(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】自走式排気浄化装置及び排気浄化システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20220509BHJP
F01N 3/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
F01N3/08 Z
F01N3/00 Z
(21)【出願番号】P 2019043866
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀隆
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-167667(JP,A)
【文献】特開2003-146599(JP,A)
【文献】特開2004-100548(JP,A)
【文献】国際公開第2011/136034(WO,A1)
【文献】特開2007-204023(JP,A)
【文献】国際公開第2019/226348(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00~ 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部を有する走行体と、
前記走行体に搭載され、車両の内燃機関から排気管を通して排出される排気ガスを吸引して、前記排気ガス中に含まれる有害物質を除去する吸引・除去部と、
前記車両の位置を検知する位置検知部と、
前記位置検知部により検知された前記車両の位置に基づいて、前記吸引・除去部の吸引口が前記排気管の排気口と対向する待機位置まで前記走行体が走行するように前記駆動部を制御する駆動制御部とを備える自走式排気浄化装置。
【請求項2】
前記車両と通信を行う通信部を更に備え、
前記駆動制御部は、前記車両からの通知信号に応じて、前記走行体が前記待機位置まで走行するように前記駆動部を制御する請求項1記載の自走式排気浄化装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記通信部により前記内燃機関を停止させることを通知する前記通知信号を受信したときに、前記走行体が前記待機位置まで走行するように前記駆動部を制御する請求項2記載の自走式排気浄化装置。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記通信部により前記内燃機関を始動させることを通知する前記通知信号を受信したときに、前記走行体が前記待機位置まで走行するように前記駆動部を制御する請求項2記載の自走式排気浄化装置。
【請求項5】
前記通信部により前記内燃機関を始動させることを通知する前記通知信号を受信したときに、前記吸引・除去部を起動するように制御する浄化制御部を更に備える請求項2~4の何れか一項記載の自走式排気浄化装置。
【請求項6】
前記内燃機関は、燃料としてアンモニアを使用するアンモニアエンジンであり、
前記吸引・除去部は、前記有害物質として未燃のアンモニアを含む物質を除去する請求項1~5の何れか一項記載の自走式排気浄化装置。
【請求項7】
車両に使用される自走式排気浄化装置と、
前記車両の内燃機関を制御する制御装置とを具備し、
前記自走式排気浄化装置は、
駆動部を有する走行体と、
前記走行体に搭載され、前記内燃機関から排気管を通して排出される排気ガスを吸引して、前記排気ガス中に含まれる有害物質を除去する吸引・除去部と、
前記車両の位置を検知する位置検知部と、
前記位置検知部により検知された前記車両の位置に基づいて、前記吸引・除去部の吸引口が前記排気管の排気口と対向する待機位置まで前記走行体が走行するように前記駆動部を制御する駆動制御部と、
前記車両と通信を行う通信部とを備え、
前記駆動制御部は、前記車両からの通知信号に応じて、前記走行体が前記待機位置まで走行するように前記駆動部を制御する排気浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式排気浄化装置及び排気浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、アンモニア燃焼内燃機関が記載されている。特許文献1に記載のアンモニア燃焼内燃機関では、燃焼室内に向けて液状アンモニアを噴射するアンモニア噴射弁がシリンダヘッドに配置されている。機関本体の排気系には、排気ガス中に含まれるアンモニア及びNOxを浄化する排気浄化触媒が配置されている。排気浄化触媒に流入する排気ガス中に含まれる未燃アンモニアとNOxとの比率を完全浄化比率となるように制御することにより、排気浄化触媒において未燃アンモニア及びNOxをほぼ完全に浄化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、排気浄化触媒が十分に暖機されて活性化されていることを想定している。