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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20220509BHJP
   H01Q 1/50 20060101ALI20220509BHJP
   H04B 17/18 20150101ALI20220509BHJP
【FI】
H04B1/04 Z
H01Q1/50
H04B17/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019061698
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020162059
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】前原 宏明
【審査官】安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-82633(JP,A)
【文献】特開2008-131241(JP,A)
【文献】特開2007-224595(JP,A)
【文献】特開2009-278360(JP,A)
【文献】特開2011-205609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
H01Q 1/50
H04B 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された2つのスイッチ素子を備えるスイッチ列が2組構成され、1つの前記スイッチ列である第1スイッチ列(L1)と他の前記スイッチ列である第2スイッチ列(L2)が互いに並列になっているHブリッジ回路(16)を複数備え、
1つの前記Hブリッジ回路が備える前記第1スイッチ列の2つの前記スイッチ素子間と、そのHブリッジ回路の前記第2スイッチ列の2つの前記スイッチ素子間とに接続されたアンテナエレメントである単独接続型アンテナエレメントと、
前記第1スイッチ列が備える2つの前記スイッチ素子間と、他の前記Hブリッジ回路の前記第2スイッチ列が備える2つの前記スイッチ素子間とに接続されたアンテナエレメントである複合接続型アンテナエレメントと、を備えるアンテナ装置であって、
ハイ信号とロー信号が入力され、前記スイッチ素子をオンオフ制御するスイッチ制御回路(15)を備え、
前記スイッチ制御回路は、前記単独接続型アンテナエレメントが接続されている1つの前記Hブリッジ回路に対して、前記ハイ信号が入力されたときは、前記第1スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と前記第2スイッチ列のローサイドのスイッチ素子とをオンさせ、他の前記スイッチ素子はオフにし、前記ロー信号が入力されたときは、前記第2スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と前記第1スイッチ列のローサイドのスイッチ素子とをオンにし、他の前記スイッチ素子はオフにすることで、前記単独接続型アンテナエレメントに対して双方向に交互に電流を流す単独制御を実行し、
さらに、前記スイッチ制御回路は、
前記単独接続型アンテナエレメントが接続されている1つの前記Hブリッジ回路に対して、前記スイッチ制御回路に前記ハイ信号が入力されたときは、前記第1スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と前記第2スイッチ列のローサイドのスイッチ素子とをオンさせ、前記スイッチ制御回路に前記ロー信号が入力されたときは、前記第2スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と前記第1スイッチ列のローサイドのスイッチ素子とをオンすることで、前記単独接続型アンテナエレメントに対して双方向に交互に電流を流し、
前記複合接続型アンテナエレメントが接続されている前記第1スイッチ列および前記第2スイッチ列に対して、前記スイッチ制御回路に前記ハイ信号が入力されたときは、前記第1スイッチ列のハイサイドの前記スイッチ素子と前記第2スイッチ列のローサイドの前記スイッチ素子をオンさせ、前記スイッチ制御回路に前記ロー信号が入力されたときは、前記第1スイッチ列のローサイドの前記スイッチ素子と前記第2スイッチ列のハイサイドの前記スイッチ素子をオンする同時制御を実行する、アンテナ装置
【請求項2】
前記単独接続型アンテナエレメントが接続されている前記Hブリッジ回路を2つ以上備え、
1つの前記単独接続型アンテナエレメントが接続されている前記Hブリッジ回路を第1Hブリッジ回路とし、
他の前記単独接続型アンテナエレメントが接続されている前記Hブリッジ回路を第2Hブリッジ回路としたとき、
前記スイッチ制御回路は、
前記ハイ信号が入力されたときは、前記第1Hブリッジ回路に対して、前記第1スイッチ列のハイサイドの前記スイッチ素子と前記第2スイッチ列のローサイドの前記スイッチ素子をオンにし、前記第2Hブリッジ回路に対して、前記第1スイッチ列のローサイドの前記スイッチ素子と前記第2スイッチ列のハイサイドの前記スイッチ素子をオンにし、残りの前記スイッチ素子をオフにし、
前記ロー信号が入力されたときは、前記第1Hブリッジ回路に対して、前記第1スイッチ列のローサイドの前記スイッチ素子と前記第2スイッチ列のハイサイドの前記スイッチ素子をオンにし、前記第2Hブリッジ回路に対して、前記第1スイッチ列のハイサイドの前記スイッチ素子と前記第2スイッチ列のローサイドの前記スイッチ素子をオンにし、残りの前記スイッチ素子をオフにする、
逆相同時制御を実行する、請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
直列に接続された2つのスイッチ素子を備えるスイッチ列が2組構成され、1つの前記スイッチ列である第1スイッチ列(L1)と他の前記スイッチ列である第2スイッチ列(L2)が互いに並列になっているHブリッジ回路(16)を複数備え、
1つの前記Hブリッジ回路が備える前記第1スイッチ列の2つの前記スイッチ素子間と、そのHブリッジ回路の前記第2スイッチ列の2つの前記スイッチ素子間とに接続されたアンテナエレメントである単独接続型アンテナエレメントと、
前記第1スイッチ列が備える2つの前記スイッチ素子間と、他の前記Hブリッジ回路の前記第2スイッチ列が備える2つの前記スイッチ素子間とに接続されたアンテナエレメントである複合接続型アンテナエレメントと、を備えるアンテナ装置であって、
ハイ信号とロー信号が入力され、前記スイッチ素子をオンオフ制御するスイッチ制御回路(15)を備え、
