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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】植物性プロテオグリカン及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/00 20060101AFI20220509BHJP
   A61K 36/48 20060101ALN20220509BHJP
   A61P 17/16 20060101ALN20220509BHJP
   A61K 8/73 20060101ALN20220509BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALN20220509BHJP
   A61K 38/02 20060101ALN20220509BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALN20220509BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20220509BHJP
   A61K 135/00 20060101ALN20220509BHJP
【FI】
C08B37/00 Q
A61K36/48
A61P17/16
A61K8/73
A61Q19/00
A61K38/02
A61K8/9789
A61P43/00 107
A61K135:00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018059079
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019172718
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】原 真佐夫
(72)【発明者】
【氏名】土田 衛
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-502703(JP,A)
【文献】特開昭55-082101(JP,A)
【文献】特開平02-129202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/00
A61P 43/00
A61K 8/9789
A61K 38/02
A61Q 19/00
A61K 8/73
A61P 17/16
A61K 36/48
A61K 135/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アカシア属植物(Acacia Senegal Willdenow又はAcacia Seyal Delile)の幹または枝から得られたアラビアゴムから得られ、重量平均分子量が90万~350万であり、且つ、総アルデヒド含有量が2.0μmol当量/g以下である植物性プロテオグリカンの製造方法であって、下記の工程(A)及び工程(B)を含み、工程(B)におけるポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂の使用量が、アラビアゴム1kgに対して1.0~20Lとなる量であり、強酸性カチオン交換樹脂の使用量が、アラビアゴム1kgに対して0.05~0.50Lとなる量である、製造方法。
工程(A):アラビアゴム水溶液を濃度0.5~40%(w/w)に調製する工程
工程(B):アラビアゴム水溶液を、ポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂および強酸性カチオン交換樹脂に供する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物性プロテオグリカンに関する。詳しくは、動物性プロテオグリカンと同等以上の生理活性を有する植物性プロテオグリカンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖蛋白質が顕著な生理活性を有すると明らかになってきた。糖蛋白質のひとつである動物性プロテオグリカンは、グルコサミノグリカン糖鎖と蛋白質との共有結合化合物の総称であり、その高い保湿性や細胞増殖促進作用から化粧品成分として広く用いられている。動物性プロテオグリカンとしては、例えば、サケ鼻軟骨、サメ鰭軟骨及びイカ頭部軟骨を由来としたものが知られている。しかし、動物性プロテオグリカンは軟骨に微量に存在する物質であるため、製造コストが高いという問題があった。また、化粧品市場や食品市場においては、動物由来成分よりも植物由来成分の方がイメージに優れるため、動物性プロテオグリカンも植物由来成分で代替することが求められていた。
【0003】
植物には、動物性プロテオグリカンに類似する構造をもつアラビノガラクタン蛋白質が含まれている。アラビノガラクタン蛋白質はアラビノガラクタン糖鎖と蛋白質との共有結合化合物の総称でありプロテオグリカンである。アラビノガラクタン蛋白質のもつ効果として、乳化性が知られている(非特許文献1)。アラビアゴムは、アラビノガラクタン蛋白質、アラビノガラクタン、グリコプロテインの混合物である(非特許文献1)。アラビアゴムはアカシア(Acacia)の滲出液より回収される樹液である。アラビアゴムは、増粘作用、乳化作用を有することから化粧品用途において広く応用されており、毎年2千トン程度が国内に輸入されている。アラビアゴムは国内で入手が容易で、且つ、化粧品原料として「医薬部外品原料規格2006」、食品原料として「第8版食品添加物公定書」に登録されている等の安全性等の面でも実績が多く、植物性プロテオグリカンの原料として有用といえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-166489号公報
