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特許7067016多視点質感シミュレーションシステム及び多視点質感シミュレーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】多視点質感シミュレーションシステム及び多視点質感シミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 13/302 20180101AFI20220509BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20220509BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20220509BHJP
   H04N 13/349 20180101ALI20220509BHJP
   H04N 13/128 20180101ALI20220509BHJP
【FI】
H04N13/302
G09G5/00 510V
G09G5/36 510V
H04N13/349
H04N13/128
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017204501
(22)【出願日】2017-10-23
(65)【公開番号】P2019080133
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 翼
(72)【発明者】
【氏名】森本 哲郎
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-197240(JP,A)
【文献】特表2011-522316(JP,A)
【文献】特開2015-070618(JP,A)
【文献】特開2015-119203(JP,A)
【文献】国際公開第2017/049106(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 13/00.
G09G 5/00
G02B 30/00
G03B 35/00
G06T 5/00-7/00
G06T 15/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型パネルを複数枚組み合わせた積層型ディスプレイに、仮想的な3次元空間に配置された仮想的な物体を複数の異なる視点から撮影した多視点画像からなる光線空間圧縮画像を表示する多視点質感シミュレーションシステムであり、
前記物体の表面に描かれた絵柄の絵柄画像データ、前記物体の表面の光沢情報である光沢特性データと、前記物体の表面の法線ベクトル情報である法線画像データ、前記物体表面に照射される光を出射する光源の光の特性を示す光源特性データと、観察条件情報と、を含む計算情報から光線空間画像データを生成する画像処理部と、
前記画像処理部において生成された前記光線空間画像データから、前記積層型ディスプレイの前記透過型パネルの各々に表示する複数の光線空間圧縮画像を生成する光線空間圧縮部と、
前記光線空間圧縮画像を複数枚の前記透過型パネルのそれぞれに表示する画像表示制御部と、
を備える、多視点質感シミュレーションシステム。
【請求項2】
前記光線空間画像データは、前記観察条件情報に基づいた複数の観察位置を視点として撮影された複数の異なる視点における画像データにより生成される、請求項1に記載の多視点質感シミュレーションシステム。
【請求項3】
前記光線空間圧縮画像は、前記光線空間画像データを解の条件として最適化計算により生成した、前記積層型ディスプレイが有する前記透過型パネルの枚数分の透過率パターンを用いて生成される、請求項1または2に記載の多視点質感シミュレーションシステム。
【請求項4】
前記画像処理部が、前記絵柄画像データ、前記法線画像データ、前記物体の前記3次元空間における位置を示す物体位置データ及び前記光源の前記3次元空間における位置を示す光源位置データを用いて前記物体の表面の拡散反射光画像データを生成し、
前記光線空間圧縮部は、生成する複数の前記光線空間圧縮画像の内1枚を、前記拡散反射光画像データにスケーリング係数を乗算し鏡面反射光比率を足した画像として固定する、請求項1から3のいずれかに記載の多視点質感シミュレーションシステム。
【請求項5】
前記画像表示制御部は、前記積層型ディスプレイが有する複数の前記透過型パネルの内1枚に前記拡散反射光画像データにスケーリング係数を乗算し鏡面反射光比率を足した画像を表示する、請求項4に記載の多視点質感シミュレーションシステム。
【請求項6】
仮想的な3次元空間に配置された仮想的な物体を複数の異なる視点から撮影した多視点画像からなる光線空間圧縮画像を、透過型パネルを複数枚組み合わせた積層型ディスプレイに表示する多視点質感シミュレーションシステムのコンピュータが実行する方法であり、
前記コンピュータが、少なくとも前記物体の表面に描かれた絵柄の絵柄画像データ、前記物体の表面の光沢情報である光沢特性データと、前記物体の表面の法線ベクトル情報である法線画像データと、前記物体表面に照射される光を出射する光源の光の特性を示す光源特性データと、観察条件情報と、を用いて光線空間画像データを生成する画像処理過程と、
