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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】噴霧器
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/06 20060101AFI20220509BHJP
   A24F 47/00 20200101ALI20220509BHJP
   H05B 3/14 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
A61M15/06 C
A24F47/00
H05B3/14 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018070688
(22)【出願日】2018-04-02
(65)【公開番号】P2019180463
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 倫寿
(72)【発明者】
【氏名】新井 勇人
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-539773(JP,A)
【文献】国際公開第2009/084458(WO,A1)
【文献】特表2012-513236(JP,A)
【文献】特表2016-512681(JP,A)
【文献】特表2017-532011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0303586(US,A1)
【文献】国際公開第2018/037562(WO,A1)
【文献】特表2016-509481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/06
A24F 47/00
H05B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状体を保持する保持体と、布状の発熱体と、を備え、
前記発熱体は、前記保持体の外表面に巻き付けられ、電流の供給によって発熱する炭素繊維を備え、前記炭素繊維と前記保持体との接触を通じ前記保持体に保持された前記液状体を気化させるための熱を前記炭素繊維から前記保持体に伝える噴霧器であって、
前記発熱体は、前記炭素繊維により外表面の少なくとも一部が膜状に覆われている保持繊維を、布状に織って形成されており、
前記発熱体は、前記保持繊維の外表面が前記炭素繊維により膜状に覆われた部分で織られた第1部分と、前記保持繊維の外表面が前記炭素繊維によって覆われていない部分で織られた第2部分とを含み、かつ、前記第2部分より端部側に位置し、前記保持繊維がバラけた状態の部分を含み、
前記保持体および前記発熱体の端部に接する供給体であって、前記液状体を保持し、かつ、保持した前記液状体を前記端部から前記保持体および前記発熱体に供給する前記供給体をさらに備えることを特徴とする噴霧器。
【請求項2】
前記第1部分には、電流を供給する電気配線が通過する孔が設けられている請求項1に記載の噴霧器。
【請求項3】
前記電気配線は、前記孔を通って前記発熱体を貫通し、貫通した先端が、前記発熱体が巻かれている方向と逆方向に前記発熱体の外表面に沿って折り曲げられている請求項2に記載の噴霧器。
【請求項4】
前記保持繊維は、ガラス繊維である請求項1から3のいずれか一項に記載の噴霧器。
【請求項5】
前記炭素繊維は、カーボンナノチューブである請求項1から4のいずれか一項に記載の噴霧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子たばこ用の噴霧器は、ウィックと、ウィックに巻き付けられた発熱体とを、円筒状の筐体内に備える(例えば、特許文献1参照)。発熱体は、金属製のワイヤであり、発熱体に電流が供給されることによって、ウィックに保持された液状体が加熱される。これにより、液状体が蒸発し、結果として、液状体に由来する気体が、筐体の内部から筐体の外部に噴出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-539773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液状体を保持したウィックに発熱体が接し続けると、発熱体の表面に錆が生じることがある。発熱体の表面に生じた錆は、液状体の加熱に要する電力や、噴出される気体の成分などを変えてしまう。また、ウィックにワイヤを一定の形状で巻き付ける工程、あるいはコイル状にしたワイヤにウィックを挿入する工程はいずれも面倒であり、不良が発生し易かった。