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特許7067337モータ制御装置及びこれを備えた電動パワーステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】モータ制御装置及びこれを備えた電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20220509BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20220509BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
H02P29/024
B62D6/00
B62D5/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018138534
(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公開番号】P2020018058
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075579
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100175259
【弁理士】
【氏名又は名称】尾林 章
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 昭夫
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-198457(JP,A)
【文献】特開2008-012999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00-29/68
B62D 6/00
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーとの接続ラインである第1の電源供給ラインを介して電源供給されて作動し、電動モータにモータ駆動電流を供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路を構成するトランジスタに駆動信号を供給する駆動回路と、
前記インバータ回路の前記第1の電源供給ラインとの接続ラインと接地ラインとの間に介挿された平滑用コンデンサと、
前記平滑用コンデンサの充電電圧であるモータ電源電圧を検出するモータ電源電圧検出部と、
第1の電圧閾値と、該第1の電圧閾値よりも低い第2の電圧閾値と、該第2の電圧閾値よりも低い第3の電圧閾値とが記憶された電圧閾値記憶部と、
前記モータ電源電圧検出部で検出した前記モータ電源電圧が前記第1の電圧閾値未満で且つ前記第2の電圧閾値以上のときに前記モータ駆動電流の上限を制限し、前記モータ電源電圧が前記第1の電圧閾値以上のとき及び前記第2の電圧閾値未満のときに、前記制限を解除する駆動電流制限部と、
前記モータ電源電圧検出部で検出した前記モータ電源電圧と前記第3の電圧閾値とを比較し、該比較結果に基づき前記バッテリーと前記第1の電源供給ラインとの接続不良の有無を診断する接続不良診断部とを備えることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、前記第1の電源供給ラインとは独立した前記バッテリーとの接続ラインである第2の電源供給ラインを介して電源供給されて作動する請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記第1の電圧閾値は、前記バッテリーの電圧を予め設定した所定電圧値以下に低下させない範囲で前記電動モータを通常制御可能な最低電圧値に設定されている請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記第2の電圧閾値は、前記トランジスタを制御可能な最低電圧値に設定されている請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記第3の電圧閾値は、前記モータ駆動電流の上限が制限されているときに、前記入力電圧が前記第2の電圧閾値のときに予め設定された最大電流が流れたときの前記モータ電源電圧の最低値よりも低い値に設定されている請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記接続不良診断部は、前記モータ電源電圧検出部で検出した前記モータ電源電圧が前記第3の電圧閾値未満となる状態が予め設定した継続時間以上継続したときに前記接続不良が有ると診断する請求項1から5のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記接続不良診断部は、所定周期毎に、前記モータ電源電圧が前記第3の電圧閾値未満となるときに前記継続時間をカウントアップし前記モータ電源電圧が前記第3の電圧閾値以上となるときに前記継続時間をカウントダウンして前記継続時間の計測を行う請求項6に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
ステアリング機構に操舵補助力を発生させる電動モータを駆動制御するモータ制御装置として、請求項1から7のいずれか1項に記載のモータ制御装置を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置及びこれを備えた電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多相電動モータを駆動制御するモータ制御装置は、制御演算装置、プリドライバ(ゲート駆動回路)、インバータ回路等を備え、用途に応じたトルクを正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、電流指令値とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM制御のデューティー比の調整で行っている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/136918号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載のモータ制御装置は、車両に搭載されたバッテリーから供給される電力によって動作する。そのため、バッテリーとの接続ラインが断線やコネクタの接触不良等による接続不良を起こすと、バッテリーからの電源供給がうまくいかずに動作不良を起こす恐れがある。
以下、図8に示す簡略化した回路構成にて説明すると、従来は、例えば、モータ制御装置の有するインバータ回路142の電源供給ラインの電圧(平滑用コンデンサCCの充電電圧に相当)であるモータ電源電圧VR1を監視する。そして、モータ電源電圧VR1が、所定時間以上、予め設定した所定電圧閾値未満になったことを検出することでバッテリー127とインバータ回路142との接続不良を検出している。なお、誤検出を回避するために所定時間以上の継続状態を判定している。
【0005】
ここで、図8中の実線矢印に示すように、バッテリー127からの電力は、電界効果トランジスタ(FET)QE1及びQE2を含む電源遮断回路144を介してインバータ回路142に供給される。これにより、平滑用コンデンサCCが充電されて、その充電電圧が略バッテリー電圧と同じとなる。この平滑用コンデンサCCは、インバータ回路142を構成するFETQ7及びQ8のスイッチングによるノイズを除去すると共に補助電源としての機能を果たす。
