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特許7067197スラリーの搬送装置、スラリーの搬送方法、及び石炭灰処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】スラリーの搬送装置、スラリーの搬送方法、及び石炭灰処理装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 17/18 20060101AFI20220509BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20220509BHJP
   B03D 1/006 20060101ALI20220509BHJP
   B03D 1/10 20060101ALI20220509BHJP
   B03D 1/14 20060101ALI20220509BHJP
   C02F 11/121 20190101ALI20220509BHJP
【FI】
B65G17/18 A
B09B5/00 N ZAB
B03D1/006
B03D1/10
B03D1/14 104
C02F11/121
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018066584
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019177957
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】神谷 清志
(72)【発明者】
【氏名】山下 牧生
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 篤
(72)【発明者】
【氏名】水間 誠一
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-120590(JP,A)
【文献】特開平08-026460(JP,A)
【文献】特開2007-238395(JP,A)
【文献】特開平02-222799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 17/00 - 17/48
B65G 19/00 - 19/30
B09B 5/00
B03D 1/006
B03D 1/10
B03D 1/14
C02F 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体又は粒体からなる固体と液体とが混合したスラリーが貯留される複数の貯留部を搬送する搬送手段を備え、
前記複数の貯留部は、上部が開放された複数のバケットにより構成され、
前記搬送手段は、前記複数のバケットが間隔を開けた状態で支持されるコンベアと、前記複数のバケットを搬送方向下流に向かうに従って徐々に傾斜させる傾斜手段と、を有し、
前記バケットに貯留された前記スラリーを沈降分離させることにより上澄み液を生成しつつ前記傾斜手段で前記バケットを傾斜させることにより前記上澄み液をオーバーフローさせながら搬送することを特徴とするスラリーの搬送装置。
【請求項2】
前記バケットは、支軸により前記コンベアに垂直回動可能に吊り下げ支持され、
前記傾斜手段は、前記コンベアの搬送方向に沿って配置されるレールガイドと、前記バケットの前記支軸から離間した位置に設けられ、前記レールガイドに当接しながら移動する回動補助部と、を備え、
前記レールガイドは、前記搬送方向下流に向かうに従って、前記搬送方向と交差する方向に延出しており、前記回動補助部が前記レールガイドに沿って前記搬送方向と交差する方向に移動するに従って、前記バケットは、前記支軸を中心に回動することを特徴とする請求項に記載のスラリーの搬送装置。
【請求項3】
前記バケットは、該バケットを垂直回動可能に吊り下げ支持する支軸により前記コンベアに支持され、
前記傾斜手段は、前記支軸に固定される歯車と、前記コンベアの搬送方向に沿って延び、前記歯車に係合する線状に延びるギヤを有する被係合部と、により構成されていることを特徴とする請求項に記載のスラリーの搬送装置。
【請求項4】
前記複数のバケットの底部は、前記粉体及び前記粒体の粒径よりも小さい孔部が複数形成されたメッシュ状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスラリーの搬送装置。
【請求項5】
前記搬送手段は、底板及び該底板の両側部に立設する一対の側板を有するトラフ型ケーシングと、該トラフ型ケーシング内を移動する複数のスクレーパとからなるスクレーパコンベアにより構成され、
前記複数の貯留部は、前記トラフ型ケーシング内の各スクレーパによって区画された領域により構成され、
前記トラフ型ケーシングの前記底板は、搬送方向下流に向かうに従って前記スクレーパの水平に対する傾斜角度が小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスラリーの搬送装置。
【請求項6】
石炭灰から未燃カーボンを浮遊選別する浮遊選別器と、
前記浮遊選別器により前記未燃カーボンを取り除いた残りの石炭灰と水とからなる石炭灰含有スラリーを搬送する請求項1からのいずれか一項に記載のスラリーの搬送装置と、
前記スラリーの搬送装置により搬送されて濃縮された濃縮石炭灰含有スラリーを脱水して石炭灰ケーキを生成する脱水装置と、
前記石炭灰ケーキを乾燥させて解砕する乾燥装置と、
前記乾燥装置により乾燥及び解砕された乾燥石炭灰を粒子の大きさの相違によって分ける分級器と、を備えることを特徴とする石炭灰処理装置。
【請求項7】