前記コンピュータが、生成された前記光線空間画像データから、前記積層型ディスプレイの前記透過型パネルの各々に表示する前記光線空間圧縮画像を生成する光線空間圧縮過程と、
前記コンピュータが、前記光線空間圧縮画像を複数枚の前記透過型パネルにそれぞれ表示する画像表示制御過程とを含む、多視点質感シミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想的な3次元空間に配置された仮想的な物体を複数の異なる視点から撮影した多視点画像からなる光線空間圧縮画像として表示する多視点質感シミュレーションシステム及び多視点質感シミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁紙、合成皮革、車の内装材、床や家具に用いられる化粧シート等の工業製品の表面に、白地や単色、または複数の色から構成される絵柄とともに凹凸形状を設けた凹凸模様を形成する技術が知られている。凹凸模様の形成では、例えば、初めに面材表面に対する絵柄の印刷を行い、その後、当該面材にエンボス加工等により凹凸形状が形成される。
【0003】
こうした凹凸模様の質感を確認するため、例えば特許文献1あるいは特許文献2によるシミュレーションでは表面に凹凸模様を有する物体の模様の仕上がりを表示することができる。上記のシミュレーションでは光源および視点の位置関係から物体の表面において反射する光の強度等を計算し、これを画像として表示することで観察者に対して物体の質感を知覚させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5434499号公報
【文献】特開2017-117129号公報
【文献】特開2014-93779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の凹凸模様のシミュレーションでは、通常の2次元ディスプレイに表示する画像を生成し観察者に対して提示しているため、観察者が視点を動かした際に本来あるべき光沢や凹凸による模様の変化を表現することが出来ない。物体の質感を知覚するためには、運動視差および両眼視差による模様の変化は重要であり、2次元ディスプレイを用いた質感表示方法では観察者に物体の質感を正しく伝えることが難しいという問題がある。
【0006】
また、レンチキュラレンズやパララックスバリアを用いた裸眼式3次元ディスプレイといった視差型3次元ディスプレイがある。この視差型3次元ディスプレイはそれぞれの視点方向に対応した物体模様仕上がり画像を表示することで質感を提示することができる。しかし視差型3次元ディスプレイは表示できる視差画像の数が少なく、観察者に質感を知覚するために十分な視点を提供することができない。
【0007】
これに対して、物体から出る反射光をディスプレイ上で光線波形の再生として再現する光線再生型ディスプレイがある。その中でも透過型パネルを複数枚重ねて、それぞれのディスプレイに表示される画像の重畳により光線波形を再生するディスプレイを積層型ディスプレイという。積層型ディスプレイでは同時に複数の観察者(視点)に画像を提示することが可能である。しかし積層型ディスプレイに表示する画像は特許文献3に示されるように多視点で撮影した画像もしくはCG画像を圧縮して作成するため、その計算量が膨大となり高速な画像の生成が困難になるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、積層型ディスプレイに表示する画像の生成を高速に行う多視点質感シミュレーションシステム及び多視点質感シミュレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の一局面は、透過型パネルを複数枚組み合わせた積層型ディスプレイに、仮想的な3次元空間に配置された仮想的な物体を複数の異なる視点から撮影した多視点画像からなる光線空間圧縮画像を表示する多視画像処理システムであり、物体の表面に描かれた絵柄の絵柄画像データ、物体の表面の光沢情報である光沢特性データと、物体の表面の法線ベクトル情報である法線画像データ、物体表面に照射される光を出射する光源の光の特性を示す光源特性データと、観察条件情報と、を含む計算情報から光線空間画像データを生成する画像処理部と、画像処理部において生成された光線空間画像データから、積層型ディスプレイの透過型パネルの各々に表示する複数の光線空間圧縮画像を生成する光線空間圧縮部と、光線空間圧縮画像を複数枚の透過型パネルのそれぞれに表示する画像表示制御部と、を備える、多視点質感シミュレーションシステムである。
【0010】
また、光線空間画像データは、観察条件情報に基づいた複数の観察位置を視点として撮影された複数の異なる視点における画像データにより生成されてもよい。
【0011】
また、光線空間圧縮画像は、光線空間画像データを解の条件として最適化計算により生成した、積層型ディスプレイが有する透過型パネルの枚数分の透過率パターンを用いて生成されてもよい。
【0012】
また、画像処理部が、絵柄画像データ、法線画像データ、物体の3次元空間における位置を示す物体位置データ及び光源の3次元空間における位置を示す光源位置データを用いて物体の表面の拡散反射光画像データを生成し、光線空間圧縮部は、生成する複数の光線空間圧縮画像の内1枚を、拡散反射光画像データにスケーリング係数を乗算し鏡面反射光比率を足した画像として固定してもよい。
