D(OBと呼ばれる)を導入することを含む、抗体の重鎖部分を修飾して2つの重鎖間の結合活性および特異性を高める方法が開示された。
【0094】
したがって、前記の二重特異性抗体の任意の実施形態において、前記の第2重鎖のCH3は、P395K、P396K、V397Kの変異を含んでも良く、第1重鎖のCH3は、T394D、P395D、P396Dの変異を含んでも良い。
【0095】
或いは、重鎖間の結合親和性および特異性を高めるために、前記の第2重鎖のCH3は、T394D、P395D、P396Dの変異を含んでも良く、前記の第1重鎖のCH3は、P395K、P396K、V397Kの変異を含んでも良い。
【0096】
本明細書および特許請求の範囲において、免疫グロブリン重鎖における残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)に記載したEUインデックスの番号付けである。これは、インタネットから入手可能であり、参照により本明細書に完全に組み込まれる。例えば、「KabatのEUインデックス」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基の番号付けを指す。本明細書で使用される「Kabat配列番号付け」または「Kabatマーク」とは、KabatのEUインデックス番号で可変領域をコードする配列を指す。重鎖可変領域について、Kabat番号として、超可変領域の範囲は、CDR1のアミノ酸位置31~35、CDR2のアミノ酸位置50~65、およびCDR3のアミノ酸位置95~102である。軽鎖可変領域について、Kabat番号として、超可変領域の範囲は、CDR1のアミノ酸位置24~34、CDR2のアミノ酸位置50~56、CDR3のアミノ酸位置89~97である。
【0097】
一部の実施形態において、本発明の二重特異性抗体の第1重鎖および第2重鎖からなるキメラFc領域は、対応する抗体の野生型Fc領域と比較して、Fc受容体への結合が低下する。例えば、一部の実施形態において、そのFc受容体への結合が低下する。抗体Fc領域のFc受容体への結合が低下すると、抗体のADCC機能およびCDC機能が低下し、T細胞への損傷を回避できる。
【0098】
一部の実施形態において、マウスモノクローナル抗体と比較して、本発明の二重特異性抗体がCD3分子に結合したものの熱変性温度は高くなる。例えば、一部の実施形態において、それがCD3分子に結合したものの熱変性温度が上昇する。一部の実施形態において、そのCD3に結合したものの熱変性温度の上昇は、ΔTが少なくとも5℃上昇することを示す。一部の実施形態において、そのCD3に結合したものの熱変性温度の上昇は、ΔTが少なくとも10℃上昇することを示す。一部の実施形態において、そのCD3に結合したものの熱変性温度の上昇は、ΔTが少なくとも12℃上昇することを示す。一部の実施形態において、そのCD3に結合したものの熱変性温度の上昇は、ΔTが少なくとも5~15℃上昇することを示す。一部の実施形態において、そのCD3に結合したものの熱変性温度の上昇は、ΔTが少なくとも10~15℃上昇することを示す。
【0099】
一部の実施形態において、本発明の二重特異性抗体は腫瘍殺傷活性を有する。一部の実施形態において、前記の腫瘍は、HER2陽性腫瘍である。一部の実施形態において、前記の腫瘍は、乳癌、胃癌、卵巣癌、前立腺癌、および肺癌から選択される腫瘍である。一部の実施形態において、腫瘍殺傷活性は、インビトロ腫瘍殺傷試験で試験される。一部の実施形態において、腫瘍殺傷活性は、マウスにおけるインビボ腫瘍モデルで試験される。
【0100】
前記の二重特異性抗体の任意の実施形態において、前記の第1重鎖、第2重鎖および/または軽鎖は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に由来する。一部の実施形態において、前記の第1重鎖、第2重鎖および/または軽鎖は、IgG1に由来する。
【0101】
さらに、一態様において、本発明は、配列番号21のアミノ酸配列を有するポリペプチドに関する。別の態様において、本発明は、配列番号22のアミノ酸配列を有するポリペプチドに関する。
【0102】
一態様において、本発明は、配列番号9のアミノ酸配列を有するポリペプチドに関する。別の態様において、本発明は、配列番号11のアミノ酸配列を有するポリペプチドに関する。
【0103】
核酸、ベクター、および宿主細胞
一態様において、本発明は、本発明の二重特異性抗体の第1重鎖、第2重鎖および/または軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸に関する。
【0104】
別の態様において、本発明は、本発明の核酸を含むベクター(例えば、発現ベクター)をコードすることに関する。
【0105】
本発明の発現ベクターの例としては、pFUSEss CHIg-hG1ベクターまたはその他のベクターに基づいて構築された発現ベクターが挙げられる。ここで、PCRにより抗HER2のscFvドメインを増幅させ、酵素切断部位(EcoR IおよびXho I)をscFvに導入し;増幅された遺伝子断片は、酵素で切断されたベクターpFUSEss CHIg-hG1と連結され、抗HER2のscFv-Fcを搭載した発現ベクター(pFuse HER2-OBと呼ばれる)が得られた。
【0106】
また、本発明のベクターの例としては、PCRにより抗CD3の重鎖VH断片を増幅させ、酵素切断部位(EcoR IおよびXho I)を重鎖に導入し、酵素で切断されたベクターpFUSEss CHIg-hG1と連結され、抗CD3の重鎖を搭載した発現ベクター(pFUSE GXP2-OA-VHと呼ばれる)が得られたことが挙げられる。
【0107】
本発明のベクターの例としては、pcDNA 3.1(+)または他のベクターに基づいて構築された発現ベクターが挙げられる。ここで、PCRにより抗CD3の軽鎖VL断片を増幅させ、酵素切断部位(Hind IIIおよびXho I)を軽鎖に導入し、酵素で切断されたベクターpcDNA 3.1(+)と連結され、抗CD3軽鎖を挿入した発現ベクター(pCK GXP2-VLと呼ばれる)が得られた。
【0108】
一態様において、本発明は、本発明の核酸分子を含む宿主細胞に関する。一部の実施形態において、前記の宿主細胞は、HEK293F細胞およびCHO細胞から選択される。
【0109】
また、本発明は、二重特異性抗体の調製方法に関する。この方法は以下を含む。
【0110】
1.scFvを含む結合領域の第1重鎖を、第1発現ベクターに構築し、Fab構造を含む結合領域の第2重鎖を、第2発現ベクターに構築し;Fab構造を含む結合領域の軽鎖を、第2ベクターまたは必要に応じて第3発現ベクターに構築し;
【0111】
2.第1発現ベクター、第2発現ベクター、および必要に応じて第3発現ベクターを共に哺乳動物宿主細胞にコトランスフェクトし、好ましくは、前記の細胞は293F細胞またはCHO細胞であり;
【0112】
3.トランスフェクトした293F細胞またはCHO細胞を培養し、培養上清を回収し;
【0113】
4.培養上清から目的の二重特異性抗体を精製し;分離工程には、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムにより、発現上清からFc断片付き抗体分子を捕捉した後、陽イオン交換クロマトグラフィーによって目的の二重特異性抗体と副産物との分離を行い、最後に濃縮して緩衝液を交換することが含まれる。