粉体又は粒体からなる固体と液体とが混合したスラリーが貯留される複数の貯留部が、上部が開放された複数のバケットにより構成されており、前記貯留部を搬送する際に、前記貯留部に貯留された前記スラリーを沈降分離させることにより上澄み液を生成しつつ前記バケットを傾斜させることにより前記上澄み液をオーバーフローさせながら搬送することを特徴とするスラリーの搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭灰含有スラリー等のスラリーを搬送する搬送装置、スラリーの搬送方法及び石炭灰処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微粉炭焚きボイラー等から発生する石炭灰(フライアッシュともいう)は、コンクリートの耐久性を向上させる効果があることが知られている。このため、石炭灰を、コンクリート用の混和材として利用することが検討されている。しかしながら、石炭灰の中には未燃カーボンが含まれており、この未燃カーボンが、コンクリート用の混和材の一つである空気連行剤(AE剤)を吸収することがある。このため、未燃カーボンを多く含有する石炭灰を使用する際には、空気連行剤を多量に添加することが必要となる。
このような理由から、未燃カーボン含有量が少ない石炭灰はコンクリート用の混和材として利用されているが、未燃カーボン含有量が多い石炭灰は、一部はセメント原料として利用されているものの、産業廃棄物として埋め立て処分される場合が多い。そこで、未燃カーボン含有量の多い石炭灰から未燃カーボン分を除去して、コンクリート用として有用なフライアッシュを製造する方法が検討されている。
【0003】
例えば、石炭灰中の未燃カーボンを除去する方法として、浮遊選別が知られている。この浮遊選別により未燃カーボンが除去された石炭灰含有スラリーは、脱水及び乾燥されることにより、改質されたコンクリート用フライアッシュとなる。この浮遊選別は、浮遊選別器の槽内に石炭灰、水及び浮遊選別剤が投入され、撹拌されることにより未燃カーボンを槽の上部に浮遊させ、これを取り除くことにより行われる。そして、浮遊選別器の槽の底部から抜き出したスラリーを脱水装置により脱水してケーキ状に形成した後、乾燥器により乾燥させることにより改質されたコンクリート用フライアッシュを得ることができる。
【0004】
ところで、浮遊選別器の槽の底部から抜き出した石炭灰含有スラリーは水分率が質量%で400%~500%と高く、かつ、粘度が高いため、通常の液体を圧送する回転式ポンプ等では搬送できない。このような石炭灰含有スラリーを搬送する装置として、特許文献1及び2に記載のスクレーパ式チェーンコンベアや特許文献3に記載のバケットコンベアにより搬送する方法が知られている。
例えば、特許文献1に開示されている水封式炉底灰コンベア装置では、石炭焚きボイラーから抜き出された炉底灰(ボトムアッシュ)を冷却及び回収するため、水槽に石炭灰を落下させた後、水封式炉底灰コンベア(スクレーパ式チェーンコンベア)で石炭灰含有スラリーを搬送している。この装置では、スクレーパ式チェーンコンベアにより炉底灰を搬送する際、水槽外から水を供給することにより、処理水の循環を不要としている。
また、特許文献2に開示されている石炭焚ボイラーの灰処理装置では、上記特許文献1と同様に石炭灰を冷却水槽に投入後、スクレーパ式チェーンコンベアにより石炭灰含有スラリーを回収している。この際、冷却水槽からあふれた石炭灰含有スラリーを沈殿槽に流通させ、沈殿槽底部の沈殿物を冷却水槽に供給することにより、沈殿槽の洗浄を不要としている。
【0005】
一方、特許文献3に開示されているバケットコンベアは、チェーンに固定された複数のバケット内に粉状物などの搬送物が投入され、これら搬送物を連続的に搬送する際に用いられている。このバケットコンベアでは、バケットへの搬送物の投入時に、隣り合うバケットの開口端縁同士が互いに重なった状態とすることで、隣り合うバケット同士の隙間から搬送物が下方にこぼれ落ちるのを防止している。
なお、上記各コンベアによる方法の他、スネーク式若しくはプランジャーピストン方式の圧送ポンプにより搬送する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-12325号公報
【文献】特開平10-332129号公報
【文献】特開2006-111394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スクレーパ式チェーンコンベアやバケットコンベア、スネーク式若しくはプランジャーピストン方式の圧送ポンプを用いて搬送する石炭灰含有スラリーの水分率は、前述したように質量%で400%~500%と高いため、分級後の改質されたフライアッシュの水分率を所望の値(例えば、0.1%)まで下げるためには、脱水装置や乾燥装置が大規模になる他、乾燥に多くの熱エネルギーを要することになる。このため、石炭灰含有スラリーの水分率を脱水装置や乾燥装置に送り込む前にできるだけ少なくすることが望まれている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、スラリーの水分率を搬送時に簡便かつ確実に低減できるスラリーの搬送装置、スラリーの搬送方法及び石炭灰処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスラリーの搬送装置は、粉体又は粒体からなる固体と液体とが混合したスラリーが貯留される複数の貯留部を搬送する搬送手段を備え、前記複数の貯留部は、上部が開放された複数のバケットにより構成され、前記搬送手段は、前記複数のバケットが間隔を開けた状態で支持されるコンベアと、前記複数のバケットを搬送方向下流に向かうに従って徐々に傾斜させる傾斜手段と、を有し、前記バケットに貯留された前記スラリーを沈降分離させることにより上澄み液を生成しつつ前記傾斜手段で前記バケットを傾斜させることにより前記上澄み液をオーバーフローさせながら搬送する。
