(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】排気ガスセンサの配置構造
(51)【国際特許分類】
F02D 35/00 20060101AFI20220509BHJP
F01N 13/00 20100101ALI20220509BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20220509BHJP
【FI】
F02D35/00 368B
F01N13/00 A
F01N13/08 G
(21)【出願番号】P 2018071520
(22)【出願日】2018-04-03
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 修
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3151233(JP,U)
【文献】特開2017-110616(JP,A)
【文献】特開2014-238094(JP,A)
【文献】特開2016-000978(JP,A)
【文献】特開2007-051571(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0369123(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 35/00
F01N 3/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のエンジンから延びて排気流路の一部を形成する排気管と、
前記排気流路を流れる排気ガスを浄化する触媒装置と、
前記排気ガス中の所定成分を検出する第1排気ガスセンサ
及び第2排気ガスセンサと、を備え、
前記排気管は、前記エンジンの前方から左右方向一方側に導出され、後方に延びて前記エンジンの側方に取り回され、
前記触媒装置は、前記排気管の途中で前記エンジンの側方に配置され、
前記第1排気ガスセンサは
、前記触媒装置の上流
側に配置され
、
前記第1排気ガスセンサは、側面視において、前記排気管の最前部よりも後方に配置され、
前記第2排気ガスセンサは、側面視において、前記第1排気ガスセンサとの間で前記触媒装置を挟むように前記触媒装置の下流側に配置され、
側面視において、前記第1排気ガスセンサは前記エンジンの前方に配置され、前記触媒と前記第2排気ガスセンサは前記エンジンのシリンダヘッドと重なっていることを特徴とする排気ガスセンサの配置構造。
【請求項2】
前記第1排気ガスセンサ及び前記第2排気ガスセンサの少なくとも一方は、前方に傾斜して配置されることを特徴とする請求項
1に記載の排気ガスセンサの配置構造。
【請求項3】
前記第1排気ガスセンサ及び前記第2排気ガスセンサの少なくとも一方は、前記エンジンの内側に傾斜して配置され
、
前記第1排気ガスセンサは、側面視において、前記触媒装置の上流側の前記排気管と重なっており、
前記触媒装置は、前記第1排気ガスセンサの後方で、後端が斜め上方を向くように配置されていることを特徴とする請求項
1又は請求項
2に記載の排気ガスセンサの配置構造。
【請求項4】
前記第1排気ガスセンサ及び前記第2排気ガスセンサは、一端側の検出部が前記排気流路内に突出するように配置され、他端側が前記触媒装置の軸中心より前記エンジンの内側に位置することを特徴とする請求項
1から請求項
3のいずれかに記載の排気ガスセンサの配置構造。
【請求項5】
前記第1排気ガスセンサの上流側の前記排気管及び前記第2排気ガスセンサの下流側の前記排気管には、それぞれジョイント部が設けられることを特徴とする請求項
1から請求項
4のいずれかに記載の排気ガスセンサの配置構造。
【請求項6】
前記エンジンを支持する車体フレーム
と、前記エンジンの左右方向に中心軸を有するクランクシャフトと、を更に備え、
前記車体フレームは、ヘッドパイプから前記エンジンの前方を通って下方に延びるダウンフレームを有し、
前記第1排気ガスセンサは、側面視において、前記ダウンフレームに重なるように配置され
、
前記触媒装置は、側面視において、前記ダウンフレームの前端と前記クランクシャフトとの間に配置されることを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれかに記載の排気ガスセンサの配置構造。