前記スイッチ制御回路は、前記単独接続型アンテナエレメントが接続されている1つの前記Hブリッジ回路に対して、前記ハイ信号が入力されたときは、前記第1スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と前記第2スイッチ列のローサイドのスイッチ素子とをオンさせ、他の前記スイッチ素子はオフにし、前記ロー信号が入力されたときは、前記第2スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と前記第1スイッチ列のローサイドのスイッチ素子とをオンにし、他の前記スイッチ素子はオフにすることで、前記単独接続型アンテナエレメントに対して双方向に交互に電流を流す単独制御を実行し、
前記単独接続型アンテナエレメントが接続されている前記Hブリッジ回路を2つ以上備え、
1つの前記単独接続型アンテナエレメントが接続されている前記Hブリッジ回路を第1Hブリッジ回路とし、
他の前記単独接続型アンテナエレメントが接続されている前記Hブリッジ回路を第2Hブリッジ回路としたとき、
前記スイッチ制御回路は、
前記ハイ信号が入力されたときは、前記第1Hブリッジ回路に対して、前記第1スイッチ列のハイサイドの前記スイッチ素子と前記第2スイッチ列のローサイドの前記スイッチ素子をオンにし、前記第2Hブリッジ回路に対して、前記第1スイッチ列のローサイドの前記スイッチ素子と前記第2スイッチ列のハイサイドの前記スイッチ素子をオンにし、残りの前記スイッチ素子をオフにし、
前記ロー信号が入力されたときは、前記第1Hブリッジ回路に対して、前記第1スイッチ列のローサイドの前記スイッチ素子と前記第2スイッチ列のハイサイドの前記スイッチ素子をオンにし、前記第2Hブリッジ回路に対して、前記第1スイッチ列のハイサイドの前記スイッチ素子と前記第2スイッチ列のローサイドの前記スイッチ素子をオンにし、残りの前記スイッチ素子をオフにする、
逆相同時制御を実行する、アンテナ装置。
【請求項4】
前記スイッチ制御回路は、前記複合接続型アンテナエレメントが接続されている前記第1スイッチ列および前記第2スイッチ列に対して、前記ハイ信号が入力されたときは、前記第1スイッチ列のハイサイドの前記スイッチ素子と前記第2スイッチ列のローサイドの前記スイッチ素子をオンさせ、他の前記スイッチ素子はオフにし、前記ロー信号が入力されたときは、前記第1スイッチ列のローサイドの前記スイッチ素子と前記第2スイッチ列のハイサイドの前記スイッチ素子をオンさせ、他の前記スイッチ素子はオフにすることで、前記複合接続型アンテナエレメントに対して双方向に交互に電流を流す複合制御を実行する、請求項1~3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記Hブリッジ回路は、前記単独接続型アンテナエレメントが接続されている線路から、前記複合接続型アンテナエレメントが接続されている線路が分岐する分岐点(32)を備え、
前記分岐点よりも前記単独接続型アンテナエレメント側の線路および前記分岐点よりも前記複合接続型アンテナエレメント側の線路の少なくとも一方に、出力調整抵抗(31)が配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記Hブリッジ回路は、前記単独接続型アンテナエレメントが接続されている線路から、前記複合接続型アンテナエレメントが接続されている線路が分岐する分岐点(32)を備え、
前記分岐点よりも前記単独接続型アンテナエレメントおよび前記複合接続型アンテナエレメントから遠い側の線路に断線検出回路(40)が接続されている、請求項1~のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アンテナ装置に関し、特に、複数のアンテナエレメントを備えるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナを駆動する駆動回路としてHブリッジ回路を用いることがある。特許文献1には、Hブリッジ回路でLFアンテナを駆動させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5726353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された装置は、1つのアンテナエレメントに対して1つのHブリッジ回路を備えている。したがって、アンテナエレメントの数が増えるとHブリッジ回路が多くなってしまう。
【0005】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、アンテナエレメントの数よりもHブリッジ回路の数が少ないアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、開示した技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するための1つの開示は、
直列に接続された2つのスイッチ素子を備えるスイッチ列が2組構成され、1つのスイッチ列である第1スイッチ列(L1)と他のスイッチ列である第2スイッチ列(L2)が互いに並列になっているHブリッジ回路(16)を複数備え、
1つのHブリッジ回路が備える第1スイッチ列の2つのスイッチ素子間と、そのHブリッジ回路の第2スイッチ列の2つのスイッチ素子間とに接続されたアンテナエレメントである単独接続型アンテナエレメントと、
第1スイッチ列が備える2つのスイッチ素子間と、他のHブリッジ回路の第2スイッチ列が備える2つのスイッチ素子間とに接続されたアンテナエレメントである複合接続型アンテナエレメントと、を備えるアンテナ装置であって、
ハイ信号とロー信号が入力され、スイッチ素子をオンオフ制御するスイッチ制御回路(15)を備え、
スイッチ制御回路は、単独接続型アンテナエレメントが接続されている1つのHブリッジ回路に対して、ハイ信号が入力されたときは、第1スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と第2スイッチ列のローサイドのスイッチ素子とをオンさせ、他のスイッチ素子はオフにし、ロー信号が入力されたときは、第2スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と第1スイッチ列のローサイドのスイッチ素子とをオンにし、他のスイッチ素子はオフにすることで、単独接続型アンテナエレメントに対して双方向に交互に電流を流す単独制御を実行し、
さらに、スイッチ制御回路は、
単独接続型アンテナエレメントが接続されている1つのHブリッジ回路に対して、スイッチ制御回路にハイ信号が入力されたときは、第1スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と第2スイッチ列のローサイドのスイッチ素子とをオンさせ、スイッチ制御回路にロー信号が入力されたときは、第2スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と第1スイッチ列のローサイドのスイッチ素子とをオンすることで、単独接続型アンテナエレメントに対して双方向に交互に電流を流し、