【文献】特公平05-41642号公報
【文献】特公平3-16169号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Carbohydrate Research,246(1993)p.303-318
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、アラビアゴムを60~140℃で30分以上加熱することによって乳化力が増強した変性アラビアゴムとなることが示されている。特許文献2には、アラビアゴムをカチオン交換樹脂で処理し、更に100~160℃で加熱変性すると、粘度が著しく増加することが示されている。これらの変性アラビアゴムは、変性前のアラビアゴムに比べて重量平均分子量が増加しており、生理活性も優れるものと予想されたが、本発明者の研究によれば、この方法で得られる変性アラビアゴムは、総アルデヒド含有量が高いために生理活性は低い。またこの変性アラビアゴムは、重量平均分子量が高すぎるためにべたつき感があり肌に塗布した際の使用感が悪く、臭いを生じる。これらのため、動物性プロテオグリカンの代替えにはならないことが分かった。
【0007】
特許文献3には、アラビアゴムをカチオン交換樹脂で処理し、乳化安定性が向上することが示されている。本発明者の研究によれば、この方法で得られる精製アラビアゴムはアラビノガラクタン蛋白質が十分量存在しないために生理活性は低く、動物性プロテオグリカンの代替えにはならないことが分かった。
【0008】
従って、動物性プロテオグリカンと同等以上の生理活性を有し肌に塗布した際の使用感に優れた、臭いに問題のない植物性プロテオグリカンは未だ見出されていない。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みて成されたものであり、動物性プロテオグリカンと同等以上の生理活性を有し、肌に塗布した際の使用感に優れた臭いに問題のない植物性プロテオグリカンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アカシア属植物(Acacia Senegal WilldenowまたはAcacia Seyal Delile)の幹または枝から得られたアラビアゴムから、動物性プロテオグリカンと同等以上の生理活性を有する植物性プロテオグリカンを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] アカシア属植物(Acacia Senegal Willdenow又はAcacia Seyal Delile)の幹または枝から得られたアラビアゴムから得られる、重量平均分子量90万~350万、且つ、総アルデヒド含有量が2.0μmol当量/g以下であることを特徴とする植物性プロテオグリカン。
[2] 下記の工程(A)及び工程(B)を含むことを特徴とする請求項1に記載の植物性プロテオグリカンの製造方法。
工程(A):アラビアゴム水溶液を濃度0.5~40%(w/w)に調製する工程
工程(B):アラビアゴム水溶液を、ポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂および強酸性カチオン交換樹脂に供する工程
[3] 上記[1]に記載の植物性プロテオグリカンを含む細胞増殖促進剤。
[4] 上記[1]に記載の植物性プロテオグリカンを含む化粧料。
[5] 上記[3]に記載の細胞増殖促進剤を含む化粧料。
【発明の効果】
【0012】
本発明の植物性プロテオグリカンは、既知の動物性プロテオグリカンと同等以上の生理活性を有し、ヒトの皮膚に対して優れた保湿効果及び細胞増殖促進効果を発揮する。また、植物性であるため、化粧料原料に使用することで、優れた保湿効果及び細胞増殖促進効果を有し、イメージもよい化粧料を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1のアラビアゴムのポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂及び強酸性カチオン交換樹脂処理精製物のサイズ排除クロマトグラフィーにより得られたクロマトグラムを示す図である。
図2】実施例2のアラビアゴムのハイポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂及び強酸性カチオン交換樹脂処理精製物のサイズ排除クロマトグラフィーにより得られたクロマトグラムを示す図である。
図3】実施例3のアラビアゴムのハイポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂及び強酸性カチオン交換樹脂処理精製物のサイズ排除クロマトグラフィーにより得られたクロマトグラムを示す図である
図4】比較例1のアラビアゴムのサイズ排除クロマトグラフィーにより得られたクロマトグラムを示す図である。
図5】比較例2の脱塩アラビアゴムのサイズ排除クロマトグラフィーにより得られたクロマトグラムを示す図である。
