(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】シールドフラットケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/08 20060101AFI20220509BHJP
H01B 11/00 20060101ALI20220509BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20220509BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B11/00 G
H01B7/18 D
H01B7/00 306
(21)【出願番号】P 2018103825
(22)【出願日】2018-05-30
【審査請求日】2020-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 千明
(72)【発明者】
【氏名】松田 龍男
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-167525(JP,A)
【文献】特開2009-146694(JP,A)
【文献】特開平11-120831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
H01B 11/00
H01B 7/18
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配列された複数本の導体と、
複数本の該導体の並列面の両面に貼り合わされた一対の絶縁層と、
長さ方向の端部において前記並列面の一方の面で複数の前記導体が露出した露出面を有し、
金属層を含むシールド部材が樹脂層を介して、前記一方の面の前記絶縁層
を覆うと共に、前記露出面
の中、前記絶縁層に沿う部分を複数本の前記導体にわたって覆うシールドフラットケーブル。
【請求項2】
前記シールド部材が前記樹脂層を含む、請求項1に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項3】
前記一方の面の前記絶縁層を覆う前記シールド部材と
、前記露出面を覆うシールド部材とが一体のシールド部材である、請求項1または2に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項4】
前記一方の面の前記絶縁層を覆う前記シールド部材と
、前記露出面を覆うシールド部材とが別体のシールド部材であり、前記一部の前記露出面を覆う前記シールド部材の一部が、前記一方の面の前記絶縁層を覆う前記シールド部材を、さらに覆う、請求項1または2に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項5】
前記一方の面の前記絶縁層を覆う前記シールド部材の金属層と
、前記露出面を覆う前記シールド部材の金属層とが、電気的に接続されている、請求項4に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項6】
前記一方の面の前記絶縁層を覆う前記樹脂層の厚さと
、前記露出面を覆う前記樹脂層の厚さが異なる、請求項1から5のいずれか1
項に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項7】
前記一方の面の前記絶縁層を覆う前記樹脂層の材料と
、前記露出面を覆う前記樹脂層の材料が異なる、請求項1から6のいずれか1
項に記載のシールドフラットケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルフラットケーブル(FFC)は、CDやDVDプレーヤ等のAV機器、コピー機やプリンタ等のOA機器、その他電子・情報機器の内部配線等の多くの分野で、省スペース化と簡便な接続を目的として用いられている。また、機器の信号周波数が高くなるとノイズの影響が大きくなることから、シールドされたシールドフラットケーブルが用いられる。
【0003】
