IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

特許7067359タイヤ成形用フォーマ、及びタイヤ製造方法
<>
  • 特許-タイヤ成形用フォーマ、及びタイヤ製造方法 図1
  • 特許-タイヤ成形用フォーマ、及びタイヤ製造方法 図2
  • 特許-タイヤ成形用フォーマ、及びタイヤ製造方法 図3
  • 特許-タイヤ成形用フォーマ、及びタイヤ製造方法 図4
  • 特許-タイヤ成形用フォーマ、及びタイヤ製造方法 図5
  • 特許-タイヤ成形用フォーマ、及びタイヤ製造方法 図6
  • 特許-タイヤ成形用フォーマ、及びタイヤ製造方法 図7
  • 特許-タイヤ成形用フォーマ、及びタイヤ製造方法 図8
  • 特許-タイヤ成形用フォーマ、及びタイヤ製造方法 図9
  • 特許-タイヤ成形用フォーマ、及びタイヤ製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】タイヤ成形用フォーマ、及びタイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/26 20060101AFI20220509BHJP
   B29D 30/72 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B29D30/26
B29D30/72
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018153907
(22)【出願日】2018-08-20
(65)【公開番号】P2020028979
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】岩出 優樹
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-185886(JP,A)
【文献】特開2007-185887(JP,A)
【文献】特開2007-185888(JP,A)
【文献】特開2002-337251(JP,A)
【文献】特開昭54-127986(JP,A)
【文献】米国特許第4626302(US,A)
【文献】米国特許第4780170(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/24-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右1対の成形ドラムを具え、かつ前記成形ドラムのドラム軸心方向外端部に、ドラム軸心方向外側に向かって外径が減じるテーパ部が設けられたタイヤ成形フォーマであって、
前記成形ドラムは、ドラム周方向に分割された複数のセグメントを具え、
前記セグメントは、ドラム半径方向内側のベース部と、前記ベース部のドラム半径方向外側に配されかつドラム軸心方向外端部に前記テーパ部をなす傾斜部を有するセグメント本体とを具え、
前記セグメント本体は、ドラム半径方向に積層される複数のプレートを含み、かつ各前記プレートが、それぞれドラム軸心方向にスライド移動することにより、前記傾斜部の傾斜を変化可能としたタイヤ成形用フォーマ。
【請求項2】
ドラム半径方向内外で隣り合うプレート間において、外側のプレートのドラム軸心方向の移動距離は、内側のプレートのドラム軸心方向の移動距離よりも大である請求項1記載のタイヤ成形用フォーマ。
【請求項3】
ドラム半径方向内外で隣り合うプレート間において、外側のプレートのドラム軸心方向の移動距離と、内側のプレートのドラム軸心方向の移動距離との差は一定である請求項2記載のタイヤ成形用フォーマ。
【請求項4】
前記傾斜部のドラム軸心方向に対する角度θが最大となる第1状態から、前記角度θが最小となる第2状態まで、各前記プレートは、それぞれドラム軸心方向内側にスライド移動する請求項1~3の何れかに記載のタイヤ成形用フォーマ。
【請求項5】
各前記プレートのドラム軸心方向の外端面は、それぞれ、同一傾斜の斜面からなる請求項1~4の何れかに記載のタイヤ成形用フォーマ。
【請求項6】
前記第1状態において、各前記プレートの前記斜面は、面一状に整一する請求項5記載のタイヤ成形用フォーマ。
【請求項7】
前記セグメントは、各前記プレートをそれぞれドラム軸心方向にスライド移動させる移動手段を具える請求項1~6の何れかに記載のタイヤ成形用フォーマ。
【請求項8】
前記移動手段は、各前記プレートのドラム半径方向内面に歯切りされたラックギヤー部と、各前記プレートのラックギヤー部にそれぞれ噛合するピニオンギヤー部とを含む請求項7記載のタイヤ成形用フォーマ。
【請求項9】
各前記ピニオンギヤー部は、同心かつ一体回転可能に連結されるとともに、
