IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

特許7067362蓄電モジュール、蓄電装置及び蓄電装置の製造方法
<>
  • 特許-蓄電モジュール、蓄電装置及び蓄電装置の製造方法 図1
  • 特許-蓄電モジュール、蓄電装置及び蓄電装置の製造方法 図2
  • 特許-蓄電モジュール、蓄電装置及び蓄電装置の製造方法 図3
  • 特許-蓄電モジュール、蓄電装置及び蓄電装置の製造方法 図4
  • 特許-蓄電モジュール、蓄電装置及び蓄電装置の製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】蓄電モジュール、蓄電装置及び蓄電装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20220509BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20220509BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20220509BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20220509BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20220509BHJP
   H01M 50/51 20210101ALI20220509BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220509BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220509BHJP
   H01M 10/6553 20140101ALI20220509BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20220509BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20220509BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20220509BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20220509BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20220509BHJP
   H01M 50/516 20210101ALI20220509BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20220509BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20220509BHJP
   H01M 50/562 20210101ALI20220509BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20220509BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G11/84
H01G11/12
H01G11/80
H01M50/503
H01M50/51
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6553
H01M50/186
H01M50/193
H01M50/121
H01M50/103
H01M50/548 101
H01M50/516
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/562
H01M10/0585
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018155568
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2020030958
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】田丸 耕二郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 貴文
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-160481(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055858(WO,A1)
【文献】特開2018-018666(JP,A)
【文献】特開2018-125141(JP,A)
【文献】特開2018-125142(JP,A)
【文献】特開2007-213990(JP,A)
【文献】特開2014-072181(JP,A)
【文献】国際公開第2013/035210(WO,A1)
【文献】特開2020-030960(JP,A)
【文献】特開2020-030959(JP,A)
【文献】特開2020-030952(JP,A)
【文献】国際公開第2011/145608(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-39
H01G 11/84
H01G 11/12
H01G 11/80
H01M 50/10-298
H01M 50/50-598
