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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】温度制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
B60H1/32 623D
B60H1/32 623H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018205542
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020069925
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 祐二
(72)【発明者】
【氏名】五百川 毅
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-176973(JP,A)
【文献】特開2002-061969(JP,A)
【文献】特開2015-161441(JP,A)
【文献】特開平07-190576(JP,A)
【文献】米国特許第05784892(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
F24F 11/00-11/89
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(11)から吐出される冷媒の温度を調整する温度制御装置であって、
前記圧縮機の冷媒吐出部(11b)から吐出される冷媒の温度に応じた検出信号を出力する温度検出部(41、42)と、
前記検出信号に応じて前記圧縮機を制御することで当該圧縮機から吐出される冷媒の温度を調整する制御部(43)と、を備え、
前記冷媒吐出部と、前記冷媒吐出部に備えられる配管(21)とが樹脂部材で構成されるシール部材(30)にて封止されており、
前記温度検出部は、前記配管に備えられる第1サーミスタ(41a)を有し、前記シール部材が損傷する所定温度を含む第1範囲内の温度を検出可能に構成されて第1検出信号を出力する第1温度検出部(41)と、前記配管に備えられる第2サーミスタ(42a)を有し、前記第1範囲と一部が重複すると共に前記第1範囲より低い温度を含む第2範囲内の温度を検出可能に構成されて第2検出信号を出力する第2温度検出部(42)と、を備え、
制御部は、前記第1検出信号または前記第2検出信号に基づいて前記冷媒の温度が前記所定温度より低くなるように前記圧縮機を制御すると共に、前記第1検出信号が前記第1範囲より低い温度を示す信号である場合、前記第2検出信号を参照して前記第1温度検出部および前記第2温度検出部の少なくとも一方に故障が発生しているか否かの故障判定を行う温度制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1検出信号が前記第1範囲より低い温度を示す信号である場合であって、前記第2検出信号が前記第2範囲より高い温度を示す信号である場合、前記第1温度検出部および前記第2温度検出部の少なくともいずれか一方に故障が発生していると判定する請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項3】
前記第2範囲は、最低温度が想定され得る温度よりも低い温度とされており、
前記制御部は、前記第1検出信号が前記第1範囲より低い温度を示す信号である場合であって、前記第2検出信号が前記第2範囲より低い温度を示す信号である場合、前記第2温度検出部に故障が発生していると判定する請求項1または2に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1検出信号が前記第1範囲より低い温度を示す信号である場合であって、前記第2検出信号が前記第2範囲内の温度を示す信号である場合、前記第1検出信号または前記第2検出信号に応じて前記圧縮機を制御する請求項1ないし3のいずれか1つに記載の温度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度検出部で検出された温度に基づいて圧縮機から吐出される冷媒の温度を調整する温度制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器を有し、これら圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器をそれぞれ配管を介して接続した冷凍サイクル装置が知られている。そして、例えば、特許文献1には、凝縮器を通過した直後の冷媒温度を検出する1つのサーミスタと、制御部等を備え、サーミスタで検出される温度に基づいて種々の処理を実行することが提案されている。