【0014】
また、画像表示制御部は、積層型ディスプレイが有する複数の透過型パネルの内1枚に拡散反射光画像データにスケーリング係数を乗算し鏡面反射光比率を足した画像を表示してもよい。
【0015】
また、本発明の他の局面は、仮想的な3次元空間に配置された仮想的な物体を複数の異なる視点から撮影した多視点画像からなる光線空間圧縮画像を、透過型パネルを複数枚組み合わせた積層型ディスプレイに表示する多視点質感シミュレーションシステムのコンピュータが実行する方法であり、コンピュータが、少なくとも物体の表面に描かれた絵柄の絵柄画像データ、物体の表面の光沢情報である光沢特性データと、物体の表面の法線ベクトル情報である法線画像データと、物体表面に照射される光を出射する光源の光の特性を示す光源特性データと、観察条件情報と、を用いて光線空間画像データを生成する画像処理過程と、コンピュータが、生成された光線空間画像データから、積層型ディスプレイの透過型パネルの各々に表示する光線空間圧縮画像を生成する光線空間圧縮過程と、コンピュータが、光線空間圧縮画像を複数枚の透過型パネルにそれぞれ表示する画像表示制御過程とを含む、多視点質感シミュレーション方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、積層型ディスプレイに表示する画像の生成を高速に行う多視点画像処理システム及び多視点画像処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る多視点質感シミュレーションシステムの構成を示すブロック図
図2】シミュレーションに用いるテーブルの構成例を示す図
図3】結果データテーブルの構成例を示す図
図4】画像処理部の構成例を示す図
図5】光線空間画像データの取得方法の例
図6】生成された光線空間画像データの例
図7】光源から出射される出射光Iiと画素に入力される放射照度Eとの対応を説明する図
図8】積層型ディスプレイの構成例を示す図
図9】拡散反射画像の放射輝度値Idを入力として、レイヤに表示する画素値dAとの関係を示す図
図10】積層型ディスプレイへ光線空間圧縮画像を表示する処理の動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る多視点質感シミュレーションシステム1の構成を示すブロック図である。多視点質感シミュレーションシステム1は、入力部101、操作部102、画像処理部103、光線空間圧縮部104、画像表示制御部105、表示部106、データベース107、拡散反射画像記憶部108、光線空間画像記憶部109、表示画像記憶部110、記憶部111を備えている。
【0019】
多視点質感シミュレーションシステム1は、光源を備える仮想的な3次元空間上に配置された、所定の絵柄(模様)が表面に描かれた計算対象である仮想的な物体からの反射光をシミュレーションにより求めて、表示部106である後述の積層型ディスプレイ301に複数の異なる視点における画像(多視点画像)をデータを圧縮した光線空間圧縮画像として表示することができる。なお、多視点質感シミュレーションシステム1は、請求項の「多視点画像処理システム」に相当する。
【0020】
入力部101は、多視点質感シミュレーションシステム1のユーザが、シミュレーションに必要な情報を入力する入力手段であり、例えばキーボード、マウス、タッチパッドなどを用いることができる。入力部101からは、光源特性データ、光源位置データ、観察位置データ、物体位置データ、絵柄画像データ、光沢特性データ、法線画像データ、などシミュレーションに必要な情報(計算情報)を、例えば図示しないモニターに表示した選択肢から選択するなどの操作により入力することができる。
【0021】
ここで、光源特性データは、計算対象である物体表面に対して光源から放射される光の特性を示す情報である。
【0022】
光源位置データは、計算対象である物体に対する光源の3次元空間における位置を示す情報である。
【0023】
観察位置データは、計算対象の物体を撮影(観察)する視点の3次元空間における位置を示す情報である。ただし本システムでは多視点で物体を撮影するため、予め複数の観察位置データを保持している。この観察位置データの数はユーザが設定可能であり、後述する光線空間圧縮画像生成に用いる多視点画像の縦、横方向の視点数を設定できる。ただし、視点数増加により光線空間圧縮画像生成の計算時間は増加する。
【0024】
物体位置データは、シミュレーションの3次元空間における計算対象である物体表面の位置を示す。例えば、3次元空間における計算対象である物体表面を有限個の複数の面に分割し、各面の中心点の座標位置を示す情報を用いることができる。
【0025】
絵柄画像データは、計算対象である物体表面に描かれる絵柄の画像データである。
【0026】
光沢特性データは、計算対象である物体表面の光沢情報である。光沢情報は、例えば、双方向反射率分布関数(BRDF)、双方向散乱面反射率分布関数(BSSRDF)を用いて反射モデル化されたものを用いることができる。モデル化された光沢情報としては、例えば、光沢の強さ、光沢の鋭さ(広がり)、光沢の方向性などの情報を含んで構成することができる。