【0114】
一部の実施形態において、前記の第1発現ベクターはpFuse HER2-OBである。一部の実施形態において、前記の第2発現ベクターはpFUSE GXP2-OA-VHである。一部の実施形態において、前記の第3発現ベクターはpCK GXP2-VLである。
【0115】
抗体複合体
近年、抗体複合体は、その優れた標的指向性と抗癌活性によって、ますます注目を集めている。抗体複合体は、抗体、リンカー短鎖、および以下のコンジュゲート物質からなる。上記のコンジュゲート物質は、細胞毒素、放射性同位元素、蛍光標識物質、発光物質、発色物質、または酵素からなる群から選択される。抗体複合体は、抗体の標的指向性と上記のコンジュゲート物質を組み合わせるものである。抗体複合体が血液循環に入ると、抗体部分は、標的細胞の表面上の標的を認識し;標的を認識した後、抗体は、標的複合体としてエンドサイトーシスによって細胞に入り、次にリソソーム内の酵素によって徐々に分解され、抗体が持つ有毒物質を細胞質に放出させ、標的細胞を殺傷する。抗体複合体は、化学療法薬系抗腫瘍薬の副作用を軽減し、腫瘍治療の選択性を高めることができる。
【0116】
したがって、本発明は、本発明の抗体または二重特異性抗体と別の部分とをコンジュゲートすることによって形成される抗体複合体に関する。一部の実施形態において、前記の別の部分は、細胞毒素、放射性同位元素、蛍光標識物質、発光物質、発色物質、または酵素からなる群から選択される。
【0117】
一部の実施形態において、本発明の抗体または二重特異性抗体にコンジュゲートして抗体複合体を形成する部分は、細胞毒素である。一部の実施形態において、前記の細胞毒素は、細胞機能を阻害または遮断する物質および/または細胞破壊を引き起こす物質を指し、小分子細胞毒素が含まれる。一部の実施形態において、前記の細胞毒素は、コルヒチン、エンタンシン(emtansine)、メイタンシノイド(maytansinoid)、オーリスタチン(auristatin)、ビンデシン(vindesine)、チューブリシン(tubulysin)などからなる群から選択される。
【0118】
一部の実施形態において、本発明の抗体または二重特異性抗体にコンジュゲートして抗体複合体を形成する部分は、放射性同位元素である。一部の実施形態において、前記の放射性同位元素は、例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32およびLuの放射性同位元素を含む。
【0119】
一部の実施形態において、本発明の抗体または二重特異性抗体にコンジュゲートして抗体複合体を形成する部分は、例えば、FITC、luciferase、HRPなどの蛍光標識物質、発光物質および発色物質から選択される。
【0120】
一部の実施形態において、本発明の抗体または二重特異性抗体にコンジュゲートして抗体複合体を形成する部分は、例えば細菌、真菌、植物または動物起源の酵素活性毒素などの酵素であり、その活性断片および/またはバリアントを含む。
【0121】
医薬組成物および疾患の治療方法
一態様では、本発明は、本発明の抗体または抗体断片、二重特異性抗体または抗体複合体、および必要に応じて薬学的に許容される担体、界面活性剤および/または希釈剤を含む医薬組成物に関する。
【0122】
「薬学的に許容される担体」とは、LAPバインダーの安定性、溶解性または活性の維持に関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、媒体、封入材料、製造補助剤(例えば、潤滑剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸)、または溶媒封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物または媒介物を指す。製剤の他の成分と適合し、且つ患者に有害ではないという点から、それぞれの担体は、「許容される」ことが必要である。薬学的に許容される担体として用いられる材料の例としては、(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;(2)コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)ココアバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;(8)落花生油、綿実油、紅花、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、および大豆油などの油;(9)プロピレングリコールなどのグリコール;(10)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール(PEG)などのポリオール;(11)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(12)寒天;(13)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(14)アルギン酸;(15)発熱物質を含まない水;(16)等張食塩水;(17)リンガー液;(19)pH緩衝液;(20)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物;(21)ポリペプチドおよびアミノ酸などの充填剤;(22)血清アルブミン、HDLおよびLDLなどの血清成分;(23)エタノールなどのC2~C12アルコール;および(24)医薬品製剤で用いられる他の非毒の相溶性物質が挙げられる。さらに、放出剤、コーティング剤、防腐剤および抗酸化剤も、医薬品製剤中に存在してもよい。なお、本明細書において、「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容される担体」などの用語は、互いに交換して使用してもよい。
【0123】
一部の実施形態において、前記の医薬組成物は、本発明の抗体、二重特異性抗体、または抗体複合体に加えて、1つまたは複数の他の治療剤を含む。
【0124】
一部の実施形態において、前記の他の治療剤としては、化学療法剤、成長阻害剤、細胞毒性剤、放射線療法用薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、および抗CD20抗体、上皮成長因子受容体(EGFR)拮抗薬(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)))、血小板由来成長因子阻害剤(例えば、GLEEVEC(商標)(イマチニブメシレート(Imatinib Mesylate)))、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ(Celecoxib))などの他の癌治療薬、インターフェロン、サイトカイン、アンタゴニスト(例えば、中和抗体、これは以下の1つまたは複数の標的に結合する:PD-1、PD-L1、PD-L2(例えば、ペンブロリズマブ(pembrolizumab);ニボルマブ(nivolumab);MK-3475;AMP-224;MPDL3280A;MEDI0680;MSB0010718C;および/またはMEDI4736);CTLA-4(例えば、トレメリムマブ(tremelimumab)(PFIZER)およびイピリムマブ(ipilimumab));LAG-3(例えば、BMS-986016);CD103;TIM-3および/または他のTIMファミリーのメンバー;CEACAM-1および/またはその他のCEACAMファミリーのメンバー、ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR-β、BlyS、APRIL、BCMAまたはVEGF受容体TRAIL/Apo2)、およびその他の生物活性薬剤および有機化学薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。また、本明細書に記載される方法は、特にそれらの組み合わせが考えられる。
