IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用表示装置 図1
  • 特許-車両用表示装置 図2
  • 特許-車両用表示装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20220509BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220509BHJP
   H01L 23/34 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
B60K35/00 A
B60R16/02 640K
H01L23/34 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017243563
(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2019108071
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100134599
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】高野 徹弘
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-141324(JP,A)
【文献】特開2010-148651(JP,A)
【文献】特開2016-179715(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147276(WO,A1)
【文献】特開2013-055406(JP,A)
【文献】特開2004-254820(JP,A)
【文献】国際公開第2008/062592(WO,A1)
【文献】特開2009-179240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/06
H01L 23/29
H01L 23/34-23/473
B60R 16/00-17/02
G09G 3/00- 3/08
G09G 3/12
G09G 3/16
G09G 3/19- 3/26
G09G 3/30
G09G 3/34
G09G 3/38
G09G 5/00- 5/42
G09F 9/00
G01D 7/00- 7/12
G02B 27/00-30/60
H04N 5/66- 5/74
G06T 1/00- 1/40
G06T 3/00- 5/50
G06T 9/00- 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に関する情報を示す画像を表示する表示部と、
前記表示部の表示制御を行う表示制御部と、
前記表示制御部の温度又は前記表示制御部の周囲温度を検出する温度検出部と、を備え、
前記表示制御部は、前記温度検出部によって検出された温度が予め定めた閾値を超えた場合に、前記画像の表示態様を、奥行きを感じさせる立体表現を施した三次元表示のメータ画像を含む第1態様から、文字情報で示した二次元表示のメータ画像の第2態様へと切り替え、
更に、前記表示制御部の温度又は前記表示制御部の周囲温度に基づく温度報知画像を前記表示部に表示させる
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記第2態様の前記画像は、前記表示部の表示領域において前記第1態様の前記画像が表示されていた位置と対応する位置に表示されるとともに、前記第1態様の前記画像が示していた内容と対応する内容を示す、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記第2態様の前記画像は、前記第1態様の前記画像よりも構成されるレイヤの数が少ない、