各前記ピニオンギヤー部は、ドラム半径方向内側のプレートのラックギヤー部に噛合するピニオンギヤー部ほど直径が小である請求項8記載のタイヤ成形用フォーマ。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載のタイヤ成形用フォーマを用いて生タイヤを形成する工程を含むタイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1stカバーにサイドウォールゴムを貼り付けるためのサイドウォール貼付フォーマとして好適に採用しうるタイヤ成形用フォーマ、及びタイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生タイヤの製造では、予め形成した円筒状の1stカバーを、サイドウォール貼付フォーマに装着し、その後、1stカバーにサイドウォールゴムを貼り付けることが一般に行われる。
【0003】
1stカバーは、1stフォーマを用い、インナーライナー及びカーカスを円筒状に巻き付けた後、その両端部にビードをセットし、かつ前記ビードからはみ出すカーカスのはみ出し部分をビードの周りで折り返すことで形成される。前記ビードは、ビードコアとビードエーペックスゴムとから構成される。
【0004】
図9に概念的に示すように、サイドウォール貼付けフォーマa(以下、「フォーマa」という場合がある。)は、ドラム軸心方向に近接/離間可能に配される左右1対の成形ドラムbを具える。成形ドラムbのドラム軸心方向外端部には、テーパ部bsが設けられている。1対の成形ドラムbが近接した状態かつ縮径した状態にて、1stカバーcが、フォーマaに移載される(図9(a))。次に、成形ドラムbを拡径し(図9(b))、かつ成形ドラムbを互いに離間させる(図9(c))ことにより、1stカバーcがフォーマaに保持される。
【0005】
このとき、テーパ部bsは、ビードエーペックスゴムdのゴムボリュームを吸収する。これにより、1stカバーcの外周面csがフラットになり、サイドウォールゴムeを精度良く貼り付けることが可能となる(例えば特許文献1参照)。
【0006】
他方、タイヤ生産では、多品種少量生産の傾向が強く、同一形状の成形ドラムを用いて、例えばタイヤ幅及び偏平率などを違えた複数サイズのタイヤを生産することが望まれる。
【0007】
しかしこの場合、タイヤサイズの相違によって、ビードエーペックスゴムdの厚さや長さも相違する。そのため、図10に示すように、テーパ部bsがビードエーペックスゴムdのゴムボリュームを吸収できずに、1stカバーcの外周面csに凹凸が生じる。この状態でサイドウォールゴムeの貼り付けを行うと、凹凸の影響を受け、貼り付け時の押さえ不良、ジョイント量のばらつき、材料間でのエアーの包み込みといった不具合の発生傾向を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-215897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、タイヤサイズが異なる場合にも、保持する1stカバーcの外周面をフラット化でき、サイドウォールゴム等の他のタイヤ構成部材の貼り付け精度を高めてタイヤ品質を向上させうるタイヤ成形用フォーマ、及びタイヤ製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、左右1対の成形ドラムを具え、かつ前記成形ドラムのドラム軸心方向外端部に、ドラム軸心方向外側に向かって外径が減じるテーパ部が設けられたタイヤ成形フォーマであって、
前記成形ドラムは、ドラム周方向に分割された複数のセグメントを具え、
前記セグメントは、ドラム半径方向内側のベース部と、前記ベース部のドラム半径方向外側に配されかつドラム軸心方向外端部に前記テーパ部をなす傾斜部を有するセグメント本体とを具え、
前記セグメント本体は、ドラム半径方向に積層される複数のプレートを含み、かつ各前記プレートが、それぞれドラム軸心方向にスライド移動することにより、前記傾斜部の傾斜を変化可能とした。
【0011】
本発明に係るタイヤ成形用フォーマでは、ドラム半径方向内外で隣り合うプレート間において、外側のプレートのドラム軸心方向の移動距離は、内側のプレートのドラム軸心方向の移動距離よりも大であるのが好ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤ成形用フォーマでは、ドラム半径方向内外で隣り合うプレート間において、外側のプレートのドラム軸心方向の移動距離と、内側のプレートのドラム軸心方向の移動距離との差は一定であるのが好ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤ成形用フォーマでは、前記傾斜部のドラム軸心方向に対する角度θが最大となる第1状態から、前記角度θが最小となる第2状態まで、各前記プレートは、それぞれドラム軸心方向内側にスライド移動するのが好ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤ成形用フォーマでは、各前記プレートのドラム軸心方向の外端面は、それぞれ、同一傾斜の斜面からなるのが好ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤ成形用フォーマでは、前記第1状態において、各前記プレートの前記斜面は、面一状に並ぶのが好ましい。
