(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F01M 13/04 20060101AFI20220509BHJP
F01M 13/00 20060101ALI20220509BHJP
F02B 77/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
F01M13/04 H
F01M13/00 D
F02B77/00 L
(21)【出願番号】P 2019007528
(22)【出願日】2019-01-21
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊集院 崇
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-74551(JP,A)
【文献】特開2006-316625(JP,A)
【文献】特開2007-231776(JP,A)
【文献】特開2012-77631(JP,A)
【文献】特開2012-251451(JP,A)
【文献】特開2014-70535(JP,A)
【文献】米国特許第4353332(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
F02B 77/00
F02F 1/18
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランクケース内に設けられるクランク軸と、
前記クランクケースの上方に配置されるシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの上端部に固定されるシリンダヘッドと、
前記内燃機関の一方側の側部に設けられて、前記クランクケース内に漏れ出したブローバイガスを前記一方側の側部に沿って上方へ導くブローバイガス通路と、
前記ブローバイガス通路の下流側にブローバイガス入口部が連通して、ブローバイガス中に含まれるオイルミストを回収した後、ブローバイガスを吸気経路へ環流するオイルミストセパレータと、
前記ブローバイガス通路の下流側に配置されて、前記ブローバイガス入口部に対向した状態で、前記クランク軸と連動して回転する遮蔽部材と、
を備え、
前記クランクケースは、該クランクケース内のブローバイガスを前記ブローバイガス通路の上流側に流出させるブローバイガス流出部を有し、
前記遮蔽部材は、
回転軸方向に貫通し、各気筒の行程に同期して、ブローバイガスの圧力が高圧でないときに、前記ブローバイガス入口部の少なくとも一部を開放する開口部と、
前記開口部に対して周方向外側に設けられて、各気筒の行程に同期して、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、前記ブローバイガス入口部を覆う閉塞部と、
を有する、
内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関において、
前記遮蔽部材は、バランサウエイトを含み、
前記バランサウエイトを軸支するバランサ軸と、
前記バランサウエイトの外周部に前記バランサ軸と同軸に設けられたバランサギヤと、
前記バランサギヤに前記クランク軸の回転駆動力を伝達するクランク動力伝達機構と、
を備え、
前記閉塞部は、前記バランサウエイトに設けられて、前記バランサギヤを介して前記クランク軸の回転に同期して回転されて、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、前記ブローバイガス入口部を覆う、
内燃機関。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関において、
前記遮蔽部材は、バランサウエイトを含み、
前記バランサウエイトを軸支するバランサ軸と、
前記バランサウエイトの外周部に前記バランサ軸と同軸に設けられたバランサギヤと、
前記バランサギヤにカムシャフトの回転駆動力を伝達するカム動力伝達機構と、
を備え、
前記閉塞部は、前記バランサウエイトに設けられて、前記バランサギヤを介して前記カムシャフトの回転に同期して回転されて、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、前記ブローバイガス入口部を覆う、
内燃機関。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関において、
前記閉塞部は、クランク角が爆発行程の上死点のときに、前記ブローバイガス入口部を覆うと共に、クランク角が爆発行程の上死点を含む所定角度の間のときに、前記ブローバイガス入口部の少なくとも一部を覆う、
内燃機関。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の内燃機関において、
前記遮蔽部材は、前記クランク軸の回転速度の略半分の回転速度で回転される場合には、気筒数に等しい数の前記開口部及び前記閉塞部を有する、
内燃機関。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の内燃機関において、
前記遮蔽部材は、前記クランク軸の回転速度にほぼ等しい回転速度で回転される場合には、気筒数の半分に等しい数の前記開口部及び前記閉塞部を有する、
内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクケース内に漏れ出したブローバイガスを吸気経路へ環流させる内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クランクケース内に漏れ出したブローバイガスを吸気経路へ環流させる内燃機関に関する技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献1に記載された内燃機関では、クランク軸と連動して回転するバランサ軸と、バランサ軸に偏心して設けられるバランサウエイトと、バランサウエイトの回転軌跡を囲んで該バランサウエイトを密閉する隔壁と、隔壁よりも内側であってバランサウエイトが存在していない空間である空間部と、隔壁よりも外側のクランクケース室内と、を連通する開口部と、を備えている。