【0010】
本発明では、搬送手段により複数の貯留部を搬送する際に上澄み液を生成しつつ、貯留部から上澄み液をオーバーフローさせながら搬送するので、搬送後のスラリーの水分率を減少させることができる。
なお、以下の説明において、水分率(%)とは、{(スラリーの質量-スラリー中の固体質量)/スラリー中の固体質量}×100により導き出された値(%)をいう。
【0011】
また、コンベアにより支持された複数のバケットを搬送する際に、これら複数のバケットを搬送方向下流に向かうに従って徐々に傾けるだけで、スラリーの上澄み液を少しずつバケット外に排出できる。この際、バケット内においては、少しずつ固体が沈降することにより、上澄み液が徐々に生成されているが、バケット外に上澄み液が一気に排出されることがないので、固体がバケット外に排出されることを抑制でき、搬送後のスラリーの水分率を確実に減少させることができる。
【0012】
本発明のスラリーの搬送装置の好ましい態様としては、前記バケットは、支軸により前記コンベアに垂直回動可能に吊り下げ支持され、前記傾斜手段は、前記コンベアの搬送方向に沿って配置されるレールガイドと、前記バケットの前記支軸から離間した位置に設けられ、前記レールガイドに当接しながら移動する回動補助部と、を備え、前記レールガイドは、前記搬送方向下流に向かうに従って、前記搬送方向と交差する方向に延出しており、前記回動補助部が前記レールガイドに沿って前記搬送方向と交差する方向に移動するに従って、前記バケットは、前記支軸を中心に回動する。
上記態様では、搬送方向下流に向かうに従って搬送方向と交差する方向に延出しているレールガイドに沿って回動補助部が移動するのに伴いバケットが支軸を中心に回動して、バケットから上澄み液を徐々に排出できる。
この場合、支軸により垂直姿勢で吊り下げ支持されているバケットの回動補助部がレールガイドに徐々に押されることにより回動する場合と、回動補助部を介してレールガイドにより支持されることで垂直姿勢に保持されているバケットが、レールガイドからの支持を徐々に失うことで回動する場合とがある。
【0013】
本発明のスラリーの搬送装置の好ましい態様としては、前記バケットは、該バケットを垂直回動可能に吊り下げ支持する支軸により前記コンベアに支持され、前記傾斜手段は、前記支軸に固定される歯車と、前記コンベアの搬送方向に沿って延び、前記歯車に係合する線状に延びるギヤを有する被係合部と、により構成されている。
なお、歯車と被係合部とにより構成される機構としては、チェーンスプロケット又はラックピニオン等を例示できる。また、被係合部は、コンベアの搬送速度と異なる速度でコンベアの搬送方向に沿って移動してもよい。
上記態様では、支軸に固定された歯車が時計回り又は反時計回りに徐々に回転する。このため、この歯車の回転に伴ってバケットが徐々に傾くので、バケットから上澄み液を徐々に排出できる。
【0014】
本発明のスラリーの搬送装置の好ましい態様としては、前記複数のバケットの底部は、前記粉体及び前記粒体の粒径よりも小さい孔部が複数形成されたメッシュ状である。
上記態様では、複数のバケットの上部から上澄み液を排出するとともに、メッシュ状の底部からも液体を排出できるので、搬送後のスラリーの水分率をより確実に低減できる。
【0015】
本発明のスラリーの搬送装置の好ましい態様としては、前記搬送手段は、底板及び該底板の両側部に立設する一対の側板を有するトラフ型ケーシングと、該トラフ型ケーシング内を移動する複数のスクレーパとからなるスクレーパコンベアにより構成され、前記複数の貯留部は、前記トラフ型ケーシング内の各スクレーパによって区画された領域により構成され、前記トラフ型ケーシングの前記底板は、搬送方向下流に向かうに従って前記スクレーパの水平に対する傾斜角度が小さくなるように形成されている。
上記態様では、搬送方向下流に向かうに従ってスクレーパの水平に対する傾斜角度が小さくなっており、トラフ型ケーシング内の各スクレーパによって区画された領域に貯留されるスラリーの上澄み液がトラフ型ケーシング外に徐々に排出されることとなるので、搬送後のスラリーの水分率を低減することができる。
【0016】
本発明の石炭灰処理装置は、石炭灰から未燃カーボンを浮遊選別する浮遊選別器と、前記浮遊選別器により前記未燃カーボンを取り除いた残りの石炭灰と水とからなる石炭灰含有スラリーを搬送する上記スラリーの搬送装置と、前記スラリーの搬送装置により搬送されて濃縮された濃縮石炭灰含有スラリーを脱水して石炭灰ケーキを生成する脱水装置と、前記石炭灰ケーキを乾燥させて解砕する乾燥装置と、前記乾燥装置により乾燥及び解砕された乾燥石炭灰を粒子の大きさの相違によって分ける分級器と、を備える。
本発明では、石炭灰から未燃カーボン、粒子が比較的大きい乾燥石炭灰及び粒子が比較的小さい乾燥石炭灰(コンクリート用フライアッシュ)のそれぞれを取り出すことができる。また、上記搬送装置を備えているので、石炭灰含有スラリーの水分率を確実に低減させた状態で、脱水及び乾燥させることができ、脱水及び乾燥を効率よく実行できる。さらに、上記水分率が低いため、分級後の改質されたフライアッシュの水分率を所望の値まで下げようとするときに、脱水装置及び乾燥装置が大型化することを抑制でき、特に乾燥に用いる熱エネルギーを減少させることができる。
【0017】
本発明のスラリーの搬送方法は、粉体又は粒体からなる固体と液体とが混合したスラリーが貯留される複数の貯留部が、上部が開放された複数のバケットにより構成されており、前記貯留部を搬送する際に、前記貯留部に貯留された前記スラリーを沈降分離させることにより上澄み液を生成しつつ前記バケットを傾斜させることにより前記上澄み液をオーバーフローさせながら搬送する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スラリーの水分率を、搬送時に簡便かつ確実に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係るスラリーの搬送装置を用いた石炭灰処理装置の全体図である。