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 10/6553
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に正極層が形成され、他方の面に負極層が形成された電極板からなるバイポーラ電極がセパレータを介して一方向に積層されたバイポーラ電極群と、前記一方向において前記バイポーラ電極群の一端にセパレータを介して配置され、前記バイポーラ電極群と対向する面に正極層が形成された電極板からなる第一終端電極と、前記一方向において前記バイポーラ電極群の他端にセパレータを介して配置され、前記バイポーラ電極群と対向する面に負極層が形成された電極板からなる第二終端電極と、を含んで構成された積層体と、
前記一方向において前記積層体の両端部の少なくとも一方に接触して配置され、前記一方向に直交する方向に延在する複数の孔部を有する導電板と、
前記積層体の側面を囲むように設けられる封止体と、を備え、
前記封止体は、
複数の前記バイポーラ電極、前記第一終端電極、及び前記第二終端電極のそれぞれの電極板の周縁に設けられる、複数の枠状の第一シール部と、
前記一方向に積層された複数の前記第一シール部の周縁を一体的に取り囲む第二シール部と、を有し、
前記導電板は、前記第一終端電極又は前記第二終端電極の周縁に設けられる前記第一シール部に固着されている、蓄電モジュール。
【請求項2】
複数の前記導電板が、前記一方向に直交する方向に配列されている、請求項1記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記導電板が固着される前記第一シール部は、酸変性ポリプロピレンによって形成されており、
前記導電板は、前記第一シール部に熱溶着されている、請求項1又は2記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記積層体は、前記第二終端電極の外側に配置された未塗工電極板を更に含み、
前記未塗工電極板の周縁には、前記第一シール部が設けられ、
前記導電板は、前記未塗工電極板の周縁に設けられた前記第一シール部に固着されている、請求項1~3の何れか一項記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記導電板は、前記一方向において、前記第二終端電極側に配置されている、請求項1~4の何れか一項記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項記載の複数の蓄電モジュールが、前記一方向に積層されている、蓄電装置。
【請求項7】
請求項1~5の何れか一項記載の蓄電モジュールを製造する第一工程と、
前記第一工程において製造した前記蓄電モジュールを一方向に積層する第二工程と、
を含む、蓄電装置の製造方法。
【請求項8】
前記第一工程において前記第一シール部に前記導電板を固着するときに、前記孔部の端部を覆うマスク処理が行われる、請求項7記載の蓄電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュール、蓄電装置及び蓄電装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集電体の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極を備える蓄電モジュール(バイポーラ電池)が知られている。例えば、特許文献1に記載の蓄電装置(組電池)は、上述したような蓄電モジュールが電気的に直列又は並列に積層されており、互いに隣り合う蓄電モジュール同士は、導電板(導電性を有する層)を介して接触されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-122977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような蓄電装置では、蓄電モジュールを一方向に積層して一体的に拘束する。このとき、隣り合う蓄電モジュール間に導電板を配置することにより、隣り合う蓄電モジュール間を電気的に接続する(以下、このような作業工程を、単に「一体化」と称する。)。しかしながら、蓄電モジュールには、導電板を位置決めするような部位が存在しない。このため、一体化するときに導電板の位置決めに時間を要する。
【0005】
本発明は、蓄電モジュールを一体化するときの作業性を向上させることができる蓄電モジュール、蓄電装置及び蓄電装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蓄電モジュールは、一方の面に正極層が形成され、他方の面に負極層が形成された電極板からなるバイポーラ電極がセパレータを介して一方向に積層されたバイポーラ電極群と、一方向において前記バイポーラ電極群の一端にセパレータを介して配置され、バイポーラ電極群と対向する面に正極層が形成された電極板からなる第一終端電極と、一方向においてバイポーラ電極群の他端にセパレータを介して配置され、バイポーラ電極群と対向する面に負極層が形成された電極板からなる第二終端電極と、を含んで構成された積層体と、一方向において積層体の両端部の少なくとも一方に接触して配置され、一方向に直交する方向に延在する複数の孔部を有する導電板と、積層体の側面を囲むように設けられる封止体と、を備え、封止体は、複数のバイポーラ電極、第一終端電極、及び第二終端電極のそれぞれの電極板の周縁に設けられる、複数の枠状の第一シール部と、一方向に積層された複数の第一シール部の周縁を一体的に取り囲む第二シール部と、を有し、導電板は、第一終端電極又は第二終端電極の周縁に設けられる第一シール部に固着されている。