【0003】
そして、クランクケース室内の容積が所定値以上のときに、バランサウエイトが開口部を閉じることで空間部とクランクケース室内との連通を遮断し、クランクケース室内の容積が所定値未満のときにバランサウエイトが開口部を開くことで空間部とクランクケース室内と連通するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載された内燃機関では、クランクケース室内の容積が所定値未満のときにバランサウエイトが隔壁に設けられた開口部を開くように構成されているため、ブローバイガスの圧力が高くなった際に、開口部が開かれる。このため、クランクケース室内で攪拌されたエンジンオイルを内包したブローバイガスが、高圧力かつ高速で開口部からベンチレーションシステムのオイルミストセパレータに流入する。その結果、ブローバイガスに内包されたエンジンオイルの粒径の大きいオイルミストが、オイルミストセパレータから吸気経路に流入しやすくなり、燃焼室における燃焼の不安定を生じさせる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、オイルミストセパレータへ流入するブローバイガスのエンジンオイル分を低減して、燃焼の安定性を向上させることができる内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、内燃機関のクランクケース内に設けられるクランク軸と、前記クランクケースの上方に配置されるシリンダブロックと、前記シリンダブロックの上端部に固定されるシリンダヘッドと、前記内燃機関の一方側の側部に設けられて、前記クランクケース内に漏れ出したブローバイガスを前記一方側の側部に沿って上方へ導くブローバイガス通路と、前記ブローバイガス通路の下流側にブローバイガス入口部が連通して、ブローバイガス中に含まれるオイルミストを回収した後、ブローバイガスを吸気経路へ環流するオイルミストセパレータと、前記ブローバイガス通路の下流側に配置されて、前記ブローバイガス入口部に対向した状態で、前記クランク軸と連動して回転する遮蔽部材と、を備え、前記クランクケースは、該クランクケース内のブローバイガスを前記ブローバイガス通路の上流側に流出させるブローバイガス流出部を有し、前記遮蔽部材は、回転軸方向に貫通し、各気筒の行程に同期して、ブローバイガスの圧力が高圧でないときに、前記ブローバイガス入口部の少なくとも一部を開放する開口部と、前記開口部に対して周方向外側に設けられて、各気筒の行程に同期して、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、前記ブローバイガス入口部を覆う閉塞部と、を有する、内燃機関である。
【0008】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る内燃機関において、前記遮蔽部材は、バランサウエイトを含み、前記バランサウエイトを軸支するバランサ軸と、前記バランサウエイトの外周部に前記バランサ軸と同軸に設けられたバランサギヤと、前記バランサギヤに前記クランク軸の回転駆動力を伝達するクランク動力伝達機構と、を備え、前記閉塞部は、前記バランサウエイトに設けられて、前記バランサギヤを介して前記クランク軸の回転に同期して回転されて、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、前記ブローバイガス入口部を覆う、内燃機関である。
【0009】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明に係る内燃機関において、前記遮蔽部材は、バランサウエイトを含み、前記バランサウエイトを軸支するバランサ軸と、前記バランサウエイトの外周部に前記バランサ軸と同軸に設けられたバランサギヤと、前記バランサギヤにカムシャフトの回転駆動力を伝達するカム動力伝達機構と、を備え、前記閉塞部は、前記バランサウエイトに設けられて、前記バランサギヤを介して前記カムシャフトの回転に同期して回転されて、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、前記ブローバイガス入口部を覆う、内燃機関である。
【0010】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明乃至第3の発明のいずれか1つの発明に係る内燃機関において、前記閉塞部は、クランク角が爆発行程の上死点のときに、前記ブローバイガス入口部を覆うと共に、クランク角が爆発行程の上死点を含む所定角度の間のときに、前記ブローバイガス入口部の少なくとも一部を覆う、内燃機関である。
【0011】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1の発明乃至第4の発明のいずれか1つの発明に係る内燃機関において、前記遮蔽部材は、前記クランク軸の回転速度の略半分の回転速度で回転される場合には、気筒数に等しい数の前記開口部及び前記閉塞部を有する、内燃機関である。
【0012】
次に、本発明の第6の発明は、上記第1の発明乃至第4の発明のいずれか1つの発明に係る内燃機関において、前記遮蔽部材は、前記クランク軸の回転速度にほぼ等しい回転速度で回転される場合には、気筒数の半分に等しい数の前記開口部及び前記閉塞部を有する、内燃機関である。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、ブローバイガスを吸気経路へ環流するオイルミストセパレータのブローバイガス入口部は、ブローバイガス通路の下流側に連通している。また、ブローバイガス通路の下流側に配置されて、ブローバイガス入口部に対向した状態で、クランク軸と連動して回転する遮蔽部材が設けられている。そして、遮蔽部材には、回転軸方向に貫通し、各気筒の行程に同期して、ブローバイガスの圧力が高圧でないときに、ブローバイガス入口部の少なくとも一部を開放する開口部が設けられている。また、遮蔽部材には、各気筒の行程に同期して、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、ブローバイガス入口部を覆う閉塞部が、開口部に対して周方向外側に設けられている。
