(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】作業機械の荷重表示装置
(51)【国際特許分類】
B66C 13/16 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
B66C13/16 A
(21)【出願番号】P 2018163715
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 靖弘
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-327815(JP,A)
【文献】特開2015-157695(JP,A)
【文献】特開昭63-091523(JP,A)
【文献】特開2001-182102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊荷を吊る起伏部材をウインチで起伏させる作業機械に設けられ、前記吊荷の荷重値を表示する作業機械の荷重表示装置であって、
前記ウインチは、上部スプレッダが備えるシーブと下部スプレッダが備えるシーブとの間に掛け渡された起伏ロープを巻取り及び巻出しすることで、前記起伏部材を起伏させており、
前記吊荷の荷重値を検出する荷重検出装置と、
前記上部スプレッダおよび前記下部スプレッダの少なくとも一方に設けられ、前記シーブの回転を検出する回転検出センサと、
表示装置と、
前記吊荷の荷重値を前記表示装置に表示させる表示制御手段と、
を有し、
前記表示制御手段は、前記ウインチが駆動されてから前記回転検出センサが前記シーブの回転を検出するまでの間に前記荷重検出装置が検出した前記吊荷の荷重値を、前記表示装置に表示させないことを特徴とする作業機械の荷重表示装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記ウインチが駆動されてから前記回転検出センサが前記シーブの回転を検出するまでの間、前記ウインチの駆動前に前記荷重検出装置が検出した前記吊荷の荷重値を前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項1に記載の作業機械の荷重表示装置。
【請求項3】
前記回転検出センサが、前記起伏ロープの終端に最も近い前記シーブに取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機械の荷重表示装置。
【請求項4】
前記上部スプレッダおよび前記下部スプレッダにそれぞれ設けられ、前記上部スプレッダと前記下部スプレッダとの間隔を検出する一対の間隔検出センサをさらに有し、
前記表示制御手段は、前記ウインチが駆動されてから前記回転検出センサが前記シーブの回転を検出し、且つ、前記間隔検出センサが検出する前記間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間に前記荷重検出装置が検出した前記吊荷の荷重値を、前記表示装置に表示させないことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の作業機械の荷重表示装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記ウインチが駆動されてから前記回転検出センサが前記シーブの回転を検出し、且つ、前記間隔検出センサが検出する前記間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間、前記ウインチの駆動前に前記荷重検出装置が検出した前記吊荷の荷重値を前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項4に記載の作業機械の荷重表示装置。
【請求項6】
前記間隔検出センサが、前記上部スプレッダおよび前記下部スプレッダの一端側と、他端側とに、それぞれ設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載の作業機械の荷重表示装置。
【請求項7】
吊荷を吊る起伏部材をウインチで起伏させる作業機械に設けられ、前記吊荷の荷重値を表示する作業機械の荷重表示装置であって、
前記ウインチは、上部スプレッダが備えるシーブと下部スプレッダが備えるシーブとの間に掛け渡された起伏ロープを巻取り及び巻出しすることで、前記起伏部材を起伏させており、
前記吊荷の荷重値を検出する荷重検出装置と、
前記上部スプレッダおよび前記下部スプレッダにそれぞれ設けられ、前記上部スプレッダと前記下部スプレッダとの間隔を検出する一対の間隔検出センサと、
表示装置と、
前記吊荷の荷重値を前記表示装置に表示させる表示制御手段と、
を有し、
前記表示制御手段は、前記ウインチが駆動されてから前記間隔検出センサが検出する前記間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間に前記荷重検出装置が検出した前記吊荷の荷重値を、前記表示装置に表示させないことを特徴とする作業機械の荷重表示装置。
【請求項8】
前記表示制御手段は、前記ウインチが駆動されてから前記間隔検出センサが検出する前記間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間、前記ウインチの駆動前に前記荷重検出装置が検出した前記吊荷の荷重値を前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項7に記載の作業機械の荷重表示装置。
【請求項9】
前記間隔検出センサが、前記上部スプレッダおよび前記下部スプレッダの一端側と、他端側とに、それぞれ設けられていることを特徴とする請求項7又は8に記載の作業機械の荷重表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊荷を吊る作業機械に設けられ、吊荷の荷重値を表示する作業機械の荷重表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吊荷を吊る作業機械に設けられ、ロープの緩みを検知するロープ緩み検知装置が開示されている。ロープの繰り出し方向におけるロープの移動を第1検出部で検出するとともに、ウインチ装置の動作を第2検出部で検出し、第1検出部の検出結果と第2検出部の検出結果とを比較することで、ロープの緩みを検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吊荷を吊る作業機械においては、ウインチが駆動を開始してからブームが実際に起伏するまでに、タイムラグが生じる。その理由は、上部スプレッダと下部スプレッダとの間に掛け渡された起伏ロープの緩みやたわみがすべて解消するまでに時間がかかるためである。