このため、内燃機関の冷間始動時には、排気ガス中に含まれる有害物質であるアンモニアが浄化されることなく未燃のまま大気中に放出されるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、内燃機関の冷間始動時に、排気ガス中に含まれる有害物質が大気中に放出されることを防止できる自走式排気浄化装置及び排気浄化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る自走式排気浄化装置は、駆動部を有する走行体と、走行体に搭載され、車両の内燃機関から排気管を通して排出される排気ガスを吸引して、排気ガス中に含まれる有害物質を除去する吸引・除去部と、車両の位置を検知する位置検知部と、位置検知部により検知された車両の位置に基づいて、吸引・除去部の吸引口が排気管の排気口と対向する待機位置まで走行体が走行するように駆動部を制御する駆動制御部とを備える。
【0007】
このような自走式排気浄化装置においては、車両の内燃機関が始動する前に、車両の位置が検知され、走行体が待機位置まで走行するように駆動部が制御される。その状態で内燃機関が始動すると、内燃機関からの排気ガスが排気管を通って排出される。このとき、吸引・除去部の吸引口は、排気管の排気口と対向している。このため、吸引・除去部が起動されると、吸引・除去部によって排気ガスが吸引され、排気ガス中に含まれる有害物質が除去される。これにより、内燃機関の冷間始動時に、排気ガス中に含まれる有害物質が大気中に放出されることが防止される。また、自走式排気浄化装置は、走行体を備えているため、所定範囲内の任意の場所に走行可能である。従って、対象となる車両が所定範囲内の任意の位置に止まっていても、当該車両の内燃機関からの排気ガスを浄化することができる。
【0008】
自走式排気浄化装置は、車両と通信を行う通信部を更に備え、駆動制御部は、車両からの通知信号に応じて、走行体が待機位置まで走行するように駆動部を制御してもよい。このような構成では、車両からの通知信号に応じて、自走式排気浄化装置が待機位置まで自動的に走行するようになる。従って、オペレータが手動操作により走行体の走行を指示する手間を省くことができる。
【0009】
駆動制御部は、通信部により内燃機関を停止させることを通知する通知信号を受信したときに、走行体が待機位置まで走行するように駆動部を制御してもよい。このような構成では、内燃機関の始動時には、自走式排気浄化装置が既に待機位置で待機しているため、車両の運転者が自走式排気浄化装置の到着を待つことなく、直ちに内燃機関を始動させることができる。
【0010】
駆動制御部は、通信部により内燃機関を始動させることを通知する通知信号を受信したときに、走行体が待機位置まで走行するように駆動部を制御してもよい。このような構成では、内燃機関の停止から次の内燃機関の始動までの間に、自走式排気浄化装置を他の車両に使用することが可能となる。従って、1台の自走式排気浄化装置を複数台の車両に対して有効利用することができる。
【0011】
自走式排気浄化装置は、通信部により内燃機関を始動させることを通知する通知信号を受信したときに、吸引・除去部を起動するように制御する浄化制御部を更に備えてもよい。このような構成では、内燃機関を始動させる信号が受信されると、吸引・除去部が自動的に起動されるようになる。従って、オペレータが手動操作により吸引・除去部を起動する手間を省くことができる。
【0012】
内燃機関は、燃料としてアンモニアを使用するアンモニアエンジンであり、吸引・除去部は、有害物質として未燃のアンモニアを含む物質を除去してもよい。このような構成では、排気ガス中に含まれる未燃のアンモニアが大気中に放出されることが防止される。
【0013】
本発明の他の態様に係る排気浄化システムは、車両に使用される自走式排気浄化装置と、車両の内燃機関を制御する制御装置とを具備し、自走式排気浄化装置は、駆動部を有する走行体と、走行体に搭載され、内燃機関から排気管を通して排出される排気ガスを吸引して、排気ガス中に含まれる有害物質を除去する吸引・除去部と、車両の位置を検知する位置検知部と、位置検知部により検知された車両の位置に基づいて、吸引・除去部の吸引口が排気管の排気口と対向する待機位置まで走行体が走行するように駆動部を制御する駆動制御部と、車両と通信を行う通信部とを備え、駆動制御部は、車両からの通知信号に応じて、走行体が待機位置まで走行するように駆動部を制御する。
【0014】
