IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-内装部品の真空成形型 図1
  • 特許-内装部品の真空成形型 図2
  • 特許-内装部品の真空成形型 図3
  • 特許-内装部品の真空成形型 図4
  • 特許-内装部品の真空成形型 図5
  • 特許-内装部品の真空成形型 図6
  • 特許-内装部品の真空成形型 図7
  • 特許-内装部品の真空成形型 図8
  • 特許-内装部品の真空成形型 図9
  • 特許-内装部品の真空成形型 図10
  • 特許-内装部品の真空成形型 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】内装部品の真空成形型
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/36 20060101AFI20220509BHJP
   B29C 51/34 20060101ALI20220509BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B29C51/36
B29C51/34
B29C33/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019006769
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020114657
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 弘次
(72)【発明者】
【氏名】小久保 典彦
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-288727(JP,A)
【文献】特開2005-104065(JP,A)
【文献】特開2014-000744(JP,A)
【文献】特開2006-116918(JP,A)
【文献】特開2009-066975(JP,A)
【文献】実開昭56-176818(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0066166(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00-51/46
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を載置して真空吸引する下型と、前記下型に載置された前記基材の表面に加熱して軟化した表皮材を押圧して貼着させる上型と、前記上型に形成したガイド孔に進退可能に挿入され上下型の型閉じ方向に対して負角となる前記基材のアンダーカット部に前記表皮材を押圧して貼着させるスライドコアとを備え、前記下型と前記上型とを型閉じ状態とした後で、前記スライドコアを前進させて前記アンダーカット部に前記表皮材を押圧して貼着させる内装部品の真空成形型であって、
前記上型には、前記下型と前記上型とが型開き状態から型閉じ状態となるまで前記ガイド孔の成形面側の開口部を塞ぐ先行塞ぎ部を有し、型閉じ状態において前記スライドコアが前進する以前に前記開口部から退避する先行スライド部材を備えたことを特徴とする内装部品の真空成形型。
【請求項2】
請求項1に記載された内装部品の真空成形型において、
前記先行スライド部材が進退するガイド孔は、前記スライドコアのガイド孔と異なる方向へ直線状に形成され、かつ前記開口部でV字状に交差することを特徴とする内装部品の真空成形型。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された内装部品の真空成形型において、
前記先行塞ぎ部は、前記表皮材と当接する表皮材当接面を備え、当該表皮材当接面は、上下型の型閉じ方向に対して下部が前記アンダーカット部と反対側へ開く開き角を備えた傾斜面であることを特徴とする内装部品の真空成形型。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された内装部品の真空成形型において、
前記上型の成形面と前記スライドコアの成形面との分割線は、前記基材の一般部から前記アンダーカット部へ折れ曲がるコーナ部に貼着される前記表皮材における表皮側のR止り近傍に設けたことを特徴とする内装部品の真空成形型。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された内装部品の真空成形型において、
前記スライドコアの成形面には、シボ形状が形成され、上下型の型閉じ状態において前記スライドコアを前記表皮材に押圧する押圧力を調節して、前記表皮材の表皮にシボ模様を転写することを特徴とする内装部品の真空成形型。
【請求項6】
請求項5に記載された内装部品の真空成形型において、