シールドフラットケーブルのシールドは、例えば、特許文献1に記載されているように、FFCの外側にシールド部材を設けることにより行われる。また、シールドフラットケーブルは、端部にコネクタに接続される端末部を有している。この端末部をプリント基板等に実装されたコネクタに装着することによって、シールドフラットケーブルの信号線と基板の信号線とが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高速伝送を行うためには、外来ノイズの影響を受けないようにシールド部材を設けるだけでなく、シールドフラットケーブルの特性インピーダンスを基板やコネクタのインピーダンスと整合させる必要がある。一般に、シールドフラットケーブルは、長さ方向端部の端末部では、コネクタとの電気的接続のために導体が露出されたり、端末部の強度を確保するために補強板が設けられたりする。このため、シールドフラットケーブルケーブルでは、端末部とそれ以外の部分とでは特性インイーダンスに不整合が生じる。
【0006】
本発明は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、シールドフラットケーブルの端末部での特性インピーダンスの不整合を小さくし、伝送特性の良好なシールドフラットケーブルを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るシールドフラットケーブルは、平行に配列された複数本の導体と、 複数本の該導体の並列面の両面に貼り合わされた一対の絶縁層と、長さ方向の端部において前記並列面の一方の面で複数の前記導体が露出した露出面を有し、金属層を含むシールド部材が樹脂層を介して、前記一方の面の前記絶縁層を覆うと共に、前記露出面の中、前記絶縁層に沿う部分を複数本の前記導体にわたって覆っている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シールドフラットケーブルの端末部での特性インピーダンスの不整合を小さくでき、伝送特性の良好なシールドフラットケーブルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るシールドフラットケーブルの平面図である。
【
図2】
図1の平形導体を含む箇所で長手方向の線分II‐IIに沿った断面図である。
【
図3】
図2の線分III-IIIに沿った断面図である。
【
図4】
図2の線分IV-IVに沿った断面図である。
【
図6】
図2の線分VI-VIに沿った断面図である。
【
図7】導体の露出面までシールド部材を設けた場合と設けない場合の、シールドフラットケーブルの差動インピーダンス(Zdiff)の特性を示す図である。
【
図8】導体の露出面までシールド部材を設けた場合と設けない場合の、シールドフラットケーブルの挿入損失の特性を示す図である。
【
図9】導体の露出面までシールド部材を設けた場合と設けない場合の、シールドフラットケーブルのNEXT(近端漏話減衰量)の特性を示す図である。
【
図10】導体の露出面までシールド部材を設けた場合と設けない場合の、シールドフラットケーブルのFEXT(遠端漏話減衰量)の特性を示す図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係るシールドフラットケーブルの長手方向に沿った断面図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態に係るシールドフラットケーブルの長手方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本願発明の実施形態の説明)
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係るシールドフラットケーブルは、平行に配列された複数本の導体と、複数本の該導体の並列面の両面に貼り合わされた一対の絶縁層と、長さ方向の端部において前記並列面の一方の面で複数の前記導体が露出した露出面を有し、金属層を含むシールド部材が樹脂層を介して、前記一方の面の前記絶縁層を覆うと共に、前記露出面の中、前記絶縁層に沿う部分を複数本の前記導体にわたって覆うシールドフラットケーブルである。この構成により、導体の露出面までシールド部材を設けているため、シールドフラットケーブルの端末部での特性インピーダンスの不整合を小さくでき、伝送特性の良好なシールドフラットケーブルを得ることができる。
【0011】
(2)前記シールド部材が前記樹脂層を含んでよい。この構成により、絶縁層と一部の導体の露出面とにシールド部材を一度に貼り付けることができる。
【0012】
(3)前記一方の面の前記絶縁層を覆う前記シールド部材と、前記露出面を覆うシールド部材とが一体のシールド部材であってよい。この構成により、簡単な構成でシールドフラットケーブルの端末部での特性インピーダンスの不整合を小さくでき、伝送特性の良好なシールドフラットケーブルを得ることができる。