【0014】
これにより、各気筒の行程に同期して、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、オイルミストセパレータのブローバイガス入口部が、遮蔽部材の閉塞部によって覆われる。また、各気筒の行程に同期して、ブローバイガスの圧力が高圧でないときに、オイルミストセパレータのブローバイガス入口部の少なくとも一部が、ブローバイガス通路に開放される。その結果、クランクケース内で攪拌されたエンジンオイルを内包したブローバイガスが、高圧力かつ高速でブローバイガス入口部からオイルミストセパレータに流入するのを抑止できる。従って、ブローバイガス通路からオイルミストセパレータへ流入するブローバイガスのエンジンオイル分を低減して、燃焼の安定性を向上させることができる。
【0015】
第2の発明によれば、バランサウエイトは、外周部に設けられたバランサギヤに、クランク動力伝達機構によってクランク軸の回転駆動力が伝達されるため、バランサウエイトをクランク軸の回転に容易に同期させて回転駆動することができる。これにより、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、バランサウエイトの閉塞部が、各気筒の行程に同期してオイルミストセパレータのブローバイガス入口部を覆うことができる。
【0016】
第3の発明によれば、バランサウエイトは、外周部に設けられたバランサギヤに、カム動力伝達機構によってカムシャフトの回転駆動力が伝達されるため、バランサウエイトをカムシャフトの回転に容易に同期させて回転駆動することができる。これにより、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、バランサウエイトの閉塞部が、各気筒の行程に同期してオイルミストセパレータのブローバイガス入口部を覆うことができる。
【0017】
第4の発明によれば、遮蔽部材に設けられた閉塞部は、クランク角が爆発行程の上死点のときに、ブローバイガス入口部を覆うと共に、クランク角が爆発行程の上死点を含む所定角度の間のときに、ブローバイガス入口部の少なくとも一部を覆う。これにより、ブローバイガスの圧力が最も高いときを含む高圧力の間、オイルミストセパレータのブローバイガス入口部が遮蔽部材の閉塞部によって覆われる。この結果、ブローバイガス通路からオイルミストセパレータへ流入するブローバイガスのエンジンオイル分を低減して、燃焼の安定性を向上させることができる。
【0018】
第5の発明によれば、遮蔽部材は、クランク軸の回転速度の略半分の回転速度で回転される場合には、気筒数に等しい数の開口部及び閉塞部を有している。これにより、遮蔽部材の1回転で、全気筒の爆発行程に対応してブローバイガス入口部を覆うことができる。その結果、ブローバイガス通路からオイルミストセパレータへ流入するブローバイガスのエンジンオイル分を低減して、燃焼の安定性を向上させることができる。
【0019】
第6の発明によれば、遮蔽部材は、クランク軸の回転速度にほぼ等しい回転速度で回転される場合には、気筒数の半分に等しい数の開口部及び閉塞部を有している。これにより、遮蔽部材の2回転で、全気筒の爆発行程に対応してブローバイガス入口部を覆うことができる。その結果、ブローバイガス通路からオイルミストセパレータへ流入するブローバイガスのエンジンオイル分を低減して、燃焼の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る内燃機関の概略構成を説明する断面図である。
【
図3】
図2のX2-X2矢視の一部切欠き断面図である。
【
図5】バランサウエイトの回転と各気筒の行程との対応を説明する図である。
【
図6】バランサウエイトの閉塞部がブローバイガス入口部を覆う角度を説明する図である。
【
図7】比較例のバランサウエイトをバランサ軸の軸方向から見た正面図である。
【
図8】
図3に示すバランサウエイトと
図7に示す比較例のバランサウエイトとのブローバイガス入口部におけるブローバイガスの入口圧力の一例を示す図である。
【
図9】他の第1実施形態に係るバランサウエイトギヤにカムシャフトの回転駆動力を伝達するカム動力伝達機構の一例を示す図である。
【
図10】他の第2実施形態に係るバランサウエイト、バランサギヤ、及び、タイミングギヤの構成を説明する図である。
【
図11】他の第2実施形態に係るバランサウエイトの回転と各気筒の行程との対応を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る内燃機関を具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、各図に適宜に示される矢印「前」、「後」は、内燃機関の前後方向を示し、又、矢印「上」、「下」は、内燃機関の上下方向を示している。更に、矢印「左」、「右」は、内燃機関の左右方向示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
【0022】
図1に示すように、内燃機関1は、左右にV字型となるように設けられた右バンク12Rと不図示の左バンク12Lを有する4サイクルV型6気筒のディーゼルエンジンである。尚、ガソリンエンジンであっても同様に適用できる。内燃機関1は、シリンダヘッド11(
図1中、破線で示す。)と、シリンダブロック12と、クランクケース13とを含むエンジン本体3を備えている。
図1は、エンジン本体3のクランク軸15を含む縦断面を左側方から見た際の図である。
【0023】
シリンダブロック12の右バンク12Rと不図示の左バンク12Lには、各々に気筒(シリンダ)12Aが3個ずつ前後方向に並んで配置され、エンジン本体3は、6個の気筒12Aを有している。シリンダヘッド11は、シリンダブロック12の上端部に固定され、各気筒12Aの上部に不図示の燃焼室と吸気ポートと排気ポートを形成している。また、シリンダヘッド11には、不図示の吸気装置が連結されていて、各吸気ポートを介して燃焼室に吸気が供給されるように構成されている。また、シリンダヘッド11には、不図示の排気装置が連結されていて、燃焼室の排気が排気ポートを介して排気されるように構成されている。
