(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】車両の前部車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20220509BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B62D25/08 E
B62D25/20 C
(21)【出願番号】P 2018155732
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】松岡 弘樹
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0043810(US,A1)
【文献】特開2002-166849(JP,A)
【文献】特開2018-016178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車幅方向に所定間隔を隔てた位置で車両上下方向に延びる左右一対のヒンジピラーと、
該ヒンジピラーよりも車幅方向内側、かつ車両前方の所望位置に配設された左右一対のフロントサスダンパと、
該フロントサスダンパの上端が取付けられるダンパ取付け部を有する左右一対のサスペンションハウジングと、
前記ヒンジピラーの上部に連結された後端から車両前方側へ延びるとともに、前記サスペンションハウジングの上端が連結された左右一対のエプロンレインフォースメントとを備えた車両の前部車体構造であって、
前記エプロンレインフォースメントが、
平面視において、その後端から前記ダンパ取付け部の車幅方向外側をとおって、車両前方、かつ車幅方向内側へ略直線的に延びる形状に形成され
、
前記サスペンションハウジングが、
前記ダンパ取付け部を設けたサスタワー部と、
該サスタワー部の上端から車幅方向外側へ延設されるとともに、前記ダンパ取付け部と略同じ車両前後方向の位置における車幅方向に沿った縦断面において、車両上方側に配設された前記エプロンレインフォースメントのエプロンレインアッパとで閉断面をなす形状に形成された外方延設部とを備え、
該外方延設部が、
アッパアームの揺動軌跡に重合する部分を車両上方側に膨出して形成したアーム逃げ部を備え、
該アーム逃げ部が、
前記ダンパ取付け部と略同じ車両前後方向の位置における車幅方向に沿った縦断面において、前記エプロンレインアッパとで閉断面をなす部分に形成された
車両の前部車体構造。
【請求項2】
前記エプロンレインアッパが、
車幅方向内側に位置する内側フランジ部、及び車幅方向外側に位置する外側フランジ部を有して、車両上方に突出した断面略ハット状に形成され、
前記外方延設部が、
前記サスタワー部から車幅方向外側へ向けて延設された内側フランジ部と、
該内側フランジ部の車幅方向外側に形成された前記アーム逃げ部と、
前記アーム逃げ部の車幅方向外側に形成された外側フランジ部とを備え、
前記エプロンレインアッパの内側フランジ部が、前記外方延設部の内側フランジ部に接合され、
前記エプロンレインアッパの外側フランジ部が、前記外方延設部の外側フランジ部に接合された
請求項1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
前記エプロンレインフォースメントにおける車幅方向内側の縁端が、
平面視において、前記サスペンションハウジングの前記ダンパ取付け部と略同じ車両前後方向の位置に頂部が位置するように、車幅方向内側へ膨出した形状に形成された
請求項1
または請求項2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
前記外方延設部が、
前記エプロンレインフォースメントの一部として配設可能な形状に形成された
請求項1
から請求項3のいずれか1つに記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
前記エプロンレインフォースメントが、
前記エプロンレインアッパと、前記エプロンレインアッパに対して車両下方に配設されるエプロンレインロアとで構成され、
前記エプロンレインロアが、
前記サスペンションハウジングの前記外方延設部と、前記外方延設部の前端に連結され、車両前方へ延びるロアパネルとで構成された
請求項3に記載の車両の前部車体構造。
【請求項6】
前記サスペンションハウジングの前記外方延設部が
、
前記ダンパ取付け部と略同じ車両前後方向の位置において、
前記エプロンレインアッパとで閉断面をなす部分に、車幅方向に沿って車両上方へ立設された上方補強リブを備えた
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の車両の前部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両のフロントサスダンパを支持するアルミダイキャスト製のサスペンションハウジングが、鉄鋼製のエプロンレインフォースメントに接合されたような車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、例えば、路面の凹凸に応じて伸縮することで、車体の上下動を抑制して、乗員に対する乗り心地を確保するフロントサスペンションダンパ(以下、「フロントサスダンパ」と呼ぶ)を支持する部材として、アルミダイキャスト製のサスペンションハウジングが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このようなアルミダイキャスト製のサスペンションハウジングは、例えば、プレス成形に比べて形状成形自由度が高いため、フロントサスダンパからの入力荷重に対する剛性を確保し易い。
ところが、サスペンションハウジングを高剛性化すると、フロントサスダンパからの入力荷重がサスペンションハウジングに作用した際、サスペンションハウジングと車体との連結部分が応力集中部位となるおそれがあった。
【0004】
特に、特許文献1のように、アルミダイキャスト製のサスペンションハウジングと、鉄鋼製のエプロンレインフォースメントとを接合して連結する場合、その連結部分がより応力集中部位となり易いため、エプロンレインフォースメントとサスペンションハウジングとの連結部分における剛性を向上することが望ましい。
【0005】