複合接続型アンテナエレメントが接続されている第1スイッチ列および第2スイッチ列に対して、スイッチ制御回路にハイ信号が入力されたときは、第1スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と第2スイッチ列のローサイドのスイッチ素子をオンさせ、スイッチ制御回路にロー信号が入力されたときは、第1スイッチ列のローサイドのスイッチ素子と第2スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子をオンする同時制御を実行する、アンテナ装置である。
上記目的を達成するための他の1つの開示は、
直列に接続された2つのスイッチ素子を備えるスイッチ列が2組構成され、1つのスイッチ列である第1スイッチ列(L1)と他のスイッチ列である第2スイッチ列(L2)が互いに並列になっているHブリッジ回路(16)を複数備え、
1つのHブリッジ回路が備える第1スイッチ列の2つのスイッチ素子間と、そのHブリッジ回路の第2スイッチ列の2つのスイッチ素子間とに接続されたアンテナエレメントである単独接続型アンテナエレメントと、
第1スイッチ列が備える2つのスイッチ素子間と、他のHブリッジ回路の第2スイッチ列が備える2つのスイッチ素子間とに接続されたアンテナエレメントである複合接続型アンテナエレメントと、を備えるアンテナ装置であって、
ハイ信号とロー信号が入力され、スイッチ素子をオンオフ制御するスイッチ制御回路(15)を備え、
スイッチ制御回路は、単独接続型アンテナエレメントが接続されている1つのHブリッジ回路に対して、ハイ信号が入力されたときは、第1スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と第2スイッチ列のローサイドのスイッチ素子とをオンさせ、他のスイッチ素子はオフにし、ロー信号が入力されたときは、第2スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と第1スイッチ列のローサイドのスイッチ素子とをオンにし、他のスイッチ素子はオフにすることで、単独接続型アンテナエレメントに対して双方向に交互に電流を流す単独制御を実行し、
単独接続型アンテナエレメントが接続されているHブリッジ回路を2つ以上備え、
1つの単独接続型アンテナエレメントが接続されているHブリッジ回路を第1Hブリッジ回路とし、
他の単独接続型アンテナエレメントが接続されているHブリッジ回路を第2Hブリッジ回路としたとき、
スイッチ制御回路は、
ハイ信号が入力されたときは、第1Hブリッジ回路に対して、第1スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と第2スイッチ列のローサイドのスイッチ素子をオンにし、第2Hブリッジ回路に対して、第1スイッチ列のローサイドのスイッチ素子と第2スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子をオンにし、残りのスイッチ素子をオフにし、
ロー信号が入力されたときは、第1Hブリッジ回路に対して、第1スイッチ列のローサイドのスイッチ素子と第2スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子をオンにし、第2Hブリッジ回路に対して、第1スイッチ列のハイサイドのスイッチ素子と第2スイッチ列のローサイドのスイッチ素子をオンにし、残りのスイッチ素子をオフにする、
逆相同時制御を実行する、アンテナ装置である。
【0008】
このアンテナ装置は、単独接続型アンテナエレメントが接続されているHブリッジ回路に、複合接続型アンテナエレメントも接続されている。したがって、アンテナエレメントの数よりもHブリッジ回路の数を少なくすることができる。
【0009】
単独接続型アンテナエレメントは、1つのHブリッジ回路の第1スイッチ列と第2スイッチ列に接続されているので、その1つのHブリッジ回路を用いて単独接続型アンテナエレメントに双方向に電流を流せば、単独接続型アンテナエレメントに交流電流が流れる。単独接続型アンテナエレメントに交流電流が流れることで、単独接続型アンテナエレメントをアンテナとして機能させることができる。
【0010】
一方、複合接続型アンテナエレメントは、1つのHブリッジ回路(第1のHブリッジ回路とする)の第1スイッチ列と、他のHブリッジ回路(第2のHブリッジ回路とする)の第2スイッチ列に接続されている。この接続構成により、複合接続型アンテナエレメントは、第1のHブリッジ回路が備える第1スイッチ列と第2のHブリッジ回路が備える第2スイッチ列とにより構成される第3のHブリッジ回路に接続されていることになる。この第3のHブリッジ回路を用いて複合接続型アンテナエレメントに双方向に電流を流せば、複合接続型アンテナエレメントをアンテナとして機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】アンテナ装置1の構成を示す図である。
図2】ECU10の構成を示す図である。
図3】Hブリッジ回路16の構成を説明する図である。
図4】アンテナエレメント30aのみから電波を送信する場合のオンオフ制御を示す図である。
図5】アンテナエレメント30bのみから電波を送信する場合のオンオフ制御を示す図である。
図6】アンテナエレメント30a、30bから電波を送信する場合のオンオフ制御を示す図である。
図7】アンテナエレメント30a、30cから電波を送信する場合のオンオフ制御を示す図である。
図8】アンテナエレメント30a、30cから電波を送信する場合のオンオフ制御を示す図である。
図9】アンテナ装置100の構成を示す図である。
図10】CPU11が実行する断線検出処理を示すフローチャートである。
図11】CPU11が実行する断線検出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1実施形態のアンテナ装置1の構成を示す図である。アンテナ装置1は、車両2に搭載されている。アンテナ装置1は、ECU(Electronic Control Unit)10と、6つのアンテナエレメント30a、30b、30c、30d、30e、30fを備える。これら6つのアンテナエレメント30a、30b、30c、30d、30e、30fを区別しないときはアンテナエレメント30と記載する。
【0013】
ECU10は、車両2が停車状態であるなど、所定の動作開始条件が成立している場合に、アンテナエレメント30の通信範囲に正規の電子キー3が存在しているかどうかを判断する。この判断のために、ECU10は、アンテナエレメント30から、正規の電子キー3が存在していることを検出するための信号を送信させる。
【0014】