なお、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器と各配管との間は、それぞれ樹脂部材で構成されるシール部材で封止されることにより、冷媒が漏れることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-230988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷凍サイクル装置は、圧縮機から吐出される冷媒の温度が最も高くなる。そして、冷媒の温度が高くなり過ぎた場合には、圧縮機と配管との間に配置されるシール部材が損傷してシール性が損なわれ、冷媒が漏れる可能性がある。
【0005】
このため、本発明者らは、圧縮機から吐出される冷媒の温度をサーミスタで検出し、制御部にて、当該冷媒の温度が所定温度以上であれば圧縮機から吐出される冷媒の温度が所定温度未満となるようにすることを考えた。なお、所定温度は、シール部材が損傷する温度に基づいて設定される温度である。
【0006】
しかしながら、寒冷地において使用される場合等では、冷凍サイクル装置を始動し始めた際の冷媒の温度が-30℃程度等の低温になることがある。この場合、1つのサーミスタでは、シール部材が損傷する温度から低温側の温度までを検出可能な温度範囲とすることが困難であった。つまり、制御部では、冷媒の温度が-30℃等の低温である場合、サーミスタに基づく温度は、実際に低温であるためなのか、故障しているための出力であるのかを判定することが困難である。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、シール部材が損傷することを抑制しつつ、低温側における信頼性も向上できる温度制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1では、圧縮機(11)から吐出される冷媒の温度を調整する温度制御装置であって、圧縮機の冷媒吐出部(11b)から吐出される冷媒の温度に応じた検出信号を出力する温度検出部(41、42)と、検出信号に応じて圧縮機を制御することで当該圧縮機から吐出される冷媒の温度を調整する制御部(43)と、を備え、冷媒吐出部と、冷媒吐出部に備えられる配管(21)とが樹脂部材で構成されるシール部材(30)にて封止されており、温度検出部は、配管に備えられる第1サーミスタ(41a)を有し、シール部材が損傷する所定温度を含む第1範囲内の温度を検出可能に構成されて第1検出信号を出力する第1温度検出部(41)と、配管に備えられる第2サーミスタ(42a)を有し、第1範囲と一部が重複すると共に第1範囲より低い温度を含む第2範囲内の温度を検出可能に構成されて第2検出信号を出力する第2温度検出部(42)と、を備え、制御部は、第1検出信号または第2検出信号に基づいて冷媒の温度が所定温度より低くなるように圧縮機を制御すると共に、第1検出信号が第1範囲より低い温度に相当する場合、第2検出信号を参照して第1温度検出部および第2温度検出部の少なくとも一方に故障が発生しているか否かの故障判定を行う。
【0009】
これによれば、制御部は、冷媒の温度が所定温度より低くなるように圧縮機を調整するため、シール部材が損傷することを抑制できる。また、第1検出信号が第1範囲より低い温度を示す信号である場合、第2検出信号を参照して第1温度検出部および第2温度検出部の少なくとも一方に故障が発生しているか否かの故障判定を行う。このため、低温側における信頼性を向上でき、第1温度検出部または第2温度検出部が故障している状態で圧縮機が作動し続けることを抑制できる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態における温度制御装置を冷凍サイクル装置に適用した模式図である。
図2】第1温度検出部、第2温度検出部および制御部の回路構成を示す図である。
図3】第1サーミスタおよび第2サーミスタを配管に備えた状態を示す模式図である。
図4A】第1検出信号と温度との関係を示す図である。
図4B】第2検出信号と温度との関係を示す図である。
図5】第1範囲および第2範囲と、温度との関係を示す図である。
図6】温度と分解能との関係を示す図である。
図7】第1検出信号および第2検出信号と、第1温度検出部および第2温度検出部の状態との関係を示す図である。
図8】他の実施形態における第1サーミスタおよび第2サーミスタを配管に備えた状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態では、車両用空調装置を構成する冷凍サイクル装置に温度制御装置を適用した例について説明する。