図8中のバツ印に示すように、バッテリー127との接続ラインに例えば断線が発生すると、バッテリー127からの電流が平滑用コンデンサCCに供給されなくなる。但し、バッテリー127からの電源供給は無くなるが、ゲート駆動回路141には、図示省略するが、イグニッションスイッチを介してバッテリー127から別経路で電力が供給されている。そのため、システムは停止せずに作動状態を維持する。しかし、この状態で電動モータ122に駆動電流を流そうとゲート駆動信号のデューティー比を大きくすると平滑用コンデンサCCの充電電力が放電され、モータ電源電圧VR1が低下する。
【0006】
ここで、図8に例示するモータ制御装置を含む従来のモータ制御装置には、バッテリー電圧(≒モータ電源電圧)の低下を防止する機能であるVR電圧低下防止機能が備わっている。即ち、図9に示すように、モータ電源電圧VR1(≒バッテリー電圧)がVth1[V]未満になると、電流指令値を例えば通常よりも低い値に制限して、電動モータ122の駆動電流量の上限を制限する。これによって、バッテリー127からの持ち出し電流を制限して、バッテリー電圧の低下を防止する。
【0007】
しかし、図8中の破線矢印に示すように、ゲート駆動回路141を介してイグニッションスイッチのライン(以下、「IGライン」と称す)から平滑用コンデンサCCに電力(いわゆる漏れ電流)が供給される。そのため、VR電圧低下防止機能が作動して電流指令値が制限されると平滑用コンデンサCCが放電量を超えて充電される。これによって、モータ電源電圧VR1が増加してVR電圧低下防止機能が解除され、例えば電流指令値が制限された値から徐々に上昇していく。そのため、平滑用コンデンサCCの充電電力が充電量以上に放電されるようになり、再びモータ電源電圧VR1が低下してVR電圧低下防止機能が作動する。即ち、断線等の接続不良の状態では、例えば図10に示すように、VR電圧低下防止機能によって、平滑用コンデンサCCの充電、放電が繰り返し行われモータ電源電圧VR1が変動する(図10中の細実線を参照)。この変動によってモータ電源電圧VR1が所定時間以上、所定電圧閾値(図10中の太実線)未満にならず接続不良を検出できないといった問題が生じる。なお、図10において、横軸は時間を、縦軸は操舵トルク、操舵角度、操舵速度、電圧を示す。
【0008】
一方、バッテリー127とインバータ回路142とを接続するコネクタ(不図示)の接触不良等による接続抵抗が高抵抗となる状態では、上記断線した場合と異なり平滑用コンデンサCCには微小ずつでも電流が供給される。そのため、ゲート駆動回路141からの漏れ電流が無い回路構成であっても、上記漏れ電流のある場合と同様に、VR電圧低下防止機能が作動して電流指令値が制限されると平滑用コンデンサCCが放電量を超えて充電される。その結果、上記漏れ電流がある場合と同様に、平滑用コンデンサCCの充電、放電が繰り返し行われ接続不良を検出できないといった問題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、VR電圧低下防止機能を有するモータ制御装置であって、バッテリーとの接続ラインの接続不良を検出するのに好適な機能を有するモータ制御装置及びこれを備えた電動パワーステアリング装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータ制御装置の一態様は、バッテリーとの接続ラインである第1の電源供給ラインを介して電源供給されて作動し、電動モータにモータ駆動電流を供給するインバータ回路と、前記インバータ回路を構成するトランジスタに駆動信号を供給する駆動回路と、前記インバータ回路の前記第1の電源供給ラインとの接続ラインと接地ラインとの間に介挿された平滑用コンデンサと、前記平滑用コンデンサの充電電圧であるモータ電源電圧を検出するモータ電源電圧検出部と、を備える。更に、第1の電圧閾値と、該第1の電圧閾値よりも低い第2の電圧閾値と、該第2の電圧閾値よりも低い第3の電圧閾値とが記憶された電圧閾値記憶部と、前記モータ電源電圧検出部で検出した前記モータ電源電圧が前記第1の電圧閾値未満で且つ前記第2の電圧閾値以上のときに前記モータ駆動電流の上限を制限し、前記モータ電源電圧が前記第1の電圧閾値以上のとき及び前記第2の電圧閾値未満のときに、前記制限を解除する駆動電流制限部と、前記モータ電源電圧検出部で検出した前記モータ電源電圧と前記第3の電圧閾値とを比較し、該比較結果に基づき前記バッテリーと前記第1の電源供給ラインとの接続不良の有無を診断する接続不良診断部と、を備える。
【0011】
また、本発明に係る電動パワーステアリング装置の一態様は、ステアリング機構に操舵補助力を発生させる電動モータを駆動制御するモータ制御装置として、上記モータ制御装置を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モータ電源電圧検出部で検出したモータ電源電圧が、モータ駆動電流の上限の制限を行う電圧範囲の下限値である第2の電圧閾値未満のときにモータ駆動電流の上限の制限を解除するようにした。これによって、駆動回路経由や接触不良状態のコネクタ経由等で平滑用コンデンサに充電される充電量よりも放電量を大きくすることが可能となるので、接続不良発生時の充電電圧を第3の電圧閾値未満とすることが可能となり、より確実に接続不良の有無を診断することが可能となる。
また、上記効果を有するモータ制御装置を含んで電動パワーステアリング装置を構成するので、より確実に、バッテリーとの接続不良を検出することが可能となり、大事に至らぬ前に、モータ駆動回路の電気的な遮断等の対処をすることが可能となる。このため、信頼性の比較的高い電動パワーステアリング装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のモータ制御装置を車両に搭載した電動パワーステアリング装置に適用した場合の実施形態を示す全体構成図である。
図2】モータ制御装置の具体的構成を示す回路図である。
図3図2の制御演算装置の具体的構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に係るVR電圧低下防止機能を説明するための図である。
図5】VR電圧低下防止処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】接続不良診断処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7】実施形態に係るVR電圧低下防止機能を適用した場合の断線故障時の測定結果を示すグラフである。
図8】従来のモータ制御装置の簡略化した回路構成を示す図である。
図9】従来のVR電圧低下防止機能を説明するための図である。
図10】従来のVR電圧低下防止機能を適用した場合の断線故障時の測定結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものも含まれており、部材ないし部分の縦横の寸法や縮尺は実際のものとは異なる場合があることに留意すべきである。従って、具体的な寸法や縮尺は以下の説明を参酌して判断すべき場合がある。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
(全体構成)
