(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】多気筒エンジン
(51)【国際特許分類】
F01N 13/10 20100101AFI20220509BHJP
F02F 1/42 20060101ALI20220509BHJP
F02M 26/05 20160101ALI20220509BHJP
F02M 26/06 20160101ALI20220509BHJP
F02M 26/41 20160101ALI20220509BHJP
F02M 26/43 20160101ALI20220509BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20220509BHJP
F02B 37/02 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
F01N13/10
F02F1/42 B
F02M26/05
F02M26/06 311
F02M26/41 311
F02M26/43
F02B37/00 302F
F02B37/02 H
(21)【出願番号】P 2018008518
(22)【出願日】2018-01-23
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(72)【発明者】
【氏名】上刎 慶幸
(72)【発明者】
【氏名】石本 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】旗生 篤宏
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-031846(JP,A)
【文献】特開昭60-065238(JP,A)
【文献】特開2012-140917(JP,A)
【文献】特開2011-231724(JP,A)
【文献】特開平10-122036(JP,A)
【文献】特開昭61-055355(JP,A)
【文献】特開平01-237318(JP,A)
【文献】特開2015-178807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00
F02F 1/00
F02M 26/00
F02B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドを有するとともに、隣接配置された複数の気筒からなる第1気筒群と、隣接配置された複数の気筒からなるとともに前記第1気筒群に隣接した第2気筒群と、を有するエンジン本体と、
前記第1気筒群における前記複数の気筒の各々に接続された複数の独立排気通路部と、排気ガスの流れ方向の下流側で前記複数の独立排気通路部が集合され、前記排気ガスの流れ方向の下流側に開口部を有する集合排気通路部と、を有する
とともに、前記シリンダヘッドの排気ポートを以って形成された第1排気通路群と、
前記第2気筒群における前記複数の気筒の各々に接続された複数の独立排気通路部と、排気ガスの流れ方向の下流側で前記複数の独立排気通路部が集合され、前記排気ガスの流れ方向の下流側に開口部を有する集合排気通路部と、を有する
とともに、前記シリンダヘッドの排気ポートを以って形成された第2排気通路群と、
前記第1排気通路群における前記複数の独立排気通路部の内の1の独立排気通路部に一端が接続され、他端が吸気通路に接続されたEGR通路と、
前記第1排気通路群および前記第2排気通路群に接続された排気管部と、前記排気管部に対して排気ガスの流れ方向の下流側に配設されたタービンと、を有するとともに、前記シリンダヘッドにおける前記第1排気通路群および前記第2排気通路群のそれぞれにおける前記開口部が開けられた側の側面部に沿って配された単一のターボ過給機と、
を備え、
前記ターボ過給機における前記排気管部は、前記シリンダヘッドの前記側面部に設けられた前記第1排気通路群の前記開口部に接続された第1排気管部と、前記シリンダヘッドの前記側面部に設けられた前記第2排気通路群の前記開口部に接続された第2排気管部と、排気ガスの流れ方向の下流側で前記第1排気管部と前記第2排気管部とが集合された集合排気管部と、を有し、
前記第2排気管部は、前記集合排気管部に至るまでの中心軸が、前記第1排気管部よりも、直線的に設けられており、
前記第1排気通路群と前記第2排気通路群とを気筒軸方向から平面視する場合に、前記第1排気通路群と前記第2排気通路群とは、互いに隣接配置されており、
前記第1排気通路群を前記気筒軸方向から平面視する場合に、当該第1排気通路群では、前記複数の独立排気通路部の内、前記EGR通路が接続された前記独立排気通路部を除く他の1の独立排気通路部が、前記集合排気通路部に対する前記1の独立排気通路部の接続部分を指向する状態で、前記集合排気通路部に対して接続されており、
前記第2排気通路群を前記気筒軸方向から平面視する場合に、当該第2排気通路群では、前記複数の独立排気通路部の配列方向において、前記集合排気通路部の前記開口部が前記第1排気通路群が隣接する側にオフセット配置されている、
多気筒エンジン。
【請求項2】
請求項1に記載の多気筒エンジンであって、
前記第1排気通路群を前記気筒軸方向から平面視する場合に、当該第1排気通路群では、前記複数の独立排気通路部の配列方向において、前記集合排気通路部の前記開口部が、前記第2排気通路群における前記集合排気通路部の配置形態に比べて、中央側に配置されている、
多気筒エンジン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の多気筒エンジンであって、
燃料噴射は、前記第1気筒群に属する前記気筒と、前記第2気筒群に属する前記気筒と、に対して経時的に交互になされる、
多気筒エンジン。
【請求項4】
請求項1に記載の多気筒エンジンであって、
前記第1排気通路群を前記気筒軸方向から平面視する場合に、当該第1排気通路群では、前記複数の独立排気通路部の配列方向において、前記集合排気通路部の前記開口部が前記複数の独立排気通路部が配された範囲の略中央となる部分に配置されており、
前記エンジン本体及び前記ターボ過給機を気筒軸方向から平面視する場合に、前記ターボ過給機における前記集合排気管部は、気筒列方向における前記エンジン本体の略中心に配置されている、
多気筒エンジン。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の多気筒エンジンであって、
前記第1排気通路群を前記気筒軸方向から平面視する場合に、当該第1排気通路群において、前記1の独立排気通路部は、前記第2排気通路群が隣接する側とは反対側に配されており、前記他の1の独立排気通路部は、前記第2排気通路群が隣接する側に配されている、