【0125】
一部の実施形態において、前記の他の治療剤は化学療法剤である。化学療法剤の例としては、チオテパ(thiotepa)およびCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド(cyclophosphamide)、テモゾロミド(temozolomide)などのアルキル化剤類(alkylating agents);ブスルファン(busulfan)、インプロスルファン(improsulfan)、およびピポスルファン(piposulfan)などのアルキルスルホン酸塩類(alkyl sulfonates);ベンゾデパ(benzodepa)、カルボコン(carboquone)、メツレデパ(Meturedepa)およびウレデパ(uredepa)などのアジリジン類(aziridines);アルトレタミン(altretamine)、トリエチレンメラミン(triethylenemelamine)、トリエチレンホスホルアミド(trietylenephosphoramide,triethylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホルアミド(triethiylenethiophosphoramide,triethylenethiophosphoramide)、およびリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)などを含むエチレンイミン類(ethylenimines)およびメチルメラミン類(methylamelamines);アセトゲニン(acetogenin)(特にブラタシン(bullatacin)およびブラタシノン(bullatacinone));カンプトテシン(camptothecin)(合成類似体であるトポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン(bryostatin);callystatin;CC-1065(アドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)、ビゼレシン(bizelesin)などの合成類似体を含む);クリプトフィシン(cryptophycins)(特にクリプトフィリン1およびクリプトフィリン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin)(KW-2189およびCB1-TM1などの合成類似体を含む);エロイテロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチイン(sarcodictyin);スポンギスタチン(spongistatin);クロラムブシル(chlorambucil)、クロルナファジン(chlornaphazine)、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン(estramustine)、イホスファミド(ifosfamide)、メクロレタミン(mechlorethamine)、塩酸ナイトロジェンマスタード-N-オキシド(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン(melphalan)、novembichin、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロホスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード(uracil mustard)などのナイトロジェンマスタード類(nitrogen mustards);カルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン(nimustine)、およびラニムスチン(ranimustine)などのニトロソウレア類(nitrosoureas);エンジイン系抗生物質(enediyne)(例えば、カリケアミシン(calicheamicin)、特にカリケアミシンγ1IおよびカリケアミシンωI1(例えば、Agnew.Chem Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994))などの抗生物質類;ジネマイシンA(dynemicin A)などのアントラサイクリン系抗生物質(dynemicin);エスペラミシン(esperamicin);ネオカルジノスタチン(neocarzinostatin)発色団および関連する色素タンパク質エンジイン系抗生物質発色団、アクラシノマイシン(aclacinomycin)、アクチノマイシン(actinomycin)、アントラマイシン(anthramycin)、アザセリン(azaserine)、ブレオマイシン(bleomycin)、カクチノマイシン(cactinomycin)、carabicin、カルミノマイシン(caminomycin,carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン(chromomycinis,chromomycin)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標))(doxorubicin)(モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノドキソルビシン、2-ピロロドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン(epirubicin)、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、marcellomycin、マイトマイシンCなどのマイトマイシン類(mitomycins)、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycin)、ペプロマイシン(peplomycin)、ポトフィロマイシン(potfiromycin,potfiromycin)、ピューロマイシン(puromycin)、quelamycin、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン(streptonigrin)、ストレプトゾシン(streptozocin)、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス(ubenimex)、