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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/809 20180101AFI20220509BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20220509BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B60N2/809
B60N2/64
B60N2/68
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018107041
(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公開番号】P2019209816
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岸田 英義
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011114546(DE,A1)
【文献】実開平04-104945(JP,U)
【文献】米国特許第5348376(US,A)
【文献】特開2015-91687(JP,A)
【文献】特開2016-210374(JP,A)
【文献】米国特許第5769499(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックと、前記シートバックと一体化されたヘッドレストと、前記シートバックを支持するバックフレームと、前記ヘッドレストを支持するヘッドレストフレームと、を備える乗物用シートであって、
前記ヘッドレストフレームは、
上下方向に延伸すると共に、シート幅方向に離間して配置された円筒状の第1ステー及び第2ステーと、
前記第1ステーの外周面の一部を周方向に沿って覆うように、前記第1ステーに固定された第1ブラケットと、
前記第2ステーの外周面の一部を周方向に沿って覆うように、前記第2ステーに固定された第2ブラケットと、
を有し、
前記バックフレームは、前記第1ステーが挿通される第1開口と前記第2ステーが挿通される第2開口とが設けられたアッパパネルを有し、
前記第1開口及び前記第2開口は、それぞれ、多角形状であり、
前記第1ブラケット及び前記第2ブラケットは、それぞれ、前記第1開口内又は前記第2開口内に配置された第1プレート部及び第2プレート部を有し、
前記第1プレート部及び前記第2プレート部は、互いに交差する向きに延伸し、
前記第2プレート部は、前記第1開口又は前記第2開口の縁に固定され
前記第1プレート部及び前記第2プレート部は、それぞれ、前記第1ステー又は前記第2ステーと離間している、乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記第1ブラケットの前記第1プレート部及び前記第2ブラケットの前記第1プレート部は、それぞれ、シート前後方向に延伸し
前記第1プレート部の前記シート前後方向の長さは、前記第1ステー又は前記第2ステーの外径よりも大きい、乗物用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の乗物用シートであって、
前記第1開口及び前記第2開口は、それぞれ、シート幅方向に延伸すると共に、前記第1ステー又は前記第2ステーの後方に位置する後縁を有し、
前記第2プレート部は、前記後縁に固定される、乗物用シート。
【請求項4】
請求項に記載の乗物用シートであって、
前記第1開口及び前記第2開口は、それぞれ、前記第1ステー又は前記第2ステーの前方において前記後縁と平行に延伸すると共に、前記後縁よりもシート幅方向の長さが小さい前縁を有する、乗物用シート。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の乗物用シートであって、
前記第1ブラケット及び前記第2ブラケットは、それぞれ、前記第1開口内又は前記第2開口内に配置されると共に、前記第1プレート部と平行に延伸する第3プレート部をさらに有する、乗物用シート。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の乗物用シートであって、