本発明に係る電動パワーステアリング装置1が搭載された車両2は、図1に示すように、左右の転舵輪となる前輪3FR及び3FLと後輪3RR及び3RLとを備えている。そして、前輪3FR及び3FLは、電動パワーステアリング装置1によって転舵される。
この電動パワーステアリング装置1は、図1に示すように、ステアリングホイール11と、ステアリングシャフト12と、操舵トルクセンサ13と、第1のユニバーサルジョイント14と、ロアシャフト15と、第2のユニバーサルジョイント16とを備えている。
電動パワーステアリング装置1は、更に、ピニオンシャフト17と、ステアリングギヤ18と、を備えている。
【0016】
ステアリングホイール11に運転者から作用された操舵力は、ステアリングシャフト12に伝達される。このステアリングシャフト12は、入力軸12aと出力軸12bとを有する。入力軸12aの一端はステアリングホイール11に連結され、他端は操舵トルクセンサ13を介して出力軸12bの一端に連結されている。
そして、出力軸12bに伝達された操舵力は、第1のユニバーサルジョイント14を介してロアシャフト15に伝達され、更に、第2のユニバーサルジョイント16を介してピニオンシャフト17に伝達される。このピニオンシャフト17に伝達された操舵力はステアリングギヤ18を介してタイロッド19に伝達され、転舵輪としての前輪3FR及び3FLを転舵させる。ここで、ステアリングギヤ18は、ピニオンシャフト17に連結されたピニオン18aとこのピニオン18aに噛合するラック18bとを有するラックアンドピニオン形式に構成されている。従って、ステアリングギヤ18は、ピニオン18aに伝達された回転運動をラック18bで車幅方向の直進運動に変換している。
【0017】
ステアリングシャフト12の出力軸12bには、操舵補助力を出力軸12bに伝達する操舵補助機構20が連結されている。この操舵補助機構20は、出力軸12bに連結した例えばウォームギヤ機構で構成される減速ギヤ21と、この減速ギヤ21に連結された操舵補助力を発生する例えば3相ブラシレスモータで構成される3相電動モータ22と、この3相電動モータ22を駆動制御するモータ制御装置25とを備えている。
操舵トルクセンサ13は、ステアリングホイール11に付与されて入力軸12aに伝達された操舵トルクを検出する。この操舵トルクセンサ13は、例えば、操舵トルクを入力軸12a及び出力軸12b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を抵抗変化や磁気変化に変換して検出する構成とされている。
【0018】
また、3相電動モータ22は、本実施形態において3相ブラシレスモータであり、図示しない環状のモータロータと環状のモータステータとを備えている。モータステータは、径方向内側に突出する複数の極歯を円周方向に等間隔に備えて構成され、各極歯には励磁用コイル(図2に示すA相モータ巻線La、B相モータ巻線Lb及びC相モータ巻線Lc)が巻き回されている。そして、モータステータの内側に、モータロータが同軸に配設されている。モータロータは、モータステータの極歯と僅かの空隙(エアギャップ)をもって対向し且つ外周面に円周方向に等間隔に設けられた複数の磁石を備えて構成されている。以下、A相モータ巻線La、B相モータ巻線Lb及びC相モータ巻線Lcを「3相モータ巻線La~Lc」と略記する。
【0019】
モータロータはモータ回転軸に固定されており、モータステータの3相モータ巻線La~Lcにモータ制御装置25を介して3相交流電流を流すことでモータステータの各歯が所定の順序に励磁されてモータロータが回転し、この回転に伴ってモータ回転軸が回転する。
更に、3相電動モータ22は、図2に示すように、モータの回転位置を検出するレゾルバなどの回転位置センサ23aを備えている。この回転位置センサ23aからの検出値がモータ回転角検出回路23に供給されてこのモータ回転角検出回路23でモータ回転角θmを検出する。モータ回転角検出回路23は、検出したモータ回転角θmを制御演算装置31に出力する。
【0020】
また、モータ制御装置25は、車載の直流電源であるバッテリー27から電源供給されることによって作動する。ここで、バッテリー27の負極は接地され、その正極はエンジン始動を行うイグニッションスイッチ28(以下、「IGスイッチ28」と記載する)を介してモータ制御装置25に接続されていると共に、IGスイッチ28を介さず直接、モータ制御装置25に接続されている。
なお、バッテリー27を、IGスイッチ28を介さず接続するラインは、コモンモードやノーマルモードのEMC(electromagnetic compatibility)ノイズ対策としてノイズフィルタ43を介して接続している。
【0021】
(モータ制御装置25の構成)
次に、モータ制御装置25の具体的構成を説明する。
モータ制御装置25は、図2に示すように、モータ電圧指令値を演算する制御演算装置31と、この制御演算装置31から出力される、後述する3相のモータ電圧指令値Vが入力されるモータ駆動回路32とを備えている。
具体的に、3相のモータ電圧指令値Vは、A相モータ電圧指令値Va、B相モータ電圧指令値Vb及びC相モータ電圧指令値Vcから構成される。
【0022】
更に、モータ制御装置25は、モータ駆動回路32の出力側と3相電動モータ22の3相モータ巻線La~Lcとの間に介挿されたモータ電流遮断回路33を備えている。
なお更に、モータ制御装置25は、モータ駆動回路32とモータ電流遮断回路33との間に設けられたモータ電圧検出回路40を備えている。
モータ駆動回路32は、制御演算装置31から出力される3相のモータ電圧指令値Vが入力されてゲート駆動信号を形成するゲート駆動回路41と、このゲート駆動回路41から出力されるゲート駆動信号が入力されるインバータ回路42とを備えている。
【0023】
更に、モータ駆動回路32は、第1の電源供給ラインVL1との接続ラインに介挿された電源遮断回路44と、モータ電源電圧検出回路34とを備えている。加えて、電源遮断回路44とモータ電源電圧検出回路34との間に介挿され、インバータ回路42の上側アームに流れる直流電流を検出する電流検出回路39Uと、インバータ回路42の下側アームと接地との間に介挿され、下側アームから接地に流れる直流電流を検出する電流検出回路39A、39B及び39Cとを備えている。
以下、電流検出回路39A、39B及び39Cを「電流検出回路39A~39C」と略記する。
【0024】
ここで、第1の電源供給ラインVL1は、ハーネス等から構成され、その一端部はバッテリー27側のコネクタを介してバッテリー27と電気的に接続され、他端部はモータ制御装置25側のコネクタを介してインバータ回路42と電気的に接続されている。
ゲート駆動回路41は、制御演算装置31からモータ電圧指令値Vが入力されると、このモータ電圧指令値Vと三角波のキャリア信号Scとをもとにパルス幅変調(PWM)した6つのゲート駆動信号を形成する。そして、これらゲート駆動信号をインバータ回路42に出力する。
【0025】
ここで、ゲート駆動回路41は、バッテリー27からIGスイッチ28を介して電源供給されて動作するように構成されている。以下、この電源供給ラインを「第2の電源供給ラインVL2」と称す。なお、第2の電源供給ラインVL2は、第1の電源供給ラインVL1とは独立したラインとなっている。
インバータ回路42は、ノイズフィルタ43と、電源遮断回路44と、モータ電源電圧検出回路34とを介してバッテリー27のバッテリー電力が入力され、入力側に平滑用の電解コンデンサである平滑用コンデンサCAが接続されている。この平滑用コンデンサCAは、インバータ回路42に対するノイズ除去機能及び電源供給補助機能を備えている。