または、前記第2態様の前記画像は、前記第1態様の前記画像よりも色深度が小さい、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用表示装置として、例えば特許文献1には、車両情報を表示する液晶表示モジュールを備えるものが開示されている。特許文献1に記載の車両用表示装置は、液晶表示モジュールを制御する制御回路デバイス等から発生する熱を、金属製配線基板で拡散することで温度上昇を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-179715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような車両用表示装置では、近年、表示コンテンツの増加や高精度の画像表現が求められ、これに伴い画像の表示制御を行う表示制御部(表示制御IC(Integrated Circuit))の高性能化が進み、高速処理を行う表示制御IC自体の発熱も増大傾向にある。このような発熱に対処するためには、特許文献1に記載の物理的な放熱対策だけでは構造が複雑化してしまう。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、放熱構造の複雑化を抑制しつつも、表示制御部の温度上昇を抑制することができる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用表示装置は、
車両に関する情報を示す画像を表示する表示部と、
前記表示部の表示制御を行う表示制御部と、
前記表示制御部の温度又は前記表示制御部の周囲温度を検出する温度検出部と、を備え、
前記表示制御部は、前記温度検出部によって検出された温度が予め定めた閾値を超えた場合に、前記画像の表示態様を、奥行きを感じさせる立体表現を施した三次元表示のメータ画像を含む第1態様から、文字情報で示した二次元表示のメータ画像の第2態様へと切り替え、
更に、前記表示制御部の温度又は前記表示制御部の周囲温度に基づく温度報知画像を前記表示部に表示させる
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、放熱構造の複雑化を抑制しつつも、表示制御部の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用表示装置のブロック図である。
図2】(a)は3Dモード画像の一例を示し、(b)は2Dモード画像の一例を示す図である。
図3】(a)は本発明の一実施形態に係る表示モード切替処理のフローチャートであり、(b)は温度報知画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る車両用表示装置について図面を参照して説明する。
【0010】
図1に示す本実施形態に係る車両用表示装置1は、車両に搭載され、当該車両に関する情報(以下、「車両情報」とも言う。)を示す画像を表示するものである。車両用表示装置1は、例えば、車両のダッシュボードに設けられ、主に運転者に各種の車両情報を報知する。なお、車両情報は、自車両に関する情報だけでなく、車外の情報も含む。
【0011】
車両用表示装置1は、図1に示すように、表示部10と、制御装置20と、を備える。
【0012】
表示部10は、制御装置20の制御により、車両情報を示す画像を表示する。表示部10は、カラーの階調表示が可能なものであり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)から構成されている。LCDは、例えば、TFT(Thin Film Transistor)型の液晶パネルと、当該パネルを背後から照明するバックライトを含んで構成される。
【0013】
表示部10は、図2(a)、(b)に示すように、例えば、横長の長方形状に構成された表示領域11に画像を表示する。表示部10は、制御装置20の制御により、図2(a)に示す3次元(3D)モード画像と、図2(b)に示す2次元(2D)モード画像の表示が可能となっている。3Dモード画像及び2Dモード画像については後述する。
【0014】
なお、表示部10は、LCDに限られず、OLED(Organic Light Emitting Diodes)等の他の画像表示ディスプレイから構成されていてもよい。また、表示部10は、HUD(Head Up Display)として構成されてもよい。HUDは、LCD等が発した表示光を反射部を介して透光部材(例えばフロントガラス)に照射することで、該透光部材の前方に設定される仮想画面に表示光が表す画像(虚像)を表示する。つまり、表示部10の表示領域11は、実画面に限られず、HUDによる仮想画面であってもよい。
【0015】
制御装置20は、マイクロコンピュータからなり、表示制御部21と、不揮発性メモリ22と、揮発性メモリ23と、温度センサ24と、各種回路25a~25fと、を備える。
【0016】
表示制御部21は、表示部10による画像表示動作を制御するものであり、車両用表示装置1の回路基板に実装される表示制御IC(Integrated Circuit)から構成される。表示制御部21は、CPU(Central Processing Unit)やグラフィックプロセッサを含む。