【0027】
法線画像データは、計算対象である物体表面の法線ベクトル情報である。
【0028】
絵柄画像データ、光沢特性データ及び法線画像データは、例えば計算対象である物体表面を形成する画素の各点について付与することができる。
【0029】
図2は、データベース107に予め書き込まれて記憶されている、シミュレーションに用いるテーブルの構成例を示す図である。
【0030】
図2の(a)は、シミュレーションに用いる光源の情報を示す光源情報テーブルであり、光源を識別する光源識別情報と、この光源識別情報の示す光源の波長の特性が記憶されているデータベース107におけるアドレスなどのインデックスである光源特性データインデックスとが、対応付けられて予め書き込まれて記憶されている。
【0031】
図2の(b)は、計算対象である物体表面の絵柄の領域の色データ(例えば、拡散反射率情報)を示す絵柄情報テーブルであり、絵柄を識別する絵柄識別情報と、この絵柄識別情報の示す絵柄の領域における各画素の色データが記憶されているデータベース107におけるアドレスなどのインデックスである絵柄画像データインデックスとが、対応付けられて予め書き込まれて記憶されている。
【0032】
図2の(c)は、計算対象である物体表面の光沢情報を示す特性情報テーブルであり、光沢特性を識別する光沢特性識別情報と、この光沢特性識別情報の示す物体表面の各画素における光沢画像データが記憶されているデータベース107におけるアドレスなどのインデックスである光沢特性データインデックスとが、対応付けられて予め書き込まれて記憶されている。光沢特性データは、上述したように物体表面の画素ごとに設定されており、各画素における光沢を示す鏡面反射率及び表面粗さなどを示している。
【0033】
図2の(d)は、計算対象である物体表面の凹凸形状を示す法線情報テーブルであり、法線を識別する法線識別情報と、この法線識別情報の示す物体表面の各画素における法線ベクトルが記憶されているデータベース107におけるアドレスなどのインデックスである法線画像データインデックスとが、対応付けられて予め書き込まれて記憶されている。
【0034】
図1に戻り、データベース107は、本実施形態において、多視点質感シミュレーションシステム1に設けられているが、図示しないネットワーク上に設けられていても良い。この場合、多視点質感シミュレーションシステム1は、必要に応じて光源情報テーブル、絵柄情報テーブル、光沢特性情報テーブル及び法線情報テーブルの各々を、ネットワークを介して参照する構成としても良い。また、データベース107は、光学ドライブなどのメディア読み取り装置、ハードディスクなどを用いて構成できる。
【0035】
記憶部111には、結果データテーブルが記憶されている。図3は、シミュレーションの結果に対応して記憶部111に記憶される結果データテーブルの構成例を示す図である。図3に示すように、結果データテーブルには、シミュレーション結果識別情報に対応して、光源特性データインデックス、光源位置データ、観察位置データ、物体位置データ、絵柄画像データインデックス、光沢特性データインデックス、法線画像データインデックス、結果インデックスの各々が書き込まれて記憶されている。光源特性データインデックス、絵柄画像データインデックス、光沢特性データインデックス、法線画像データインデックスの各々は、ユーザの入力部101における選択などにより、図2に示した光源情報テーブル、絵柄情報テーブル、光沢特性情報テーブル、法線情報テーブルそれぞれから読み込まれたデータである。
【0036】
結果インデックスには、光源特性データ、光源位置データ、観察位置データ、物体位置データ、絵柄画像データ、光沢特性データ及び法線画像データを用いたシミュレーションにより得られた計算対象である物体表面の多視点画像群から得た光線空間圧縮画像が記憶されている記憶部111におけるアドレスなどが書き込まれて記憶される。
【0037】
結果データテーブルの光源位置データ、観察位置データ、物体位置データの各々には、入力部101においてユーザが入力した光源位置データ、観察位置データ、物体位置データが書き込まれて記憶される。
【0038】
また、結果データテーブルの光源特性データインデックスには、入力部101においてユーザが選択した光源特性データをデータベース107の光源識別情報をもとに識別して、光源情報テーブルから対応する光源特性データインデックスが読み出されて、結果識別情報に対応させて記憶部111の結果データテーブルに書き込まれて記憶される。
【0039】
また、結果データテーブルの絵柄画像データインデックス、光沢特性データインデックス、および法線画像データインデックスには、入力部101においてユーザが選択した絵柄画像データ、光沢特性データ及び法線画像データをデータベース107の絵柄識別情報、光沢特性識別情報、および法線識別情報のそれぞれをもとに識別して、絵柄情報テーブル、光沢特性情報テーブル、および法線情報テーブルから対応する絵柄画像データインデックス、光沢特性データインデックス、および法線画像データインデックスが読み出されて、結果識別情報に対応させて記憶部111の結果データテーブルに書き込まれて記憶される。