【0026】
このインバータ回路42は、スイッチング素子としての6個の電界効果トランジスタ(FET)Q1~Q6を有し、2つの電界効果トランジスタを直列に接続した3つのスイッチングアームSWAa、SWAb及びSWAcを並列に接続した構成を有する。そして、各電界効果トランジスタQ1~Q6のゲートにゲート駆動回路41から出力されるゲート駆動信号が入力されることにより、各スイッチングアームSWAa、SWAb及びSWAcの電界効果トランジスタ間の接続点からA相電流Ia、B相電流Ib、C相電流Icがモータ電流遮断回路33を介して3相電動モータ22の3相モータ巻線La、Lb及びLcに通電される。
【0027】
なお、インバータ回路42の電界効果トランジスタ(FET)のゲートにゲート駆動信号としてパルス幅変調(PWM)信号が入力されることから、インバータ回路42から出力されるA相電流Ia、B相電流Ib及びC相電流Icはデューティー比が制御される矩形波信号となる。
また、インバータ回路42は、第1の電源供給ラインVL1を介して、バッテリー27から直接、電源供給されて動作するように構成されている。但し、本実施形態では、ノイズ対策のためノイズフィルタ43を介挿している。
【0028】
モータ電源電圧検出回路34は、インバータ回路42の第1の電源供給ラインVL1との接続ラインに介挿され、この接続ラインと平滑用コンデンサCAとの接続部の電圧であるモータ電源電圧VR1(正常時はバッテリー電圧Vbat[V]に相当)を検出する。
なお、モータ電源電圧VR1は、バッテリー27とモータ駆動回路32との接続部に断線等の異常が発生して、バッテリー27からの正常な電源供給を受けられない状態となった場合に、平滑用コンデンサCAの充電電圧の変化に応じて変化する電圧値となる。
電源遮断回路44は、2つの電界効果トランジスタ(FET)QC1及びQC2がソース同士を接続して寄生ダイオードが逆向きとなる直列回路構成を有する。そして、電界効果トランジスタQC1のドレインがノイズフィルタ43の出力側に接続され、電界効果トランジスタQC2のドレインがインバータ回路42の各電界効果トランジスタQ1、Q3及びQ5のドレインに接続されている。
【0029】
モータ電流遮断回路33は、3つの電流遮断用の電界効果トランジスタQA1、QA2及びQA3を有する。電界効果トランジスタQA1のソースがモータ電圧検出回路40を介してインバータ回路42のスイッチングアームSWAaの電界効果トランジスタQ1及びQ2の接続点に接続され、ドレインが3相モータ巻線Laに接続されている。また、電界効果トランジスタQA2のソースがモータ電圧検出回路40を介してインバータ回路42のスイッチングアームSWAbの電界効果トランジスタQ3及びQ4の接続点に接続され、ドレインが3相モータ巻線Lbに接続されている。更に、電界効果トランジスタQA3のソースがモータ電圧検出回路40を介してインバータ回路42のスイッチングアームSWAcの電界効果トランジスタQ5及びQ6の接続点に接続され、ドレインが3相モータ巻線Lcに接続されている。
【0030】
そして、モータ電流遮断回路33の電界効果トランジスタQA1~QA3は寄生ダイオードDのアノードをインバータ回路42側として各々が同一の向きに接続されている。
モータ電圧検出回路40は、それぞれインバータ回路42の各上側アームと各下側アームとの接続点と、3相電動モータ22の3相モータ巻線La~Lcとの接続ラインの各電圧を検出する。
具体的に、モータ電圧検出回路40は、A相モータ巻き線Laとの接続ラインの電圧であるモータ相電圧VAと、B相モータ巻き線Lbとの接続ラインの電圧であるモータ相電圧VBと、C相モータ巻き線Lcとの接続ラインの電圧であるモータ相電圧VCとを検出する。
以下、モータ相電圧VA、VB及びVCを「モータ相電圧VA~VC」と略記する。
【0031】
(制御演算装置31の構成)
次に、制御演算装置31の具体的構成を説明する。
ここで、制御演算装置31には、図2に示すように、モータ電圧検出回路40で検出したモータ相電圧VA~VCと、モータ電源電圧検出回路34で検出したモータ電源電圧VR1とがA/D変換部31cを介して入力されている。
なお更に、制御演算装置31には、図2に示すように、電流検出回路39Uから出力される電流検出値IUと、電流検出回路39A~39Cから出力される電流検出値IA、IB及びICとがA/D変換部31cを介して入力されている。
以下、電流検出値IA、IB及びICを「電流検出値IA~IC」と略記する。
【0032】
更にまた、制御演算装置31には、図3に示すように、操舵トルクセンサ13で検出された操舵トルクTs及び車速センサ26で検出された車速Vsが入力されている。
なお、本実施形態において、制御演算装置31は、バッテリー27から第2の電源供給ラインVL2を介して電源供給を受けて動作するように構成されている。
また、制御演算装置31は、図示省略するが、CPUと、所定領域に予めCPUで実行される制御プログラムや制御プログラムの実行時に使用するデータ等を格納しているROMと、ROMから読み出したデータやCPUの演算過程で必要な演算結果を格納するためのワークメモリとしてのRAMと、計時用のタイムカウンタとを有している。
【0033】
更に、制御演算装置31は、図3に示すように、操舵補助電流指令値Iを算出する操舵補助電流指令値演算部45と、この操舵補助電流指令値演算部45で算出した操舵補助電流指令値Iに対して、モータ角速度ωe及びモータ角加速度αに基づいて補償を行う補償制御演算部35とを備えている。更に、制御演算装置31は、補償制御演算部35で補償された補償後操舵補助電流指令値I′に基づいてd-q軸電流指令値を算出し、これを3相電流指令値に変換するd-q軸電流指令値演算部37を備えている。
更に、制御演算装置31は、モータ駆動回路32に対するモータ電圧指令値Vを算出する電圧指令値演算部38を備えている。
【0034】
なお更に、制御演算装置31は、入力された各電圧検出値及び各電流検出値に基づき、モータ駆動回路32に発生している異常(故障等)を検出する異常検出部31aを備えている。
操舵補助電流指令値演算部45は、操舵トルクTs及び車速Vsをもとに操舵補助電流指令値算出マップ(図示略)を参照して電流指令値でなる操舵補助電流指令値Iを算出する。この操舵補助電流指令値算出マップは、横軸に操舵トルクTsをとり、縦軸に操舵補助電流指令値Iをとる放物線状の曲線で表される特性線図で構成されている。
【0035】
補償制御演算部35は、例えばモータ角速度ωeに基づいてヨーレートの収斂性を補償する収斂性補償値、モータ角加速度αに基づいて3相電動モータ22の慣性により発生するトルク相当分を補償して慣性感又は制御応答性の悪化を防止するトルク補償値を算出する。加えて、セルフアライニングトルク(SAT)を推定し、推定したSATに基づいて、3相電動モータ22のアシスト力を補償するセルフアライニングトルク補償値を算出する。更に、算出した、収斂性補償値、トルク補償値及びセルフアライニングトルク補償値を足し合わせて指令値補償値Icomを算出する。そして、算出した指令値補償値Icomを操舵補助電流指令値演算部45から出力される操舵補助電流指令値Iに加算器36で加算することにより、補償後操舵補助電流指令値I′を算出する。補償制御演算部35は、この補償後操舵補助電流指令値I′をd-q軸電流指令値演算部37に出力する。