【0017】
不揮発性メモリ22は、ROM(Read Only Memory)から構成され、具体的には、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ等から構成されている。不揮発性メモリ22は、後述のように、表示モード切替処理を実行するためのプログラム等の各種の動作プログラムや、画像パーツデータ等の固定データを予め記憶する。
【0018】
揮発性メモリ23は、RAM(Random Access Memory)から構成され、具体的には、SRAM(Static RAM)、DRAM(Dynamic RAM)等から構成されている。なお、不揮発性メモリ22や揮発性メモリ23は、表示制御部21に内蔵されていてもよい。
【0019】
表示制御部21は、不揮発性メモリ22から読み出した動作プログラムや固定データを用いて、車両用表示装置1の全体動作を制御するための処理を実行する。このときには、(i)表示制御部21が不揮発性メモリ22から固定データを読み出す固定データ読出動作、(ii)表示制御部21が揮発性メモリ23に各種データを書き込んで一時記憶させるデータ書込動作や、揮発性メモリ23に一時記憶されている各種データを読み出すデータ読出動作、(iii)表示制御部21が各種回路25a~25fを介して、外部から各種信号の入力を受け付ける受信動作や、外部へと各種信号を出力する送信動作なども行われる。表示制御部21の具体的な制御については後述する。
【0020】
温度センサ24は、表示制御部21の温度又は表示制御部21の周囲温度を検出する。温度センサ24は、例えば、温度によって抵抗定数が変化するサーミスタチップから構成される。例えば、サーミスタチップに一定の電流を流し続け、その両端の電位差を測定することで、温度に応じた抵抗値の変化を検出可能である。例えば、表示制御部21は、A/D(Analog to Digital)コンバータによりサーミスタチップの一方又は両方の端子電圧を監視することで、表示制御部21の温度変化を検出する。なお、温度センサ24として、測温抵抗体、熱電対、IC温度センサ等の公知の構成を適宜採用してもよい。
【0021】
温度センサ24は、表示制御部21の温度異常を検出できれば、その配設位置は任意であり、例えば、回路基板における表示制御部21が実装される面と同一面であって、表示制御部21の直近に配設される。なお、温度センサ24は、回路基板における表示制御部21が実装される面の背面などに配設されていてもよい。また、温度センサ24は、表示制御部21の周辺ICで発熱が予想されるメモリ付近等に配置されてもよい。また、温度センサ24は1つに限られるものではなく、必要に応じて複数配置してもよい。表示制御部21の発熱異常を検出できれば、温度センサ24が検出する温度は、表示制御部21の自体の温度(ジャンクション温度やケース温度)であってもよいし、表示制御部21の周囲温度であってもよい。
【0022】
電源回路25a及び通信回路25bは、車載のバッテリーや各種ECU(Electronic Control Unit)等からなる車両システム2と電気的に接続されている。電源回路25aは、車載バッテリーからの電力を車両用表示装置1に供給し、主に表示制御部21の動作電力を供給する。通信回路25bは、信号線L1を介して、車両システム2におけるECUから画像表示を指示する表示命令コマンドを受信する。通信回路25bは、受信した信号レベルを変換した表示命令コマンドを表示制御部21へ送信する。
【0023】
情報入力回路25cは、車載のカーナビゲーション(カーナビ)システム3から、信号線L2を介して、後述のナビゲーションデータや画像データを受信する。情報入力回路25cは、受信したデータに応じた表示命令コマンドを表示制御部21へ送信する。カーナビシステム3は、人工衛星などから受信したGPS(Global Positioning System)信号に基づいて車両の位置を算出するGPSコントローラを含んで構成される。カーナビシステム3は、地図データを記憶する記憶部を有し、GPSコントローラからの位置情報に基づいて、現在位置近傍の地図データを記憶部から読み出し、ユーザにより設定された目的地までの案内経路を決定する。そして、カーナビシステム3は、現在の車両位置とその近傍の地図データや、決定した案内経路などに関するナビゲーションデータや画像データを情報入力回路25cへ伝送する。