前記先行塞ぎ部は、前記先行スライド部材の前進端において、前記開口部における前記上型の成形面より外方へ突出するように形成されていることを特徴とする内装部品の真空成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装部品の真空成形型に関し、詳しくは、真空吸引によって型閉じ方向に対して負角となるアンダーカット部を有する基材表面に表皮材を貼着させる内装部品の真空成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の内装部品においては、硬質の合成樹脂からなる基材の表面に柔らかい発泡層を有する表皮材を貼着し表皮材の表面にシボ模様を形成することによって、高級感やソフト感を醸す工夫がなされている。このような内装部品を製造するための内装部品の真空成形型が、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
すなわち、図10(A)、(B)、(C)に示すように、基材101を載置して真空吸引する下型102と、下型102に載置した基材101に表皮103aと発泡層103bとを有する表皮材103を押圧して貼着させる上型104とを備え、下型102に載置し表面に接着剤が塗布された基材101に対して加熱して軟化させた表皮材103を被せて、下型102と上型104とを型閉じ状態とし、各型102、104を真空吸引させて基材101の表面に表皮材103の発泡層103bを貼着させると同時に、表皮材103の表皮103aにシボ模様を転写する内装部品の真空成形型100が、特許文献1に開示されている。
【0004】
また、特許文献1に開示された真空成形型100の上型104には、下型102と上型104との型閉じ方向(矢印Kの方向)に対して負角となる基材101のアンダーカット部101aに表皮材103を押圧して貼着させるスライドコア105を備えている。スライドコア105は、アンダーカット部101aの外周縁を分割ラインとし、型閉じ方向と異なる方向(矢印Jの方向)に形成されたガイド孔106に沿って進退する。また、スライドコア105は、下型102と上型104とが型閉じ状態となるまでガイド孔106内に後退し、型閉じ後に前進して、表皮材103を基材101のアンダーカット部101aに押圧して貼着させる。また、スライドコア105がガイド孔106内に後退した後に、下型102と上型104とを型開きして、製造された内装部品110を離型させる型構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-288727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された内装部品の真空成形型100には、基材101のアンダーカット部101aに表皮材103を貼着させることに伴って、以下のような問題があった。
【0007】
すなわち、上記真空成形型100において、図11(A)に示すように、加熱して軟化させた表皮材103を下型102に載置した基材101に被せて、図11(B)に示すように、下型102と上型104とを型閉じ状態とするとき、表皮材103を基材表面に確実に貼着させるため、上型104の成形面によって表皮材103を板厚以下に押し潰すことが、通常、行われている。このとき、スライドコア105はガイド孔106内に後退しているので、押し潰された表皮材103の余肉部103yがスライドコア105の成形面開口部からガイド孔106内へ入り込むことになる。また、スライドコア105の先端部における分割線外周面には、ガイド孔106とのカジリ等を回避するため、ガイド孔106の摺接面に対して微少に傾斜し、下死点で当接する摺合わせ面105aが形成されている。
【0008】
そのため、図11(C)に示すように、型閉じ後に、スライドコア105がガイド孔106内を前進して表皮材103を基材101のアンダーカット部101aに押圧する際、ガイド孔106内へ入り込んだ表皮材103の余肉部103yが、スライドコア105の摺合わせ面105aとガイド孔106との隙間に噛み込まれて、表皮材103に表側へ突出する肉余り突起103x(バリ)が発生する。そして、図11(D)に示すように、このアンダーカット部101aにおける表皮材103の肉余り突起103x(バリ)は、成形後の表皮材103に残るので、手作業等によってバリ取り処理をする必要があり、煩雑であって製造コストが増加するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、基材のアンダーカット部に貼着された表皮材に肉余り突起(バリ)が発生するのを簡単な型構造で回避できる内装部品の真空成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る内装部品の真空成形型は、次のような構成を有している。
(1)基材を載置して真空吸引する下型と、前記下型に載置された前記基材の表面に加熱して軟化した表皮材を押圧して貼着させる上型と、前記上型に形成したガイド孔に進退可能に挿入され上下型の型閉じ方向に対して負角となる前記基材のアンダーカット部に前記表皮材を押圧して貼着させるスライドコアとを備え、前記下型と前記上型とを型閉じ状態とした後で、前記スライドコアを前進させて前記アンダーカット部に前記表皮材を押圧して貼着させる内装部品の真空成形型であって、