前記第1ブラケット及び前記第2ブラケットは、それぞれ、前記第1ステー又は前記第2ステーよりも下方まで延伸する、乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートにおいて、ヘッドレストがシートバックに一体化されたハイバックシートでは、ヘッドレストを支持するステーがバックフレームのアッパパネルに固定される(特許文献1参照)。
【0003】
上記ステーは、アッパパネルに設けられた左右2か所の開口に挿通され、溶接によってこれらの開口内でアッパパネルに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第102011114546号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘッドレストを支持するステーは一般に円筒状のパイプで構成される。そのため、2つの開口の縁に溶接される2つの溶接面を、ステーを構成するパイプの加工により形成する必要がある。
【0006】
しかし、ステーの2つの溶接面における平行精度が低いと、ステーが挿入される開口内で溶接面と縁とが離間し、溶接不良が発生するおそれがある。この不具合を避けるためには、厳密な溶接面の精度管理が必要となる。
【0007】
本開示の一局面は、ヘッドレストを支持するステーを容易に、かつ一定の強度でバックフレームに固定できる乗物用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、シートバック(3)と、シートバック(3)と一体化されたヘッドレスト(4)と、シートバック(3)を支持するバックフレーム(5)と、ヘッドレスト(4)を支持するヘッドレストフレーム(6)と、を備える乗物用シート(1)である。ヘッドレストフレーム(6)は、上下方向に延伸すると共に、シート幅方向に離間して配置された円筒状の第1ステー(61)及び第2ステー(62)と、第1ステー(61)の外周面の一部を周方向に沿って覆うように、第1ステー(61)に固定された第1ブラケット(63)と、第2ステー(62)の外周面の一部を周方向に沿って覆うように、第2ステー(62)に固定された第2ブラケット(64)と、を有する。バックフレーム(5)は、第1ステー(61)が挿通される第1開口(51)と第2ステー(62)が挿通される第2開口(52)とが設けられたアッパパネル(5C)を有する。
【0009】
また、第1開口(51)及び第2開口(52)は、それぞれ、多角形状である。第1ブラケット(63)及び第2ブラケット(64)は、それぞれ、第1開口(51)内又は第2開口(52)内に配置された第1プレート部(63A)及び第2プレート部(63B)を有する。第1プレート部(63A)及び第2プレート部(63B)は、互いに交差する向きに延伸する。第2プレート部(63B)は、第1開口(51)又は第2開口(52)の縁に固定される。
【0010】
このような構成によれば、2つのステー(61,62)が、それぞれ、ブラケット(63,64)を介してアッパパネル(5C)の開口(51,52)に固定されるため、ステー(61,62)に固定用の平面を形成する必要がない。また、ステー(61,62)の取り付け時にステー(61,62)の開口(51,52)に対する向きを厳密に調整する必要がない。さらに、ブラケット(63,64)において互いに交差する向きに延伸する第1プレート部(63A)及び第2プレート部(63B)が開口(51,52)内に配置されるため、ステー(61,62)に衝撃が加わった際のステー(61,62)の変形や位置ずれが抑制できる。そのため、ステー(61,62)を容易に、かつ一定の強度でバックフレーム(5)に固定できる。
【0011】
また、ブラケット(63,64)を介してステー(61,62)を固定する構造は、ヘッドレストがシートバックに対して可動なローバックシートの構造と共通するため、ローバックシートと同じ設計思想を用いて、十分な固定強度を有する構造を設計することができる。
【0012】
本開示の一態様では、第1プレート部(63A)及び第2プレート部(63B)は、それぞれ、第1ステー(61)又は第2ステー(62)と離間していてもよい。このような構成によれば、ブラケット(63,64)をステー(61,62)への固定部分と、開口(51,52)への固定部分とに機能分割することができるため、種々の形状のステー(61,62)及び開口(51,52)の組み合わせに対するブラケット(63,64)の設計変更が容易となる。
【0013】