多気筒エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒エンジンに関し、特に、EGR通路が接続されてなる排気通路の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のエンジンでは、従来から排気ガスの一部を吸気通路に還流させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置が設けられたものがある。エンジンにEGR装置を設けることにより、燃焼ガス温度の過度の上昇を抑制して窒素酸化物(NOx)の発生を抑えることができるとともに、吸気時におけるポンピングロスの低減が可能となる。
【0003】
特許文献1には、排気通路と吸気通路とを連結するEGR通路が設けられたエンジンの構成が開示されている。特許文献1に開示の構成では、エンジン本体の各気筒に接続された複数の独立排気管の一部にEGR通路が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示の構成では、実質的にEGR通路が接続された独立排気管からしかEGRガス(還流排気ガス)を取り出すことができず、吸気通路へのEGRガスの供給にバラツキを生じることが考えられる。
【0006】
また、上記特許文献1に開示の構成では、上記のように接続された独立排気管からしかEGRガスを取り出すことができないので、当該独立排気管が接続された気筒が失火したような場合には、未燃ガスが吸気通路へと送られてしまうこととなる。
【0007】
なお、EGRガスを安定的に吸気通路へ供給することだけを考えるならば、全ての独立排気管にEGR通路を接続することも考えられるが、このような構成では、エンジンの大型化を招くだけでなく、排気効率の低下を招いてしまうことが懸念される。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、EGRガスを安定的に吸気通路へと供給できるとともに、排気効率の低下を抑制することができる多気筒エンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る多気筒エンジンは、シリンダヘッドを有するとともに、隣接配置された複数の気筒からなる第1気筒群と、隣接配置された複数の気筒からなるとともに前記第1気筒群に隣接した第2気筒群と、を有するエンジン本体と、前記第1気筒群における前記複数の気筒の各々に接続された複数の独立排気通路部と、排気ガスの流れ方向の下流側で前記複数の独立排気通路部が集合され、前記排気ガスの流れ方向の下流側に開口部を有する集合排気通路部と、を有するとともに、前記シリンダヘッドの排気ポートを以って形成された第1排気通路群と、前記第2気筒群における前記複数の気筒の各々に接続された複数の独立排気通路部と、排気ガスの流れ方向の下流側で前記複数の独立排気通路部が集合され、前記排気ガスの流れ方向の下流側に開口部を有する集合排気通路部と、を有するとともに、前記シリンダヘッドの排気ポートを以って形成された第2排気通路群と、前記第1排気通路群における前記複数の独立排気通路部の内の1の独立排気通路部に一端が接続され、他端が吸気通路に接続されたEGR通路と、前記第1排気通路群および前記第2排気通路群に接続された排気管部と、前記排気管部に対して排気ガスの流れ方向の下流側に配設されたタービンと、を有するとともに、前記シリンダヘッドにおける前記第1排気通路群および前記第2排気通路群のそれぞれにおける前記開口部が開けられた側の側面部に沿って配された単一のターボ過給機と、を備え、前記ターボ過給機における前記排気管部は、前記シリンダヘッドの前記側面部に設けられた前記第1排気通路群の前記開口部に接続された第1排気管部と、前記シリンダヘッドの前記側面部に設けられた前記第2排気通路群の前記開口部に接続された第2排気管部と、排気ガスの流れ方向の下流側で前記第1排気管部と前記第2排気管部とが集合された集合排気管部と、を有し、前記第2排気管部は、前記集合排気管部に至るまでの中心軸が、前記第1排気管部よりも、直線的に設けられており、前記第1排気通路群と前記第2排気通路群とを気筒軸方向から平面視する場合に、前記第1排気通路群と前記第2排気通路群とは、互いに隣接配置されており、前記第1排気通路群を前記気筒軸方向から平面視する場合に、当該第1排気通路群では、前記複数の独立排気通路部の内、前記EGR通路が接続された前記独立排気通路部を除く他の1の独立排気通路部が、前記集合排気通路部に対する前記1の独立排気通路部の接続部分を指向する状態で、前記集合排気通路部に対して接続されており、前記第2排気通路群を前記気筒軸方向から平面視する場合に、当該第2排気通路群では、前記複数の独立排気通路部の配列方向において、前記集合排気通路部の前記開口部が前記第1排気通路群が隣接する側にオフセット配置されている。
【0010】
上記態様に係る多気筒エンジンでは、第1排気通路群において、上記1の独立排気通路部にEGR通路が接続され、上記他の1の独立排気通路部が、上記集合排気通路部に対する上記1の独立排気通路部の接続部分を指向するように集合排気通路部に接続されている。即ち、集合排気通路部に対する上記他の1の独立排気通路部の接続部分において、当該他の1の独立排気通路部は、指向方向の少なくとも一部成分が、集合排気通路部に対する上記1の独立排気通路部の接続部分を向いている。このため、上記態様に係る多気筒エンジンでは、上記1の独立排気通路部からだけではなく、上記他の1の独立排気通路部からもEGR通路へと排気ガスが導出される。よって、上記多気筒エンジンでは、EGRガスをより安定的に吸気通路へと供給することができる。
【0011】
また、上記態様に係る多気筒エンジンでは、第2排気通路群において、集合排気通路部の前記開口部が第1排気通路群が隣接する側にオフセット配置されているので、第2排気通路群の各独立排気通路部を通り集合排気通路部へと送られる排気ガスは、互いの方向成分が揃うこととなる。換言すると、EGR通路が接続されていない第2排気通路群においては、可能な限り高い排気効率を確保すべく、排気ガスの方向成分(流れ方向の成分)が互いに揃うように集合排気通路部の開口部が設けられている。よって、上記態様に係る多気筒エンジンでは、第2排気通路群における高い排気効率を確保することができる。
【0012】
また、上記態様に係る多気筒エンジンでは、シリンダヘッドの排気ポートを以って第1排気通路群及び第2排気通路群が形成されている。このため、両排気通路群を通る排気ガスを、シリンダヘッドに設けられたウォータージャケットを用いて冷却することができる。また、エンジン全体での小型化を図ることも可能となる。