【0024】
映像入力回路25dは、車載のカメラシステム4から、信号線L4を介して、撮像データを受信する。映像入力回路25dは、受信した撮像データに応じた表示命令コマンドを表示制御部21へ送信する。カメラシステム4は、例えば、運転者の安全確認のため、車両用表示装置1が搭載される車両の周辺風景(車両の側方や後方風景など)を撮像し、当該撮像データを映像入力回路25dへ伝送する。
【0025】
無線回路25eは、アンテナと所定の無線通信規格に対応したモジュールから構成され、他の無線通信機器(例えば、搭乗者が車内に持ち込むスマートフォンなどの携帯端末)と無線通信を行う。無線回路25eは、当該他の無線通信機器で表示可能な画像データに応じた表示命令コマンドを表示制御部21へ送信する。なお、無線回路25eにより可能な無線通信の規格は、目的に応じて任意であり、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)、Z-Wave(登録商標)、ZigBee(登録商標)などの規格を用いることができる。
【0026】
オーディオ回路25fは、車載のマイク、スピーカ等からなる音声入出力部5と表示制御部21とを電気的に接続する。オーディオ回路25fは、表示制御部21からの音声出力指令に応じてスピーカから所定の音声を出力する。また、オーディオ回路25fは、マイクに入力された音声に応じた入力音声データを表示制御部21へ送信する。例えば、表示制御部21は、受信した入力音声データに応じた指示操作を受け付け、受け付けた指示操作に従って表示部10の表示画像を切り替える等の制御を行う。
【0027】
表示制御部21は、通信回路25b、情報入力回路25c、映像入力回路25d、及び無線回路25eの少なくともいずれかから送信された表示命令コマンドに基づいて1画面(表示領域11の全域に亘って表示される画像)の表示内容を決定する。当該送信方式は、EthernetやMOSTといった、圧縮された画像データを送信するタイプと、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)のように画像データを圧縮せずにそのまま送信するタイプがある。また、無線回路25eを利用した無線通信経由によるデータ通信方式もある。EthernetやMOSTの場合、圧縮データは、例えばMPEG、H.264、JPEGなど様々な方式があり、表示制御部21が対応できる圧縮方式は部品サプライヤーによる表示制御ICにより異なる。
【0028】
表示制御部21は、受信した画像データが圧縮されている場合は解凍処理後に当該データを取得し、LVDSの場合は画像データをそのまま取得する。表示制御部21は、内蔵のグラフィックプロセッサにより、取得した画像データと画像パーツデータとを合成した画像を生成し、表示部10に表示する。
【0029】
具体的には、表示制御部21は、表示部10に表示する1画面を構成するために必要な画像パーツデータを不揮発性メモリ22から読み込み、揮発性メモリ23へ転送する。また、表示制御部21は、揮発性メモリ23を使って、画像パーツデータや前記の各種回路25b~25eから受け取った各種の画像データを元に、1画面分の絵データを作成する。そして、表示制御部21は、揮発性メモリ23で1画面分の絵データを完成(合成完了)させたところで、描画タイミングに合わせて、信号線L3経由で表示部10に転送する。これにより、表示部10に各種の車両情報を示す画像が表示される。
【0030】
なお、前記の各種回路25b~25eから受け取った各種の画像データは、揮発性メモリ23の所定領域に保存され、1画面分の絵データの一部として使用される。また、表示部10に表示する画面内容は、車両側からの表示命令の内容に従うことになり、表示制御部21が実施する画面合成処理もこれに従う。
【0031】
表示制御部21は、例えば、車両用表示装置1の起動時のデフォルト態様である通常表示では、3Dモード画像を表示部10の表示領域11に表示する。
【0032】
(3Dモード画像)
3Dモード画像は、次に説明する3D表示を含むとともに、複数レイヤで構成され、例えばトゥルーカラー(例えばRGBカラーモデルの24bit)の色深度を有する。
【0033】
図2(a)に3Dモード画像の一例を示す。当該3Dモード画像は、表示領域11の中央に位置するメイン画像部A1と、メイン画像部A1の左側に位置するタコメータ画像部A2と、メイン画像部A1の右側に位置するスピードメータ画像部A3と、から構成されている。