【0007】
この構成の蓄電モジュールは、封止体の第一シール部に導電板が固着されている。すなわち、導電板は、蓄電モジュールとして一体化されている。これにより、蓄電モジュールを積層して蓄電装置を製造する工程において、隣り合う蓄電モジュール間に別体の導電板を位置決め配置する作業がなくなる。これにより、蓄電モジュールを一体化するときの作業性を向上させることができる。
【0008】
本発明に係る蓄電モジュールでは、複数の導電板が、一方向に直交する方向に配列されていてもよい。導電板が複数の部材(導電板)から形成される場合には、蓄電モジュールを一方向に積層する作業もより困難となる。この蓄電モジュールでは、このような場合であっても、蓄電モジュールを一体化するときの作業性を向上させることができる。
【0009】
本発明に係る蓄電モジュールでは、導電板が固着される第一シール部は、酸変性ポリプロピレンによって形成されており、導電板は、第一シール部に熱溶着されていてもよい。この構成の蓄電モジュールでは、導電板を第一シール部に容易に固着させることができる。
【0010】
本発明に係る蓄電モジュールでは、積層体は、第二終端電極の外側に配置された未塗工電極板を更に含み、未塗工電極板の周縁には、第一シール部が設けられ、導電板は、未塗工電極板の周縁に設けられた第一シール部に固着されていてもよい。ここで、例えば、電解液がアルカリ溶液からなる場合、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液が負極終端電極の電極板の表面を伝わり、封止体と当該電極板との間を通って当該電極板の外面側に滲み出てしまうことが生じ得る。この蓄電モジュールでは、上述したような滲み出しを抑制できるので、例えば負極終端電極に隣接して配置された導電板の腐食や、負極終端電極と拘束部材との短絡等を抑制でき、信頼性を向上させることができる。
【0011】
本発明に係る蓄電モジュールでは、導電板は、一方向において、第二終端電極側に配置されていてもよい。これにより、上述したような滲み出しを抑制できるので、信頼性を向上させることができると共に、導電板を第一シール部に貼り付ける際に熱及び圧力が加わった場合でも、電極へのダメージを低減することができる。
【0012】
本発明に係る蓄電装置では、上記の複数の蓄電モジュールが、一方向に積層されていてもよい。この構成の蓄電装置は、導電板が固着された蓄電モジュールを積層する工程において、隣り合う蓄電モジュール間に別体の導電板を位置決め配置する作業がなくなり、導電板が一体化された蓄電モジュールを積層するだけの簡易な作業となる。これにより、蓄電モジュールを一体化して蓄電装置を製造するときの作業性を向上させることができる。
【0013】
本発明に係る蓄電装置の製造方法は、上記の蓄電モジュールを製造する第一工程と、第一工程において製造した前記蓄電モジュールを一方向に積層する第二工程と、を含んでもよい。この蓄電装置の製造方法は、封止体の第一シール部に導電板が固着された蓄電モジュールを積層するので、隣り合う蓄電モジュール間に別体の導電板を位置決め配置する作業がなくなる。これにより、蓄電モジュールを一体化するときの作業性を向上させることができる。
【0014】
本発明に係る蓄電装置の製造方法では、第一工程において第一シール部に導電板を固着するときに、孔部の端部を覆うマスク処理が行われてもよい。これにより、蓄電モジュールの製造段階で、孔部が第一シール部によって塞がれることがなくなる。この結果、冷却性に優れた蓄電装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蓄電モジュールを一体化するときの作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る蓄電モジュールを備える蓄電装置を示す概略断面図である。
図2図1に示される蓄電モジュールの一実施形態を示す概略断面図である。
図3図1に示される蓄電モジュールを示す斜視図である。
図4】一実施形態に係る蓄電モジュール及び蓄電装置の製造方法を示すフローチャートである。
図5】蓄電モジュールの変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。図1図3には、XYZ直交座標系が示される。
【0018】
まず、一実施形態に係る蓄電モジュール12を備える蓄電装置10の構成について説明する。図1に示される蓄電装置10は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、又は電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電モジュール12は、例えば、バイポーラ電池である。蓄電モジュール12の例には、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、電気二重層キャパシタが含まれる。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0019】
複数の蓄電モジュール12は、例えば金属板等の導電板14を介して積層される。積層方向D1(Z方向)から見て、蓄電モジュール12及び導電板14は例えば矩形形状を有する。導電板14は、X方向に三枚配列される(図3参照)。各蓄電モジュール12の詳細については後述する。導電板14は、蓄電モジュール12の積層方向D1において両端に位置する蓄電モジュール12の外側にもそれぞれ配置される。導電板14は、隣り合う蓄電モジュール12と電気的に接続される。これにより、複数の蓄電モジュール12が積層方向D1に直列に接続される。