本開示の一態様では、第1ブラケット(63)及び第2ブラケット(64)は、それぞれ、シート前後方向に延伸するカバー部(63A)を有してもよい。カバー部(63A)のシート前後方向の長さは、第1ステー(61)又は第2ステー(62)の外径よりも大きくてもよい。このような構成によれば、ステー(61,62)のシート幅方向の衝撃に対する耐性を高めることができる。
【0014】
本開示の一態様では、カバー部(63A)は、第1開口(51)内又は第2開口(52)内に配置されてもよい。このような構成によれば、ステー(61,62)のシート幅方向の衝撃に対する耐性をさらに高めることができる。
【0015】
本開示の一態様では、第1開口(51)及び第2開口(52)は、それぞれ、シート幅方向に延伸すると共に、第1ステー(61)又は第2ステー(62)の後方に位置する後縁(51A)を有してもよい。第2プレート部(63B)は、後縁(51A)に固定されてもよい。このような構成によれば、乗物用シート(1)に前方から衝撃が加わった際のヘッドレストフレーム(6)の変位を抑えることができる。
【0016】
本開示の一態様では、第1開口(51)及び第2開口(52)は、それぞれ、第1ステー(61)又は第2ステー(62)の前方において後縁(51A)と平行に延伸すると共に、後縁(51A)よりもシート幅方向の長さが小さい前縁(51B)を有してもよい。このような構成によれば、アッパパネル(5C)の強度を確保しつつ、ステー(61,62)とアッパパネル(5C)との固定部分である後縁(51A)の長さを確保することができる。
【0017】
本開示の一態様では、第1ブラケット(63)及び第2ブラケット(64)は、それぞれ、第1開口(51)内又は第2開口(52)内に配置されると共に、第1プレート部(63A)と平行に延伸する第3プレート部(63C)をさらに有してもよい。このような構成によれば、衝撃が加わった際のステー(61,62)の変形や位置ずれをより確実に抑えられる。
【0018】
本開示の一態様では、第1ブラケット(63)及び第2ブラケット(64)は、それぞれ、第1ステー(61)又は第2ステー(62)よりも下方まで延伸してもよい。このような構成によれば、乗物用シート(1)に衝撃が加わった際に、ステー(61,62)の先端が他の部材等に衝突することを抑制できる。
【0019】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態における乗物用シートを示す模式的な斜視図である。
図2図2は、図1の乗物用シートのアッパパネルとヘッドレストフレームとを示す模式的な斜視図である。
図3図3Aは、図1の乗物用シートのヘッドレストフレームを示す模式的な斜視図であり、図3Bは、図1の乗物用シートのヘッドレストフレームを示す模式的な正面図である。
図4図4Aは、図1のIVA-IVA線での模式的な断面図であり、図4Bは、図1のIVB-IVB線での模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用シート1は、シートクッション2と、シートバック3と、ヘッドレスト4と、シートバック3を支持するバックフレーム5と、ヘッドレスト4を支持するヘッドレストフレーム6とを備える。
【0022】
シートクッション2は、着席者の臀部等を支持するための部位である。シートバック3は、着席者の背部を支持するための部位であり、シートクッション2に対してシート前後方向に揺動可能に構成される。ヘッドレスト4は、着席者の頭部を支持するための部位である。
【0023】
本実施形態の乗物用シート1は、乗用車の座席シートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、乗物用シート1を乗物(つまり乗用車)に組み付けた状態における方向を意味する。また、本実施形態では、シート幅方向は、乗物の左右方向に一致し、シート前方は、乗物の前方に一致する。
【0024】
<バックフレーム>
バックフレーム5は、図1に示すように、第1サイドフレーム5Aと、第2サイドフレーム5Bと、アッパパネル5Cと、ロアフレーム5Dとを有する。
【0025】
(サイドフレーム)
第1サイドフレーム5A及び第2サイドフレーム5Bは、それぞれ上下方向に延伸すると共に、左右方向に離間して配設されるパネル状の部材である。
【0026】
(ロアフレーム)
ロアフレーム5Dは、左右方向に延伸し、第1サイドフレーム5A及び第2サイドフレーム5Bの下部を連結するパネル状の部材である。なお、ロアフレーム5Dは、ワイヤ又はパイプで構成されてもよい。
【0027】
(アッパパネル)
アッパパネル5Cは、左右方向に延伸し、第1サイドフレーム5A及び第2サイドフレーム5Bの上部を連結するパネル状の部材である。