また、上記態様に係る多気筒エンジンでは、第1排気通路群を通り送られてきた排気ガスが第1排気管部を介して集合排気管部に送られ、第2排気通路群を通り送られてきた排気ガスが第2排気管部を介して集合排気管部に送られる。このため、第1排気管部及び第2排気管部で流れ方向が整えられて集合排気管部に送られることとなり、排気効率の向上を図ることができる。
また、上記態様に係る多気筒エンジンでは、ターボ過給機を備えるので、排気ガスの運動エネルギを回収し、高効率化を図ることができる。
また、上記態様に係る多気筒エンジンでは、第2排気管部の上記中心軸が、第1排気管部に比して直線的に設けられているので、第2排気通路群を通り排出される排気ガスを、高い効率でターボ過給機に供給することができる。よって、上記態様に係る多気筒エンジンでは、更なる高効率化を図ることができる。
従って、上記態様に係る多気筒エンジンでは、EGRガスを安定的に吸気通路へと供給できるとともに、排気効率の低下を抑制することができる。
【0013】
本発明の別態様に係る多気筒エンジンは、上位態様であって、前記第1排気通路群を前記気筒軸方向から平面視する場合に、当該第1排気通路群では、前記複数の独立排気通路部の配列方向において、前記集合排気通路部の前記開口部が、前記第2排気通路群における前記集合排気通路部の配置形態に比べて、中央側に配置されている。
【0014】
上記態様に係る多気筒エンジンでは、第1排気通路群における集合排気通路部の開口部が、平面視で中央側に配置されている。このため、第1排気通路群においては、独立排気通路部から集合排気通路部に送られる排気ガスの流れ方向が、独立排気通路部毎に異なることとなる。よって、当該流れ方向が独立排気通路部毎に異なることを利用して、上記他の1の独立排気通路部からの排気ガスの少なくとも一部を上記1の独立排気通路部を介してEGR通路へと送ることができる。
【0015】
本発明の別態様に係る多気筒エンジンは、上記態様であって、燃料噴射は、前記第1気筒群に属する前記気筒と、前記第2気筒群に属する前記気筒と、に対して経時的に交互になされる。
【0016】
上記態様に係る多気筒エンジンでは、第1気筒群に属する気筒と、第2気筒群に属する気筒と、に対して経時的に交互に燃料噴射を行う構成としているので、排気干渉の抑制を図ることができ、さらに高い排気効率を実現することができる。
【0017】
本発明の別態様に係る多気筒エンジンは、上記態様であって、前記第1排気通路群を前記気筒軸方向から平面視する場合に、当該第1排気通路群では、前記複数の独立排気通路部の配列方向において、前記集合排気通路部の前記開口部が前記複数の独立排気通路部が配された範囲の略中央となる部分に配置されており、前記エンジン本体及び前記ターボ過給機を気筒軸方向から平面視する場合に、前記ターボ過給機における前記集合排気管部は、気筒列方向における前記エンジン本体の略中心に配置されている。
【0025】
本発明の別態様に係る多気筒エンジンは、上記態様であって、前記第1排気通路群を前記気筒軸方向から平面視する場合に、当該第1排気通路群において、前記1の独立排気通路部は、前記第2排気通路群が隣接する側とは反対側に配されており、前記他の1の独立排気通路部は、前記第2排気通路群が隣接する側に配されている。
【0026】
上記態様に係る多気筒エンジンでは、上記1の独立排気通路部と上記他の1の独立排気通路部とが、第1排気通路群における複数の独立排気通路部の配列方向において、互いに反対側となる位置に配置されていることとなる。よって、上記他の1の独立排気通路部からの排気ガスの少なくとも一部が、効率よく上記1の独立排気通路部をからEGR通路へと導出される。よって、上記態様に係る多気筒エンジンでは、より安定的にEGRガスを吸気通路へと供給することができる。
【発明の効果】
【0027】
上記の各態様に係る多気筒エンジンでは、EGRガスを安定的に吸気通路へと供給できるとともに、排気効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施形態に係る車両におけるエンジンの概略構成を示す模式図である。
【
図4】エンジンにおけるシリンダヘッドとターボ過給機とを抜き出して示す模式斜視図である。
【
図5】
図4のV-V断面を示す図であって、シリンダヘッドにおける排気ポート及びポート集合部の構成を示す模式断面図である。
【
図6】第1排気ポート群を抜き出して示す模式断面図である。
【
図7】第1排気ポート群における排気ガスの流れを示す模式図である。
【
図8】第2排気ポート群における排気ガスの流れを示す模式図である。
【
図9】変形例に係るシリンダヘッドにおける排気ポートの構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一態様であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0030】
[実施形態]
1.多気筒エンジン2の概略構成
多気筒エンジン(以下では、単に「エンジン」と記載する。)2の概略構成について、
図1を用い説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、当該車両1に搭載されたエンジン2と、当該エンジン2の駆動制御を実行するECU(Engine Control Unit)10と、を有する。
【0032】
エンジン2は、エンジン本体3と、吸気装置4と、排気装置5と、ターボ過給機6と、を備える。本実施形態では、エンジン本体3として、6つの気筒3a~3fを有する多気筒のディーゼルエンジンを一例として採用している。
【0033】
吸気装置4は、エンジン本体3の吸気ポート(図示を省略。)に接続された吸気通路41を有する。吸気通路41の上流端には、エアクリーナ42が設けられており、新気は、エアクリーナ42を通り吸気通路41に取り込まれる。
【0034】
吸気通路41には、ターボ過給機6のコンプレッサ61、スロットルバルブ43、インタークーラ44、及びサージタンク45が介挿されている。吸気通路41を流れてきた空気は、ターボ過給機6のコンプレッサ61により過給され、スロットルバルブ43を通りインタークーラ44に送られる。インタークーラ44では、コンプレッサ61による過給により温度上昇した空気の冷却がなされる。
【0035】
なお、スロットルバルブ43は、エンジン2の運転中において、基本的に全開若しくはこれに近い状態に維持するように開閉制御が実行される。そして、エンジン2の停止時等の必要時のみ閉弁される。
【0036】