【0020】
積層方向D1において、一端に位置する導電板14には端子部材24が接続されており、他端に位置する導電板14には端子部材26が接続されている。端子部材24は、接続される導電板14と一体であってもよい。端子部材26は、接続される導電板14と一体であってもよい。端子部材24及び端子部材26は、積層方向D1に略直交する方向(X方向)に延在している。これらの端子部材24及び端子部材26により、蓄電装置10の充放電を実施できる。
【0021】
導電板14は、蓄電モジュール12において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板14の内部に設けられた複数の孔部14aを空気等の冷媒が通過することにより、蓄電モジュール12からの熱を効率的に外部に放出できる。各孔部14aは例えば積層方向D1に略直交する方向(Y方向)に延在する。積層方向D1から見て、導電板14は、蓄電モジュール12よりも小さいが、蓄電モジュール12と同じかそれより大きくてもよい。後段にて詳述するが、導電板14は、後述する蓄電モジュール12として一体的に形成されている。
【0022】
蓄電装置10は、交互に積層された蓄電モジュール12及び導電板14を積層方向D1に拘束する拘束部材16を備える。拘束部材16は、一対の拘束プレート16A,16Bと、拘束プレート16A,16B同士を連結する連結部材(ボルト18及びナット20)と、を備える。各拘束プレート16A,16Bと導電板14との間には、例えば樹脂フィルム等の絶縁フィルム22が配置される。各拘束プレート16A,16Bは、例えば鉄等の金属によって構成されている。積層方向D1から見て、各拘束プレート16A,16B及び絶縁フィルム22は例えば矩形形状を有する。絶縁フィルム22は導電板14よりも大きくなっており、各拘束プレート16A,16Bは、蓄電モジュール12よりも大きくなっている。
【0023】
積層方向D1から見て、拘束プレート16Aの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔H1が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。同様に、積層方向D1から見て、拘束プレート16Bの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔H2が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。積層方向D1から見て各拘束プレート16A,16Bが矩形形状を有している場合、挿通孔H1及び挿通孔H2は、拘束プレート16A,16Bの角部に位置する。
【0024】
一方の拘束プレート16Aは、端子部材26に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられ、他方の拘束プレート16Bは、端子部材24に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられている。ボルト18は、例えば一方の拘束プレート16A側から他方の拘束プレート16B側に向かって挿通孔H1に通され、他方の拘束プレート16Bから突出するボルト18の先端には、ナット20が螺合されている。これにより、絶縁フィルム22、導電板14及び蓄電モジュール12が挟持されてユニット化されると共に、積層方向D1に拘束荷重が付加される。
【0025】
図2及び図3に示されるように、蓄電モジュール12は、バイポーラ電極群31と、第一終端電極39Aと、第二終端電極39Bと、を含んで構成される積層体30を備えている。バイポーラ電極群31は、一方の面に正極層36が形成され、他方の面に負極層38が形成された電極板34からなるバイポーラ電極32がセパレータ40を介してZ方向(一方向)に積層されている。第一終端電極39Aは、Z方向においてバイポーラ電極群31の一端にセパレータ40を介して配置され、バイポーラ電極群31と対向する面(内側面)に正極層36が形成された電極板34からなる。第二終端電極39Bは、Z方向においてバイポーラ電極群31の他端にセパレータ40を介して配置され、バイポーラ電極群31と対向する面(内側面)に負極層38が形成された電極板34からなる。
【0026】
積層方向D1から見て積層体30は例えば矩形形状を有する。積層体30において、一のバイポーラ電極32の正極層36は、セパレータ40を挟んで積層方向D1に隣り合う一方のバイポーラ電極32の負極層38と対向し、一のバイポーラ電極32の負極層38は、セパレータ40を挟んで積層方向D1に隣り合う他方のバイポーラ電極32の正極層36と対向している。第一終端電極39Aの正極層36は、セパレータ40を介して最下層のバイポーラ電極32の負極層38と対向している。第二終端電極39Bの負極層38は、セパレータ40を介して最上層のバイポーラ電極32の正極層36と対向している。
【0027】
電極板34は、例えばニッケルからなる矩形の金属箔である。或いは、電極板34は、ニッケルめっき鋼板であってもよい。電極板34の周縁部34aは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっており、当該未塗工領域が枠体50の内壁を構成する第一シール部52に埋没して保持される領域となっている。正極層36を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極層38を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。電極板34の他方の面における負極層38の形成領域は、電極板34の一方の面における正極層36の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0028】