図6】比較例3のアラビアゴムのポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂処理精製物のサイズ排除クロマトグラフィーにより得られたクロマトグラムを示す図である。
図7】比較例4のアラビアゴムのゲル型強酸性カチオン交換樹脂処理精製物のサイズ排除クロマトグラフィーにより得られたクロマトグラムを示す図である。
図8】比較例8の変性アラビアゴムのゲル型強酸性カチオン交換樹脂処理精製物のサイズ排除クロマトグラフィーにより得られたクロマトグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施形態に即して説明する。
本発明でいう「植物性プロテオグリカン」とは、アカシア属植物(Acacia Senegal WilldenowまたはAcacia Seyal Delile)の幹または枝から得られたアラビアゴムから、主にアラビノガラクタンとグリコプロテインを除いた精製物であり、有効量のアラビノガラクタン蛋白質成分を含み、細胞増殖活性を阻害するアルデヒド化合物の含有量が少ないことによって、動物性プロテオグリカンと同等以上の生理活性を示すものを指す。
【0015】
本発明の植物性プロテオグリカンは、サイズ排除クロマトグラフィーに基づく重量平均分子量、および、総アルデヒド含有量によって規定される。即ち、サイズ排除クロマトグラフィーにより得られたクロマトグラムの全ピークの重量平均分子量を求めたとき、その値が90万~350万となり、且つ、アルデヒド定量キットにより総アルデヒド含有量を求めたとき、その値が2.0μmol当量/g以下となる関係を満足することが特徴である。
【0016】
上記の重量平均分子量は、好ましくは100万~300万であり、より好ましくは130万~250万、更に好ましくは150万~200万である。また、上記の総アルデヒド含有量は、好ましくは0.005~2.0μmol当量/gであり、より好ましくは0.005~1.7μmol当量/g、更に好ましくは0.005~1.0μmol当量/g、特に好ましくは0.005~0.8μmol当量/gである。
【0017】
なお、重量平均分子量が350万を超える場合、アラビノガラクタン蛋白質成分は増加するものの、粘度が高くなる場合がある。このため、例えば、本発明の植物性プロテオグリカンを生理活性成分として化粧料を調製する際に、取り扱いが難しくなることがある。
【0018】
(SEC測定)
重量平均分子量は、多角度光散乱検出器と示差屈折率検出器をオンライン接続したゲル浸透クロマトグラフィーを使用することによって求めることができる。なお、本明細書において、多角度光散乱検出器を「MALS検出器」、示差屈折率検出器を「RI検出器」とも称し、多角度光散乱検出器及び示差屈折率検出器をオンライン接続したサイズ排除クロマトグラフィーを「SEC測定」と称する。当該SEC測定によれば、当該RI検出器により測定対象物の濃度が算出され、当該MALS検出器により絶対分子量が算出され、重量平均分子量を求めることができる。
【0019】
本発明で採用されるSEC測定の条件は以下のとおりである。
システム:Prominence HPLCシステム(島津製作所製)
カラム:Superose 6 10/300 GL (GEヘルスケア・ジャパン製)
流速:0.5ml/min
溶出溶媒:0.2M 塩化ナトリウム水溶液
試料調製:分析試料を溶出溶媒にて希釈後1時間混合し、25℃で18時間静置し、0.45μmセルロースアセテートメンブランフィルターにて不溶物を除去した液を測定する。
試料濃度:0.4%(w/v)
試料液注入量:100μl
カラムオーブン温調:30℃
RI検出器:Optilab T-rEX(温調25℃)(WYATT Technology製)
MALS検出器:DAWN HELEOS II 8+(WYATT Technology製)
dn/dc:0.141
データプロットモデル:Berry
【0020】
(重量平均分子量)
上記条件で行ったSEC測定で得られたデータをAstra Ver. 6.1.2.84(WYATT Technology製)等を用いて処理することにより、重量平均分子量が求められる。本発明でいう重量平均分子量は、SEC測定によりRI検出器及びMALS検出器を用いて得られたクロマトグラムの溶出開始点から溶出終了点までを結んだ直線から上の全ピークの重量平均分子量を意味する。
【0021】
(総アルデヒド含有量)
総アルデヒド含有量は、アルデヒド定量キットAmpliteTM Colorimetric Aldehyde Quantitation Kit(Product Number 10051)(AAT Bioquest社)を使用することによって求めることができる。
【0022】
本発明で採用される総アルデヒド含有量の測定条件は以下のとおりである。
検出容器:96ウェルクリアボトムマイクロプレート
標準溶液調製:キット付属Adlehyde Standardを、キット付属バッファー水溶液を用いて希釈する。
標準溶液濃度:0、1、3、10、30、100、300、1,000μM
標準溶液量:50μl
試料調製:測定試料を超純水にて希釈する。
試料濃度:5.0%(w/v)
試料液量:50μl
反応溶液量:50μl
反応条件:25℃・遮光
反応時間:30分間
測定波長:405nm
【0023】
