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  • 特許-トナー及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】トナー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20220509BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G03G9/097 371
G03G9/097 375
G03G9/08 381
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018109270
(22)【出願日】2018-06-07
(65)【公開番号】P2019211684
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】駒田 良太郎
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-151412(JP,A)
【文献】特開2018-054891(JP,A)
【文献】特開2018-084678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を含むトナーであって、
前記外添剤は、シリカ粒子を含み、
前記シリカ粒子は、シリカ基体と、前記シリカ基体を被覆する第1表面処理層と、前記第1表面処理層を被覆する第2表面処理層とを有し、
前記第1表面処理層は、カルボキシル変性シリコーンオイルを含有し、
前記第2表面処理層は、下記一般式(I)で表される第1繰り返し単位と、下記一般式(II)で表される第2繰り返し単位とを有する第1共重合体を含有し、
ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定される前記シリカ粒子における未開環オキサゾリン基の含有割合は、1μmol/g以上500μmol/g以下である、トナー。
【化1】
(前記一般式(I)中、R1は、水素原子、又はフェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表わし、
前記一般式(II)中、R2は、水素原子、又はフェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表し、*は、前記カルボキシル変性シリコーンオイルに含まれる原子との結合部位を表す。)
【請求項2】
前記シリカ粒子の含有量は、前記トナー母粒子100質量部に対し、0.5質量部以上5質量部以下である、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記シリカ粒子における前記未開環オキサゾリン基の含有割合は、20μmol/g以上460μmol/g以下である、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記第1共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する第3繰り返し単位を更に有する、請求項1~3の何れか一項に記載のトナー。
【請求項5】
トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を含むトナーの製造方法であって、
シリカ基体をカルボキシル変性シリコーンオイルにより表面処理する工程と、
前記カルボキシル変性シリコーンオイルにより表面処理された前記シリカ基体を、下記一般式(I)で表される第1繰り返し単位を含む第2共重合体で表面処理することにより、シリカ粒子を調製する工程と、
前記シリカ粒子を含む前記外添剤を前記トナー母粒子の表面に付着させる工程とを備え、
ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定される前記シリカ粒子における未開環オキサゾリン基の含有割合は、1μmol/g以上500μmol/g以下である、トナーの製造方法。
【化2】
(前記一般式(I)中、R1は、水素原子、又はフェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トナー(特に静電潜像現像用トナー)においては、流動性及び所望の帯電特性(例えば正帯電特性)の付与を目的として、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させることがある。このような外添剤として、シリカ基体をシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理することで形成されるシリカ粒子が提案されている(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-321690号公報
【文献】特開2010-198004号公報
【文献】特開2012-203360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1~3に記載のシリカ粒子を用いたトナーは、かぶり抑制、耐熱ストレス性及び帯電安定性において改善の余地があることが本発明者の検討により判明した。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、かぶり抑制、耐熱ストレス性及び帯電安定性に優れるトナー及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトナーは、トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を含む。前記外添剤は、シリカ粒子を含む。前記シリカ粒子は、シリカ基体と、前記シリカ基体を被覆する第1表面処理層と、前記第1表面処理層を被覆する第2表面処理層とを有する。前記第1表面処理層は、カルボキシル変性シリコーンオイルを含有する。前記第2表面処理層は、下記一般式(I)で表される第1繰り返し単位と、下記一般式(II)で表される第2繰り返し単位とを有する第1共重合体を含有する。ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定される前記シリカ粒子における未開環オキサゾリン基の含有割合は、1μmol/g以上500μmol/g以下である。
【0007】
【化1】
【0008】
前記一般式(I)中、R1は、水素原子、又はフェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表わす。
【0009】
前記一般式(II)中、R2は、水素原子、又はフェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表す。*は、前記カルボキシル変性シリコーンオイルに含まれる原子との結合部位を表す。
【0010】
本発明のトナーの製造方法は、トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を含むトナーの製造方法であって、シリカ基体をカルボキシル変性シリコーンオイルにより表面処理する工程と、前記カルボキシル変性シリコーンオイルにより表面処理された前記シリカ基体を、下記一般式(I)で表される第1繰り返し単位を含む第2共重合体で表面処理することにより、シリカ粒子を調製する工程と、前記シリカ粒子を含む前記外添剤を前記トナー母粒子の表面に付着させる工程とを備える。ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定される前記シリカ粒子における未開環オキサゾリン基の含有割合は、1μmol/g以上500μmol/g以下である。
【0011】
【化2】
【0012】
前記一般式(I)中、R1は、水素原子、又はフェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表す。
【発明の効果】
【0013】
本発明のトナー及びその製造方法は、かぶり抑制、耐熱ストレス性及び帯電安定性に優れるトナーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るトナーの一例を示す模式的断面図である。
図2図1のトナーの備える外添剤に含まれるシリカ粒子の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、トナーは、トナー粒子の集合体(例えば粉体)である。外添剤は、外添剤粒子の集合体(例えば粉体)である。粉体(より具体的には、トナー粒子の粉体、外添剤粒子の粉体等)に関する評価結果(形状、物性等を示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から粒子を相当数選び取って、それら粒子の各々について測定した値の個数平均である。
【0016】
粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA-950」)を用いて測定されたメディアン径である。
【0017】
粉体の個数平均1次粒子径は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡を用いて測定した1次粒子の円相当径(ヘイウッド径:1次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。粉体の個数平均1次粒子径は、例えば100個の1次粒子の円相当径の個数平均値である。なお、粒子の個数平均1次粒子径は、特に断りがない限り、粉体中の粒子の個数平均1次粒子径を指す。
【0018】