セパレータ40は、例えばシート状に形成されている。セパレータ40は、隣り合うバイポーラ電極32,32間の短絡を防止する部材である。セパレータ40を形成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン等からなる織布又は不織布等が例示される。また、セパレータ40は、フッ化ビニリデン樹脂化合物等で補強されたものであってもよい。
【0029】
蓄電モジュール12は、積層方向D1に延在する積層体30の側面30aにおいて電極板34の周縁部34aを保持する枠体(封止体)50を備える。枠体50は、積層方向D1から見て積層体30の周囲に設けられている。すなわち、枠体50は、積層体30の側面30aを取り囲むように構成されている。枠体50は、複数のバイポーラ電極32、第一終端電極39A、及び第二終端電極39Bのそれぞれの電極板34の周縁に設けられる、複数の枠状の第一シール部52と、Z方向に積層された複数の第一シール部52の周縁(積層方向D1から見て第一シール部52の周囲)を一体的に取り囲む第二シール部54と、を有している。
【0030】
枠体50の内壁を構成する第一シール部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の一方の面(ここでは正極層36が形成される面)から周縁部34aにおける電極板34の端面にわたって設けられている。積層方向D1から見て、各第一シール部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の周縁部34a全周にわたって設けられている。隣り合う第一シール部52同士は、各バイポーラ電極32の電極板34の他方の面(ここでは負極層38が形成される面)の外側に延在する面において溶着されている。その結果、第一シール部52には、各バイポーラ電極32の電極板34の周縁部34aが埋没して保持されている。
【0031】
各バイポーラ電極32の電極板34の周縁部34aと同様に、積層体30の両端に配置される第一終端電極39A及び第二終端電極39Bにおける電極板34の周縁部34aも第一シール部52に埋没した状態で保持されている。第一終端電極39Aについては、第一終端電極39Aの外側面(導電板14に接続される面)にも、第一シール部52が設けられている。すなわち、第一終端電極39Aにおける電極板34の周縁部34aは、第一終端電極39Aの外側面に設けられた第一シール部52(図2において一番下に設けられた第一シール部52)と、第一終端電極39Aの一方の面に設けられた第一シール部52とに埋没した状態で保持されている。
【0032】
枠体50の外側面を形成する第二シール部54は、第一シール部52の側面を覆う側面部54aと、積層方向D1から見た平面視において側面部54aから内側に向かって張り出す張出部54bと、を有している。
【0033】
積層方向D1に隣り合う電極板34,34間には、当該電極板34,34と第一シール部52とによって気密に仕切られた複数の内部空間Vが形成されている。当該内部空間Vの一部には、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液からなる電解液(不図示)が存在する。
【0034】
枠体50を構成する一の側面50sには、圧力調整弁60が取り付けられる複数(ここでは四つ)の弁取付領域50aが設けられている。第一シール部52の各弁取付領域50aには、複数の連通孔(不図示)が設けられている。この連通孔は、蓄電モジュール12の各セルの内部空間Vに連通している。また、第二シール部54にも弁取付領域50aが設けられている。このため第二シール部54には、上記連通孔につながる複数の孔が設けられている。
【0035】
圧力調整弁60は、内部空間Vの内圧に応じて開閉して圧力を調整する(例えば内圧が所定値を超えたときに開き、ガスを抜く)機能を有する部材である。圧力調整弁60は、弁取付領域50aに取り付けられている。弁取付領域50aに設けられる孔及び連通孔は、内部空間Vへ電解液を注入するための注液口(電解液注入口)として用いることもできる。
【0036】
枠体50(第一シール部52及び第二シール部54)は、例えば絶縁性の樹脂によって矩形筒状に形成されている。第一シール部52を構成する樹脂材料の例には、酸変性ポリプロピレンが含まれる。第一シール部52を構成する樹脂材料の例には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が含まれる。
【0037】
導電板14は、Z方向において積層体30の両端部(すなわち、第一終端電極39A及び第二終端電極39B)の少なくとも一方に接触して配置される。本実施形態では、導電板14は、Z方向において、第二終端電極39B側に配置されている。導電板14は、導電部材134を介して電極板34に接触している。導電板14は、第二終端電極39Bにおける電極板34の周縁部34aに設けられる第一シール部52に溶着(固着)されている。電極板34の第一シール部52への接触部分は、周縁部34aの枠状部分であるが、当該接触部分の全てが第一シール部52に溶着されている。導電板14は、Z方向から見た平面視において、第二シール部54の張出部54bの内側に配置されている。