しかしながら、エプロンレインフォースメントとサスペンションハウジングとの連結部分の周囲には、車幅方向外側、及び車両上方を覆うフロントフェンダや、車両上下方向に揺動するサスペンションアームが配設されるため、エプロンレインフォースメントとサスペンションハウジングとの連結部分を補強する補強部を設けると、フロントフェンダの配置スペースやサスペンションアームの揺動スペースを圧迫するおそれがあった。このため、エプロンレインフォースメントとサスペンションハウジングとの連結部分には、連結部分を補強する補強部を設け難いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、フロントフェンダの配置スペースやサスペンションアームの揺動スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメントとサスペンションハウジングとの連結部分における剛性を向上できる車両の前部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、車両の車幅方向に所定間隔を隔てた位置で車両上下方向に延びる左右一対のヒンジピラーと、該ヒンジピラーよりも車幅方向内側、かつ車両前方の所望位置に配設された左右一対のフロントサスダンパと、該フロントサスダンパの上端が取付けられるダンパ取付け部を有する左右一対のサスペンションハウジングと、前記ヒンジピラーの上部に連結された後端から車両前方側へ延びるとともに、前記サスペンションハウジングの上端が連結された左右一対のエプロンレインフォースメントとを備えた車両の前部車体構造であって、前記エプロンレインフォースメントが、平面視において、その後端から前記ダンパ取付け部の車幅方向外側をとおって、車両前方、かつ車幅方向内側へ略直線的に延びる形状に形成され、前記サスペンションハウジングが、前記ダンパ取付け部を設けたサスタワー部と、該サスタワー部の上端から車幅方向外側へ延設されるとともに、前記ダンパ取付け部と略同じ車両前後方向の位置における車幅方向に沿った縦断面において、車両上方側に配設された前記エプロンレインフォースメントのエプロンレインアッパとで閉断面をなす形状に形成された外方延設部とを備え、該外方延設部が、アッパアームの揺動軌跡に重合する部分を車両上方側に膨出して形成したアーム逃げ部を備え、該アーム逃げ部が、前記ダンパ取付け部と略同じ車両前後方向の位置における車幅方向に沿った縦断面において、前記エプロンレインアッパとで閉断面をなす部分に形成されたことを特徴とする。
【0009】
この発明により、フロントフェンダの配置スペースやサスペンションアームの揺動スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメントとサスペンションハウジングとの連結部分における剛性を向上することができる。
【0010】
具体的には、エプロンレインフォースメントが、平面視において、後端から車両前方、かつ車幅方向内側へ向けて略直線的に延びる形状に形成されているため、車両の前部車体構造は、後端から車両前後方向に沿って略直線的に延びるエプロンレインフォースメントに比べて、所望位置に配設されたフロントサスダンパにエプロンレインフォースメントを近接させることができる。
【0011】
換言すれば、車両の前部車体構造は、車幅方向におけるサスペンションハウジングのダンパ取付け部とエプロンレインフォースメントとの間隔を、後端から車両前後方向に沿って略直線的に延びるエプロンレインフォースメントに比べて短くすることができる。
【0012】
これにより、車両の前部車体構造は、サスペンションハウジングの小型軽量化と高剛性化とを図ることができる。さらに、車両の前部車体構造は、フロントサスダンパからの入力荷重がサスペンションハウジングに作用した際、サスペンションハウジングとエプロンレインフォースメントとの連結部分に作用する曲げモーメントを、別途補強部を設けることなく抑制することができる。
【0013】
従って、車両の前部車体構造は、フロントフェンダの配置スペースやサスペンションアームの揺動スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメントとサスペンションハウジングとの連結部分における剛性を向上することができる。
【0014】
さらに、この発明は、前記サスペンションハウジングの前記外方延設部が、前記ダンパ取付け部と略同じ車両前後方向の位置において、アッパアームの揺動軌跡と重合する部分を車両上方側に膨出して形成したアーム逃げ部を備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、車両の前部車体構造は、サスペンションハウジングの外方延設部とエプロンレインフォースメントのエプロンレインアッパとで形成された閉断面空間を活用して、アッパアームの揺動スペースを確実に確保することができる。
【0016】
さらに、外方延設部とエプロンレインアッパとで形成された閉断面空間にアーム逃げ部が形成されるため、車両の前部車体構造は、例えば、フロントフェンダの配置スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメントとサスペンションハウジングとの連結部分を補強する補強部として、アーム逃げ部を機能させることができる。
【0017】
これにより、車両の前部車体構造は、サスペンションハウジングとエプロンレインフォースメントとの連結部分に作用する曲げモーメントに対する剛性をより確実に向上することができる。
【0018】
従って、車両の前部車体構造は、外方延設部に設けたアーム逃げ部により、フロントフェンダの配置スペースやサスペンションアームの揺動スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメントとサスペンションハウジングとの連結部分における剛性をより確実に向上することができる。
【0019】
この発明の態様として、前記エプロンレインアッパが、車幅方向内側に位置する内側フランジ部、及び車幅方向外側に位置する外側フランジ部を有して、車両上方に突出した断面略ハット状に形成され、前記外方延設部が、前記サスタワー部から車幅方向外側へ向けて延設された内側フランジ部と、該内側フランジ部の車幅方向外側に形成された前記アーム逃げ部と、前記アーム逃げ部の車幅方向外側に形成された外側フランジ部とを備え、前記エプロンレインアッパの内側フランジ部が、前記外方延設部の内側フランジ部に接合され、前記エプロンレインアッパの外側フランジ部が、前記外方延設部の外側フランジ部に接合されてもよい。