【請求項7】
前記エンジンの左右方向に中心軸を有するクランクシャフトの一端側に設けられるマグネトを更に備え、
前記排気管は、前記マグネト側に取り回され、
前記触媒装置は、前記マグネトの上方に配置されることを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれかに記載の排気ガスセンサの配置構造。
【請求項8】
前記エンジンの下方に乗員の足を乗せるステップを更に備え、
前記排気管は、前記ステップの上方を通って後方に延びることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれかに記載の排気ガスセンサの配置構造。
【請求項9】
前記エンジンは単気筒エンジンであり、
前記エンジンの排気ポートは、正面視において、前記ダウンフレームより左右方向一方側に偏って配置されることを特徴とする請求項
6に記載の排気ガスセンサの配置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスセンサの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、オフロードタイプの自動二輪車においては、出力向上を目的として、排気通路の途中に大容量の膨張空間を形成した膨張室が設けられることがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、エンジンの前方に膨張室が配置されており、当該膨張室内には、ループ状に巻回された排気管が収容されている。また、膨張室内において、当該排気管の下流側には、触媒コンバータが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来より、車両の排気システムにおいては、排気通路の途中に設けられた排気ガスセンサによって排気ガス成分を検出する技術が提案されている。特に、昨今の排ガス規制に伴い、車両の排気システムにおいては、排気ガス成分を精度よく検出することが一層求められている。しかしながら、マフラや触媒等といった排気装置の他の部品の構成によっては、排気ガスセンサの配置に制約が生じ、排気ガス成分を適切に検出できる位置に排気ガスセンサを配置することが困難な場合が想定される。
【0005】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、排気ガス成分の検出精度を損なうことなく排気ガスセンサを配置することができる排気ガスセンサの配置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の排気ガスセンサの配置構造は、車両用のエンジンから延びて排気流路の一部を形成する排気管と、前記排気流路を流れる排気ガスを浄化する触媒装置と、前記排気ガス中の所定成分を検出する第1排気ガスセンサ及び第2排気ガスセンサと、を備え、前記排気管は、前記エンジンの前方から左右方向一方側に導出され、後方に延びて前記エンジンの側方に取り回され、前記触媒装置は、前記排気管の途中で前記エンジンの側方に配置され、前記第1排気ガスセンサは、前記触媒装置の上流側に配置され、前記第1排気ガスセンサは、側面視において、前記排気管の最前部よりも後方に配置され、前記第2排気ガスセンサは、側面視において、前記第1排気ガスセンサとの間で前記触媒装置を挟むように前記触媒装置の下流側に配置され、側面視において、前記第1排気ガスセンサは前記エンジンの前方に配置され、前記触媒と前記第2排気ガスセンサは前記エンジンのシリンダヘッドと重なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排気ガス成分の検出精度を損なうことなく排気ガスセンサを配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】自動二輪車の概略構成を示す左側面図である。
【
図2】本実施の形態に係る自動二輪車のエンジン周辺の部分拡大図である。
【
図3】本実施の形態に係る自動二輪車のエンジン及び車体フレームの正面図である。
【