【0016】
本発明に係るタイヤ成形用フォーマでは、前記セグメントは、各前記プレートをそれぞれドラム軸心方向にスライド移動させる移動手段を具えるのが好ましい。
【0017】
本発明に係るタイヤ成形用フォーマでは、前記移動手段は、各前記プレートのドラム半径方向内面に歯切りされたラックギヤー部と、各前記プレートのラックギヤー部にそれぞれ噛合するピニオンギヤー部とを含むのが好ましい。
【0018】
本発明に係るタイヤ成形用フォーマでは、各前記ピニオンギヤー部は、同心かつ一体回転可能に連結されるとともに、各前記ピニオンギヤー部は、ドラム半径方向内側のプレートのラックギヤー部に噛合するピニオンギヤー部ほど直径が小であるのが好ましい。
【0019】
第2の発明は、タイヤ製造方法であって、第1の発明のタイヤ成形用フォーマを用いて生タイヤを形成する工程を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明は叙上の如く、成形ドラムをなす複数のセグメントが、それぞれ、成形ドラムのテーパ部を構成するための傾斜部を有するセグメント本体を具える。そして、セグメント本体は、ドラム半径方向に積層される複数のプレートを含み、かつ各プレートが、それぞれドラム軸心方向にスライド移動することにより、前記傾斜部の傾斜を変化可能としている。即ち、成形ドラムにおけるテーパ部の傾斜を変化させうる。
【0021】
従って、ビードエーペックスゴムの厚さや長さが相違する場合にも、そのゴムボリュームの変化をテーパ部の傾斜の変化により吸収でき、タイヤサイズが異なる場合にも、保持する1stカバーの外周面をフラット化しうる。
【0022】
その結果、1stカバー上で、サイドウォールゴム等の他のタイヤ構成部材を貼り付ける際の押さえ不良、ジョイント量のばらつき、材料間でのエアーの包み込み等の発生を抑えることができ、貼り付け精度を高めてタイヤ品質を向上させうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のタイヤ成形用フォーマの一実施形態を示すドラム軸心方向の断面図である。
図2】成形ドラムの主要部を示すドラム軸心と直角方向の断面図である。
図3】セグメントの第1状態を示すドラム軸心方向の断面図である。
図4】セグメントの第2状態を示すドラム軸心方向の断面図である。
図5】プレート間の連結状態を示すドラム軸心と直角方向の断面図である。
図6】移動手段を概念的に示す部分斜視図である。
図7】移動手段を概念的に示すドラム軸心と直角方向の断面図である。
図8】(a)、(b)は、本発明の作用効果を示すドラム軸心方向の断面図である。
図9】(a)~(c)は、サイドウォール貼り付け工程の説明図である、
図10】従来の問題点を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のタイヤ成形用フォーマ1は、ドラム軸2に支持される左右1対の円筒状の成形ドラム3、3を具える。
【0025】
この1対の成形ドラム3、3は、ドラム軸心方向に互いに近接離間可能である。本例では、一方側(例えば左側)の成形ドラム3が、ドラム軸心方向に固定され、他方側(例えば右側)の成形ドラム3が、ドラム軸心方向に移動可能に支持される場合が示される。本明細書では、成形ドラム3、3が近接する方向をドラム軸心方向の「内側」、離間する方向をドラム軸心方向の「外側」と定義される。
【0026】
各成形ドラム3のドラム軸心方向外端部には、ドラム軸心方向外側に向かって外径が減じる向きに傾斜するテーパ部4が設けられている。
【0027】
図1、2に示すように、成形ドラム3は、ドラム周方向に分割された複数(例えば6個)のセグメント5を具える。各セグメント5は、成形ドラム3に設ける半径方向移動手段6により、ドラム半径方向内外に移動可能である。各セグメント5のドラム半径方向外側への移動により、成形ドラム3は、拡径状態Y1となり、真円状のドラム外周面3Sを形成する。又各セグメント5のドラム半径方向内側への移動により、成形ドラム3は縮径状態Y2となる。
【0028】
セグメント5は、ドラム周方向に交互に配される大小2種類のセグメント5A、5Bから構成される。セグメント5Aのドラム周方向端面Eaは、ドラム半径方向内側に向かってドラム周方向巾が減じる向きに傾斜する。これに対し、セグメント5Bの周方向端面Ebは、ドラム半径方向内側に向かってドラム周方向巾が増加する向きに傾斜する。なお拡径状態Y1から縮径状態Y2へのセグメント5Bの半径方向移動距離KBは、セグメント5Aの半径方向移動距離KAよりも大である。図2には、半径方向移動手段6が省略して描かれている。