【0014】
冷凍サイクル装置10は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13、蒸発器14等を備えている。そして、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13および蒸発器14は、それぞれ各配管21~24を介して順に接続されている。
【0015】
圧縮機11は、冷媒吸入部11a、冷媒吐出部11b、図示しない圧縮機構および電動モータ等を有している。そして、圧縮機は、圧縮機構が電動モータにより回転駆動されることで冷媒吸入部11aから吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を冷媒吐出部11bから吐出する。
【0016】
凝縮器12は、車室外空気(すなわち、外気)との熱交換によって圧縮機11から吐出された気相冷媒を放熱させて凝縮させる放熱器である。膨張弁13は、凝縮器12から流出した冷媒を減圧膨張させる減圧器である。蒸発器14は、車室内に向かう送風空気との熱交換によって膨張弁13で減圧された冷媒を吸熱させて蒸発させ、蒸発器14から流出の冷媒を圧縮機11に吸入させるものである。
【0017】
そして、これら圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13、蒸発器14と、各配管21~24との間は、それぞれ樹脂部材で構成されるシール部材30によって封止されている。例えば、圧縮機11においては、冷媒吸入部11aと配管24との隙間を封止するようにシール部材30が配置されており、冷媒吐出部11bと配管21との隙間を封止するようにシール部材30が配置されている。なお、シール部材30としては、例えば、水素化ニトリルゴムで構成されるOリングが用いられる。
【0018】
このような冷凍サイクル装置10では、冷媒の温度は、圧縮機11から吐出された際に最も温度が高くなる。つまり、シール部材30としては、冷媒吐出部11bと配管21との間の隙間をシールするシール部材30が最も損傷し易くなっている。なお、シール部材30を水酸化ニトリルゴムで構成した場合には、シール部材30が損傷し始める温度が約160℃となる。
【0019】
温度制御装置40は、図1および図2に示されるように、第1温度検出部41、第2温度検出部42、ディスプレイ43、制御部44等を備えている。
【0020】
具体的には、第1温度検出部41は、図2に示されるように、温度によって抵抗値が変化する第1サーミスタ41aと、第1サーミスタ41aと直列に接続された第1プルアップ抵抗41bとを有している。第2温度検出部42は、温度によって抵抗値が変化する第2サーミスタ42aと、第2サーミスタ42aと直列に接続され、第1プルアップ抵抗41bより大きな抵抗値とされた第2プルアップ抵抗42bとを有している。なお、本実施形態では、第1サーミスタ41aおよび第2サーミスタ42aは、例えば、ニッケル、マンガン、コバルト、鉄の混合体が焼結されることで構成され、互いに同じ構成とされている。また、本実施形態では、第1プルアップ抵抗41bおよび第2プルアップ抵抗42bは、制御部44内に備えられている。
【0021】
そして、第1サーミスタ41aおよび第2サーミスタ42aは、図1および図3に示されるように、それぞれ圧縮機11から吐出された直後の冷媒の温度に応じて抵抗値が変化するように、配管21の外壁面に取り付けられている。本実施形態では、第1サーミスタ41aおよび第2サーミスタ42aは、図3に示されるように、近接して並べて配置され、リング状の固定部材50によって配管21に固定されている。
【0022】
ディスプレイ43は、例えば、インスツルメントパネルの中央付近や、運転席の前方に設けられたコンビネーションメータ内等に配置される。また、ディスプレイ43は、例えば、フルカラー表示が可能なもので構成され、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で構成される。なお、ディスプレイ43は、例えば、ヘッドアップディスプレイ等であってもよいし、乗員が操作可能なタッチパネルで構成されていてもよい。そして、ディスプレイ43は、制御部44によって制御されて所定の画像を表示する。
【0023】
制御部44は、CPU、ROM、RAM、不揮発性RAM等を備えた、いわゆる車載マイクロコンピュータ(以下では、単にマイコンという)44a、および電源44b等を有している。そして、制御部44(すなわち、マイコン44a)は、CPUがROM、または不揮発性RAMからプログラムを読み出して実行することで各種の制御作動を実現する。なお、ROM、または不揮発性RAMには、プログラムの実行の際に用いられる各種のデータ(例えば、初期値、ルックアップテーブル、マップ等)が予め格納されている。また、ROM等の記憶媒体は、非遷移的実体的記憶媒体である。