【0036】
d-q軸電流指令値演算部37は、d軸指令電流算出部37aと、誘起電圧モデル算出部37bと、q軸指令電流算出部37cと、2相/3相変換部37dとを備えている。
d軸指令電流算出部37aは、補償後操舵補助電流指令値I′とモータ角速度ωeとに基づいてd軸電流指令値Idを算出する。
誘起電圧モデル算出部37bは、モータ回転角θm及びモータ角速度ωeに基づいてd-q軸誘起電圧モデルEMF(Electromotive Force)のd軸EMF成分ed(θ)及びq軸EMF成分eq(θ)を算出する。
【0037】
q軸指令電流算出部37cは、誘起電圧モデル算出部37bから出力されるd軸EMF成分ed(θ)及びq軸EMF成分eq(θ)とd軸指令電流算出部37aから出力されるd軸電流指令値Idと補償後操舵補助電流指令値I′とモータ角速度ωeとに基づいてq軸電流指令値Iqを算出する。
2相/3相変換部37dは、d軸指令電流算出部37aから出力されるd軸電流指令値Idとq軸指令電流算出部37cから出力されるq軸電流指令値Iqとを3相電流指令値Ia、Ib及びIcに変換する。
【0038】
電圧指令値演算部38は、A相電流指令値Ia、B相電流指令値Ib及びC相電流指令値Icと、電流検出回路39A~39Cで検出した電流検出値IA~ICとに基づいてモータ電圧指令値Vを算出する。
具体的に、電圧指令値演算部38は、電流検出回路39A~39Cで検出した電流検出値IA~ICからA相電流検出値Ia、B相電流検出値Ib及びC相電流検出値Icを算出する。そして、A相電流指令値Ia、B相電流指令値Ib及びC相電流指令値IcからA相電流検出値Ia、B相電流検出値Ib及びC相電流検出値Icを減算して電流偏差ΔIa、ΔIb及びΔIcを算出する。更に、これら電流偏差ΔIa、ΔIb及びΔIcについて例えばPI制御演算又はPID制御演算を行ってモータ駆動回路32に対する3相のモータ電圧指令値Vを算出する。そして、算出した3相のモータ電圧指令値Vを、ゲート駆動回路41に出力する。
【0039】
電圧指令値演算部38は、更に、モータ電源電圧VR1(≒バッテリー電圧Vbat[V])の大きさに応じてバッテリー27から持ち出す電流量を制限する機能であるVR電圧低下防止機能を備えている。この機能は、例えば、エンジン再始動時のクランキングや経年劣化等によってバッテリー電圧が低下した状態のときに電流持ち出し量を低減することでバッテリー電圧の大幅な低下を防ぎ、システム稼働中にMPUやCPUがリセットされる等の不具合が発生するのを防ぐ機能である。
本実施形態のVR電圧低下防止機能は、まず、モータ電源電圧VR1を判定用の電圧閾値と比較する。
【0040】
具体的に、モータ電源電圧VR1が予め設定された第1の電圧閾値Vth1未満で且つ予め設定された第2の電圧閾値Vth2(Vth1>Vth2)以上であるか否かを判定する。以下、モータ電源電圧VR1を「VR1」と略記し、第1の電圧閾値Vth1を「Vth1」と略記し、第2の電圧閾値Vth2を「Vth2」と略記する。
ここで、Vth1及びVth2は、制御演算装置31の備えるROMに予め記憶されている。
引き続き、VR1がVth1未満で且つVth2以上である場合に、インバータ回路42に供給する電流の電流指令値が制限される様に、3相電動モータ22の駆動電流量の上限を制限する機能となる。即ち、駆動電流量を制限することでバッテリー27からの持ち出し電流量を制限している。
【0041】
更に、本実施形態のVR電圧低下防止機能は、VR1がVth2未満になると、3相電動モータ22の駆動電流量の制限を解除するように構成されている。即ち、電流指令値の制限を解除して、VR電圧低下防止機能を停止するように構成されている。これによって、電流指令値を通常時の100[%]まで設定することが可能となる。なお、VR1が正常値となるVth1以上の場合も同様に制限は解除される。
ここで、Vth1は、バッテリー27の公称電圧よりも低い電圧値に設定され、本実施形態では、バッテリー電圧Vbatを予め設定した所定電圧値以下に低下させない範囲で通常の操舵補助制御を実施可能な最低電圧値に設定されている。また、Vth2は、インバータ回路42のFETQ1~Q6を正常に制御可能な最低入力電圧値に設定される。
【0042】
本実施形態では、例えば、図4に示すように、VR1がVth1以上となる間は駆動電流の上限が通常時の100[%]となり、バッテリー電流の最大値である最大BAT電流の持ち出しが可能である。一方、VR1がVth1[V]未満になると、駆動電流の上限を通常よりも低い値に制限する。なお、モータ駆動電流量の上限は、VR1がVth1[V]から線形に減少していき、Vth2の手前で制限電流(下限値)となり、その後、Vth2まで制限電流で一定となるように設定されている。そして、Vth2未満はVR電圧低下防止機能が停止された状態となる。なお、本実施形態では、モータ駆動電流量の上限が、Vth2の手前で制限電流まで減少する例を説明したが、この構成に限らず、例えば、Vth1からVth2まで線形に減少する構成など他の構成としてもよい。
【0043】
ここで、従来と異なる点として、VR1がVth2未満のときにVR電圧低下防止機能を停止する理由を説明する。第1に、VR電圧低下防止機能の電流制限機能による、ゲート駆動回路41を介した第2の電源供給ラインVL2からの電源供給によって、平滑用コンデンサCAが充電され、その充電電圧がバッテリー27との接続不良を判定する際の電圧閾値である第3の電圧閾値Vth3(後述)以上となることを防ぐためである。即ち、バッテリー27との接続不良が発生しているにも係わらず、VR電圧低下防止機能によって平滑用コンデンサCAが第3の電圧閾値Vth3(以下、「Vth3」と略記する)以上に充電されて接続不良を検知できなくなるのを回避するためである。第2に、VR電圧がVth2未満でFETを駆動するとFETの発熱量(電力損失量)が無視できない大きさとなるため、この発熱によるFETの不具合(例えば寿命の低下)の発生を防ぐためである。
【0044】
ここで、Vth3は、電界効果トランジスタQ1~Q6の入力電圧が、VR電圧低下防止機能が作動時の最低電圧であるVth2のときに予め設定された最大電流が流れたときのVR1の値よりも低い値に設定されている。また、Vth3は、制御演算装置31の備えるROMに予め記憶されている。
異常検出部31aは、電流検出値IU及びIA~ICに基づき、公知の検出方法(例えば、上記特許文献1を参照)にて、インバータ回路42を構成するスイッチング素子としてのFETQ1~Q6のオープン故障及びショート故障を検出する。
【0045】
更に、異常検出部31aは、VR1と電流検出値IUとに基づき、公知の検出方法(例えば、上記特許文献1を参照)にて、電源遮断回路44を構成する電流遮断用のFETQC1~QC2のショート故障を検出する。
なお更に、異常検出部31aは、電圧検出値VA~VCと、電流検出値IA~ICとに基づき、公知の検出方法(例えば、上記特許文献1を参照)にて、モータ電流遮断回路33を構成する電流遮断用のFETQA1~QA3のショート故障を検出する。
更にまた、異常検出部31aは、VR1に基づき、バッテリー27とインバータ回路42との接続不良による故障(以下、「接続故障」と称す)を検出する。
【0046】
具体的に、異常検出部31aは、VR1がVth3未満の状態が予め設定した継続時間t秒以上継続した場合にバッテリー27とインバータ回路42との間で接続故障が発生していると判定する。