またウィックはコイル状のワイヤに通されているだけであるため、使用しているうちにバラけ易く、バラけることにより噴霧器の性能が変動するという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の様な問題点を解決するため成されたもので、発熱体における錆の発生を抑え、製造の工程を簡素化でき、性能の変動が起こり難い噴霧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための噴霧器は、液状体を保持する保持体と、布状の発熱体と、を備え、前記発熱体は、前記保持体の外表面に巻き付けられ、電流の供給によって発熱する炭素繊維を備え、前記炭素繊維と前記保持体との接触を通じ前記保持体に保持された前記液状体を気化させるための熱を前記炭素繊維から前記保持体に伝えることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、液状体を気化するための熱が、炭素繊維の発熱によって得られる。液状体を保持した保持体に炭素繊維が接し続けるとしても、炭素繊維の表面には錆が生じがたいため、液状体を気化するうえで発熱体に錆が生じることを抑えられる。
【0008】
上記噴霧器において、前記発熱体は布状であって、前記保持体の外表面に巻き付けられている。上記構成によれば、発熱体が保持体を周回するコイルのように複雑な形状を有しないため、発熱体の形状が設計された形状からずれることを抑え、これによって、噴霧器の不良率を下げることができる。また、布状の発熱体を巻き付けるだけで良いので製造工程を簡素化できる。また外表面に巻付けることにより前記保持体の形が崩れるのを防ぐことができ、使用中に噴霧器の性能が変動することを抑制することができる。
【0009】
上記噴霧器において、前記保持体は、保持繊維の集束体であり、前記発熱体は、前記炭素繊維により外表面の少なくとも一部が膜状に覆われている保持繊維を、布状に織って形
成されていてもよい。上記構成によれば、前記保持体の外表面が発熱体の炭素繊維によって加熱されるため、前記保持体に熱が伝わり易く、保持繊維や保持繊維間に保持された液状体が気化されやすい。
【0010】
上記噴霧器において、前記発熱体は、前記保持繊維の外表面が前記炭素繊維により膜状に覆われた部分で織られた第1部分と、前記保持繊維の外表面が前記炭素繊維によって覆われていない部分で織られた第2部分とを含んでも良い。上記構成によれば、液状体が、第1部分および第1部分と接している前記保持体の部分から優先的に気化するため、第2部分および第2部分と接している前記保持体に液状体を保持させつつ、第1部分および第1部分と接している前記保持体から液状体を気化させることができる。
【0011】
上記噴霧器において、前記第2部分は、前記保持繊維の端部側に位置し、前記発熱体の端部では前記保持繊維が布状に織られておらず、前記噴霧器は、前記保持体および前記発熱体の端部に接する供給体であって、前記液状体を保持し、かつ、保持した前記液状体を前記端部から前記保持体および前記発熱体に供給する前記供給体をさらに備えてもよい。
【0012】
上記構成によれば、液状体を供給する供給体が、保持繊維の端部に接し、保持繊維の端部は保持体、発熱体共に炭素繊維に覆われていない。そのため、供給体に保持される液状体が供給体で気化されることを抑え、また、保持体および発熱体に供給される液状体が保持繊維の端部で気化されることが抑えられる。また発熱体の保持繊維は端部で布状となっておらずバラけているため、供給体と接触しやすい。結果として、供給体は、所望される量の液状体を保持体および発熱体に供給しやすい。
【0013】
上記噴霧器において、前記第1部分には、電流を供給する電気配線が通過する孔が設けられていても良い。上記構成によれば、保持体の外表面に巻付けたときに電気配線を孔に通過させて固定でき、発熱体の巻き付けが解けるのを防ぐことができる。
【0014】
上記噴霧器において、前記電気配線は、前記孔を通って前記発熱体を貫通し、貫通した先端が、前記発熱体が巻かれている方向と逆方向に前記発熱体の外表面に沿って折り曲げられていても良い。上記構成によれば、前記電気配線が布状の前記発熱体を抑える態様となるため、前記発熱体の巻き付けが緩んだり解けたりする虞がなく、前記電気配線が前記発熱体から抜け落ちる虞がない。
【0015】
上記噴霧器において、前記発熱体における前記保持繊維の外表面の全体が、前記炭素繊維によって覆われていてもよい。上記構成によれば、外表面の全体が炭素繊維によって覆われた保持繊維を発熱体の製造に用いることができる。すなわち、発熱体の製造に際して、保持繊維における炭素繊維の位置や長さに制約を受けにくいため、保持繊維を用いた発熱体の製造が容易である。
【0016】
上記噴霧器において、前記保持繊維は、ガラス繊維であってもよい。上記構成によれば、綿などに比べて耐熱性が高いガラス繊維によって保持繊維が構成されるため、発熱体の発熱によって保持繊維が焦げ付くことが抑えられる。