【0013】
(4)前記一方の面の前記絶縁層を覆う前記シールド部材と、前記露出面を覆うシールド部材とが別体のシールド部材であり、前記一部の前記露出面を覆う前記シールド部材の一部が、前記一方の面の前記絶縁層を覆う前記シールド部材を、さらに覆うようにしてもよい。この構成により、一部の前記露出面を覆うシールド部材を別部材としているため、端末部にシールド部材を設ける際の製造上の公差を小さくできる。
【0014】
(5)前記一方の面の前記絶縁層を覆う前記シールド部材の金属層と、前記露出面を覆う前記シールド部材の金属層とが、電気的に接続されてもよい。この構成により、シールドフラットケーブルのシールド特性が向上する。
【0015】
(6)前記一方の面の前記絶縁層を覆う前記樹脂層の厚さと、前記露出面を覆う前記樹脂層の厚さが異なってもよい。この構成により、シールドフラットケーブルの端末部における特性インピーダンスの調整を簡単に行うことができる。
【0016】
(7)前記一方の面の前記絶縁層を覆う前記樹脂層の材料と、前記露出面を覆う樹脂層の材料が異なってもよい。この構成により、シールドフラットケーブルの端末部における特性インピーダンスの調整を簡単に行うことができる。
【0017】
(本願発明の実施形態の詳細)
以下、図面を参照しながら、本発明のシールドフラットケーブルに係る好適な実施形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。なお、本発明はこれらの実施形態での例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内および均等の範囲内におけるすべての変更を含む。また、複数の実施形態について組み合わせが可能である限り、本発明は任意の実施形態を組み合わせたものを含む。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシールドフラットケーブルの平面図であり、
図2は、本発明の第1の実施形態に係るシールドフラットケーブルにおいて、平形導体を含む箇所で長手方向に沿った断面図である。また、
図3~
図6は、それぞれ
図2の線分III-III、線分IV-IV、線分V-V、および、線分VI-VIに沿った断面図である。
【0019】
本実施形態のシールドフラットケーブル100は、複数本の平形導体110、第1の絶縁層120aと第2の絶縁層120bからなる絶縁層120、第1のシールド部材130と第2のシールド部材140、および、補強板150を備えている。本実施形態のシールドフラットケーブル100は、長手方向中央部では、
図3の断面図に示すように、複数の平形導体110、第1の絶縁層120aと第2の絶縁層120b、第1のシールド部材130と第2のシールド部材140を有している。なお、シールドフラットケーブルの柔軟性を向上させるために、第2のシールド部材140を設けない構成としてもよい。
【0020】
シールドフラットケーブル100は、例えば、断面が平形形状でX軸方向に延びる平形導体110をY軸方向に複数本平行に並べ、平形導体110の並列面(XY平面)と直交する方向(Z方向)の両面を表面側(Z軸正方向側、以下同様。)の第1の絶縁層120aと、裏面側(Z軸負方向側、以下同様。)の第2の絶縁層120bにより挟んで被覆したフラットケーブルが用いられる。
【0021】
シールドフラットケーブル100の少なくとも一方の端部には、第1の絶縁層120a、第2の絶縁層120bが設けられておらず、平形導体110が露出したケーブル端末部が形成されている。平形導体110が露出した露出面B(
図2のBの矢印で示す範囲の部分)は、平形導体110の並列面全体に第1の絶縁層120aと第2の絶縁層120bを設けた後に除去するか、あるいは、平形導体110の並列面の露出面B以外の部分に第1の絶縁層120aと第2の絶縁層120bを設けて形成してもよい。そして、本実施形態では、表面側の第1の絶縁層120aと平形導体110の露出面Bの一部を覆うように、第1のシールド部材130が設けられている。
【0022】
ケーブル端末部では、
図4の断面図で示すように、平形導体110の並列面の表面側には、第1の絶縁層120a、第1のシールド部材130が順次重ね合わされ、裏面側には、第2の絶縁層120bと補強板150が順次重ね合わされる。また、ケーブル端末部のさらに接続端子部に近い箇所では、
図5の断面図に示すように、平形導体110の並列面の表面側には、第1のシールド部材130が、また、裏面側には補強板150が配置される。さらに、