【0005】
起伏ロープの張力が変化している間は、吊荷の荷重値を正確に検出することができず、表示装置に表示される吊荷の荷重値がばらつく。このように、表示装置に表示される吊荷の荷重値にばらつきが生じると、作業者が混乱するなど、作業に支障が生じる。
【0006】
本発明の目的は、吊荷の荷重値の表示精度を向上させることが可能な作業機械の荷重表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、吊荷を吊る起伏部材をウインチで起伏させる作業機械に設けられ、前記吊荷の荷重値を表示する作業機械の荷重表示装置であって、前記ウインチは、上部スプレッダが備えるシーブと下部スプレッダが備えるシーブとの間に掛け渡された起伏ロープを巻取り及び巻出しすることで、前記起伏部材を起伏させており、前記吊荷の荷重値を検出する荷重検出装置と、前記上部スプレッダおよび前記下部スプレッダの少なくとも一方に設けられ、前記シーブの回転を検出する回転検出センサと、表示装置と、前記吊荷の荷重値を前記表示装置に表示させる表示制御手段と、を有し、前記表示制御手段は、前記ウインチが駆動されてから前記回転検出センサが前記シーブの回転を検出するまでの間に前記荷重検出装置が検出した前記吊荷の荷重値を、前記表示装置に表示させないことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、吊荷を吊る起伏部材をウインチで起伏させる作業機械に設けられ、前記吊荷の荷重値を表示する作業機械の荷重表示装置であって、前記ウインチは、上部スプレッダが備えるシーブと下部スプレッダが備えるシーブとの間に掛け渡された起伏ロープを巻取り及び巻出しすることで、前記起伏部材を起伏させており、前記吊荷の荷重値を検出する荷重検出装置と、前記上部スプレッダおよび前記下部スプレッダにそれぞれ設けられ、前記上部スプレッダと前記下部スプレッダとの間隔を検出する一対の間隔検出センサと、表示装置と、前記吊荷の荷重値を前記表示装置に表示させる表示制御手段と、を有し、前記表示制御手段は、前記ウインチが駆動されてから前記間隔検出センサが検出する前記間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間に前記荷重検出装置が検出した前記吊荷の荷重値を、前記表示装置に表示させないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、吊荷の荷重値の表示精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第1実施形態における、上部スプレッダおよび下部スプレッダの模式図である。
【
図3】第1実施形態における、表示制御のフローチャートである。
【
図4】第2実施形態における、上部スプレッダおよび下部スプレッダの模式図である。
【
図5】第2実施形態において、下部スプレッダが上部スプレッダに対して傾いている場合における、上部スプレッダおよび下部スプレッダの模式図である。
【
図6】第2実施形態における、表示制御のフローチャートである。
【
図7】第3実施形態における、上部スプレッダおよび下部スプレッダの模式図である。
【
図8】第3実施形態における、表示制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
[第1実施形態]
(クレーンの構成)
本発明の第1実施形態による作業機械の荷重表示装置(荷重表示装置)は、吊荷を吊る作業機械であるクレーンに設けられている。クレーン10の側面図である
図1に示すように、クレーン10は、吊荷50の巻上および巻下を行うものであって、クローラ式の下部走行体11の上部に上部旋回体12が旋回可能に設けられた構成となっている。以下、
図1の右側を前側、
図1の左側を後側として説明する。なお、作業機械は、クローラ式のクレーンに限定されず、ホイール式のクレーンであってもよい。
【0013】
上部旋回体12は、旋回フレーム13と、ブーム14と、ジブ15と、ガントリ16と、ストラット17と、下部スプレッダ18と、ウインチ(図示せず)と、カウンタウエイト19と、バックストップ装置20と、を有している。
【0014】
旋回フレーム13は、旋回ベアリング(図示せず)を介して下部走行体11に取り付けられている。ブーム(起伏部材)14は、旋回フレーム13の前部に、旋回フレーム13に対して起伏可能に連結されている。ブーム14の先端には、ブームガイライン29の一端が接続されている。
【0015】
ジブ15は、ブーム14の先端部に、ブーム14に対して起伏可能に連結されている。ジブ15の先端には、ジブポイントシーブ21が設けられている。このジブポイントシーブ21からは巻上ロープ22を介してフック23が吊り下げられている。
【0016】
ガントリ16は、旋回フレーム13の後部に取り付けられている。ストラット17は、側方からの平面視で三角形状であって、ブーム14の先端部に取り付けられている。ストラット17のフロントストラット部17bの先端とジブ15の先端とは、ジブガイライン24により連結されている。
【0017】
ブーム14の下部背面側に取り付けたジブ起伏用下部スプレッダ25と、ジブガイライン26の一端に連結したジブ起伏用上部スプレッダ27との間には、ジブ起伏ロープ28が掛け渡されている。ジブガイライン26の他端は、ストラット17のリヤストラット部17aの先端に接続されている。
【0018】
下部スプレッダ18は、ガントリ16の上端に取り付けられている。下部スプレッダ18と、ブームガイライン29の他端に連結した上部スプレッダ30との間には、ブーム起伏ロープ(起伏ロープ)31が掛け渡されている。
【0019】
ウインチは、旋回フレーム13の中央部に複数配置されている。フック用ウインチは、巻上ロープ22を巻き取り又は繰り出してフック23の巻き上げ又は巻き下げを行う。ジブ起伏用ウインチは、ジブ起伏ロープ28を巻き取り又は繰り出すことで、ストラット17を、ブーム14の先端部との結合点を中心に起伏させる。その結果、ジブ15がブーム14との結合点を中心として起伏する。ブーム起伏用ウインチは、ブーム起伏ロープ31を巻き取り又は繰り出すことで、ブーム14を、その支点であるブームフットピン32回りに起伏させる。