【0020】
この発明の態様として、前記エプロンレインフォースメントにおける車幅方向内側の縁端が、平面視において、前記サスペンションハウジングの前記ダンパ取付け部と略同じ車両前後方向の位置に頂部が位置するように、車幅方向内側へ膨出した形状に形成されてもよい。
【0021】
この発明により、車両の前部車体構造は、車幅方向におけるサスペンションハウジングのダンパ支持部とエプロンレインフォースメントとの間隔をさらに短くすることができる。
このため、車両の前部車体構造は、フロントサスダンパからの入力荷重がサスペンションハウジングに作用した際、サスペンションハウジングとエプロンレインフォースメントとの連結部分に作用する曲げモーメントをより抑制することができる。
【0022】
従って、車両の前部車体構造は、エプロンレインフォースメントにおける車幅方向内側の縁端を、車幅方向内側へ膨出した形状に形成したことにより、エプロンレインフォースメントとサスペンションハウジングとの連結部分における剛性をより向上することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記外方延設部が、前記エプロンレインフォースメントの一部として配設可能な形状に形成されてもよい。
上記エプロンレインフォースメントの一部として配設可能な形状とは、エプロンレインフォースメントの一部として構成される形状、あるいはエプロンレインフォースメントに重ね合せて接合可能な形状のことをいう。
【0024】
この発明により、車両の前部車体構造は、サスペンションハウジングの外方延設部が、エプロンレインフォースメントの一部をなすように、サスペンションハウジングとエプロンレインフォースメントとを連結することができる。
【0025】
このため、車両の前部車体構造は、フロントサスダンパからの入力荷重がサスペンションハウジングに作用した際、サスペンションハウジングとエプロンレインフォースメントとの間における相対的な変位差をさらに抑えることができる。
【0026】
つまり、車両の前部車体構造は、フロントサスダンパからの入力荷重がサスペンションハウジングに作用した際、サスペンションハウジングとエプロンレインフォースメントとを略一体的に変位させることができる。
これにより、車両の前部車体構造は、サスペンションハウジングとエプロンレインフォースメントとの連結部分に作用する曲げモーメントに対する剛性をさらに向上することができる。
【0027】
従って、車両の前部車体構造は、エプロンレインフォースメントの一部として配設可能な外方延設部によって、フロントフェンダの配置スペースやサスペンションアームの揺動スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメントとサスペンションハウジングとの連結部分における剛性をさらに向上することができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記エプロンレインフォースメントが、前記エプロンレインアッパと、前記エプロンレインアッパに対して車両下方に配設されるエプロンレインロアとで構成され、前記エプロンレインロアが、前記サスペンションハウジングの前記外方延設部と、前記外方延設部の前端に連結され、車両前方へ延びるロアパネルとで構成されてもよい。
【0029】
またこの発明の態様として、前記サスペンションハウジングの前記外方延設部が、前記ダンパ取付け部と略同じ車両前後方向の位置において、前記エプロンレインアッパとで閉断面をなす部分に、車幅方向に沿って車両上方へ立設された上方補強リブを備えてもよい。
【0030】
この発明により、車両の前部車体構造は、サスペンションハウジングの外方延設部と、エプロンレインフォースメントのエプロンレインアッパとで形成された閉断面空間を活用して上方補強リブを設けることができる。このため、車両の前部車体構造は、フロントフェンダの配置スペースやサスペンションアームの揺動スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメントとサスペンションハウジングとの連結部分を補強することができる。
【0031】
さらに、車両の前部車体構造は、フロントサスダンパからの入力荷重がサスペンションハウジングに作用した際、サスペンションハウジングとエプロンレインフォースメントとの間における相対的な変位差を、上方補強リブによってさらに抑えることができる。
これにより、車両の前部車体構造は、サスペンションハウジングとエプロンレインフォースメントとの連結部分に作用する曲げモーメントに対する剛性をさらに確実に向上することができる。
【0032】
従って、車両の前部車体構造は、外方延設部の上方補強リブにより、フロントフェンダの配置スペースやサスペンションアームの揺動スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメントとサスペンションハウジングとの連結部分における剛性をさらに確実に向上することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、フロントフェンダの配置スペースやサスペンションアームの揺動スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメントとサスペンションハウジングとの連結部分における剛性を向上できる車両の前部車体構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】前部車体の外観を車両前方上方視で示す外観斜視図。
【
図5】サブフレームの外観を車両前方上方視で示す外観斜視図。
【
図7】エプロンレインロアの外観を車両前方上方視で示す外観斜視図。
【
図8】車両右側のサスペンションハウジングの外観を示す外観斜視図。
【
図9】サスペンションハウジング近傍を左側面視で示す左側面図。
【
図11】エプロンレイン構成部の下面を示す底面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
なお、
図1は前部車体の車両前方上方視における外観斜視図を示し、
図2は前部車体の平面図を示し、
図3は前部車体の左側面図を示し、
図4は
図2中のA-A矢視断面図を示し、