図1の露出面A(
図2のAの矢印で示す範囲の部分)で示す接続端子部では、
図6に示すように、平形導体110の並列面の裏面のみに補強板150が配置される。そして、第1のシールド部材130を設けていない平形導体110の露出面Aが、シールドフラットケーブル100をコネクタに接続した際の端子部として機能する。
【0023】
ここで、平形導体110は、例えば、銅箔、錫メッキ軟銅箔等の金属からなり、例えば、厚さが10μm~100μmで、幅が0.2~0.8mm程度であり、ピッチPが0.4~2.0mmの適宜の大きさで配列される。この平形導体110の配列状態は、第1の絶縁層120a、第2の絶縁層120bにより挟まれて保持される。平形導体110は信号伝送用として用いられるが、所定の平形導体110は、基板側のコネクタ端子に接続された際に、接地されてもよい。例えば、平形導体110は、信号ラインをS、接地ラインをGとした場合、並列方向(Y軸方向)に、G-S-S-G-S-S-G-S-S-G・・・のように、2本の信号ラインSと1本の接地ラインGとが繰り返されるように配列されていてもよい。この場合、隣接する2本の信号ラインは差動伝送に用いられる。
【0024】
第1の絶縁層120a、第2の絶縁層120bは、その内面(接合面)に接着層(図示省略)を有する柔軟性に優れた一般的な樹脂フィルムが使用され、例えば、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の汎用性のある樹脂フィルムを用いることができる。この樹脂フィルムの厚さとしては、9μm~100μmのものが用いられる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂等の樹脂材料が挙げられる。なお、これらの樹脂フィルムのうち、電気的特性、機械的特性、コスト等の観点からは、ポリエチレンテレフタレート樹脂の使用が好ましい。
【0025】
また、第1の絶縁層120a、第2の絶縁層120bの接着層としては、樹脂材料からなるものが使用され、例えば、ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂に難燃剤を添加した接着剤などが挙げられる。この接着層は、10μm~150μmの範囲の適宜の厚さで形成される。第1の絶縁層120a、第2の絶縁層120bは、平形導体110を挟んで接着層を向き合わせ、加熱ローラで熱を加えながら接合することにより貼り合わされ一体化される。なお、第1の絶縁層120a、第2の絶縁層120bは、接着層を用いずに、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、あるいはポリフェニレンサルファイド等の単層の樹脂等で形成してもよい。この場合、樹脂の厚さは例えば300μm程度にしてもよい。
【0026】
第1のシールド部材130および第2のシールド部材140は、例えば、全体の厚みが30~90μm程度で、それぞれ金属層130a,140a、樹脂層130b、140b、および、図示しない接着層を有する3層構造からなるもの、あるいは、樹脂層130b、140bが接着性を有するものであれば、それぞれ金属層130a,140aと樹脂層130b、140bを有する2層構造からなるものが用いられる。金属層130a,140aとしては、アルミニウム箔、また、樹脂層130b、140bとしてはポリエチレンテフタレートや低誘電率ポリエチレンを用いることができるが、これらの材料に限ら得ない。そして、表面側の第1のシールド部材130は、金属層130aを外側に樹脂層130bを内側にして、第1の絶縁層120aと平形導体110の一部の露出面を覆うように設けられる。また、裏面側の第2のシールド部材140は、金属層140aを外側に樹脂層140bを内側にして、第2の絶縁層120bを覆うように設けられる。
【0027】
第1のシールド部材130の樹脂層130bと第2のシールド部材140の樹脂層140bは、それらの厚さを調整することによって、シールドフラットケーブル100の特性インピーダンスを調整することができる。さらに、第1のシールド部材130の樹脂層130bは、平形導体110の露出面と第1のシールド部材130の金属層130aとの間を絶縁し、平形導体110間の短絡を防止する機能を果たしている。なお、先述したように、シールドフラットケーブルの柔軟性を向上させるためは、第2のシールド部材140を設けなくてもよい。
【0028】