【0020】
上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の模式図である
図2に示すように、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18は、複数のシーブ40をそれぞれ有している。これらシーブ40には、ブーム起伏ロープ31が掛け渡されている。
【0021】
図1に戻って、カウンタウエイト19は、旋回フレーム13の後部に搭載されている。バックストップ装置20は、ブーム14の背面に取り付けられ、ブーム14の背面から旋回フレーム13に向かって延びている。バックストップ装置20は、旋回フレーム13に固定されたバックストップ受け33に受けられることで、ブーム14の後側への回転を規制する。
【0022】
また、上部旋回体12は、キャブ34を有している。キャブ34内には、作業者が操作する操作レバー35が設けられている。操作レバー35が操作されると、図示しないモータによりブーム起伏用ウインチが回転され、ブーム起伏ロープ31の巻取り又は巻出しが行われる。
【0023】
(荷重表示装置)
荷重表示装置1は、
図2に示すように、ロードセル(荷重検出装置)2と、回転検出センサ3と、を有している。ロードセル2は、ブーム起伏ロープ31の終端に取り付けられており、ブーム14の長さやブーム14の角度などからブーム起伏ロープ31の張力を検出することで、吊荷50の荷重値を検出する。本実施形態では、ブーム起伏ロープ31の終端は、下部スプレッダ18に結び付けられている。
【0024】
回転検出センサ3は、シーブ40の回転を検出する。本実施形態において、回転検出センサ3は、加速度センサであるが、角速度センサ等であってもよい。回転検出センサ3は、ブーム起伏ロープ31の終端に最も近いシーブ40に取り付けられている。なお、回転検出センサ3は、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の少なくとも一方に設けられていればよく、すべてのシーブ40に取り付けられていてもよい。
【0025】
また、荷重表示装置1は、
図1に示すように、表示装置4と、コントローラ(表示制御手段)5と、を有している。表示装置4は、キャブ34内に設けられている。コントローラ5は、吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる。
【0026】
ブーム14を起伏させるためにブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから、回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出するまでの間は、ブーム起伏ロープ31の張力が変化する。そのため、ロードセル2で吊荷50の荷重値を正確に検出することができない。
【0027】
そこで、コントローラ5は、ブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出するまでの間にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を、表示装置4に表示させない。これにより、ブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出するまでの間に、不正確な荷重値が表示装置4に表示されないようにすることができる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度を向上させることができる。
【0028】
また、コントローラ5は、ブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出するまでの間、ブーム起伏用ウインチ36の駆動前にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる。ブーム起伏用ウインチ36の駆動前にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値は、誤差を含んでいない。そこで、ロードセル2が検出する吊荷50の荷重値にばらつきが生じる間は、ばらついた荷重値の代わりに、この値を表示させる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度をさらに向上させることができる。
【0029】
また、上述したように、回転検出センサ3は、ブーム起伏ロープ31の終端に最も近いシーブ40に取り付けられている。ブーム起伏ロープ31の緩みやたわみは、ブーム起伏用ウインチ36に最も近いシーブ40から、ブーム起伏ロープ31の終端に最も近いシーブ40に向かって、徐々に解消していく。よって、ブーム起伏ロープ31の終端に最も近いシーブ40の回転を検出したタイミングで、ブーム起伏ロープ31の緩みやたわみはほぼ解消していることになる。そこで、ブーム起伏ロープ31の緩みやたわみがほぼ解消するまでの間にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を、表示装置4に表示させないことで、不正確な荷重値が表示装置4に表示されないようにすることができる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度を一層向上させることができる。
【0030】
(表示制御)
次に、表示制御のフローチャートである
図3を用いて、コントローラ5の動作を説明する。
【0031】
まず、コントローラ5は、吊荷50の荷重値の算出を開始する(ステップS1)。次に、コントローラ5は、ロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる(ステップS2)。
【0032】
次に、コントローラ5は、操作レバー35の操作によりブーム起伏用ウインチ36が駆動しているか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3において、ブーム起伏用ウインチ36が駆動していないと判定した場合には(S3:NO)、コントローラ5は、ステップS2に戻って、ロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる。一方、ステップS3において、ブーム起伏用ウインチ36が駆動していると判定した場合には(S3:YES)、コントローラ5は、ブーム起伏用ウインチ36の駆動前の吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる(ステップS4)。