図4】本実施の形態に係る排気管の斜視図及び部分上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明をオフロードタイプの二輪車に適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明を、他のタイプの車両に適用してもよい。また、方向について、車両前方を矢印FR、車両後方を矢印RE、車両上方を矢印UP、車両下方を矢印LO、車両左方を矢印L、車両右方を矢印Rでそれぞれ示す。また、以下の各図では、説明の便宜上、一部の構成を省略している。
【0010】
図1を参照して、本実施の形態に係る自動二輪車の概略構成について説明する。
図1は、自動二輪車の概略構成を示す左側面図である。
【0011】
図1に示すように、自動二輪車1は、オフロードタイプの自動二輪車であり、鋼製又はアルミ合金製の車体フレーム2にエンジン3を懸架(支持)して構成される。エンジン3は、例えば、単気筒エンジンで構成される。車体フレーム2及びエンジン3については後述する。
【0012】
エンジン3の上方には、燃料タンク10が配置されている。燃料タンク10の前方には、外装カバー11が取り付けられている。燃料タンク10の後方には、後方に向かって延びるシート12が設けられている。
【0013】
車体フレーム2の一部を構成するヘッドパイプ20(
図3参照)には、ステアリングシャフト(不図示)を介してフロントフォーク13が回転可能に支持されている。ステアリングシャフトの上端にはハンドルバー14が設けられている。フロントフォーク13の下部には、前輪15が回転可能に支持されている。前輪15の上方には、フロントフェンダ16が設けられている。
【0014】
エンジン3の後下方には、車体フレーム2によってピボット部24が形成されており、当該ピボット部24には、スイングアーム17が上下方向に揺動可能に連結されている。スイングアーム17は、ピボット部24から後方に向かって延びており、その後端には、後輪18が回転可能に支持されている。後輪18の上方には、シート12の後端から延在するリヤフェンダ19が設けられている。
【0015】
また、エンジン3には、排気システムとして、エキゾーストパイプ5及びマフラ6が接続される。具体的にエキゾーストパイプ5は、エンジン3の前面に設けられる排気ポートに接続され、エンジン3の側方を通って後方に延びている。エキゾーストパイプ5の途中には、触媒装置50(
図2参照)が設けられている。マフラ6は、エキゾーストパイプ5の後端に接続される。マフラ6の側方は、サイドカバー60によって覆われている。なお、排気システムについては後述する。
【0016】
次に、
図2及び
図3を参照して、車体フレーム及びエンジンの構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係る自動二輪車のエンジン周辺の部分拡大図である。
図3は、本実施の形態に係る自動二輪車のエンジン及び車体フレームの正面図である。
【0017】
図2及び
図3に示すように、車体フレーム2は、クレードルタイプのフレームで構成され、複数のパイプ等を溶接して形成される。具体的に車体フレーム2は、ヘッドパイプ20と、ヘッドパイプ20の上端部から後下方に延びるメインフレーム21と、ヘッドパイプ20の下端部から下方に延びるダウンフレーム22と、を含んで構成される。
【0018】
メインフレーム21には、上記した燃料タンク10(
図1参照)が配置される。メインフレーム21の後端部分には、左右に分岐してそれぞれ下方に延びる一対のボディフレーム23が連結されている。ボディフレーム23には、下端より僅かに上方に位置する部分において、ピボット部24が形成されている。ピボット部24の下方には、乗員の足を乗せるための一対のステップ25が設けられている。ステップ25は、車幅方向外側に延びている。
【0019】
ダウンフレーム22は、ヘッドパイプ20からエンジン3の前方を通って下方に延びている。ダウンフレーム22の下端部分には、左右に分岐してそれぞれ後方に延びる一対のアンダーフレーム26が連結されている。一対のアンダーフレーム26は、それぞれ一対のボディフレーム23の下端部分に連結される。これらの各フレームによって囲まれる空間内にエンジン3が配置される。
【0020】
また、ボディフレーム23の上端には、後方に向かって延びる一対のシートレール27が連結されている。シートレール27には、上記したシート12(
図1参照)が配置される。また、ボディフレーム23の下端側(ピボット部24の近傍)には、後上に向かって延びる一対のリヤフレーム28が連結されている。リヤフレーム28の後上端は、シートレール27の後部に下方から連結される。