このような排気浄化システムにおいては、車両の内燃機関が始動する前に、車両の位置が検知され、自走式排気浄化装置の走行体が待機位置まで走行するように駆動部が制御される。その状態で内燃機関が始動すると、内燃機関からの排気ガスが排気管を通って排出される。このとき、吸引・除去部の吸引口は、排気管の排気口と対向している。このため、吸引・除去部が起動されると、吸引・除去部によって排気ガスが吸引され、排気ガス中に含まれる有害物質が除去される。これにより、内燃機関の冷間始動時に、排気ガス中に含まれる有害物質が大気中に放出されることが防止される。また、自走式排気浄化装置は、走行体を備えているため、所定範囲内の任意の場所に走行可能である。従って、対象となる車両が所定範囲内の任意の位置に止まっていても、当該車両の内燃機関からの排気ガスを浄化することができる。
【0015】
また、車両からの通知信号に応じて、自走式排気浄化装置が待機位置まで自動的に走行するようになる。従って、オペレータが手動操作により走行体の走行を指示する手間を省くことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内燃機関の冷間始動時に、排気ガス中に含まれる有害物質が大気中に放出されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自走式排気浄化装置を具備した排気浄化システムが適用される作業エリアを示す概略図である。
【
図2】
図1に示された自走式排気浄化装置がフォークリフトの後方の待機位置で待機している状態を示す側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る自走式排気浄化装置を具備した排気浄化システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3に示されたエンジンECUにより実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】
図3に示されたコントローラにより実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る自走式排気浄化装置を具備した排気浄化システムとして、
図4に示されたエンジンECUにより実行される制御処理手順の変形例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る自走式排気浄化装置を具備した排気浄化システムとして、
図5に示されたコントローラにより実行される制御処理手順の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る自走式排気浄化装置を具備した排気浄化システムが適用される作業エリアを示す概略図である。
図1において、排気浄化システム1は、例えば工場内や倉庫内等の作業エリア2(所定範囲)に適用される。作業エリア2では、荷役車両であるフォークリフト3により荷役作業が行われる。フォークリフト3は、例えば作業エリア2に複数台存在する。作業エリア2には、車庫、休憩所及び燃料補給所等といったフォークリフト3が停止する複数の停止箇所が存在する。
【0020】
フォークリフト3には、
図2に示されるように、アンモニアエンジン4が搭載されている。アンモニアエンジン4は、燃料としてアンモニアを使用する内燃機関である。アンモニアエンジン4で発生した排気ガスは、排気管5によりフォークリフト3の外部に排出される。排気管5は、フォークリフト3の後部に配置され、フォークリフト3の後方に排気ガスを排出する。排気管5の先端(後端)の開口は、排気口5aとなっている。排気管5の途中には、排気ガス中に含まれる有害物質である未燃アンモニア及びNOxを除去する触媒6が配設されている。
【0021】
排気浄化システム1は、本実施形態の自走式排気浄化装置10を具備している。自走式排気浄化装置10は、例えば作業エリア2に複数台存在する。自走式排気浄化装置10は、フォークリフト3に使用される。自走式排気浄化装置10は、アンモニアエンジン4から排出される排気ガスを浄化する装置である。自走式排気浄化装置10は、自動走行機能を有している。
【0022】
図3は、自走式排気浄化装置10を具備した排気浄化システム1の構成を示すブロック図である。
図3において、排気浄化システム1は、自走式排気浄化装置10に加え、フォークリフト3に搭載された制御装置11を具備している。
【0023】
自走式排気浄化装置10は、走行体12と、吸引・除去器13(吸引・除去部)と、位置センサ14と、通信部15と、コントローラ16とを有している。吸引・除去器13、位置センサ14、通信部15及びコントローラ16は、走行体12に搭載されている。走行体12は、例えば無人搬送車である。走行体12は、走行モータ及び操舵モータ等の駆動部17を有している。
【0024】
吸引・除去器13は、アンモニアエンジン4から排出される排気ガスを吸引する吸引部18と、この吸引部18により吸引された排気ガス中に含まれる有害物質である未燃アンモニアを除去する除去部19とを有している。なお、有害物質は、未燃アンモニア以外の物質を含んでいることもある。