アンテナエレメント30の電気長は、本実施形態では、LF帯の電波を送受信する電気長である。アンテナエレメント30は、単一の素子である必要はなく、複数のエレメントを備えた構成でもよい。アンテナエレメント30において電波を放射する部分の形態は、コイル型、線状型など種々の形態とすることができる。また、アンテナエレメント30は、電波を放射する部分の他に、コンデンサ、インピーダンス調整抵抗などを備えることもできる。
【0015】
アンテナエレメント30aの配置位置は、車両2の右ドアのドアハンドルである。アンテナエレメント30bの配置位置は、車両2の後端面である。アンテナエレメント30cの配置位置は、車両2の左ドアのドアハンドルである。これら3つのアンテナエレメント30a、30b、30cが配置されている付近の車両2のボディは金属製である。したがって、これら3つのアンテナエレメント30a、30b、30cの通信範囲は、車両2の外側に形成される。図1において、アンテナエレメント30a、30b、30cを中心とする略半径形状の破線が、それらアンテナエレメント30a、30b、30cの通信範囲を概念的に示している。
【0016】
アンテナエレメント30dの配置位置は車室前端である。アンテナエレメント30eの配置位置は車室中央付近である。アンテナエレメント30fは車室後端付近である。これらのアンテナエレメント30d、30e、30fの通信範囲は車室内である。
【0017】
アンテナ装置1は、車室内または車両2の周辺に存在する電子キー3を検出する車載システムの一部を構成している。車載システムは、アンテナ装置1が備えるアンテナエレメント30から、所定の順番で1つずつ、あるいは複数のアンテナエレメント30から同時に、電子キー3に応答を求めるリクエスト信号を送信させる。電子キー3はリクエスト信号を受信すると、レスポンス信号を返信する。レスポンス信号はRF帯の電波で送信される。車載システムはレスポンス信号を受信するためのアンテナを備える。
【0018】
なお、アンテナエレメント30の数および位置は、図1に示した数および位置に限られない。アンテナエレメント30の数および位置は、車室内または車両2の周辺に存在する電子キー3を検出できるようになっていればよい。
【0019】
図2にECU10の構成を示す。図2に示すように、ECU10は、CPU11、ROM12、RAM13、変調回路14、スイッチ制御回路15、および3つのHブリッジ回路16a、16b、16cを備えている。3つのHブリッジ回路16a、16b、16cを区別しないときは、Hブリッジ回路16と記載する。
【0020】
ROM12には、CPU11が実行するプログラムが格納されている。CPU11は、RAM13の一時記憶機能を利用しつつ、ROMに記憶されたプログラムを実行することで、種々の機能を実現する。CPU11が実現する機能の1つは、変調回路14へベース信号を出力することである。ベース信号は、搬送波により搬送される信号である。前述したリクエスト信号は、ベース信号の1つである。
【0021】
変調回路14は、搬送波の周波数で振動する搬送波信号を生成し、生成した搬送波信号によりベース信号を変調する。変調方式は、たとえばASK方式である。搬送波信号の信号レベルにハイとローがあるため、変調回路14により変調された信号は、ハイ信号とロー信号が繰り返される信号になる。ハイ信号とロー信号が繰り返されるこの信号が、スイッチ制御回路15に入力される。スイッチ制御回路15は、Hブリッジ回路16が備えるトランジスタTrを、1つずつ別々にオンオフ制御することができる。スイッチ制御回路15は、たとえばマイクロコントローラにより実現できる。
【0022】
Hブリッジ回路16の構成を図3を用いて説明する。図3には、Hブリッジ回路16aを示しているが、他のブリッジ回路16b、16cも同じ構成である。図3に示すように、Hブリッジ回路16aは、スイッチ素子である4つのトランジスタTr1、Tr2、Tr3、Tr4を備えている。これら4つのトランジスタTr1、Tr2、Tr3、Tr4は、いずれのMOSFETである。また、図3に示すHブリッジ回路16では、トランジスタTr1、Tr2、Tr3、Tr4は、いずれもN型MOSFETである。ただし、ハイサイドのトランジスタTr1、Tr3にP型MOSFETを用いてもよい。
【0023】
Hブリッジ回路16aは、第1スイッチ列L1、第2スイッチ列L2の2組のスイッチ列を備えている。第1スイッチ列L1は、互いに直列接続されているトランジスタTr1、Tr2を備えており、第2スイッチ列L2は互いに直列接続されているトランジスタTr3、Tr4を備えている。これら第1スイッチ列L1と第2スイッチ列L2は互いに並列である。
【0024】
トランジスタTr1、トランジスタTr3は、電源に接続されているハイサイドのトランジスタである。一方、トランジスタTr2、Tr4はグランドに接続されているローサイドのトランジスタである。
【0025】
アンテナエレメント30aの一方の端は、トランジスタTr1のソース端子とトランジスタTr2のドレイン端子の間に接続されている。なお、アンテナエレメント30fの一方の端もトランジスタTr1のソース端子とトランジスタTr2のドレイン端子の間に接続されているが、図3では省略している。
【0026】
アンテナエレメント30aの他方の端は、出力調整抵抗31aを介して、トランジスタTr3のソース端子とトランジスタTr4のドレイン端子の間に接続されている。出力調整抵抗31aは、アンテナエレメント30aから送信される電波の出力を、アンテナエレメント30別に調整するための抵抗である。
【0027】
スイッチ制御回路15は、ハイ信号が入力され、かつ、Hブリッジ回路16aが駆動対象となっている場合、Hブリッジ回路16aが備えるトランジスタTr1、Tr4をオンにし、トランジスタTr2、Tr3をオフにする。これにより、アンテナエレメント30aには、図3において上から下に向かう方向に電流が流れる。一方、ロー信号が入力され、かつ、Hブリッジ回路16aが駆動対象になっている場合、Hブリッジ回路16aが備えるトランジスタTr2、Tr3をオンにし、トランジスタTr1、Tr4をオフにする。このときは、アンテナエレメント30aには、図3において下から上に向かう方向に電流が流れる。したがって、スイッチ制御回路15に入力されるハイ信号とロー信号に対応して、アンテナエレメント30aに交流が流れるので、アンテナエレメント30aからLF帯の電波が送信される。
【0028】
説明を図2に戻す。アンテナエレメント30aは、一方の端がHブリッジ回路16aの第1スイッチ列L1の2つのトランジスタTr1、Tr2の間に接続され、他方の端が第2スイッチ列L2の2つのトランジスタTr3、Tr4の間に接続されている。
【0029】