また、図示していないが、コネクタの端子に接続される接続部を除いて、第1のシールド部材130、第2のシールド部材140と、シールドフラットケーブル100の側面の全面を覆うように、保護層を設けてもよい。保護層は、シールドフラットケーブル100を外部から電気的に絶縁するとともに外力による損傷から保護する。なお、保護層は、一枚の保護樹脂フィルムをシールドフラットケーブル100の表面に巻き付けて形成してもよい。なお、保護層は、シールドフラットケーブル100の用途に応じて、必ずしも設ける必要はない。
【0029】
補強板150は、樹脂製のフィルムからなり、端子部で露出した平形導体110の一方の面(裏面側)に貼り付けられる。補強板150は、コネクタへの着脱が可能なように、シールドフラットケーブル100に強度を持たせている。なお、本実施形態では、平形導体110の裏面側の端部を露出させ、露出面に補強板150を設けているが、裏面側の端部の平形導体110を露出させることなく、第2の絶縁層120bの上から補強板150を設けてもよい。さらに、シールドフラットケーブル100の端末部の強度が十分にある場合は、補強板150を設けなくてもよい。
【0030】
このように、本実施形態では、シールドフラットケーブル100の表面側は、長手方向の端部において、表面側の第1の絶縁層120aに覆われずに平形導体110が露出したケーブル端末部が形成されている。そして、第1のシールド部材130が、表面側の第1の絶縁層120aの全面と平形導体110の露出面Bの一部を一体に覆っている。第1のシールド部材130が覆われていない平形導体110の露出面Aは、シールドフラットケーブル100が図示しないコネクタに装着された際に、コネクタのコンタクト部材と接触する。
【0031】
(伝送特性)
次に、本発明に係るシールドフラットケーブルの伝送特性について説明する。
図7は、第1の実施形態のシールドフラットケーブル100のように導体の露出面までシールド部材を設けた場合と設けない場合の、シールドフラットケーブルの差動インピーダンス(Zdiff)の特性を示す図であり、
図8は、導体の露出面までシールド部材を設けた場合と設けない場合の、シールドフラットケーブルの挿入損失の特性を示す図である。また、
図9は、導体の露出面までシールド部材を設けた場合と設けない場合の、シールドフラットケーブルのNEXT(近端漏話減衰量)の特性を示す図であり、
図10は、導体の露出面までシールド部材を設けた場合と設けない場合の、シールドフラットケーブルのFEXT(遠端漏話減衰量)の特性を示す図である。いずれの図も、導体の露出面までシールド部材を設けた場合の特性を実施例とし、設けない場合の特性を比較例として表している。
【0032】
図7に示す差動インピーダンスについて、約0.6nsより大きい領域がシールドフラットケーブル100の差動インピーダンスであり、それよりも小さい領域がコネクタを含む基板側の差動インピーダンスを示している。導体の露出面までシールド部材を設けない比較例に比べ、導体の露出面までシールド部材を設けた実施例では、差動インピーダンスは、0.6nsより少し小さい箇所で大幅に小さくなっている。この小さくなった箇所がシールドフラットケーブル100の端末部分に該当する。このように、本発明の実施例では、差動ンピーダンスの不整合を大きく改善することができる。したがって、特性インピーダンスについても改善を図ることができる。
【0033】
挿入損失については、
図8に示すように、7GH以上の高周波帯域において、周波数に依存した変動が大幅に改善されている。さらに、近端クロストークについては、
図9に示すように、7~14GHzの周波数帯域において、端部シールド部材を設けない比較例に比べ、導体の露出面までシールド部材を設けた実施例では、大幅に小さくなっている。また、遠端クロストークについても、
図10に示すように、7~13GHzの周波数帯域において、導体の露出面までシールド部材を設けない比較例に比べ、導体の露出面までシールド部材を設けた実施例では、大幅に小さくなっているとともに、そのばらつきも小さくなっている。
【0034】
このように、本発明の実施例では、導体の露出面までシールド部材を設けない場合に比べて、差動インピーダンス、挿入損失、近端クロストーク、および、遠端クロストークの各特性において、大幅な改善が見られた。
【0035】
(第2の実施形態)
図11は、本発明の第2の実施形態に係るシールドフラットケーブルの長手方向に沿った断面図である。第1の実施形態のシールドフラットケーブル100では、表面側の第1の絶縁層120aを覆う第1のシールド部材130と、平形導体110の一部の露出面を覆う第1のシールド部材130とは一体の同じシールド部材を用いたが、第2の実施形態のシールドフラットケーブル101では、表面側の第1の絶縁層120aを覆う第1のシールド部材130とは別体の端部シールド部材160によって、平形導体110の一部の露出面を覆っている。