【0024】
クランクケース13は、シリンダブロック12の下端部に固定されている。クランクケース13の内部には、クランク軸15が回転可能に支持されて収容されている。また、クランクケース13の下部には、エンジンオイルを溜めるオイルパン16が設けられている。エンジンオイルは、図示しないオイルポンプによってオイルパン16からエンジン本体3内の上部に送られて各部を潤滑した後、自重により落下してオイルパン16に戻る。また、クランクケース13の一方側(
図1中、後方側)の側部13Wには、オイルパン16よりも上方側の位置に、クランクケース13の外側に貫通して、クランクケース13内のブローバイガスをクランクケース13の外方へ流出させるブローバイガス流出部13Aが形成されている。
【0025】
シリンダブロック12の右バンク12Rと不図示の左バンク12Lに設けられた各気筒12Aの内部には、不図示のピストンが上下方向に往復移動可能に収容されている。各ピストンは、各コネクティングロッド18によりクランク軸15に連結されている。また、シリンダブロック12の右バンク12Rと不図示の左バンク12Lとの基端側の中央部の下方内側には、前後方向に沿ってバランサ軸21が回転可能に支持されて収容されている。
【0026】
バランサ軸21の一端側(
図1中、後端側)は、エンジン本体3の一方側(
図1中、後方側)の側部3Aから所定長さ外方に突出して、振動を抑制するための軸方向視略円形のバランサウエイト22がボルト止め等によりバランサ軸21と同軸に固定されている。また、バランサウエイト22の外周部には、バランサギヤ23がバランサ軸21と同軸に設けられている。バランサウエイト22及びバランサギヤ23は、遮蔽部材の一例として機能する。
【0027】
一方、クランク軸15の一端側(
図1中、後端側)は、エンジン本体3の一方側(
図1中、後方側)の側部3Aから所定長さ外方に突出して、外周部にバランサギヤ23に噛み合うタイミングギヤ25が固定されている。タイミングギヤ25の歯数は、バランサギヤ23の歯数の半分に設定され、クランク軸15の2回転(クランク角で720度CA)で、バランサウエイト22及びバランサ軸21が1回転するように構成されている。タイミングギヤ25は、クランク動力伝達機構の一例として機能する。
【0028】
そして、エンジン本体3の一方側(
図1中、後方側)の側部3Aには、ブローバイガス流出部13A、タイミングギヤ25、バランサウエイト22、及び、バランサギヤ23を覆うブローバイガス通路カバー27が取り付けられている。また、ブローバイガス通路カバー27の略中央部には、貫通孔27Aが形成され、クランク軸15の一端側(
図1中、後端側)がオイルシール28を介して挿通されている。
【0029】
これにより、ブローバイガス通路カバー27の内側とエンジン本体3の一方側(
図1中、後方側)の側部3Aとの間に、ブローバイガス流出部13Aからバランサウエイト22及びバランサギヤ23の一方側(
図1中、後方側)の側面に達するブローバイガス通路31が形成される。従って、クランクケース13のブローバイガス流出部13Aからエンジン本体3の外方へ流出したブローバイガスは、ブローバイガス通路31によって上方へ案内されて、バランサウエイト22及びバランサギヤ23の一方側(
図1中、後方側)の側面に達する。
【0030】
また、シリンダブロック12の右バンク12Rと不図示の左バンク12Lとの間には、エンジン本体3の一方側(
図1中、後方側)の側部3Aの近傍位置にオイルミストセパレータ33が設けられている。オイルミストセパレータ33は、ブローバイガス中に含まれるエンジンオイルのオイルミストを捕集した後、ブローバイガスをベンチレーションホース35を介して吸気経路へ環流させる装置である。オイルミストセパレータ33には、サイクロン式、衝突板式、迂回式等、種々の方式を適用できる。
【0031】
図2及び
図3に示すように、オイルミストセパレータ33の下方には、バランサウエイト22及びバランサギヤ23に対向するエンジン本体3の一方側(
図2中、後方側)の側部3Aから、バランサ軸21に対して略平行に、エンジン本体3の他方側(
図2中、前方側)に向かって所定深さ窪むように形成された有底円筒状のブローバイガス入口部33Aが設けられている。そして、ブローバイガス入口部33Aの奥側端部は、オイルミストセパレータ33の下端部に接続されている。従って、オイルミストセパレータ33は、ブローバイガス入口部33Aを介して、バランサウエイト22及びバランサギヤ23に対向するエンジン本体3の一方側(
図2中、後方側)の側部3Aに連通している。
【0032】
また、
図3に示すように、軸方向視略円形のバランサウエイト22は、中心角約45度で中心部近傍から外周部近傍まで断面略扇形に切り欠かれた開口部22Aが、約60度の等中心角度で6個形成されている。また、各開口部22Aの間には、つまり、各開口部22Aの周方向外側には、中心角約15度でブローバイガス入口部33Aのブローバイガスの入口側(
図2中、右側端部)を覆うことが可能な軸方向視略扇形の閉塞部22Bが、約60度の等中心角度で6個形成されている。また、各開口部22Aは、ブローバイガス入口部33Aのブローバイガスの入口側よりも大きくなるように形成されている。
【0033】
また、
図2及び
図3に示すように、ブローバイガス通路カバー27の周縁部は、略直角にエンジン本体3の一方側(
図1中、後方側)の側部3Aに沿って所定高さ延出されると共に、上端部側は、正面視略逆U字状に形成されて、バランサギヤ23のバランサ軸21よりも上方側の外周部の近傍を覆うように設けられている。また、
図2に示すように、バランサウエイト22の各閉塞部22Bの軸方向厚さは、ブローバイガス入口部33Aに対向した際に、該ブローバイガス入口部33Aの入口側の近傍に達する厚さに形成されている。
【0034】
従って、バランサウエイト22の閉塞部22Bが、ブローバイガス入口部33Aに対向した際には、該ブローバイガス入口部33Aの入口側が閉塞部22Bによってほぼ塞がれると共に、バランサギヤ23のバランサ軸21よりも上方側の外周部も、ブローバイガス通路カバー27の上端部側の周縁部によって、ほぼ塞がれる。一方、バランサウエイト22の開口部22Aが、ブローバイガス入口部33Aに対向した際には、該ブローバイガス入口部33Aの入口側が開口部22Aによって開放されると共に、バランサギヤ23のバランサ軸21よりも上方側の外周部は、ブローバイガス通路カバー27の上端部側の周縁部によって、ほぼ塞がれる。