【0028】
アッパパネル5Cは、図2に示すように、左右方向に延伸する上部プレート50Aと、上部プレート50Aの下方に配置され、左右方向に延伸する下部プレート50Bと、上部プレート50Aと下部プレート50Bとを上下方向に連結する連結プレート50Cとを有する。
【0029】
上部プレート50Aの板面は、上下方向と交差している。上部プレート50Aには、後述する第1ステー61が挿通される第1上部開口51と、第2ステー62が挿通される第2上部開口52とが設けられている。
【0030】
下部プレート50Bの板面は、上下方向と交差している。下部プレート50Bは、上部プレート50Aと平行に配置されている。下部プレート50Bには、後述する第1ステー61が挿通される第1下部開口53と、第2ステー62が挿通される第2下部開口54とが設けられている。
【0031】
第1上部開口51と第1下部開口53とは、上下方向に離間し、かつ、上下方向に重なる位置に設けられている。第2上部開口52と第2下部開口54との位置関係も同様である。
【0032】
<ヘッドレストフレーム>
ヘッドレストフレーム6は、図3A,3Bに示すように、第1ステー61と、第2ステー62と、第1ブラケット63と、第2ブラケット64と、連結部65とを有する。
【0033】
(ステー)
第1ステー61及び第2ステー62は、それぞれ上下方向に延伸し、左右方向に離間して配置された円筒状のパイプである。第1ステー61は、第2ステー62に対し右側に配置されている。第1ステー61及び第2ステー62は、同径である。
【0034】
第1ステー61及び第2ステー62の外径は軸方向に沿って一定である。また、第1ステー61及び第2ステー62は、それぞれ、直管状(つまり軸が直線状)のストレート部61A,62Aを有する。
【0035】
第1ステー61及び第2ステー62の上端部は、連結部65によって連結されている。連結部65は、第1ステー61及び第2ステー62と同径のパイプによって構成され、上方に凸となるようにU字状に湾曲している。したがって、第1ステー61及び第2ステー62は、連結部65と共に一体化されており、一本のパイプから構成されている。
【0036】
(ブラケット)
第1ブラケット63は、第1ステー61の外周面の一部を周方向に沿って覆うように、第1ステー61に固定されている。第1ブラケット63は、第1ステー61と共に、アッパパネル5Cを上下方向に貫通している。
【0037】
第1ブラケット63は、第1ステー61のストレート部61Aに対し、後側及び幅方向両側を覆うように固定されている。つまり、第1ブラケット63の上方から視た形状(つまり上下方向に垂直な断面形状)は、前側が開放したU字状である。
【0038】
第1ブラケット63は、第1上部開口51内に配置される第1プレート部63A、第2プレート部63B、及び第3プレート部63Cと、第1下部開口53内に配置される第4プレート部63E、第5プレート部63F、及び第6プレート部63Gと、上端部63Hと、中間部63Iと、下端部63Jとを有する。
【0039】
第1プレート部63Aは、第1ステー61の左側(つまりシート幅方向の内側)に配置され、前後方向に延伸する平板状の部位である。第1プレート部63Aは、第1ステー61と離間しており、第1ステー61に固定されていない。
【0040】
第1プレート部63Aの前端は、第1ステー61よりも前方に位置する。つまり、第1プレート部63Aは、前後方向の長さが第1ステー61の外径よりも大きいカバー部を構成している。換言すれば、第1プレート部63Aは、第1上部開口51内に配置されたカバー部である。
【0041】
第2プレート部63Bは、第1ステー61の後方に配置され、第1プレート部63Aの後端から、右側(つまりシート幅方向の外側)に向かって延伸する平板状の部位である。つまり、第2プレート部63Bは、第1プレート部63Aと交差する向き(具体的には、直交する向き)に延伸している。
【0042】
第2プレート部63Bは、第1ステー61と離間しており、第1ステー61に固定されていない。第2プレート部63Bの左右方向の長さは、第1ステー61の外径よりも大きい。
【0043】
第3プレート部63Cは、第1ステー61の右側に配置され、第2プレート部63Bの右側の端から、前後方向に延伸する平板状の部位である。第3プレート部63Cは、第1ステー61と離間しており、第1ステー61に固定されていない。
【0044】