図2図1に示す石炭灰処理装置を構成する搬送装置及び脱水装置を示す図である。
図3】上記実施形態における搬送装置のバケットの傾きを示す図である。
図4】上記実施形態におけるバケットの平面図である。
図5】上記実施形態におけるレールガイドと回転子(回動補助部)とを示す図である。
図6】上記実施形態におけるバケットが徐々に傾く様子を示す図である。
図7】上記実施形態の変形例におけるレールガイドと回動補助部とを示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る石炭灰処理装置の搬送装置の一部を示す図である。
図9】上記実施形態のバケットの平面図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る石炭灰処理装置の搬送装置を示す図である。
図11】上記実施形態の搬送装置の断面を示す図である。
図12】上記実施形態の搬送装置の一部を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[石炭灰処理装置の概略構成]
本発明に係る石炭灰処理装置1は、図1に示すように、石炭灰から未燃カーボンを浮遊選別する浮遊選別器2と、浮遊選別器2により未燃カーボンを取り除いた残りの石炭灰と水とからなる石炭灰含有スラリーを搬送するスラリーの搬送装置3(以下、単に搬送装置3という)と、搬送装置3により搬送されて濃縮された濃縮石炭灰含有スラリーを脱水して石炭灰ケーキを生成する脱水装置4と、石炭灰ケーキを乾燥させて解砕する乾燥装置5と、乾燥装置5により乾燥及び解砕された乾燥石炭灰を粒子の大きさの相違によって分ける分級器6と、搬送装置3及び脱水装置4からの上澄み液等の水分を回収する回収槽7と、を備えている。
この石炭灰処理装置1は、本発明の搬送手段に相当する搬送装置3により石炭灰含有スラリーを搬送することにより該石炭灰含有スラリーの水分率を低減させることができる点に特徴を有している。
【0021】
[浮遊選別器の構成]
浮遊選別器2は、石炭灰及び水等の液体が投入され貯留される貯留槽21と、貯留槽21内に配置され、内部で石炭灰、水および浮遊選別剤を撹拌するフィン22とを備えている。この貯留槽21内に石炭灰、水及び浮遊選別剤が貯留された状態で、フィン22が回転すると、石炭灰のうち、未燃カーボンの比重が水の比重よりも小さいため、該未燃カーボンは、貯留槽21の上側に浮遊する。一方、未燃カーボンを除く石炭灰の比重は、水の比重よりも大きいため、貯留槽21内で沈降する。このように浮遊選別器2は、未燃カーボンを貯留槽21内で浮遊させることにより選別する。
上記、浮遊選別剤は、比重が水よりも軽く、疎水性で、かつ未燃炭分に対して親和性を有するものであることが好ましい。例えば、浮遊選別剤としては、液体炭化水素を用いることができる。液体炭化水素の例としては、灯油、ガソリン、軽油、重油などの石油類を挙げることができる。
そして、未燃カーボンが取り除かれた残りの石炭灰と水とが混合した石炭灰含有スラリーは、貯留槽21の底部に形成された開口部23から水封式チェーンコンベア24により搬送装置3へと搬送される。
なお、本実施形態では、石炭灰含有スラリーを開口部23から水封式チェーンコンベア24により搬送装置3へ搬送することとしたが、これに限らず、例えば、貯留槽21の開口部23から直接搬送装置3に供給してもよい。すなわち、水封式チェーンコンベア24を備えなくてもよい。
【0022】
[搬送装置の構成]
搬送装置3は、図2に示すように、複数のバケットによりスラリーを搬送するバケットコンベアである。この搬送装置3は、固体(石炭灰)と液体(水)とが混合した石炭灰含有スラリーが貯留される複数のバケット33と、複数のバケット33が間隔を開けた状態で支持される無端状のコンベア31と、コンベア31を移動させるモータなどを有する駆動手段32と、複数のバケット33を搬送方向下流に向かうに従って徐々に傾斜させる傾斜手段30と、を備えている。
【0023】
複数のバケット33のそれぞれは、例えば図4に示すように、矩形状の底面部331と、底面部331の各辺から立設する4つの側面部332,333とからなり、上部が開放された形状である。また、4つの側面部332,333のうち、対向する2つの側面部333のそれぞれには、支軸34及び回動補助部35が固定されている。一方、支軸34及び回動補助部35が形成されていない2つの側面部332のそれぞれは、底面部331の両端から上側に向かうに従って外側に広がる傾斜面により構成されている。このため、バケット33の開口部の面積は、底面部331の面積よりも大きくなる。
【0024】
コンベア31は、図2に示すように、石炭灰含有スラリーが投入された複数のバケット33の開口部を真上に向けた状態で水平に搬送する第1水平搬送部(受け入れ部)31Aと、複数のバケット33を搬送方向下流側に向かうに従って徐々に傾斜させながら搬送する傾斜搬送部31Bと、傾斜搬送部31Bにより傾斜させられた複数のバケット33を更に傾斜させながら水平方向に搬送して、後段で石炭灰含有スラリーを排出する第2水平搬送部(排出部)31Cと、石炭灰含有スラリーが排出された複数のバケット33を第1水平搬送部31Aに戻す戻り搬送部31Dと、を備えている。また、コンベア31に沿ってレールガイド36が設けられている。
【0025】