【0035】
その結果、
図4に示すように、各気筒12Aの上部に形成された燃焼室からクランクケース13内に(矢印41方向に)漏れ出たブローバイガスは、クランクケース13の一方側(
図4中、後方側)の側部13Wに形成されたブローバイガス流出部13Aから外方(矢印42方向)へ流出する。続いて、ブローバイガス流出部13Aから外方へ流出したブローバイガスは、ブローバイガス通路カバー27によって覆われるブローバイガス通路31の下流側(
図4中、下端側)に流入して、上方向(矢印43方向)、つまり、上流側へ流れ、バランサウエイト22及びバランサギヤ23に達する。
【0036】
そして、バランサウエイト22の開口部22Aがブローバイガス入口部33Aに対向している場合には、バランサウエイト22に達したブローバイガスは、開口部22Aを介してブローバイガス入口部33A内に(矢印44方向に)流入する。ブローバイガス入口部33Aに流入したブローバイガスは、ブローバイガス入口部33Aの奥側端部から上方向(矢印45方向)に流れ、オイルミストセパレータ33内に流入する。オイルミストセパレータ33内に流入したブローバイガスは、ブローバイガス中に含まれるエンジンオイルのオイルミストが捕集された後、ベンチレーションホース35を介して吸気経路へ環流され、再び燃焼室に供給される。
【0037】
一方、バランサウエイト22の閉塞部22Bがブローバイガス入口部33Aに対向している場合には、該ブローバイガス入口部33Aの入口側(
図2中、後端側)が覆われてほぼ閉塞されると共に、バランサギヤ23のバランサ軸21よりも上方側の外周部も、ブローバイガス通路カバー27の上端部側の周縁部によって、ほぼ塞がれる(
図3参照)。そのため、バランサウエイト22に達したブローバイガス通路31内のブローバイガスは、ブローバイガス入口部33Aへの進入を阻止される。
【0038】
次に、上記ように構成された内燃機関1のバランサウエイト22によるオイルミストセパレータ33のブローバイガス入口部33Aの開閉タイミングと各気筒12Aの行程との対応を
図5及び
図6に基づいて説明する。
図5に示すように、内燃機関1は、4サイクルV型6気筒のディーゼルエンジンであることから、各気筒12A(
図1参照)に設けられた不図示のピストンが、クランク角で120度(120度CA)の位相差をもって上下動する。また、各気筒12Aは、それぞれ不図示のピストンが上下して、クランク角で180度CA毎に吸気行程→圧縮行程→爆発行程→排気行程となる。
【0039】
そのため、各気筒12Aでの燃焼(そのための燃料噴射)のタイミングは、120度CAずつ位相をずらしたタイミングに設定される。具体的には、各気筒12Aの気筒番号をそれぞれ1番、2番、3番、・・・6番とすると、例えば、1番気筒→2番気筒→3番気筒→4番気筒→5番気筒→6番気筒の順に燃焼が行われる。つまり、1番気筒が圧縮行程の圧縮上死点(360度CA)に達して燃料が噴射されると、2番気筒→3番気筒→4番気筒→5番気筒→6番気筒の順に120度CAずつ位相をずらしたタイミングで圧縮上死点に達して燃料噴射により燃焼する。
【0040】
その結果、1番気筒→2番気筒→3番気筒→4番気筒→5番気筒→6番気筒の順に燃焼が行われると、各気筒12Aの圧縮上死点(360度CA)から所定クランク角まで、例えば、390度CAまで、つまり、爆発上死点(360度CA)から所定クランク角まで、例えば、390度CAまでの爆発行程において、気筒12Aの不図示の燃焼室から高圧のブローバイガスがクランクケース13内に漏れ出す(
図4参照)。そして、このブローバイガスの高圧力は、クランクケース13の一方側(
図1中、後方側)の側部13Wに形成されたブローバイガス流出部13Aからブローバイガス通路31を上方へ伝搬して、バランサウエイト22の後方側(
図2中、右側)のブローバイガスまで伝搬する。
【0041】
また、上記の通り、バランサウエイト22の外周部に設けられたバランサギヤ23の歯数は、クランク軸15の一端側の外周部に固定されたタイミングギヤ25の歯数の2倍に設定されている。このため、クランク軸15の2回転(クランク角で720度CA)で、バランサウエイト22及びバランサギヤ23が1回転するように構成されている。つまり、バランサウエイト22は、バランサギヤ23を介してクランク軸15の回転速度の半分の回転速度で回転される。また、
図5に示すように、バランサウエイト22の気筒数に等しい6個の閉塞部22Bは、中心角約15度の略扇形に形成されて、中心角60度の等間隔で同心円上に配置されている。
【0042】
また、
図5及び
図6に示すように、クランク軸15が2回転する間に、バランサウエイト22は、中心角で60度(クランク角で120度CA)回転する毎に、6個の閉塞部22Bが、順番に、各気筒12Aの爆発行程の爆発上死点(360度CA)から所定クランク角まで、例えば、390度CAまで、オイルミストセパレータ33のブローバイガス入口部33Aを覆うように設定されている。
【0043】
次に、本実施形態のバランサウエイト22と、
図7に示す比較例として従来の一例であるバランサウエイト51とを、それぞれにおいて、バランサ軸21の一端側(
図1中、後端側)に固定した場合における、ブローバイガス入口部33Aに流入するブローバイガスの入口圧力について
図8に基づいて説明する。先ず、比較例としてのバランサウエイト51について
図7に基づいて説明する。尚、
図7において、
図3に示すバランサウエイト22の構成と同一符号は、上記バランサウエイト22の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0044】