上記条件で行った総アルデヒド含有量の測定において、得られた標準溶液の吸光度から、検量線を作成する。得られた試料の吸光度を検量線に当てはめ、試料の1gあたりの総アルデヒド含有量が求められる。
【0024】
重量平均分子量は試料中の有効成分であるアラビノガラクタン蛋白質(高分子量成分)の占める割合を意味し、総アルデヒド含有量は精製物中の生理活性に悪影響を及ぼすアルデヒド化合物の残存の程度を意味する。
【0025】
本発明の植物性プロテオグリカンは、重量平均分子量が90万~350万、且つ、総アルデヒド含有量が2.0μmol当量/g以下である関係を満足する。すなわち、生理活性に悪影響を及ぼすアルデヒド化合物の残存量が少なく、アラビノガラクタン蛋白質が十分量存在することから、後述の実施例(実施例1~3)から明らかなように、保湿性、細胞増殖活性効果及び官能試験結果のいずれにおいても優れた結果が得られ、動物性プロテオグリカンと同等以上の生理活性を有する(表1参照)。
【0026】
後述の比較例1、2は未精製のアラビアゴムであり、いずれにおいても重量平均分子量90万以上を満足せず、生理活性に悪影響を及ぼすアルデヒド化合物を多量に含むため、その生理活性は動物性プロテオグリカンに比べて遥かに低く、本発明の植物性プロテオグリカンになり得ないことを示している(表1参照)。
【0027】
後述の比較例3はアラビアゴムのポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂処理精製物であり、重量平均分子量は142万である。しかし、生理活性に悪影響を及ぼすアルデヒド化合物の残存量が多いために、動物性プロテオグリカンと同等以上の生理活性を有さず、樹脂の臭いが精製物に移り、肌に塗布した際の使用感が悪く、本発明の植物性プロテオグリカンになり得ないことを示している(表1参照)。
【0028】
後述の比較例4はアラビアゴムのゲル型強酸性カチオン交換樹脂処理精製物であり、生理活性に悪影響を及ぼすアルデヒド化合物の残存量が少ないが、重量平均分子量90万以上を満足せず、アラビノガラクタン蛋白質が十分量存在しない。このため、動物性プロテオグリカンと同等以上の生理活性を有さず、本発明の植物性プロテオグリカンになり得ないことを示している(表1参照)。
【0029】
後述の比較例5はアラビアゴムのゲル型I型強塩基性アニオン交換樹脂及び強酸性カチオン交換樹脂処理精製物であり、生理活性に悪影響を及ぼすアルデヒド化合物の残存量が少ないが、重量平均分子量90万以上を満足せずアラビノガラクタン蛋白質が十分量存在しない。このため、動物性プロテオグリカンと同等以上の生理活性を有さず、本発明の植物性プロテオグリカンになり得ないことを示している(表1参照)。
【0030】
後述の比較例6はアラビアゴムのポーラス型II型強塩基性アニオン交換樹脂及び強酸性カチオン交換樹脂処理精製物であり、生理活性に悪影響を及ぼすアルデヒド化合物の残存量が少ないが、重量平均分子量90万以上を満足せずアラビノガラクタン蛋白質が十分量存在しない。このため、動物性プロテオグリカンと同等以上の生理活性を有さず、本発明の植物性プロテオグリカンになり得ないことを示している(表1参照)。
【0031】
後述の比較例7はアラビアゴムのポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂及び弱酸性カチオン交換樹脂処理精製物であり、重量平均分子量は142万である。しかし、生理活性に悪影響を及ぼすアルデヒド化合物の残存量が多いために、動物性プロテオグリカンと同等以上の生理活性を有さず、本発明の植物性プロテオグリカンになり得ないことを示している(表1参照)。
【0032】
後述の比較例8は、特許文献1のアラビアゴムを60~140℃で30分以上加熱する方法により変性されたアラビアゴムであり、比較例1、2の未精製のアラビアゴムよりも細胞増殖活性効果がさらに低くなっている(表1参照)。なお、重量平均分子量は399万であり、高分子量成分を多く含む結果になっているが、加熱によって生理活性を阻害する成分であるアルデヒド化合物の含有量が高く、生理活性を発揮しない。また、重量平均分子量が高すぎるため、べたつき感があり、肌に塗布した際の使用感が悪い。
【0033】
(原料)
本発明の植物性プロテオグリカンの原料として用いるアラビアゴムは、マメ科植物であるAcacia属に属するAcacia Senegal Willdenow、またはAcacia Seyal Delileの幹や枝から得られる天然滲出物である。特に、Acacia Senegal Willdenowから得られるアラビアゴムを原料とするのが好ましい。アラビアゴムはその由来を問うことなく、いずれの産地由来のものであってもよい。また、アラビアゴムは、脱塩物、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状や粉末状(スプレードライ粉末を含む)の形態で入手することができるが、本発明ではこれらの形状を問わず、いずれの形態のものも処理対象のアラビアゴム原料として使用することができる。
【0034】
本発明の植物性プロテオグリカンは、アラビアゴムを、イオン交換樹脂処理に供して、精製することによって得られる。特に、アラビアゴムを水系溶媒に溶解して水溶液とし、この水溶液をイオン交換樹脂処理に供する方法が好ましい。
【0035】
(アニオン交換樹脂)