なお、接続故障の状態としては、接続ラインの断線状態、コネクタ及びハーネスの接触抵抗が、操舵アシストが正常に機能する最大抵抗値を大きく越えた状態(以下、「接触不良状態」と称す)などが含まれる。
異常検出部31aは、故障が生じているモータ駆動回路32のゲート駆動回路41に対して論理値"1"の異常検出信号SAaを出力する。一方、異常検出部31aは、故障が検出されなかった場合、モータ駆動回路32のゲート駆動回路41に対して論理値"0"の異常検出信号SAaを出力する。
【0047】
(異常検出信号に応じたゲート駆動回路の動作)
ゲート駆動回路41は、制御演算装置31から入力される異常検出信号SAaが論理値"0"(正常)であるときには、モータ電流遮断回路33に対してハイレベルの3つのゲート駆動信号を出力するとともに、電源遮断回路44に対してハイレベルの2つのゲート駆動信号を同時に出力する。これにより、インバータ回路42に対して、モータ電流を通電するとともに、バッテリー電力を通電する。
一方、ゲート駆動回路41は、制御演算装置31から入力される異常検出信号SAaが論理値"1"(異常)であるときにはモータ電流遮断回路33に対してローレベルの3つのゲート駆動信号を同時に出力するとともに、電源遮断回路44に対してローレベルの2つのゲート駆動信号を同時に出力する。加えて、インバータ回路42に対して、ローレベルの6つのゲート駆動信号を同時に出力することにより、モータ電流を遮断するとともに、バッテリー電力を遮断する。
【0048】
(電圧指令値算出処理)
次に、図5に基づき、電圧指令値演算部38にて実行されるVR電圧低下防止処理を含む電圧指令値算出処理の処理手順を説明する。
電圧指令値演算部38において処理が開始されると、図5に示すように、まず、ステップS100に移行する。
ステップS100では、電圧指令値演算部38において、入力されたモータ電源電圧VR1をワークメモリに読み込んで、ステップS102に移行する。
【0049】
ステップS102では、電圧指令値演算部38において、読み込んだモータ電源電圧VR1とVth1及びVth2とをそれぞれ比較する。そして、これら比較結果に基づきVR1がVth1未満で且つVth2以上であるか否かを判定する。この判定により、Vth1未満で且つVth2以上であると判定した場合(Yes)は、ステップS104に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS106に移行する。
ステップS104に移行した場合は、電圧指令値演算部38において、VR電圧低下防止機能を作動して、モータ電圧指令値Vを算出する。その後、算出したモータ電圧指令値Vをゲート駆動回路41に出力して、一連の処理を終了する。
【0050】
具体的に、現在のモータ電源電圧VR1に対応する制限された電流指令値に基づき、3相のモータ電圧指令値Vを算出する。
一方、ステップS102においてVR1がVth1未満且つVth2以上ではなくステップS106に移行した場合は、電圧指令値演算部38において、VR電圧低下防止機能を作動させない通常の制御で3相のモータ電圧指令値Vを算出する。そして、算出した3相のモータ電圧指令値Vをゲート駆動回路41に出力する。その後、一連の処理を終了する。
即ち、VR1がVth1以上のときと、VR1がVth2未満のときとにおいて、VR電圧低下防止機能を停止し、通常の算出方法にて3相のモータ電圧指令値を算出する。
【0051】
(接続故障検出処理)
次に、図6に基づき、異常検出部31aにて実行される接続故障検出処理の処理手順について説明する。
異常検出部31aにおいて接続故障検出処理が開始されると、図6に示すように、まず、ステップS200に移行する。
ステップS200では、異常検出部31aにおいて、入力されたモータ電源電圧VR1をワークメモリに読み込んで、ステップS202に移行する。
【0052】
ステップS202では、異常検出部31aにおいて、読み込んだモータ電源電圧VR1とVth3とを比較し、これら比較結果に基づきVR1がVth3未満であるか否かを判定する。そして、Vth3未満であると判定した場合(Yes)は、ステップS204に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS216に移行する。
ステップS204に移行した場合は、異常検出部31aにおいて、不図示のタイムカウンタによって、VR1がVth3未満となる状態の継続時間の計測を開始する。その後、ステップS206に移行する。
【0053】
ステップS206では、異常検出部31aにおいて、タイムカウンタのカウント値に基づきVR1がVth3未満となる状態がt秒以上継続したか否かを判定する。そして、継続したと判定した場合(Yes)は、ステップS208に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、接続故障検出フラグFbを0に設定して、ステップS212に移行する。
ここで、接続故障検出フラグFbは、接続故障が発生しているか否かを示すフラグであり、本実施形態では、接続故障が発生している場合に「1」に設定され、発生していない場合に「0」が設定される。
【0054】
ステップS208に移行した場合は、異常検出部31aにおいて、接続故障が発生していると診断し接続故障検出フラグFbを1に設定して、ステップS210に移行する。
ステップS210では、異常検出部31aにおいて、接続故障検出フラグFbの設定値「1」に基づき、モータ駆動回路32のゲート駆動回路41に対して、論理値"1"の異常検出信号SAaを出力する。その後、一連の処理を終了する。
即ち、接続故障が検出された場合、インバータ回路42のFETを全てオフ状態にすると共に、バッテリー27及び3相電動モータ22から、インバータ回路42を電気的に切り離す。
【0055】
一方、ステップS206においてVth3未満の状態がt秒以上継続していないと判定されステップS212に移行した場合は、異常検出部31aにおいて、タイマカウンタをリセットして、ステップS214に移行する。
ステップS214では、異常検出部31aにおいて、接続故障検出フラグFbの設定値「0」に基づきモータ駆動回路32のゲート駆動回路41に対して、論理値"0"の異常検出信号SAaを出力する。その後、一連の処理を終了する。
【0056】
(動作)
以下、図1図6図10を参照しつつ、図7に基づき本実施形態の動作を説明する。
IGスイッチ28がオフ状態であって車両が停止していると共に、操舵補助制御処理も停止している作動停止状態であるときには、モータ制御装置25の制御演算装置31が非作動状態となる。このため、制御演算装置31で実行される操舵補助制御処理及び異常検出処理は停止されている。従って、3相電動モータ22は作動を停止しており、操舵補助機構20への操舵補助力(操舵アシストトルク)の出力を停止している。
この作動停止状態からIGスイッチ28をオン状態とすると、制御演算装置31が作動状態となり、操舵補助制御処理及び異常検出処理を開始する。このとき、モータ駆動回路32に故障が発生していない正常状態であるものとする。加えて、VR1がVth1以上であって、VR電圧低下防止機能の作動範囲外であるとする。また、接続故障も発生していないものとする(接続故障検出フラグFbが「0」)。
【0057】
操舵補助制御処理が開始されると、制御演算装置31は、入力された操舵トルクTs及び車速Vsから、電流指令値算出マップを参照して操舵補助電流指令値Iを算出する。