【0038】
次に、上述したような構成の蓄電装置10の製造方法について説明する。図4に示されるように、まず、上述した構成の蓄電モジュール12を製造する。蓄電モジュール12を製造する第一工程S1は、積層体形成工程S11と、導電板設置工程S12と、第二シール部形成工程S13と、を含んでいる。
【0039】
積層体形成工程S11は、電極板34の周縁部34aに、枠状の第一シール部52が配置された状態のバイポーラ電極32をセパレータ40を介して積層し、バイポーラ電極群31を形成する。次に、バイポーラ電極群31の両端に、第一終端電極39Aと第二終端電極39Bとをセパレータ40を介して配置し、これらを溶着して一体化すれば積層体30となる中間体を形成する。次に、積層体30を熱板溶着機に設置して、第一シール部52と電極板34と溶着すると共に、第一シール部52同士を溶着して積層体30を形成する。
【0040】
導電板設置工程S12は、積層体30において第二終端電極39Bに設けられた第一シール部52と導電板14とを溶着する。本実施形態では、X方向に三枚の導電板14を配列する。なお、第二終端電極39Bに設けられた第一シール部52に導電板14を溶着する作業は、積層体形成工程S11と同時に実施してもよい。すなわち、積層体30を形成すると同時に実施してもよい。本実施形態では、第一シール部52が酸変性ポリプロピレンによって形成されているので、第一シール部52と導電板14とを熱溶着によって固着させる。導電板設置工程S12では、導電板14の孔部14aの端部を覆うマスク処理を実施する。マスク処理の例には、マスキングテープの貼付、入れ子の配置等が含まれる。
【0041】
第二シール部形成工程S13は、第一シール部52の周縁を一体的に取り囲む。本実施形態では、第二シール部54は、例えば、射出成形等により形成される。第二シール部54は、第一シール部52の周縁にモールドを設置し、当該モールド内に流動性を有する第二シール部54の樹脂材料を流し込むことによって形成される。これにより、図2に示されるように、第一シール部52及び第二シール部54を有する枠体50が形成される。これにより、図2に示されるように、積層方向D1の一端に導電板14が固着された蓄電モジュール12が形成される。同時に、積層方向D1の一端に導電板14が固着された蓄電モジュール12が形成される。すなわち、図3に示されるような蓄電モジュール12が形成される。
【0042】
次に、上述した構成の蓄電装置10を製造する。蓄電装置10を製造する第二工程S2は、蓄電モジュール積層工程S21と、配列体拘束工程S22と、を含んでいる。
【0043】
蓄電モジュール積層工程S21は、第一工程S1において製造した蓄電モジュール12を一方向に積層して配列体を形成する。導電板14は、Z方向において蓄電モジュール12の一方側にしか配置されていないので、配列体の他端側には別体の導電板14を配置する。これにより、Z方向の両端に導電板14,14が配置された配列体が形成される。
【0044】
次に、このようにして形成された配列体の両端に、絶縁フィルム22を介して一対の拘束プレート16A,16Bを配置し、連結部材(ボルト18及びナット20)によって拘束プレート16A,16B同士を連結する。これにより、絶縁フィルム22、導電板14及び蓄電モジュール12が挟持されて一体化(ユニット化)されると共に、積層方向D1に拘束荷重が付加される。
【0045】
上記実施形態の蓄電モジュール12及び蓄電装置10の作用効果について説明する。図2及び図3に示されるように、上記実施形態の蓄電モジュール12は、第一シール部52に導電板14が溶着されている。すなわち、導電板14は、蓄電モジュール12として一体化されている。これにより、蓄電モジュール12を積層して蓄電装置10を製造する工程において、隣り合う蓄電モジュール12,12間に別体の導電板14を位置決め配置する作業がなくなる。これにより、蓄電モジュール12を一体化するときの作業性を向上させることができる。
【0046】
上記実施形態の蓄電モジュール12では、複数(三枚)の導電板14が、Z方向に直交するX方向に配列されている。このように導電板14が複数の部材(導電板14)から形成される場合には、蓄電モジュール12を一方向に積層する作業もより困難となる。上記実施形態の蓄電モジュール12では、このような場合であっても、蓄電モジュール12を一体化するときの作業性を向上させることができる。
【0047】
上記実施形態の蓄電モジュール12では、導電板14が溶着される第一シール部52は、酸変性ポリプロピレンによって形成されており、導電板14は、第一シール部52に熱溶着されている。このため、導電板14を第一シール部52に固着する作業が容易となる。
【0048】
上記実施形態の蓄電モジュール12では、導電板14は、Z方向において、第二終端電極39B側に配置されているので、上述したような滲み出しを抑制できるので、信頼性を向上させることができると共に、導電板14を第一シール部52に貼り付ける際に熱及び圧力が加わった場合でも、バイポーラ電極32へのダメージを低減することができる。
【0049】
上記実施形態の蓄電装置10では、上述した複数の蓄電モジュール12が、Z方向に積層されている。この構成の蓄電装置10は、導電板14が溶着された蓄電モジュール12を積層する蓄電モジュール積層工程S21において、隣り合う蓄電モジュール12,12間に別体の導電板14を位置決め配置する作業がなくなり、導電板14が一体化された蓄電モジュール12を積層するだけの簡易な作業となる。これにより、蓄電モジュール12を一体化して蓄電装置10を製造するときの作業性を向上させることができる。