図5はサブフレーム11の車両前方上方視における外観斜視図を示し、
図6は環状車体骨格Wを説明する説明図を示している。
【0036】
さらに、
図7はエプロンレインロア54の車両前方上方視における外観斜視図を示し、
図8は車両右側のサスペンションハウジング9の外観斜視図を示し、
図9はサスペンションハウジング9近傍の左側面視における左側面図を示し、
図10は
図9中のB-B矢視断面図を示し、
図11はエプロンレイン構成部94の底面図を示している。
【0037】
また、図示を明確にするため、
図3中においてロアアーム16の図示を省略するとともに、
図9中においてアッパアーム15の図示を省略している。
また、図中において、矢印Fr及びRrは前後方向を示しており、矢印Frは前方を示し、矢印Rrは後方を示している。
さらに、矢印Rh及びLhは幅方向を示しており、矢印Rhは右方向を示し、矢印Lhは左方向を示している。加えて、矢印INは車幅方向内側を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示している。
【0038】
本実施形態における車両1の前部車体は、
図1から
図3に示すように、車幅方向に所定間隔を隔てた位置で車両上下方向に延びる左右一対のヒンジピラー2と、ヒンジピラー2の上部を車幅方向に連結するカウルボックス3と、ヒンジピラー2の間に配設されたダッシュパネル4とを備えている。
【0039】
さらに、車両1の前部車体は、
図1から
図3に示すように、ヒンジピラー2の上部から車両前方へ延びる左右一対のエプロンレインフォースメント5と、エプロンレインフォースメント5の前端を車幅方向に連結するシュラウドアッパ6と、エプロンレインフォースメント5よりも車幅方向内側、かつ車両下方を車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム7とを備えている。
【0040】
加えて、車両1の前部車体は、
図1及び
図3に示すように、シュラウドアッパ6、及びフロントサイドフレーム7の前端を車両上下方向に連結する左右一対のシュラウドメンバ8と、ヒンジピラー2、及びシュラウドメンバ8の間に配設された左右一対のサスペンションハウジング9と、左右のサスペンションハウジング9を連結するタワーバー10と、フロントサイドフレーム7の車両下方に配設されたサブフレーム11とを備えている。
【0041】
ヒンジピラー2は、車両前後方向に沿った水平断面における断面形状が閉断面をなす閉断面部材であって、
図1及び
図3に示すように、車室下部を車両前後方向に延びるサイドシル12の前端と、サイドシル12の車両上方を車両前後方向に延びるフロントピラー13の前端とを、車両上下方向に連結している。
【0042】
また、カウルボックス3は、
図2に示すように、平面視において、車幅方向略中央が車両前方へ突出した平面視略円弧状に形成されている。このカウルボックス3は、詳細な図示を省略するが、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなす閉断面部材であって、車両下方に配設されたカウルロアと、カウルロアを車両上方から覆うカウルアッパとで構成されている。
【0043】
また、ダッシュパネル4は、
図1に示すように、車室の前壁をなすパネル部材であって、車幅方向の両端がそれぞれ左右のヒンジピラー2に接合されるとともに、上端がカウルボックス3に接合されている。
また、エプロンレインフォースメント5は、
図2に示すように、平面視において、車両前後方向に略直線的に延びる形状に形成された閉断面部材であって、後端に対して前端が車幅方向内側に位置するように配設されている。
【0044】
なお、エプロンレインフォースメント5における車幅方向内側の縁端は、
図2に示すように、平面視において、後述するサスペンションハウジング9のダンパ取付け部911と略同じ車両前後方向の位置に頂部が位置するように、車幅方向内側へ突出した平面視略円弧状に形成されている。このエプロンレインフォースメント5については、後ほど詳述する。
【0045】
また、シュラウドアッパ6は、詳細な図示を省略するが、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面となる閉断面部材であって、車両下方に突出した断面略ハット状のシュラウドロアパネルと、車両上方に突出した断面略ハット状のシュラウドアッパパネルとで構成されている。
【0046】
また、フロントサイドフレーム7は、
図2及び
図3に示すように、エプロンレインフォースメント5よりも車両下方、かつ車幅方向内側に配設されるとともに、その後端がフロアパネル(図示省略)とで車両前後方向に延びる閉断面をなすフロアフレーム(図示省略)の前端、及びダッシュパネル4の下部に連結されている。
【0047】
このフロントサイドフレーム7は、
図4に示すように、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が断面略矩形の閉断面形状であって、車幅方向内側に配設された断面略ハット状のサイドフレームインナと、サイドフレームインナに対して車幅方向外側に配設された断面略ハット状のサイドフレームアウタとで構成されている。
【0048】
また、シュラウドメンバ8は、詳細な図示を省略するが、車両前後方向に沿った水平断面における断面形状が断面略矩形の閉断面をなす閉断面部材であって、その下端が、フロントサイドフレーム7の上面、及び車幅方向外側の側面に接合されている。
【0049】
また、サスペンションハウジング9は、
図1から
図3に示すように、ヒンジピラー2、及びダッシュパネル4よりも車両前方の所望位置に配設されたフロントサスダンパ14の上端、及びアッパアーム15を揺動自在に支持する高剛性部材であって、エプロンレインフォースメント5とフロントサイドフレーム7とに跨って架設されている。なお、サスペンションハウジング9については、後ほど詳述する。
【0050】
また、タワーバー10は、
図1及び
図2に示すように、車両前方側が幅広な平面視略V字状のパイプ部材であって、その両端が左右のサスペンションハウジング9における後部上面に締結固定され、車幅方向略中央近傍がカウルボックス3における車幅方向略中央に連結されている。
【0051】
また、サブフレーム11は、