【0040】
操作部102は、光源位置データ、観察位置データ、および物体位置データから構成される観察条件情報の少なくともいずれかを変更するための操作手段である。具体的には、タブレット、マウス、タッチパネル等を用いることができ、タブレット内のジャイロセンサーによる傾き情報、マウスやタッチパネルなどによるカーソル操作情報を入力として光源位置データ、観察位置データ、および物体位置データの少なくともいずれかを変更するものである。多視点質感シミュレーションシステム1は、操作部102からの入力に基づいて記憶部111の結果データテーブルの光源位置データ、観察位置データ、および物体位置データの少なくとも1つを更新するように構成してもよい。
【0041】
画像処理部103は、ユーザが入力部101において選択した光源特性データと、絵柄画像データと、光沢特性データと、法線画像データと、観察条件情報である光源位置データ、観察位置データ、および物体位置データとに基づいて、光線空間画像データを生成する。ここで光線空間画像データとは、入力部101に入力された観察位置に表示したい計算対象である物体の複数の画像を並べた多視点画像を示す。多視点質感シミュレーションシステム1では光線空間画像データを圧縮した光線空間圧縮画像を表示部106である積層型ディスプレイ301に表示することで観察者に、計算対象である物体表面の質感を知覚させることができる。以下では、画像処理部103による光線空間画像データの生成方法について説明する。
【0042】
まず、光線空間情報について説明する。光線空間情報は、計算対象とする物体が存在する空間内の光線の量(方向と強度)の情報である。光線空間情報は、所定空間内の任意の点(V)を通過する光線を、式(1)に示す値の組みあわせで定義する。ここで、(θ、φ)は光線の方向、λは色(波長)、tは時間、(Vx,Vy,Vz)は任意の点の位置である。
【0043】
【数1】
【0044】
しかしながら、数1のような7次元の光線空間情報を取得することは困難であるため、一般的には奥行き位置、色、時間を除いた式(2)に示す値の組みあわせで表される4次元の光線空間情報が用いられる。
【0045】
【数2】
【0046】
次に、図5および図6を参照しながら、仮想空間内に存在する光線を4次元の光線空間情報として記録する方法について説明する。まず、同一平面上(Vx,Vy)に並んだ複数個の観察位置202を視点として対象物体201の画像をレンダリングする。各視点における画像生成方法については後述する。図5の例では、縦3個×横3個の計9個の観察位置202で同一の対象物体201をレンダリングしている。そのため、9枚の画像203が生成されることとなる。これらの複数の画像203は、観察位置202のそれぞれで視差が存在する(観察位置がずれている)ため各画像203によって物体表面上の光沢模様204の見え方(位置、大きさ、強度)がそれぞれ異なる。このようにして、画像203ごとに、異なる光線情報が得られ、これらは図示しない所定の記録装置に記録される。図5の場合、9枚の画像203が撮影されたので、9つの異なる光線情報が記録される。
【0047】
図4は、画像処理部103の構成例を示す図である。画像処理部103は、入射光計算部131、鏡面反射光計算部132、拡散反射光計算部133、反射光合成部134及び光線空間生成部135を備えている。
【0048】
入射光計算部131は、光源特性データ、光源位置データ、物体位置データ、法線画像データに基づいて、光源から出射される出射光の照度Iiから計算対象である物体表面の画素G(対象点)毎に対して入射される光の放射照度Eiを以下の式(3)を用いて算出する。図7に示すようにdは光源から対象点Gまでの距離を示している。θiは対象点の法線ベクトルNと対象点に対して入射される光線Lとのなす角度である。
【0049】
【数3】
【0050】
入射光計算部131は式(3)を用いて計算対象である物体表面の全画素についても放射照度Eiの計算を行う。放射照度Eiは視点によらず同じであるため、位置の異なる観察位置202からのレンダリング時においても同じ放射照度データを用いる。
【0051】
次に、入射光計算部131で計算された放射照度Eiを用いて、計算対象である物体からの反射光を計算する。本実施形態では二色性反射モデルを元とした反射計算を行い、鏡面反射光と拡散反射光とをそれぞれ鏡面反射光計算部132および拡散反射光計算部133において計算する。
【0052】
二色性反射モデルとは、S.A.Shaferによって提案された反射モデルで、反射光のスペクトルは鏡面反射成分と拡散反射成分とのスペクトルの線形和で表すことができるというモデルである。反射光の輝度をI、鏡面反射成分の輝度をIs、拡散反射成分の輝度をIdとすると、二色性反射モデルでの反射光輝度Iは式(4)で表される。
【0053】
【数4】
【0054】
まず鏡面反射光計算部132にて鏡面反射光の放射輝度Isを計算する。具体的には、鏡面反射光計算部132は、入射光計算部131が算出した各画素に入射される放射照度Eiと、記憶部111の結果データテーブルに記憶された光源特性データインデックス、光源位置データ、観察位置データ、物体位置データ、光沢特性データインデックスおよび法線画像データインデックスに基づいて、計算対象である物体表面に於ける各画素からの観察位置202のそれぞれに対する鏡面反射光の放射輝度Isを算出して鏡面反射光画像データを生成する。