【0021】
エンジン3は、クランクケース30と、クランクケース30の上部に下から順に取り付けられるシリンダブロック31、シリンダヘッド32及びシリンダヘッドカバー33と、によって構成される。クランクケース30は、左右割のケースで構成され、車幅方向(左右方向)に中心軸を有するクランクシャフト34(
図5参照)が内部に収容されている。また、クランクケース30の左右両側は開口されており、それぞれの開口を塞ぐようにカバーが取り付けられる。具体的にクランクケース30の左側には、マグネトカバー35が取り付けられ、クランクケース30の右側には、クラッチカバー(不図示)が取り付けられる。また、クランクケース30の左側面には、ステップ25の前方に略同一の高さでシフトペダル36が設けられている。
【0022】
詳細は後述するが、
図5に示すように、クランクシャフト34の左端側には発電機としてマグネト37が設けられている。マグネト37は、内部に設けられるステータ38に対してマグネトロータ39が相対回転することで電力を発生させる。特に、マグネト37の分だけエンジン3が全体として車幅方向左側に突出しており、当該マグネト37を覆うようにマグネトカバー35がクランクケース30に取り付けられる。
【0023】
クランクシャフト34には、コンロッド40を介してピストン41が連結されている(共に
図5参照)。ピストン41は、シリンダブロック31内で上下方向に往復可能に収容されている。シリンダヘッド32及びシリンダヘッドカバー33の内部には、動弁機構(不図示)が収容されている。
【0024】
また、エンジン3の背面側に位置する吸気ポート(不図示)には、吸気系部品として、スロットルボディ42及びエアクリーナ43が配置されている。スロットルボディ42とエアクリーナ43とは、吸気のクリーンサイドを構成するアウトレットチューブ44によって接続されている。スロットルボディ42は、側面視においてボディフレーム23の前方において、シリンダヘッド32の後方に配置されている。エアクリーナ43及びアウトレットチューブ44は、側面視において、ボディフレーム23、シートレール27及びリヤフレーム28によって囲まれる空間内に配置されている。
【0025】
次に、
図2から
図4を参照して、本実施の形態に係る排気システムについて説明する。
図4は、本実施の形態に係る排気管の斜視図及び部分上面図である。
【0026】
図2から
図4に示すように、本実施の形態に係る排気システムは、エンジン3から延びて排気流路の一部を形成するエキゾーストパイプ5と、排気流路を流れる排気ガスを浄化する触媒装置50と、排気ガス中の所定成分を検出する第1排気ガスセンサ7及び第2排気ガスセンサ8と、触媒装置50の劣化診断を実施する制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)9と、消音装置としてのマフラ6と、を含んで構成される。
【0027】
エキゾーストパイプ5は、全体として、円形断面を有する金属製パイプを曲げたり溶接等して形成される。また、エキゾーストパイプ5は、エンジン3の前方から左右方向一方側(本実施の形態では左側)に導出され、後方に延びてエンジン3の側方に取り回される。具体的にエキゾーストパイプ5は、エンジン3の排気ポート(不図示)に接続される第1パイプ51と、マフラ6が接続される第2パイプ52とをジョイント部53で連結して構成される。
【0028】
排気ポートは、シリンダヘッド32の前面において、
図3に示す車両幅方向の略中心に位置するダウンフレーム22より左側に偏った位置に形成されている。第1パイプ51は、上流端にフランジ部54を有しており、当該フランジ部54を介して排気ポートに接続される。第1パイプ51は、排気ポートから前下方に突出し、ダウンフレーム22の側方において正面視且つ上面視でU字状に湾曲して後上方に延びている。また、第1パイプ51は、シリンダブロック31又はシリンダヘッド32の側方において、僅かに後下方に湾曲している。
【0029】
第2パイプ52は、円筒状のジョイント部53を介して第1パイプ51の下流端に接続される。また、第2パイプ52は、