図5に示すように、車幅方向に所定間隔を隔てた位置で車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ111と、左右のサイドメンバ111を車幅方向に連結する前側サスクロスメンバ112、中央サスクロスメンバ113、及び後側サスクロスメンバ114とで、平面視略梯子状に形成されている。
【0052】
より詳しくは、左右のサイドメンバ111は、
図3及び
図5に示すように、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が断面略矩形の閉断面となる閉断面部材であって、フロントサイドフレーム7における車両前後方向の長さと略同じ車両前後方向の長さを有する形状に形成されている。
【0053】
さらに、サイドメンバ111には、
図5に示すように、ロアアーム16における車両前方側の連結部を揺動自在に支持する前側支持ブラケット115が、後述する後方連結部材18よりも車両前方の部分に接合され、ロアアーム16における車両後方側の連結部を揺動自在に支持する後側支持ブラケット116が、後方連結部材18よりも車両後方の部分に締結固定されている。
【0054】
前側サスクロスメンバ112は、
図2、
図3、及び
図5に示すように、シュラウドメンバ8と略同じ車両前後方向の位置において、左右のサイドメンバ111を車幅方向に連結している。この前側サスクロスメンバ112は、詳細な図示を省略するが、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面となる閉断面部材であって、車両上方に突出した断面略ハット状のメンバアッパと、略平板状のメンバロアとで構成されている。
【0055】
中央サスクロスメンバ113は、
図2、
図3、及び
図5に示すように、サスペンションハウジング9の後部(後述する後方補強部93)と略同じ車両前後方向の位置で左右のサイドメンバ111を連結する閉断面部分である後方閉断面部113aと、後方閉断面部113aから車両前方に離間した位置で左右のサイドメンバ111を連結する閉断面部分である前方閉断面部113bとを有する形状に形成されている。
【0056】
具体的には、中央サスクロスメンバ113は、
図5に示すように、車両上方へ突出するとともに、車幅方向外側が開口した平面視略H字状のメンバアッパと、略平板状のメンバロアとを車両上下方向に接合することで、車両後方側で車幅方向に延びる閉断面部分である後方閉断面部113aと、車両前方側で車幅方向に延びる閉断面部分である前方閉断面部113bとを形成している。
【0057】
後側サスクロスメンバ114は、
図5に示すように、サイドメンバ111の後端を車幅方向に連結している。この後側サスクロスメンバ114は、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなす閉断面部材であって、車両上方に突出した断面略ハット状のメンバアッパと、略平板状のメンバロアとで構成されている。
【0058】
このようなサブフレーム11は、
図3及び
図5に示すように、シュラウドメンバ8と略同じ車両前後方向の位置において、前側サスクロスメンバ112が、左右一対の前方連結部材17を介してフロントサイドフレーム7に連結されるとともに、サスペンションハウジング9の後部(後述する後方補強部93)と略同じ車両前後方向の位置において、サイドメンバ111が、左右一対の後方連結部材18を介してフロントサイドフレーム7に連結されている。なお、サブフレーム11におけるサイドメンバ111の後端は、フロントサイドフレーム7の後端下面に締結固定されている。
【0059】
この前方連結部材17は、
図5に示すように、略矩形の閉断面を車両上方、かつ車幅方向外側へ延設したのち、車幅方向外側へ延設した形状に形成されている。
【0060】
一方、後方連結部材18は、
図5に示すように、アルミダイキャスト製の高剛性部材であって、サイドメンバ111に締結固定される下側基部18aと、エンジンマウントブッシュ(図示省略)が内部空間に収容保持される略円筒状の収容保持部18bと、フロントサイドフレーム7に締結固定するための締結部材が設けられた上側基部18cとで一体形成されている。
【0061】
そして、上述したような構成の車両1の前部車体には、
図6に示すように、サスペンションハウジング9をとおって略環状となる環状車体骨格Wが形成されている。
具体的には、正面視略環状となる環状車体骨格Wは、
図6に示すように、左右のフロントサイドフレーム7と、高剛性部材である左右のサスペンションハウジング9の後部(後述する後方補強部93)と、閉断面部材であるタワーバー10と、閉断面部材であるサブフレーム11の中央サスクロスメンバ113における後方閉断面部113aと、高剛性部材である左右の後方連結部材18とで構成されている。
【0062】
引き続き、本実施形態における車両1の前部車体を構成する各構成要素のうち、上述したエプロンレインフォースメント5、及びサスペンションハウジング9について、さらに詳述する。
エプロンレインフォースメント5は、
図1から
図3に示すように、ヒンジピラー2の上部に後端が接合されたエプロンレイン後部51と、エプロンレイン後部51の前端に接合されたエプロンレイン前部52とで構成されている。
【0063】
エプロンレイン後部51は、
図1から
図3に示すように、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面形状であって、サスペンションハウジング9の後端と略同じ車両前後方向の位置に前端が位置する車両前後方向の長さで形成されている。
【0064】
エプロンレイン前部52は、
図3に示すように、側面視において、略水平な上面に対して、下面がホイールアーチをなすように湾曲した略円弧状に形成されている。このエプロンレイン前部52は、
図4に示すように、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が断面略矩形の閉断面形状であって、車両上方に配置されたエプロンレインアッパ53と、エプロンレインアッパ53に対して車両下方に配置されたエプロンレインロア54とで構成されている。
【0065】
より詳しくは、エプロンレインアッパ53は、
図4に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、車両下方が開口した断面略門型形状の開断面部53aと、開断面部53aの下端から車幅方向外側に延設された外側フランジ部53bと、開断面部53aの下端から車幅方向外側に延設された内側フランジ部53cとで、車両上方に突出した断面略ハット状に形成されている。