前記上型には、前記下型と前記上型とが型開き状態から型閉じ状態となるまで前記ガイド孔の成形面側の開口部を塞ぐ先行塞ぎ部を有し、型閉じ状態において前記スライドコアが前進する以前に前記開口部から退避する先行スライド部材を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明においては、上型には、下型と上型とが型開き状態から型閉じ状態となるまでガイド孔の成形面側の開口部を塞ぐ先行塞ぎ部を有し、型閉じ状態においてスライドコアが前進する以前に開口部から退避する先行スライド部材を備えたので、上下型の型閉じ途中から型閉じ状態まで、先行スライド部材の先行塞ぎ部が表皮材と当接して、表皮材がスライドコアの開口部からガイド孔内へ入り込むことを阻止しつつ、先行塞ぎ部と表皮材との摩擦力によって基材の一般部からアンダーカット部へ折れ曲がるコーナ部を基点に表皮材を延伸させることができる。そのため、型閉じ状態で表皮材が上型の成形面によって板厚以下に押し潰されたときにも、スライドコアのガイド孔内へ入り込む表皮材の余肉部の発生を、抑制させることができる。また、先行スライド部材は、スライドコアが前進する以前に開口部から退避するので、スライドコアを前進させて基材のアンダーカット部に表皮材を押圧して貼着させることに支障は生じない。したがって、スライドコアが、スライドコアとガイド孔との隙間に表皮材の余肉部を噛み込むことによって、基材のアンダーカット部に貼着された表皮材に肉余り突起(バリ)が発生することを簡単に回避できる。
【0012】
よって、本発明によれば、基材のアンダーカット部に貼着された表皮材に肉余り突起(バリ)が発生するのを簡単な型構造で回避できる内装部品の真空成形型を提供することができる。
【0013】
(2)(1)に記載された内装部品の真空成形型において、
前記先行スライド部材が進退するガイド孔は、前記スライドコアのガイド孔と異なる方向へ直線状に形成され、かつ前記開口部で略V字状に交差することを特徴とする。
【0014】
本発明においては、先行スライド部材が進退するガイド孔は、スライドコアのガイド孔と異なる方向へ直線状に形成され、かつ開口部で略V字状に交差するので、先行スライド部材をガイド孔に沿って直線的に進退させることによって、スライドコアとの干渉を簡単に防止することができる。そのため、より簡単な型構造で、基材のアンダーカット部に貼着された表皮材に肉余り突起(バリ)が発生するのを回避できる。
【0015】
(3)(1)又は(2)に記載された内装部品の真空成形型において、
前記先行塞ぎ部は、前記表皮材と当接する表皮材当接面を備え、当該表皮材当接面は、上下型の型閉じ方向に対して下部が前記アンダーカット部と反対側へ開く開き角を備えた傾斜面であることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、先行塞ぎ部は、表皮材と当接する表皮材当接面を備え、当該表皮材当接面は、上下型の型閉じ方向に対して下部がアンダーカット部と反対側へ開く開き角を備えた傾斜面であるので、上下型の型閉じ途中から型閉じ状態まで、表皮材当接面の下部が表皮材と当接して表皮材を引っ張ることによって、基材のアンダーカット部に貼着させる表皮材をより一層延伸させることができる。そのため、型閉じ状態で表皮材が上型の成形面によって板厚以下に押し潰されたときの表皮材の余肉部の発生を、より一層抑制させることができる。なお、型閉じ方向と平行な垂直面に対する表皮材当接面の開き角は、10度以上であることが好ましい。表皮材当接面の開き角が10度より小さくなると、表皮材当接面と表皮材との摩擦力が増加して、表皮材の伸び率が大きくなり過ぎ、表皮材に亀裂等が生じやすくなるからである。
【0017】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された内装部品の真空成形型において、
前記上型の成形面と前記スライドコアの成形面との分割線は、前記基材の一般部から前記アンダーカット部へ折れ曲がるコーナ部に貼着される前記表皮材における表皮側のR止り近傍に設けたことを特徴とする。
【0018】
本発明においては、上型の成形面とスライドコアの成形面との分割線は、基材の一般部からアンダーカット部へ折れ曲がるコーナ部に貼着される表皮材における表皮側のR止り近傍に設けたので、表皮材に対する分割線のダイマーク(圧痕)が発生するのを効果的に回避させつつ、基材のアンダーカット部に表皮材を貼着させることができ、また、その表皮材に肉余り突起(バリ)が発生するのを回避できる。
【0019】
すなわち、上型の成形面とスライドコアの成形面との分割線は、基材の一般部からアンダーカット部へ折れ曲がるコーナ部に貼着される表皮材における表皮側のR止り近傍に設けたので、分割線に隣接する上型の成形面は、基材の一般部に対向して、略平坦状に形成されている。また、表皮材は、基材のコーナ部に沿って延伸されその板厚が減少するので、分割線に隣接する上型の成形面は、表皮材に対して微小隙間を有している。そのため、上下型の型閉じ状態で表皮材が上型の成形面によって板厚以下に押し潰されたときでも、分割線に隣接する上型の成形面の境界部(分割線)による表皮材に対する圧痕(分割線のダイマーク)は、生じにくい。
【0020】