【0025】
吸引部18は、例えばブロワーまたはポンプ等により排気ガスを吸引する。吸引部18には、吸引管20が接続されている。吸引管20の先端部は、基端側から先端側に向けて径が大きくなるような漏斗状を呈している。吸引管20の先端の開口は、吸引口20aとなっている。
【0026】
除去部19は、例えば未燃アンモニアを燃焼、吸着または中和させて除去してもよいし、或いは未燃アンモニアを水に吸収させて除去してもよい。除去部19には、未燃アンモニアが除去された無害の排気ガスを排出する排出管21が接続されている。
【0027】
位置センサ14は、フォークリフト3の排気管5の位置を検出するセンサである。位置センサ14としては、赤外線センサ、超音波センサ、近接センサまたはカメラ等が用いられる。
【0028】
通信部15は、フォークリフト3と無線による通信を行う。通信部15は、送受信アンテナ15aを有している。
【0029】
コントローラ16は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェースにより構成されている。コントローラ16は、位置検知部28と、駆動制御部22と、浄化制御部23とを有している。
【0030】
位置検知部28は、フォークリフト3からの自己位置データに基づいて、フォークリフト3の位置を検知する。駆動制御部22は、位置検知部28により検知されたフォークリフト3の位置、フォークリフト3からのアンモニアエンジン4の動作に関する通知信号及び位置センサ14の検出信号に基づいて、走行体12が待機位置まで走行するように駆動部17を制御する。待機位置は、吸引・除去器13の吸引口20aがフォークリフト3の排気管5の排気口5aと対向するような位置である。浄化制御部23は、フォークリフト3からのアンモニアエンジン4の動作に関する通知信号に基づいて、吸引・除去器13を起動するように制御する。なお、コントローラ16の制御処理手順については、後で詳述する。
【0031】
制御装置11は、通信部24と、エンジンECU25(ECU:Electronic Control Unit)とを有している。通信部24は、自走式排気浄化装置10と無線による通信を行う。通信部24は、送受信アンテナ24aを有している。
【0032】
エンジンECU25には、イグニッションスイッチ26(IGスイッチ)が接続されている。イグニッションスイッチ26は、フォークリフト3の運転者がアンモニアエンジン4の始動及び停止を指示するための手動操作スイッチである。エンジンECU25は、イグニッションスイッチ26の操作信号及び自走式排気浄化装置10からの通知信号に基づいて、アンモニアエンジン4を制御すると共に、アンモニアエンジン4の動作に関する通知を行う。
【0033】
図4は、エンジンECU25により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、アンモニアエンジン4の回転動作中に実行される。
【0034】
図4において、エンジンECU25は、まずイグニッションスイッチ26の操作信号に基づいて、イグニッションスイッチ26がOFF操作されたかどうかを判断する(手順S101)。
【0035】
エンジンECU25は、イグニッションスイッチ26がOFF操作されたと判断したときは、エンジン停止信号及び自己位置データを通信部24により送信する(手順S102)。エンジン停止信号は、アンモニアエンジン4を停止させることを通知する通知信号である。自己位置データは、フォークリフト3の現在位置のデータである。フォークリフト3の現在位置は、GPS(GlobalPositioning System)等から把握することができる。そして、エンジンECU25は、アンモニアエンジン4を停止させるように制御する(手順S103)。
【0036】
その後、エンジンECU25は、イグニッションスイッチ26の操作信号に基づいて、イグニッションスイッチ26がON操作されたかどうかを判断する(手順S104)。エンジンECU25は、イグニッションスイッチ26がON操作されたと判断したときは、通信部24により自走式排気浄化装置10からのスタンバイ信号(後述)を受信したかどうかを判断する(手順S105)。
【0037】
エンジンECU25は、スタンバイ信号を受信したと判断したときは、エンジン始動信号を通信部24により送信する(手順S106)。エンジン始動信号は、アンモニアエンジン4を始動させることを通知する通知信号である。そして、エンジンECU25は、アンモニアエンジン4を始動させるように制御する(手順S107)。
【0038】
図5は、自走式排気浄化装置10のコントローラ16により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、自走式排気浄化装置10の停止中に実行される。