【0066】
一方、エプロンレインロア54は、
図4に示すように、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、エプロンレインアッパ53における車両上下方向の長さよりも短い車両上下方向の長さで、車両下方に突出した断面略ハット状に形成されている。
【0067】
このエプロンレインロア54は、
図7に示すように、サスペンションハウジング9に一体形成されたエプロンレイン構成部94と、エプロンレイン構成部94の前端、及びシュラウドアッパ6の後端を連結する鉄鋼製のロアパネル55とを、車両後方からこの順番で接合して構成されている。なお、エプロンレイン構成部94については、後ほど詳述する。
【0068】
また、サスペンションハウジング9は、
図1から
図3に示すように、例えば、アルミダイキャスト製の高剛性部材であって、エプロンレインフォースメント5とフロントサイドフレーム7とに跨って架設されている。このサスペンションハウジング9は、ヒンジピラー2、及びダッシュパネル4よりも車両前方の所望位置に配設されたフロントサスダンパ14の上端、及びアッパアーム15を揺動自在に支持可能な位置に配設されている。
【0069】
より詳しくは、サスペンションハウジング9は、
図3及び
図8に示すように、フロントサスダンパ14の上端が取付けられるサスタワー部91と、サスタワー部91の車両前方側に隣接する前方補強部92と、サスタワー部91の車両後方側に隣接する後方補強部93と、上述したエプロンレインフォースメント5におけるエプロンレインロア54の一部として構成されるエプロンレイン構成部94とで一体形成されている。
【0070】
サスタワー部91は、
図3及び
図8に示すように、平面視略円形状の天板部分91aと、天板部分91aにおける車幅方向内側の縁端から車両下方へ延設されて、車幅方向内側の側面となる側面部分91bとで形成されている。このサスタワー部91の天板部分91aには、フロントサスダンパ14の上端が取付けられる平面視略円筒状のダンパ取付け部911が形成されている。
【0071】
さらに、サスタワー部91の側面部分91bには、
図8及び
図9に示すように、車両上下方向に延びるとともに、車幅方向外側へ突出した外側リブ912と、車両上下方向に延びるとともに、車幅方向内側へ突出した内側リブ913とが、ダンパ取付け部911と略同じ車両前後方向の位置に形成されている。
【0072】
加えて、サスタワー部91の天板部分91aには、
図2、
図7、及び
図8に示すように、ダンパ取付け部911における平面視略中央と略同じ車両前後方向の位置で、車幅方向外側へ向けて延びる第1取付け部リブ914が形成されている。
【0073】
なお、第1取付け部リブ914は、
図7及び
図8に示すように、天板部分91aにおける車幅方向外側の縁端から車両上方へ立設されたサスタワー部91の縦壁部分91cに連結されている。
【0074】
前方補強部92は、
図8に示すように、ダンパ取付け部911の車両前方を補強する補強部として形成されている。この前方補強部92は、サスタワー部91の天板部分91aと略同じ車両上下方向の位置に上面を有するとともに、サスペンションハウジング9の下部に至る範囲を車幅方向内側へ膨出させた形状に形成されている。
【0075】
さらに、前方補強部92の車幅方向外側には、
図3及び
図9に示すように、アッパアーム15における車両前方の連結部を揺動自在に支持する前側支持部921が一体的に形成されている。この前側支持部921は、
図9に示すように、前方補強部92における車両前後方向の両端に沿って車両上下方向に延びるとともに、車幅方向外側へ向けて立設された一対の壁面状に形成されている。
【0076】
後方補強部93は、
図8に示すように、ダンパ取付け部911の車両後方を補強する補強部として形成されている。この後方補強部93は、サスタワー部91の天板部分91aよりも車両上方に上面を有するとともに、サスペンションハウジング9の下部に至る範囲を車幅方向内側へ膨出させた形状に形成されている。
【0077】
さらに、後方補強部93の車幅方向外側には、
図3、
図9、及び
図10に示すように、アッパアーム15における車両後方の連結部を揺動自在にする後側支持部931が一体的に形成されている。この後側支持部931は、
図9及び
図10に示すように、後方補強部93における車両前後方向の両端に沿って車両上下方向に延びるとともに、車幅方向外側へ向けて立設された一対の壁面状に形成されている。
【0078】
エプロンレイン構成部94は、
図7、
図8、及び
図10に示すように、サスタワー部91の縦壁部分91c、前方補強部92、及び後方補強部93の上端を一体的に車幅方向外側へ延設するとともに、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、ロアパネル55と連続するように車両下方に突出した断面略ハット状に形成されている。
【0079】
具体的には、エプロンレイン構成部94は、
図7、
図8、及び
図10に示すように、サスタワー部91の縦壁部分91cから車幅方向外側へ向けて延設された略平板状の内側フランジ部分94aと、内側フランジ部分94aから車幅方向外側、かつ車両下方へ向けて延設された内側傾斜部分94bと、内側傾斜部分94bから車幅方向外側へ向けて延設されて略平板状の底面部分94cと、底面部分94cから車幅方向外側、かつ車両上方へ向けて延設された外側傾斜部分94dと、外側傾斜部分94dから車幅方向外側へ向けて延設され略平板状の外側フランジ部分94eとで一体形成されている。
【0080】
このエプロンレイン構成部94は、
図10に示すように、内側フランジ部分94aに、エプロンレインアッパ53の内側フランジ部53cが接合され、外側フランジ部分94eに、エプロンレインアッパ53の外側フランジ部53bが接合されることで、内部中空の閉断面空間を形成している。
【0081】
さらに、エプロンレイン構成部94には、
図7、
図8、
図10、及び
図11に示すように、エプロンレインアッパ53との閉断面空間内における上面に形成されたアーム逃げ部941、及び上方補強リブ942と、下面に形成された下方補強リブ943とを備えている。
【0082】
アーム逃げ部941は、