このアンテナエレメント30aは、両端が、同じHブリッジ回路16aに接続されている。両端が同じHブリッジ回路16に接続されているアンテナエレメント30を単独接続型アンテナエレメントとする。残りの5つのアンテナエレメント30のうち、アンテナエレメント30c、30eも単独接続型アンテナエレメントである。アンテナエレメント30cは、一方の端がHブリッジ回路16bのトランジスタTr1、Tr2の間に接続され、他方の端がHブリッジ回路16bの2つのトランジスタTr3、Tr4の間に接続されている。アンテナエレメント30eは、一方の端がHブリッジ回路16cのトランジスタTr1、Tr2の間に接続され、他方の端がHブリッジ回路16cの2つのトランジスタTr3、Tr4の間に接続されている。
【0030】
残りの3つのアンテナエレメント30b、30d、30fは、一方の端が接続されているHブリッジ回路16と他方の端が接続されているHブリッジ回路16が相違する。このようなアンテナエレメント30を複合接続型アンテナエレメントとする。
【0031】
アンテナエレメント30bは、一方の端がHブリッジ回路16bの第1スイッチ列L1の2つのトランジスタTr1、Tr2の間に接続されている。また、アンテナエレメント30bの一方の端は、Hブリッジ回路16bにアンテナエレメント30cが接続されている線路から分岐しているとも言える。この分岐している点を、以下、分岐点32bcとする。アンテナエレメント30bの他方の端は、Hブリッジ回路16cの第2スイッチ列L2の2つのトランジスタTr3、Tr4の間に接続されている。アンテナエレメント30bの他方の端は、Hブリッジ回路16cにアンテナエレメント30eが接続されている線路から分岐しているとも言える。この分岐している点を、以下、分岐点32beとする。
【0032】
アンテナエレメント30dは、一方の端がHブリッジ回路16cの第1スイッチ列L1の2つのトランジスタTr1、Tr2の間に接続されている。また、アンテナエレメント30dの一方の端は、Hブリッジ回路16cにアンテナエレメント30eが接続されている線路から分岐しているとも言える。この分岐している点を、以下、分岐点32deとする。アンテナエレメント30dの他方の端はHブリッジ回路16aの第2スイッチ列L2の2つのトランジスタTr3、Tr4の間に接続されている。アンテナエレメント30dの他方の端は、Hブリッジ回路16aにアンテナエレメント30aが接続されている線路から分岐しているとも言える。この分岐している点を、以下、分岐点32adとする。
【0033】
アンテナエレメント30fは、一方の端がHブリッジ回路16aの第1スイッチ列L1の2つのトランジスタTr1、Tr2の間に接続されている。また、アンテナエレメント30fの一方の端は、Hブリッジ回路16aにアンテナエレメント30aが接続されている線路から分岐しているとも言える。この分岐している点を、以下、分岐点32afとする。アンテナエレメント30fの他方の端はHブリッジ回路16bの第2スイッチ列L2の2つのトランジスタTr3、Tr4の間に接続されている。アンテナエレメント30fの他方の端は、Hブリッジ回路16bにアンテナエレメント30cが接続されている線路から分岐しているとも言える。この分岐している点を、以下、分岐点32cfとする。以下、6つの分岐点32bc、32be、32de、32ad、32af、32cfを区別しないときは分岐点32と記載する。
【0034】
また、全部のアンテナエレメント30a、30b、30c、30d、30e、30fには、それぞれ、出力調整抵抗31a、31b、31c、31d、31fが直列接続されている。これら出力調整抵抗31a、31b、31c、31d、31fを区別しないときは、出力調整抵抗31と記載する。いずれの出力調整抵抗31も、分岐点32よりもアンテナエレメント30側の線路に配置されている。
【0035】
この図2に示すように、アンテナ装置1は、アンテナエレメント30の数よりも、アンテナエレメント30を駆動するHブリッジ回路16の数が少ない。具体的には、Hブリッジ回路16の数はアンテナエレメント30の数の半分である。しかし、このようにアンテナエレメント30の数よりもHブリッジ回路16の数が少なくても、アンテナ装置1は、全部のアンテナエレメント30から、個別に電波を送信することができる。
【0036】
[単独送信作動]
次に、全部のアンテナエレメント30から個別に電波を送信するために、スイッチ制御回路15が実行するトランジスタTrのオンオフ制御を説明する。
【0037】
まず、1つの単独接続型アンテナエレメントのみから電波を送信する場合にスイッチ制御回路15が実行するトランジスタTrのオンオフ制御を説明する。このときの制御を単独制御とする。図4には、単独接続型アンテナエレメントであるアンテナエレメント30aのみから電波を送信する場合にスイッチ制御回路15が実行する単独制御を示している。
【0038】
図4に示すように、アンテナエレメント30aのみから電波を送信する場合、Hブリッジ回路16b、16cが備えるトランジスタTrは全部オフ状態を継続する。一方、スイッチ制御回路15は、Hブリッジ回路16aについては、ハイ信号が入力されたときは、トランジスタTr1、Tr4をオンさせ、トランジスタTr2、Tr3はオフする。そして、ロー信号が入力されたときは、トランジスタTr2、Tr3をオンさせ、トランジスタTr1、Tr4はオフする。これにより、アンテナエレメント30aには、LF帯の周波数で変動する交流が流れるので、アンテナエレメント30aからLF帯の電波が送信される。また、その他のアンテナエレメント30からは電波が送信されない。なお、図4に示す太線は、アンテナエレメント30aに交流電流が流れる場合の電流経路を示している。図5以下の太線も、各図に記載されているオンオフ制御により電流が流れる経路を示している。
【0039】
以下の説明では、ハイ信号が入力されたときにオンさせるトランジスタTrをハイ側のトランジスタTrとし、ロー信号が入力されたときにオンさせるトランジスタTrをロー側のトランジスタTrとする。
【0040】
アンテナエレメント30cから電波を送信する場合には、次の2つの状態を交互に繰り返す。1つの状態は、そのアンテナエレメント30cが接続されているHブリッジ回路16bのハイ側のトランジスタTrをオンにしロー側のトランジスタTrをオフにする状態である。もう1つの状態は、ロー側のトランジスタTrをオンにしハイ側のトランジスタTrをオフにする状態である。
【0041】
アンテナエレメント30eから電波を送信する場合には、次の2つの状態を交互に繰り返す。1つの状態は、そのアンテナエレメント30eが接続されているHブリッジ回路16cのハイ側のトランジスタTrをオンにしロー側のトランジスタTrをオフにする状態である。もう1つの状態は、ロー側のトランジスタTrをオンにしハイ側のトランジスタTrをオフにする状態である。
【0042】
次に、1つの複合接続型アンテナエレメントのみから電波を送信する場合にスイッチ制御回路15が実行するトランジスタTrのオンオフ制御を説明する。このときの制御を複合制御とする。図5には、複合接続型アンテナエレメントであるアンテナエレメント30bのみから電波を送信する場合にスイッチ制御回路15が実行する複合制御を示している。