【0039】
図5において、コントローラ16は、まずフォークリフト3からのエンジン停止信号及び自己位置データを通信部15により受信したかどうかを判断する(手順S110)。コントローラ16は、エンジン停止信号及び自己位置データを受信したと判断したときは、自己位置データから対象のフォークリフト3の位置を検知する(手順S111)。そして、コントローラ16は、フォークリフト3の位置に基づいて、自走式排気浄化装置10の走行体12が対象のフォークリフト3に向けて走行するように駆動部17を制御する(手順S112)。
【0040】
そして、コントローラ16は、位置センサ14の検出信号に基づいて、自走式排気浄化装置10の走行体12が対象とするフォークリフト3の後方の待機位置に達したかどうかを判断する(手順S113)。待機位置は、上述したように、フォークリフト3の後方において吸引部18の吸引口20aが排気管5の排気口5aと対向する位置である。このとき、吸引口20aと排気口5aとの距離は、例えば排気管5から排出された排気ガスの大部分が吸引部18に入り込むことが可能な距離である。
【0041】
コントローラ16は、走行体12が待機位置に達していないと判断したときは、手順S112を再度実行する。コントローラ16は、走行体12が待機位置に達したと判断したときは、スタンバイ信号を通信部15により送信する(手順S114)。スタンバイ信号は、走行体12が待機位置で待機している状態であることを通知する通知信号である。
【0042】
続いて、コントローラ16は、フォークリフト3からのエンジン始動信号を通信部15により受信しかたどうかを判断する(手順S115)。コントローラ16は、エンジン始動信号を受信したと判断したときは、吸引・除去器13を起動するように制御する(手順S116)。
【0043】
そして、コントローラ16は、吸引・除去器13を起動するように制御してから所定時間が経過したかどうかを判断する(手順S117)。所定時間は、例えばフォークリフト3の触媒6が十分に暖機されて活性化されるような時間である。コントローラ16は、所定時間が経過したと判断したときは、吸引・除去器13の吸引・除去動作を停止させるように制御する(手順S118)。
【0044】
ここで、位置検知部28は、手順S110,S111を実行する。駆動制御部22は、手順S112~S114を実行する。浄化制御部23は、手順S115~S118を実行する。
【0045】
以上のような排気浄化システム1において、例えばフォークリフト3による荷役作業が終了したため、フォークリフト3が車庫に戻って停止し、フォークリフト3の運転者がイグニッションスイッチ26をOFF操作すると、フォークリフト3から自走式排気浄化装置10にエンジン停止信号及び自己位置データが送信され、アンモニアエンジン4が停止する。
【0046】
自走式排気浄化装置10がエンジン停止信号及び自己位置データを受信すると、フォークリフト3の位置が検知される。そして、自走式排気浄化装置10は、処理対象となるフォークリフト3の後方の待機位置まで自動的に走行し、その待機位置で待機した状態となる(
図2参照)。そして、自走式排気浄化装置10から対象のフォークリフト3にスタンバイ信号が送信される。
【0047】
その後、対象のフォークリフト3の運転者がイグニッションスイッチ26をON操作すると、当該フォークリフト3がスタンバイ信号を受信し、当該フォークリフト3から自走式排気浄化装置10にエンジン始動信号が送信され、アンモニアエンジン4が始動する。
【0048】
自走式排気浄化装置10がエンジン始動信号を受信すると、吸引・除去器13が起動される。すると、
図2に示されるように、アンモニアエンジン4から排気管5を通して排出された排気ガスが吸引部18により吸引される。このとき、吸引管20の先端部は漏斗状を呈しているため、排気ガスが吸引部18に入り込みやすい。そして、吸引された排気ガス中に含まれる未燃アンモニアが除去部19により除去される。そして、未燃アンモニアが除去された状態の無害化された排気ガスが排出管21より排出される。このように自走式排気浄化装置10によって排気ガスの浄化が行われる。
【0049】
その後、所定時間が経過すると、吸引・除去器13の吸引・除去動作が停止し、フォークリフト3の触媒6によって排気ガスの浄化が行われる。
【0050】
以上のように本実施形態にあっては、フォークリフト3のアンモニアエンジン4が始動する前に、フォークリフト3の位置が検知され、自走式排気浄化装置10の走行体12が待機位置まで走行するように駆動部17が制御される。その状態でアンモニアエンジン4が始動すると、アンモニアエンジン4からの排気ガスが排気管5を通って排出される。このとき、吸引・除去器13の吸引口20aは、排気管5の排気口5aと対向している。このため、吸引・除去器13が起動されると、吸引・除去器13によって排気ガスが吸引され、排気ガス中に含まれる未燃アンモニアが除去される。これにより、アンモニアエンジン4の冷間始動時に、排気ガス中に含まれる未燃アンモニアが大気中に放出されることが防止される。