【0055】
このとき、鏡面反射光計算部132は双方向反射率分布関数(BRDF:Bidirectional Reflectance Distribution Function)のモデル式を用い、鏡面反射光の放射輝度Isを算出する。また、BRDFのモデル式としては、「Theory for Off-Specular Reflection From Roughened Surfaces、 K. E. Torrance、 and E.M.Sparrow、JOSA, vol.57, Issue 9, pp.1105-1112, 1967」に記載されている式(5)(Torrance―Sparrowモデル)がある。
【0056】
【数5】
【0057】
ここでρsは鏡面反射率である。Dは法線分布項であり計算対象である物体表面の微細構造の法線のばらつきを表現する。Gは幾何減衰項であり、微小面の凹凸によって生ずる自己遮蔽・自己陰影を表現する。またFはフレネル項であり、入射角度により反射率の変化するフレネル反射を表現する。Nは計算対象である物体表面のベクトルであり、Vは視点方向ベクトルである。よって観察位置が異なると鏡面反射光の放射輝度Isが変化するため、観察位置データごとに鏡面反射光の放射輝度Isを算出する必要がある。図5の例でいうと、観察位置202が9点あるため、計算対象である物体表面の同一画素に対して9個の放射輝度Isが得られる。
【0058】
拡散反射光計算部133では計算対象である物体表面の拡散反射光の放射輝度Idを計算する。具体的には、拡散反射光計算部133は、記憶部111の結果データテーブルに記憶された絵柄画像データインデックス、光源位置データ、物体位置データ、および法線画像データインデックスを用いて、拡散反射光の放射輝度Idを算出し、拡散反射光画像データを生成する。
【0059】
本実施形態においては拡散反射モデルとしてLambertモデルを用いる。Lambertモデルによると拡散反射の強さは式(6)で表される。ここでρdは拡散反射率である。式(6)で表されるように拡散反射光の放射輝度Idは視点位置に依存しないため、各観察位置202において同一の拡散反射光の放射輝度Idを用いることができる。拡散反射光計算部133は拡散反射光の放射輝度Idにより拡散反射光画像データを生成した後、拡散反射光画像データを拡散反射画像記憶部108に記憶する。記憶された拡散反射光画像データは、光線空間圧縮画像を生成する際に用いる。
【0060】
【数6】
【0061】
反射光合成部134では、鏡面反射光計算部132および拡散反射光計算部133において生成された鏡面反射光画像データと拡散反射光画像データを二色性反射モデルにもとづいて足し合わせることで、それぞれの観察位置202から見た反射光画像データを生成する。
【0062】
光線空間生成部135では反射光合成部134で生成した反射光画像データに観察位置情報を付けて光線空間画像データとし、光線空間画像記憶部109に記憶する。上述したような処理によって画像処理部103では、光線空間画像データと拡散反射画像データを生成することができる。
【0063】
光線空間圧縮部104は、画像処理部103により光線空間画像記憶部109に記憶された光線空間画像データを用いて表示部106の具体例である積層型ディスプレイ301に表示する光線空間圧縮画像を生成する。
【0064】
ここで図8を参照して積層型ディスプレイ301の説明をする。積層型ディスプレイ301はバックライト302および複数枚の透過型パネル303~305で構成される。図8の例では3枚の透過型パネル303~305(レイヤ303~305ともいう)をバックライト302の前にレイヤ状に配置している。観察する方向V1、V2…に応じて、それぞれの光線は異なる透過率を持った画素を通過するため、異なる光が観察される。
【0065】
観察する方向ごとに目的の画像を提示するためには、各レイヤ303~305の画素ごとの透過率であるレイヤパターンを算出する必要がある。レイヤパターンの算出時には、光線空間画像記憶部109に記憶された光線空間画像データを条件として最適化計算を繰返す。この処理を光線空間圧縮処理と呼び、光線空間画像データに含まれる多数の視点の画像が積層型ディスプレイ301の備える透過型パネル303~305の枚数分の画像に圧縮され光線空間圧縮画像が得られる。光線空間画像データの圧縮は従来技術で実施でき、例えば非負テンソル因子分解を用いて最適化計算が可能である。
【0066】
光線空間圧縮処理では式(7)の最小化問題を解く。式(7)のA、B、Cはそれぞれのレイヤ303~305の画素値(透過率)を一次元配列としてベクトル表現したものである。またYは入力画像群(光線空間画像)の全画素値をベクトル表現したものである。ベクトルYのk番目の要素Ykに対応する光線とレイヤ303との交点のインデックスをa(k)とし、b(k)、c(k)も同様に定める。入力画像群が忠実に再現されるためには、すべてのkについて式(7)が最小となることが期待される。
【0067】
【数7】
【0068】