図2に示すように、後方に向かって略水平に延びており、エンジン3の後方において、ボディフレーム23及びリヤフレーム28の内側を通っている。更に第2パイプ52は、リヤフレーム28の後方において僅かに後上方に湾曲している。第2パイプ52は、側面視において、吸気系部品のアウトレットチューブ44及びエアクリーナ43の下方に配置されている。
【0030】
第2パイプ52の下流端には、所定長さで後上方に延びる直管部55を介してマフラ6が接続される。直管部55及びマフラ6は、
図1に示すように、後輪18の上方に位置している。また、直管部55及びマフラ6の前半部分は、側方がサイドカバー60(
図1参照)によって覆われている。
【0031】
第1パイプ51の途中には、触媒装置50が配置される。具体的に触媒装置50は、シリンダブロック31の側方において、後方に向かうに従って上方に傾斜する第1パイプ51の一部分に設けられている。触媒装置50は、例えば三元触媒で構成され、第1パイプ51より拡径した筒状の外筒内に円柱状のハニカム部(不図示)を収容して構成される。触媒装置50は、排気ガス内の汚染物質(一酸化炭素、炭化水素や窒素酸化物等)を吸着して無害な物質(二酸化炭素、水、窒素等)に変換する。
【0032】
触媒装置50の上流側に位置する第1パイプ51には、排気ガス中の所定成分を検出する第1排気ガスセンサ7が配置される。第1排気ガスセンサ7は、側面視において、第1パイプ51の最前部よりも後方に配置されている。より具体的に第1排気ガスセンサ7は、側面視において、ダウンフレーム22に重なるように配置される。
【0033】
また、触媒装置50の下流側に位置する第1パイプ51には、排気ガス中の所定成分を検出する第2排気ガスセンサ8が配置される。すなわち、第2排気ガスセンサ8は、側面視において、第1排気ガスセンサ7との間で触媒装置50を挟むように配置される。また、第2排気ガスセンサ8は、側面視において、シリンダブロック31、又はシリンダヘッド32に重なるように配置される。
【0034】
第1排気ガスセンサ7及び第2排気ガスセンサ8(以下、単に排気ガスセンサと呼ぶ)は、例えば、ジルコニア式酸素センサで構成され、排気ガス内の酸素濃度に応じて出力(電流値)が変化する。当該電流値は、ECU9に出力される。なお、排気ガスセンサ7、8は、酸素センサに限らず、例えば、空燃比センサであってもよい。
【0035】
排気ガスセンサ7、8は、所定の長さを有する円柱状に形成され、一端側が検出部(
図4参照)となっており、他端側にハーネス70、80が接続される。排気ガスセンサ7、8は、触媒装置50の前後における第1パイプ51を貫通して検出部が排気流路内に突出するように配置される。
【0036】
また、排気ガスセンサ7、8は、一端側が下方に向けられる一方、他端側が上方に向けられ、当該他端側が前方で且つエンジン3の内側に傾斜して配置される。より具体的に排気ガスセンサ7、8は、一端側である検出部が排気流路の中心軸に向けられており、他端側が触媒装置50の軸中心よりエンジン3の内側(車両内側)に位置している。
【0037】
ECU9は、自動二輪車1内の各種動作を統括制御する。ECU9は、自動二輪車1内の各種処理を実行するプロセッサやメモリ等により構成される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶媒体で構成される。メモリには、自動二輪車1の各部を制御する制御プログラム等が記憶されている。特に本実施の形態においてECU9は、排気ガスセンサ7、8の検出結果を用いて触媒装置50の劣化診断を実施する。
【0038】
また、ECU9は、エアクリーナ43の上方において、一対のシートレール27の間の空間に配置される。ECU9に繋がるメインハーネス90は、メインフレーム21に沿うように取り回されている。第1排気ガスセンサ7のハーネス70は、ダウンフレーム22に沿わされ、コネクタ71を介してメインハーネス90に接続される。第2排気ガスセンサ8のハーネス80は、シリンダヘッド32及びシリンダヘッドカバー33の側方を通り、コネクタ81を介してメインハーネス90に接続される。
【0039】
ところで上記したように、車両用エンジンの排気システムにおいては、昨今の排ガス規制に伴い、排ガス浄化装置としての触媒の劣化状況をモニタリングすることが求められている。触媒の劣化判定を実施するためには、触媒の上流と下流に排気ガスセンサを設置する必要がある。
【0040】