【0033】
次に、コントローラ5は、回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出したか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5において、回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出していないと判定した場合には(S5:NO)、コントローラ5は、ステップS4に戻って、ブーム起伏用ウインチ36の駆動前の吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる。一方、ステップS5において、回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出したと判定した場合には(S5:YES)、コントローラ5は、シーブ40の回転後にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる(ステップS6)。
【0034】
次に、コントローラ5は、ブーム起伏用ウインチ36が停止したか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7において、ブーム起伏用ウインチ36が停止していないと判定した場合には(S7:NO)、コントローラ5は、ステップS6に戻って、シーブ40の回転後にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる。一方、ステップS7において、ブーム起伏用ウインチ36が停止したと判定した場合には(S7:YES)、コントローラ5は、ステップS2に戻る。
【0035】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る荷重表示装置1によると、ブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出するまでの間にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値が、表示装置4に表示されない。ブーム14を起伏させるためにブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから、回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出するまでの間は、ブーム起伏ロープ31の張力が変化し、吊荷50の荷重値を正確に検出することができない。そこで、この間に検出した吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させないことで、不正確な荷重値が表示装置4に表示されないようにすることができる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度を向上させることができる。
【0036】
また、ブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出するまでの間、ブーム起伏用ウインチ36の駆動前にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値が表示装置4に表示される。ブーム起伏用ウインチ36の駆動前にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値は、誤差を含んでいない。そこで、ロードセル2が検出する吊荷50の荷重値にばらつきが生じる間は、ばらついた荷重値の代わりに、この値を表示させる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度をさらに向上させることができる。
【0037】
また、回転検出センサ3が、ブーム起伏ロープ31の終端に最も近いシーブ40に取り付けられている。ブーム起伏ロープ31の緩みやたわみは、ブーム起伏用ウインチ36に最も近いシーブ40から、ブーム起伏ロープ31の終端に最も近いシーブ40に向かって、徐々に解消していく。よって、ブーム起伏ロープ31の終端に最も近いシーブ40の回転を検出したタイミングで、ブーム起伏ロープ31の緩みやたわみはほぼ解消していることになる。そこで、ブーム起伏ロープ31の緩みやたわみがほぼ解消するまでの間にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を、表示装置4に表示させないことで、不正確な荷重値が表示装置4に表示されないようにすることができる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度を一層向上させることができる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の荷重表示装置について、図面を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態と共通する構成およびそれにより奏される効果については説明を省略し、主に、第1実施形態と異なる点について説明する。なお、第1実施形態と同じ部材については、第1実施形態と同じ符号を付している。
【0039】
(荷重表示装置の構成)
上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の模式図である
図4に示すように、第2実施形態の荷重表示装置101は、一対の間隔検出センサ103を有している。一対の間隔検出センサ103は、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18にそれぞれ設けられ、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔を検出する。一対の間隔検出センサ103は、赤外線センサや超音波センサ等の測距センサや、GPS、GNSSなどである。本実施形態では、一対の間隔検出センサ103は、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側(図中左側)と、他端側(図中右側)とに、それぞれ設けられている。
【0040】