【0017】
上記噴霧器において、前記炭素繊維は、カーボンナノチューブであってもよい。上記構成によれば、発熱体における機械的な耐性や化学的な耐性を高めることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、噴霧器において、発熱体における錆の発生を抑えることができる。また製造工程を簡素化でき、噴霧器の不良率を下げることができる。さらに噴霧器の性能が変動することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】噴霧器を含む噴霧装置の構造を模式的に示す断面図。
図2】保持体に布状の発熱体を巻き付けたときの構造を示す斜視図。
図3】布状の発熱体の平面図。
図4】噴霧器が延びる方向に沿う断面における噴霧器の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から図4を参照して、噴霧器を具体化した一実施形態を説明する。以下では、噴霧器を噴霧装置の一部として具体化した例を説明する。
【0021】
[噴霧装置の構成]
図1を参照して噴霧装置の構成を説明する。
図1が示すように、噴霧装置10は、噴霧器11、電源部12、およびカートリッジ13を備えている。噴霧器11は、通路11aを区画する筒状を有し、発熱体22と、発熱体22が巻き付けられているため図1では隠れている保持体21と、供給部24を備えている。保持体21は供給部24から供給される液状体を保持し、保持体21によって保持される液状体は、噴霧器11によって気化される。液状体は、液体のみから構成されてもよいし、液体と固体とから構成されてもよい。発熱体22は、電流の供給によって発熱する炭素繊維を備え、炭素繊維と保持体21との接触を通じ、保持体21に保持された液状体を気化させるための熱を炭素繊維から保持体21に伝える。噴霧装置10では、液状体を気化するための熱が、炭素繊維の発熱によって得られる。液状体を保持した保持体21に炭素繊維が接し続けるとしても、炭素繊維の表面には錆が生じがたいため、液状体を気化するうえで発熱体22に錆が生じることを抑えられる。
【0022】
電源部12は、電池、電子回路、および、電池と電源回路とが収容される筐体を備えている。電池は、発熱体22に電流を供給する。電池は、一次電池であってもよいし、二次電池であってもよい。電子回路は、電池から発熱体22への電流の供給を制御する。
【0023】
カートリッジ13は、フランジ部13aと収容部13bとを備えている。収容部13bは、噴霧器11の通路11aに嵌ることが可能な筒状を有している。収容部13bが備える2つの筒端のうち、一方の端部にはフランジ部13aが位置し、他方の端部には複数の貫通孔が形成されている。フランジ部13aは、収容部13bの筒端から収容部13bにおける径方向の外側に向けて延びる形状を有している。フランジ部13aは、収容部13bが噴霧器11の通路11aに嵌め込まれたときに、噴霧器11の筒端に接する。これにより、カートリッジ13が噴霧器11に固定される。
【0024】
収容部13bには、噴霧装置10の用途に応じた内容物が収容される。噴霧装置10が加熱式たばことして用いられるときには、内容物として、例えばたばこ葉を挙げることができる。噴霧装置10が吸入器として用いられる場合には、内容物として、例えば各種の薬剤を挙げることができる。
【0025】
噴霧装置10では、電源部12から発熱体22が備える炭素繊維に電流が供給されることによって、炭素繊維が発熱する。炭素繊維が発した熱によって保持体21および発熱体22に保持された液状体が加熱され、液状体が気化される。気化した液状体は、噴霧器11の通路11a、および、カートリッジ13の収容部13bを通って噴霧装置10の外部に噴出される。なお、噴霧装置10の使用者は、カートリッジ13の一部、および、噴霧器11の筒端を口にくわえることによって、噴霧装置10から噴出された気体を吸入することができる。
【0026】
噴霧装置10において、カートリッジ13を省略することができる。カートリッジ13を省略した構成では、噴霧装置10の使用者は、噴霧器11の筒端を口にくわえることによって、噴霧装置10から噴出された気体を吸入することができる。
【0027】
[噴霧器の構成]
図2図4を参照して噴霧器11の構成をより詳しく説明する。以下では、噴霧器11の全体を説明する前に、噴霧器11が備える保持体21および発熱体22をより詳しく説明する。
【0028】
図2が示すように、発熱体22は、保持繊維30が織られて布状となって保持体21の外表面に巻き付けられている。一方、保持体21は、複数の保持繊維30の集束体である。発熱体22は、保持繊維30の炭素繊維により膜状に覆われた部分で織られた第1部分22Aと、保持繊維30の炭素繊維により覆われていない部分で織られた第2部分22Bを有している。そのため第1部分22Aは発熱部となり、第2部分22Bは非発熱部となる。第1部分22Aでは、保持繊維30の外表面を膜状に覆っている炭素繊維が互いに接することによって、保持繊維30は互いに電気的に接続されている。