帯電性は、何ら規定していなければ、摩擦帯電における帯電性を意味する。摩擦帯電における正帯電性の強さ(又は負帯電性の強さ)は、周知の帯電列などで確認できる。例えばトナーは、日本画像学会から提供される標準キャリア(負帯電性トナー用標準キャリア:N-01、正帯電性トナー用標準キャリア:P-01)と混ぜて攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えば帯電量測定装置(Q/mメーター)で測定対象の帯電量を測定し、摩擦帯電の前後での帯電量の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。
【0019】
軟化点(Tm)は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT-500D」)を用いて測定した値である。高化式フローテスターで測定されたS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)において、「(ベースラインストローク値+最大ストローク値)/2」となる温度が、Tm(軟化点)に相当する。
【0020】
ガラス転移点(Tg)は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC-6220」)を用いて「JIS(日本工業規格)K7121-2012」に従って測定した値である。示差走査熱量計で測定された吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)において、ガラス転移に起因する変曲点の温度(詳しくは、ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点の温度)が、Tg(ガラス転移点)に相当する。
【0021】
材料の「主成分」は、何ら規定していなければ、質量基準で、その材料に最も多く含まれる成分を意味する。
【0022】
疎水性の強さ(又は親水性の強さ)は、例えば水滴の接触角(水の濡れ易さ)で表すことができる。水滴の接触角が大きいほど疎水性が強い。
【0023】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
【0024】
炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上10以下のアルカンジイル基は、何ら規定していなければ、各々次の意味である。炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上10以下のアルカンジイル基は、各々、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上10以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、直鎖状又は分枝鎖状のヘキシル基、直鎖状又は分枝鎖状のヘプチル基、直鎖状又は分枝鎖状のオクチル基、直鎖状又は分枝鎖状のノニル基、及び直鎖状又は分枝鎖状のデシル基が挙げられる。炭素原子数1以上5以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上3以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上10以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数1以上5以下の基又は炭素原子数が1以上3以下の基である。炭素原子数1以上10以下のアルカンジイル基としては、例えば、炭素原子数1以上10以下のアルキル基の例として述べた基から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0025】
<第1実施形態:トナー>
本発明の第1実施形態は、トナーに関する。第1実施形態に係るトナーは、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を含む。外添剤は、シリカ粒子を含む。シリカ粒子は、シリカ基体と、シリカ基体を被覆する第1表面処理層と、第1表面処理層を被覆する第2表面処理層とを有する。第1表面処理層は、カルボキシル変性シリコーンオイルを含有する。第2表面処理層は、下記一般式(I)で表される第1繰り返し単位と、下記一般式(II)で表される第2繰り返し単位とを有する第1共重合体を含有する。ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定されるシリカ粒子における未開環オキサゾリン基の含有割合は、1μmol/g以上500μmol/g以下である。
【0026】
【化3】
【0027】
一般式(I)中、R1は、水素原子、又はフェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表す。
【0028】
一般式(II)中、R2は、水素原子、又はフェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表す。*は、カルボキシル変性シリコーンオイルに含まれる原子との結合部位を表す。
【0029】
1及びR2は、各々独立に、水素原子、メチル基、エチル基又はi-プロピル基を表すことが好ましい。
【0030】
[トナー粒子]
図1は、第1実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子1の一例を示す。図1に示すトナー粒子1は、トナー母粒子2と、トナー母粒子2の表面に付着した外添剤3とを備える。外添剤3は、シリカ粒子を含む。即ち、図1に示す複数の外添剤3のうち、少なくとも一部はシリカ粒子である。トナー母粒子2は、トナーコア2aと、トナーコア2aを被覆するシェル層2bとを有する。但し、第1実施形態に係るトナーの含むトナー粒子は、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備える限り、図1に示すトナー粒子1とは異なる構造であってもよい。
【0031】
図2は、外添剤3が含むシリカ粒子の一例を示す。シリカ粒子は、シリカ基体4と、シリカ基体4を被覆する第1表面処理層5と、第1表面処理層5を被覆する第2表面処理層6とを有する。第1表面処理層5は、カルボキシル変性シリコーンオイルを含有する。第2表面処理層6は、上記一般式(I)で表される第1繰り返し単位と、上記一般式(II)で表される第2繰り返し単位とを有する第1共重合体を含有する。ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定されるシリカ粒子における未開環オキサゾリン基の含有割合は、1μmol/g以上500μmol/g以下である。
【0032】
第1実施形態に係るトナーは、上述の構成を備えることにより、かぶり抑制、耐熱ストレス性及び帯電安定性に優れる。その理由を以下に説明する。シリカ粒子は、第2表面処理層6に含有される第1共重合体に、比較的強い正帯電性を示す未開環オキサゾリン基が特定量含まれている。シリカ粒子は、この未開環オキサゾリン基によってシリカ基体のシラノール基に起因する親水性及び負帯電性が打ち消されているため、トナーの耐熱ストレス性及び帯電特性(特に正帯電性)を損なうことなく流動性を付与できる。また、シリカ粒子は、シリカ基体4の主成分であるシリカと、第1表面処理層5に含有されるカルボキシル変性シリコーンオイルとが親和性に優れ、かつ第1表面処理層5に含有されるカルボキシル変性シリコーンオイルと第2表面処理層6に含有される第1共重合体とが架橋している。このように、シリカ粒子は、シリカ基体4及び第1表面処理層5の密着性と、第1表面処理層5及び第2表面処理層6の密着性とがそれぞれ優れているため、第2表面処理層6が剥離し難い。そのため、第1実施形態に係るトナーは、例えば低濃度印字などによってストレスを受けてもシリカ粒子からの第2表面処理層6の剥離を抑制し、帯電特性を維持することができる。その結果、第1実施形態に係るトナーは、帯電電位の変化に起因するかぶりを抑制できる。
【0033】
また、未開環オキサゾリン重合体は、シリカに含まれるシラノール基よりも、カルボキシル基と反応し易い。そのため、第1表面処理層5を介して第2表面処理層6でシリカ基体4を被覆することで、第2表面処理層6でシリカ基体4を直接被覆するよりも、シリカ粒子からの第2表面処理層6の剥離をより効果的に抑制することができる。
【0034】
第1実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。第1実施形態に係るトナーは、1成分現像剤として使用してもよい。第1実施形態に係るトナーは、混合装置(例えば、ボールミル)を用いてキャリアと混合して2成分現像剤として使用してもよい。第1実施形態に係るトナーは、1成分現像剤として使用する場合、現像装置内において現像スリーブ又はトナー帯電部材と摩擦することで正に帯電する。トナー帯電部材としては、例えば、ドクターブレードが挙げられる。第1実施形態に係るトナーは、2成分現像剤を構成する場合、現像装置内においてキャリアと摩擦することで正帯電する。
【0035】
以上、第1実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子1の詳細について、図1及び図2を基に説明した。以下、トナー粒子の詳細を更に説明する。なお、以下に記載する各成分については、特に断りのない限り、1種単独でも用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
[外添剤]
外添剤は、シリカ粒子を含む。外添剤は、シリカ粒子以外の他の外添剤を更に含んでもよい。外添剤粒子の個数平均1次粒子径としては、5nm以上50nm以下が好ましく、10nm以上35nm以下がより好ましい。
【0037】
(シリカ粒子)