図7、
図8、及び
図10に示すように、平面視において、ダンパ取付け部911と略同じ車両前後方向の位置に頂部が位置する平面視略半円状であって、アッパアーム15における車幅方向外側端部の揺動軌跡と重合する部分を車両上方へ膨出させた形状に形成されている。
【0083】
具体的には、アーム逃げ部941は、
図10に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、内側傾斜部分94bの下部を車幅方向外側へ膨出させるとともに、底面部分94cの車幅方向内側の部分を車両上方へ膨出させた形状に形成されている。
【0084】
上方補強リブ942は、
図7、
図8、及び
図10に示すように、第1取付け部リブ914と略同じ車両前後方向の位置において、内側傾斜部分94bと外側傾斜部分94dとを連結するように、アーム逃げ部941、及び底面部分94cから車両上方へ向けて立設されている。なお、上方補強リブ942は、
図10に示すように、正面視において、アーム逃げ部941の頂部と略同じ車両上下方向の位置に、その頂部が位置する形状に形成されている。
【0085】
下方補強リブ943は、
図10及び
図11に示すように、上方補強リブ942と略同じ車両前後方向の位置において、サスタワー部91の縦壁部分91cとエプロンレイン構成部94の内側傾斜部分94bとを連結するように、内側フランジ部分94aから車両下方へ向けて立設されている。
【0086】
つまり、サスペンションハウジング9は、第1取付け部リブ914、上方補強リブ942、及び下方補強リブ943によって、ダンパ取付け部911における平面視略中央をとおって、ダンパ取付け部911からエプロンレイン構成部94の外側傾斜部分94dに至る範囲にかけて略連続するように補強リブが形成されている。
【0087】
以上のように、車両1の車幅方向に所定間隔を隔てた位置で車両上下方向に延びる左右一対のヒンジピラー2と、ヒンジピラー2よりも車幅方向内側、かつ車両前方の所望位置に配設されたフロントサスダンパ14と、フロントサスダンパ14の上端が取付けられるダンパ取付け部911を有する左右一対のサスペンションハウジング9と、ヒンジピラー2の上部に連結された後端から車両前方側へ延びるとともに、サスペンションハウジング9の上端が連結された左右一対のエプロンレインフォースメント5とを備えた車両1の前部車体構造は、エプロンレインフォースメント5が、平面視において、その後端からダンパ取付け部911の車幅方向外側をとおって、車両前方、かつ車幅方向内側へ略直線的に延びる形状に形成されたことにより、フロントフェンダの配置スペースやアッパアーム15の揺動スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメント5とサスペンションハウジング9との連結部分における剛性を向上することができる。
【0088】
具体的には、エプロンレインフォースメント5が、平面視において、後端から車両前方、かつ車幅方向内側へ向けて略直線的に延びる形状に形成されているため、車両1の前部車体構造は、後端から車両前後方向に沿って略直線的に延びるエプロンレインフォースメント5に比べて、所望位置に配設されたフロントサスダンパ14にエプロンレインフォースメント5を近接させることができる。
【0089】
換言すれば、車両1の前部車体構造は、車幅方向におけるサスペンションハウジング9のダンパ取付け部911とエプロンレインフォースメント5との間隔を、後端から車両前後方向に沿って略直線的に延びるエプロンレインフォースメント5に比べて短くすることができる。
【0090】
これにより、車両1の前部車体構造は、サスペンションハウジング9の小型軽量化と高剛性化とを図ることができる。さらに、車両1の前部車体構造は、フロントサスダンパ14からの入力荷重がサスペンションハウジング9に作用した際、サスペンションハウジング9とエプロンレインフォースメント5との連結部分に作用する曲げモーメントを、別途補強部を設けることなく抑制することができる。
【0091】
従って、車両1の前部車体構造は、フロントフェンダの配置スペースやアッパアーム15の揺動スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメント5とサスペンションハウジング9との連結部分における剛性を向上することができる。
【0092】
また、エプロンレインフォースメント5における車幅方向内側の縁端が、平面視において、サスペンションハウジング9のダンパ取付け部911と略同じ車両前後方向の位置に頂部が位置するように、車幅方向内側へ膨出した形状に形成されたことにより、車両1の前部車体構造は、車幅方向におけるサスペンションハウジング9のダンパ支持部とエプロンレインフォースメント5との間隔をさらに短くすることができる。
【0093】
このため、車両1の前部車体構造は、フロントサスダンパ14からの入力荷重がサスペンションハウジング9に作用した際、サスペンションハウジング9とエプロンレインフォースメント5との連結部分に作用する曲げモーメントをより抑制することができる。
【0094】
従って、車両1の前部車体構造は、エプロンレインフォースメント5における車幅方向内側の縁端を、車幅方向内側へ膨出した形状に形成したことにより、エプロンレインフォースメント5とサスペンションハウジング9との連結部分における剛性をより向上することができる。
【0095】
また、サスペンションハウジング9が、ダンパ取付け部911を設けたサスタワー部91と、サスタワー部91の上端から車幅方向外側へ延設されたエプロンレイン構成部94とを備え、エプロンレイン構成部94が、エプロンレインフォースメント5の一部として配設可能な形状に形成されたことにより、車両1の前部車体構造は、サスペンションハウジング9のエプロンレイン構成部94が、エプロンレインフォースメント5の一部をなすように、サスペンションハウジング9とエプロンレインフォースメント5とを連結することができる。
【0096】
このため、車両1の前部車体構造は、フロントサスダンパ14からの入力荷重がサスペンションハウジング9に作用した際、サスペンションハウジング9とエプロンレインフォースメント5との間における相対的な変位差をさらに抑えることができる。
【0097】
つまり、車両1の前部車体構造は、フロントサスダンパ14からの入力荷重がサスペンションハウジング9に作用した際、サスペンションハウジング9とエプロンレインフォースメント5とを略一体的に変位させることができる。