【0024】
具体的には、制御部44は、図1および図2に示されるように、圧縮機11、第1温度検出部41、第2温度検出部42、ディスプレイ43と接続されている。そして、制御部44は、第1温度検出部41または第2温度検出部42で検出された温度に基づき、圧縮機11から吐出される冷媒の温度が所定の閾値未満となるように調整する。なお、所定の閾値は、シール部材30が損傷し始める温度に基づいて設定され、所定温度に相当する。本実施形態では、シール部材30が水酸化ニトリルゴムで構成されており、約160℃でシール部材30が損傷し始めるため、所定の閾値は、例えば、150℃に設定される。また、制御部44は、第1温度検出部41および第2温度検出部42の故障判定を行い、第1温度検出部41および第2温度検出部42の少なくともいずれか一方が故障していると判定した場合にはディスプレイ43に対応する画像が表示されるようにする。
【0025】
より詳しくは、図2に示されるように、制御部44は、電源44bが第1プルアップ抵抗41bに接続されていると共に、マイコン44aが調整抵抗44cを介して第1プルアップ抵抗41bと第1サーミスタ41aとの間の中点41cと接続されている。また、制御部44は、電源44bが第2プルアップ抵抗42bに接続されていると共に、マイコン44aが調整抵抗44dを介して第2プルアップ抵抗42bと第2サーミスタ42aとの間の中点42cと接続されている。なお、第1サーミスタ41aおよび第2サーミスタ42aのうちの電源44b側と反対側は、グランドに接続されている。
【0026】
そして、上記のように、第1サーミスタ41aおよび第2サーミスタ42aは、温度によって抵抗値が変化する可変抵抗である。このため、マイコン44aには、冷媒の温度に応じ、第1温度検出部41から第1検出信号(すなわち、中点41cの電圧)が入力されると共に第2温度検出部42から第2検出信号(すなわち、中点42cの電圧)が入力される。
【0027】
ここで、第1プルアップ抵抗41bと第2プルアップ抵抗42bとは、上記のように抵抗値が異なっている。このため、第1温度検出部41が検出可能な温度範囲(以下では、第1範囲という)と、第2温度検出部42が検出可能な温度範囲(以下では、第2範囲という)が異なる。なお、検出可能な温度範囲とは、マイコン44aが検出信号から温度を認識できる温度範囲のことである。
【0028】
具体的には、図4Aおよび図5に示されるように、第1温度検出部41は、シール部材30が損傷し始める温度(すなわち、160℃)を含む温度に応じた第1検出信号を出力できるように、第1プルアップ抵抗41bの抵抗値が調整されている。本実施形態では、第1温度検出部41は、-10~300℃の温度に応じた第1検出信号を出力できるように、第1プルアップ抵抗41bの抵抗値が調整されている。つまり、第1温度検出部41は、第1範囲が-10~300℃とされている。
【0029】
第2温度検出部42は、図4Bおよび図5に示されるように、-50~80℃の温度に応じた第2検出信号を出力できるように、第2プルアップ抵抗42bが調整されている。つまり、第2温度検出部42は、第2範囲が-50~80℃とされている。すなわち、第1温度検出部41および第2温度検出部42は、第2範囲が第1範囲と一部が重複し、かつ第2範囲の最低温度が第1範囲の最低温度より低くなるように構成されている。
【0030】
なお、本実施形態では、第1範囲の最高温度は、閾値よりも十分に高い温度とされる。また、第2範囲の最低温度は、冷凍サイクル装置10が適用され得る周囲の温度に基づいて設定され、実際の使用条件下で想定され得る最低温度よりも低い温度とされる。さらに、本実施形態では、第2範囲の最高温度は、閾値よりも低い温度とされている。つまり、第2検出信号が第2範囲内の温度を示す信号である場合には、当該検出信号は閾値よりも低い温度となる。そして、図4Aおよび図4Bは、第1プルアップ抵抗41bを10KΩ、第2プルアップ抵抗42bを1MΩとした場合のシミュレーション結果を示している。
【0031】
また、本実施形態では、第1サーミスタ41aおよび第2サーミスタ42aを同じ構成としているが、第1範囲における最高温度と最低温度の温度差と、第2範囲における最高温度と最低温度の温度差とが異なっている。これは、リーク電流による影響が第1、第2プルアップ抵抗41b、42bの大きさに依存するためである。すなわち、第2温度検出部42に流れる電流は、第2プルアップ抵抗42bが第1プルアップ抵抗41bより大きいため、第1温度検出部41に流れる電流より小さくなる。このため、第2温度検出部42の方が全体の電流に対するリーク電流の占める割合が大きくなる。したがって、本実施形態では、検出誤差を考慮し、第2範囲の温度差が第1範囲の温度差より狭くなるようにし、第1検出信号および第2検出信号に対する信頼性が大きく異ならないようにしている。