ブーム14を起伏させるためにブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間は、ブーム起伏ロープ31の張力が変化し、吊荷50の荷重値を正確に検出することができない。ここで、所定範囲とは、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側と他端側とで、間隔が等しくなるか、ほぼ等しくなることで、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18とが平行になるか、ほぼ平行になる範囲である。
【0041】
即ち、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の模式図である
図5に示すように、下部スプレッダ18が上部スプレッダ30に対して傾いている場合、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側の間隔は、所定範囲よりも小さくなり、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の他端側の間隔は、所定範囲より大きくなる。上部スプレッダ30が下部スプレッダ18に対して傾いている場合も同様である。このように、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔が所定範囲外である間は、ブーム起伏ロープ31の張力が変化し、吊荷50の荷重値を正確に検出することができない。
【0042】
そこで、コントローラ5は、ブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから一対の間隔検出センサ103が検出する上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を、表示装置4に表示させない。これにより、ブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間に、不正確な荷重値が表示装置4に表示されないようにすることができる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度を向上させることができる。
【0043】
また、コントローラ5は、ブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから一対の間隔検出センサ103が検出する上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間、ブーム起伏用ウインチ36の駆動前にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる。ブーム起伏用ウインチ36の駆動前にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値は、誤差を含んでいない。そこで、ロードセル2が検出する吊荷50の荷重値にばらつきが生じる間は、ばらついた荷重値の代わりに、この値を表示させる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度をさらに向上させることができる。
【0044】
また、上述したように、一対の間隔検出センサ103は、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側と、他端側とに、それぞれ設けられている。ブーム起伏ロープ31の緩みやたわみが解消していくと、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側と、他端側とで、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔がそれぞれ所定範囲内に収まっていく。よって、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側と、他端側とで、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔がそれぞれ所定範囲内に収まれば、ブーム起伏ロープ31の緩みやたわみはほぼ解消していることになる。そこで、ブーム起伏ロープ31の緩みやたわみがほぼ解消するまでの間にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を、表示装置4に表示させないことで、不正確な荷重値が表示装置4に表示されないようにすることができる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度を一層向上させることができる。
【0045】
(表示制御)
次に、表示制御のフローチャートである
図6を用いて、コントローラ5の動作を説明する。
【0046】
ステップS1からステップS4は、
図3の表示制御のフローチャートと同じである。ステップS4の後に、コントローラ5は、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側と、他端側とで、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔がそれぞれ所定範囲内で変化しなくなったか否かを判定する(ステップS11)。
【0047】
ステップS11において、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側と、他端側とで、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔がそれぞれ所定範囲内で変化しなくなっていないと判定した場合には(S11:NO)、コントローラ5は、ステップS4に戻って、ブーム起伏用ウインチ36の駆動前の吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる。一方、ステップS11において、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側と、他端側とで、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔がそれぞれ所定範囲内で変化しなくなったと判定した場合には(S11:YES)、コントローラ5は、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔がそれぞれ所定範囲内で変化しなくなった後にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる(ステップS6)。