サージタンク45は、エンジン本体3の吸気ポート(図示を省略。)との接続部分の直前に設けられており、各気筒3a~3fへの流入空気量の平準化を図るために設けられている。
【0037】
排気装置5は、ターボ過給機6のタービン62が設けられた部分に一端が接続された排気通路51を有する。排気通路51には、DOC(ディーゼル酸化触媒)52、DPF(ディーゼル微粒子除去フィルタ)53、排気シャッターバルブ54、及びサイレンサ55が介挿されている。
【0038】
DOC52は、エンジン本体3から排出された排気ガス中のCO及びHCを酸化することにより無害化するものであり、DPF53は、排気ガス中に含まれる煤等の微粒子を捕集するものである。排気シャッターバルブ54は、排気ガスの流れ方向におけるDPF53とサイレンサ55との間に設けられており、サイレンサ55を通り外部に排気される排気ガスの流量を制御するバルブである。
【0039】
ターボ過給機6は、コンプレッサ61及びタービン62の他に、ケーシング通路部(第1排気管部)63、ケーシング通路部(第2排気管部)64、及びケーシング集合部(集合排気管部)65を有する。ケーシング通路部63は、気筒3a~3cからなる第1気筒群3Aに接続されており、ケーシング通路部64は、気筒3d~3fからなる第2気筒群3bに接続されている。ケーシング集合部65は、ケーシング通路部63とケーシング通路部64とが集合されてなる管部であり、タービン62が設けられた部分に接続されている。
【0040】
エンジン2は、HP-EGR(High Pressure-Exhaust Gas Recirculation)装置7、LP-EGR(Low Pressure-Exhaust Gas Recirculation)装置8、及びブローバイガス装置9を更に備える。HP-EGR装置7は、HP-EGR通路(EGR通路)71を有している。HP-EGR通路71は、エンジン本体3のシリンダヘッドと吸気通路41との間を接続するように設けられている。なお、吸気通路41におけるHP-EGR通路71の接続箇所は、インタークーラ44が介挿された箇所とサージタンク45との間の箇所である。HP-EGR通路71には、EGRバルブ72が介挿されている。EGRバルブ72は、吸気通路41に対して還流させる排気ガスの量を調節するためのバルブである。
【0041】
LP-EGR装置8は、LP-EGR通路81を有している。LP-EGR通路81は、排気通路51と吸気通路41とを接続するように設けられている。排気通路51におけるLP-EGR通路81の接続箇所は、DPF53が介挿された箇所と排気シャッターバルブ54が介挿された箇所との間の箇所である。吸気通路41におけるLP-EGR通路81の接続箇所は、エアクリーナ42が介挿された箇所とターボ過給機6のコンプレッサ61が介挿された箇所との間の箇所である。
【0042】
LP-EGR通路81には、EGRクーラ82とEGRバルブ83とが介挿されている。EGRバルブ83は、HP-EGR装置7におけるEGRバルブ72と同様に、吸気通路41に対して還流させる排気ガスの量を調節するためのバルブである。EGRクーラ82は、吸気通路41に還流させる排気ガスを冷却するために設けられている。
【0043】
ブローバイガス装置9は、ブローバイガス通路91を有している。ブローバイガス通路91は、エンジン本体3のヘッドカバ内と吸気通路41とを接続するように設けられている。ブローバイガス通路91は、エンジン本体3内で発生したブローバイガスを吸気通路41へと戻すための通路である。
【0044】
ECU10は、エンジン本体3における燃料噴射タイミングの制御や、各種バルブ43,54,72,83の開閉制御などを実行する。
【0045】
2.エンジン2の外観構成
エンジン2の外観構成について、
図2及び
図3を用い説明する。
図2は、エンジン2を側方から見た模式側面図であり、
図3は、エンジン2を正面から見た模式正面図である。
【0046】
図2及び
図3に示すように、エンジン2において、エンジン本体3の-Y側の側面部には、LP-EGR装置8のLP-EGR通路81及びEGRクーラ82や、排気装置5のDOC52及びDPF53や、ターボ過給機6等が沿うように配置されている。LP-EGR通路81は、+Z側に配されたターボ過給機6におけるコンプレッサ61(
図1を参照。)の直前部分と、-Z側に配されたDPF53の下流部分と、を接続するように設けられている。EGRクーラ82は、Z方向に略沿うように配置されている。
【0047】
図2に示すように、排気装置5におけるDOC52が設けられた箇所からDPF53が設けられた箇所に至る部分は、略U字形状となるように曲折されている。そして、排気通路51におけるDPF53よりも下流側(排気ガスの流れ方向の下流側)の部分は、-Z側(エンジン本体3のオイルパン33の側)であって-Y側(
図2の紙面手前側)を向くように曲折されている。
【0048】
図3に示すように、排気装置5におけるDOC52は、エンジン本体3のシリンダヘッド31及びヘッドカバ34の-Y側に近接して配置されている。DPF53は、エンジン本体3のシリンダブロック32の-Y側に近接して配置されている。
【0049】
図2に示すように、ターボ過給機6の-X側には、カバー101とカバー102とが設けられている。これらカバー101,102は、断熱性を有するものである。
【0050】
ここで、本実施形態では、ターボ過給機6として可変容量ターボ過給機を採用している。このため、容量を可変するためのVGTアクチュエータを備えている(詳細な図示などは省略)。カバー101は、ターボ過給機6のVGTアクチュエータを、近接するエンジン本体3やDPF53などの熱から保護するために設けられている。
【0051】
同様に、カバー102は、LP-EGR装置8におけるEGRバルブ83(
図2及び
図3では、図示を省略。)を、近接するエンジン本体3やDPF53などの熱から保護するために設けられている。なお、カバー101とカバー102とは、別体であってもよいし、一体形成されたものであってもよい。
【0052】
3.シリンダヘッド31とターボ過給機6との配置関係
シリンダヘッド31とターボ過給機6との配置関係について、
図4を用い説明する。
図4は、エンジン2におけるシリンダヘッド31とターボ過給機6とを抜き出して示す模式斜視図である。
【0053】
図4に示すように、シリンダヘッド31は、X方向に長い略直方体形状を有している。シリンダヘッド31の+Z側は開口されており(上方開口部31a)、ヘッドカバ34が取り付けられることにより塞がれる(
図3を参照)。
【0054】
ターボ過給機6は、シリンダヘッド31の-Y側の側面部31bに沿うように配置されている。そして、ターボ過給機6のケーシング通路部63,64(