【0032】
さらに、本実施形態では、制御部44は、第1検出信号および第2検出信号を用いて上記処理を行う場合、第1検出信号および第2検出信号をデジタル信号に変換して処理を行う。この場合、制御部44は、シール部材30が損傷してしまうことを高精度に抑制できるように、閾値近傍となる温度の分解能が高くされることが好ましい。なお、温度に関する分解能では、一般的に、0.50℃/bit以下であれば高分解能であるとされる。
【0033】
このため、本実施形態では、図6に示されるように、第1温度検出部41は、少なくとも150℃近傍の温度が高分解能となるように構成されている。また、本実施形態では、第1温度検出部41および第2温度検出部42は、第1検出信号および第2検出信号の高分解能となる部分が重複するように構成されている。
【0034】
以上が本実施形態における温度制御装置40の構成である。次に、上記温度制御装置40の制御部44の作動について、図5および図7を参照しつつさらに詳細に説明する。なお、図7中の故障とは、制御部44が第1温度検出部41および第2温度検出部42の少なくともいずれか一方が故障していると判定する場合を示している。
【0035】
制御部44は、上記のように、第1温度検出部41からの第1検出信号または第2温度検出部42からの第2検出信号に基づき、圧縮機11から吐出される冷媒の温度が所定の閾値未満となるように調整する。
【0036】
具体的には、制御部44は、まず、第1検出信号が第1範囲内の温度を示す信号であるか否かを判定する。そして、制御部44は、第1検出信号が第1範囲内の温度を示す信号であり、当該第1検出信号が所定の閾値温度未満であると判定した場合には、冷媒の温度が所望温度で維持されるように電動モータの回転率を調整する。一方、制御部44は、第1検出信号が第1範囲内の温度であり、当該第1検出信号が所定の閾値温度以上であると判定した場合には、電動モータの回転率を低下させることで圧縮機11から吐出される冷媒の温度が閾値温度未満となるようにする。つまり、制御部44は、シール部材30が損傷しないように、圧縮機11を調整することで冷媒の温度を調整する。
【0037】
また、制御部44は、第1検出信号が第1範囲内の温度を示す信号であると判定した場合、第2検出信号に基づいて第2温度検出部42の故障判定を行う。具体的には、制御部44は、第2検出信号が第2範囲内の温度を示す信号である場合には、第2温度検出部42が正常であると判定する。また、制御部44は、第2検出信号が第2範囲以上の温度を示す信号である場合には、冷媒の温度が高いために第2検出信号が第2範囲以上となっているのか、第2温度検出部42が故障しているために第2検出信号が第2範囲以上となっているのかを判別できない。このため、この場合には、制御部44は、第1検出信号に基づいて圧縮機11の制御を行うことができるため、仮正常と判定してそのまま圧縮機11を制御する。
【0038】
一方、制御部44は、第2検出信号が第2範囲以下の温度を示す信号であると判定した場合には、第2温度検出部42において、断線等の故障が発生したと判定する。そして、制御部44は、圧縮機11を停止させると共に、ディスプレイ43に、少なくとも第2温度検出部42が故障したことを報知する画像が表示されるようにする。
【0039】
また、制御部44は、第1検出信号が第1範囲以上の温度を示す信号である場合、第1温度検出部41において、第1サーミスタ41aがショートする等の故障が発生したと判定する。そして、制御部は、圧縮機11を停止させると共に、ディスプレイ43に、第1温度検出部41が故障したことを報知する画像が表示されるようにする。
【0040】
なお、本実施形態では、第1検出信号が第1範囲以上の温度を示す信号である場合には、冷媒の温度を閾値温度以下に制御し難いため、第2温度検出部42の故障判定を行うことなく圧縮機11を停止させる。但し、第1検出信号が第1範囲以上の温度を示す信号である場合であっても、第2温度検出部42の故障判定を行うようにしてもよい。
【0041】
さらに、制御部44は、第1検出信号が第1範囲以下の温度を示す信号である場合には、冷媒の温度が低いために第1検出信号が第1範囲以下となっているのか、第1温度検出部41が故障しているために第1検出信号が第1範囲以下となっているのかを判別できない。このため、制御部44は、第2検出信号を用い、以下のいずれかの処理を行う。
【0042】