シリカ粒子は、シリカ基体と、シリカ基体を被覆する第1表面処理層と、第1表面処理層を被覆する第2表面処理層とを有する。シリカ粒子における未開環オキサゾリン基の含有割合としては、1μmol以上/g以上500μmol/g以下であり、20μmol/g以上460μmol/g以下が好ましく、20μmol/g以上420μmol/g以下がより好ましく、20μmol/g以上350μmol/g以下が更に好ましい。
【0038】
〔シリカ基体〕
シリカ基体としては、特に限定されないが、例えば親水性ヒュームドシリカを用いることができる。シリカ基体の比表面積としては、例えば70m2/g以上120m2/g以下とすることができる。
【0039】
(第1表面処理層)
第1表面処理層は、カルボキシル変性シリコーンオイルを含有する。第1表面処理層におけるカルボキシル変性シリコーンオイルの含有割合としては、80質量%以上が好ましく、95質量%がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0040】
カルボキシル変性シリコーンオイルは、側鎖にカルボキシル基を有してもよく、片末端にカルボキシル基を有してもよく、両末端にカルボキシル基を有してもよい。
【0041】
側鎖にカルボキシル基を有するカルボキシル変性シリコーンオイルとしては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。但し、下記一般式(1)で表される化合物は、分子中に含まれるカルボキシル基のうち一部又は全部が後述する第1共重合体と架橋されていてもよい。
【0042】
【化4】
【0043】
一般式(1)中、Q1~Q9は、各々独立に、アルキル基を表す。X1は、-L1COOHを表す。L1は、アルカンジイル基を表す。n1及びn2は、各々独立に、1以上の整数を表す。
【0044】
1~Q9は、各々独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。
【0045】
1は、炭素原子数1以上10以下のアルカンジイル基を表すことが好ましい。
【0046】
n1及びn2は、各々独立に、1以上100以下の整数を表すことが好ましく、10以上100以下の整数を表すことがより好ましい。
【0047】
側鎖にカルボキシル基を有するカルボキシル変性シリコーンオイルの市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製「X-22-3701E」を用いることができる。信越化学工業株式会社製「X-22-3701E」は、一般式(1)で表され、Q1~Q9が各々メチル基を表す化合物を含む。
【0048】
片末端にカルボキシル基を有するカルボキシル変性シリコーンオイルとしては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。但し、下記一般式(2)で表される化合物は、分子中に含まれるカルボキシル基が後述する第1共重合体と架橋されていてもよい。
【0049】
【化5】
【0050】
一般式(2)中、Q11~Q17は、各々独立に、アルキル基を表す。X2は、-L2COOHを表す。L2は、アルカンジイル基を表す。n3は、1以上の整数を表す。
【0051】
11~Q17は、各々独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。
【0052】
2は、炭素原子数1以上10以下のアルカンジイル基を表すことが好ましい。
【0053】
n3は、1以上100以下の整数を表すことが好ましく、10以上100以下の整数を表すことがより好ましい。
【0054】
片末端にカルボキシル基を有するカルボキシル変性シリコーンオイルの市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製「X-22-3710」を用いることができる。信越化学工業株式会社製「X-22-3710」は、一般式(2)で表され、Q11~Q17が各々メチル基を表す化合物を含む。
【0055】
両末端にカルボキシル基を有するカルボキシル変性シリコーンオイルとしては、例えば、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。但し、下記一般式(3)で表される化合物は、分子中に含まれるカルボキシル基のうち一部又は全部が後述する第1共重合体と架橋されていてもよい。
【0056】
【化6】
【0057】
一般式(3)中、Q21~Q26は、各々独立に、アルキル基を表す。X3及びX4は、各々独立に、-L3COOHを表す。L3は、アルカンジイル基を表す。n4は、1以上の整数を表す。
【0058】
21~Q26は、各々独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。
【0059】
3は、炭素原子数1以上10以下のアルカンジイル基を表すことが好ましい。
【0060】
n4は、1以上100以下の整数を表すことが好ましく、10以上100以下の整数を表すことがより好ましい。
【0061】
両末端にカルボキシル基を有するカルボキシル変性シリコーンオイルの市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製「X-22-162C」を用いることができる。信越化学工業株式会社製「X-22-162C」は、一般式(3)で表され、Q21~Q26が各々メチル基を表す化合物を含む。
【0062】
(第2表面処理層)
第2表面処理層は、上述した一般式(I)で表される第1繰り返し単位と、一般式(II)で表される第2繰り返し単位とを有する第1共重合体を含有する。第2表面処理層における第1共重合体の含有割合としては、80質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0063】
第1共重合体は、他のビニル化合物に由来する繰り返し単位を更に有してもよい。他のビニル化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、及びスチレンが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、又は(メタ)アクリル酸エチルがより好ましく、メタクリル酸メチルが更に好ましい。第1共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位(以下、第3繰り返し単位と記載することがある)を更に有することが好ましい。
【0064】
第1共重合体は、下記一般式(III)で表される第4繰り返し単位を更に有してもよい。
【0065】
【化7】
【0066】
一般式(III)中、R3は、水素原子、又はフェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表す。R4は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表す。
【0067】
3は、水素原子、メチル基、エチル基又はi-プロピル基を表すことが好ましい。
【0068】
4は、メチル基又はエチル基を表すことが好ましい。
【0069】
第1共重合体としては、第1繰り返し単位、第2繰り返し単位及び第3繰り返し単位を有する共重合体が好ましく、第1繰り返し単位、第2繰り返し単位及び第3繰り返し単位のみを繰り返し単位として有する共重合体、又は第1繰り返し単位、第2繰り返し単位、第3繰り返し単位及び第4繰り返し単位のみを繰り返し単位として有する共重合体がより好ましい。
【0070】
トナー粒子におけるシリカ粒子の含有量としては、トナー母粒子100質量部に対し、0.1質量部以上10.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以上5.0質量部以下がより好ましい。
【0071】
他の外添剤としては、無機粒子が好ましく、上述のシリカ粒子以外のシリカ粒子、又は金属酸化物(具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、及びチタン酸バリウム等)の粒子がより好ましく、酸化チタン粒子が更に好ましい。但し、外添剤として、脂肪酸金属塩(具体的には、ステアリン酸亜鉛等)のような有機酸化合物の粒子、又は樹脂粒子を使用してもよい。
【0072】
トナー母粒子からの外添剤の脱離を抑制しながら外添剤の機能を十分に発揮させる観点から、トナー粒子における他の外添剤の含有量としては、トナー母粒子100質量部に対して、0.1質量部以上15.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下がより好ましい。
【0073】
[トナー母粒子]
図1で説明したトナー粒子においては、トナー母粒子は、トナーコアと、トナーコアの表面を被覆するシェル層とを有している。以下、このようなトナー粒子をカプセルトナー粒子と記載することがある。シェル層は、実質的に樹脂から構成される。シェル層は、実質的に熱硬化性樹脂から構成されてもよいし、実質的に熱可塑性樹脂から構成されてもよいし、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との両方を含有してもよい。例えば、低温で溶融するトナーコアを、耐熱性に優れるシェル層で覆うことで、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図ることが可能になる。シェル層を構成する樹脂中には、添加剤が分散していてもよい。シェル層は、図1ではトナーコアの表面全体を覆っているが、このような態様には限定されず、トナーコアの表面を部分的に覆っていてもよい。また、トナー母粒子においてシェル層は任意構成であり、シェル層で被覆されていないトナーコアをそのままトナー母粒子として用いてもよい。
【0074】