例えば、触媒の上流側に設けられた排気ガスセンサ(酸素センサ)で排気ガス中の酸素濃度を検出し、空燃比を制御することは従来より実施されていた。しかしながら、触媒の劣化判定を目的として、触媒の下流側にも排気ガスセンサを配置しようとすると、自動二輪車特有のレイアウトの制約から、所定の検出精度を確保しつつ排気ガスセンサを配置することが困難となっていた。
【0041】
また、オフロードタイプの自動二輪車においては、出力向上を目的として、エンジンの前方に大容量の膨張室を設けたものが存在する。この場合、上記のように触媒及び排気ガスセンサの配置場所を確保することが困難となることが想定される。オフロードタイプの自動二輪車においては、フロントフォークのストロークと、前輪(フロントフェンダを含む)とエンジン前方とのクリアランスの確保の観点から、尚更、エンジン前方のスペースに制約が存在する。
【0042】
そこで、本件発明者は、エキゾーストパイプの取り回しや、触媒装置及び排気ガスセンサと乗員との位置関係等に着目し、本発明に想到した。具体的に本実施の形態では、エキゾーストパイプ5をエンジン3の前方から左右方向一方側に導出し、エンジン3の側方を通るようにして後方に延ばして取り回す構成とした。また、触媒装置50をエキゾーストパイプ5の途中でエンジン3の側方に配置し、当該触媒装置50の前後に第1排気ガスセンサ7及び第2排気ガスセンサ8を配置した。
【0043】
例えば、触媒装置50をエンジン3の前方に配置した場合、前輪15(
図1参照)とのクリアランスを確保するために前輪15を前方に移動させなければならず、車両の全長が長くなってしまう要因となる。しかしながら、上記構成によれば、触媒装置50をエンジン3の側方に配置したことで、前輪15とのクリアランスを十分に確保することができ、前輪15を前方に移動させる必要がない。この結果、車両の全長を短くすることができ、運動性能の向上を図ることが可能である。
【0044】
また、触媒装置50をエンジン3の下方に配置した場合、車両の最低地上高が低くなってしまい、オフロード走行をした場合に触媒装置50が接地してしまうおそれがある。しかしながら、本実施の形態では、触媒装置50を上記配置としたことで、車両の最低地上高を高くすることができ、オフロード走行時の接地を回避することが可能である。
【0045】
また、触媒装置50を前後で挟むように、触媒装置50の上流側及び下流側にそれぞれ第1排気ガスセンサ7及び第2排気ガスセンサ8を配置したことで、触媒装置50の上流側及び下流側を流れる排気ガス中の所定成分を適切に検出することができ、触媒装置50を劣化診断を実施することが可能である。すなわち、排気ガス成分の検出精度を損なうことなく排気ガスセンサ7、8を配置することができる。
【0046】
また、シリンダヘッド32の排気ポートをダウンフレーム22より左右一方側に偏らせ、当該排気ポートからエンジン3の前方でエキゾーストパイプ5(第1パイプ51)を屈曲させている。そして、屈曲させた直後の第1パイプ51に触媒装置50を接続したことで、排気ポートから触媒装置50までの排気管長を短くすることが可能である。この結果、エンジン3の始動直後から触媒装置50を活性化でき、排ガス浄化性能を高めることが可能である。
【0047】
また、
図5に示すように、第1パイプ51は、車両左側であるマグネト側に取り回されており、触媒装置50はマグネト37の上方に配置されている。上記したように、マグネト37は、エンジン3の左方に突出しているため、マグネト37の上方において、シリンダヘッド32の側方には、所定のスペースが形成されている。本実施の形態では、マグネト37の上方の当該所定のスペースに触媒装置50を配置したことで、スペースの有効活用を図っている。特に、触媒装置50を車両中心側に近づけて配置することができ、車両の左右幅を小さくすることが可能である。また、触媒装置50は、比較的重量物であるため、車両中心側に近づけて配置することで、マスの集中化を図って車両の運動性能を高めることも可能である。
【0048】
また、
図2に示すように、第1排気ガスセンサ7は、側面視において、第1パイプ51の最前部よりも後方に配置されている。この構成によれば、第1パイプ51が第1排気ガスセンサ7の前下方に位置することで、第1パイプ51がガードの役割を果たす。具体的には、前輪15が巻き上げた小石等から第1排気ガスセンサ7を第1パイプ51で保護することが可能である。
【0049】