具体的には、制御部44は、第2検出信号が第2範囲内の温度を示す信号である場合、第1温度検出部41は仮正常であると判定し、第1検出信号を用いて圧縮機11の調整を行う。つまり、第1検出信号が第1範囲以下の温度を示す信号であり、第2検出信号が第2範囲内の温度を示す信号である場合は、冷媒の温度がシール部材30の損傷温度よりも十分に低い場合である。このため、このような場合は、本実施形態では、第1検出信号に基づいて圧縮機11を調整する。なお、このような場合は、例えば、寒冷地等において、車両のイグニッションをオンした直後等が想定される。
【0043】
また、制御部44は、第2検出信号が第2範囲以上の温度を示す信号である場合、実際にはあり得ない検出信号の組み合わせであるため、第1温度検出部41および第2温度検出部42の少なくとも一方が故障していると判定する。そして、制御部44は、圧縮機11を停止させると共に、ディスプレイ43に、第1温度検出部41および第2温度検出部42の少なくともいずれか一方が故障したことを報知する画像が表示されるようにする。
【0044】
さらに、上記のように、第2範囲は、最低温度が想定され得る最低温度よりも低い温度とされている。このため、制御部44は、第2検出信号が第2範囲以下の温度を示す信号である場合には、少なくとも第2温度検出部42において、断線等の故障が発生したと判定する。そして、制御部44は、圧縮機11を停止させると共に、ディスプレイ43に、少なくとも第2温度検出部42が故障したことを報知する画像が表示されるようにする。
【0045】
つまり、本実施形態では、第1検出信号は、圧縮機11を調整するために使用されることが主となる信号であり、第2検出信号は第1検出信号が第1範囲以下の温度を示す場合に第1検出信号の信頼性を確認するために使用されることが主となる信号である。
【0046】
以上説明したように、本実施形態では、圧縮機11から吐出される冷媒の温度を第1温度検出部41および第2温度検出部42で検出するようにしている。そして、第1検出信号が閾値を超える場合には、圧縮機11から吐出される冷媒の温度が閾値温度未満となるように、圧縮機11を制御している。このため、シール部材30が損傷することを抑制できる。
【0047】
また、本実施形態では、第2検出信号は、第2範囲が第1範囲と異なる範囲とされ、かつ最低温度が第1範囲の最低温度よりも低くされている。このため、第1検出信号が第1範囲以下の温度を示す信号である場合、制御部44は、第2検出信号を用いて第1温度検出部41の故障判定を行うことができる。このため、低温側での信頼性も向上した温度制御装置40とできる。そして、第1温度検出部41または第2温度検出部42が故障しているにも関わらず冷凍サイクル装置10が作動し続けることを抑制できる。
【0048】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0049】
例えば、上記第1実施形態では、第1サーミスタ41aおよび第2サーミスタ42aが隣合って配置される例について説明したが、第1サーミスタ41aおよび第2サーミスタ42aの配置箇所は適宜変更可能である。例えば、第1サーミスタ41aおよび第2サーミスタ42aは、図8に示されるように、配管21を挟んで略対向するように配置されていてもよい。
【0050】
また、上記第1実施形態において、第1検出信号が第1範囲内の温度を示す信号である場合、第1検出信号を用いて圧縮機11の調整をすることが可能であるため、第2温度検出部42の故障判定を行わないようにしてもよい。
【0051】
さらに、上記第1実施形態において、第1検出信号が第1範囲以下の温度を示す信号である場合であって、第2検出信号が第2範囲内の温度を示す信号である場合、第2検出信号に基づいて圧縮機11を調整するようにしてもよい。
【0052】
さらに、上記第1実施形態において、第1プルアップ抵抗41b、第2プルアップ抵抗42b、電源44bは、一部または全部が制御部44とは別に備えられていてもよい。
【0053】
また、上記第1実施形態では、車両に搭載される冷凍サイクル装置10に温度制御装置40を適用した例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、家屋内に配置される冷凍サイクル装置に温度制御装置40を適用するようにしてもよい。さらに、上記第1実施形態の温度制御装置40は、冷凍サイクル装置10への適用に限定されるものではなく、圧縮機11から吐出される冷媒の温度に応じて圧縮機11を制御するものであれば、他の装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
11 圧縮機
11a 冷媒吐出部
30 シール部材
41 第1温度検出部
42 第2温度検出部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8