第3プレート部63Cは、第1プレート部63Aと平行に延伸している。第3プレート部63Cの前端は、左右方向から視て第1ステー61と重なっている。つまり、第3プレート部63Cの前後方向の長さは、第1ステー61の外径よりも小さい。なお、本実施形態では、第3プレート部63Cの前端は、第1ステー61の中心軸よりも前方に位置している。
【0045】
第4プレート部63Eは、第1プレート部63Aよりも下方に設けられ、第1プレート部63Aと同じ形状を有する。第5プレート部63Fは、第2プレート部63Bよりも下方に設けられ、第2プレート部63Bと同じ形状を有する。第6プレート部63Gは、第3プレート部63Cよりも下方に設けられ、第3プレート部63Cと同じ形状を有する。
【0046】
上端部63Hは、第1プレート部63A、第2プレート部63B、及び第3プレート部63Cの上方に設けられている。つまり、上端部63Hは、第1上部開口51よりも上方に位置する。
【0047】
上端部63Hは、第1ステー61を後方、右方及び左方の3方から囲っている。上端部63Hは、第1ステー61の少なくとも右側部及び左側部に、例えば上下方向に沿った溶接によって固定されている。
【0048】
中間部63Iは、第1プレート部63A、第2プレート部63B、及び第3プレート部63Cと、第4プレート部63E、第5プレート部63F、及び第6プレート部63Gとの間に設けられている。つまり、中間部63Iは、第1上部開口51と第1下部開口53との間に位置する。
【0049】
中間部63Iは、第1ステー61を後方、右方及び左方の3方から囲っている。ただし、中間部63Iは、第1ステー61の左側部及び右側部に当接しているが、第1ステー61には固定されていない。
【0050】
下端部63Jは、第4プレート部63E、第5プレート部63F、及び第6プレート部63Gの下方に設けられている。つまり、下端部63Jは、第1上部開口51よりも下方に位置する。
【0051】
下端部63Jは、第1ステー61を後方、右方及び左方の3方から囲っている。下端部63Jは、第1ステー61の少なくとも右側部及び左側部に、例えば上下方向に沿った溶接によって固定されている。
【0052】
また、下端部63Jは、第1ステー61よりも下方に突出する先端部63Kを有する。つまり、下端部63Jは、第1ステー61よりも下方まで延伸している。先端部63Kは、下側に凸となる半球状に形成されており、他の部材と衝突した際の衝撃を低減する。
【0053】
第1ブラケット63は、上端部63Hと、第1プレート部63A、第2プレート部63B、及び第3プレート部63Cとの接続部分において、下方に向かうに連れて第1ステー61からの離間距離が大きくなるように、前後方向及び左右方向に拡幅している。
【0054】
また、第1ブラケット63は、第1プレート部63A、第2プレート部63B、及び第3プレート部63Cと、中間部63Iとの接続部分において、下方に向かうに連れて左右方向の幅が小さくなり、中間部63Iと、第4プレート部63E、第5プレート部63F、及び第6プレート部63Gとの接続部分において、下方に向かうに連れて左右方向に拡幅している。
【0055】
さらに、第1ブラケット63は、第4プレート部63E、第5プレート部63F、及び第6プレート部63Gと、下端部63Jとの接続部分において、下方に向かうに連れて前後方向及び左右方向の幅が小さくなっている。
【0056】
第2ブラケット64は、第2ステー62の外周面の一部を周方向に沿って覆うように、第2ステー62に固定されている。第2ブラケット64は、第1ブラケット63を左右反転したものである。第2ブラケット64は、第1ブラケット63と同様、上端部63H及び下端部63Jにおいて、第2ステー62に例えば溶接によって固定されている。第2ブラケット64は、第2ステー62と共に、アッパパネル5Cを上下方向に貫通している。
【0057】
なお、以下の手順によって、ステー61,62と、ブラケット63,64と、アッパパネル5Cとを固定することで、効率よく乗物用シート1の組立を行うことができる。まず、第1ブラケット63及び第2ブラケット64を各開口に挿通し、アッパパネル5Cに固定する。その後、第1ブラケット63及び第2ブラケット64の内側に第1ステー61及び第2ステー62を挿通し、各ブラケットと各ステーとを固定する。
【0058】
(開口とブラケットとの位置関係)
図4Aに示すように、第1上部開口51は、後縁51Aと、前縁51Bと、第1側縁51Cと、第2側縁51Dとを有する。
【0059】