また、第1排気ガスセンサ7は、側面視において、ダウンフレーム22に重なるように配置されている。この構成によれば、第1排気ガスセンサ7のハーネス70をダウンフレーム22に沿わせて配設することができる。例えば、
図2に示すように、ハーネス70は、第1排気ガスセンサ7からダウンフレーム22に沿って上方に延びるように配設される。また、ハーネス70は、メインフレーム21に沿って配設されるメインハーネス90にコネクタ71を介して接続される。
【0050】
第2排気ガスセンサ8は、側面視において、シリンダヘッド32に重なるように配置されている。第2排気ガスセンサ8のハーネス80は、エンジン3の側方を通って、後上方に取り回され、コネクタ81を介してメインハーネス90に接続される。このように、各種ハーネスの取り回しを最適化することで、各ハーネスの長さを短縮することが可能である。
【0051】
また、触媒装置50及び排気ガスセンサ7、8は、側面視において、エンジン3の前半部分(例えばクランクシャフト34の中心より前方)に配置されており、排気ガスセンサ7、8の各他端側が前方で且つエンジン3の内側に傾斜して配置される。より具体的に排気ガスセンサ7、8は、一端側である検出部が排気流路の中心軸に向けられており、他端側が触媒装置50の軸中心よりエンジン3の内側(車両内側)に位置している。
【0052】
また、エンジン3の後半部分において、第2パイプ52はステップ25の上方を通って後方に延びており、乗員の足が第2パイプ52の側方を上下で跨ぐように通っている。すなわち、本実施の形態において、熱源である触媒装置50は、乗員の足から離れるように配置されている。このため、触媒装置50から受ける熱害を極力抑えることが可能である。また、排気ガスセンサ7、8の各他端側を乗員から離れる方向に向けることで、排気ガスセンサ7、8が乗員の脚部に接触することを防止することが可能である。また、乗員の姿勢の自由度を高めることが可能である。
【0053】
また、2つの排気ガスセンサ7、8は、互いに平行となるように配置されている。この構成によれば、第1パイプ51に対するセンサの取付構成を共通にすることができ、製造上、組み立て作業上の工数を削減することが可能である。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態では、エキゾーストパイプ5をエンジン3の側方に取り回し、その途中に触媒装置50を配置し、触媒装置50の前後に排気ガスセンサ7、8を配置した。この構成によれば、車両の周辺構成のとの制約を受けずに、排気ガス成分の検出精度を損なうことなく排気ガスセンサ7、8を配置することができる。
【0055】
なお、上記の実施形態では、単気筒のエンジン3を例にして説明したが、この構成に限定されない。例えば、エンジン3は、2気筒以上の多気筒エンジンで構成されてもよく、各気筒の配置も適宜変更が可能である。
【0056】
また、上記の実施形態では、エキゾーストパイプ5が、エンジン3の左方に取り回される構成としたが、この構成に限定されない。エキゾーストパイプ5は、エンジン3の右方に取り回されてもよい。
【0057】
また、上記の実施形態では、排気ポートが、ダウンフレーム22に対して左方に偏って配置される構成としたが、この構成に限定されない。排気ポートは、ダウンフレーム22に対して右方に偏って配置されてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、マグネト37がクランクシャフト34の左端側に配置される構成としたが、この構成に限定されない。マグネト37は、クランクシャフト34の右端側に配置されてもよい。
【0059】
また、上記の実施形態では、触媒装置50の上流側及び下流側にそれぞれ第1排気ガスセンサ7、第2排気ガスセンサ8が配置される構成としたが、この構成に限定されない。排気ガスセンサは、触媒装置50の上流側及び下流側のいずれか一方にのみ配置されてもよい。また、触媒装置50の上流側に第1排気ガスセンサ7を配置したが、第1排気ガスセンサ7は触媒装置50の下流側に配置されてもよい。
【0060】
また、上記の実施形態では、第2排気ガスセンサ8が側面視においてエンジン3に重なるように配置される構成としたが、この構成に限定されない。第1排気ガスセンサ7が側面視においてエンジン3に重なるように配置されてもよい。
【0061】