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤類;デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)などの葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン(mercaptopurine)、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン(thioguanine)などのプリン類似体;アンシタビン(ancitabine)、アザシチジン(azacitidine)、6-アズリジン、カルモフール(carmofur)、シタラビン(cytarabine)、ジデオキシウリジン(dideoxyuridine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、エノシタビン(enocitabine)、フロクスウリジン(floxuridine)などのピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン(dromostanolone propionate)、エピチオスタノール(epitiostanol)、メピチオスタン(mepitiostane)、テストラクトン(testolactone)などのアンドロゲン類;アミノグルテチミド(aminoglutethimide)、ミトタン(mitotane)、トリロスタン(trilostane)などの抗アドレナリン薬類;フォリン酸(folinic acid)などの葉酸サプリメント;アセグラトン(aceglatone);アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸(aminolevulinic acid);エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);bestrabucil;ビサントレン(bisantrene);エダトレキサート(edatraxate);デホスファミド(defosfamide);デメコルシン(demecolcine);ジアジクオン(diaziquone); elformithine;酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素(hydroxyurea);レンチナン(lentinan);ロニダミン(lonidamine);メイタンシン(maytansine)およびアンサミトシン(ansamitocin)などのメイタンシノイド類(maytansinoids);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン(mitoxantrone);モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン(pentostatin);フェナメット(phenamet);ピラルビシン(pirarubicin);ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド(ethylhydrazide);プロカルバジン(procarbazine);多糖類複合体(PSK(登録商標))(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン(sizofuran,sizofiran);スピロゲルマニウム(spirogermanium);テヌアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(trichothecenes)(特にT-2毒素、ベルカリン(verrucarin)A、ロリジン(roridin)Aおよびアンギジン(anguidin));ウレタン(urethan);ビンデシン(vindesine);ダカルバジン(dacarbazine);マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール(mitobronitol);ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(arabinoside)(“Ara-C”);シクロホスファミド;チオテパ(thiotepa);パクリタキセル(TAXOL(登録商標))(paclitaxel) (Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、クレモホールフリー(Cremophor-free)のアルブミン修飾ナノ粒子剤形のパクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Ill.)、およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))(doxetaxel)(Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France)などのタキソイド(taxoids);クロラムブシル(chlorambucil);ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6-チオグアニン(thioguanine);メルカプトプリン(mercaptopurine);メトトレキサート(methotrexate);シスプラチン(cisplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)およびカルボプラチン(carboplatin)などのプラチナアナログ;ビンブラスチン(vinblastine);プラチナ;エトポシド(etoposide)(VP-16);イホスファミド(ifosfamide);ミトキサントロン(mitoxantrone);ビンクリスチン;ナベルビン(NAVELBINE)、ビノレルビン(vinorelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド(teniposide);エダ
トレキサート(edatrexate);ダウノマイシン(daunomycin);アミノプテリン(aminopterin);ゼローダ(xeloda);イバンドロネート(ibandronate);イリノテカン(irinotecan)(Camptosar,CPT-11)(イリノテカン、5-FUおよびロイコボリン(leucovorin)を含む治療レジメン);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸(retinoids)、カペシタビン(capecitabine)などのレチノイド(retinoids);コンブレタスタチン(combretastatin);ホルミルテトラヒドロ葉酸(LV);オキサリプラチン(oxaliplatin)やオキサリプラチンを含む治療レジメン(FOLFOX);ラパチニブ(lapatinib)(TYKERB.);PKC-alpha、Raf、H-RasVEGF-Aの阻害剤;および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