また、上下型の型閉じ状態で表皮材がスライドコアの成形面によって基材のアンダーカット部に押圧されたときには、表皮材が基材のコーナ部に沿って延伸されその板厚が減少するので、分割線に隣接するスライドコアの成形面は、表皮材に対して微小隙間を有している。そのため、分割線に隣接するスライドコアの成形面の境界部(分割線)による表皮材に対する圧痕(分割線のダイマーク)は、生じにくい。その結果、表皮材の表皮側に分割線のダイマークが発生するのを効果的に回避させつつ、基材のアンダーカット部に表皮材を貼着させることができ、また、その表皮材に肉余り突起(バリ)が発生するのを回避できる。
【0021】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された内装部品の真空成形型において、
前記スライドコアの成形面には、シボ形状が形成され、上下型の型閉じ状態において前記スライドコアを前記表皮材に押圧する押圧力を調節して、前記表皮材の表皮にシボ模様を転写することを特徴とする。
【0022】
本発明においては、スライドコアの成形面には、シボ形状が形成され、上下型の型閉じ状態においてスライドコアを表皮材に押圧する押圧力を調節して、表皮材の表皮にシボ模様を転写するので、例えば、スライドコアを進退させるシリンダ装置における油圧シリンダの前進端位置や作動圧力等を調節するだけで、表皮材の表皮にシボ模様を転写することができ、スライドコアに対する真空吸引手段(例えば、真空吸引孔や吸引ポンプに接続する配管等)を設ける必要がない。そのため、基材のアンダーカット部に貼着された表皮材に肉余り突起(バリ)が発生するのを回避しつつ、アンダーカット部に貼着させる表皮材の表皮にシボ模様を転写する型構造を、より一層簡素化できる。
【0023】
(6)(5)に記載された内装部品の真空成形型において、
前記先行塞ぎ部は、前記先行スライド部材の前進端において、前記開口部における前記上型の成形面より外方へ突出するように形成されていることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、先行塞ぎ部は、先行スライド部材の前進端において、開口部における上型の成形面より外方へ突出するように形成されているので、上下型の型閉じ途中から型閉じ状態までに、先行塞ぎ部が表皮材をより一層延伸させて、基材のアンダーカット部に貼着させる表皮材の板厚を薄くさせることができる。そのため、スライドコアの成形面が表皮材を押圧したときに、表皮材の板厚方向への撓み量が減少し、アンダーカット部に貼着させる表皮材の表皮にシボ模様をより明瞭に転写させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、基材のアンダーカット部に貼着された表皮材に肉余り突起(バリ)が発生するのを簡単な型構造で回避できる内装部品の真空成形型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る内装部品の真空成形型における型閉じ状態の概略断面図である。
図2図1に示す内装部品の真空成形型における型閉じ途中の要部断面図である。
図3図1に示す内装部品の真空成形型における型閉じ状態で成形完了したときの要部断面図である。
図4図1に示す内装部品の真空成形型における変形例において、型閉じ状態で先行スライド部材が前進端にあるときの要部断面図である。
図5図1に示す内装部品の真空成形型における型開き状態の概略断面図である。
図6図1に示す内装部品の真空成形型における型閉じ状態で、先行スライド部材が前進しスライドコアが後退した時の概略断面図である。
図7図1に示す内装部品の真空成形型における型閉じ状態で、先行スライド部材が後退しスライドコアが前進した時の概略断面図である。
図8図1に示す内装部品の真空成形型における型閉じ状態で、先行スライド部材が前進しスライドコアが後退した時の概略断面図である。
図9図1に示す内装部品の真空成形型における型開き状態で、成形後の内装部品を取り出す時の概略断面図である。
図10】特許文献1に記載された内装部品の真空成形型の概略断面図であって、(A)は表皮材の断面図を示し、(B)は型開き状態の断面図を示し、(C)は型閉じ状態で成形完了した時の断面図を示す。
図11図10に示す内装部品の真空成形型の要部概略断面図であって、(A)は型閉じ途中の断面図を示し、(B)は型閉じ状態でスライドコアが後退している時の断面図を示し、(C)は型閉じ状態でスライドコアが前進した時の断面図を示し、(D)は型開き状態で部品取り出し時の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明に係る実施形態である内装部品の真空成形型について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本内装部品の真空成形型における型構造について詳細に説明し、その後、その加工手順について詳細に説明する。
【0028】
<本内装部品の真空成形型における型構造>
まず、本実施形態に係る内装部品の真空成形型における型構造を、図1図4を用いて説明する。図1に、本実施形態に係る内装部品の真空成形型における型閉じ状態の概略断面図を示す。図2に、図1に示す内装部品の真空成形型における型閉じ途中の要部断面図を示す。図3に、図1に示す内装部品の真空成形型における型閉じ状態で成形完了したときの要部断面図を示す。図4に、図1に示す内装部品の真空成形型における変形例において、型閉じ状態で先行スライド部材が前進端にあるときの要部断面図を示す。
【0029】