【0051】
また、アンモニアエンジン4の冷間始動時に未燃アンモニアが垂れ流されることを防止するために、ガソリン、軽油、灯油またはガス等の補助燃料を用いてアンモニアエンジン4を燃焼させて触媒6を暖機することが不要となる。従って、アンモニアエンジン4の排気系の構成が煩雑化して高価になることを防止できる。
【0052】
さらに、自走式排気浄化装置10は、走行体12を備えているため、作業エリア2内の任意の場所に走行可能である。従って、対象となるフォークリフト3が作業エリア2内の任意の位置に止まっていても、当該フォークリフト3のアンモニアエンジン4からの排気ガスを浄化することができる。その結果、複数台のフォークリフト3に対して自走式排気浄化装置10の有効利用が可能となる。
【0053】
また、本実施形態では、フォークリフト3からの通知信号に応じて、自走式排気浄化装置10が待機位置まで自動的に走行するようになる。従って、オペレータが手動操作により走行体12の走行を指示する手間を省くことができる。
【0054】
また、本実施形態では、アンモニアエンジン4を停止させることを通知するエンジン停止信号が受信されたときに、走行体12が待機位置まで走行する。従って、アンモニアエンジン4の始動時には、自走式排気浄化装置10が既に待機位置で待機していることになる。このため、フォークリフト3の運転者が自走式排気浄化装置10の到着を待つことなく、直ちにアンモニアエンジン4を始動させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、アンモニアエンジン4を始動させることを通知するエンジン始動信号が受信されると、吸引・除去器13が自動的に起動されるようになる。従って、オペレータが手動操作により吸引・除去器13を起動する手間を省くことができる。
【0056】
また、本実施形態では、吸引・除去器13が起動してから所定時間が経過した後に、吸引・除去器13の吸引・除去動作を停止させるので、自走式排気浄化装置10の省電力化を図ることができる。
【0057】
次に、本発明の他の実施形態に係る自走式排気浄化装置を具備した排気浄化システムについて説明する。
図6は、本発明の他の実施形態に係る自走式排気浄化装置を具備した排気浄化システムとして、エンジンECU25により実行される制御処理手順の変形例を示すフローチャートである。本処理は、アンモニアエンジン4の停止中に実行される。
【0058】
図6において、エンジンECU25は、まずイグニッションスイッチ26の操作信号に基づいて、イグニッションスイッチ26がON操作されたかどうかを判断する(手順S121)。エンジンECU25は、イグニッションスイッチ26がON操作されたと判断したときは、エンジン始動信号及び自己位置データを通信部24により送信する(手順S122)。
【0059】
続いて、エンジンECU25は、通信部24により自走式排気浄化装置10からのスタンバイ信号を受信したかどうかを判断する(手順S123)。エンジンECU25は、スタンバイ信号を受信したと判断したときは、アンモニアエンジン4を始動させるように制御する(手順S124)。
【0060】
図7は、本発明の他の実施形態に係る自走式排気浄化装置を具備した排気浄化システムとして、自走式排気浄化装置10のコントローラ16により実行される制御処理手順の変形例を示すフローチャートである。本処理は、
図5に示される制御処理と同様に、自走式排気浄化装置10の停止中に実行される。
【0061】
図7において、コントローラ16は、まずフォークリフト3からのエンジン始動信号及び自己位置データを通信部15により受信したかどうかを判断する(手順S130)。コントローラ16は、エンジン始動信号及び自己位置データを受信したと判断したときは、自己位置データから対象のフォークリフト3の位置を検知する(手順S131)。そして、コントローラ16は、フォークリフト3の位置に基づいて、自走式排気浄化装置10の走行体12が対象のフォークリフト3に向けて走行するように駆動部17を制御する(手順S132)。
【0062】
そして、コントローラ16は、位置センサ14の検出信号に基づいて、自走式排気浄化装置10の走行体12が対象とするフォークリフト3の後方の待機位置に達したかどうかを判断する(手順S133)。コントローラ16は、走行体12が待機位置に達したと判断したときは、スタンバイ信号を通信部15により送信する(手順S134)。
【0063】