そして、算出した操舵補助電流指令値Iとモータ回転角検出回路23から入力されたモータ電気角θeとに基づいてd軸電流指令値Id及びq軸電流指令値Iqを算出する。引き続き、算出したd軸電流指令値Id及びq軸電流指令値Iqに対してdq二相-三相変換処理を行ってA相電流指令値Ia、B相電流指令値Ib及びC相電流指令値Icを算出する。
【0058】
更に、これら電流指令値Ia、Ib及びIcと、電流検出値IA~ICとから算出される各相電流検出値Ia、Ib及びIcとの電流偏差ΔIa、ΔIb及びΔIcを算出する。続いて、算出した電流偏差ΔIa、ΔIb及びΔIcについてPI制御演算又はPID制御演算を行ってモータ電圧指令値Vを算出する。このとき、VR電圧低下防止機能が作動していないため、電流指令値が制限されていない状態(100[%]まで設定可能な状態)でモータ電圧指令値Vを算出する。
そして、算出したモータ電圧指令値Vをゲート駆動回路41に出力する。また、制御演算装置31は、モータ駆動回路32が正常であるので、論理値"0"の異常検出信号SAaをゲート駆動回路41に出力する。
【0059】
このため、ゲート駆動回路41では、モータ電流遮断回路33に対してハイレベルの3つのゲート駆動信号を出力する。従って、モータ電流遮断回路33の電界効果トランジスタQA1~QA3及びQB1~QB3がオン状態となって、インバータ回路42と3相電動モータ22の3相モータ巻線La、Lb及びLcとの間が導通状態となって、3相電動モータ22に対する通電制御が可能な状態となる。
これと同時に、ゲート駆動回路41から電源遮断回路44に対してハイレベルのゲート駆動信号を出力する。このため、電源遮断回路44の電界効果トランジスタQC1~QC2及びQD1~QD2がオン状態となってバッテリー27からの直流電流がノイズフィルタ43を介してインバータ回路42に供給される。
【0060】
更に、ゲート駆動回路41では、制御演算装置31から入力されるモータ電圧指令値Vに基づいてパルス幅変調を行ってゲート駆動信号を形成し、形成したゲート駆動信号をインバータ回路42の各電界効果トランジスタQ1~Q6のゲートに供給する。
なお、例えば、車両が停止状態で、ステアリングホイール11を操舵していない状態では、操舵トルクTsが"0"であり、車速Vsも"0"であるので、操舵補助電流指令値も"0"となって3相電動モータ22は停止状態を維持する。
一方、例えば、車両が走行状態で、ステアリングホイール11が操舵されている状態では、操舵トルクTs及び車速Vsが"0"ではなくなり、操舵補助電流指令値も"0"ではなくなる。そのため、操舵補助電流指令値の大きさに応じたモータ駆動電流によって3相電動モータ22が駆動されてステアリングホイール11に操舵アシストトルクが付加される。
【0061】
その後、何らかの原因によって、図7に示す時刻t1にて第1の電源供給ラインVL1に断線が発生したとする。なお、図7において、横軸は時間を、縦軸は操舵トルク、操舵角度、操舵速度、電圧を示す。これによって、第1の電源供給ラインVL1を介してバッテリー27からインバータ回路42に対して電源供給がされない状態となる。そのため、以降は平滑用コンデンサCAが補助電源として機能する。
その一方で、第2の電源供給ラインVL2を介した制御演算装置31及びゲート駆動回路41への電源供給は正常に行われているため、システムは停止せずに操舵補助制御処理が継続して行われる。従って、この状態で駆動電流を流して平滑用コンデンサCAに蓄積された電荷が放電されると、モータ電源電圧VR1が低下する。即ち、図7に示すように、時刻t1以降に、駆動電流が流れたことでVR1が急激に低下している。
【0062】
制御演算装置31では、電圧指令値演算部38においてVR1とVth1及びVth2との比較処理が行われている。そのため、図7中の時刻t2にてVR1(図7中の細実線)がVth1未満になった時点で、VR電圧低下防止機能を作動させて、電流指令値を通常よりも低い値に制限する。これにより、図7に示すように、時刻t2以降のVR1の低下が緩やかとなっている。
この状態で、図7中の破線、一点鎖線、二点鎖線に示すように、時刻t3から操舵トルク、操舵角度、操舵速度が大幅に変化すると(ステアリングホイール11が操舵されると)、平滑用コンデンサCAの放電量が増大して、VR1が急激に減少する。そのため、図7中の時刻t4にてVR1がVth2未満となって、電圧指令値演算部38においてVR電圧低下防止機能が停止される。即ち、電流指令値の制限が解除される。
【0063】
VR1が低下すると、ゲート駆動回路41を介して第2の電源供給ラインVL2から電源が供給されるため、平滑用コンデンサCAが充電される。しかし、VR電圧低下防止機能が停止されているため、電流指令値に制限の無い通常時の算出方法でモータ電圧指令値Vが算出される。そのため、充電量に対して放電量の方が大きくなり、図10に示すような充電によるVR1の上昇は生じず、図7に示すように、時刻t4以降、VR1は更に低下する。
一方、制御演算装置31では、異常検出部31aにおいてVR1とVth3との比較処理が行われている。VR電圧低下防止機能が停止され、操舵時に、充電量に対して放電量の方が大きくなった状態では、図7中の時刻t5にてVR1がVth3(図7中の太実線)未満になると共に、この状態がt秒以上継続される。従って、図7中の時刻t6にて、異常検出部31aにおいて、接続故障が検出される。即ち、故障検出フラグFbが1となる。
【0064】
異常検出部31aは、接続故障が検出されると、モータ駆動回路32のゲート駆動回路41に対して、論理値"1"の異常検出信号SAaを出力する。
このため、ゲート駆動回路41では、モータ電流遮断回路33に対してローレベルの3つのゲート駆動信号を出力する。従って、モータ電流遮断回路33の電界効果トランジスタQA1~QA3がオフ状態となって、インバータ回路42と3相電動モータ22の3相モータ巻線La、Lb及びLcとの間が遮断状態となって、3相電動モータ22に対する通電制御ができない状態となる。
これと同時に、ゲート駆動回路41から電源遮断回路44に対してローレベルのゲート駆動信号を出力する。このため、電源遮断回路44の電界効果トランジスタQC1~QC2がオフ状態となってバッテリー27からの直流電流が遮断される。
【0065】
更に、ゲート駆動回路41では、インバータ回路42に対して、ローレベルの6つのゲート駆動信号を同時に出力することにより、モータ電流を遮断する。
また、上記停止動作と共に、電動パワーステアリング用の異常ランプ(不図示)を点灯する。
ここで、上記実施形態において、3相電動モータ22が電動モータに対応し、ゲート駆動回路41が駆動回路に対応し、ROMが電圧閾値記憶部に対応し、電圧指令値演算部38が駆動電流制限部に対応し、モータ電圧指令値Vが駆動制御信号に対応する。
また、上記実施形態において、異常検出部31aが接続不良診断部に対応し、電界効果トランジスタQ1~Q6がトランジスタに対応する。
【0066】
(実施形態の効果)
上記実施形態に係るモータ制御装置25は、バッテリー27との接続ラインである第1の電源供給ラインVL1を介して電源供給されて作動し、3相電動モータ22にモータ駆動電流を供給するインバータ回路42を備える。加えて、第1の電源供給ラインVL1とは独立したバッテリー27との接続ラインである第2の電源供給ラインVL2を介して電源供給されて作動し、インバータ回路42を構成する電界効果トランジスタQ1~Q6に駆動信号を供給するゲート駆動回路41を備える。更に、第2の電源供給ラインVL2を介して電源供給されて作動し、ゲート駆動回路41にモータ電圧指令値Vを供給する制御演算装置31と、インバータ回路42の第1の電源供給ラインVL1との接続ラインと接地ラインとの間に介挿された平滑用コンデンサCAとを備える。なお更に、平滑用コンデンサCAの充電電圧であるモータ電源電圧VR1を検出するモータ電源電圧検出回路34を備える。