【0029】
このように、発熱体22が保持体21を周回するコイルのように複雑な形状を有しないため、発熱体22の形状が、設計された形状からずれることを抑え、これによって、噴霧器11の不良率を下げることができる。なお、発熱体がコイルのように複雑な形状を有する場合には、発熱体が接する保持体の変形によって、発熱体の機能が損なわれる程度に発熱体が変形する可能性が高い。これに対して、本実施形態の発熱体22は布状であって保持体21に巻き付けられているため、保持体21の変形が起こり難く発熱体22の機能が損なわれにくくなる。また、保持体21の外表面の保持繊維30が発熱体22の第1部分22Aによって加熱されるため、保持繊維30や保持繊維30の間に保持された液状体が気化されやすい。
【0030】
発熱体22の第2部分22Bは、保持繊維30の各端部側に位置している。そのため、液状体が、発熱体22の第1部分22A、および保持体21の第1部分22Aと接している部分から優先的に気化し、これによって、発熱体22の第2部分22B、および保持体21の第2部分22Bと接している部分に液状体を保持させつつ、保持体21から液状体を気化させることができる。また発熱体22の両端部において、保持繊維30は布状に織られておらず、繊維がバラけた態様となっているため、保持体21の端部と共に供給部24と接触し易く、液状体の供給を受け易い。
【0031】
保持繊維30は、ガラス繊維であることが好ましい。綿などに比べて耐熱性が高いガラス繊維によって保持繊維30が構成されるため、発熱体22の発熱によって保持繊維30が焦げ付くことが抑えられる。なお、保持繊維30には、ガラス繊維に限らず、例えば、綿製の繊維や合成樹脂製の繊維などの各種の繊維を用いることも可能ではある。
【0032】
発熱体22において保持繊維30の表面積のうち、炭素繊維で覆われる割合は、例えば60%以上100%以下である。発熱体22は、炭素繊維以外に、例えば、炭素繊維同士を接着する接着剤などを含むことができる。発熱体22の成分である炭素繊維は、カーボンナノチューブである。これにより、発熱体22における機械的な耐性や化学的な耐性を高めることが可能である。カーボンナノチューブには、単層構造のカーボンナノチューブ、および、多層構造のカーボンナノチューブの両方を用いることが可能である。なお、炭素繊維には、カーボンナノチューブに限らず、カーボンナノホーン、および、カーボンナノファイバなどの各種の炭素繊維を用いることができる。
【0033】
発熱体22において、第1部分22Aの保持繊維30を覆うカーボンナノチューブには
、他のいずれかのカーボンナノチューブに電気的に接続するカーボンナノチューブが含まれている。そのため、発熱体22に電力が供給されたときには、第1部分22Aすべてに電力が供給される。
【0034】
噴霧器11は、さらに2本の配線23を備えている。各配線23における2つの端部のうち、一方の端部は発熱体22の一部に電気的に接続され、他方の端部は電源部12が有する端子に電気的に接続されている。各配線23は、発熱体22の第1部分22Aに接合されることによって第1部分22Aに電気的に接続されてもよいし、発熱体22に巻かれることによって第1部分22Aに電気的に接続されてもよい。また図2のA-A´断面図に示す様に発熱体22を貫通しているとより好ましい。配線23が発熱体22を貫通していることにより、保持体21に巻き付けられた発熱体22が緩んでしまうことがない。また発熱体22を貫通した配線23の先端23Aを、発熱体22の巻き付け方向と反対向きに発熱体22に沿って折り曲げ、第1部分22Aに接触すると共に発熱体22の端部22Cを押さえる様にすることができる。これにより、第1部分22Aに電流を供給することができ、また発熱体22の端部22Cで巻きが解けてしまう虞がなく、性能が安定し、また発熱体22が配線23から外れてしまう虞がない。
【0035】
各配線23の先端23Aは、発熱体22の第1部分22Aをすべて周回して接していてもよいし、一部にのみ接していてもよい。配線23には、導電体を用いることができ、例えば金属製のワイヤを用いることができる。なお、各配線23の第1部分22Aと接触しない部分は、絶縁物から形成された絶縁膜によって被覆されていることが好ましい。
【0036】
発熱体22の抵抗値は、例えば3Ω以上3.3Ω以下である。発熱体22の抵抗値は、2本の配線23間における抵抗値として測定することができる。発熱体22の抵抗値は、発熱体22の第1部分22Aで保持繊維30を膜状に覆う炭素繊維の膜の厚さ、配線23の間隔、前記膜における炭素繊維の割合、および、発熱体22を構成する第1部分22Aの面積などによって調整することができる。発熱体22が上述したような抵抗値を有するため、配線23を通じて発熱体22の第一部分22Aに電流が供給されることによって、発熱体22の第1部分22Aが、例えば200℃以上300℃以下の温度に加熱される。