図1図4に示すように、本内装部品の真空成形型10(10B)は、基材1を載置して真空吸引する下型2と、下型2に載置された基材1の表面に加熱して軟化した表皮材3(31、32)を押圧して貼着させる上型4と、上型4に形成したガイド孔44に進退可能に挿入され上下型の型閉じ方向Kに対して負角αとなる基材1のアンダーカット部1aに表皮材3を押圧して貼着させるスライドコア5とを備え、下型2と上型4とを型閉じ状態とした後で、スライドコア5を前進させてアンダーカット部1aに表皮材3を押圧して貼着させる内装部品の真空成形型である。なお、スライドコア5の先端部51には、基材1のアンダーカット部1aに表皮材3を押圧する成形面511が形成されている。また、ガイド孔44に対するスライドコア5の先端部51における分割線PL外周面には、ガイド孔44とのカジリ等を回避するため、ガイド孔44の摺接面に対して微少に傾斜し、下死点で当接する摺合わせ面512が形成されている。
【0030】
ここで、内装部品Wは、例えば、自動車のインストルメントパネルやドアトリム等が該当するが、特にこれらに限定されるものではない。基材1は、例えば、ポリプロピレン(PP)等のような合成樹脂製で、所要の形状に賦形されている。また、基材1には、上下型の型閉じ方向Kに対して負角αとなる基材1のアンダーカット部1aを備えている。なお、図1図2図4に示す仮想線STは、型閉じ方向Kと平行に形成された垂直面である。また、基材1には、表皮材3を真空吸引する微細な真空吸引孔(図示しない)が複数個分散して形成されている。
【0031】
また、表皮材3は、表面側の延性に優れた表皮31と基材側の発泡層32とで構成されている。表皮31には、高級感やソフト感を醸すため、本真空成形型10(10B)によって革調等のシボ模様SSを形成する。表皮31は、例えば、0.5~0.8mm程度の厚さを有するオレフィン系エラストマ(TPO)樹脂製である。発泡層32は、例えば、3~4mm程度の厚さを有するポリプロピレンフォーム(PPF)樹脂製である。
【0032】
また、下型2には、基材1を載置する基材受け面211が形成された基材受け部21と、基材受け部21を支持する下型フレーム部22とを備えている。下型フレーム部22の底板221は、上型4を型開き状態から型閉じ状態となるまで上下動させる昇降機8の固定台81に固定されている。下型フレーム部22の内部には、外部との気密性を保持する中空部23が形成されている。また、基材受け部21には、基材1の真空吸引孔と連通する微細溝(図示しない)が基材受け面211に形成され、基材受け面211の微細溝と中空部23とを連通する貫通孔(図示しない)が適宜形成されている。また、下型フレーム部22の底板221には、真空吸引のための連通孔221Rが形成され、連通孔221Rは、固定台81に連結された配管232及び開閉バルブ231を介して昇降機側に配置された真空吸引ポンプ(図示しない)と接続されている。
【0033】
また、上型4には、表皮材3を基材1に押圧する表皮材押圧部41と、表皮材押圧部41を支持する上型フレーム部42とを備えている。上型フレーム部42の天板421は、昇降機8の可動台82に固定されている。上型フレーム部42の内部には、外部との気密性を保持する中空部43が形成されている。また、表皮材押圧部41には、表皮材3を押圧する成形面411が形成され、成形面411は、微細な吸気孔(図示しない)を有する電鋳殻層41Dに形成されている。また、表皮材押圧部41には、電鋳殻層41Dの吸気孔と中空部43とを連通する貫通孔(図示しない)が形成されている。また、成形面411には、表皮材3の表皮31にシボ模様SSを転写するシボ形状411Sが形成されている。また、上型フレーム部42の天板421には、真空吸引のための連通孔421Rが形成され、連通孔421Rは、可動台82に連結された配管432及び開閉バルブ431を介して昇降機側に配置された真空吸引ポンプ(図示しない)と接続されている。
【0034】
また、上型4には、下型2と上型4とが型開き状態から型閉じ状態となるまでガイド孔44の成形面411側の開口部441を塞ぐ先行塞ぎ部61を有し、型閉じ状態においてスライドコア5が前進する以前に開口部441から退避する先行スライド部材6を備えている。また、先行スライド部材6が進退するガイド孔45は、スライドコア5のガイド孔44と異なる方向へ直線状に形成され、かつ開口部441で略V字状に交差するように形成されている。スライドコア5は、ガイド孔44の後端縁に固定されたシリンダ装置52と連結され、先行スライド部材6は、ガイド孔45の後端縁に固定されたシリンダ装置62と連結されている。各シリンダ装置52、62は、それぞれ油圧シリンダと油圧調整弁と油圧回路切換弁とピストンロッドの前進端、後退端を検出する位置検出器と油圧制御部等とで構成されている。
【0035】
また、先行スライド部材6の先行塞ぎ部61は、表皮材3と当接する表皮材当接面611を備え、当該表皮材当接面611は、上下型の型閉じ方向Kに対して下部611Kがアンダーカット部1aと反対側へ開く開き角βを備えた傾斜面である。そのため、先行スライド部材6は、上下型の型閉じ途中から型閉じ状態まで、表皮材当接面611の下部611Kが表皮材3と当接して、基材1のアンダーカット部1aに貼着させる表皮材3を延伸させることができる。なお、型閉じ方向の垂直面STに対する表皮材当接面611の開き角βは、10度以上であることが好ましい。表皮材当接面611の開き角βが10度より小さくなると、表皮材当接面611と表皮材3との摩擦力が増加して、表皮材3の伸び率が大きくなり過ぎ、表皮材3に亀裂等が生じやすくなるからである。