図7に示すように、比較例としての軸方向視略円形のバランサウエイト51は、バランサウエイト22と同様に、外周部にバランサギヤ23がバランサ軸21と同軸に設けられている。バランサウエイト51は、ボルト21Aによりバランサ軸21と同軸に固定されている。バランサウエイト51は、中心角約70度で中心部近傍から外周部近傍まで断面略扇形に切り欠かれた2個の開口部51Aが、中心角約15度の軸方向視略扇形の閉塞部22Bと、中心角約205度の軸方向視略扇形の閉塞部51Bとを、それぞれの間に周方向に沿って挟むように設けられている。
【0045】
そして、上記のように構成された比較例としてのバランサウエイト51をバランサ軸21の一端側(
図1中、後端側)に固定して、内燃機関1のクランク軸15を回転駆動した際における、ブローバイガス入口部33Aに流入するブローバイガスの入口圧力の測定結果の一例を
図8の破線55で示す。
【0046】
また、バランサウエイト22をバランサ軸21の一端側(
図1中、後端側)に固定して、各閉塞部22Bが各気筒12Aの爆発上死点(360度CA)から所定クランク角まで、例えば、390度CAまでの爆発行程において、ブローバイガス入口部33Aを覆うように設定する。そして、この状態で内燃機関1のクランク軸15を回転駆動した際における、ブローバイガス入口部33Aに流入するブローバイガスの入口圧力の測定結果の一例を
図8の実線56で示す。
【0047】
図8の破線55で示すように、従来のバランサウエイト51をバランサ軸21の一端側固定した際には、ブローバイガス入口部33Aに流入するブローバイガスの入口圧力のピーク圧力は、約-1.6~-2.0[kPa]である。一方、
図8の実線56で示すように、本発明を具体化したバランサウエイト22をバランサ軸21の一端側固定した際には、ブローバイガス入口部33Aに流入するブローバイガスの入口圧力のピーク圧力は、約-2.7~-3.0[kPa]である。
【0048】
従って、バランサウエイト22の各閉塞部22Bは、各気筒12Aの爆発上死点(360度CA)から所定クランク角まで、例えば、390度CAまでの爆発行程において、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、ブローバイガス入口部33Aを覆うことによって、ブローバイガス入口部33Aに流入するブローバイガスの入口圧力のピーク圧力を、従来のバランサウエイト51よりも低減することができる。
【0049】
その結果、バランサウエイト22をバランサ軸21の一端側(
図1中、後端側)に固定することによって、クランクケース13内で攪拌されたエンジンオイルを内包したブローバイガスが、高圧力かつ高速でブローバイガス入口部33Aからオイルミストセパレータ33に流入するのを抑止できる。従って、ブローバイガス通路31からオイルミストセパレータ33へ流入するブローバイガスのエンジンオイル分を低減して、燃焼の安定性を向上させることができる。
【0050】
また、バランサウエイト22は、外周部に設けられたバランサギヤ23に、クランク軸15の一端側(
図1中、右端側)の外周部に固定されたタイミングギヤ25によってクランク軸15の回転駆動力が伝達される。その結果、バランサウエイト22をクランク軸15の回転に容易に同期させて回転駆動することができる。これにより、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、バランサウエイト22の各閉塞部22Bが、クランク軸15の回転に同期してオイルミストセパレータ33のブローバイガス入口部33Aを覆うことができる。
【0051】
また、バランサウエイト22は、シリンダブロック12の気筒数に等しい6個の開口部22A及び6個の閉塞部22Bを有している。これにより、バランサウエイト22及びバランサギヤ23の1回転で、全気筒12Aの爆発行程に対応してブローバイガス入口部33Aを覆うことができる。その結果、ブローバイガス通路31からオイルミストセパレータ33へ流入するブローバイガスのエンジンオイル分を低減して、燃焼の安定性を向上させることができる。
【0052】
本発明の内燃機関は、前記実施形態で説明した構成、構造、外観、形状、処理手順等に限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変更、改良、追加、削除が可能である。尚、以下の説明において上記
図1~
図8の前記実施形態に係る内燃機関1の構成等と同一符号は、前記実施形態に係る内燃機関1の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0053】
[他の第1実施形態]
(A)例えば、
図9に示すように、他の第1実施形態に係る内燃機関60の構成は、前記実施形態の内燃機関1の構成とほぼ同じ構成である。但し、以下のように構成してもよい。内燃機関1のタイミングギヤ25に替えて、カムシャフト61の一端側(
図1中、後端側)に、バランサギヤ23に噛み合うタイミングギヤ62を同軸に固定するようにしてもよい。
【0054】
そして、タイミングギヤ62の歯数は、バランサギヤ23と同一の歯数に設定するようにしてもよい。バランサウエイト22は、ボルト21Aによりバランサ軸21(
図1参照)と同軸に固定されている。従って、カムシャフト61の1回転、つまり、クランク軸15(
図1参照)の2回転(クランク角で720度CA)で、バランサウエイト22及びバランサ軸21が1回転するように構成される。タイミングギヤ62は、カム動力伝達機構の一例として機能する。
【0055】
また、ブローバイガス通路カバー27に替えて、ブローバイガス流出部13A(
図1参照)、クランク軸15、バランサウエイト22、バランサギヤ23、及び、カムシャフト61の一端側に固定されたタイミングギヤ62を覆うブローバイガス通路カバー63をエンジン本体3の一方側(
図1中、後方側)の側部3Aに取り付けるようにしてもよい。これにより、ブローバイガス通路カバー63の内側とエンジン本体3の一方側(
図1中、後方側)の側部3Aとの間に、ブローバイガス流出部13Aからバランサウエイト22及びバランサギヤ23の一方側(
図1中、後方側)の側面に達するブローバイガス通路65が形成される。
【0056】
また、前記実施形態の内燃機関1と同様に、カムシャフト61が1回転する間に、バランサウエイト22は、中心角で60度(クランク角で120度CA)回転する毎に、6個の閉塞部22Bが、順番に、各気筒12A(