【0034】
メイン画像部A1は、車体の形状や車体に反射する光の明暗を使って立体的に見えるように3D処理を施した車体モデル画像(3D表示の一例)と、車体モデル画像に重畳して表示される選択項目画像と、選択項目画像の下方に位置する水温計、シフトポジション、フューエルメータ等を示す下方画像と、を有する。
【0035】
タコメータ画像部A2は、正円形のメータ形状よりも内側に傾向けた態様でタコメータを表し、奥行きを感じさせる3D処理を施したタコメータ画像(3D表示の一例)と、タコメータ画像の上部に位置する外気温画像と、を有する。
【0036】
スピードメータ画像部A3は、正円形のメータ形状よりも内側に傾向けた態様でスピードメータを表し、奥行きを感じさせる3D処理を施したスピードメータ画像(3D表示の一例)と、スピードメータ画像の上部に位置する時刻画像と、を有する。
【0037】
以上のように、3Dモード画像は、立体表現を施した3D表示を含むとともに、当該3D表示以外の各種情報を、文字、図形、アイコンなどを示す画像で表したものである。3D表示は、例えば、表示制御部21に内蔵される3D表示専用のグラフィックプロセッサによって処理される。
【0038】
ここで、3D表示で使用する画像データ(3Dデータ)は、2D表示で使用するデータ(2Dデータ)と比べてデータ量が多い。例えば、四角形を表現したい場合、2Dデータでは4点の座標データの各1点の座標データは、縦軸と横軸の座標点(X,Y)で表現される。一方、3Dデータは各1点のデータは縦軸、横軸、奥行きの座標点(X,Y,Z)で表現されるため、単純計算でも2Dデータの1.5倍のデータ量となる。加えて、立体表現に必要な光源データがあるため、さらにデータ量が増える。つまり、3D表示と2D表示とで、同じ解像度及び同じ描画更新周期で表示制御を行う場合の表示制御部21の処理負荷を比較した場合、3D表示の方が2D表示よりも圧倒的に処理負荷が大きい。
【0039】
このように、車両用表示装置1の通常表示は、3D表示を使った表現力豊かなコンテンツを使用する。しかし、表示制御部21は、温度センサ24による検出温度(表示制御部21の温度又は表示制御部21の周囲温度)が、システム異常となる温度に達した又はその温度に近づいたこと(以下、「異常又は異常蓋然状態」と言う。)を検知した場合には、3Dモード画像を2Dモード画像に切り替える。これにより、システム処理負荷を軽減し、消費電力を減らすことで、表示制御部21(表示制御IC)及びその周辺ICの温度上昇を抑える。なお、表示制御部21は、異常又は異常蓋然状態となったか否かを、温度センサ24による検出温度が予め不揮発性メモリ22に記憶した閾値を超えたか否かに応じて判別する。
【0040】
(2Dモード画像)
2Dモード画像は、3D表示を含まずに2D表示のみで構成され、3Dモード画像よりも処理負担が少ない態様(以下、「簡素態様」と言う。)の画像である、この簡素態様の2Dモード画像は、3Dモード画像よりも少ない描画レイヤ数で構成され(例えば、単一レイヤ)、3Dモード画像よりも小さい色深度(例えばRGBカラーモデルの12bitや、モノクロ2bit等)を有する。
【0041】
図2(b)に2Dモード画像の一例を示す。当該2Dモード画像は、表示領域11の中央に位置するメイン画像部B1と、メイン画像部B1の左側に位置するタコメータ画像部B2と、メイン画像部B1の右側に位置するスピードメータ画像部B3と、から構成されている。
【0042】
メイン画像部B1は、3Dモード画像におけるメイン画像部A1の表示位置と対応し、3D表示(デザイン的な車体モデル画像)を消去するとともに、選択項目画像と、選択項目画像の下方に位置する下方画像とを簡素態様で表したものである。
【0043】
タコメータ画像部B2は、3Dモード画像におけるタコメータ画像部A2の表示位置と対応し、3D表示の代わりにエンジン回転数を文字情報などで示したタコメータ画像と、外気温画像とを簡素態様で表したものである。
【0044】
スピードメータ画像部B3は、3Dモード画像におけるスピードメータ画像部A3の表示位置と対応し、3D表示の代わりに車速を文字情報などで示したスピードメータ画像と、時刻画像とを簡素態様で表したものである。
【0045】
つまり、2Dモード画像を構成する画像部は、表示部10の表示領域11において3Dモード画像を構成していた画像部と対応する位置に表示されるとともに、3Dモード画像を構成していた画像部と対応する(同種の)内容を示す。
【0046】