【0036】
また、上型4の成形面411とスライドコア5の成形面511との分割線PLは、基材1の一般部1bからアンダーカット部1aへ折れ曲がるコーナ部1cに貼着される表皮材3における表皮31側のR止り33近傍に設けられている。したがって、分割線PLに隣接する上型の成形面411Pは、基材1の一般部1bに対向して、略平坦状になだらかな面として形成されている。一方、分割線PLに隣接するスライドコア5の成形面511Pは、基材1のコーナ部1cに対向して凹湾曲状に形成されているが、上下型の型閉じ状態で表皮材3がスライドコア5の成形面511によって基材1のアンダーカット部1aに押圧されたときには、表皮材3が基材1のコーナ部1cに沿って延伸されその肉厚が減少するので、分割線PLに隣接するスライドコア5の成形面511Pは、表皮材3に対して微小隙間を有している。
【0037】
また、スライドコア5の成形面511には、シボ形状511Sが形成され、上下型の型閉じ状態においてスライドコア5を表皮材3に押圧する押圧力Fを調節して、表皮材3の表皮31にシボ模様SSを転写する。例えば、スライドコア5を進退させるシリンダ装置52の油圧シリンダの前進端位置や作動圧力等を調節するだけで、表皮材3の表皮31にシボ模様SSを転写することができ、スライドコア5に対する真空吸引手段(例えば、真空吸引孔や吸引ポンプに接続する配管等)を設ける必要がない。
【0038】
なお、図4に示すように、本真空成形型10の変形例(10B)として、先行スライド部材6Bの先行塞ぎ部61Bは、先行スライド部材6Bの前進端において、表皮材当接面611Bが開口部441における上型4の成形面411より外方へ突出するように形成されてもよい。開口部441における上型4の成形面411に対する表皮材当接面611Bの突出量dは、表皮材3の板厚の10~30%程度が好ましい。この場合、上下型の型閉じ途中から型閉じ状態までに、先行塞ぎ部61Bが表皮材3をより一層延伸させて、基材1のアンダーカット部1aに貼着させる表皮材3の板厚を薄くさせることができる。そのため、図3に示すように、スライドコア5の成形面511が表皮材3を押圧したときに、表皮材3の板厚方向への撓み量が減少し、分割線PLのダイマークを回避しつつ、アンダーカット部1aに貼着する表皮材3の表皮31にシボ模様SSをより明瞭に転写させることができる。
【0039】
<本真空成形型の加工手順>
次に、本真空成形型の加工手順を、図5図9を用いて説明する。図5に、図1に示す内装部品の真空成形型における型開き状態の概略断面図を示す。図6に、図1に示す内装部品の真空成形型における型閉じ状態で、先行スライド部材が前進しスライドコアが後退した時の概略断面図を示す。図7に、図1に示す内装部品の真空成形型における型閉じ状態で、先行スライド部材が後退しスライドコアが前進した時の概略断面図を示す。図8に、図1に示す内装部品の真空成形型における型閉じ状態で、先行スライド部材が前進しスライドコアが後退した時の概略断面図を示す。図9に、図1に示す内装部品の真空成形型における型開き状態で、成形後の内装部品を取り出す時の概略断面図を示す。
【0040】
図5に示すように、まず、下型2と上型4とを固定した昇降機(図示しない)を作動させて、下型2と上型4とを型開き状態に保持し、下型2における基材受け部21の基材受け面211に基材1を載置する。次に、把持装置7が、所定の温度に加熱され接着剤が塗布された表皮材3の端部を把持し、下型2と上型4との隙間に挿入する。このとき、スライドコア用のシリンダ装置52の油圧シリンダが短縮した状態であり、スライドコア5はガイド孔44内の後退端に位置する。また、先行スライド部材用のシリンダ装置62の油圧シリンダが伸長した状態であり、先行スライド部材6はガイド孔45内の前進端に位置する。そして、先行スライド部材6の先行塞ぎ部61は、スライドコア5のガイド孔44における成形面411側の開口部441を塞ぐ位置に静止している。
【0041】
次に、図6に示すように、下型2と上型4とを固定した昇降機(図示しない)を作動させて、下型2と上型4とを型閉じ状態に移動させて保持する。型閉じ状態では、表皮材3が上型4の成形面411によって板厚以下に押し潰される。表皮材3の板厚は、例えば、4.8mmから3.0mm程度に押し潰される。また、把持装置7は、表皮材3の端部を把持したままで、上型4の移動に応じて、下型2及び上型4に対して干渉しない位置に移動する。
【0042】
また、上下型の型閉じ途中から型閉じ状態まで、先行スライド部材6の先行塞ぎ部61が表皮材3と当接して、表皮材3がスライドコア5の開口部441からガイド孔44内へ入り込むことを阻止しつつ、先行塞ぎ部61と表皮材3との摩擦力によって基材1の一般部1bからアンダーカット部1aへ折れ曲がるコーナ部1cを基点に表皮材3を延伸させる。そのため、型閉じ状態で表皮材3が上型4の成形面411によって板厚以下に押し潰されたときにも、スライドコア5のガイド孔44内へ入り込む表皮材3の余肉部の発生を、抑制させることができる。