【0029】
図1に示すように、本例の半径方向移動手段6は、ドラム軸2に支持される基体10と、基体10にドラム軸心方向に移動可能に外挿されるテーパコーン11と、基体10のガイド部10aに案内されてドラム半径方向に移動可能な複数の移動体12とを含む。各移動体12に、それぞれ、セグメント5が支持される。
【0030】
基体10は、ドラム軸2に、ドラム軸心方向に移動可能に外挿される円筒部10bを具える。円筒部10bのドラム軸心方向内端には、前記ガイド部10aを有するフランジ部が配される。
【0031】
テーパコーン11は、内周側に、前記円筒部10bとの間で空気室Hを形成するための凹部が配される。テーパコーン11のドラム半径方向外周側には、テーパ面11Sが配される。空気室Hへの高圧空気の給排により、テーパコーン11はドラム軸心方向に移動しうる。
【0032】
各移動体12は、ドラム半径方向内周側に、前記テーパ面11Sに案内されるガイド部12aが配される。本例では、ガイド部12aとして直線軸受けが採用されるが、テーパ面11S上を転動可能なローラを採用することもできる。これにより、テーパコーン11のドラム軸心方向の移動を、移動体12のドラム半径方向の移動に変換しうる。なお、セグメント5Aが取り付く移動体12を案内するテーパ面11Sの勾配と、セグメント5Bが取り付く移動体12を案内するテーパ面11Sの勾配とを違えることにより、移動距離KB>移動距離KA に設定しうる。
【0033】
図3に示すように、セグメント5は、ドラム半径方向内側のベース部15と、ベース部15のドラム半径方向外側に配されるセグメント本体16とを具える。ベース部15は、前記移動体12に取り付き、移動体12と一体移動しうる。
【0034】
セグメント本体16は、そのドラム半径方向外表面が、互いに協働して前記ドラム外周面3Sを形成する。又セグメント本体16のドラム軸心方向外端部16Eoに、成形ドラム3の前記テーパ部4をなす傾斜部17が形成される。
【0035】
セグメント本体16は、ドラム半径方向に積層される複数(本例では4枚)のプレート18を含む。
【0036】
各プレート18は、それぞれドラム軸心方向にスライド移動に保持される。隣り合うプレート18、18間、及びドラム半径方向の最内側のプレート18とベース部15との間が、それぞれ、ガイド手段19(図5に示す)によって、ドラム軸心方向にスライド移動可能に案内される。図5に示すように、ガイド手段19として、本例では、ドラム半径方向内外で隣り合う一方の面に配されかつドラム軸心方向にのびる蟻溝19aと、この蟻溝19aに係合しかつ一方の面に配される蟻ほぞ19bとからなるものが好適に採用される。
【0037】
図4に示すように、セグメント本体16において、各プレート18が、それぞれドラム軸心方向にスライド移動する。これにより、傾斜部17の傾斜を変化させることができる。図3には、傾斜部17のドラム軸心方向に対する角度θが最大となる第1状態Q1が示される。又図4には、前記角度θが最小となる第2状態Q2が示される。図4に示すように、各プレート18は、第1状態Q1から第2状態Q2まで、ドラム軸心方向内側にスライド移動する。
【0038】
このとき、ドラム半径方向内外で隣り合うプレート18、18間において、外側のプレート18のドラム軸心方向の移動距離Lは、内側のプレート18のドラム軸心方向の移動距離Lよりも順次大である。詳しくは、ドラム半径方向の最内側のプレート18から順に、第1~第4のプレート18~18と呼ぶとき、第1~第4のプレート18~18のそれぞれの移動距離L1~L4は、L1<L2<L3<L4である。
【0039】
なおドラム半径方向内外で隣り合うプレート18、18間において、それぞれの移動距離の差(L2-L1)、(L3-L2)、(L4-L3)は、同一であるのが好ましい。
【0040】
このように傾斜部17の傾斜を変化可能とすることで、図8(a)、(b)に示すように、ビードエーペックスゴム30の厚さや長さが相違する場合にも、そのゴムボリュームの変化をテーパ部4の傾斜の変化により吸収できる。その結果、タイヤサイズが異なる場合にも、保持する1stカバー21の外周面21Sをフラット化することができる。図中の符号22は、1stカバー21におけるカーカス、23はビードコアである。24は、外周面21Sに貼り付けるサイドウォールゴムである。同図に示すように、ベース部15のドラム軸心方向の外端面15Sは、カーカス22を介してビードコア23と当接する当接面であり、1stカバー21を位置決めしうる。
【0041】
図3に示すように、本例では、各プレート18のドラム軸心方向の外端面18Sは、それぞれ、同一傾斜の斜面20からなる。そして前記第1状態Q1において、各外端面18S(斜面20)は、面一状に整一する。これにより、前記第2状態Q2(図4)においても、外端面18S間の段差を緩和ができ、カーカスコードが屈曲変形するのを抑えることができる。