このように、2Dモード画像での表示は、3Dモード画像と比較してデザイン的には見劣りするものの、3Dモード画像で示されていた内容(各種の車両情報や報知情報)を踏襲しつつも、表示制御部21の処理負荷を軽減することができる。これにより、運転者や同乗者に必要な情報を報知するという本質的な機能を損なわずして、表示制御部21の温度上昇を抑えることができ、車両用表示装置1の動作をより安定させることができる。
【0047】
また、2Dモード画像は、3Dモード画像よりも色深度を減らすことも同様で、1ピクセル当たりの画像データを、例えば、3Dモード画像時のRGB各色8bitずつの24bitから、2Dモード画像時のRGB各色4bitずつの12bitやモノクロの2bitとすることで、表示構成に使用するパーツデータ量を減らすことができる。すなわち、表示制御部21によるデータバス使用率が減ることで、バス信号線の電圧振幅動作が減り、消費電力を減らすことができる。
【0048】
なお、2Dデータは、予め不揮発性メモリ22に保存されており、表示制御部21が温度センサ24の検出温度に基づいて異常又は異常蓋然状態を検知したことを契機に、不揮発性メモリ22から揮発性メモリ23にデータを展開し使用する。ただし、3D表示の表示処理性能に影響を及ぼさなければ、デフォルト時においても2Dデータを揮発性メモリ23に展開しておいてもよい。
【0049】
(表示モード切替処理)
ここからは、表示制御部21が実行する表示モード切替処理を、図3(a)を参照して説明する。表示モード切替処理は、例えば、車両用表示装置1の起動を契機に所定の制御周期で繰り返し実行される。前述のように、当該処理の開始時は、表示制御部21は、図2(a)に示すような3Dモード画像を表示部10に表示する。
【0050】
表示モード切替処理を開始すると、まず、表示制御部21は、温度異常が生じている(異常又は異常蓋然状態)か否かを判別する(ステップS1)。具体的には、温度センサ24による検出温度が予め不揮発性メモリ22に記憶した閾値以下である場合には、表示制御部21は、温度異常が生じていないと判別し(ステップS1;No)、3Dモード画像の表示を継続する(ステップS2)。ステップS2の処理後は再びステップS1から処理を開始する。
【0051】
温度センサ24による検出温度が前記の閾値を超えた場合には、表示制御部21は、温度異常が生じていると判別し(ステップS1;Yes)、図2(a)に示すような3Dモード画像を、図2(b)に示すような2Dモード画像へと表示を切り替える(ステップS3)。具体的には、表示制御部21は、温度異常が生じていると判別すると、不揮発性メモリ22内の2Dデータを揮発性メモリ23にデータを展開し、2Dモード画像の描画処理を行う。
【0052】
ステップS3に続いて、表示制御部21は、温度異常が生じていることをユーザに報知する報知処理を実行する(ステップS4)。報知処理として、表示制御部21は、例えば、「システム温度上昇のため、表示を切り替えました。」といった文章を一時的に2Dモード画像内に表示したり、当該文章を読み上げる音声や警告音を音声入出力部5のスピーカから出力したりする。
【0053】
また、報知処理として、表示制御部21は、表示制御部21やその周辺ICの温度をユーザに報知する温度報知画像Cを2Dモード画像内の所定位置に表示してもよい。図3(b)は、温度報知画像Cの一例を示し、バーグラフ態様により、表示制御部21やその周辺ICの温度をユーザに報知する画像である。なお、温度報知画像Cは、バーグラフ態様の画像に限られず、所定の文字・アイコン(例えば「!」)や、温度自体を示す文字情報(例えば「100℃」)や、温度状態を示す文字情報(例えば「HI」や「LO」)等を示す画像であってもよい。なお、温度報知画像Cも前述の簡素態様で表示される。
【0054】
ステップS4の処理後は再びステップS1から処理を開始する。したがって、車内の車両用表示装置1の周囲温度や車外の気温が低下して、温度異常が解消されたときは(ステップS1;No)、表示制御部21は、表示部10の表示を2Dモード画像から3Dモード画像に復帰させる(ステップS2)。2Dモード画像内に温度報知画像Cを表示していた場合は、当該3Dモード画像の復帰時に温度報知画像Cを消去する。なお、通常表示時においても、3Dモード画像内に温度報知画像Cを表示してもよい。また、2Dモード画像から3Dモード画像に復帰させる場合においては、表示制御部21は、温度センサ24による検出温度が、ステップS1の判別処理に用いた閾値よりも低温か否かを判別し、当該低温であると判別した場合に、表示部10の表示を3Dモード画像に復帰させるようにしてもよい。このようにヒステリシスを考慮することによって、2Dモード画像と3Dモード画像との頻繁な表示切り換えを抑制できる。