本発明においては、アニオン交換樹脂処理により、アラビアゴム中の低分子不純物を除去し、高分子含有率を増加することができる。アニオン交換樹脂の樹脂母体としては、例えば、スチレン-ジビニルベンゼン等のスチレン系、及び(メタ)アクリル系、及びハイドロゲル系等が挙げられるが、低分子不純物の除去効率の観点からスチレン系が好ましい。また、アニオン交換樹脂の母体構造としては、一般に、ゲル型、ポーラス型が挙げられ、ゲル型とは、膨潤によって生じる細孔であるミクロポアのみを有するものをいい、ポーラス型とは、ミクロポアの他に、乾燥状態でも消滅しない物理的細孔であるマクロポアを有するものをいうが、低分子不純物の除去効率の観点から、アニオン交換樹脂はポーラス型であることが重要である。なお、本発明において、「ポーラス型」は、「ハイポーラス型」や「MR型(Macro-Reticular Type)」を含む概念である。「ハイポーラス型」はポーラス型よりも細孔をさらに発達させた構造を有するものを指し、MR型とは、ゲル微小ビーズの集合体のものを指す。アニオン交換樹脂の形態としては、例えば、粉状、球状、繊維状、膜状等が挙げられる。また、アニオン交換樹脂には、一般に、I型強塩基性、II型強塩基性及び弱塩基性のものが存在するが、低分子不純物の除去効率の観点から、I型強塩基性のものを使用することが重要である。
【0036】
本発明で使用するポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂は、公知の方法により製造したものでも、市販品でもよい。市販のポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂として、例えば、DIAION PA306、PA308、PA312、PA316、PA318、ハイポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂として、HPA25、HPA25L(以上、三菱ケミカル製)、MR型I型強塩基性アニオン交換樹脂として、アンバーライトIRA900J、IRA904、IRA958(以上、オルガノ製)が挙げられる。アニオン交換樹脂は、小粒径部をカットしたタイプ、大粒径部をカットしたタイプ、脱臭処理したタイプ、カラミ防止処理したタイプでもよい。アニオン交換樹脂の対イオンは、水酸化物イオン、塩化物イオン、亜硫酸水素イオン等が挙げられるが、特に限定されない。
【0037】
また、アニオン交換樹脂の総交換容量は特に限定されないが、低分子不純物の除去効率の観点から、0.1~3.0meq/mLが好ましく、より好ましくは0.2~2.0meq/mL、更に好ましくは0.3~1.5meq/mL、特に好ましくは0.4~1.2meq/mLである。アニオン交換樹脂の使用量は、低分子不純物の除去効率の観点から、アラビアゴム1kgに対し1.0~20Lとなる量が好ましく、より好ましくは2.0~15L、更に好ましくは4.0~10Lとなる量である。
【0038】
(カチオン交換樹脂)
本発明においては、強酸性カチオン交換樹脂処理により、アルデヒド化合物含有量を減少することができる。強酸性カチオン交換樹脂の樹脂母体としては、例えば、スチレン-ジビニルベンゼン等のスチレン系、及び(メタ)アクリル系、及びハイドロゲル系等が挙げられるが、アルデヒド化合物除去効率の観点からスチレン系が好ましい。また、母体構造としては、例えば、ゲル型、ポーラス型が挙げられるが、特に限定されない。強酸性カチオン交換樹脂の形態としては、例えば、粉状、球状、繊維状、膜状等が挙げられる。なお、カチオン交換樹脂には、弱酸性のものが存在するが、アルデヒド化合物除去効率の観点から、強酸性のものを使用する。
【0039】
本発明で使用する強酸性カチオン交換樹脂は、公知の方法により製造したものでも、市販品でもよい。市販のゲル型強酸性カチオン交換樹脂として、例えば、DIAION SK104、SK1B、SK1BH、SK110、SK112、UBK08、UBK510、ポーラス型強酸性カチオン交換樹脂として、PK208、PK212、PK216、PK220、PK228、RCP160M、HPK25(以上、三菱ケミカル製)、アンバーライトIR120B、IR124、200CT、252(以上、オルガノ製)が挙げられる。カチオン交換樹脂は、小粒径部をカットしたタイプ、大粒径部をカットしたタイプでもよい。カチオン交換樹脂の対イオンは、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン等が挙げられるが、特に限定されない。
【0040】
また、強酸性カチオン交換樹脂の総交換容量は特に限定されないが、アルデヒド化合物除去効率の観点から、0.5~5.0meq/mLが好ましく、より好ましくは1.0~4.0meq/mL、更に好ましくは1.5~3.0meq/mL、特に好ましくは1.8~2.5meq/mLである。強酸性カチオン交換樹脂の使用量は、アルデヒド化合物除去効率の観点から、アラビアゴム1kgに対し0.05~0.50Lとなる量が好ましく、より好ましくは0.1~0.40L、更に好ましくは0.15~0.30Lとなる量である。
【0041】
不純物が吸着して能力が低下したイオン交換樹脂(ポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂および強酸性カチオン交換樹脂)は、公知の方法、即ち通常の酸・アルカリ洗浄、酵素洗剤、アルコール洗浄、界面活性剤洗浄、キレート洗浄、次亜塩素酸洗浄、過酸化水素洗浄等の化学的洗浄、ブラッシングや逆洗等の物理的洗浄等で吸着能力を回復できる。