続いて、コントローラ16は、吸引・除去器13を起動するように制御する(手順S135)。そして、コントローラ16は、吸引・除去器13を起動するように制御してから所定時間が経過したかどうかを判断する(手順S136)。コントローラ16は、所定時間が経過したと判断したときは、吸引・除去器13の吸引・除去動作を停止させるように制御する(手順S137)。
【0064】
ここで、位置検知部28は、手順S130,S131を実行する。駆動制御部22は、手順S132~S134を実行する。浄化制御部23は、手順S135~S137を実行する。
【0065】
このような排気浄化システム1において、荷役作業を開始するために、フォークリフト3の運転者がイグニッションスイッチ26をON操作すると、フォークリフト3から自走式排気浄化装置10にエンジン始動信号及び自己位置データが送信される。
【0066】
自走式排気浄化装置10がエンジン始動信号及び自己位置データを受信すると、フォークリフト3の位置が検知される。そして、自走式排気浄化装置10は、処理対象となるフォークリフト3の後方の待機位置まで自動的に走行し、その待機位置で待機した状態となる(
図2参照)。そして、自走式排気浄化装置10から対象のフォークリフト3にスタンバイ信号が送信される。そして、自走式排気浄化装置10の吸引・除去器13が起動する。
【0067】
対象のフォークリフト3が自走式排気浄化装置10からのスタンバイ信号を受信すると、アンモニアエンジン4が始動する。すると、
図2に示されるように、アンモニアエンジン4から排出された排気ガスが吸引部18により吸引される。そして、吸引された排気ガス中に含まれる未燃アンモニアが除去部19により除去される。そして、未燃アンモニアが除去された状態の無害化された排気ガスが排出管21より排出される。
【0068】
本変形例では、アンモニアエンジン4を始動させることを通知するエンジン始動信号が受信されると、フォークリフト3の位置が検知され、自走式排気浄化装置10の走行体12が待機位置まで走行する。このため、アンモニアエンジン4の停止から次のアンモニアエンジン4の始動までの間に、自走式排気浄化装置10を他のフォークリフト3に使用することが可能となる。従って、1台の自走式排気浄化装置10を複数台のフォークリフト3に対して有効利用することができる。
【0069】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば、上記実施形態では、フォークリフト3と自走式排気浄化装置10との間で通信を行い、フォークリフト3からの通知信号に応じて、自走式排気浄化装置10をフォークリフト3の後方の待機位置まで走行させているが、特にその形態には限られない。
【0070】
例えば、フォークリフト3の作業及び運行を全体的に管理する上位管理装置と自走式排気浄化装置10との間で通信を行い、上位管理装置からの通知信号に応じて、自走式排気浄化装置10をフォークリフト3の後方の待機位置まで走行させてもよい。また、自走式排気浄化装置10に設けられた手動スイッチまたはオペレータが所持する携帯端末によって自走式排気浄化装置10の走行が指示されたときに、自走式排気浄化装置10をフォークリフト3の後方の待機位置まで走行させてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、吸引・除去器13が起動してから所定時間が経過した後に、吸引・除去器13の吸引・除去動作を停止させているが、吸引・除去器13の吸引・除去動作を停止させるタイミングとしては、特にそれには限られず、例えばフォークリフト3が停止箇所から移動した後であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、自走式排気浄化装置10がフォークリフト3からのエンジン始動信号を受信したときに、吸引・除去器13が自動的に起動されているが、特にその形態には限られず、例えば吸引・除去器13を起動するための手動スイッチを自走式排気浄化装置10に設け、オペレータが手動スイッチを操作することで吸引・除去器13を起動してもよい。
【0073】
また、上記実施形態の排気浄化システム1は、アンモニアエンジン4を搭載したフォークリフト3に適用されているが、本発明は、ガソリンエンジンを搭載したフォークリフトにも適用可能である。また、本発明は、特にフォークリフトには限られず、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関を搭載した車両であれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…排気浄化システム、3…フォークリフト(車両)、4…アンモニアエンジン(内燃機関)、5…排気管、5a…排気口、10…自走式排気浄化装置、11…制御装置、12…走行体、13…吸引・除去器(吸引・除去部)、15…通信部、17…駆動部、20a…吸引口、22…駆動制御部、23…浄化制御部、28…位置検知部。