【0055】
なお、本発明は以上の実施形態、変形例、及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。例えば、ステップS3の事前に「システム温度上昇のため、表示を切り替えます」など、2Dモード画像への表示切替の理由や、これから切り替えを行う旨の報知(画像表示による報知や音声による報知)を行うようにしてもよい。こうすれば、表示が急に切り替わることによってユーザに与える虞のある違和感や不信感を低減できる。また、上述のように3Dモード画像から2Dモード画像への自動的な表示切り換えとは別に、ユーザによる操作(例えば、図示しない操作部からの手動操作や、音声認識に基づく操作)に応じて、2Dモード画像の選択(固定表示)を可能としてもよい。
【0056】
車両用表示装置1が搭載される車両は自動四輪車に限られず、自動二輪車などであってもよい。また、3Dモード画像及び2Dモード画像の各々を構成する主な画像部は、上記例の3つに限られず、1つであっても、複数であってもよい。また、各画像部が示す情報は、上記例で示したスピードメータやタコメータなどに限られず、地図情報を含むナビゲーション情報や、各種のエンターテインメント情報(例えば、再生又は選択中の楽曲を示す情報)などであってもよい。
【0057】
(1)以上に説明した車両用表示装置1は、車両に関する情報を示す画像を表示する表示部10と、表示部10の表示制御を行う表示制御部21と、表示制御部21の温度又は表示制御部21の周囲温度を検出する温度センサ24(温度検出部の一例)と、を備える。表示制御部21は、温度センサ24によって検出された温度が予め定めた閾値を超えた場合に、画像の表示態様を、三次元表示を含む第1態様(3Dモード画像)から、二次元表示の第2態様(2Dモード画像)へと切り替える。
このようにしたから、前述のように、表示制御部21の処理負荷が軽減することができ、表示制御部21の温度上昇を抑制することができる。結果として、物理的な放熱構造の複雑化を抑制することもできる。
【0058】
(2)また、第2態様の前記画像は、表示部10の表示領域11において第1態様の画像が表示されていた位置と対応する位置に表示されるとともに、第1態様の画像が示していた内容と対応する内容を示す(例えば、メイン画像部B1が、メイン画像部A1の位置と対応する位置に表示されるとともにメイン画像部A1と対応する内容を示したり、タコメータ画像部B2が、タコメータ画像部A2の位置と対応する位置に表示されるとともにタコメータ画像部A2と対応する内容を示したりすること等)。
このようにしたから、運転者や同乗者に必要な情報を報知するという本質的な機能を損なわずして、表示制御部21の温度上昇を抑えることができる。
【0059】
(3)また、第2態様の画像(2Dモード画像)は、第1態様の画像(3Dモード画像)よりも構成されるレイヤの数が少ない。なお、以上では、2Dモード画像が単一レイヤで構成される例を示したが、3Dモード画像よりも少ないレイヤ数であれば、2Dモード画像が複数レイヤで構成されていてもよい。
【0060】
(4)また、第2態様の画像(2Dモード画像)は、第1態様の画像(3Dモード画像)よりも色深度が小さい。この条件を満たす限りにおいては、3Dモード画像がトゥルーカラー(例えばRGBカラーモデルの24bit)で、2Dモード画像がRGBカラーモデルの12bitや、モノクロ2bitである例に限られない。例えば、3Dモード画像がRGBカラーモデルの12bitで、2Dモード画像がモノクロ2bitであってもよい。なお、2Dモード画像が3Dモード画像よりも色深度が小さいほうが表示制御部21の処理負荷軽減には効果的ではあるが、2Dモード画像と3Dモード画像とが同じ色深度であってもよい。
【0061】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0062】
1…車両用表示装置
10…表示部、11…表示領域
20…制御装置
21…表示制御部
22…不揮発性メモリ、23…揮発性メモリ
24…温度センサ
2…車両システム
3…カーナビシステム
4…カメラシステム
5…音声入出力部
A1、B1…メイン画像部
A2、B2…タコメータ画像部
A3、B3…スピードメータ画像部
C…温度報知画像
図1
図2
図3