【0048】
ステップS6とステップS7とは、
図3の表示制御のフローチャートと同じである。
【0049】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る荷重表示装置101によると、ブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから一対の間隔検出センサ103が検出する上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値が、表示装置4に表示されない。ブーム14を起伏させるためにブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間は、ブーム起伏ロープ31の張力が変化し、吊荷50の荷重値を正確に検出することができない。そこで、この間に検出した吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させないことで、不正確な荷重値が表示装置4に表示されないようにすることができる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度を向上させることができる。
【0050】
また、ブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間、ブーム起伏用ウインチ36の駆動前にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値が表示装置4に表示される。ブーム起伏用ウインチ36の駆動前にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値は、誤差を含んでいない。そこで、ロードセル2が検出する吊荷50の荷重値にばらつきが生じる間は、ばらついた荷重値の代わりに、この値を表示させる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度をさらに向上させることができる。
【0051】
また、一対の間隔検出センサ103が、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側と、他端側とに、それぞれ設けられている。ブーム起伏ロープ31の緩みやたわみが解消していくと、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側と、他端側とで、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔がそれぞれ所定範囲内に収まっていく。よって、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側と、他端側とで、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔がそれぞれ所定範囲内に収まれば、ブーム起伏ロープ31の緩みやたわみはほぼ解消していることになる。そこで、ブーム起伏ロープ31の緩みやたわみがほぼ解消するまでの間にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を、表示装置4に表示させないことで、不正確な荷重値が表示装置4に表示されないようにすることができる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度を一層向上させることができる。
【0052】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の荷重表示装置について、図面を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態と共通する構成およびそれにより奏される効果については説明を省略し、主に、第1実施形態と異なる点について説明する。なお、第1実施形態と同じ部材については、第1実施形態と同じ符号を付している。
【0053】
(荷重表示装置の構成)
上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の模式図である
図7に示すように、第3実施形態の荷重表示装置201は、第1実施形態の回転検出センサ3と、第2実施形態の一対の間隔検出センサ103と、をそれぞれ有している。回転検出センサ3は、ブーム起伏ロープ31の終端に最も近いシーブ40に取り付けられている。一対の間隔検出センサ103は、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側(図中左側)と、他端側(図中右側)とに、それぞれ設けられている。
【0054】
コントローラ5は、ブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出し、且つ、一対の間隔検出センサ103が検出する上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を、表示装置4に表示させない。
【0055】
ブーム14を起伏させるためにブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから、回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出し、且つ、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間は、ブーム起伏ロープ31の張力が変化し、吊荷50の荷重値を正確に検出することができない。そこで、この間に検出した吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させないことで、不正確な荷重値が表示装置4に表示されないようにすることができる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度を向上させることができる。
【0056】