トナー粒子がカプセルトナー粒子である場合、低温定着性を維持しつつ、耐熱保存性により優れるトナーを得る観点から、シェル層の厚さとしては1nm以上400nm以下が好ましい。シェル層の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて、染色したトナー粒子の断面のTEM(透過電子顕微鏡)撮影像を解析することによって計測できる。なお、1つのトナー粒子においてシェル層の厚さが均一でない場合には、均等に離間した4箇所(詳しくは、トナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線がシェル層と交差する4箇所)の各々でシェル層の厚さを測定し、得られた4つの測定値の算術平均を、そのトナー粒子の評価値(シェル層の厚さ)とする。
【0075】
トナー粒子がカプセルトナー粒子である場合、トナーコアの表面において、シェル層で覆われた領域の面積割合(シェル層の被覆率)としては、90%以上100%以下が好ましく、95%以上100%以下がより好ましい。シェル層の被覆率が90%以上である場合、耐熱保存性により優れるトナーを得ることができる。シェル層の被覆率は、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてトナー粒子の断面のTEM(透過電子顕微鏡)撮影像を解析することによって測定できる。詳しくは、染色したトナー粒子の断面のTEM撮影像において、トナーコアの表面領域(外縁を示す輪郭線)のうちシェル層で覆われた領域の割合を測定することにより、シェル層の被覆率が得られる。
【0076】
良好な画像を形成する観点から、トナー母粒子の体積中位径(D50)としては、4μm以上9μm以下が好ましい。
【0077】
[トナーコア]
トナーコアは、例えば主成分として結着樹脂を含有する。結着樹脂を含有するトナーコアは、必要に応じて、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)を含有してもよい。
【0078】
(結着樹脂)
低温定着性に優れたトナーを提供する観点から、トナーコアは、結着樹脂として熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、結着樹脂全体の85質量%以上の割合で熱可塑性樹脂を含有することがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N-ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰り返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン-アクリル酸エステル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂等)も、結着樹脂として使用できる。
【0079】
熱可塑性樹脂は、1種以上の熱可塑性モノマーを、付加重合、共重合、又は縮重合させることで得られる。なお、熱可塑性モノマーは、単独重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(より具体的には、アクリル酸エステル系モノマー、スチレン系モノマー等)、又は縮重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(例えば、縮重合によりポリエステル樹脂になる多価アルコール及び多価カルボン酸の組合せ)である。
【0080】
低温定着性に優れたトナーを提供する観点から、トナーコアは、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有することが好ましい。ポリエステル樹脂は、1種以上の多価アルコールと1種以上の多価カルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、ジオール類、ビスフェノール類等)、及び3価以上のアルコールが挙げられる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。なお、多価カルボン酸の代わりに、多価カルボン酸の無水物、多価カルボン酸ハライド等の縮重合によりエステル結合を形成できる多価カルボン酸誘導体を使用してもよい。
【0081】
ジオール類の好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ペンテン-1,5-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、1,4-ベンゼンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0082】
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0083】
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0084】
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n-ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸等)、及びアルケニルコハク酸(より具体的には、n-ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
【0085】
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシルプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
【0086】
(着色剤)
トナーコアは、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質な画像を形成する観点から、着色剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下が好ましい。
【0087】
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
【0088】
トナーコアは、カラー着色剤を含有していてもよい。カラー着色剤としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤が挙げられる。
【0089】
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、及び194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、並びにC.I.バットイエローが挙げられる。
【0090】
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254)が挙げられる。
【0091】
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、及び66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、並びにC.I.アシッドブルーが挙げられる。
【0092】
(離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、トナーに耐オフセット性を付与する目的で使用される。トナーに充分な耐オフセット性を付与させる観点から、離型剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下が好ましい。
【0093】
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合体、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、ライスワックス等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラタム等の鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするエステルワックス;脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックス(例えば、脱酸カルナバワックス)を好適に使用できる。
【0094】
トナーコアが離型剤を含有する場合、結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
【0095】
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、より優れた帯電安定性又は優れた帯電立ち上がり特性を有するトナーを提供する目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電させることができるか否かの指標になる。トナーコアに正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。
【0096】
正帯電性の電荷制御剤の例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2-オキサジン、1,3-オキサジン、1,4-オキサジン、1,2-チアジン、1,3-チアジン、1,4-チアジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-オキサジアジン、1,3,4-オキサジアジン、1,2,6-オキサジアジン、1,3,4-チアジアジン、1,3,5-チアジアジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、1,2,4,6-オキサトリアジン、1,3,4,5-オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ-ンBH/C、アジンディープブラックEW、アジンディープブラック3RL等の直接染料;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等の酸性染料;ナフテン酸の金属塩類;高級有機カルボン酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩等の4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0097】