複数のバケット33のそれぞれには、図4に示すように、2つの側面部333のそれぞれに、該バケット33をコンベア31に垂直回動可能に吊り下げ支持するための支軸34が設けられ、該支軸34を介してコンベア31に所定間隔を開けた状態で支持されている。また、2つの側面部333のそれぞれには、支軸34から離間した位置に設けられ、レールガイド36に当接しながら移動する回動補助部35が設けられている。この支軸34は、バケット33を垂直に配置したときの重心軸(図3に示した例の場合、バケット33の開口部を真上に向けた状態で該バケット33の重心を通る垂直軸である重心軸C)より離間させた位置(図3における左側)に配置され、支軸34でのみバケット33が支持されている状態では、バケット33は軸方向に傾斜した姿勢で支持される。一方、回転補助部35も上記重心軸Cより離間させた位置(図3における右側)に配置されている。
回動補助部35は、例えば、ころ等の回転子により構成され、支軸34とともにバケット33を支持する。この回動補助部35は、コンベア31に配置されるレールガイド36とともに、上記傾斜手段30を構成する。
【0026】
レールガイド36は、図2に示すように、コンベア31の第1水平搬送部31A、傾斜搬送部31B及び第2水平搬送部31Cの一部の領域に沿って配置されている。このレールガイド36は、回動補助部35が当接しながら移動する部位であり、搬送方向下流に向かうにしたがって、搬送方向と交差する方向に延出している。具体的には、レールガイド36の図2における傾斜搬送部31Bは、コンベア31から漸次離れる方向に延出している。本実施形態では、回動補助部35がレールガイド36に当接していない状態、言い換えると、支軸34のみでバケット33が支持されている状態では、前述したようにバケット33は、軸方向に傾斜した姿勢で支持される。したがって、レールガイド36は、第1水平搬送部31Aでは、バケット33の回動補助部35を当接することにより、バケット33の自重による回動(図2等に示す例では、右回りの回動)を拘束し、バケット33を、開口部を真上に向けた状態(垂直姿勢)に支持している。
【0027】
また、搬送装置3は、上記レールガイド36の他、レールガイド36Aを有している。このレールガイド36Aは、バケット33の開口部を真上に向けた状態で維持するために設けられており、図2に示すように、バケット33に石炭灰含有スラリーが投入される直前から、レールガイド36の始端位置までの間に配置されている。このレールガイド36Aに回動補助部35が当接している際には、バケット33は、開口部を真上に開けた状態(垂直姿勢)で支持される。また、第1水平搬送部31Aにおいては、レールガイド36に回動補助部35が当接して、バケット33は、開口部を真上に開けた状態で支持され、傾斜搬送部31Bにおいて徐々に傾斜させられる。
【0028】
ここで、傾斜搬送部31Bにおけるレールガイド36の具体的な形状について詳しく説明する。
傾斜搬送部31Bにおいてバケット33の支軸34が図3に示すように、初期座標(0,0)から角度αで座標(x1,y1)に移動するものとする。支軸34の移動距離をa、座標(x1,y1)まで移動したとき、バケット33の傾斜角がθとなるときの回動補助部の座標(x,y)を求める。なお、支軸34から回動補助部35までの距離はLとする。この場合、移動後の回動補助部35の座標は、x=acosα+Lcosθ,y=asinθ-Lsinθ(0°≦θ≦45°)…(式1)の値となる。すなわち、レールガイド36は、式(1)の軌跡(図3における線S1)となるように設計される。
【0029】
このようなレールガイド36の回動補助部35側の面には、溝360が形成され、該溝360の底面(当接面361)には、図5に示すように、回動補助部35を構成する回転子の外周面351が当接して転動する。すなわち、溝360は、上記回転子のレールガイド36からの脱輪を抑制している。
この傾斜搬送部31Bにおけるレールガイド36は、上述したように、コンベア31から漸次離れる方向に延出していることから、図6に示すように、バケット33は、上側に移動するのに従って、回動補助部35がレールガイド36に沿って下降し、傾斜角度が徐々に大きくなる。すなわち、バケット33は、傾斜搬送部31Bを上側(搬送方向下流側)に移動するのに従って、支軸34を中心に図2の右回りに傾けられていくこととなる。
なお、上述したように、レールガイド36の溝360により上記回転子の脱輪を抑制できるので、バケット33は、上記右回りに確実に傾けることが可能となっている。
【0030】
ここで、石炭灰含有スラリーの水分率は、質量%で400~500%と非常に高いことから、バケット33内においては、石炭灰含有スラリーが貯留された直後から未燃カーボンが取り除かれた石炭灰が沈降分離される。このため、バケット33の上部には、大半が液体成分により構成される上澄み液が徐々に生成されていく。この場合、バケット33が図6に示すように、徐々に傾斜していくと、バケット33の側面部333の傾斜面を伝って上澄み液がバケット33の上方から徐々に排出される(オーバーフローする)こととなる。なお、バケット33から排出された上澄み液は、回収用トラフ37を介して回収槽7に供給される。
【0031】
なお、コンベア31の移動速度は、石炭灰含有スラリー内における石炭灰の沈降速度に合わせて設定される。
具体的には、石炭灰含有スラリー内における上記石炭灰の沈降速度を以下の(式2)により求め、この沈降速度に合わせて、コンベア31の移動速度を設定する。
【0032】
【数1】
【0033】
ここで、Vt:沈降速度(m/s)、ρ:固体密度、ρ:液体密度、d:粒子径、g:重力加速度、μ:液体粘度であり、例えば石炭灰の固体密度ρが2400kg/m、水の液体密度ρが1000kg/m、石炭灰の平均粒子径dが24×10-6m、重力加速度gが9.8m/s、20℃の水の液体粘度μが1.0×10-3kg/m・sである場合、石炭灰含有スラリー内における上記石炭灰の沈降速度Vtは、