図1参照)の爆発行程の爆発上死点(360度CA)から所定クランク角まで、例えば、390度CAまで、オイルミストセパレータ33のブローバイガス入口部33Aを覆うように設定されるようにしてもよい。
【0057】
これにより、バランサウエイト22の各閉塞部22Bは、各気筒12Aの爆発上死点(360度CA)から所定クランク角まで、例えば、390度CAまでの爆発行程において、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、ブローバイガス入口部33Aを覆うことができ、ブローバイガス入口部33Aに流入するブローバイガスの入口圧力のピーク圧力を低減することができる。
【0058】
その結果、クランクケース13内で攪拌されたエンジンオイルを内包したブローバイガスが、高圧力かつ高速でブローバイガス入口部33Aからオイルミストセパレータ33に流入するのを抑止できる。従って、ブローバイガス通路65からオイルミストセパレータ33(
図1参照)へ流入するブローバイガスのエンジンオイル分を低減して、燃焼の安定性を向上させることができる。
【0059】
[他の第2実施形態]
(B)また、例えば、
図10に示すように、他の第2実施形態に係る内燃機関71の構成は、前記実施形態の内燃機関1の構成とほぼ同じ構成である。但し、以下のように構成してもよい。内燃機関1のバランサウエイト22に替えて、バランサ軸21の一端側(
図1中、後端側)に、軸方向視略円形のバランサウエイト72を同軸に固定するようにしてもよい。また、バランサウエイト72の外周部に、バランサギヤ23をバランサ軸21と同軸に設けるようにしてもよい。バランサウエイト72及びバランサギヤ23は、遮蔽部材の一例として機能する。
【0060】
また、クランク軸15の一端側(
図1中、後端側)の外周部に、タイミングギヤ25に替えて、タイミングギヤ75を同軸に固定するようにしてもよい。タイミングギヤ75の歯数は、バランサギヤ23の歯数と同じ歯数に設定され、クランク軸15の2回転(クランク角で720度CA)で、バランサウエイト72及びバランサ軸21が2回転するように構成されている。タイミングギヤ75は、クランク動力伝達機構の一例として機能する。
【0061】
また、軸方向視略円形のバランサウエイト72は、中心角約90度で中心部近傍から外周部近傍まで断面略扇形に切り欠かれた開口部72Aが、約120度の等中心角度で3個形成されている。また、各開口部72Aの間には、中心角約30度でブローバイガス入口部33Aのブローバイガスの入口側(
図1中、右側端部)を覆うことが可能な軸方向視略扇形の閉塞部72Bが、約120度の等中心角度で3個形成されている。また、各開口部72Aは、ブローバイガス入口部33Aのブローバイガスの入口側よりも大きくなるように形成されている。
【0062】
上記のように構成された内燃機関71のバランサウエイト72によるオイルミストセパレータ33(
図1参照)のブローバイガス入口部33Aの開閉タイミングと各気筒12Aの行程との対応を
図11に基づいて説明する。
図11に示すように、内燃機関71は、4サイクルV型6気筒のディーゼルエンジンであることから、各気筒12A(
図1参照)に設けられた不図示のピストンが、クランク角で120度(120度CA)の位相差をもって上下動する。また、各気筒12Aは、それぞれ不図示のピストンが上下して、クランク角で180度CA毎に吸気行程→圧縮行程→爆発行程→排気行程となる。
【0063】
そのため、各気筒12Aでの燃焼(そのための燃料噴射)のタイミングは、120度CAずつ位相をずらしたタイミングに設定される。具体的には、各気筒12Aの気筒番号をそれぞれ1番、2番、3番、・・・6番とすると、例えば、1番気筒→2番気筒→3番気筒→4番気筒→5番気筒→6番気筒の順に燃焼が行われる。つまり、1番気筒が圧縮行程の圧縮上死点(360度CA)に達して燃料が噴射されると、2番気筒→3番気筒→4番気筒→5番気筒→6番気筒の順に120度CAずつ位相をずらしたタイミングで圧縮上死点に達して燃料噴射により燃焼する。
【0064】
その結果、1番気筒→2番気筒→3番気筒→4番気筒→5番気筒→6番気筒の順に燃焼が行われると、各気筒12Aの圧縮上死点(360度CA)から所定クランク角まで、例えば、390度CAまで、つまり、爆発上死点(360度CA)から所定クランク角まで、例えば、390度CAまでの爆発行程において、気筒12Aの不図示の燃焼室から高圧のブローバイガスがクランクケース13内に漏れ出す(
図4参照)。そして、このブローバイガスの高圧力は、クランクケース13の一方側(
図1中、後方側)の側部13W(
図1参照)に形成されたブローバイガス流出部13A(
図1参照)からブローバイガス通路31(
図1参照)を上方へ伝搬して、バランサウエイト72の後方側(
図1中、右側)のブローバイガスまで伝搬する。
【0065】
また、上記の通り、クランク軸15の2回転(クランク角で720度CA)で、バランサウエイト72及びバランサギヤ23が2回転するように構成されている。つまり、バランサウエイト72は、クランク軸15の回転速度と等しい回転速度で回転される。また、
図10に示すように、バランサウエイト72の気筒数の半分に等しい3個の閉塞部72Bは、中心角約30度の略扇形に形成されて、中心角120度の等間隔で同心円上に配置されている。
【0066】
また、
図11に示すように、クランク軸15が2回転する間に、バランサウエイト72は、中心角で120度(クランク角で120度CA)回転する毎に、3個の閉塞部72Bが、順番に、各気筒12Aの爆発行程の爆発上死点(360度CA)から所定クランク角まで、例えば、390度CAまで、オイルミストセパレータ33(
図1参照)のブローバイガス入口部33Aを覆うように設定されている。
【0067】
従って、バランサウエイト72の各閉塞部72Bは、各気筒12Aの爆発上死点(360度CA)から所定クランク角まで、例えば、390度CAまでの爆発行程において、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、ブローバイガス入口部33Aを覆うことによって、ブローバイガス入口部33Aに流入するブローバイガスの入口圧力のピーク圧力を、従来のバランサウエイト51(