【0042】
バッチ方式を採用する場合、接触方法としては、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の混合物と接触させても、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を任意の順序で接触させてもよい。一方、カラム方式を採用する場合、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の混合物をカラムに充填して接触させても、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を別個独立のカラムに充填し、これらを任意の順序で接触させてもよい。また、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を充填した各カラムを直列に接続して接触させることもできる。
【0043】
イオン交換樹脂処理に供するアラビゴム水溶液の温度は好ましくは60℃以下、より好ましくは2~60℃、より好ましくは2~50℃であり、アラビアゴム水溶液の濃度は好ましくは40%(w/w)以下、より好ましくは0.5~40%(w/w)、特に好ましくは1.0~20%(w/w)である。アラビゴム水溶液の温度が60℃を超えると、処理中にアラビアゴムが変性して凝集体が生じる場合や、イオン交換樹脂の耐熱温度を超える。また、アラビアゴム水溶液の濃度が40%(w/w)を超えると、溶液粘度が高くなり処理が困難になる。また、アラビゴム水溶液のpHが10以上であるとアラビアゴムの分解が起こるため、アラビゴム水溶液のpHは10未満とすることが好ましい。
【0044】
ポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂および強酸性カチオン交換樹脂を用いた精製処理後に、植物性プロテオグリカンを含有する水溶液を得ることができる。この植物性プロテオグリカンを含有する水溶液を任意の有機溶媒や有機溶媒を含有する溶媒により精製処理をしてもよい。また、さらにイオン交換樹脂処理、担体処理、脱臭処理、脱塩処理、膜分離処理、pH調整処理等を行って精製してもよい。植物性プロテオグリカンを含有する水溶液を得た場合は、さらに脱塩、滅菌等を目的として膜処理等を実施してもよい。水溶液を凍結乾燥処理、蒸発乾固処理することで、植物性プロテオグリカンを含有する固形分を得ることもできる。
【0045】
本発明の植物性プロテオグリカンは、その形状を特に制限するものではなく、水溶液、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、及び粉末状のいずれの形状をも有することができる。
【0046】
上記のようにして得られた本発明の植物性プロテオグリカンは、高い生理活性、特に高い細胞増殖活性作用を有する。しかも、天然の植物由来であって非常に安全性が高い。従って、本発明の植物性プロテオグリカンは細胞増殖促進剤として使用することができる。
【0047】
かかる本発明の細胞増殖促進剤は、医薬部外品、化粧品、食品等に配合される成分、特に化粧品用の成分(化粧料)として好適に利用することができる。
【0048】
本発明の細胞増殖促進剤は、そのまま、または必要に応じて一般的な添加剤を加えて、医薬部外品、化粧品、食品等とすることができる。添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、基剤、溶剤、溶解補助剤、可溶化剤、懸濁化剤、分散剤、乳化剤、安定化剤、抗酸化剤、粘稠化剤、保存剤、pH調整剤、矯味剤、香料、着色剤等が挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【実施例
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
〔実施例1〕ポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂及び強酸性カチオン交換樹脂処理
50gのアラビアゴム(商品名 アラビックコールSS、Acacia Senegal種、三栄薬品貿易製)をイオン交換水に溶解し、4.0%(w/w)アラビアゴム水溶液1,250gを調製した。アラビアゴム水溶液と170g(251ml)のポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂DIAION PA308(三菱ケミカル製、総交換容量:1.1meq/mL)及び10g(12ml)の強酸性カチオン交換樹脂DIAION SK1BH(三菱ケミカル製、ゲル型、総交換容量:1.9meq/mL)をタンクに入れ、攪拌機により3時間攪拌させた(液温40±2℃)。ろ過によりイオン交換樹脂を分離し、ろ過液を回収した。ろ過液へ1M NaOHを添加しpH 4.0に調整した。凍結乾燥処理し、アラビノガラクタン蛋白質を含む固形分31.7gを回収した。この固形分をSEC測定し、得られたクロマトグラムにおいて、重量平均分子量を求めた。またアルデヒド定量キットにより、総アルデヒド含有量を求めた。図1はこのクロマトグラムを示す。
【0051】
〔実施例2〕ハイポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂及び強酸性カチオン交換樹脂処理