Vt=4.4×10-4m/s=0.44cm/s=2.64cm/分となる。
【0034】
ここで、バケット33の深さを25cmとした場合、開口端まで石炭灰含有スラリー(水分率500質量%)を投入した場合に、沈殿層厚さが底から10cmまで沈降すれば、石炭灰含有スラリーの水分率が略200質量%になると考えられる。上記の沈降速度より、沈殿層厚さが10cmになる(平均で15cm沈降する)のは石炭灰含有スラリー投入後、15/2.64=5.6分となる。よって、傾斜搬送部31Bを搬送されてから略6分後に傾斜搬送部31Bを搬送されるバケット33の傾き角度が45°なるようにバケット33の移動速度を調整すればよい。
なお、石炭灰含有スラリーに高分子系などの凝集剤を添加し凝集粒子を形成することで、沈降速度を高めてもよく、この場合、バケット33の移動速度を高めることができる。
この搬送装置3により石炭灰含有スラリーを搬送すると、石炭灰含有スラリーの水分率が質量%で400~500%から、質量%で100~200%に低減され、濃縮されて脱水装置4に供給される。
【0035】
[スラリーの搬送方法]
以上説明した搬送装置3では、以下のようにして、スラリーを搬送する。
貯留槽21の開口部23から抜き出された石炭灰は、水封式チェーンコンベア24により搬送されるか、若しくは開口部23から直接、バケット33に投入される。なお、図2に示すように、バケット33の回動補助部35がレールガイド36Aに当接しているため、バケット33は、開口部を真上に向けた状態で支持されている。このバケット33に石炭灰含有スラリーが投入された後、バケット33は、コンベア31の第1水平搬送部31Aを、上記垂直姿勢を保ったまま右方向に水平に移動される。
【0036】
そして、バケット33がコンベア31の傾斜搬送部31Bを移動される際には、回動補助部35を介してレールガイド36により支持されることで垂直姿勢に保持されているバケット33が、上側(搬送方向下流側)に移動するのに従って、レールガイド36からの支持の位置が徐々に変化することにより、支軸34を中心に傾けられ、バケット33内において石炭灰含有スラリーが沈降分離されることにより生成された上澄み液を徐々にオーバーフローさせながら搬送する。
そして、石炭灰含有スラリーの水分率が質量%で100~200%に低減した濃縮石炭灰含有スラリーは、再度水平方向に第2水平搬送部31Cを移動され、レールガイド36の端部に形成された突起362に回動補助部35が当接した際に、開口部が略真下を向く方向にバケット33が傾けられ、濃縮石炭灰含有スラリーが脱水装置4のコンベア41上に供給される。この濃縮石炭灰含有スラリーが脱水装置4に供給される部位を超えた領域には、レールガイド36が形成されていないので、バケット33は、支軸34でのみ支持されて傾いた状態(バケット33の開口部が真上を向いた状態でない状態)で戻り搬送部31Dを搬送される。そして、図2の左端部までバケット33が搬送されると、回動補助部35がレールガイド36Aに当接して、開口部を真上に向けた状態で支持され、石炭灰含有スラリーが投入されることとなる。
【0037】
[脱水装置の構成]
脱水装置4は、搬送装置3により搬送されて濃縮された濃縮石炭灰含有スラリーを脱水して石炭灰ケーキを生成する。この脱水装置4は、搬送装置3により搬送される濃縮石炭灰含有スラリーをコンベア41により移動させつつ、該コンベア41の下部に設けられた真空ポンプ42を備えた真空吸引装置43により濃縮石炭灰含有スラリーの水分を吸引して石炭灰ケーキを生成する。そして、脱水装置4により脱水された石炭灰ケーキは、乾燥装置5へと投入される。
なお、真空吸引装置43により吸引された水分は、上記搬送装置3により排出された上澄み液と同様に、回収槽7に供給される。この回収槽7には、ポンプ71が設けられており、該ポンプ71により回収槽7内に貯留された石炭灰含有スラリー及び水分が浮遊選別器2の貯留槽21へと供給される。
【0038】
[乾燥装置の構成]
乾燥装置5は、石炭灰ケーキを乾燥させて解砕する。この乾燥装置5は、例えば、内部に解砕器が設けられており、熱風により石炭灰ケーキを乾燥させつつ解砕する。これにより、乾燥及び解砕された乾燥石炭灰が生成される。そして、この乾燥石炭灰は、分級器6へと供給される。
[分級器の構成]
分級器6は、乾燥装置5により乾燥及び解砕された乾燥石炭灰を粒子の大きさの相違によって分級する装置である。具体的には、分級器6は乾燥石炭灰を、例えば、ブレーン比表面積が3500cm/g以上になるように分級する。なお、分級条件であるブレーン比表面積は、上記3500cm/gに限られるものではなく、適宜変更可能である。
これらのうち、ブレーン比表面積が3500cm/g以上となる分級細粉側の乾燥石炭灰は、コンクリート用のフライアッシュとして用いられ、分級粗粉側の乾燥石炭灰は、原料用の石炭灰として用いられる。
【0039】
上記実施形態では、搬送装置3により複数のバケット33を搬送する際に上澄み液を生成しつつ、複数のバケット33から上澄み液をオーバーフローさせながら搬送するので、搬送後の石炭灰含有スラリーの水分率を減少させることができる。
また、本実施形態では、コンベア31により支持された複数のバケット33を搬送する際に、これら複数のバケット33を搬送方向下流に向かうに従って徐々に傾けるだけで、石炭灰含有スラリーの上澄み液を少しずつバケット33外に排出でき、バケット33外に上澄み液が一気に排出されることがないので、石炭灰がバケット33外に排出されることを抑制でき、搬送後の石炭灰含有スラリーの水分率を確実に減少させることができる。
【0040】