帯電安定性に更に優れたトナーを提供する観点から、電荷制御剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0098】
(磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル等)及びその合金、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、二酸化クロム等)、並びに強磁性化処理が施された材料(より具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)が挙げられる。
【0099】
[シェル層]
シェル層は、例えば主成分としてシェル樹脂を含有する。シェル層としては、実質的にシェル樹脂から構成されている層(例えばシェル樹脂の含有割合が90質量%以上である層)が好ましく、シェル樹脂のみを含有する層がより好ましい。シェル樹脂としては、シリカ粒子の第2表面処理層が含有する第1共重合体と同様の樹脂を用いることができる。但し、シェル樹脂として用いることのできる樹脂は、第1共重合体と比較し、以下の点が相違する。まず、シェル樹脂として用いることのできる樹脂は、第2繰り返し単位を有していなくてもよい。また、シェル樹脂として用いることのできる樹脂が第2繰り返し単位を有する場合、一般式(II)中の*は、カルボキシル変性シリコーンオイルに含まれる原子との結合部位ではなく、結着樹脂に含まれる原子との結合部位を表す。
【0100】
良好な画像を形成する観点から、シェル層の厚さとしては、10nm以上100nm以下が好ましい。
【0101】
<第2実施形態:トナーの製造方法>
本発明の第2実施形態は、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を含むトナーの製造方法であって、シリカ基体をカルボキシル変性シリコーンオイルにより表面処理する工程(第1表面処理工程)と、カルボキシル変性シリコーンオイルにより表面処理されたシリカ基体を、下記一般式(I)で表される第1繰り返し単位を含む第2共重合体で表面処理することにより、シリカ粒子を調製する工程(第2表面処理工程)と、シリカ粒子を含む外添剤をトナー母粒子の表面に付着させる工程(外添工程)とを備える。ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定されるシリカ粒子における未開環オキサゾリン基の含有割合は、1μmol/g以上500μmol/g以下である。
【0102】
第2実施形態に係るトナーの製造方法は、第1実施形態に係るトナーを提供することができる。第2実施形態において、トナー、トナー母粒子、外添剤、トナー粒子、シリカ粒子、シリカ基体、及びカルボキシル変性シリコーンオイルの説明は、第1実施形態において記載したそれぞれの説明と重複するため、記載を省略する。
【0103】
[トナー母粒子の準備]
まず、本実施形態に用いるトナー母粒子を準備する方法について説明する。トナー母粒子としては、トナーコアをそのままトナー母粒子として用いてもよく、トナーコアと、トナーコアを被覆するシェル層とを有するトナー母粒子を用いてもよい。
【0104】
トナーコアの製造方法としては、特に限定されず、公知の粉砕法及び公知の凝集法を用いることができる。トナーコアの製造方法としては、粉砕法が好ましい。
【0105】
トナーコアと、トナーコアを被覆するシェル層とを有するトナー母粒子は、例えば、トナーコアとシェル層形成用液とを混合することにより形成することができる。
【0106】
シェル層形成用液は、シェル層を形成するためのビニル樹脂(形成用ビニル樹脂)を含む。形成用ビニル樹脂は、例えば、第1繰り返し単位を含む。形成用ビニル樹脂の溶液としては、例えば、株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS-300」又は「エポクロス(登録商標)WS-700」を使用できる。エポクロス(登録商標)WS-300は、2-ビニル-2-オキサゾリンとメタクリル酸メチルとの共重合体(水溶性架橋剤)を含む。共重合体を構成するモノマーの質量比は、(2-ビニル-2-オキサゾリン):(メタクリル酸メチル)=9:1である。エポクロス(登録商標)WS-700は、2-ビニル-2-オキサゾリンとメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの共重合体(水溶性架橋剤)を含む。共重合体を構成するモノマーの質量比は、(2-ビニル-2-オキサゾリン):(メタクリル酸メチル):(アクリル酸ブチル)=5:4:1である。2-ビニル-2-オキサゾリンは、下記式(A-1)で表される化合物である。
【0107】
【化8】
【0108】
以下、形成用ビニル樹脂として、第1繰り返し単位を含む形成用ビニル樹脂を用い、かつ反応系にカルボキシル基が存在する場合(例えば、結着樹脂にカルボキシル基が存在する場合、又はカルボン酸を添加する場合)におけるトナーコアとシェル層形成溶液との混合方法の詳細を記載する。トナーコアとシェル層形成溶液との混合では、オキサゾリン基とカルボキシル基とが反応してアミド結合が形成される温度以上の温度(以下、第1温度と記載することがある)に加熱することが好ましい。混合より、シェル層が形成される。即ち、トナーコアと、トナーコアを被覆するシェル層とを有するトナー母粒子の分散液が得られる。得られた分散液に対して固液分離と洗浄と乾燥とを行えば、トナー母粒子が得られる。
【0109】
より詳しくは、まず、トナーコアとシェル層形成用液とを混合して、分散液を得る。ここで、シェル層を構成する材料(シェル材料)は、分散液中において、トナーコアの表面に付着する。トナーコアの表面に均一にシェル材料を付着させる観点から、分散液中においてトナーコアを高度に分散させることが好ましい。
【0110】
次に、分散液を攪拌しながら、分散液の温度を所定の昇温速度で第1温度まで上昇させる。その後、分散液を攪拌しながら、所定の攪拌時間の間、分散液の温度を第1温度に保つ。上述したように、第1温度は、オキサゾリン基とカルボキシル基とが反応してアミド結合が形成される温度以上の温度である。そのため、分散液の温度を所定の温度に保っている間に、形成用ビニル樹脂に含まれる複数のオキサゾリン基の一部とカルボキシル基との反応が進行すると考えられる。
【0111】
第1温度としては、50℃以上100℃以下が好ましい。第1温度を50℃以上とすることで、オキサゾリン基とカルボキシル基との反応を促進できる。また、第1温度を50℃以上とすることで、シェル材料がトナーコアの表面で硬化し易くなる。第1温度を100℃以下とすることで、分散液におけるトナーコアの分散性が良好となる。分散液におけるトナーコアの分散性が良好であると、分散液中でトナーコア同士が凝集し難くなるため、トナーコアの表面に均一にシェル材料を付着させることができる。
【0112】
昇温速度としては、0.1℃/分以上3.0℃/分以下が好ましい。攪拌時間としては、30分以上4時間以下が好ましい。攪拌条件としては、回転速度を50rpm以上500rpm以下とすることが好ましい。これにより、オキサゾリン基とカルボキシル基との反応が進行し易くなる。
【0113】
分散液(トナーコアとシェル層形成用液とを含む分散液)は、塩基性物質と開環剤とのうちの少なくとも1つを更に含むことが好ましい。塩基性物質及び開環剤の各々の量を変更することで、未開環オキサゾリン基の量を変更することができる。より具体的には、分散液における塩基性物質の量が多いほど、未開環オキサゾリン基の量が多くなる傾向がある。分散液が塩基性物質を更に含むことで、カルボキシル基が塩基性物質で中和され易くなるため、オキサゾリン基の開環反応が抑制され易いと考えられる。分散液における開環剤の量が多いほど、未開環オキサゾリン基の量が少なくなる傾向がある。開環剤がオキサゾリン基の開環反応を促進するためである。
【0114】
塩基性物質としては、アンモニア、又は水酸化ナトリウムが好ましい。
【0115】
開環剤としては、短鎖脂肪酸が好ましく、R30-COOH(R30は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基)で表されるカルボン酸がより好ましく、酢酸又はプロピオン酸が更に好ましい。
【0116】
開環剤は、水溶性であることが好ましい。開環剤が水溶性であると、シェル層を形成する際に開環剤が水性媒体に溶解し易くなり、シェル樹脂のオキサゾリン基を開環させ易くなる。R30-COOHで表されるカルボン酸は、R30が炭素原子数1以上3以下のアルキル基であるため、水溶性に優れる。
【0117】
[シリカ粒子の調製]
第2実施形態に係るトナーの製造方法では、第1表面処理工程及び第2表面処理工程により、シリカ粒子を調製する。
【0118】
[第1表面処理工程]
本工程では、カルボキシル変性シリコーンオイルによりシリカ基体を表面処理する。これにより、シリカ基体に、その表面を被覆する第1表面処理層を形成する。本工程では、カルボキシル変性シリコーンオイルのみを用いて表面処理を行うことが好ましいが、カルボキシル変性シリコーンオイルと共に他の成分を併用してもよい。
【0119】