これにより、車両1の前部車体構造は、サスペンションハウジング9とエプロンレインフォースメント5との連結部分に作用する曲げモーメントに対する剛性をさらに向上することができる。
【0098】
従って、車両1の前部車体構造は、エプロンレインフォースメント5の一部として配設可能なエプロンレイン構成部94によって、フロントフェンダの配置スペースやアッパアーム15の揺動スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメント5とサスペンションハウジング9との連結部分における剛性をさらに向上することができる。
【0099】
また、エプロンレインフォースメント5が、車両上方側に配設されるエプロンレインアッパ53と、エプロンレインアッパ53に対して車両下方に配設されるエプロンレインロア54とで構成され、サスペンションハウジング9のエプロンレイン構成部94が、車幅方向に沿った縦断面において、エプロンレインアッパ53とで閉断面をなす形状に形成されるとともに、ダンパ取付け部911と略同じ車両前後方向の位置において、車幅方向に沿って車両上方へ立設された上方補強リブ942を備えたことにより、車両1の前部車体構造は、サスペンションハウジング9のエプロンレイン構成部94と、エプロンレインフォースメント5のエプロンレインアッパ53とで形成された閉断面空間を活用して上方補強リブ942を設けることができる。
【0100】
このため、車両1の前部車体構造は、フロントフェンダの配置スペースやアッパアーム15の揺動スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメント5とサスペンションハウジング9との連結部分を補強することができる。
【0101】
さらに、車両1の前部車体構造は、フロントサスダンパ14からの入力荷重がサスペンションハウジング9に作用した際、サスペンションハウジング9とエプロンレインフォースメント5との間における相対的な変位差を、上方補強リブ942によってさらに抑えることができる。
これにより、車両1の前部車体構造は、サスペンションハウジング9とエプロンレインフォースメント5との連結部分に作用する曲げモーメントに対する剛性をさらに確実に向上することができる。
【0102】
従って、車両1の前部車体構造は、エプロンレイン構成部94の上方補強リブ942により、フロントフェンダの配置スペースやアッパアーム15の揺動スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメント5とサスペンションハウジング9との連結部分における剛性をさらに確実に向上することができる。
【0103】
また、サスペンションハウジング9のエプロンレイン構成部94が、ダンパ取付け部911と略同じ車両前後方向の位置において、アッパアーム15の揺動軌跡と重合する部分を車両上方側に膨出して形成したアーム逃げ部941を備えたことにより、車両1の前部車体構造は、サスペンションハウジング9のエプロンレイン構成部94とエプロンレインフォースメント5のエプロンレインアッパ53とで形成された閉断面空間を活用して、アッパアーム15の揺動スペースを確実に確保することができる。
【0104】
さらに、エプロンレイン構成部94とエプロンレインアッパ53とで形成された閉断面空間にアーム逃げ部941が形成されるため、車両1の前部車体構造は、例えば、フロントフェンダの配置スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメント5とサスペンションハウジング9との連結部分を補強する補強部として、アーム逃げ部941を機能させることができる。
【0105】
これにより、車両1の前部車体構造は、サスペンションハウジング9とエプロンレインフォースメント5との連結部分に作用する曲げモーメントに対する剛性をより確実に向上することができる。
【0106】
従って、車両1の前部車体構造は、エプロンレイン構成部94に設けたアーム逃げ部941により、フロントフェンダの配置スペースやアッパアーム15の揺動スペースを圧迫することなく、エプロンレインフォースメント5とサスペンションハウジング9との連結部分における剛性をより確実に向上することができる。
【0107】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の外方延設部は、実施形態のエプロンレイン構成部94に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0108】
例えば、上述した実施形態において、エンジンマウントブッシュを内部に収容保持する収容保持部18bを備えた後方連結部材18としたが、これに限定せず、エンジンマウントブッシュが上面に装着固定される装着部を備えたマウント一体連結部材としてもよい。
【0109】
また、サスペンションハウジング9の前方補強部92、及び後方補強部93を、車幅方向内側へ膨出した形状の補強部としたが、これに限定せず、車両上下方向に延びるとともに、車幅方向内側へ向けて立設した複数のリブで構成された補強部としてもよい。
【0110】
また、サスペンションハウジング9を例えばアルミダイキャスト製としたが、これに限定せず、鉄鋼板をプレス成形して形成されたサスペンションハウジングとしてもよい。この際、サスペンションハウジングの前方補強部、及び後方補強部を、サスタワーとで車両上下方向に延びる閉断面をなす開断面部材によって構成してもよい。
【0111】
また、サスペンションハウジング9のエプロンレイン構成部94が、エプロンレインロア54の一部をなす構成としたが、これに限定せず、エプロンレイン後部51とシュラウドアッパ6とを連結するロアパネルの上面に接合されるとともに、エプロンレインアッパとで閉断面をなす形状に形成されたエプロンレイン構成部としてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1…車両
2…ヒンジピラー
5…エプロンレインフォースメント
9…サスペンションハウジング
14…フロントサスダンパ
15…アッパアーム
53…エプロンレインアッパ
54…エプロンレインロア
91…サスタワー部
94…エプロンレイン構成部
911…ダンパ取付け部
941…アーム逃げ部
942…上方補強リブs