図4では、図示の都合上、ケーシング通路部63のみを図示。)が、シリンダヘッド31の側面部31bに開口された排気ポートに接続されている。これについては、後述する。
【0055】
ケーシング通路部63,64に続くケーシング集合部65は、ケーシング通路部63,64の-Y側で+Z側に向けて曲折されている。そして、ケーシング集合部65は、タービン62が設けられた部分に接続されている。
【0056】
なお、ケーシング通路部63には、排気ガスの温度を検出するための排気ガス温度センサ103が取り付けられている。
【0057】
4.シリンダヘッド31における排気ポート31c~31h,31j~31o及びポート集合部31i,31pの構成
シリンダヘッド31における排気ポート31c~31h,31j~31o及びポート集合部31i,31pの構成について、
図5を用い説明する。
図5は、
図4のV-V断面を示す模式断面図である。
【0058】
図5に示すように、本実施形態に係るエンジン本体3では、+Z側から順に、#1気筒3a、#2気筒3b、#3気筒3c、#4気筒3d、#5気筒3e、#6気筒3fが配列されている。なお、
図5では、シリンダヘッド31の気筒3a~3fに相当する箇所を示すために符号3a~3fを付している。
【0059】
本実施形態では、#1気筒3a~#3気筒3cからなるグループを第1気筒群3Aとし、#4気筒3d~#6気筒3fからなるグループを第2気筒群3Bとする。本実施形態に係るエンジン2では、第1気筒群3Aに属する#1気筒3a~#3気筒3cに対しては、連続して燃料噴射がされず、同様に、第2気筒群3Bに属する#4気筒3d~#6気筒3fに対しても、連続して燃料噴射がされないように駆動制御される。具体的に、エンジン2においては、#1気筒3a⇒#5気筒3e⇒#3気筒3c⇒#6気筒3f⇒#2気筒3b⇒#4気筒3dの順に燃料が噴射される。
【0060】
#1気筒3aには、排気ポート(独立排気通路部)31cと排気ポート(独立排気通路部)31dとが接続されている。同様に、#2気筒3bには、排気ポート(独立排気通路部)31eと排気ポート(独立排気通路部)31fとが接続され、#3気筒3cには、排気ポート(独立排気通路部)31gと排気ポート(独立排気通路部)31hとが接続されている。
【0061】
排気ポート31c~31hは、シリンダヘッド31における-Y側の部分に設けられたポート集合部31iで集合されている。本実施形態では、排気ポート31c~31hとポート集合部31iとを纏めて第1排気ポート群(第1排気通路群)31Aと呼ぶ。即ち、本実施形態では、第1気筒群3Aに対応して設けられた排気通路を第1排気ポート群31Aと呼ぶ。
【0062】
ターボ過給機6のケーシング通路部63は、第1排気ポート群31Aにおけるポート集合部31iに接続されている。具体的には、ケーシング通路部63は、ポート集合部31iにおける排気ガスの流れ方向下流側の開口部31uに対して接続されている。
【0063】
#4気筒3dには、排気ポート(独立排気通路部)31jと排気ポート(独立排気通路部)31kとが接続されて、#5気筒3eには、排気ポート(独立排気通路部)31lと排気ポート(独立排気通路部)31mとが接続され、#6気筒3fには、排気ポート(独立排気通路部)31nと排気ポート(独立排気通路部)31oとが接続されている。
【0064】
排気ポート31j~31oは、シリンダヘッド31における-Y側の部分に設けられたポート集合部31pで集合されている。上記同様に、本実施形態では、排気ポート31j~31oとポート集合部31pとを纏めて第2排気ポート群(第2排気通路群)31Bと呼ぶ。
【0065】
ターボ過給機6のケーシング通路部64は、第2排気ポート群31Bにおけるポート集合部31pに接続されている。具体的には、ケーシング通路部64は、ポート集合部31pにおける排気ガスの流れ方向下流側の開口部31vに対して接続されている。
【0066】
第1排気ポート群31Aでは、X方向において、#1気筒3aに排気ポート31cが接続された箇所から#3気筒3cに排気ポート31hが接続された箇所までの範囲の略中央となる部分にポート集合部31iの開口部31uが配置されている。換言すると、ポート集合部31iの開口部31uは、#2気筒3bに排気ポート31fが接続された箇所の-Y側にポート集合部31iが配置されている。即ち、第1排気ポート群31Aでは、排気ポート31c~31hが等長(略等長)に設定されている。
【0067】
一方、第2排気ポート群31Bでは、X方向において、#4気筒3dに排気ポート31jが接続された箇所から#6気筒3fに排気ポート31oが接続された箇所までの範囲の中央に対して、+X側(第1排気ポート群31Aが隣接する側)にオフセットした状態でポート集合部31pの開口部31vが配置されている。より具体的には、ポート集合部31pの開口部31vは、X方向において、#4気筒3dに排気ポート31jが接続された箇所よりも+X側に配置されている。
【0068】
図5に示すように、ケーシング通路部64は、ポート集合部31pとの接続部分からケーシング集合部65との接続部分までの間を略直線状に延びるように設けられている。即ち、ケーシング通路部64の通路の中心軸Ax
64は、ポート集合部31pの開口部31vからケーシング集合部65までの間において、略直線状に設けられている。
【0069】
一方、ケーシング通路部63は、ポート集合部31iとの接続部分からケーシング集合部65との接続部分までの間で-X側に向けて曲折された部分を有する。即ち、ケーシング通路部63の通路の中心軸Ax63は、ポート集合部31iの開口部31uからケーシング集合部65までの間において、曲折された状態で設けられている。
【0070】
図5に示すように、エンジン本体3のシリンダヘッド31においては、HP-EGR通路71が排気ポート31cにのみ選択的に接続されている。HP-EGR通路71は、その少なくとも一部がシリンダヘッド31内に形成されている。本実施形態においては、排気ポート31cが上記の各態様における「1の独立排気通路部」に相当する。
【0071】
HP-EGR通路71は、排気ポート31cとの接続部分から+X側に向けて延び、先端部分で+Y側に向けて曲折されている。HP-EGR通路71は、排気ポート31cにおける排気ポート31dとの合流箇所よりも+Y側(排気ガスの流れ方向の上流側)の箇所に接続されている。
【0072】
5.第1排気ポート群31Aの構成
第1排気ポート群31Aの構成について、
図6を用い説明する。
図6は、
図5における第1排気ポート群31Aの部分を抜き出して示した図である。
【0073】