本明細書に記載の医薬組成物は、特に、以下に適したものを含む、固体、液体またはゲルの形態で被験者に化合物を投与するための化合物を調製することができる。(1)例えば無菌溶液や懸濁液または徐放性製剤としての、例えば皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外での注射などの非経口投与;(2)例えば、皮膚に適用するクリーム剤、軟膏剤や制御放出パッチ剤またはスプレー剤としての表面適用;(3)例えばペッサリー、クリームまたはフォーム戸としての膣内または直腸内投与;(4)眼;(5)経皮;(6)経粘膜;または(7)鼻内の投与に適したものが含まれる。
【0127】
一態様では、本発明は、癌を治療するための医薬品の調製における、本発明の抗体または抗体断片、二重特異性抗体、抗体複合体または医薬組成物の使用に関する。一部の実施形態において、前記の癌は、HER2陽性の癌である。
【0128】
別の態様において、本発明は、癌の治療のために使用する本発明の抗体または抗体断片、二重特異性抗体、抗体複合体または医薬組成物に関する。一部の実施形態において、前記の癌は、HER2陽性の癌である。
【0129】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の抗体または抗体断片、二重特異性抗体、抗体複合体または医薬組成物を被験者に投与する工程を含む、癌の治療方法に関する。一部の実施形態において、前記の癌は、HER2陽性の癌である。
【0130】
癌の例としては、基底細胞癌、胆道癌;膀胱癌;骨癌;脳およびCNS癌;乳癌;腹膜癌;子宮頸癌;胆管癌;絨毛癌;結腸直腸癌;結合組織癌;消化器癌;子宮内膜癌;食道癌;眼癌;頭頸部癌;胃癌(胃腸癌を含む);膠芽腫;肝癌;肝癌;上皮内新生物;腎臓癌;喉頭癌;白血病;肝癌;肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、および肺扁平上皮癌);ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫;黒色腫;骨髄腫;神経芽細胞腫;口腔癌(例えば、唇、舌、口、および咽頭);卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;直腸癌;呼吸器癌;唾液腺癌;肉腫;皮膚癌;扁平上皮癌;胃癌;奇形癌;精巣癌;甲状腺癌;子宮癌または子宮内膜癌;泌尿器癌;外陰癌;およびその他の癌や肉腫;ならびに移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、および母斑症に関連する異常な血管増殖、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連する浮腫)、原始起源腫瘍、Meigs症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
一部の実施形態において、前記の癌は、乳癌、胃癌、卵巣癌、前立腺癌、および肺癌からなる群から選択される。
【実施例】
【0132】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。以下の実施例は単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0133】
実施例1:二重特異性抗体の構築
1.腫瘍抗原に結合する第1重鎖の構築
本発明者らは、モノクローナル抗体Ch4D5のアミノ酸配列を参照して、二重特異性抗体の第1結合ドメインとして腫瘍標的Her2/neuに結合するScFv構造を設計、構築し、さらにVH-リンカー-VL、VL-リンカー-VH、およびVH-リンカー-VLにL234A、L235Aの変異を加えたものなどのいくつかの形式を設計した。具体的な設計は次のとおりである。
【0134】
第1実施形態において、腫瘍標的Her2に結合するscFvは、N末端からC末端まで、抗Her2抗体Ch4D5のVHが15アミノ酸の短いペプチドリンカー(GGGGS)×3に連結し、さらにCh4D5のVLと連結する。得られたscFvは、ヒンジ領域、およびOB変異を持つFcに連結し、Her2に結合するScFv-Fc重鎖、即ちHer2-OB1(配列番号1)を形成する。
【0135】
第2実施形態において、腫瘍標的Her2に結合するscFvは、N末端からC末端まで、Ch4D5のVLが15アミノ酸の短いペプチドリンカー(GGGGS)×3に連結し、さらにCh4D5のVHに連結する。得られたscFvは、ヒンジ領域、およびOB配列を持つFcに連結し、Her2に結合するScFv-Fc重鎖、即ちHer2-OB2(配列番号3)を形成する。
【0136】
第3実施形態において、腫瘍標的Her2に結合するScFv-Fc重鎖の構造は、第1実施形態と同様であり、即ち、抗Her2抗体Ch4D5のVHが、15アミノ酸の短いペプチドリンカー(GGGGS)×3に連結し、さらにCh4D5のVLに連結する。得られたscFvは、ヒンジ領域、およびOB配列を持つFcに連結する。Her2-OB1(配列番号1)は、VL領域とヒンジ領域との間にNcoIおよびBg1IIマルチクローニングサイトが含まれるため、他のアミノ酸TVAMVRが含まれる。この実施形態において、該配列は、ヒト抗体配列GEPKで置き換えられて、Her2に結合するScFv-Fc重鎖Her2-OB3(配列番号5)を形成する。
【0137】
第4実施形態は、第3実施形態に基づき、モノクローナル抗体Ch4D5重鎖のCH2領域にL234A、L235Aの変異を導入して、抗体のADCC機能およびCDC機能を低下させ、T細胞への損傷を回避する。得られた配列は、Her2-OB4(配列番号7)である。
【0138】
ELISAの結果から、上記の4つのコンストラクトは、いずれもHer2/neuに対して高い親和性を示し、その中に、VH-リンカー-VL構造を有するOB1、OB3、OB4は、VL-リンカー-VH構造を有するOB2よりも高い親和力を示す。
【0139】
2.T細胞表面抗原であるCD3に結合する重鎖および軽鎖可変領域の構築
本発明者らは、複数の抗ヒトCD3複合体のマウス由来抗体について、詳細な分析および比較を行い、マウス由来抗体GXP(SP34)の可変領域に対して配列最適化およびヒト化を行った。
【0140】
GXP(SP34)は、抗ヒトCD3のマウス由来モノクローナル抗体であり、そのヒト化を実施したこと(US9587021、PCT/US20121038219を参照)が報告された。本発明者らは、そのVHおよびVLのフレームワーク配列をヒト化し、マウス由来の重鎖および軽鎖におけるCDR1、CDR2およびCDR3配列を変化させずに保った。もう1つの重要な原則は、抗体の構造安定性および抗原親和性への影響を減らすために、それぞれのCDR領域付近のマウス由来の配列をできるだけ保持することである。
【0141】
本発明者らが特定した最終的な配列は、表1Aおよび表1Bに示すように、GXP2と命名された。
【0142】
【0143】
【0144】
本発明者らは、GXP(SP34)のマウス由来配列、ヒト化GXP2配列、およびUS9587021に開示されたヒト化配列(C31と命名)を使用して、二重特異性抗体Her2×GXP、Her2×GXP2およびHer2xC31を構築し、それらの熱安定性および生物活性を比較した結果、GXP2のヒト由来CD3に対する親和性がマウス由来GXPおよびヒト化配列C31よりも高く、熱安定性も大幅に向上する(△Tは12℃超)こと;37℃および40℃で27日間保管した条件、または凍結融解を繰り返した条件下で分解せずに安定に保つことが意外に判明した。