【0067】
そして、制御演算装置31は、第1の電圧閾値Vth1と、第1の電圧閾値Vth1よりも低い第2の電圧閾値Vth2と、第2の電圧閾値Vth2よりも低い第3の電圧閾値Vth3とが記憶されたROMを備える。更に、電圧指令値演算部38が、モータ電源電圧検出回路34で検出したモータ電源電圧VR1が第1の電圧閾値Vth1未満で且つ第2の電圧閾値Vth2以上のときにモータ駆動電流の上限を制限する。加えて、VR1が第1の電圧閾値Vth1以上のとき及び第2の電圧閾値Vth2未満のときに、前記制限を解除する。異常検出部31aが、VR1と第3の電圧閾値Vth3とを比較し、この比較結果に基づき接続不良による故障(接続故障)の有無を診断する。
【0068】
なお、第1の電圧閾値Vth1は、バッテリー電圧Vbatを予め設定した所定電圧値以下に低下させない範囲で3相電動モータ22を通常制御可能な最低電圧値に設定され、第2の電圧閾値Vth2は、電界効果トランジスタQ1~Q6を制御可能な最低入力電圧値に設定されている。更に、第3の電圧閾値Vth3は、電界効果トランジスタQ1~Q6の入力電圧が第2の電圧閾値Vth2のときに予め設定された最大電流が流れたときのモータ電源電圧VR1の値よりも低い値に設定されている。
この構成であれば、モータ電源電圧検出回路34で検出したモータ電源電圧VR1が第2の電圧閾値Vth2未満のときにモータ駆動電流の上限の制限を解除することが可能となる。これによって、ゲート駆動回路41経由で第2の電源供給ラインVL2から平滑用コンデンサCAに充電される充電量よりも放電量を大きくすることが可能となる。その結果、接続故障発生時の充電電圧を第3の電圧閾値Vth3未満とすることが可能となり、より確実に接続故障の有無を診断することが可能となる。
【0069】
また、電界効果トランジスタQ1~Q6の入力電圧が第2の電圧閾値Vth2未満になると、モータ駆動電流の制限を解除するようにしたので、接続不良によるVR電圧の低下が要因で発生する許容値を超えた入力電圧での駆動状態を速やかに停止することが可能となる。その結果、トランジスタの発熱による部品寿命の低下等を防ぐことが可能となる。
また、第3の電圧閾値Vth3を、VR電圧低下防止機能が作動時の最低電圧値よりも低い値に設定したので、より確実に接続不良を検出することが可能となる。
また、上記実施形態に係るモータ制御装置25は、更に、異常検出部31aが、モータ電源電圧検出回路34で検出したモータ電源電圧VR1が第3の電圧閾値Vth3未満となる状態が予め設定した継続時間t秒以上継続したときに接続不良が有ると診断する。
【0070】
この構成であれば、実際は正常であるのに一瞬だけノイズ等によって第3の電圧閾値Vth3未満となる状態等を接続不良の状態と誤検知するのを防ぐことが可能となる。
また、上記実施形態に係る電動パワーステアリング装置1は、ステアリング機構に操舵補助力を発生させる3相電動モータ22を駆動制御するモータ制御装置として、上記モータ制御装置25を備える。
この構成であれば、上記モータ制御装置25と同等の作用及び効果が得られる。
【0071】
(変形例)
上記実施形態においては、VR電圧低下防止機能が作動時にゲート駆動回路41経由で平滑用コンデンサCAに電力(漏れ電流)が供給される回路構成としたが、この構成に限らない。例えば、漏れ電流が供給されない回路構成としてもよい。この構成とした場合、例えばバッテリー27とインバータ回路42とを接続するコネクタの接触抵抗が高抵抗となる等の接続抵抗が高抵抗となる場合に、漏れ電流のある断線時と同様の問題が生じる。この場合も、上記実施形態のVR電圧低下防止機能を適用して、VR1が第2の電圧閾値Vth2未満のときに、モータ駆動電流の上限の制限を解除することで、問題を解決することが可能である。
【0072】
また、上記実施形態においては、モータ電源電圧VR1のみを用いて各種判定処理を行う構成としたが、この構成に限らない。例えば、別途、電源遮断回路44のトランジスタQC1及びQC2の接続ラインの電圧(以下、「モータ電源電圧VR2」と称す)を検出するように構成して、このモータ電源電圧VR2のみを用いる、またはVR1及びVR2の双方を用いるなど、他の構成としてもよい。また、VR1及びVR2の双方を用いる場合は、例えば、両者を比較していずれか大きい方のみを各種判定に用いるように構成する。
【0073】
また、上記実施形態においては、電動モータ22に対して1つのモータ駆動回路を備える1系統の構成とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2つ以上のモータ駆動回路を備える2系統以上の構成とした場合にも本発明を適用することが可能である。なお、2系統以上の構成とした場合、例えば、2組以上のステータとモータ巻き線(La、Lb、Lc)との組を1つのモータ内に備え、ステータ及びモータ巻き線の組毎に1つのモータ駆動回路が接続された構成とする。
また、上記実施形態においては、タイムカウンタを用いて、VR1がVth3未満となる継続時間を計測する構成としたが、この構成に限らない。例えば、制御演算装置31のCPUにて、所定の周期(制御周期)毎にVR1がVth3未満となるときに計測時間をカウントアップし、Vth3以上となるときに計測時間をカウントダウンするようにして継続時間を計測する構成としてもよい。この構成とすることで、例えばVR1がVth3を境に上下に変動する状態が繰り返される場合の誤検知を防ぐことが可能となる。
【0074】
また、上記実施形態においては、電動モータが3相電動モータである場合について説明したが、これに限定されるものではなく、4相以上の多相電動モータにも本発明を適用することが可能である。
また、上記実施形態においては、本発明によるモータ制御装置を車両に搭載した電動パワーステアリング装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電動ブレーキ装置、ステアバイワイヤシステム、車両走行用のモータ駆動装置等の電動モータを使用する任意のシステムに本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…電動パワーステアリング装置、2…車両、11…ステアリングホイール、12…ステアリングシャフト、13…操舵トルクセンサ、18…ステアリングギヤ、20…操舵補助機構、22…3相電動モータ、La…A相モータ巻線、Lb…B相モータ巻線、Lc…C相モータ巻線、25…モータ制御装置、26…車速センサ、27…バッテリー、31…制御演算装置、31a…異常検出部、32…モータ駆動回路、33…モータ電流遮断回路、34…モータ電源電圧検出回路、35…補償制御演算部、36…加算器、37…d-q軸電流指令値演算部、38…電圧指令値演算部、39A,39B,39C…電流検出回路、40…モータ電圧検出回路、41…ゲート駆動回路、42…インバータ回路、44…電源遮断回路、VL1…第1の電源供給ライン、VL2…第2の電源供給ライン
図1
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