図6に示すように、本実施形態では、排気ポート31c,31dがポート集合部31iに接続された箇所を接続部31q、排気ポート31e,31fがポート集合部31iに接続された箇所を接続部31s、排気ポート31g,31hがポート集合部31iに接続された箇所を接続部31tとする。また、本実施形態では、HP-EGR通路71が排気ポート31cに接続された箇所を接続部71aとする。
【0074】
上記定義において、第1排気ポート群31Aにおける排気ポート31g,31hは、接続部31tで接続部31qを指向している。換言すると、接続部31tにおける排気ポート31g,31hの指向軸Dr1は、排気ポート31c,31dの接続部31qを向く成分を有する。
【0075】
なお、本実施形態においては、排気ポート31g,31hが上記の各態様における「他の1の独立排気通路部」に相当する。
【0076】
6.第1排気ポート群31Aにおける排気ガスの流れ
第1排気ポート群31Aにおける排気ガスの流れについて、
図7を用い説明する。
図7は、第1排気ポート群31Aにおける排気ガスの流れを示す模式図である。
【0077】
図7に示すように、第1排気ポート群31Aにおいて、#1気筒3aからは、排気ポート31c及び排気ポート31dを通り排気ガスが排出され(排気ガスの流れFlow
1,Flow
2)、HP-EGR通路71が接続された箇所のすぐ下流側の箇所で合流する(排気ガスの流れFlow
3)。合流した排気ガス(Flow
3)は、ポート集合部31iからケーシング通路部63へと導出される。
【0078】
#1気筒3aから排気ポート31cを通り排出される排気ガスの一部は、HP-EGR通路71へと導出される(排気ガスの流れFlow4)。当該排気ガスが吸気通路41へと還流されるEGRガスとなる。
【0079】
#2気筒3bからは、排気ポート31e及び排気ポート31fを通り排気ガスが排出され(排気ガスの流れFlow5,Flow6)、ポート集合部31iへと送られる。ポート集合部31iへと送られた排気ガス(Flow5,Flow6)は、ケーシング通路部63へと導出される。
【0080】
#3気筒3cからは、排気ポート31g及び排気ポート31hを通り、排気ガスが排出され(排気ガスの流れFlow7,Flow8)、ポート集合部31iの上流側の箇所で合流する(排気ガスの流れFlow9)。合流した排気ガス(Flow9)の一部は、ポート集合部31iからケーシング通路部63へと導出される(排気ガスの流れFlow10)。
【0081】
一方、上記の合流した排気ガス(Flow9)の残りの部分は、ポート集合部31iから排気ポート31cに向けて送られる(排気ガスの流れFlow11)。排気ポート31cに送られた排気ガス(Flow11)は、HP-EGR通路71へと導出される(排気ガスの流れFlow4)。
【0082】
なお、排気ガス(Flow11)が排気ポート31cに向けて送られる時点においては、#1気筒3aにおける排気バルブは閉じられているので、排気ポート31cにおけるHP-EGR通路71が接続された箇所よりも#1気筒3a側に流れ込むことは抑制され、排気ガス(Flow11)は、HP-EGR通路71へと導出される。
【0083】
7.第2排気ポート群31Bにおける排気ガスの流れ
第2排気ポート群31Bにおける排気ガスの流れについて、
図8を用い説明する。
図8は、第2排気ポート群31Bにおける排気ガスの流れを示す模式図である。
【0084】
図8に示すように、第2排気ポート群31Bにおいて、#4気筒3dからは、排気ポート31j及び排気ポート31kを通り排気ガスが排出され(排気ガスの流れFlow
21,Flow
22)、ポート集合部31pの直ぐ上流側の箇所で合流する(排気ガスの流れFlow
23)。そして、合流した排気ガス(Flow
23)は、ポート集合部31pからケーシング通路部64へと導出される。#4気筒3dからケーシング通路部64への排気ガスの流れ(Flow
21,Flow
22,Flow
23)は、略直線状の流れであり、排気抵抗が小さい。
【0085】
#5気筒3eからは、排気ポート31l及び排気ポート31mを通り排気ガスが排出され(排気ガスの流れFlow24,Flow25)、排出された排気ガス(Flow24,Flow25)は、直ぐに合流された後にポート集合部31pへと送られる(Flow26)。ポート集合部31pへと送られた排気ガス(Flow26)は、ケーシング通路部64へと導出される。
【0086】
#6気筒3fからは、排気ポート31n及び排気ポート31oを通り排気ガスが排出され(排気ガスの流れFlow27,Flow28)、排出された排気ガス(Flow27,Flow28)は、直ぐに合流された後にポート集合部31pに向けて送られる(Flow28)。ポート集合部31pへと送られた排気ガス(Flow28)は、ケーシング通路部64へと導出される。
【0087】
なお、上述のように、エンジン2における燃料噴射の順番は、#1気筒3a⇒#5気筒3e⇒#3気筒3c⇒#6気筒3f⇒#2気筒3b⇒#4気筒3dであるので、第2排気ポート群31B内やケーシング通路部64内やケーシング集合部65内等で排気干渉を生じ難いが、第2排気ポート群31Bの構成を
図5及び
図8のような構成とすることにより、より排気抵抗の低減を図ることができる。即ち、第2排気ポート群31Bでは、排気ガスFlow
23,Flow
26,Flow
29が互いに対向する方向成分を有さないようにしているので、仮に第2排気ポート群31B内に直前の排気ガスの流れが残留していたとしても、対向することなくスムーズにターボ過給機6へと導出される。
【0088】
8.効果
本実施形態に係るエンジン2では、第1排気ポート群31Aにおいて、排気ポート31cにHP-EGR通路71が接続され、排気ポート31g,31hの指向軸Dr
1が、排気ポート31cにおけるポート集合部31iとの接続部分を向くように構成されている。このため、本実施形態に係るエンジン2では、
図7を用い説明したように、排気ポート31cからだけではなく、排気ポート31g,31hからもHP-EGR通路71へと排気ガスが導入される(Flow
11)。よって、エンジン2では、EGRガスをより安定的に吸気通路41へと供給することができる。
【0089】
また、本実施形態に係るエンジン2では、
図5及び
図8を用い説明したように、第2排気ポート群31Bにおいて、ポート集合部31pの開口部31vが#4気筒3dと排気ポート31jとの接続箇所よりも+X側(第1排気ポート群31Aが隣接する側)にオフセット配置されているので、第2排気ポート群31Bの各排気ポート31j~31oを通りポート集合部31pへと送られる排気ガス(Flow
21~Flow