【0145】
さらに、二重特異性抗体の腫瘍殺傷効果およびサイトカインストーム誘発活性を評価した結果、GXP2は、Her2陽性の腫瘍細胞を殺傷する能力が大幅に向上するが、サイトカインストームを誘発する活性は、抗CD3モノクローナル抗体よりも著しく低下することが分かった。そして、NOD-SCIDマウスの移植腫瘍モデルにおいて優れた抗腫瘍活性を示した。上記の結果は、GXP2が潜在的な抗腫瘍薬の候補であることを示す。
【0146】
実施例2:二重特異性抗体の発現および精製
本実験に含まれるすべての二重特異性抗体は、一過性トランスフェクションまたは安定トランスフェクションによって発現された。まず、OMEGAキットを利用してプラスミドを抽出した。調製の具体的な操作は、通常の分子生物学の方法に従って行われた。OPM-CD03293培地を利用して37℃、5%CO2の細胞培養用シェーカーで293F細胞を130rpmで振盪培養した。細胞が対数増殖期に成長した後、トランスフェクション試薬PEIを使用して、異なる組み合わせのプラスミドを293F細胞にコトランスフェクトし、HER2×CD3に対する一連の二重特異性抗体を発現した。トランスフェクトした24時間および96時間に、それぞれ細胞培養サプリメントを添加し、トランスフェクトした7日目に3500rpmで細胞培養上清を遠心分離して回収した。
【0147】
本発明は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラム(GE)を利用して、細胞培養上清から二重抗体を捕捉する。まず、カラム容量の10倍量の平衡化緩衝液(PBS、PH7.4)でカラムを平衡化し、次にサンプルをアフィニティークロマトグラフィーカラムにロードし、溶出緩衝液(100mMグリシン-HCl、pH3.5、150mM塩化ナトリウムを含む)で溶出する。その後、陽イオン交換クロマトグラフィーを使用してHitrap SP HPカラム(GE)を通過して、副産物から目的の二重特異性抗体を分離させ、平衡化緩衝液(50mMリン酸緩衝液、pH6.0)でカラムを平衡化した後、溶出緩衝液である50mMリン酸緩衝液(pH6.0、溶液A)と1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH6.0、溶液B)とを混合して25倍のカラム容量でグラジエント溶出を行い;最後に、濃縮し、PBS緩衝液(pH7.4)と交換して保管する。
【0148】
続いて、精製された生成物をSDS-PAGE検出および同定に供し、その結果を
図2A~2Bに示す。その中で、
図2Aは非還元SDS-PAGEの結果であり、
図2Bは還元SDS-PAGEの結果である。ここで、Mはタンパク質分子量マーカーであり、ウェル2~7はプロテインAによる精製後に溶出された二重特異性抗体HER2×GXP2のサンプルである。
図2A~2Bの結果から、プロテインAによる一段階精製を行った後、非常に高い純度の目的の二重特異性抗体が得られることが分かった。これは、軽鎖がミスマッチせずに相同な重鎖に特異的に結合することでき、それにより発現生成物に高純度の目的の二重特異性抗体を含むことを保証することを示しす。本発明で開示される二重特異性抗体は非対称構造であるため、目的抗体と対応するホモ二量体の分子量は一致しなくて、下流の精製に有利である。
【0149】
実施例3:標的抗原CD3およびHER2に対する二重特異性抗体の結合活性の分析
本研究ではELISA分析法を使用した。具体的な実験手順は次のとおりである。抗原CD3または抗原HER2をELISAプレート(NUNC)にコートし、4℃で一晩コートし、プレートを洗浄した後、スキムミルクでブロッキングし、プレートを洗浄し、その後、二重特異性抗体および対照サンプルを加え、室温で1.5時間インキュベートした。プレートを洗浄し、1:2000で希釈された二次抗体(ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG、Proteintech(商標))を加え、室温で1時間インキュベートし、プレートを洗浄した後、発光基質A+B(A:B=1:1)を加え、3分後、マイクロプレートリーダー(Synergy HTX、BioTeck)で吸光度を測定した。
【0150】
ELISAの結果から、二重特異性抗体がCD3抗原に対して陽性の結合を示し、且つその結合率が用量依存的な関係を示したことが明らかとなった。本発明で開示されるヒト化抗体HER2-OB1×GXP2のCD3抗原に対する結合活性は、ヒト化抗体HER2-OB1×C31およびマウス由来抗体HER2-OB1×GXPよりも高い。それらとCD3抗原との結合のEC50は、それぞれ1.402μg/mL、3.522μg/mLおよび3.153μg/mLであった(
図3)。
【0151】
さらに、二重特異性抗体は、腫瘍細胞の表面抗原HER2を特異的に認識して結合することもでき、且つその結合率は用量依存的な関係を示した。二重特異性抗体HER2-OB1×GXP2、HER2-OB1×C31、およびHER2-OB1×GXPのHER2抗原に対する結合活性はそれほど変わらないため、HER2配列と異なるCD3抗体配列との組み合わせが、HER2抗原への結合に影響しないことを示す(
図4を参照)。
【0152】
実施例4:二重特異性抗体の熱安定性分析
1.熱処理した二重特異性抗体の安定性および親和性の試験
適量の二重特異性抗体サンプルを、サンプルごとに10本ずつPCRチューブに分注し、PCR機器(Mygene(商標))に温度勾配を設定し、恒温で30分間加熱した。温度は、35℃、40.6℃、45℃、50℃、55.6℃、60℃、65℃、70.6℃、75℃に設定され、残った1チューブの元の抗体は、コントロールとして-20℃で保存された。処理終了後、サンプルを室温まで冷却し、-20℃で保管した。
【0153】
ELISAプレートをCD3抗原またはHER2抗原でコートし、プレートを洗浄した後、牛乳でブロッキングし、プレートを洗浄し、元の二重特異性抗体コントロールおよび熱処理された二重特異性抗体を加え、1時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、酵素標識抗体を加え、インキュベートし、プレートを洗浄し、酵素標識抗体と反応する発光基質を添加した後、多機能マイクロプレートリーダー(Synergy HTX、BioTek)で吸光度を測定した。ここで、この吸光度は、特異的に結合した抗体の量に比例した。結果から、HER2-OB1×GXP2二重特異性抗体の熱変性曲線の中点値T50が58.28℃に達したことを示した。
【0154】
ELISAアッセによって、上記の処理をした二重特異性抗体がCD3抗原に結合する能力を測定し、その熱安定性を決定した。その結果、本発明のヒト化抗体HER2-OB1×GXP2の熱安定性は大幅に改善され、その熱変性曲線の中間値T
50は58.28℃に達し、マウス由来抗体HER2-OB1×GXP(T
50は45.71℃)より約12℃向上しただけでなく、他のヒト化二重特異性抗体HER2-OB1×C31(T
50は49.55℃)よりもほぼ10℃向上したことが判明した(
図5を参照)。これらの結果は、本発明の最適化を実施した後、HER2-OB1×GXP2の熱安定性が著しく向上し、癌を治療するための抗体医薬品としてより適していることが示された。