【0050】
上記実施形態の蓄電装置10の製造方法は、第一シール部52に導電板14が溶着された蓄電モジュール12を積層するので、隣り合う蓄電モジュール12,12間に別体の導電板14を位置決め配置する作業がなくなる。これにより、蓄電モジュール12を一体化するときの作業性を向上させることができる。
【0051】
上記実施形態の蓄電装置10の製造方法は、第一工程S1において第一シール部52に導電板14を溶着するときに、孔部14aの端部を覆うマスク処理が行われる。これにより、蓄電モジュール12の製造段階で、孔部14aが第一シール部52によって塞がれることがなくなる。この結果、冷却性に優れた蓄電モジュール12及び蓄電装置10を提供することができる。
【0052】
以上、一実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0053】
上記実施形態では、第一シール部52が酸変性ポリプロピレンから形成される例を挙げて説明したが、第一シール部52は、第二シール部54と同様に、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等から形成してもよい。この場合、導電板14は、第一シール部52に対して、接着剤又はシール等によって固着してもよい。
【0054】
上記実施形態及び変形例では、電極板34の第一シール部52への接触部分の全てが第一シール部52に溶着されている例を挙げて説明したが一部のみが溶着されていてもよい。すなわち、電極板34と第一シール部52との溶着部分が断続的に設けられてもよい。
【0055】
図5に示されるように、上記実施形態及び変形例の構成に加えて、蓄電モジュール12の積層体30は、第二終端電極39Bの外側に配置された未塗工電極板33を含んでいてもよい。未塗工電極板33の周縁部33aには、第一シール部52が設けられ、導電板14は、未塗工電極板33の周縁部33aに設けられた第一シール部52に固着されている。上記実施形態及び変形例では、電解液がアルカリ溶液からなるので、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液が第二終端電極39Bの電極板34の表面を伝わり、第一シール部52と導電板14との間を通って当該導電板14の外面側に滲み出てしまうことが生じ得る。この変形例に係る蓄電モジュール12では、上述したような滲み出しを抑制できるので、第二終端電極39Bに隣接して配置された導電板14の腐食や、第二終端電極39Bと拘束部材との短絡等を抑制でき、信頼性を向上させることができる。
【0056】
なお、上記変形例では、第二終端電極39Bに隣接して未塗工電極板33を配置した例を挙げて説明したが、この構成に代えて、又は加えて、第一終端電極39Aに隣接して未塗工電極板33を配置してもよい。この場合にも、上記と同様の効果を得ることができる。導電板14に隣接させて未塗工電極板33を設ける場合には、導電板14を第一シール部52に溶着する際に熱及び圧力が加わった場合でも、バイポーラ電極32へのダメージを低減することができる。
【0057】
上記実施形態及び変形例では、図3に示されるように、導電板14は、X方向に三枚配列される例を挙げて説明したが一枚ものの導電板14が配置されてもよいし、二枚又は四枚以上の導電板14が配列されてもよい。
【0058】
上記実施形態及び変形例では、図2及び図3に示されるように、導電板14は、積層方向D1において蓄電モジュール12の一方にのみ固着されている構成を例に挙げて説明したが、両方に固着されている構成であってもよい。蓄電装置10として一体化する場合には、積層方向D1において両方に導電板14が固着された構成の蓄電モジュールと、導電板14が固着されていない構成の蓄電モジュールとを交互に積み重ねればよい。
【0059】
上記実施形態及び変形例では、電極板34の周縁部に第一シール部52を溶着することによって枠体50を形成する例を挙げて説明したが、射出成形によって電極板34の周縁部に枠体50を形成してもよい。
【0060】
上記実施形態及び変形例では、ニッケル水素電池の製造方法を挙げて説明したが、リチウムイオン二次電池の製造方法に適用してもよい。この場合、正極が形成された電極板と負極が形成された電極板とがセパレータ介して積層される積層体を含む構成であってもよい。正極活物質は、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等である。負極活物質は、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等である。電極板は、ステンレススチール箔等を用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
10…蓄電装置、12…蓄電モジュール、14…導電板、14a…孔部、30…積層体、31…バイポーラ電極群、32…バイポーラ電極、33…未塗工電極板、34…電極板、34a…周縁部、36…正極層、38…負極層、39A…第一終端電極、39B…第二終端電極、40…セパレータ、50…枠体、50a…弁取付領域、50s…側面、52…第一シール部、54…第二シール部、60…圧力調整弁、D1…積層方向、S1…第一工程、S11…積層体形成工程、S12…導電板設置工程、S13…第二シール部形成工程、S2…第二工程、S21…蓄電モジュール積層工程、S22…配列体拘束工程、V…内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5