図7参照)よりも低減することができる。
【0068】
その結果、クランクケース13内で攪拌されたエンジンオイルを内包したブローバイガスが、高圧力かつ高速でブローバイガス入口部33Aからオイルミストセパレータ33(
図1参照)に流入するのを抑止できる。従って、ブローバイガス通路31(
図1参照)からオイルミストセパレータ33へ流入するブローバイガスのエンジンオイル分を低減して、燃焼の安定性を向上させることができる。
【0069】
また、バランサウエイト72は、外周部に設けられたバランサギヤ23に、クランク軸15の一端側(
図1中、右端側)の外周部に固定されたタイミングギヤ75によってクランク軸15の回転駆動力が伝達される。その結果、バランサウエイト72をクランク軸15の回転に容易に同期させて回転駆動することができる。これにより、ブローバイガスの圧力が高圧のときに、バランサウエイト72の各閉塞部72Bが、クランク軸15の回転に同期してオイルミストセパレータ33のブローバイガス入口部33Aを覆うことができる。
【0070】
また、バランサウエイト72は、シリンダブロック12の気筒数の半分に等しい3個の開口部72A及び3個の閉塞部72Bを有している。これにより、バランサウエイト72及びバランサギヤ23の2回転で、全気筒12Aの爆発行程に対応してブローバイガス入口部33Aを覆うことができる。その結果、ブローバイガス通路31(
図1参照)からオイルミストセパレータ33(
図1参照)へ流入するブローバイガスのエンジンオイル分を低減して、燃焼の安定性を向上させることができる。
【0071】
(C)また、例えば、シリンダブロック12の気筒数は、6個に限らず、2個、4個、8個等、任意の気筒数にしてもよい。そして、2個、4個、8個等、任意の気筒数にした際に、バランサギヤ23の歯数が、タイミングギヤ25の歯数の半分の歯数に設定された場合、つまり、バランサウエイト22(
図1参照)の回転速度が、クランク軸15の回転速度の半分の回転速度に設定された場合には、バランサウエイト22に、気筒数に等しい個数の閉塞部22B(
図3参照)を等中心角度毎に設けるようにしてもよい。また、周方向における各閉塞部22Bの間には、軸方向視略扇形の開口部を形成するようにしてもよい。
【0072】
これにより、クランク軸15が2回転する間に、バランサウエイト22が1回転するため、各閉塞部22Bが、各気筒12Aの爆発行程の上死点(360度CA)から所定クランク角まで、例えば、390度CAまで、オイルミストセパレータ33(
図1参照)のブローバイガス入口部33A(
図1参照)を覆うように設定することができる。従って、バランサウエイト22の各閉塞部22Bは、ブローバイガス入口部33Aを覆うことによって、ブローバイガス入口部33Aに流入するブローバイガスの入口圧力のピーク圧力を、従来のバランサウエイト51(
図7参照)よりも低減することができる。
【0073】
その結果、クランクケース13内で攪拌されたエンジンオイルを内包したブローバイガスが、高圧力かつ高速でブローバイガス入口部33Aからオイルミストセパレータ33(
図1参照)に流入するのを抑止できる。従って、ブローバイガス通路31(
図1参照)からオイルミストセパレータ33へ流入するブローバイガスのエンジンオイル分を低減して、燃焼の安定性を向上させることができる。
【0074】
また、2個、4個、8個等、任意の気筒数にした際に、バランサギヤ23の歯数が、タイミングギヤ25の歯数に等しい歯数に設定された場合、つまり、バランサウエイト72(
図10参照)の回転速度が、クランク軸15の回転速度に等しい回転速度に設定された場合には、バランサウエイト72に、気筒数の半分の個数、つまり、1個又は複数個の閉塞部72B(
図10参照)を設けるようにしてもよい。例えば、複数個の閉塞部72Bを設ける場合には、等中心角度毎に設けるようにしてもよい。また、周方向における各閉塞部72Bの間には、軸方向視略扇形の開口部を形成するようにしてもよい。
【0075】
これにより、クランク軸15が2回転する間に、バランサウエイト72が2回転するため、各閉塞部72Bが、各気筒12Aの爆発行程の上死点(360度CA)から所定クランク角まで、例えば、390度CAまで、オイルミストセパレータ33(
図1参照)のブローバイガス入口部33A(
図1参照)を覆うように設定することができる。従って、バランサウエイト72の各閉塞部72Bは、ブローバイガス入口部33Aを覆うことによって、ブローバイガス入口部33Aに流入するブローバイガスの入口圧力のピーク圧力を、従来のバランサウエイト51(
図7参照)よりも低減することができる。
【0076】
その結果、クランクケース13内で攪拌されたエンジンオイルを内包したブローバイガスが、高圧力かつ高速でブローバイガス入口部33Aからオイルミストセパレータ33(
図1参照)に流入するのを抑止できる。従って、ブローバイガス通路31(
図1参照)からオイルミストセパレータ33へ流入するブローバイガスのエンジンオイル分を低減して、燃焼の安定性を向上させることができる。
【0077】
(D)また、例えば、前記実施形態に係る内燃機関1では、タイミングギヤ25とバランサギヤ23は、互いに噛み合ったが、タイミングギヤ25とバランサギヤ23を互いに離間して配置するようにしてもよい。そして、タイミングギヤ25の回転駆動力、つまり、クランク軸15の回転駆動力をタイミングチェーンを介してバランサギヤ23に伝達するようにしてもよい。これにより、バランサギヤ23及びバランサウエイト22とオイルミストセパレータ33のブローバイガス入口部33Aを互いに対向するように配置する設計自由度を増すことができる。
【符号の説明】
【0078】
1、60、71 内燃機関
3 エンジン本体
3A、13W 側部
11 シリンダヘッド
12 シリンダブロック
12A 気筒
13 クランクケース
13A ブローバイガス流出部
15 クランク軸
21 バランサ軸
22、72 バランサウエイト
22A、72A 開口部
22B、72B 閉塞部
23 バランサギヤ
25、62 タイミングギヤ
27、63 ブローバイガス通路カバー
31、65 ブローバイガス通路
33 オイルミストセパレータ
33A ブローバイガス入口部
61 カムシャフト