【0037】
発熱体22は、例えば、以下の方法によって形成することができる。すなわち、発熱体22を形成するときには、まず、発熱体22を構成する複数の保持繊維30を準備する。そして、各保持繊維30の一部に炭素繊維を含む塗液を塗布する。本実施形態の発熱体22を得るためには、保持繊維30のなかで、保持繊維30が延びる方向における中央を含む部分に塗液を塗布する。そして、塗液を乾燥させた後、これを通常の布を織るのと同様の要領で織って布状とする。
【0038】
また、このとき端部側の塗液が塗られていない第2部分22Bの端部は、布状に織らず、保持繊維30がバラけた状態とする。また第1部分には配線23を貫通させるための孔22Dを設ける。以上のようにして、図3に示すような、少なくともその一部が炭素繊維により膜状に覆われた布状の発熱体22が得られる。
【0039】
保持体21は、例えば、以下の方法によって形成することができる。まず、保持体21を構成する複数の保持繊維30を準備し、これを布状の発熱体22を巻き付け易いように束ねる。このとき、発熱体22を巻き付ける際に扱い易いように、複数の保持繊維30を別の耐熱性の繊維などで結束しても良い。
【0040】
図4は、噴霧装置10が延びる方向に沿う断面における噴霧器11の構造を示している。なお、図4では、図示の便宜上、保持部21には発熱部22が巻き付いていて隠れている。
【0041】
図4が示すように、噴霧器11は、供給体24、外側筒部25、内側筒部26、および蓋部27を備えている。外側筒部25および内側筒部26の各々は、噴霧装置10が延びる方向に沿う筒状を有し、外側筒部25が区画する空間内に内側筒部26が位置している。外側筒部25を形成する材料には、例えば、合成樹脂または金属を用いることができる。内側筒部26を形成する材料には、例えば、合成樹脂またはガラス繊維を用いることができる。内側筒部26を形成する材料は、絶縁性を有することが好ましい。
【0042】
保持体21および発熱体22は、外側筒部25が区画する空間内に位置している。保持体21および発熱部22は、外側筒部25の内部において、外側筒部25が延びる方向とほぼ直交する方向に沿って延び、かつ、保持体21および発熱部22が延びる方向において内側筒部26を貫通している。また発熱体22において、各第2部分22Bは内側筒部26よりも外側にまで位置し、かつ、第1部分22Aにおける両端部は、内側筒部26よりも内側に位置している。
【0043】
各配線23は、内側筒部26の内部に位置する発熱体22の第1部分22Aから、電源部12に向けて延びる形状を有している。
【0044】
供給体24は、発熱体22の第2部分22Bの保持繊維30の端部および保持体21の保持繊維30の端部に接している。供給体24は液状体を保持し、かつ、保持した液状体を保持繊維30の端部から保持体21および発熱体22に供給する。供給体24は、外側筒部25と内側筒部26との間に位置している。供給体24は、外側筒部25と内側筒部26との間において、保持体21および発熱体22の両端部に接している。
【0045】
供給体24は、例えば外側筒部25と内側筒部26との間に位置する繊維層である。シート状を有する繊維層が筒状に成形されることによって、供給体24が構成されている。供給体24を形成する材料には、例えば綿や合成樹脂を用いることができる。供給体24は単層構造でもよいし、多層構造でもよい。供給体24が多層構造であるときには、複数の層には、互いに異なる材料によって形成された層が含まれてもよい。
【0046】
供給体24は、発熱体22によって気化される液状体を保持している。供給体24は、内側筒部26と外側筒部25との間に形成される空間のほぼ全体を埋めている。そのため、保持体21および発熱体22の内側筒部26から突き出た部分が、供給体24に接する。しかも、上述したように、保持体21および発熱体22のなかで内側筒部26から突き出た部分には、保持繊維30の端部が含まれる。これにより、液状体を供給する供給体24が、保持繊維30の端部に接し、保持繊維30の端部が炭素繊維によって覆われていない。そのため、供給体24に保持される液状体が供給体24で気化されることを抑え、また、保持体21に供給される液状体が保持繊維30の端部で気化されることが抑えられる。結果として、供給体24は、所望される量の液状体を保持体21および発熱体22に供給しやすい。
【0047】
なお、供給体24を液状体中に漬けること、供給体24に液状体を滴下すること、または、供給体24に液状体を塗ることなどによって、供給体24に液状体を保持させることができる。
【0048】