【0042】
前記プレート18の厚さtは、1.0~1.5mmの範囲が好ましい。又傾斜部17の、第1状態Q1におけるドラム軸心方向の幅W1と、第2状態Q2におけるドラム軸心方向の幅W2との差(W2-W1)は、20mm以上が好ましい。又前記幅W1は20~25mmの範囲が好ましい。
【0043】
又セグメント本体16は、第2状態Q2において、各プレート18のドラム軸心方向内端部18iを受ける階段状の内端受部16Aを具える。
【0044】
セグメント5は、各プレート18をそれぞれドラム軸心方向にスライド移動させる移動手段25を具える。
【0045】
図6、7に示すように、移動手段25は、各プレート18のドラム半径方向内面に歯切りされたラックギヤー部26と、各ラックギヤー部26にそれぞれ噛合するピニオンギヤー部27とを含む。
【0046】
本例の移動手段25では、各ピニオンギヤー部27は、同心かつ一体回転可能に連結され、一つの歯車体28を構成する。しかも各ピニオンギヤー部27は、ドラム半径方向内側のプレート18のラックギヤー部26に噛合するピニオンギヤー部27ほど直径(ピッチ径)が小である。
【0047】
具体的には、第1のピニオンギヤー部27の直径D1、第2のピニオンギヤー部27の直径D2、第3のピニオンギヤー部27の直径D3、第4のピニオンギヤー部27の直径D4の間に、
D1<D2<D3<D4
の関係がある。
【0048】
又歯車体28では、ピニオンギヤー部27は、直径の小さい順に連結される。
【0049】
なお第1のピニオンギヤー部27は、前記第1のプレート18のラックギヤー部26に噛合するピニオンギヤー部27に相当する。第2のピニオンギヤー部27は、前記第2のプレート18のラックギヤー部26に噛合するピニオンギヤー部27に相当する。第3のピニオンギヤー部27は、前記第3のプレート18のラックギヤー部26に噛合するピニオンギヤー部27に相当する。第4のピニオンギヤー部27は、前記第4のプレート18のラックギヤー部26に噛合するピニオンギヤー部27に相当する。
【0050】
又直径D1~D4の直径差(D2-D1)、(D3-D2)、(D4-D3)は、同一であるのが好ましい。
【0051】
この歯車体28は、図3、7に示すように、ベース部15の凹部29に枢支されるとともに、ベース部15に取り付くモータM(図7に示す)により回転駆動される。
【0052】
図6、7に示すように、第1のプレート18には、第2~第4のピニオンギヤー部27~27との当接を避ける切欠き部30、第2のプレート18には、第3、第4のピニオンギヤー部27、27との当接を避ける切欠き部30、第3のプレート18には、第4のピニオンギヤー部27との当接を避ける切欠き部30がそれぞれ配される。
【0053】
なお移動手段25として、各ピニオンギヤー部27を、一体連結しないで、それぞれ独立した歯車体として形成するとともに、各歯車体を別々に駆動させることもできる。又移動手段25として、ラック・ピニオン機構以外の種々な構造を採用しうる。
【0054】
次に、タイヤ製造方法は、前記タイヤ成形用フォーマ1を用いて生タイヤを形成する工程を含む。
【0055】
タイヤ成形用フォーマ1は、生タイヤにおいて、予め形成された円筒状の1stカバー21上に、サイドウォールゴム24を貼り付ける際に使用される。この工程は、図9に示す従来の工程と同様に行うことができる。
【0056】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例
【0057】
図1~7に示す構造のフォーマを用い、異なるビードエーペックスゴムの高さを有する4つのサイズのタイヤ(表1に示す)をそれぞれ2000本製造した。比較例として、成形ドラムのテーパ部が一定の従来のフォーマが用いられた。なお前記フォーマは、予め形成され円筒状の1stカバーに、サイドウォールゴム等を貼り付けるために用いられる。それ以外は、各タイヤとも同工程で形成される。
【0058】
加硫後のタイヤを目視検査し、ディフェクトの発生率を比較した。ディフェクトとして、エアー残り、及びベアーサイドウォールジョイント(B/SJ)を検査している。B/SJとは、サイドウォールゴムのジョイント部の段差に発生するキズであり、ジョイント部の凹凸の大小に影響を受ける。
【0059】
【表1】
【0060】
表に示されるように、本発明のフォーマを用いることにより、タイヤサイズが異なる場合にも、タイヤを高品質で形成しうるのが確認できる。
【符号の説明】
【0061】
1 タイヤ成形フォーマ
3 成形ドラム
4 テーパ部
5 セグメント
15 ベース部
16 セグメント本体
17 傾斜部
18 プレート
18S 外端面
20 斜面
25 移動手段
26 ラックギヤー部
27 ピニオンギヤー部
L 移動距離
Q1 第1状態
Q2 第2状態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10