【0155】
2.二重特異性抗体の長期熱安定性の試験
適量の二重特異性抗体を20本の1.5mLEPチューブに分注し、そのうちの10本を37℃で保管し、残りの10本を40℃で保管した。2つのグループの実験において、0日目、1日目、3日目、6日目、10日目、13日目、17日目、20日目、24日目、27日目に、それぞれ順次に1つチューブにSDS-PAGEローディングバッファーを追加し、-20℃で冷凍した。最後に、すべてのサンプルをSDS-PAGEで測定した。
【0156】
電気泳動の結果は、37℃または40℃で27日間保存した場合でも、いずれの二重特異性抗体HER2×GXP2は明らかに分解しなかったことを示した(
図6A~6Dを参照)。上記の結果は、HER2×GXP2二重特異性抗体が優れた長期安定性を有することを示した。
【0157】
3.凍結解凍を繰り返した二重特異性抗体の安定性の試験
適量の二重特異性抗体を4本の1.5mLEPチューブに分注し、F-T0-3でマークを付け、F-T0を4℃で保管し、F-T1-3を-20℃で保管した。F-T1-3が固体に凍結した後、F-T1-3を急速に解凍させ、F-T1を4℃で保管し、F-T2-3を-20℃で保管した。F-T2-3が固体に凍結した後、F-T2-3を急速に解凍させ、凍結解凍を2回繰り返したF-T2を4℃で保管し、F-T3を-20℃で保管した。F-T3を固体に凍結した後、F-T3を急速に解凍させ、F-T3は凍結解凍を3回繰り返した。最後に、すべてのサンプルをSDS-PAGEおよびELISAで分析した。
【0158】
SDS-PAGEの結果は、凍結解凍を3回繰り返しても、二重特異性抗体HER2×GXP2は明らかな分解が現れず、そのバンドは凍結解凍をしながったサンプルと一致したままであり(
図7Aを参照)、凍結解凍を繰り返した場合の安定性を示した。これと一致して、CD3およびHER2 ELISAアッセでは、凍結融解したサンプルおよび凍結融解しながったサンプルの対応する抗原に結合した吸光度はほぼ同じである(
図7Bおよび7Cを参照)。これは、凍結融解を繰り返した場合、二重特異性抗体HER2×GXP2は、CD3抗原およびHER2抗原に対する高い結合活性を保持していることを示した。
【0159】
実施例5:サイトカイン放出に対する二重特異性抗体の影響
本発明において、PBMC細胞を使用して、サイトカイン放出に対する二重特異性抗体の影響を測定した。PBMC細胞をPBSで洗浄した後、1640培地で細胞密度を2×10
6/mLに調整し、100μL/ウェルで96ウェルプレートに加え、即ち2×10
5細胞/ウェルに加えた。1640培地で抗体を2μg/mLに希釈した後、100μLの抗体希釈液を各ウェルに添加し、即ち、最終的な抗体濃度は1μg/mLとなった。96ウェルプレートを37℃、5%CO
2インキュベーターで24時間インキュベートした。本実験では、二重抗体サンドイッチELISA法を使用して、サンプル中のサイトカインの濃度を検出した。サイトカインに特異的に結合するモノクローナル捕捉抗体は、ELISAプレートにコートし、サンプル中のサイトカインが捕捉抗体に結合した。その後、ビオチン化した抗サイトカイン抗体はサイトカインに結合して、捕捉抗体、サイトカインおよびビオチン化した抗体の免疫複合体を形成した。具体的な実験手順は次のとおりである。PBMC細胞を含む上記の96ウェルプレートを1000rpmで5分間遠心し、上清を100μL/ウェルで対応するウェルに加え、パラフィルムで反応ウェルを密封し、室温で120分間インキュベートした。プレートを5回洗浄し、100μL/ウェルでビオチン化抗体を添加し、パラフィルムで反応ウェルを密封し、室温で60分間インキュベートした。プレートを5回洗浄し、100μL/ウェルでHRP-ストレプトアビジンを添加し、パラフィルムで反応ウェルを密封し、室温、遮光下で10~20分間インキュベートした。プレートを5回洗浄し、100μL/ウェルで発色剤であるTMB溶液を添加し、パラフィルムで反応ウェルを密封し、室温、遮光下で20分間インキュベートした。50μL/ウェルで停止液を加え、均一に混合した後、すぐにマイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。実験結果を
図8A~8Dに示す。
【0160】
同量のHER2×GXP2抗体またはCD3モノクローナル抗体を使用して、異なる健康なドナー由来のPBMCと共に一晩インキュベートした。その上清を取って上記のELISAサンドイッチ法実験を行い、サイトカインIL-6、TNF-αの放出量を測定することにより、T細胞が非特異的に活性化され、サイトカインストームが発生するかどうかを確認した。実験結果から、HER2陽性細胞が存在しない場合では、高用量(1μg/mL)のHER2×GXP2抗体を異なるドナーのPBMCと共にインキュベートしても、T細胞が非特異的に活性化する現象は見られなかった。CD3モノクローナル抗体がIL-6およびTNF-αを含むサイトカインの高いレベルの放出を引き起こしたことは、本実験で使用されたT細胞の機能が正常で、CD3モノクローナル抗体によって活性化されることを証明した。これに対して、本発明の二重特異性抗モノクローナル抗体HER2×GXP2では、IL-6、TNF-αのレベルは、陰性対照群(RPMI1640培地)に近い、いずれもCD3モノクローナル抗体群より明らかに低下し;また、異なるドナーのPBMCを使用しても、同様の結果を得た(
図8Aおよび8Bは、それぞれドナー
#1のIL-6およびTNF-αの結果を示し;
図8Cおよび8Dは、それぞれドナー
#2のIL-6およびTNF-αの結果を示す)。上記の結果は、本発明のHER2×GXP2二重抗体を使用してHER2陽性腫瘍を臨床的に治療する場合、サイトカインストームの発生を低減でき、その安全性が大幅に改善されることを示す。
【0161】
実施例6:二重特異性抗体が媒介したPBMC細胞のHER2陽性腫瘍細胞に対する殺傷の測定
1.標的細胞の培養
SKBR細胞(HER2+++)、N87細胞(HER2++)、MCF-7細胞(HER2+)をT75フラスコに置いて、37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。上記の細胞に対応する培地は、SKBR-3:DMEM(Gibco)、N87:1640(Gibco)、MCF-7:MEM(Gibco)であり、すべての培地は、10%FBS、1×GlutaMax-Iおよび100U/mLの2つの抗生物質を含有した。対照である293F細胞(HER2陰性)を、OPM CD03 293培地で37℃、5%CO2細胞培養用シェーカーで培養した。
【0162】
2.PBMCの分離
静脈から新鮮な全血を採血した後、生理食塩水で2倍に希釈し、リンパ球層の液体を目盛り付き遠心チューブに転移し、スポイトでチューブ壁に沿って希釈した全血を分離液にゆっくりと加え、両者の間の界面をきれいに保持した。水平遠心機を利用して760gで30分間遠心した。白い膜の層の位置を観察しながら、キャピラリーピペットで混濁した部分に穏やかに挿入し、スポイトでこの層の細胞を穏やかに吸引して、他の遠心分離管に移した(他の細胞成分との混合を避けるために、余分な層状の液体または血漿吸い取らないようにする)。PBSで細胞を3回洗浄し、室温で水平遠心分離した。1回目は427gで15分間遠心し、2回目は273gで10分間遠心し、3回目は229gで10分間遠心することにより、ほとんどの混合した血小板を除去できる。細胞を1640培地(10%FBSおよび二重抗体を含む)に懸濁し、37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。