また、上記の実施形態では、排気ガスセンサ7、8の両方の他端側が前方で且つエンジン3の内側に傾斜して配置される構成としたが、この構成に限定されない。乗員の脚部から比較的離れた位置にある第1排気ガスセンサ7の他端側は、他の方向に向けられてもよい。
【0062】
また、上記の実施の形態では、触媒装置50の下流側において、第1パイプ51と第2パイプ52とがジョイント部53によって接続される構成としたが、この構成に限定されない。例えば、
図6に示す構成も可能である。
図6は、変形例に係る排気管の斜視図である。
図6においては、触媒装置50の上流側において、
図4の第1パイプ51に相当するパイプが二分割されている点で
図4の構成と相違する。以下、主に相違点について説明する。
【0063】
図6に示すように、変形例に係るエキゾーストパイプ101は、排気ポートに接続される第1パイプ102と、当該第1パイプ102にジョイント部104を介して接続され、途中に触媒装置50が設けられる第1パイプ103と、当該第1パイプ103にジョイント部53を介して接続される第2パイプ52と、を含んで構成される。なお、第2パイプ52及びジョイント部53は、
図4と同じ構成のため、説明は省略する。
【0064】
第1パイプ102は、排気ポートから前下方に突出し、ダウンフレーム22(
図2参照)に沿って鉛直方向下方に向かって延びている。第1パイプ102は、下端部で左方に回って180度反転して上方に僅かに突出しており、その突出した部分にジョイント部104を介して第1パイプ103が接続される。第1パイプ103は、エンジン3の側方において、後方に向かうに従って上方に傾斜している。第1パイプ103の途中には、触媒装置50が設けられており、触媒装置50の上流側及び下流側には、排気ガスセンサ7、8が配置されている。
【0065】
変形例では、第1排気ガスセンサ7の上流側にジョイント部104が設けられ、第2排気ガスセンサ8の下流側にジョイント部53が設けられている。この構成によれば、第1パイプ103に予め触媒装置50及び2つの排気ガスセンサ7、8を組み付けておくことが可能である。すなわち、触媒装置50及び排気ガスセンサ7、8を第1パイプ103にサブアセンブリしておくことが可能である。このため、エキゾーストパイプ101全体をまとめてエンジン3に組み付ける場合に比べて、触媒装置50及び排気ガスセンサ7、8の組付け作業性を向上することが可能である。
【0066】
また、複数の実施形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0067】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明は、排気ガス成分の検出精度を損なうことなく排気ガスセンサを配置することができるという効果を有し、特に、オフロードタイプの自動二輪車に有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 :自動二輪車
2 :車体フレーム
3 :エンジン
5 :エキゾーストパイプ(排気管)
6 :マフラ
7 :第1排気ガスセンサ
8 :第2排気ガスセンサ
9 :ECU
10 :燃料タンク
11 :外装カバー
12 :シート
13 :フロントフォーク
14 :ハンドルバー
15 :前輪
16 :フロントフェンダ
17 :スイングアーム
18 :後輪
19 :リヤフェンダ
20 :ヘッドパイプ
21 :メインフレーム
22 :ダウンフレーム
23 :ボディフレーム
24 :ピボット部
25 :ステップ
26 :アンダーフレーム
27 :シートレール
28 :リヤフレーム
30 :クランクケース
31 :シリンダブロック
32 :シリンダヘッド
33 :シリンダヘッドカバー
34 :クランクシャフト
35 :マグネトカバー
36 :シフトペダル
37 :マグネト
38 :ステータ
39 :マグネトロータ
40 :コンロッド
41 :ピストン
42 :スロットルボディ
43 :エアクリーナ
44 :アウトレットチューブ
50 :触媒装置
51 :第1パイプ
52 :第2パイプ
53 :ジョイント部
54 :フランジ部
55 :直管部
60 :サイドカバー
70 :ハーネス
71 :コネクタ
80 :ハーネス
81 :コネクタ
90 :メインハーネス
101 :エキゾーストパイプ
102 :第1パイプ
103 :第1パイプ
104 :ジョイント部