【0043】
図5に示すように、アンテナエレメント30bのみから電波を送信する場合、Hブリッジ回路16aが備えるトランジスタTrは全部オフ状態を継続する。また、Hブリッジ回路16bの第2スイッチ列L2が備える2つのトランジスタTr、および、Hブリッジ回路16cの第1スイッチ列L1が備える2つのトランジスタTrもオフ状態を継続する。
【0044】
一方、スイッチ制御回路15は、Hブリッジ回路16bの第1スイッチ列L1およびHブリッジ回路16cの第2スイッチ列L2についてはオンオフ状態を切り替える。具体的には、ハイ信号が入力されたときは、Hブリッジ回路16bのトランジスタTr1とHブリッジ回路16cのトランジスタTr4をオンにし、Hブリッジ回路16bのトランジスタTr2とHブリッジ回路16cのトランジスタTr3をオフにする。一方、ロー信号が入力されたときは、スイッチ制御回路15は、Hブリッジ回路16bのトランジスタTr2とHブリッジ回路16cのトランジスタTr3をオンにする。また、それとともに、Hブリッジ回路16bのトランジスタTr1とHブリッジ回路16cのトランジスタTr4をオフにする。これにより、アンテナエレメント30bには、LF帯の周波数で変動する交流が流れるので、アンテナエレメント30bからLF帯の電波が送信される。また、その他のアンテナエレメント30からは電波が送信されない。
【0045】
アンテナエレメント30dから電波を送信する場合には、そのアンテナエレメント30dの一方の端が接続されているHブリッジ回路16cの第1スイッチ列L1および他方の端が接続されているHブリッジ回路16aの第2スイッチ列L2をオンオフ動作する。オンオフ動作のさせ方は、アンテナエレメント30bから電波を送信する場合と同じである。アンテナエレメント30dの両端がそれぞれ接続されているHブリッジ回路16は別々のHブリッジ回路16である。しかし、アンテナエレメント30dの両端は、第1スイッチ列L1および第2スイッチ列L2に接続されている。したがって、アンテナエレメント30dの両端がそれぞれ接続されている第1スイッチ列L1、第2スイッチ列L2を1つのHブリッジ回路と見ることができる。このHブリッジ回路が備えるトランジスタTrをオンオフ制御することで、アンテナエレメント30dから電波を送信することができる。
【0046】
アンテナエレメント30fから電波を送信する場合、そのアンテナエレメント30fの一方の端が接続されているHブリッジ回路16aの第1スイッチ列L1と他方の端が接続されているHブリッジ回路16bの第2スイッチ列L2をオンオフ動作すればよい。
【0047】
以上の説明で、各アンテナエレメント30a、30b、30c、30d、30e、30fのそれぞれを単独で動作させて電波を送信できることを説明した。
【0048】
[同時送信作動]
加えて、アンテナ装置1は、複数のアンテナエレメント30から同時に電波を送信させることもできる。図6には、1つの単独接続型アンテナエレメントと、1つの複合接続型アンテナエレメントから同時に電波を送信させる場合のトランジスタTrのオンオフ作動を示している。
【0049】
図6に示す例は、単独接続型アンテナエレメントがアンテナエレメント30aであり、複合接続型アンテナエレメントがアンテナエレメント30bである。これら2つのアンテナエレメント30a、30bを動作させるトランジスタTrは重複していない。また、これら2つのアンテナエレメント30a、30bを動作させるためにトランジスタTrをオンさせても他のアンテナエレメント30に電流は流れない。したがって、これら2つのアンテナエレメント30a、30bから同時に電波を送信させる場合、2つのアンテナエレメント30a、30bに流れる電流の位相は問題にならない。
【0050】
アンテナエレメント30aとアンテナエレメント30bから同時に電波を送信させる場合、スイッチ制御回路15は、アンテナエレメント30aから電波を送信させるために、第1同時制御を実行する。この第1同時制御とともに、スイッチ制御回路15は、アンテナエレメント30bから電波を送信させるために、第2同時制御を実行する。
【0051】
第1同時制御は、図4を用いて説明した単独制御とほぼ同じである。第1同時制御は、同時に、第2同時制御を実行する。したがって、第1同時制御では第2同時制御でオンオフするトランジスタTrについてはオンオフ制御しない。この点のみが、第1同時制御と単独制御との違いである。
【0052】
第2同時制御は、図5を用いて説明した複合制御とほぼ同じである。第2同時制御では第1同時制御でオンオフするトランジスタTrについてはオンオフ制御しない。この点のみが、第2同時制御と複合制御との違いである。
【0053】
図6に示している例では、アンテナエレメント30aに接続されているトランジスタTr1、Tr4をオンにするとき、アンテナエレメント30bに接続されているトランジスタTr1、Tr4をオンにしている。また、アンテナエレメント30aに接続されているトランジスタTr2、Tr3をオンにするとき、アンテナエレメント30bに接続されているトランジスタTr2、Tr3をオンにしている。このようにする場合、アンテナエレメント30a、30bから送信される電波の位相は同相になる。
【0054】
図7図8には、2つの単独接続型アンテナエレメントから同時に電波を送信させる場合の作動を示している。スイッチ制御回路15は、2つの単独接続型アンテナエレメントから同時に電波を送信させる場合、逆相同時制御を実行する。図7図8は、ともに単独接続型アンテナエレメントであるアンテナエレメント30a、30cから同時に電波を送信させる場合の逆相同時制御を説明している図である。
【0055】
これら2つのアンテナエレメント30a、30cを動作させるトランジスタTrを含んだHブリッジ回路16は、Hブリッジ回路16a、16bである。Hブリッジ回路16aは第1Hブリッジ回路に相当し、Hブリッジ回路16bは第2Hブリッジ回路に相当する。
【0056】
アンテナエレメント30a、30cだけでなく、アンテナエレメント30bも、これら2つのHブリッジ回路16a、16bが備えるトランジスタTrを動作させて電波を送信させるアンテナエレメント30である。したがって、2つのアンテナエレメント30a、30cのみから電波を送信させたい場合には、アンテナエレメント30aに流れる電流と、アンテナエレメント30cに流れる電流を逆相にする必要がある。図7に示す状態と図8に示す状態を繰り返すことで、アンテナエレメント30aに流れる電流と、アンテナエレメント30cに流れる電流を逆相にすることができる。
【0057】