【0043】
次に、図7に示すように、下型2と上型4とを型閉じ状態に保持したままで、図1に示す開閉バルブ231を所定の時間開き、昇降機側の真空吸引ポンプが下型2の中空部23の空気Q1を底板221の連通孔221Rを介して吸引することによって、基材1の表面に表皮材3の発泡層32を貼着させる。また、開閉バルブ231を閉じた後に、図1に示す開閉バルブ431を所定の時間開き、昇降機側の真空吸引ポンプが上型4の中空部43の空気Q2を天板421の連通孔421Rを介して吸引することによって、表皮材3の表皮31にシボ模様SSを転写させる。さらに、先行スライド部材用のシリンダ装置62の油圧シリンダを短縮させ、先行スライド部材6をガイド孔45内の後退端に移動させた後に、スライドコア用のシリンダ装置52の油圧シリンダを伸長させ、スライドコア5をガイド孔44の前進端に移動させる。前進端に移動したスライドコア5の成形面511が表皮材3を押圧して、基材1のアンダーカット部1aに表皮材3を貼着させ、かつ表皮材3の表皮31にシボ模様SSを転写させる。このとき、基材1のアンダーカット部1aに貼着された表皮材3に肉余り突起(バリ)が発生するのを簡単に回避できる。なお、表皮材3の表皮31にシボ模様SSを明瞭に転写できない場合には、スライドコア5を進退させるシリンダ装置52の油圧シリンダの前進端位置や作動圧力等を調節すること、又は、基材受け面211に載置した基材1を調節し、表皮材3の潰し量を増加させること等によって、シボ模様SSを明瞭に転写させる。
【0044】
次に、図8に示すように、下型2と上型4とを型閉じ状態に保持したままで、図1に示す開閉バルブ431を閉じ、真空吸引ポンプによる吸引を終了した上で、スライドコア用のシリンダ装置52の油圧シリンダを短縮させ、スライドコア5をガイド孔44の後退端に移動させる。さらに、先行スライド部材用のシリンダ装置62の油圧シリンダを伸長させ、先行スライド部材6をガイド孔45内の前進端に移動させる。
【0045】
最後に、図9に示すように、下型2と上型4とを固定した昇降機(図示しない)を作動させて、下型2と上型4とを型開き状態に保持し、下型2の基材受け面211に載置された内装部品Wを離型させる。以上、詳細に説明したように、本真空成形型10によれば、基材1のアンダーカット部1aに貼着された表皮材3に肉余り突起(バリ)が発生するのを回避しつつ、所要の内装部品Wを形成できる。
【0046】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る内装部品の真空成形型10、10Bによれば、上型4には、下型2と上型4とが型開き状態から型閉じ状態となるまでガイド孔44の成形面側の開口部441を塞ぐ先行塞ぎ部61を有し、型閉じ状態においてスライドコア5が前進する以前に開口部441から退避する先行スライド部材6を備えたので、上下型の型閉じ途中から型閉じ状態まで、先行スライド部材6の先行塞ぎ部61が表皮材3と当接して、表皮材3がスライドコア5の開口部441からガイド孔44内へ入り込むことを阻止しつつ、先行塞ぎ部61と表皮材3との摩擦力によって基材1の一般部1bからアンダーカット部1aへ折れ曲がるコーナ部1cを基点に表皮材3を延伸させることができる。そのため、型閉じ状態で表皮材3が上型4の成形面411によって板厚以下に押し潰されたときにも、スライドコア5のガイド孔44内へ入り込む表皮材3の余肉部の発生を、抑制させることができる。また、先行スライド部材6は、スライドコア5が前進する以前に開口部441から退避するので、スライドコア5を前進させて基材1のアンダーカット部1aに表皮材3を押圧して貼着させることに支障は生じない。したがって、スライドコア5が、スライドコア5とガイド孔44との隙間に表皮材3の余肉部を噛み込むことによって、基材1のアンダーカット部1aに貼着された表皮材3に肉余り突起(バリ)が発生することを簡単に回避できる。
【0047】
よって、本実施形態によれば、基材1のアンダーカット部1aに貼着された表皮材3に肉余り突起(バリ)が発生するのを簡単な型構造で回避できる内装部品の真空成形型10、10Bを提供することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、先行スライド部材6が進退するガイド孔45は、スライドコア5のガイド孔44と異なる方向へ直線状に形成され、かつ開口部441で略V字状に交差するので、先行スライド部材6をガイド孔45に沿って直線的に進退させることによって、スライドコア5との干渉を簡単に防止することができる。そのため、より簡単な型構造で、基材1のアンダーカット部1aに貼着された表皮材3に肉余り突起(バリ)が発生するのを回避できる。
【0049】