具体的な表面処理の方法としては、例えば、不活性雰囲気下(例えば窒素雰囲気下)において、シリカ基体を攪拌しながら水を噴霧した後、カルボキシル変性シリコーンオイルを噴霧し、その後、加熱する方法が挙げられる。加熱条件としては、例えば加熱温度200℃以上300℃以下、加熱時間30分以上5時間以下とすることができる。
【0120】
[第2表面処理工程]
本工程では、カルボキシル変性シリコーンオイルにより表面処理されたシリカ基体を、一般式(I)で表される第1繰り返し単位を含む第2共重合体により表面処理することにより、シリカ粒子を調製する。具体的には、シリカ基体に形成された第1表面処理層を、第2表面処理層で被覆する。第2表面処理工程では、第2共重合体のみを用いて表面処理を行ってもよいが、第2共重合体と共に他の成分を併用してもよい。
【0121】
具体的な表面処理の方法としては、例えば、第2共重合体を水に分散させた表面処理剤と第1表面処理工程後のシリカ基体とを混合して反応させる方法が挙げられる。混合条件の詳細については、トナーコアとシェル層形成溶液の混合において説明した内容と同様とすることができる。
【0122】
分散液(表面処理剤と第1表面処理工程後のシリカ基体とを含む分散液)に塩基を添加する場合、その添加量としては、例えば、第1表面処理工程後のシリカ基体100質量部に対し、0.01質量部以上0.20質量部以下とすることができる。
【0123】
分散液(表面処理剤と第1表面処理工程後のシリカ基体とを含む分散液)に開環剤を添加する場合、その添加量としては、例えば、第1表面処理工程後のシリカ基体100質量部に対し、0.5質量部以上20質量部以下とすることができ、0.5質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0124】
ここで、第2共重合体が含む第1繰り返し単位の一部は、第2表面処理工程により、第2繰り返し単位又は第4繰り返し単位を形成する。即ち、第2共重合体の含む第1繰り返し単位は、そのオキサゾリン基の一部が、第1表面処理層に含有されるカルボキシル変性シリコーンオイルが有するカルボキシル基と反応して第2繰り返し単位を形成する。また、第2表面処理工程で開環剤を用いる場合、第2共重合体の含む第1繰り返し単位は、そのオキサゾリン基の一部が、開環剤と反応することにより第4繰り返し単位を形成する。これにより、第2共重合体から第1共重合体が形成される。
【0125】
未開環オキサゾリン基は、比較的強い正帯電性を示す。また、未開環オキサゾリン基は、カルボキシル基と反応すると、開環してアミド結合を形成する。開環してアミド結合を形成したオキサゾリン基は、未開環オキサゾリン基よりも弱い正帯電性を示す。そのため、第1表面処理工程に用いるカルボキシル変性シリコーンオイルの種類及び添加量と、第2表面処理工程に用いる開環剤の種類及び添加量とを調節することにより、第2表面処理層における未開環オキサゾリン基の含有割合を調整することができる。
【0126】
[外添工程]
本工程では、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。これにより、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子が得られる。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる方法としては、特に限定されないが、例えば、トナー母粒子及び外添剤をミキサー等で攪拌する方法が挙げられる。
【実施例
【0127】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0128】
<トナーの製造>
以下の方法により、実施例及び比較例のトナーを製造した。
【0129】
[トナー母粒子の製造]
以下の方法により、トナーコア及びシェル層を有するトナー母粒子を得た。まず、トナーコアに用いるポリエステル樹脂を合成した。
【0130】
(ポリエステル樹脂の合成)
ポリエステル樹脂の合成では、4つ口フラスコを反応容器として用いた。この4つ口フラスコは、温度計、窒素導入管、脱水管、精留塔、攪拌羽根及び熱電対を備えた容量5Lの反応容器であった。反応容器を油浴にセットし、反応容器に、プロパンジオール1250gと、テレフタル酸1720gと、エステル化触媒としてのジオクタン酸錫(II)3gとを投入した。続けて、油浴を用いて反応容器の内温を220℃に昇温した。反応容器の内温を220℃で保持し、窒素雰囲気下、15時間縮合反応させた。更に、反応容器の内温を220℃に保持し、反応容器内の圧力を8.0kPaとし、反応生成物(ポリエステル樹脂)の軟化点が所望の温度になるまで縮合反応を行い、ポリエステル樹脂Aを得た。ポリエステル樹脂AのTmは88℃であった。
【0131】
(トナーコアの製造)
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-20B」)に、結着樹脂としてのポリエステル樹脂Aを82.0質量部と、離型剤としてのエステルワックス(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP-3」)9.0質量部と、着色剤としてのカーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」)9.0質量部とを入れた。ミキサーの内容物を回転速度2000rpmで4分間にわたって混合した。
【0132】
得られた混合物を、二軸押出機(株式会社池貝製「PCM-30」)を用いて、材料供給速度8kg/時、軸回転速度130rpm、且つ設定温度(シリンダー温度)110℃の条件で、溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却した。冷却された溶融混練物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて、設定粒子径2mm以下の条件で粗粉砕した。得られた粗粉砕物を、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル RS型」)を用いて、微粉砕した。得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ-LABO型」)を用いて、分級した。このようにして、体積中位径(D50)6μmのトナーコアを得た。得られたトナーコアでは、軟化点(Tm)が89℃であり、ガラス転移点(Tg)が48℃であった。
【0133】
(シェル化)
温度計、及び攪拌羽根を備えた3つ口フラスコ(容量:1L)に300mLのイオン交換水を入れた。フラスコを水浴にセットして、水浴を用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。フラスコに所定量のオキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS-300」、固形分濃度:10質量%)を加えた後、フラスコの内容物を1時間にわたって回転速度200rpmで攪拌した。フラスコに300.0gのトナーコアを加えた後、フラスコの内容物を1時間にわたって回転速度200rpmで攪拌した。なお、オキサゾリン基含有樹脂の配合量がトナーコアの配合量に対して1質量%となるように、オキサゾリン基含有高分子水溶液の配合量を決定した。
【0134】
フラスコに、300mLのイオン交換水と6mLのアンモニア水溶液(濃度:1質量%)を加えた。フラスコの内容物を回転速度150rpmで攪拌しながら、昇温速度0.5℃/分でフラスコ内の温度を60℃まで上昇させた。昇温中、反応液に酢酸約0.2mLを添加した。フラスコ内の温度を60℃に保った状態で、フラスコの内容物を回転速度100rpmで1時間にわたって攪拌した。その後、フラスコ内の温度を常温まで冷却した。このようにして、トナー母粒子の分散液を得た。
【0135】
(トナー母粒子の洗浄)
得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いて、吸引濾過した。得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再度分散させた。得られた分散液を、ブフナー漏斗を用いて、吸引濾過した。このような固液分離処理を5回にわたって繰り返し行った。
【0136】
(トナー母粒子の乾燥)
得られたトナー母粒子をエタノール水溶液(濃度:50質量%)に分散させた。これにより、トナー母粒子のスラリーが得られた。連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃且つブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。このようにして、トナー母粒子を含む粉体を得た。
【0137】
[シリカ粒子の製造]
以下の方法により、シリカ粒子(A-1)~(A-6)及び(B-1)~(B-5)を製造した。
【0138】
(第1表面処理工程)
温度計、攪拌羽根、及び冷却機を備えた4ロフラスコ(容量:2L)に、50gの親水性フュームドシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)90G」、個数平均1次粒子径:約20nm)を入れた。窒素をフラスコに導入して、フラスコ内の気体を窒素で置換した。フラスコの内容物を攪拌しながら、水をフラスコ内へ噴霧した。その後、攪拌を維持した状態で下記表1に示す種類及び含有量のカルボキシル変性シリコーンオイル又はシランカップリング剤をフラスコ内へ噴霧した。250℃で2時間の反応後、冷却機を取り除き、250℃で加熱しながら窒素ガスとともにアルコールを除去した。これにより、第1表面処理層で被覆されたシリカ基体を得た。
【0139】
カルボキシル変性シリコーンオイル及びシランカップリング剤の種類を以下に示す。