後縁51Aは、左右方向に(具体的には前後方向と垂直な方向に)延伸すると共に、第1ステー61の後方に位置している。前縁51Bは、左右方向に延伸すると共に、第1ステー61の前方に配置している。前縁51Bは、後縁51Aと平行に配置されると共に、後縁51Aよりも左右方向の長さが小さい。また、前縁51Bの左右方向の長さは、第1ステー61の外形よりも大きい。
【0060】
第1側縁51Cは、第1ステー61の左側(つまり、第1ステー61よりもシート幅方向の内側)に位置し、後縁51Aと前縁51Bとを連結している。第1側縁51Cは、前後方向に(具体的には、後縁51A及び前縁51Bと垂直に)延伸している。
【0061】
第2側縁51Dは、第1ステー61の右側(つまり、第1ステー61よりもシート幅方向の外側)に位置し、後縁51Aと前縁51Bとを連結している。第2側縁51Dは、前後方向に対し傾斜している。
【0062】
第1上部開口51は、後縁51Aを下底、前縁51Bを上底、第1側縁51C及び第2側縁51Dを脚とする台形状である。なお、第1上部開口51の角部は面取りによって丸みを帯びている。
【0063】
第1上部開口51内には、第1ステー61のストレート部61Aに加えて、第1ブラケット63の第1プレート部63A、第2プレート部63B、及び第3プレート部63Cが配置されている。
【0064】
本実施形態では、第2プレート部63Bが第1上部開口51の後縁51Aに例えば溶接によって固定されている。第1プレート部63A及び第3プレート部63Cは、それぞれ、後縁51Aと垂直に延伸し、第1上部開口51の縁からは離間している。つまり、第1プレート部63A及び第3プレート部63Cは、第1上部開口51の縁に固定されていない。
【0065】
第1上部開口51内において、第1ステー61と第1ブラケット63とは固定されていない。また、第1上部開口51の前縁51Bと、第1ステー61との間には、第1ブラケット63は配置されていない。つまり、第1ステー61は、左側全体と、後側全体と、右側の一部とが第1ブラケット63によって囲まれている。
【0066】
第2上部開口52は、図4Aに示すように、第1上部開口51を左右方向に反転させた形状を有する。また、図4Bに示すように、第1下部開口53は、第1上部開口51と同じ形状を有し、第2下部開口54は、第2上部開口52と同じ形状を有する。
【0067】
第1下部開口53と第1ブラケット63との位置関係は、第1上部開口51と第1ブラケット63との位置関係において、第1プレート部63A、第2プレート部63B、及び第3プレート部63Cを第4プレート部63E、第5プレート部63F、及び第6プレート部63Gに置き換えたものである。
【0068】
また、第2上部開口52と第2ブラケット64との位置関係、及び第2下部開口54と第2ブラケット64との位置関係は、それぞれ、第1上部開口51と第1ブラケット63との位置関係、及び第1下部開口53と第1ブラケット63との位置関係を左右反転させたものである。
【0069】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)2つのステー61,62が、それぞれ、ブラケット63,64を介してアッパパネル5Cの上部開口51,52及び下部開口53,54に固定されるため、ステー61,62に固定用の平面を形成する必要がない。また、ステー61,62の取り付け時にステー61,62の上部開口51,52及び下部開口53,54に対する向きを厳密に調整する必要がない。さらに、ブラケット63,64において互いに交差する向きに延伸する第1プレート部63A及び第2プレート部63Bが上部開口51,52及び下部開口53,54内に配置されるため、ステー61,62に衝撃が加わった際のステー61,62の変形や位置ずれが抑制できる。そのため、ステー61,62を容易に、かつ一定の強度でバックフレーム5に固定できる。
【0070】
(1b)ブラケット63,64を介してステー61,62を固定する構造は、ローバックシートの構造と共通するため、ローバックシートと同じ設計思想を用いて、十分な固定強度を有する固定構造を設計することができる。
【0071】
(1c)第1プレート部63A、第2プレート部63B、第3プレート部63C、第4プレート部63E、第5プレート部63F、及び第6プレート部63Gがステー61,62から離間していることで、ブラケット63,64をステー61,62への固定部分と、上部開口51,52及び下部開口53,54への固定部分とに機能分割することができる。その結果、種々の形状のステー61,62及び上部開口51,52及び下部開口53,54組み合わせに対するブラケット63,64の設計変更が容易となる。