また、コントローラ5は、ブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出し、且つ、一対の間隔検出センサ103が検出する上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間、ブーム起伏用ウインチ36の駆動前にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる。ブーム起伏用ウインチ36の駆動前にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値は、誤差を含んでいない。そこで、ロードセル2が検出する吊荷50の荷重値にばらつきが生じる間は、ばらついた荷重値の代わりに、この値を表示させる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度をさらに向上させることができる。
【0057】
(表示制御)
次に、表示制御のフローチャートである
図8を用いて、コントローラ5の動作を説明する。
【0058】
ステップS1からステップS4は、
図3の表示制御のフローチャートと同じである。ステップS4の後に、コントローラ5は、回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出したか否かを判定する(ステップS21)。ステップS21において、回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出していないと判定した場合には(S21:NO)、コントローラ5は、ステップS4に戻って、ブーム起伏用ウインチ36の駆動前の吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる。一方、ステップS21において、回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出したと判定した場合には(S21:YES)、コントローラ5は、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側と、他端側とで、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔がそれぞれ所定範囲内で変化しなくなったか否かを判定する(ステップS22)。
【0059】
ステップS22において、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側と、他端側とで、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔がそれぞれ所定範囲内で変化しなくなっていないと判定した場合には(S22:NO)、コントローラ5は、ステップS4に戻って、ブーム起伏用ウインチ36の駆動前の吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる。一方、ステップS22において、上部スプレッダ30および下部スプレッダ18の一端側と、他端側とで、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔がそれぞれ所定範囲内で変化しなくなったと判定した場合には(S22:YES)、コントローラ5は、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔がそれぞれ所定範囲内で変化しなくなった後にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させる(ステップS6)。
【0060】
ステップS6とステップS7とは、
図3の表示制御のフローチャートと同じである。
【0061】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る荷重表示装置201によると、ブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出し、且つ、一対の間隔検出センサ103が検出する上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値が、表示装置4に表示されない。ブーム14を起伏させるためにブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから、回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出し、且つ、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間は、ブーム起伏ロープ31の張力が変化し、吊荷50の荷重値を正確に検出することができない。そこで、この間に検出した吊荷50の荷重値を表示装置4に表示させないことで、不正確な荷重値が表示装置4に表示されないようにすることができる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度を向上させることができる。
【0062】
また、ブーム起伏用ウインチ36が駆動されてから回転検出センサ3がシーブ40の回転を検出し、且つ、上部スプレッダ30と下部スプレッダ18との間隔が所定範囲内で変化しなくなるまでの間、ブーム起伏用ウインチ36の駆動前にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値が表示装置4に表示される。ブーム起伏用ウインチ36の駆動前にロードセル2が検出した吊荷50の荷重値は、誤差を含んでいない。そこで、ロードセル2が検出する荷重値にばらつきが生じる間は、ばらついた荷重値の代わりに、この値を表示させる。これにより、吊荷50の荷重値の表示精度をさらに向上させることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
1,101,201 荷重表示装置
2 ロードセル(荷重検出装置)
3 回転検出センサ
4 表示装置
5 コントローラ(表示制御手段)
10 クレーン
11 下部走行体
12 上部旋回体
13 旋回フレーム
14 ブーム(起伏部材)
15 ジブ
16 ガントリ
17 ストラット
18 下部スプレッダ
19 カウンタウエイト
20 バックストップ装置
21 ジブポイントシーブ
22 巻上ロープ
23 フック
24 ジブガイライン
25 ジブ起伏用下部スプレッダ
26 ジブガイライン
27 ジブ起伏用上部スプレッダ
28 ジブ起伏ロープ
29 ブームガイライン
30 上部スプレッダ
31 ブーム起伏ロープ(起伏ロープ)
32 ブームフットピン
33 バックストップ受け
34 キャブ
35 操作レバー
36 ブーム起伏用ウインチ(ウインチ)
40 シーブ
50 吊荷
103 間隔検出センサ