3.6kgのアラビアゴム(商品名 アラビックコールSS、Acacia Senegal種、三栄薬品貿易製)をイオン交換水に溶解し、4.0%(w/w)アラビアゴム水溶液90kgを調製した。アラビアゴム水溶液と17.24kg(25L)のハイポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂DIAION HPA25L(三菱ケミカル製、総交換容量:0.7meq/mL)及び0.7kg(0.8L)の強酸性カチオン交換樹脂DIAION SK1BH(三菱ケミカル製、ゲル型、総交換容量:1.9meq/mL)をタンクに入れ、攪拌機により3時間攪拌させた(液温20±2℃)。ろ過によりイオン交換樹脂を分離し、ろ過液を回収した。ろ過液へ1M NaOHを添加しpH 4.0に調整した。ろ過液を回収し凍結乾燥処理し、アラビノガラクタン蛋白質を含む固形分2.2kgを回収した。この固形分をSEC測定し、得られたクロマトグラムにおいて、重量平均分子量を求めた。またアルデヒド定量キットにより、総アルデヒドを求めた。図2はこのクロマトグラムを示す。
【0052】
〔実施例3〕ハイポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂及び強酸性カチオン交換樹脂処理
50gのアラビアゴム(商品名 アラビックコールSS、Acacia Senegal種、三栄薬品貿易製)をイオン交換水に溶解し、4.0%(w/w)アラビアゴム水溶液1,250gを調製した。アラビアゴム水溶液と102g(150ml)のハイポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂DIAION HPA25L(三菱ケミカル製、総交換容量:0.7meq/mL)及び5.0g(6.0ml)の強酸性カチオン交換樹脂DIAION SK1BH(三菱ケミカル製、ゲル型、総交換容量:1.9meq/mL)をタンクに入れ、攪拌機により3時間攪拌させた(液温40±2℃)。ろ過によりイオン交換樹脂を分離し、ろ過液を回収した。ろ過液へ1M NaOHを添加しpH 4.0に調整した。ろ過液を回収し凍結乾燥処理し、アラビノガラクタン蛋白質を含む固形分37.9gを回収した。この固形分をSEC測定し、得られたクロマトグラムにおいて、重量平均分子量を求めた。またアルデヒド定量キットにより、総アルデヒド含有量を求めた。図3はこのクロマトグラムを示す。
【0053】
〔比較例1〕アラビアゴム
アラビアゴム(商品名 アラビックコールSS、Acacia Senegal種、三栄薬品貿易製)をSEC測定し、得られたクロマトグラムにおいて、重量平均分子量を求めた。またアルデヒド定量キットにより、総アルデヒド含有量を求めた。図4はこのクロマトグラムを示す。
【0054】
〔比較例2〕脱塩アラビアゴム
脱塩アラビアゴム(商品名 サンアラビック、Acacia Senegal種、三栄薬品貿易製)をSEC測定し、得られたクロマトグラムにおいて、重量平均分子量を求めた。またアルデヒド定量キットにより、総アルデヒド含有量を求めた。図5はこのクロマトグラムを示す。
【0055】
〔比較例3〕ポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂処理
50gのアラビアゴム(商品名 アラビックコールSS、Acacia Senegal種、三栄薬品貿易製)をイオン交換水に溶解し、4.0%(w/w)アラビアゴム水溶液1,250gを調製した。アラビアゴム水溶液と170g(251ml)のポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂DIAION PA308(三菱ケミカル製、総交換容量:1.1meq/mL)をタンクに入れ、攪拌機により3時間攪拌させた(液温40±2℃)。ろ過によりイオン交換樹脂を分離した。ろ過液を回収し凍結乾燥処理し、アラビノガラクタン蛋白質を含む固形分32.2gを回収した。この固形分をSEC測定し、得られたクロマトグラムにおいて、重量平均分子量を求めた。またアルデヒド定量キットにより、総アルデヒド含有量を求めた。図6はこのクロマトグラムを示す。
【0056】
〔比較例4〕ゲル型強酸性カチオン交換樹脂処理
50gのアラビアゴム(商品名 アラビックコールSS(三栄薬品貿易製)、Acacia Senegal種)をイオン交換水に溶解し、4.0%(w/w)アラビアゴム水溶液1,250gを調製した。アラビアゴム水溶液と10g(12ml)の強酸性カチオン交換樹脂DIAION SK1BH(三菱ケミカル製、ゲル型、総交換容量:1.9meq/mL)をタンクに入れ、攪拌機により3時間攪拌させた(液温40±2℃)。ろ過によりイオン交換樹脂を分離し、ろ過液を回収した。ろ過液へ1M NaOHを添加しpH 4.0に調整した。ろ過液を回収し凍結乾燥処理し、アラビノガラクタン蛋白質を含む固形分49.7gを回収した。この固形分をSEC測定し、得られたクロマトグラムにおいて、重量平均分子量を求めた。またアルデヒド定量キットにより、総アルデヒド含有量を求めた。図7はこのクロマトグラムを示す。
【0057】
〔比較例5〕ゲル型I型強塩基性アニオン交換樹脂及び強酸性カチオン交換樹脂処理