また、本実施形態によれば、先行スライド部材6、6Bの先行塞ぎ部61、61Bは、表皮材3と当接する表皮材当接面611、611Bを備え、当該表皮材当接面611、611Bは、上下型の型閉じ方向Kに対して下部611K、611BKがアンダーカット部1aと反対側へ開く開き角βを備えた傾斜面であるので、上下型の型閉じ途中から型閉じ状態まで、表皮材当接面611、611Bの下部611K、611BKが表皮材3と当接して表皮材3を引っ張ることによって、基材1のアンダーカット部1aに貼着させる表皮材3をより一層延伸させることができる。そのため、型閉じ状態で表皮材3が上型4の成形面411によって板厚以下に押し潰されたときの表皮材3の余肉部の発生を、より一層抑制させることができる。なお、型閉じ方向Kと平行な垂直面STに対する表皮材当接面611、611Bの開き角βは、10度以上であることが好ましい。表皮材当接面611、611Bの開き角βが10度より小さくなると、表皮材当接面611、611Bと表皮材3との摩擦力が増加して、表皮材3の伸び率が大きくなり過ぎ、表皮材3に亀裂等が生じやすくなるからである。
【0050】
また、本実施形態によれば、上型4の成形面411とスライドコア5の成形面511との分割線PLは、基材1の一般部1bからアンダーカット部1aへ折れ曲がるコーナ部1cに貼着される表皮材3における表皮31側のR止り33近傍に設けたので、表皮材3に対する分割線PLのダイマーク(圧痕)が発生するのを効果的に回避させつつ、基材1のアンダーカット部1aに表皮材3を貼着させることができ、また、その表皮材3に肉余り突起(バリ)が発生するのを回避できる。
【0051】
すなわち、上型4の成形面411とスライドコア5の成形面511との分割線PLは、基材1の一般部1bからアンダーカット部1aへ折れ曲がるコーナ部1cに貼着される表皮材3における表皮31側のR止り33近傍に設けたので、分割線PLに隣接する上型4の成形面411Pは、基材1の一般部1bに対向して、略平坦状に形成されている。また、表皮材3は、基材1のコーナ部1cに沿って延伸されその板厚が減少するので、分割線PLに隣接する上型4の成形面411Pは、表皮材3に対して微小隙間を有している。そのため、上下型の型閉じ状態で表皮材3が上型4の成形面411によって板厚以下に押し潰されたときでも、分割線PLに隣接する上型4の成形面411Pに形成されたスライドコア5との境界部(分割線PL)による表皮材3に対する圧痕(分割線PLのダイマーク)は、生じにくい。
【0052】
また、上下型の型閉じ状態で表皮材3がスライドコア5の成形面511によって基材1のアンダーカット部1aに押圧されたときには、表皮材3が基材1のコーナ部1cに沿って延伸されその板厚が減少するので、分割線PLに隣接するスライドコア5の成形面511Pは、表皮材3に対して微小隙間を有している。そのため、分割線PLに隣接するスライドコア5の成形面511Pの境界部(分割線PL)による表皮材3に対する圧痕(分割線PLのダイマーク)は、生じにくい。その結果、表皮材3の表皮31側に分割線PLのダイマークが発生するのを効果的に回避させつつ、基材1のアンダーカット部1aに表皮材3を貼着させることができ、また、その表皮材3に肉余り突起(バリ)が発生するのを回避できる。
【0053】
また、本実施形態によれば、スライドコア5の成形面511には、シボ形状511Sが形成され、上下型の型閉じ状態においてスライドコア5を表皮材3に押圧する押圧力Fを調節して、表皮材3の表皮31にシボ模様SSを転写するので、例えば、スライドコア5を進退させるシリンダ装置52における油圧シリンダの前進端位置や作動圧力等を調節するだけで、表皮材3の表皮31にシボ模様SSを転写することができ、スライドコア5に対する真空吸引手段(例えば、真空吸引孔や吸引ポンプに接続する配管等)を設ける必要がない。そのため、基材1のアンダーカット部1aに貼着された表皮材3に肉余り突起(バリ)が発生するのを回避しつつ、アンダーカット部1aに貼着された表皮材3の表皮31にシボ模様SSを転写する型構造を、より一層簡素化できる。
【0054】
また、本実施形態によれば、先行スライド部材6Bの先行塞ぎ部61Bは、先行スライド部材6Bの前進端において、開口部441における上型4の成形面411より外方へ突出するように形成されているので、上下型の型閉じ途中から型閉じ状態までに、先行塞ぎ部61Bが表皮材3をより一層延伸させて、基材のアンダーカット部1aに貼着させる表皮材3の板厚を薄くさせることができる。そのため、スライドコア5の成形面511が表皮材3を押圧したときに、表皮材3の板厚方向への撓み量が減少し、アンダーカット部1aに貼着する表皮材3の表皮31にシボ模様SSをより明瞭に転写させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、真空吸引によって型閉じ方向に対して負角となるアンダーカット部を有する基材表面に表皮材を貼着させる内装部品の真空成形型として利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 基材
1a アンダーカット部
1b 一般部
1c コーナ部
2 下型
3 表皮材
4 上型
5 スライドコア
6 先行スライド部材
10、10B 内装部品の真空成形型
31 表皮
32 発泡層
33 R止り
44、45 ガイド孔
61 先行塞ぎ部
411 成形面
441 開口部
511 成形面
511S シボ形状
611、611B 表皮材当接面
611K、611BK 下部
F 押圧力
K 型閉じ方向
PL 分割線
SS シボ模様
α 負角
β 開き角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11