シランカップリング剤a:KBE-903(信越化学工業株式会社製)
シランカップリング剤b:KBM-3033(信越化学工業株式会社製)
カルボキシル変性シリコーンオイルA:X-22-3710(信越化学工業株式会社製)
カルボキシル変性シリコーンオイルB:X-22-162C(信越化学工業株式会社製)
カルボキシル変性シリコーンオイルC:X-22-3701E(信越化学工業株式会社製)
【0140】
なお、シランカップリング剤Aは、3-アミノプロピルトリメトキシシランを含んでいた。シランカップリング剤Bは、n-プロピルトリメトキシシランを含んでいた。カルボキシル変性シリコーンオイルAは、側鎖にカルボキシル基を有するカルボキシル変性シリコーンオイルを含んでいた。カルボキシル変性シリコーンオイルBは、片末端にカルボキシル基を有するカルボキシル変性シリコーンオイルを含んでいた。カルボキシル変性シリコーンオイルCは、両末端にカルボキシル基を有するカルボキシル変性シリコーンオイルを含んでいた。
【0141】
温度計及び攪拌羽根を備えた3つ口フラスコ(容量1L)に、第2表面処理層の原料として第2共重合体を含有する下記表1に示す種類及び含有量の高分子水溶液とイオン交換水とを投入し、溶液が合計で300gになるよう調整した。ウォータバスを用いてフラスコ内温を30℃に保持しつつ、第1表面処理層で被覆されたシリカ基体50gをフラスコ内に添加し、フラスコの内容物を200rpmの速度で1時間攪拌した。次いで、フラスコ内に、イオン交換水200gを追加した。1質量%のアンモニア水溶液6mLを更に加えた後、フラスコの内容物を150rpmで攪拌しながら、1.0℃/分の速度で、フラスコ内温が80℃となるように加熱した。なお、シリカ(A-6)の製造では、昇温中に酢酸を1g添加し、開環オキサゾリン基の割合を調整した(酢酸の添加によりオキサゾリン基を開環させた)。昇温後、温度80℃、100rpmの条件でフラスコの内容物を1時間攪拌し続けた。終了後、アンモニア水溶液(濃度:1質量%)を添加することでフラスコ内容物のpHを7に調整し、常温まで冷却した。これにより、シリカ粒子を含む分散液を得た。
【0142】
高分子水溶液の種類を以下に示す。
高分子水溶液A:株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS-700」、固形分濃度25質量%
高分子水溶液B:株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS-300」、固形分濃度10質量%
【0143】
(シリカ粒子の洗浄)
得られたシリカ粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いて、吸引濾過した。得られたウェットケーキ状のシリカ粒子をイオン交換水に再度分散させた。得られた分散液を、ブフナー漏斗を用いて、吸引濾過した。このような固液分離処理を3回にわたって繰り返し行った。
【0144】
(シリカ粒子の乾燥)
得られたシリカ粒子をエタノール水溶液(濃度:50質量%)に分散させた。これにより、シリカ粒子のスラリーが得られた。連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃且つブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のシリカ粒子を乾燥させた。このようにして、シリカ粒子を含む粉体を得た。
【0145】
このようにして、シリカ粒子(A-1)~(A-8)及び(B-1)~(B-5)を得た。
【0146】
(未開環オキサゾリン基の含有割合)
シリカ粒子(A-1)~(A-8)及び(B-1)~(B-5)における未開環オキサゾリン基の含有割合を測定した。詳しくは、標準物質に基づく検量線を用いて、以下に示す条件で、GC/MS法による定量分析を行った。測定結果を下記表1に示す。
【0147】
(GC/MS法)
測定装置として、ガスクロマトグラフ質量分析計(株式会社島津製作所製「GCMS-QP2010 Ultra」)及びマルチショット・パイロライザー(フロンティア・ラボ株式会社製「FRONTIER LAB Multi-functional Pyrolyzer(登録商標)PY-3030D」)を用いた。カラムとしては、GCカラム(アジレント・テクノロジー社製「Agilent(登録商標)J&W ウルトライナートキャピラリGCカラム DB-5ms」、相:シロキサンポリマーにアリレンを入れてポリマーの主鎖を強化したアリレン相、内径:0.25mm、膜厚:0.25μm、長さ:30m)を用いた。
【0148】
(ガスクロマトグラフ)
・キャリアガス:ヘリウム(He)ガス
・キャリア流量:1mL/分
・気化室温度:210℃
・熱分解温度:加熱炉「600℃」、インターフェイス部「320℃」
・昇温条件:40℃で3分間保持した後、40℃から速度10℃/分で300℃まで昇温し、300℃で15分間保持した。
【0149】
(質量分析)
・イオン化法:EI(Electron Impact)法
・イオン源温度:200℃
・インターフェイス部の温度:320℃
・検出モード:スキャン(測定範囲:45m/z~500m/z)
【0150】
[トナーの評価方法]
シリカ粒子について、以下に示すFT-IR(フーリエ変換赤外分光分析装置)を用いた測定により、第2繰り返し単位又は第4繰り返し単位に含まれる特定の共有結合の存在を確認した。測定結果を下記表1に示す。
【0151】
<特定の共有結合の存在の確認>
FT-IR(フーリエ変換赤外分光分析装置)としては、パーキンエルマー社製「Frontier」を用いた。「Frontier」には、アクセサリーとして同社製「ユニバーサルATR」を装着した。測定モードは、ATR(全反射測定法)モードとした。測定装置を用いて、測定範囲4000cm-1~400cm-1、分解能4.0cm-1、積算回数16回の条件で、バックグラウンドを測定した後、シリカ粒子のFT-IRスペクトル(横軸:照射した赤外線の波数、縦軸:吸光度)を測定した。得られたIRスペクトルにアミド結合中のC=O伸縮ピークである1650cm-1~1515cm-1のピークの有無を確認した。C=O伸縮ピークが確認された場合、カルボキシル基及びオキサゾリン基の反応により形成される特定の共有結合がシリカ粒子に含まれると判断した。即ち、シリカ粒子が第2繰り返し単位又は第4繰り返し単位を含む重合体を含有していると判断した。
【0152】
[混合工程]
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-10B」)を用いて、回転速度3000rpm、ジャケット温度20℃の条件で、トナー母粒子100質量部と、外添剤とを添加し、5分間混合した。外添剤としては、下記表1に示す種類のシリカ粒子1.8質量部と、導電性酸化チタン微粒子(チタン工業株式会社製「EC-100」)1.5質量部とを用いた。これにより、実施例1~8及び比較例1~5のトナー(TA-1)~(TA-8)及び(TB-1)~(TB-5)を得た。
【0153】
下記表1において、シランカップリング剤における「g」は、固形分換算値を示す。高分子水溶液における「g」は、溶媒を含む全質量を示す。
【0154】
【表1】
【0155】
<評価>
以下の方法により、実施例1~8及び比較例1~5のトナーのかぶり抑制、耐熱ストレス性及び帯電安定性を評価した。具体的には、各トナーについて、かぶり濃度と、エイジング処理後の凝集度と、電荷減衰係数とを測定した。かぶり濃度は、3通りの条件で行った。
【0156】
[かぶり濃度A]
ボールミルを用いて、100質量部のキャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550ci」用キャリア)と、トナー(より具体的には、トナー(TA-1)~(TA-8)及び(TB-1)~(TB-5)の各々)10質量部とを30分間にわたって混合した。これにより、評価対象を得た。
【0157】
複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550ci」)のブラック用現像装置の収容部に、評価対象を入れた。また、複合機のブラック用トナーコンテナに、トナー(より具体的には、トナー(TA-1)~(TA-8)及び(TB-1)~(TB-5)の各々)を入れた。この複合機を評価機として用いた。
【0158】
温度10℃かつ湿度10%RHの環境下で、評価機を用いて、画像(印字率:5%)を普通紙(A4サイズ)に4000枚連続で印刷した。次に、温度10℃且つ湿度10%RHの環境下で、評価機を用いて、評価画像(印字率:20%)を普通紙(A4サイズ)に500枚連続で印刷した。このようにして、500枚の評価画像を得た。評価画像は、各々、ソリッド画像部と、白紙部(印字の無い領域)とを含んでいた。
【0159】
白色光度計(有限会社東京電色製「TC-6DS/A」)を用いて、評価画像の各々の白紙部の反射濃度を測定した。下記式に基づいて、かぶり濃度(FD)を算出した。このようにして、得られた評価画像すべてに対して、かぶり濃度(FD)を求めた。そして、かぶり濃度(FD)の平均値を求め、求められた平均値を評価値とした。
FD=(白紙部の反射濃度)-(未印刷紙の反射濃度)
【0160】
かぶり濃度(FD)の評価基準を以下に示す。
優良:評価値が0.010以下
不良:評価値が0.011超
【0161】
[かぶり濃度B]
かぶり濃度Aの評価と同様の方法により、評価対象及び評価機を得た。温度32.5℃かつ湿度80%RHの環境下で、評価機を用いて、画像(印字率:1%)を普通紙(A4サイズ)に10000枚連続で印刷した。次に、温度32.5℃且つ湿度80%RHの環境下で、評価機を用いて、評価画像(印字率:20%)を普通紙(A4サイズ)に500枚連続で印刷した。このようにして、500枚の評価画像を得た。評価画像は、各々、ソリッド画像部と、白紙部(印字の無い領域)とを含んでいた。