50gのアラビアゴム(商品名 アラビックコールSS、Acacia Senegal種、三栄薬品貿易製)をイオン交換水に溶解し、4.0%(w/w)アラビアゴム水溶液1,250gを調製した。アラビアゴム水溶液と170g(251ml)のゲル型I型強塩基性アニオン交換樹脂DIAION SA10A(三菱ケミカル製、総交換容量:1.4meq/mL)及び10g(12ml)の強酸性カチオン交換樹脂DIAION SK1BH(三菱ケミカル製、ゲル型、総交換容量:1.9meq/mL)をタンクに入れ、攪拌機により3時間攪拌させた(液温40±2℃)。ろ過によりイオン交換樹脂を分離し、ろ過液を回収した。ろ過液へ1M NaOHを添加しpH 4.0に調整した。凍結乾燥処理し、アラビノガラクタン蛋白質を含む固形分49.5gを回収した。この固形分をSEC測定し、得られたクロマトグラムにおいて、重量平均分子量を求めた。またアルデヒド定量キットにより、総アルデヒド含有量を求めた。
【0058】
〔比較例6〕ポーラス型II型強塩基性アニオン交換樹脂及び強酸性カチオン交換樹脂処理
50gのアラビアゴム(商品名 アラビックコールSS、Acacia Senegal種、三栄薬品貿易製)をイオン交換水に溶解し、4.0%(w/w)アラビアゴム水溶液1,250gを調製した。アラビアゴム水溶液と170g(251ml)のポーラス型II型強塩基性アニオン交換樹脂DIAION 408(三菱ケミカル製、総交換容量:1.0meq/mL)及び10g(12ml)の強酸性カチオン交換樹脂DIAION SK1BH(三菱ケミカル製、ゲル型、総交換容量:1.9meq/mL)をタンクに入れ、攪拌機により3時間攪拌させた(液温40±2℃)。ろ過によりイオン交換樹脂を分離し、ろ過液を回収した。ろ過液へ1M NaOHを添加しpH 4.0に調整した。凍結乾燥処理し、アラビノガラクタン蛋白質を含む固形分49.2gを回収した。この固形分をSEC測定し、得られたクロマトグラムにおいて、重量平均分子量を求めた。またアルデヒド定量キットにより、総アルデヒド含有量を求めた。
【0059】
〔比較例7〕ポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂及び弱酸性カチオン交換樹脂処理
50gのアラビアゴム(商品名 アラビックコールSS、Acacia Senegal種、三栄薬品貿易製)をイオン交換水に溶解し、4.0%(w/w)アラビアゴム水溶液1,250gを調製した。アラビアゴム水溶液と170g(251ml)のポーラス型I型強塩基性アニオン交換樹脂DIAION 308(三菱ケミカル製、総交換容量:1.1meq/mL)及び10g(12ml)の弱酸性カチオン交換樹脂DIAION WK10(三菱ケミカル製、メタクリル系、総交換容量:2.6meq/mL)をタンクに入れ、攪拌機により3時間攪拌させた(液温40±2℃)。ろ過によりイオン交換樹脂を分離し、ろ過液を回収した。ろ過液へ1M NaOHを添加しpH 4.0に調整した。凍結乾燥処理し、アラビノガラクタン蛋白質を含む固形分32.5gを回収した。この固形分をSEC測定し、得られたクロマトグラムにおいて、重量平均分子量を求めた。またアルデヒド定量キットにより、総アルデヒド含有量を求めた。
【0060】
〔比較例8〕変性アラビアゴム
2.0gのアラビアゴム(商品名 アラビックコールSS、Acacia Senegal種、三栄薬品貿易製)を110℃に設定したオーブンに入れ、24時間加熱した。固形分1.9gを回収し、この固形分をSEC測定し、得られたクロマトグラムにおいて、重量平均分子量を求めた。またアルデヒド定量キットにより、総アルデヒド含有量を求めた。図8はこのクロマトグラムを示す。
【0061】
〔比較例9〕動物性プロテオグリカン
動物性プロテオグリカン(和光純薬工業製)をSEC測定し、得られたクロマトグラムにおいて、重量平均分子量を求めた。またアルデヒド定量キットにより、総アルデヒド含有量を求めた。
【0062】
〔評価試験〕
<細胞増殖活性試験>
ヒト正常表皮角化細胞(クラボウ製)を、10μg/mlインスリン、0.5μg/mlハイドロコーチゾン含有HuMedia-KG2培地(クラボウ製)を用いて2×10cells/ml濃度で96ウェル培養マイクロプレートに100μlずつ播種し、5%CO、37℃の条件にて24時間培養した。その後、実施例、比較例で得られた各試料(終濃度250μg/ml)を含む培地(0.20μmセルロースアセテートメンブランフィルターにて不溶物を除去済み)を100μl添加し96時間培養した。細胞数をBrdU化学発光キット(アブカム製)により測定し、未添加時の細胞数を100としたときの、表皮細胞増殖促進作用を解析した。
【0063】
<保湿性試験>
実施例、比較例で得られた各試料を2.0%(w/w)含む水溶液を用意し、各水溶液を100μlずつシャーレに滴下した。このシャーレを室温25±1℃湿度20±1%RH環境で60分間放置し、放置後の重量(試料水溶液)を初期の重量(試料水溶液)で割った割合(%)を求めた。
【0064】
<官能試験>
実施例、比較例で得られた各試料を1.0%(w/w)含む水溶液について、専門パネラー20名の前腕内側部に塗布したときの使用感を以下の判断基準で官能評価した。評価結果の平均値を、小数点以下四捨五入をして求めた。
(1)べたつき感
3:べたつかない、2:ややべたつかない、1:べたつく、0:つよくべたつく
(2)臭い
3:無臭である、2:やや臭いがある、1:臭いがある、0:つよい臭いがある
【0065】
下記表1に、全実施例及び全比較例のパラメーター(重量平均分子量、総アルデヒド含有量)及び試験結果を示す。
【0066】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8