29)は、互いの方向成分が対向せず方向成分が揃うこととなる。よって、本実施形態に係るエンジン2では、第2排気ポート群31Bにおける高い排気効率を確保することができる。
【0090】
従って、本実施形態に係るエンジン2では、EGRガスを安定的に吸気通路41へと供給できるとともに、排気効率の低下を抑制することができる。
【0091】
本実施形態に係るエンジン2では、第1排気ポート群31Aにおけるポート集合部31iの開口部31uが、Z方向からの平面視で略中央に配置されている。換言すると、
図5及び
図6を用い説明したように、ポート集合部31iの開口部31uは、#2気筒3bにおける排気ポート31fの接続箇所の-Y側に配置されている。このため、第1排気ポート群31Aにおいては、排気ポート31c,31dを通り送られる排気ガス(Flow
1~Flow
3)と、排気ポート31e,31fを通り送られる排気ガス(Flow
5,Flow
6)と、排気ポート31g,31hを通り送られる排気ガス(Flow
7~Flow
9)と、で互いに異なる方向成分を以ってポート集合部31iに導出される。そして、排気ポート31g,31hを通り送られる排気ガス(Flow
7~Flow
9)は、排気ポート31cにおけるポート集合部31iとの接続部分を向く方向成分(-X側を向く成分)を有する。第1排気ポート群31Aでは、排気ガス(Flow
7~Flow
9)における排気ポート31cを向く方向成分を有することを利用して、排気ポート31cからだけでなく、排気ポート31g,31hからもHP-EGR通路71へと排気ガスを送ることができる。
【0092】
本実施形態に係るエンジン2において、ECU10は、#1気筒3a⇒#5気筒3e⇒#3気筒3c⇒#6気筒3f⇒#2気筒3b⇒#4気筒3dの順に燃料噴射を実行する。換言すると、本実施形態に係るECU10は、第1気筒群3Aに属する#1気筒3a~#3気筒3cと、第2気筒群3Bに属する#4気筒3d~#6気筒3fと、に対して経時的に交互に燃料噴射を行うよう燃料噴射の制御を実行することとしているので、排気干渉の抑制を図ることができ、さらに高い排気効率を実現することができる。
【0093】
図1~
図8では、詳細な図示を省略したが、シリンダヘッド31には、ウォータージャケットが設けられている。このため、本実施形態では、シリンダヘッド31に第1排気ポート群31A及び第2排気ポート群31Bを設けることで、各気筒3a~3fから排出された排気ガスを、シリンダヘッド31に設けられたウォータージャケット(図示を省略。)を用いて冷却することができる。また、シリンダヘッド31の外方で排気管を順次集合する形態に比べて、エンジン2全体での小型化を図ることも可能となる。
【0094】
本実施形態に係るエンジン2では、第1排気ポート群31Aを通り送られてきた排気ガスがケーシング通路部(第1排気管部)63を介してケーシング集合部(集合排気管部)65に送られ、第2排気ポート群(第2排気通路群)31Bを通り送られてきた排気ガスがケーシング通路部(第2排気管部)64を介してケーシング集合部65に送られるので、ケーシング通路部63,64で流れ方向が整えられてケーシング集合部65に送られることとなり、排気効率の向上を図ることができる。
【0095】
本実施形態に係るエンジン2では、ターボ過給機6を備えるので、排気ガスの運動エネルギを回収し、高効率化を図ることができる。
【0096】
本実施形態に係るエンジン2では、第2排気ポート群31Bに接続されるケーシング通路部64の中心軸Ax64が、第1排気ポート群31Aに接続されるケーシング通路部63の中心軸Ax63に比して直線的に延びてケーシング集合部65に接続されている。これより、本実施形態では、第2排気通路群31Bを通り排出される排気ガスを、高い効率でターボ過給機6のタービン62へと導くことができる。よって、本実施形態に係るエンジン2では、更なる高効率化を図ることができる。
【0097】
本実施形態に係るエンジン2では、HP-EGR通路71が、第1排気ポート群31Aにおける排気ポート31cに対して選択的に接続されており、第2排気ポート群31Bに対しては接続されていない。このため、HP-EGR通路71が接続された第1排気ポート群31Aでは、排気ポート31g,31hの形態を
図6等に示すように構成することで、吸気通路41への安定的なEGRガスの供給を行いながら、第2排気ポート群31Bを通り送られる排気ガスは、低抵抗に下流側(ターボ過給機6におけるタービン62側)へと送られる。よって、本実施形態に係るエンジン2では、EGRガスを安定的に吸気通路41へと供給できるとともに、排気効率の低下を抑制することができる。
【0098】
本実施形態に係るエンジン2では、X方向(排気ポート31c~31hの配列方向)において、第1排気ポート群31Aにおける排気ポート31cと排気ポート31g,31hとが互いに反対側となる位置に配置されていることとなる。即ち、排気ポート31cは第1排気ポート群31Aにおける最も+X側に配置されているのに対して、排気ポート31g,31hは第1排気ポート群31Aにおける最も-X側に配置されている。これより、排気ポート31g,31hからの排気ガス(Flow7~Flow9)の一部(Flow11)が、効率よく排気ポート31cを通り(逆流して)HP-EGR通路71へと導出される。よって、本実施形態に係るエンジン2では、より安定的にEGRガスを吸気通路41へと供給することができる。
【0099】
以上のように、本実施形態に係るエンジン2では、EGRガスを安定的に吸気通路41へと供給できるとともに、排気効率の低下を抑制することができる。
【0100】
[変形例]
変形例に係るエンジンの構成について、
図9を用い説明する。
図9は、上記実施形態で用いた
図5に対応する模式断面図である。なお、以下の説明においては、上記実施形態と重複する部分の説明を省略する。
【0101】
図9に示すように、本変形例に係るエンジンにおいても、X方向に配列された#1気筒3a~#6気筒3fを有するエンジン本体を有する。そして、本変形例に係るエンジン本体のシリンダヘッド131においても、第1排気通路群としての第1排気ポート群131Aと、第2排気通路群としての第2排気ポート群131Bと、を有する。
【0102】
第1排気ポート群131Aは、#1気筒3aに接続された排気ポート(独立排気通路部)131cと排気ポート(独立排気通路部)131d、#2気筒3bに接続された排気ポート(独立排気通路部)131eと排気ポート(独立排気通路部)131f、#3気筒3cに接続された排気ポート(独立排気通路部)131gと排気ポート(独立排気通路部)131hと、を有する。そして、第1排気ポート群131Aは、排気ポート131c~131hが集合されてなるポート集合部(集合排気通路部)131iも有する。