【0162】
かぶり濃度Aの評価と同様の方法により、かぶり濃度(FD)を算出した。かぶり濃度(FD)の評価基準を以下に示す。
優良:評価値が0.010以下
不良:評価値が0.011超
【0163】
[かぶり濃度C]
かぶり濃度Aの評価と同様の方法により、評価対象及び評価機を得た。評価機を32.5℃かつ湿度80%RHの環境下で24時間静置した。静置後、温度32.5℃かつ湿度80%RHの環境下で、評価機を用いて、評価画像(印字率:20%)を普通紙(A4サイズ)に10枚連続で印刷した。このようにして、10枚の評価画像を得た。評価画像は、各々、ソリッド画像部と、白紙部(印字の無い領域)とを含んでいた。
【0164】
以下の点を変更した以外は、かぶり濃度Aの評価と同様の方法により、かぶり濃度(FD)を算出した。具体的には、かぶり濃度Aの評価では各評価画像のかぶり濃度(FD)の平均値を評価値とした。一方、かぶり濃度Cの評価では各評価画像のかぶり濃度(FD)の最大値を評価値とした。かぶり濃度(FD)の評価基準を以下に示す。
優良:評価値が0.010以下
不良:評価値が0.011超
【0165】
[凝集度]
ボールミルを用いて、100質量部のキャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa500ci」用キャリア)と10質量部のトナー(より具体的には、トナー(TA-1)~(TA-8)及び(TB-1)~(TB-5)の各々)とを、30分間にわたって、混合した。このようにして、評価対象を得た。
【0166】
複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa500ci」)のブラック用現像装置の収容部に、評価対象を入れた。このようにして、評価機を準備した。
【0167】
現像装置を、評価機から取り出して、1時間にわたって恒温装置(設定温度:50℃)内に静置した。現像装置を恒温装置内に静置した状態で、外部モーターを用いて現像装置内での攪拌を1時間にわたって行った。現像装置内での攪拌は、外部モーターによって制御し、評価機の現像装置の駆動速度に合わせて行った。その後、現像装置から評価対象を取り出した。
【0168】
取り出された評価対象のうちの10gを、200メッシュ(目開き75μm)の質量既知の篩に載せた。評価対象を載せた篩の質量を測定することにより、篩上の評価対象の質量(篩別前の評価対象の質量)を求めた。ホソカワミクロン株式会社製の「パウダテスタ(登録商標)PT-X」に上述の篩をセットし、「パウダテスタ(登録商標)PT-X」のマニュアルに従い、振幅1.0mmの条件で60秒間、篩を振動させた。このようにして、評価対象を篩別した。篩別後、篩を通過しなかった評価対象の質量を測定した。篩別前の評価対象の質量と、篩別後の評価対象の質量と、下記式とに基づいて、現像剤の凝集度(単位:%)を求めた。なお、下記式における「篩別後の評価対象の質量」は、篩を通過しなかった評価対象の質量であり、即ち篩別後に篩上に残留した評価対象の質量である。
凝集度=100×篩別後の評価対象の質量/篩別前の評価対象の質量
【0169】
凝集度の評価基準を以下に示す。
優良:2%以下
良好:2%超3%以下
不良:3%超
【0170】
[電荷減衰係数]
トナー(より具体的には、トナー(TA-1)~(TA-8)及び(TB-1)~(TB-5)の各々)の電荷減衰係数は、静電気拡散率測定装置(株式会社ナノシーズ製「NS-D100」)を用いて、JIS(日本工業規格)C 61340-2-1-2006に準拠した方法で測定した。まず、測定セルに試料(トナー)を入れた。測定セルとしては、凹部(内径:10mm、深さ:1mm)が形成された金属製のセルを用いた。スライドガラスを用いて試料を上から押し込み、セルの凹部に試料を充填した。セルの表面においてスライドガラスを往復移動させることによって、セルから溢れた試料を除去した。試料の充填量は0.04g以上0.06g以下とした。
【0171】
試料が充填された測定セルを接地させた後、この測定セルを静電気拡散率測定装置内に置いた。この静電気拡散率測定装置を温度32.5℃、湿度80%RHの環境下で12時間静置した。同環境において、コロナ放電によって試料にイオンを供給して、試料を帯電させた。帯電時間は0.5秒間とした。そして、コロナ放電が終了してから0.7秒が経過した後、試料の表面電位を連続的に測定した。測定された表面電位と、式「V=V0・exp(-α√t)」とに基づいて、電荷減衰定数(電荷減衰速度)αを算出した。式中、Vは表面電位[単位:V]、V0は初期表面電位[単位:V]、tは減衰時間[単位:秒]をそれぞれ示す。
【0172】
電荷減衰係数の評価基準を以下に示す。
優良:0.030未満
不良:0.030以上
【0173】
【表2】
【0174】
トナー(TA-1)~(TA-8)は、各々、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を含んでいた。外添剤は、シリカ基体を被覆する第1表面処理層と、第1表面処理層を被覆する第2表面処理層とを有するシリカ粒子を含んでいた。第1表面処理層は、カルボキシル変性シリコーンオイルを含有し、第2表面処理層は、一般式(I)で表される第1繰り返し単位と、一般式(II)で表される第2繰り返し単位とを有する第1共重合体を含有していた。ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定されるシリカ粒子における未開環オキサゾリン基の含有割合は、1μmol/g以上500μmol/g以下であった。
【0175】
表2に示すように、トナー(TA-1)~(TA-8)の各々は、連続印刷後においてもかぶり濃度(FD)を所望値以下に抑えることができた。また、トナー(TA-1)~(TA-8)の各々を含む2成分現像剤は、高温下で所定の時間ストレスを受けた際の凝集度を所望値以下に抑えることができた。また、トナー(TA-1)~(TA-8)の各々では、電荷減衰係数を所望値以下に抑えることができた。
【0176】
一方、トナー(TB-1)~(TB-5)は、各々、上述の構成を備えていなかった。詳しくは、トナー(TB-1)は、シリカ基体が第2表面処理層によって直接被覆されたシリカ粒子(B-1)を用いた比較例である。トナー(TB-1)は、かぶり濃度Bが不良であった。これは、第2表面処理層で直接シリカ基体を被覆した場合、第2表面処理層のシリカ基体に対する接着性が不十分となり、印刷中にシリカ粒子から第2表面処理層が剥離するためであると判断される。即ち、トナー(TB-1)は、印刷中にシリカ粒子(B-1)から第2表面処理層が剥離することにより帯電電位が低下し、その結果、かぶりが発生したと判断される。
【0177】
トナー(TB-2)は、未開環オキサゾリン基の含有割合が1μmol/g未満であるシリカ粒子(B-2)を用いた比較例である。トナー(TB-2)は、凝集度が不良であった。これは、シリカ粒子における未開環オキサゾリン基の含有割合が1μmol/g未満であると、トナー粒子の表面を十分に疎水化及び正帯電化できないためであると判断される。即ち、トナー(TB-2)は、表面が十分に疎水化及び正帯電化されていないため、高温下で凝集が発生したと判断される。なお、トナー(TB-2)は、外添剤による正帯電性の付与が不十分であったと判断されるが、かぶり濃度については良好であった。これは、かぶりは印刷中にトナーの帯電電位が低下することにより生じるのに対し、トナー(TB-2)は印刷中の帯電電位低下が生じなかったためであると判断される。
【0178】
トナー(TB-3)は、シリカ粒子における未開環オキサゾリン基の含有割合を500μmol/g超とした比較例である。トナー(TB-3)は、凝集度及びかぶり濃度Cが不良であった。これは、未開環オキサゾリン基の含有割合が過剰であると、トナー粒子の表面が親水性になるためであると判断される。即ち、トナー(TB-3)は、表面が親水性であるため、印刷中に帯電電位が低下してかぶりが発生し、かつエイジング処理により凝集したと判断される。
【0179】
トナー(TB-4)は、第1表面処理層及び第2表面処理層を有するシリカ粒子の代わりに、シランカップリング剤で表面処理層を形成したシリカ粒子(B-4)を用いた比較例である。トナー(TB-4)は、かぶり濃度A~Cが不良であった。これは、シランカップリング剤により形成される表面処理層の耐久性が不十分であるためであると判断される。即ち、トナー(TB-4)は、印刷中にシリカ粒子(B-4)の表面処理層の剥離によって帯電電位が低下し、その結果、かぶりが生じたと判断される。
【0180】
トナー(TB-5)は、未開環オキサゾリン基の含有割合が1μmol/g未満であるシリカ粒子(B-5)を用いた比較例である。トナー(TB-5)は、かぶり濃度C及び電荷減衰係数が不良であった。これは、シリカ粒子における未開環オキサゾリン基の含有割合が1μmol/g未満であると、トナー粒子の表面を十分に疎水化及び正帯電化できないためであると判断される。特に、シリカ粒子(B-5)は、第1表面処理層の形成に比較的多量のカルボキシル変性シリコーンオイルを用いているため、トナーの表面の親水性を比較的高くすると判断される。そのため、トナー(TB-5)は、表面の親水性が比較的高く、印刷中に帯電電位が低下することで画像かぶりが発生したと判断される。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明に係るトナーは、例えば複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。
【符号の説明】
【0182】
1 トナー粒子
2 トナー母粒子
2a トナーコア
2b シェル層
3 外添剤
4 シリカ基体
5 第1表面処理層
6 第2表面処理層
図1
図2