蓋部27は、閉環状を有している。蓋部27は、外側筒部25および内側筒部26の筒端のうち、カートリッジ13が嵌め込まれる端部に位置し、外側筒部25と内側筒部26との間の空間を封止している。蓋部27を形成する材料は、金属であってもよいし、各種の合成樹脂であってもよい。
【0049】
以上説明したように、噴霧器の一実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)液状体を気化するための熱が、炭素繊維の発熱によって得られる。液状体を保持した保持体21に炭素繊維が接し続けるとしても、炭素繊維の表面には錆が生じがたいため、液状体を気化するうえで発熱体22に錆が生じることを抑えられる。
【0050】
(2)発熱体22布状であって保持体21に巻き付けられた態様であり、保持体21を周回するコイルのように複雑な形状を有しないため、発熱体22の形状が安定して、設計された形状からずれることを抑え、これによって、製造工程を簡素化でき、また噴霧器11の不良率を下げることができ、噴霧器11の性能の変動を抑制することができる。
【0051】
(3)保持繊維30の外表面が発熱体22によって加熱されるため、保持繊維30や保持繊維30間に保持された液状体が気化されやすい。
【0052】
(4)液状体が、第1部分22Aおよび第1部分22Aと接している保持体21の部分から優先的に気化するため、第2部分22Bおよび第2部分22Bと接している保持体21に液状体を保持させつつ、第1部分22Aおよび第1部分22Aと接している保持体21から液状体を気化させることができる。
【0053】
(5)液状体を供給する供給体24が、保持繊維30の端部に接し、保持繊維30の端部が炭素繊維に覆われていない。また発熱部22の端部では布状となっておらずバラけていて供給体24と接触しやすい。そのため、供給体24に保持される液状体が供給体24で気化されることを抑え、また、保持体21および発熱体22に供給される液状体が保持繊維30の端部で気化されることが抑えられる。また、供給体24は、所望される量の液状体を保持体21および発熱体22に供給しやすい。
【0054】
(6)綿などに比べて耐熱性が高いガラス繊維によって保持繊維30が構成されるため、発熱体22の発熱によって保持繊維30が焦げ付くことが抑えられる。
【0055】
(7)発熱体22の巻き付けが緩むなど、形状的な安定性が損なわることがなく、機械的な耐性や化学的な耐性を高めることが可能である。
【0056】
なお、上述した実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
[保持体21]
・保持体21は複数の保持繊維30から構成されていなくてもよく、例えば、1本の保持繊維から構成されてもよい。あるいは、保持体は、例えば、綿や合成樹脂から形成された不織布であってもよいし、液状体を保持することが可能な多孔質の部材であってもよい。
【0057】
[発熱体22]
・保持繊維30における外表面の全体が、炭素繊維により膜状に覆われていてもよい。こうした構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
【0058】
(8)外表面の全体が炭素繊維により膜状に覆われた保持繊維30を発熱体22の製造に用いることができる。すなわち、発熱体22の製造に際して、保持繊維30における第1部分22Aの位置や長さに制約を受けにくいため、保持繊維30を用いた発熱体22の製造が容易である。
【0059】
・第2部分22Bは、各保持繊維30における一方の端部にのみ位置してもよい。こうした構成においても、保持繊維30の第2部分22Bによれば、上述した(5)に準じた効果を得ることはできる。
【0060】
・第1部分22Aは、炭素繊維を塗布していない保持繊維30を織って布状とした後、第1部分22Aとする部分に炭素繊維を含む塗液を塗布することによって設けても良い。保持繊維30を織る際に炭素繊維を含む塗液を塗布した部分の位置合わせが不要となる。
【0061】
・第1部分22Aの炭素繊維の膜は、均一な膜状以外の形状を有してもよい。炭素繊維の膜は、電気的に導通していれば、例えばコイル状、格子状、網目状を有してもよい。
【0062】
[その他の変形例]
・供給体24は省略されてもよい。こうした構成では、外側筒部25と内側筒部26との間に液状体が充填されていればよい。
【符号の説明】
【0063】
10・・・噴霧装置
11・・・噴霧器
11a・・・通路
12・・・電源部
13・・・カートリッジ
13a・・・フランジ部
13b・・・収容部
21・・・保持体
22・・・発熱体
22A・・・第1部分
22B・・・第2部分
22C・・・端部
22D・・・孔
23・・・配線
23A・・・先端
24・・・供給体
25・・・外側筒部
26・・・内側筒部
27・・・蓋部
30・・・保持繊維
図1
図2
図3
図4