スイッチ制御回路15はハイ信号が入力された場合に図7に示す状態にする。図7に示す状態では、アンテナエレメント30aが接続されているHブリッジ回路16aの第1スイッチ列L1のハイサイドのトランジスタTr1およびそのHブリッジ回路16aの第2スイッチ列L2のローサイドのトランジスタTr4をオンにしている。このとき、アンテナエレメント30cが接続されているHブリッジ回路16bについては、第1スイッチ列L1のローサイドのトランジスタTr2およびそのHブリッジ回路16bの第2スイッチ列L2のハイサイドのトランジスタTr3をオンにしている。
【0058】
このようにすることで、アンテナエレメント30a、30cには、それぞれ図7の矢印に示す向きに電流が流れる。このとき、アンテナエレメント30fにも、図7において破線の矢印で示す向きに電流が流れるようにも思える。アンテナエレメント30fが接続されている分岐点32af、32cfにも電流が流れるからである。
【0059】
しかし、図7に示す状態では、Hブリッジ回路16bのトランジスタTr3から出力調整抵抗31cまでの間の線路の電圧は、出力調整抵抗31fから分岐点32cfまでの電圧よりも高くなる。したがって、アンテナエレメント30fには電流は流れない。
【0060】
スイッチ制御回路15はロー信号が入力された場合に図8に示す状態にする。図8に示す状態では、アンテナエレメント30aが接続されているHブリッジ回路16aの第1スイッチ列L1のローサイドのトランジスタTr2およびそのHブリッジ回路16aの第2スイッチ列L2のハイサイドのトランジスタTr3をオンにしている。このとき、アンテナエレメント30cが接続されているHブリッジ回路16bについては、第1スイッチ列L1のハイサイドのトランジスタTr1およびそのHブリッジ回路16bの第2スイッチ列L2のローサイドのトランジスタTr4をオンにしている。
【0061】
このようにすることで、アンテナエレメント30a、30cには、それぞれ図8の矢印に示す向きに電流が流れる。このとき、アンテナエレメント30fにも、図8において破線の矢印で示す向きに電流が流れるようにも思える。しかし、図8に示す状態では、Hブリッジ回路16aのアンテナエレメント30aからトランジスタTr2からまでの間の線路の電圧は、アンテナエレメント30fから分岐点32afまでの電圧よりも高くなる。したがって、図8に示す状態のときもアンテナエレメント30fには電流は流れない。
【0062】
図7図8を用いて説明したように、アンテナエレメント30aに流れる電流と、アンテナエレメント30cに流れる電流を逆相にすることで、これら2つのアンテナエレメント30a、30cのみから電波を送信することができる。
【0063】
[第1実施形態のまとめ]
以上、説明した第1形態のアンテナ装置1は、6つのアンテナエレメント30を備えているが、Hブリッジ回路16は、アンテナエレメント30の数の半分の3つである。このように、アンテナエレメント30の数よりもHブリッジ回路16の数を少なくできている。
【0064】
単独接続型アンテナエレメントであるアンテナエレメント30a、30c、30eを駆動させる場合、アンテナエレメント30a、30c、30eがそれぞれ接続されているHブリッジ回路16を対象として、図4を用いて説明した単独制御を実行すればよい。
【0065】
また、複合接続型アンテナエレメントであるアンテナエレメント30b、30d、30fを駆動させる場合、アンテナエレメント30b、30d、30fが接続されている第1スイッチ列L1および第2スイッチ列L2を対象として、図5を用いて説明した複合制御を実行すればよい。これら単独制御および複合制御を実行することで、Hブリッジ回路16の数がアンテナエレメント30の数よりも少なくても、全部のアンテナエレメント30を個別に駆動することができる。
【0066】
加えて、アンテナ装置1は、図6を用いて説明したように、第1同時制御と第2同時制御を同時に実行することで、1つの単独接続型アンテナエレメントと1つの複合接続型アンテナエレメントから同時に電波を送信することができる。また、アンテナ装置1は、図7図8を用いて説明したように、逆相同時制御を実行することで、2つの単独接続型アンテナエレメントから同時に電波を送信することもできる。したがって、アンテナ装置1は、任意の2つのアンテナエレメント30から同時に電波を送信することができる。2つのアンテナエレメント30から同時に電波を送信することで、早期に電子キー3を検出することができるなど、種々の応用制御が可能である。
【0067】
また、アンテナ装置1は、分岐点32よりもアンテナエレメント30側に、そのアンテナエレメント30の出力を調整する出力調整抵抗31を備えている。出力調整抵抗31を分岐点32よりもアンテナエレメント30側に配置することで、各アンテナエレメント30から送信させる電波の電力を、アンテナエレメント30毎に調整することができる。
【0068】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0069】
図9に、第2実施形態のアンテナ装置100の構成を示す。アンテナ装置100は、3つの断線検出回路40a、40b、40cを備えている点が第1実施形態のアンテナ装置1と相違する。これら3つの断線検出回路40a、40b、40cを区別しないときは断線検出回路40と記載する。なお、図示の都合上、ECU10とは別に断線検出回路40を備えているが、ECU10の内部に断線検出回路40が備えられていてもよい。
【0070】
断線検出回路40aは、接続点33aの電圧を検出する。接続点33aは、分岐点32adよりも、2つのアンテナエレメント30a、30dから遠い側である。2つのアンテナエレメント30a、30dが動作するときは、いずれも、接続点33aに電流が流れる。よって、接続点33aの電圧を検出することで、断線検出回路40aは、2つのアンテナエレメント30a、30dがHブリッジ回路16に接続されている線路に生じている断線を検出することができる。
【0071】
断線検出回路40bは、接続点33bの電圧を検出する。接続点33bは、分岐点32cfよりも、2つのアンテナエレメント30c、30fから遠い側である。2つのアンテナエレメント30c、30fが動作するときは、いずれも、接続点33bに電流が流れる。よって、接続点33bの電圧を検出することで、断線検出回路40bは、2つのアンテナエレメント30c、30fがHブリッジ回路16に接続されている線路に生じている断線を検出することができる。
【0072】
断線検出回路40cは、接続点33cの電圧を検出する。接続点33cは、分岐点32beよりも、2つのアンテナエレメント30b、30eから遠い側である。2つのアンテナエレメント30b、30eが動作するときは、いずれも、接続点33cに電流が流れる。よって、接続点33cの電圧を検出することで、断線検出回路40cは、2つのアンテナエレメント30b、30eがHブリッジ回路16に接続されている線路に生じている断線を検出することができる。
【0073】