本実施形態では、搬送方向下流に向かうに従って搬送方向と交差する方向に延出しているレールガイド36に沿って回動補助部35が移動するのに伴いバケット33が支軸34を中心に回動して、バケット33から上澄み液を徐々に排出できる。
【0041】
本実施形態の石炭灰処理装置1では、石炭灰から未燃カーボン、粒子が比較的大きい乾燥石炭灰及び粒子が比較的小さい乾燥石炭灰のそれぞれを取り出すことができる。また、搬送装置3を備えているので、石炭灰含有スラリーの水分率を確実に低減させた状態で、脱水及び乾燥させることができ、脱水及び乾燥を効率よく実行できる。さらに、上記水分率が低いため、分級後の改質されたフライアッシュの水分率を所望の値まで下げようとするときに、脱水装置4及び乾燥装置5が大型化することを抑制でき、特に乾燥に用いる熱エネルギーを減少させることができる。
【0042】
なお、上記第1実施形態の搬送装置3では、バケット33の上部(開口部)からのみ上澄み液を徐々に排出することとしたが、例えば、バケット33の底面部331に石炭灰(粉体及び粒体)の粒径よりも小さい孔部が複数形成されたメッシュ状に形成されていてもよい。この場合、石炭灰含有スラリーの上澄み液をバケット33の開口部から排出しつつ、底面部331からも水分を排出できるので、搬送後のスラリーの水分率をより確実に低減できる。
【0043】
また、上記第1実施形態の回動補助部35をころ状の回転子により構成することとしたが、これに限らない。例えば、図7に示すように、回動補助部35(回転子)は、歯車35Bにより構成され、レールガイド36の溝360内における歯車35Bが転動する面には、線状のギヤ361Bが形成されている。
この場合、歯車35Bの歯がレールガイド36の線状のギヤ361Bのそれぞれに噛み合った状態で移動することから、歯車35Bをレールガイド36に沿ってより確実に移動できる。
【0044】
なお、上記第1実施形態では、支軸34及び回動補助部35のそれぞれは、バケット33の重心軸(図3の重心軸C)より離間させた位置に配置され、支軸34でのみバケット33が支持されている状態では、傾斜するように支持されることとしたが、これに限らない。例えば、支軸34がバケット33の重心軸C上に位置し、該支軸34により垂直姿勢で吊り下げ支持されているバケット33の回動補助部35がレールガイド36に徐々に押されることにより回動するように構成してもよい。この場合、レールガイド36は、搬送方向下流に向かうに従ってコンベア31に漸次近づく方向に延出していればよい。すなわち、レールガイド36は、搬送方向下流に向かうに従って、搬送方向と交差する方向に延出している。
【0045】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図面を用いて説明する。
図8は、本実施形態に係る石炭灰処理装置の搬送装置3Cの一部を示す図である。
本実施形態に係る石炭灰処理装置の搬送装置3Cは、上記傾斜搬送部31Bにおいてバケット33を徐々に傾ける傾斜手段が支軸34Cに固定された歯車341及びコンベア31に沿って延び、歯車341に係合する線状に延びるギヤを有する被係合部38により構成されている点で、上記第1実施形態と異なる。
なお、以下では、第1実施形態の構成と同一又は略同一の構成については、同じ番号を付し、説明を省略又は簡略化して説明する。
【0046】
搬送装置3Cの支軸34Cの先端には、図8及び図9に示すように、歯車341が固定されている。また、支軸34Cは、本実施形態では、図8に示すように、バケット33の重心軸(重心軸C上)に固定されている。この支軸34Cの略中央には、支軸34Cを中心に回転自在にバケット33を支持する支持部材342が設けられており、該支持部材342がコンベア31に支持されることにより、バケット33が支軸34Cを中心に回転自在に支持されている。
【0047】
また、被係合部38は、コンベア31の搬送方向に沿って延び、かつコンベア31の上方に対向して配置され、該コンベア31に沿って延び、歯車341に係合する線状に延びるギヤを有している。被係合部38は、例えば、コンベア31の傾斜搬送部31Bに対向して設けられ、コンベア31と同方向に移動する構成である。この場合、被係合部38の移動速度V2は、コンベア31の移動速度V1よりも若干速く設定されている。このため、コンベア31の駆動によりバケット33が傾斜搬送部31Bを移動する際には、支軸34の歯車341が被係合部38の線状に延びるギヤに係合しながら、傾斜搬送部31Bを移動するが、被係合部の移動速度V2は、コンベア31の移動速度V1よりも若干速い(V2>V1)ため、歯車341は、徐々に図8の時計回りに回動し、該歯車341の回動に合わせてバケット33が図6に示したのと同様に傾いていく。
なお、コンベア31の移動速度V1及び被係合部38の移動速度V2は、上述したように、バケット33内に貯留された石炭灰含有スラリーの石炭灰の沈降速度に合わせて設定される。
【0048】
本実施形態では、支軸34Cに固定された歯車341が時計回りに徐々に回転することにより、この歯車341の回転に伴ってバケット33が徐々に傾くので、バケット33から上澄み液を徐々に排出できる。
また、被係合部38の移動速度V2がコンベア31の移動速度V1よりも若干大きいので、バケット33内において上澄み液が確実に生成された状態でバケット33が傾けられていくので、石炭灰含有スラリーの水分を確実にバケット33から排出できる他、石炭灰が排出されることを抑制できる。
【0049】
なお、上記実施形態では、被係合部38は、移動速度V2で移動し、その速度は、コンベア31の移動速度V1よりも速いこととしたが、これに限らない。例えば、被係合部38をコンベア31の下方に配置した上、移動速度V2を移動速度V1よりも遅くすれば、歯車341は、図8の時計回りに徐々に回転するので、上記上澄み液を確実にバケット33から排出できる。すなわち、移動速度V1と移動速度V2とが異なる速度であればよい。また、被係合部38は、移動速度V2で移動することとしたが、移動しなくてもよく、徐々にバケット33を傾かせることができればよい。