【0163】
3.ADCC(抗体依存性細胞傷害作用)
本研究は、以下の原理に基づいた。即ち、二重特異性抗体は、標的細胞とT細胞に結合して、HER2陽性の標的細胞とT細胞におけるCD3複合体を同時に認識することにより、腫瘍細胞とT細胞を互いに接近させ、T細胞を活性化して腫瘍細胞を殺傷する。本発明において、LDH放出実験で二重特異性抗体の殺傷活性を検出する。即ち、細胞内の乳酸脱水素酵素が上清に放出され、一定量の上清を採取し、反応基質である乳酸および適量の酵素溶液を添加し、乳酸脱水素酵素と乳酸と反応させて、吸光度の値を測定することにより、腫瘍細胞から放出された乳酸脱水素酵素の量を決定できるため、抗体の刺激によるPBMCの腫瘍細胞に対する殺傷活性を間接的に測定することができる。
【0164】
トリプシンで標的細胞(SKBR-3細胞、NCI-N87細胞、MCF-7細胞を含む)を消化して、単一細胞懸濁液を調製し、ここで、293F細胞を培養した際にすでに単一細胞懸濁液であった。5%FBS-1640培地で細胞濃度を0.20×106/mLに調整し、各ウェルに1.0×104細胞を含むように、50μL/ウェルで96ウェルプレートに添加した。本実験で使用されたエフェクター細胞と標的細胞の比率は15:1である。実験において、同量の5%FBS-1640培地を満たした対照ウェルを設置した。
【0165】
5%FBS-1640培地で抗体を4μg/mLに希釈した後、1:4の比率で希釈して、10個の濃度がそれぞれ4000ng/mL、1000ng/mL、2500ng/mL、625ng/mL、156.25ng/mL、39.06ng/mL、9.77ng/mL、2.44ng/mL、0.61ng/mL、0.15ng/mLである抗体を得た。実験計画に従って、50μL/ウェルで対応する抗体を加え、等量の5%FBS-1640培地で対照ウェルを満たした。細胞と抗体を均一に混合した後、37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。18~20時間後、乳酸脱水素酵素細胞毒性試験用キット(Beyotime)を使用して細胞の殺傷毒性を検出し、二重抗体の殺傷活性を算出した。計算式は次の通りである。
殺傷率%=(実験値-S自発)/(Max-S自発)×100%
ただし、S自発=OD自発放出孔(標的細胞+エフェクター細胞)、Max=OD最大放出孔(標的細胞)
【0166】
異なるHER2発現レベルの腫瘍細胞株を、健常者由来PBMCおよび勾配希釈されたHER2×GXP2とコインキュベートし、上清の乳酸脱水素酵素の含有量を測定することで、腫瘍細胞の殺傷状況を判断した。結果から、本発明の二重特異性抗体HER2×GXP2が、HER2の発現が高い腫瘍細胞に対して非常に優れた殺傷効果を示し、HER2の発現が低い腫瘍細胞に対しても殺傷効果を有するが、HER2陰性細胞に対しては殺傷活性を持たないことが分かった。二重特異性抗体は、インビトロ細胞毒性実験でHER2陽性腫瘍細胞に対して優れた殺傷効果を示すが、HER2陰性細胞に対しては殺傷効果がないことを示した。
【0167】
具体的には、ヒト乳癌細胞SKBR-3は、HER2抗原の発現が高い細胞株(HER2+++)に属する。HER2×GXP2は、免疫細胞によるSKBR-3の殺傷を効果的に媒介できる。そのEC50は、他のヒト化抗体HER2×C31より5倍低く、従来に臨床的に使用されている乳癌治療薬であるハーセプチン(Herceptin)よりも100倍以上低いである(
図9Aを参照)。
【0168】
ヒト胃癌細胞NCI-N87(HER2++)のHER2の発現量は、SKBR-3細胞よりもわずかに低いである。ここで、HER2×GXP2のEC50は3.952×10
-4μg/mLで、対照群であるハーセプチン(Herceptin)およびHER2×C31(それぞれ2.182×10
-2μg/mLおよび3.647×10
-3μg/mL)(
図9Bを参照)よりも明らかに低下し、その傾向はSKBR-3細胞における結果と一致した。
【0169】
MCF-7細胞および293F細胞(HER2+/-、正常細胞に相当する)などのHER2抗原の発現が低い細胞株またはHER2陰性の細胞株は、二重特異性抗体HER2×GXP2による殺傷に対して敏感ではなく、明らかな殺傷効果はない(
図9Cおよび
図9Dを参照)。
【0170】
以上のことから、SKBR-3やNCI-N87細胞などのHER2が高発現する腫瘍細胞は、抗HER2×CD3の二重特異性抗体HER2×GXP2に非常に敏感であり、低濃度のHER2×GXP2を使用すると、非常に良好な殺傷効果が得られ;さらに、本明細書で開示される二重特異性抗体HER2×GXP2のSKBR-3やNCI-N87細胞に対するEC50は、ハーセプチン(Herceptin)およびHER2×C31に比べて明らかに低く、より低濃度のHER2×GXP2を使用することで、高濃度のハーセプチン(Herceptin)と類似した殺害効果が得られる。
【0171】
さらに、二重特異性抗体HER2×GXP2は、MCF-7や293F細胞などのHER2が低い発現する細胞またはHER2陰性細胞に対して明きらかな殺傷効果を示さない。HER2×GXP2によるSKBR-3やNCI-N87細胞の殺傷効果を総合すると、HER2×GXP2は、正常細胞に損傷を与えることなく、免疫細胞を刺激してHER2陽性腫瘍細胞を特異的に殺傷できることが示される。
【0172】
実施例7:動物腫瘍モデルにおける腫瘍に対する二重特異性抗体のインビボでの殺傷効果の分析
24匹のマウスをランダムで4つの群に分け、各群に6匹ずつであった。その後、対数増殖期にあるSKOV-3細胞(HER2陽性の卵巣癌細胞、Her2発現量はHer2
++とHer2
+++の間)を収集し、遠心分離してSKOV-3細胞の細胞濃度を5×10
7細胞/mLに調整し、PBMC細胞濃度を5×10
7細胞/mLに調整した。SKOV-3細胞を等量のPBMCと混合した後、マウスの右腋窩に0.2mL/匹で皮下接種した。腫瘍細胞を接種した後、1日目、3日目、5日目および8日目に、低用量(0.5mg/kg)、中用量(1mg/kg)、高用量(5mg/kg)で本発明の二重特異性抗体HER2×GXP2をそれぞれ1回投与した。なお、陰性対照群に等量の滅菌生理食塩水を与えた。群分けの際(即ち、最初の投与前)に1回、投与した後、毎週に2回、安楽死の前に1回、腫瘍の長径と短径を測定して記録し、腫瘍体積を計算し、腫瘍体積によって腫瘍成長曲線を作成し、各群の間の腫瘍成長曲線の違いを比較した。腫瘍体積は、次の式に従って計算した。V=1/2×長径×短径
2。
図10は、腫瘍体積の時間に対する変化の曲線を示す。
【0173】
上記の結果は、低用量、中用量および高用量で投与された本発明の二重特異性抗体HER2×GXP2がいずれもマウス体内の腫瘍増殖を効果的に阻害したことを示す。上記の結果は、本発明の二重特異性抗体HER2×GXP2が、インビトロで免疫細胞を媒介してHER2陽性腫瘍細胞を標的として効果的に殺傷するだけでなく、インビボでもHER2陽性腫瘍の成長を効果的に阻害できることを証明する。
【配列表】