図10に、アンテナエレメント30aがHブリッジ回路16に接続されている線路に生じている断線を検出するために、CPU11が実行する断線検出処理を示す。図10に示す断線検出処理は、ECU10の起動中、断線検出周期毎に実行する。断線検出周期は任意に設定可能である。
【0074】
ステップ(以下、ステップを省略)S1では、スイッチ制御回路15にアンテナエレメント30aを駆動する指示を出力する。S2では、断線検出回路40aを作動させる。S3では、断線検出回路40aから検出結果を取得し、その検出結果に基づいて、断線があるか否かを判断する。断線があると判断した場合にはS4に進む。S4では、アンテナエレメント30aの接続線を断線とする。断線であると判断した場合には、車両2のインストルメントパネルに設けられた警告灯を表示させるなど、所定の断線検出時処理を実行する。S3の判断において断線はないと判断した場合にはS4を実行することなく、図10に示す処理を終了する。
【0075】
CPU11は、アンテナエレメント30c、30eについての同様の処理を実行して、アンテナエレメント30c、30eがHブリッジ回路16に接続されている線路の断線を検出する。アンテナエレメント30a、30c、30eがHブリッジ回路16に接続されている線路の断線を検出する処理は、互いに異なる時間帯に実行してもよいし、同時に実行してもよい。
【0076】
図11に示す処理もCPU11が実行する断線検出処理である。図11に示す断線検出処理は、アンテナエレメント30bがHブリッジ回路16に接続されている線路に生じている断線を検出するために、CPU11が実行する処理である。アンテナエレメント30d、30fがHブリッジ回路16に接続されている線路に生じている断線を検出するための断線検出処理も図11と同様である。
【0077】
図11に示す断線検出処理も、ECU10の起動中、断線検出周期毎に実行する。ただし、アンテナエレメント30aがHブリッジ回路16に接続されている線路の断線検出処理を実行しているときは、アンテナエレメント30dがHブリッジ回路16に接続されている線路の断線検出処理は実行しない。また、アンテナエレメント30cがHブリッジ回路16に接続されている線路の断線検出処理を実行しているときは、アンテナエレメント30fがHブリッジ回路16に接続されている線路の断線検出処理は実行しない。また、アンテナエレメント30eがHブリッジ回路16に接続されている線路の断線検出処理を実行しているときは、アンテナエレメント30bがHブリッジ回路16に接続されている線路の断線検出処理は実行しない。
【0078】
S11では、スイッチ制御回路15にアンテナエレメント30bを駆動する指示を出力する。S12では、断線検出回路40cを作動させる。S13では、断線検出回路40cから検出結果を取得し、その検出結果に基づいて、断線があるか否かを判断する。断線があると判断した場合にはS14に進む。S14では、アンテナエレメント30bの接続線を断線とする。S4の判断において断線はないと判断した場合にはS14を実行することなく、図11に示す処理を終了する。
【0079】
この第2実施形態のアンテナ装置100は、6つのアンテナエレメント30を備えているが、断線検出回路40は、アンテナエレメント30の数の半分の3つである。この3つの断線検出回路40を図9に示した接続点33a、33b、33cに接続し、図10図11に示した断線検出処理を実行することで、6つのアンテナエレメント30がそれぞれHブリッジ回路16に接続されている線路の断線を検出することができる。
【0080】
以上、実施形態を説明したが、開示した技術は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も開示した範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0081】
<変形例1>
たとえば、アンテナ装置1、100が備えていたアンテナエレメント30はLF帯の電波を送信していた。しかし、アンテナエレメント30が送信する電波の周波数は、LF帯以外でもよい。
【0082】
<変形例2>
アンテナ装置1、100のアンテナエレメント30の数は6つであり、Hブリッジ回路16の数はその半分であった。しかし、アンテナエレメント30の数は複数であれば、6以外の数でもよい。また、Hブリッジ回路16の数も、アンテナエレメント30よりも少なければよく、アンテナエレメント30の数の半分でなくてもよい。
【0083】
<変形例3>
実施形態では、全部のアンテナエレメント30に対して出力調整抵抗31が設けられていた。しかし、出力調整抵抗31は、一部のアンテナエレメント30に対してのみ設けられていてもよい。
【0084】
<変形例4>
実施形態では、断線検出処理をCPU11が実行していた。しかし、断線検出処理をスイッチ制御回路15が実行してもよい。
【0085】
<変形例5>
実施形態では、同時送信作動として、2つのアンテナエレメント30から同時に電波を送信する作動を説明した。しかし、3つ以上のアンテナエレメント30から同時に電波を送信するようにしてもよい。
【0086】
<変形例6>
図6を用いて説明した同時送信作動は、2つのアンテナエレメント30から送信される電波の位相が問題にならない。したがって、2つのアンテナエレメント30から送信される電波の位相が逆相になるようにトランジスタTrのオンオフを制御してもよい。
【0087】
<変形例7>
本開示に記載のECU10およびECU10が実行する手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載のECU10およびECU10が実行する手法は、専用ハードウエア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載のECU10およびECU10が実行する手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。ハードウエア論理回路は、たとえば、ASIC、FPGAである。
【0088】
また、コンピュータプログラムを記憶する記憶媒体はROM12に限られず、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていればよい。たとえば、フラッシュメモリに上記プログラムが記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1:アンテナ装置 2:車両 3:電子キー 10:ECU 11:CPU 12:ROM 13:RAM 14:変調回路 15:スイッチ制御回路 16:Hブリッジ回路 30:アンテナエレメント 31:出力調整抵抗 32:分岐点 33a:接続点 33b:接続点 33c:接続点 40:断線検出回路 100:アンテナ装置 L1:第1スイッチ列 L2:第2スイッチ列 Tr:トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11