【0036】
図11に示すように、端部シールド部材160は、第1のシールド部材130と同様に、金属層160aと樹脂層160bを有している。なお、樹脂層160bに接着性がない場合は、樹脂層160b側にさらに接着層が設けられる。端部シールド部材160は、平形導体110の露出面Bの一部を覆うとともに、第1のシールド部材130の端部を覆うように設けられている。端部シールド部材160の金属層160aと樹脂層160bは、それぞれ第1のシールド部材130の金属層130aと樹脂層130bと同じ構成のものであってもよく、また、異なった構成のものを用いてもよい。
【0037】
そして、第2の実施形態では、樹脂層160bの厚さや材料を選択することにより、シールドフラットケーブル101の端末部の特性インピーダンスを調整することができる。また、第1の実施形態では、シールドフラットケーブル100の製造過程において、シールドフラットケーブル100が長い場合は、各部材の長さ方向の公差が大きくなり、第1のシールド部材130を平形導体110の露出面Bの所望の位置に貼り付けることが難しかった。このため、製品による特性インピーダンスの不揃いが生じるおそれがあった。しかし、第2の実施形態では、第1のシールド部材130の長さに関わらず、端部シールド部材160の長さを短くすることができるため、端部シールド部材160を平形導体110の露出面Bの所望の位置に貼り付けることが可能となり、特性インピーダンスが揃ったシールドフラットケーブルを得ることができる。
【0038】
(第3の実施形態)
図12は、本発明の第3の実施形態に係るシールドフラットケーブルの長手方向に沿った断面図である。本実施形態のシールドフラットケーブル102は、第2の実施形態と同様に、表面側の第1の絶縁層120aを覆う第1のシールド部材130と、この第1のシールド部材130とは別体の端部シールド部材160によって、平形導体110の一部の露出面Bを覆う構成としている。そして、端部シールド部材160の金属層160aが第1のシールド部材130の金属層130aと電気的に接続されている。この構成により、第2の実施形態におけるシールドフラットケーブル101と同様の効果に加え、シールド特性の向上を図ることができる。その他の構成については、第2の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0039】
以上、本発明の本実施形態について述べたが、例えば、シールドフラットケーブルの一方の端末部の構成を、第1の実施形態で説明したように、平形導体110の露出面を第1のシールド部材130で覆う構成とし、他方の端末部の構成を第2、第3の実施形態で説明したように、平形導体110の露出面を端部シールド部材160で覆う構成としてもよい。これにより、第1のシールド部材130が長尺となっても、一方の端末部で第1のシールド部材130を平形導体110の露出面の所望の位置に貼り付け、他方の端末部では、平形導体110の露出面の所望の位置に端部シールド部材160を貼り付けることができるため、製造工程での公差に基づくシールドフラットケーブルの特性インピーダンスの不揃いを解消することができる。
【0040】
なお、上記の実施形態では、第1のシールド部材130、第2のシールド部材、および、端部シールド部材160の各シールド部材が、それぞれ、金属層と樹脂層を含むものとして説明したが、第1のシールド部材130、第2のシールド部材、および、端部シールド部材160の各シールド部材が、それぞれ、金属層のみを含み、この金属層が別途樹脂層を介して、絶縁層と一部の導体の露出面を覆うように構成してもよい。シールド部材が金属層と樹脂層を含む場合は、金属層と樹脂層とを同時に貼り付けることが可能であり、シールド部材が金属層を含み別途樹脂層を介して絶縁層と一部の導体の露出面を覆う場合は、金属層と樹脂層とを個別に貼り付けることができる。
【符号の説明】
【0041】
100、101、102…シールドフラットケーブル、110…平形導体、120…絶縁層、120a…第1の絶縁層、120b…第2の絶縁層、130…第1のシールド部材、130a…金属層、130b…樹脂層、140…第2のシールド部材、140a…金属層、140b…樹脂層、150…補強板、160…端部シールド部材、160a…金属層、160b…樹脂層。