上述した光線空間圧縮処理で、光線空間圧縮部104は光線空間画像記憶部109に記憶された光線空間画像データを圧縮しても良いが、画像の画素数や設定した視点数によっては計算量が膨大になってしまう。光源位置が静止した状態であれば良いが、例えば操作部102により光源位置設定が変化した場合には、再度光線空間画像データを生成して、圧縮し直す必要がある。
【0069】
そこで最適化計算の高速化のために画像処理部103で光線空間画像データを生成し、拡散反射画像記憶部108に記憶した拡散反射画像データを用いても良い。拡散反射成分は視点位置によらず一定であるため、物体表面の同じ画素からの光線は全て同一の値を用いることができる。そこで積層型ディスプレイ301のレイヤ303~305の内一枚の画素値を拡散反射画像データから決定して固定する。例えば図8の3枚の透過型パネル303~305の内レイヤ303の画素値は式(8)で求められる。
【0070】
【数8】
【0071】
dAがレイヤ303の画素値であり、αはスケーリング係数である。図9は拡散反射画像データの放射輝度値Idを入力として、レイヤ303に表示する画素値dAとの関係を示す図である。κは対象物体に入射する光の鏡面反射成分の割合(鏡面反射光比率)でありユーザが決定できる。鏡面反射成分の割合が多く、光沢のコントラストを表現したい場合にはκを増やす。逆に光沢が少なく拡散成分のコントラストを上げたい場合にはκを下げる。
【0072】
上述した手法により一枚のレイヤ303~305の表示画像は決定される。図8の例で言えばレイヤ303は式(8)で求めた画素値に基づいた表示をする。残りの2枚のレイヤ304および305の画素値は式(7)において式(8)で求めた画素値dAをAa(k)として固定して最適化計算を繰り返すことでBb(k)およびCc(k)によって算出される。
【0073】
このようにして光線空間圧縮部104で算出された積層型ディスプレイ301のそれぞれの透過型パネル303~305に表示する光線空間圧縮画像は表示画像の画像データとして表示画像記憶部110に記憶される。そして光線空間圧縮部104は、表示画像の画像データを表示画像記憶部110に書き込んだアドレスを、結果識別情報に対応させて結果インデックスとして記憶部111における結果データテーブルに対して書き込んで記憶させる。
【0074】
画像表示制御部105は記憶部111の結果データテーブルから結果インデックスを読み出す。そして画像表示制御部105は、この結果インデックスにより、表示画像記憶部110より表示画像の画像データを読み出して、この画像データを表示部106である積層型ディスプレイ301の複数枚の透過型パネル303~305のそれぞれに表示する。
【0075】
上述したように本発明の実施形態に係る多視点質感シミュレーションシステム1では、光源特性データ、絵柄画像データ、光沢特性データ、法線画像データ、物体位置データ、観察位置データ、光源位置データを入力として光線空間画像データを生成し、積層型ディスプレイ301の持つパネル枚数と同じ枚数の画像に光線空間画像データを圧縮し積層型ディスプレイ301に表示させることで、多視点方向へと異なる物体模様仕上がりを表示する。ユーザはこの積層型ディスプレイ301に表示された複数の画像を重畳して観察することで、両眼で異なる光沢を持った画像を観ることができるため物体の質感をより知覚することができる。
【0076】
次に、フローチャートを用いて、本実施形態における多視点質感シミュレーションシステム1における光源位置の変更を含む光線空間圧縮画像の生成および表示の動作を説明する。図10は、本実施形態の多視点質感シミュレーションシステム1における光線空間圧縮画像を生成し、表示する処理の動作例を示すフローチャートである。
【0077】
ステップS1:
入力部101から、光源特性データ、光源位置データ、観察位置データ、物体位置データ、絵柄画像データ、光沢特性データ、法線画像データが入力される。
【0078】
これにより、多視点質感シミュレーションシステム1は、入力された光源特性データ、絵柄画像データ、光沢特性データおよび法線画像データの各々の情報に紐づくインデックスをデータベース107におけるテーブルから読み出して、記憶部111の結果データテーブルに対して書き込んで記憶させる。また、多視点質感シミュレーションシステム1は、入力された光源位置データ、観察位置データ及び物体位置データを記憶部111の結果データテーブルに対して書き込んで記憶させる。
【0079】
ステップS2:
操作部102からの入力に基づく光源位置データを記憶部111の結果データテーブルに対して書き込んで更新する。図示しないが、操作部102の入力の更新に伴い、記憶部111の結果データテーブルの光源位置データを定期的に更新してもよい。
【0080】
ステップS3:
画像処理部103内の入射光計算部131が、記憶部111における結果データテーブルを参照してデータベース107に記憶されている光源特性データインデックス及び法線画像データインデックスに紐づく情報を読み出す。また記憶部111の結果データテーブルから、光源位置データ及び物体位置データを読み出す。そして、入射光計算部131は、光源特性データインデックスに紐づく情報、光源位置データインデックスに紐づく情報、物体位置データ及び法線画像データに基づいて、物体表面の画素ごとに対して入射される光の放射照度Eiを算出する。