【0103】
第2排気ポート群131Bは、#4気筒3dに接続された排気ポート(独立排気通路部)131jと排気ポート(独立排気通路部)131k、#5気筒3eに接続された排気ポート(独立排気通路部)131lと排気ポート(独立排気通路部)131m、#6気筒3fに接続された排気ポート(独立排気通路部)131nと排気ポート(独立排気通路部)131oと、を有する。そして、第2排気ポート群131Bは、排気ポート131j~131oが集合されてなるポート集合部(集合排気通路部)131pも有する。
【0104】
なお、本変形例においても、第1排気ポート群131Aのポート集合部131iはターボ過給機6のケーシング通路部63に接続され、第2排気ポート群131Bのポート集合部131pはターボ過給機6のケーシング通路部64に接続されている。この構成については、上記実施形態と同じである。
【0105】
本変形例においても、第2排気ポート群131Bにおけるポート集合部131pの開口部(ケーシング通路部64との接続部分)は、#4気筒3dに対する排気ポート131jの接続箇所よりも、+X側(第1排気ポート群131Aが隣接する側)にオフセットした状態で配置されている。
【0106】
一方、第1排気ポート群131Aにおけるポート集合部131pの開口部(ケーシング通路部63との接続部分)は、上記実施形態に係る第1排気ポート群31Aとは異なり、#1気筒3aに対する排気ポート131cの接続箇所よりも、+X側(第2排気ポート群131Bが隣接する側とは反対側)にオフセットした状態で配置されている。
【0107】
即ち、本変形例に係るエンジンでは、Z方向からの平面視において、第1排気ポート群131Aと第2排気ポート群131Bとが略同じ形状を以って形成されている。
【0108】
図9に示すように、第1排気ポート群131Aの排気ポート131cには、HP-EGR通路171が接続されている。即ち、本変形例においても、HP-EGR通路171が排気ポート131cにのみ選択的に接続されている。
【0109】
また、本変形例でも、HP-EGR通路171の少なくとも一部がシリンダヘッド131内に形成されている。そして、本変形例においても、排気ポート131cが上記の各態様における「1の独立排気通路部」に相当する。
【0110】
HP-EGR通路171は、排気ポート131cにおける排気ポート131dとの合流箇所の近傍箇所に接続されている。
【0111】
本変形例における第1排気ポート群131Aでも、排気ポート131g,131hが、接続部131tで排気ポート131c,131dとポート集合部131iとの接続部分を指向している。即ち、本変形例においても、接続部131tにおける排気ポート131g,131hの指向軸Dr2が、排気ポート131c,131dとポート集合部131iとの接続部を向く成分を有する。
【0112】
本変形例に係るエンジンでは、第1排気ポート群131Aと第2排気ポート群131Bとを
図9に示す形態とすることにより、上記実施形態に係るエンジン2と同様に、EGRガスを安定的に吸気通路41へと供給できるとともに、排気効率の低下を抑制することができる。
【0113】
また、本変形例に係るエンジンでは、第1排気ポート群131Aにおけるポート集合部131iの配置形態を、第2排気ポート群131Bと同様に、+X側(第2排気ポート群131Bが隣接する側とは反対側)にオフセットした状態で配置することとしているので、第1排気ポート群131Aからケーシング通路部63への排気ガスの導出に係る排気抵抗を低く抑えることができる。
【0114】
[その他の変形例]
上記実施形態及び上記変形例では、シリンダヘッド31,131における第1排気ポート群31A,131A及び第2排気ポート群31B,131Bを以って、第1排気通路群及び第2排気通路群を構成することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、シリンダヘッドの外方で排気通路同士を集合することもできるし、また、HP-EGR通路の接続部をシリンダヘッドの外方とすることもできる。
【0115】
上記実施形態では、第1排気ポート群31Aにおいて、排気ポート31g,31hだけが排気ポート31cを指向するように構成したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、排気ポート31e,31fについても排気ポート31cを指向する構成とすることもできる。
【0116】
上記実施形態及び上記変形例では、1つの気筒に対して2つの排気ポートを接続してなる構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、1つの気筒に対して1つの排気ポートを接続してなる構成や、1つの気筒に対して3つ以上の排気ポートを接続してなる構成を採用することもできる。
【0117】
上記実施形態及び上記変形例では、エンジン2が1つのターボ過給機6を備える構成を一例として採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ターボ過給機を備えない自然吸気エンジンを採用することもできるし、2つ以上のターボ過給機を備える構成、電動過給機や機械式過給機などを備える構成などを採用することもできる。
【0118】
上記実施形態及び上記変形例では、エンジン本体3の一例として6気筒のディーゼルエンジンを採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、気筒数については、4気筒や5気筒であってもよいし、7気筒以上であってもよい。また、エンジン種類については、ガソリンエンジンであってもよいし、エンジンの形式についても、直列型に限らず、V型やW型、あるいは水平対向などを採用することもできる。
【符号の説明】
【0119】
2 多気筒エンジン
3 エンジン本体
3A 第1気筒群
3B 第2気筒群
3a~3f 気筒
4 吸気装置
5 排気装置
6 ターボ過給機
7 HP-EGR装置
31,131 シリンダヘッド
31A,131A 第1排気ポート群(第1排気通路群)
31B,131B 第2排気ポート群(第2排気通路群)
31c~31h,31j~31o,131c~131h,131j~131o 排気ポート(独立排気通路部)
31i,31p,131i,131p ポート集合部(集合排気通路部)
31t,131t 接続部
31u,31v 開口部
41 排気通路
63 ケーシング通路部(第1排気管部)
64 ケーシング通路部(第2排気管部)
65 ケーシング集合部(集合排気管部)
71 HP-EGR通路(EGR通路)
Ax63,Ax64 中心軸
Dr1,Dr2 指向軸