【0072】
(1d)第1プレート部(つまりカバー部)63Aのシート前後方向の長さがステー61,62の外径よりも大きいため、ステー61,62のシート幅方向の衝撃に対する耐性を高めることができる。
【0073】
(1e)第2プレート部63Bが、上部開口51,52及び下部開口53,54の後縁51Aに固定されることで、乗物用シート1に前方から衝撃が加わった際のヘッドレストフレーム6の変位を抑えることができる。
【0074】
(1f)上部開口51,52及び下部開口53,54が後縁51Aよりもシート幅方向の長さが小さい前縁51Bを有することで、アッパパネル5Cの強度を確保しつつ、ステー61,62とアッパパネル5Cとの固定部分である後縁51Aの長さ(例えば溶接長)を確保することができる。
【0075】
(1g)ブラケット63,64が第1プレート部63Aと平行に延伸する第3プレート部63Cを有することで、衝撃が加わった際のステー61,62の変形や位置ずれをより確実に抑えられる。
【0076】
(1h)ブラケット63,64がそれぞれステー61,62よりも下方まで延伸することで、乗物用シート1に衝撃が加わった際に、ステー61,62の先端が他の部材等に衝突することを抑制できる。
【0077】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0078】
(2a)上記実施形態の乗物用シート1において、第1プレート部63A、第2プレート部63B、第3プレート部63C、第4プレート部63E、第5プレート部63F、及び第6プレート部63Gは、ステー61,62に当接していてもよい。また、これらのプレート部は、ステー61,62に固定されていてもよい。そのため、ブラケット63,64は、前後方向及び左右方向の幅が上下方向に沿って一定であってもよい。
【0079】
(2b)上記実施形態の乗物用シート1において、アッパパネル5Cは、上部開口51,52のみを有してもよいし、下部開口53,54のみを有してもよい。また、アッパパネル5Cは、上下方向に重なる位置に設けられた3つ以上の開口を有してもよい。
【0080】
(2c)上記実施形態の乗物用シート1において、第1プレート部63Aの前後方向の長さは、ステー61,62の外径以下であってもよい。また、ブラケット63,64は、上端部63H、中間部63I、及び下端部63Jのいずれかに設けられると共に、シート前後方向の長さがステー61,62の外径よりも大きいカバー部を有してもよい。ただし、ブラケット63,64は、必ずしもカバー部を有しなくてもよい。
【0081】
(2d)上記実施形態の乗物用シート1において、第2プレート部63B及び第5プレート部63Fは、上部開口51,52及び下部開口53,54の後縁51A以外の縁に固定されてもよい。また、上部開口51,52及び下部開口53,54は、必ずしも台形状である必要はなく、任意の多角形状とすることができる。さらに、第2プレート部63B及び第5プレート部63F以外のプレート部が各開口の縁に固定されてもよい。
【0082】
(2e)上記実施形態の乗物用シート1において、ブラケット63,64は、必ずしも第3プレート部63C及び第6プレート部63Gを有しなくてもよい。
(2f)上記実施形態の乗物用シート1において、ブラケット63,64は、必ずしもステー61,62よりも下方まで延伸しなくてもよい。
【0083】
(2g)上記実施形態の乗物用シート1は、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用できる。
【0084】
(2h)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0085】
1…乗物用シート、2…シートクッション、3…シートバック、4…ヘッドレスト、
5…バックフレーム、5A,5B…サイドフレーム、5C…アッパパネル、
5D…ロアフレーム、6…ヘッドレストフレーム、51…第1上部開口、
51A…後縁、51B…前縁、51C,51D…側縁、52…第2上部開口、
53…第1下部開口、54…第2下部開口、61…第1ステー、
61A…ストレート部、62…第2ステー、62A…ストレート部、
63…第1ブラケット、63A…第1プレート部、63B…第2プレート部、
63C…第3プレート部、63E…第4プレート部、63F…第5プレート部、
63G…第6プレート部、63H…上端部、63I…中間部、63J…下端部、
63K…先端部、64…第2ブラケット、65…連結部。
図1
図2
図3
図4