【0081】
ステップS4:
画像処理部103内の鏡面反射光計算部132が、記憶部111における結果データテーブルを参照してデータベース107に記憶されている光沢特性データインデックスおよび法線画像データインデックスに紐づいた情報を読み出す。また記憶部111の結果データテーブルから、光源位置データ、観察位置データ、物体位置データを読み出す。そして、鏡面反射光計算部132は、読み出した情報およびデータと入射光計算部131が算出した放射照度Eiを用いて観察位置データ毎に鏡面反射光の放射輝度Isを算出して鏡面反射光画像データを生成する。鏡面反射光画像データは観察位置データに対応する数を生成する。
【0082】
ステップS5:
画像処理部103内の拡散反射光計算部133が、記憶部111における結果データテーブルを参照してデータベース107に記憶されている絵柄画像データインデックス及び法線画像データインデックスに紐付いた情報を読み出す。また記憶部111の結果データテーブルから、光源位置データ、物体位置データを読み出す。そして、拡散反射光計算部133は、読み出した情報およびデータと入射光計算部131が算出した放射照度Eを用いて拡散反射光の放射輝度Idを算出して拡散反射光画像データを生成する。拡散反射光画像データは拡散反射画像記憶部108に記憶される。
【0083】
ステップS6:
画像処理部103内の反射光合成部134が、鏡面反射光計算部132および拡散反射光計算部133において生成された鏡面反射光画像データと拡散反射光画像データとを足し合わせて観察位置データ毎の反射光画像データを生成する。観察位置データの数に対応する数ある鏡面反射光画像データに対して、1つの拡散反射光画像データを足し合わせることで複数の観察位置データに対応する反射光画像データを生成する。
【0084】
ステップS7:
画像処理部103内の光線空間生成部135が、反射光合成部134で生成した反射光画像データに観察位置情報を付けて光線空間画像データを生成し、これを光線空間画像記憶部109に記憶する。
【0085】
ステップS8:
画像処理部103にて生成され光線空間画像記憶部109に記憶された光線空間画像データと、拡散反射画像記憶部108に記憶された拡散反射画像データを用いて、光線空間圧縮部104が積層型ディスプレイの複数の透過型ディスプレイ301に表示する光線空間圧縮画像を生成する。生成した光線空間圧縮画像は透過型パネル303~305のインデックスとともに表示画像記憶部110に記憶される。
【0086】
ステップS9:
画像表示制御部105が、表示部106の積層型ディスプレイ301の持つ透過型パネル303~305それぞれのインデックスを参照して、表示画像記憶部110に記憶された光線空間圧縮画像を読み出してそれぞれの透過型パネル303~305に表示する。
【0087】
以上のフローによって、本実施形態に係る多視点質感シミュレーションシステム1は、ユーザに対して多視点へと異なる質感を提示する画像を提示することができる。またステップS2においてユーザが操作部102を操作して光源位置データを変更した際には、改めて光線空間圧縮画像を生成して表示部106へと表示してもよい。
【0088】
また操作部102によって変更される情報は光源位置データに限らず、物体位置データもしくは観察位置データのいずれかであってでも良い。
【0089】
このように、本発明では、絵柄画像データ、光沢特性データ及び法線画像データからなる物体表面のデータと、観察位置データ、物体位置データ、光源位置データ及び光源特性データとから光線空間画像データを生成し、これを積層型ディスプレイのための光線空間圧縮画像へと変換して表示することで多視点方向へと異なる光線を表示することができる。特に光線空間圧縮部において、拡散反射光画像データをスケーリングした画像を用いることで、光源位置データ、物体位置データ及び観察位置データが変更された際における光線空間圧縮画像の再計算が高速に行われる。
【0090】
なお、多視点質感シミュレーションシステム1の実装方法は、特に限定されないが、例えばプログラムと各種データとを記憶装置から読みだして実行するプロセッサを有するコンピュータを用いて、実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、透過型パネルを複数枚重ねた光線再生型ディスプレイに表示される画像の処理に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0092】
1…多視点質感シミュレーションシステム
101…入力部
102…操作部
103…画像処理部
104…光線空間圧縮部
105…画像表示制御部
106…表示部
107…データベース
108…拡散反射画像記憶部
109…光線空間画像記憶部
110…表示画像記憶部
111…記憶部
131…入射光計算部
132…鏡面反射光計算部
133…拡散反射光計算部
134…反射光合成部
135…光線空間生成部
201…対象物体
202…観察位置
203…画像
301…積層型ディスプレイ
302…バックライト
303~305…透過型パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10