このような歯車341及び被係合部38により構成される機構は、いわゆるラックピニオンやチェーンスプロケットにより構成されている。
【0050】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図面を用いて説明する。
図10は、本実施形態の石炭灰処理装置の搬送装置3Dの断面図であり、図11は、搬送装置3Dの断面図であり、図12は、スクレーパにより区画された貯留領域を拡大して示す平面図である。
本実施形態の搬送装置3Dは、トラフ型ケーシング81と、該トラフ型ケーシング81内を移動する複数のスクレーパ82とからなるスクレーパコンベアにより構成されている点で、上記各実施形態と異なる。
具体的には、搬送装置3Dは、図10~12に示すように、トラフ型ケーシング81と、複数のスクレーパ82と、複数のスクレーパ82が所定間隔を開けた状態で支持され、該複数のスクレーパ82をトラフ型ケーシング81の延出方向に移動させるスクレーパ駆動チェーン83と、トラフ型ケーシング81の両側方に位置し、各スクレーパ82により区画された貯留領域(貯留部)から排出された上澄み液を回収する排水トラフ85と、を備えている。
【0051】
トラフ型ケーシング81は、図11に示すように、断面視略U字状に形成され、底板811及び該底板811の両側部に立設する一対の側板812を有し、上部が開放されたケーシングである。このトラフ型ケーシング81の上側には、スクレーパ駆動チェーン83が配置され、該スクレーパ駆動チェーン83により支持された複数のスクレーパ82がトラフ型ケーシング81内を移動する。なお、複数のスクレーパ82の移動速度は、上述したように、石炭灰含有スラリー内における石炭灰の沈降速度に応じて設定されている。
複数のスクレーパ82のそれぞれは、略矩形板状に形成され、トラフ型ケーシング81の底板811及び側板812に当接しながら該トラフ型ケーシング81内を移動する。各スクレーパ82により区画された貯留領域のそれぞれには、石炭灰含有スラリーが貯留され、該スクレーパ82の移動により、各貯留領域内に貯留された石炭灰含有スラリーが搬送方向下流に向けて搬送される。
【0052】
また、トラフ型ケーシング81の底板811は、搬送方向下流に向かうに従ってスクレーパ82の水平に対する傾斜角度が小さくなるように形成されている。具体的には、トラフ型ケーシング81の底板811は、図10に示すように略S字状に形成され、該S字状に形成された部位をスクレーパ82が通過する際に、各スクレーパ82の水平に対する傾斜角度が徐々に小さくなる。このため、各スクレーパ82及びトラフ型ケーシング81により区画された貯留領域の石炭灰含有スラリーは、スクレーパ82により支持されながら上方向に移動する。この際、搬送方向下流に向かうに従って該スクレーパ82が徐々に寝てくるので、図10に示すように、該スクレーパ82上に支持される石炭灰含有スラリーの量が貯留領域Ar1から貯留領域Ar4に向かうに従って徐々に少なくなる。この際、スクレーパ82上に支持される石炭灰含有スラリーの上澄み液がトラフ型ケーシング81外に排出されて、排水トラフ85により回収される。
【0053】
本実施形態では、搬送装置3Dがスクレーパコンベアにより構成され、搬送方向下流に向かうに従ってスクレーパ82の水平に対する傾斜角度が小さくなっており、トラフ型ケーシング81内の各スクレーパ82によって区画された領域に貯留される石炭灰含有スラリーの上澄み液がトラフ型ケーシング81外に徐々に排出されることとなるので、搬送後の石炭灰含有スラリーの水分率を低減することができる。
【0054】
その他、細部構成は各実施形態の構成のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態では、搬送装置3,3C,3Dは、石炭灰含有スラリーを搬送する搬送装置として用いられているが、これに限らず、固体と液体とからなるスラリーであれば、その用途を問わない。
また、上記第1及び第2実施形態では、バケット33を斜め上方に搬送させながら該バケットを傾斜させ、上澄み液を排出することとしたが、例えば、水平方向に搬送する際にバケット33を徐々に傾斜させて上澄み液を排出することとしてもよい。すなわち、搬送方向下流側は、搬送方向上流側に対して、必ずしも高い位置に移動することには限定されるものではなく、どのような搬送方向であっても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 石炭灰処理装置
2 浮遊選別器
3 3C 3D 搬送装置(搬送手段)
4 脱水装置
5 乾燥装置
6 分級器
7 回収槽
30 傾斜手段
31 コンベア
31A 第1水平搬送部
31B 傾斜搬送部
31C 第2水平搬送部
31D 戻り搬送部
32 駆動手段
33 バケット(貯留部)
331 底部
332 333 側面部
34 34C 支軸
341 歯車
342 支持部材
35 回動補助部
35B 歯車
351 外周面
36A レールガイド
36 レールガイド
360 溝
361 当接面
361B ギヤ
362 突起
37 回収用トラフ
38 被係合部
41 コンベア
42 真空ポンプ
43 真空吸引装置
81 トラフ型ケーシング
811 底板
812 側板
82 スクレーパ
83 スクレーパ駆動チェーン
85 排水トラフ
Ar1 Ar2 Ar3 Ar4 貯留領域(貯留部)
C 重心軸
V1 移動速度
V2 移動速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12