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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】故障診断装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/54 20200101AFI20220509BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220509BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G01R31/54
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019525606
(86)(22)【出願日】2018-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2018023110
(87)【国際公開番号】W WO2018235774
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2017120523
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今中 佑樹
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-76778(JP,A)
【文献】特開2016-134948(JP,A)
【文献】特開2016-152720(JP,A)
【文献】特開2017-9465(JP,A)
【文献】特開2015-33283(JP,A)
【文献】特開2012-147587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50
G01R 31/36
H01M 10/48
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子を放電する放電回路の故障診断装置であって、
前記放電回路は、並列に接続された複数の抵抗ブロックからなる抵抗回路を含み、
前記抵抗ブロックは、直列に接続された複数の放電抵抗からなり、
前記故障診断装置は、前記蓄電素子の放電中において、
前記放電抵抗の接続点の電圧電流に基づいて、前記抵抗回路の故障を診断する、故障診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の故障診断装置であって、
前記放電抵抗の接続点の抵抗ブロック間の電圧差を検出して、検出信号を出力する検出素子と、
前記検出素子の出力する検出信号に基づいて、前記抵抗回路の故障の有無を判定する判定部と、を備える、故障診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の故障診断装置であって、
複数の前記抵抗ブロックに対応して複数の前記検出素子を有し、
複数の前記検出素子は、前記判定部に対して共通接続されている、故障診断装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の故障診断装置であって、
前記検出素子は、前記抵抗回路から絶縁した状態で、前記検出信号を前記判定部に対して伝達する光絶縁素子である、故障診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の故障診断装置であって、
前記蓄電素子は48V系のバッテリ用である、故障診断装置。
【請求項6】
請求項2~請求項5のうちいずれか一項に記載の故障診断装置であって、
前記放電回路は、前記抵抗回路に対して直列に接続された直列スイッチを含み、
前記判定部は、前記放電抵抗の接続点の電圧に基づいて、前記直列スイッチの故障の有無を判定する、故障診断装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のうちいずれか一項に記載の故障診断装置であって、
前記蓄電素子は、直列に複数設けられ、
前記放電回路は、複数の前記蓄電素子に対応してそれぞれ設けられ、複数の前記蓄電素子の電圧を均等化するバランサ回路である、故障診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電抵抗の故障を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池を直列に接続したバッテリは、それぞれ二次電池間の残存容量を均一化するためバランサ機能を有している。一般に、バランサ回路の抵抗は、放熱性や電力定格の都合上、複数の放電抵抗を、直並列接続した構成となっている。バランサ回路において、放電抵抗がショートモードで故障した場合、ショートした抵抗と直列に接続された抵抗での電力損失が大きくなる。そのため、ショートした状態で、バランサ回路を動作させてしまうと、発熱により故障を引き起こす場合がある。また、放電抵抗がオープンモードで故障した場合、バランサ回路の放電能力が小さくなってしまうため、各二次電池の電圧がバランスできない問題が生じる。
【0003】
下記特許文献1では、放電抵抗11Aと並列に抵抗分圧回路4A、4Bを設けており、放電抵抗11A、11Bの故障を、スイッチ12をオンした場合と、オフした場合の電圧を比較して判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2014/045567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法は、故障検出時にスイッチをオフすることから、放電が一時的に停止する。そのため、放電回路の使用可能な期間が制限されることになり、放電能力が低下するという問題がある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、放電能力の低下を抑制しつつ、放電抵抗の故障を診断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
蓄電素子を放電する放電回路の故障診断装置であって、前記放電回路は、並列に接続された複数の抵抗ブロックからなる抵抗回路を含み、前記抵抗ブロックは、直列に接続された複数の放電抵抗からなり、前記故障診断装置は、前記蓄電素子の放電中において、前記放電抵抗の接続点の電圧又は、電流に基づいて、前記抵抗回路の故障を診断する。
【発明の効果】
【0007】
本構成では、放電回路の動作中に抵抗回路の故障を検出することが出来る。そのため、故障検出中も、放電回路を停止する必要がないことから、放電回路による放電能力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1における自動車の側面図
図2】バッテリの斜視図
図3】バッテリの分解斜視図
図4】バッテリの電気的構成を示すブロック図
図5】放電回路の回路図
図6】放電抵抗の状態ごとにBMへの入力電圧をまとめた図表
図7】実施形態2における放電回路の回路図
図8】トランジスタQ4の状態ごとにBMへの入力電圧Vinをまとめた図表
図9】実施形態3における放電回路の回路図
図10】他の実施形態における放電回路の回路図
【発明を実施するための形態】
【0009】
蓄電素子を放電する放電回路の故障診断装置であって、前記放電回路は、並列に接続された複数の抵抗ブロックからなる抵抗回路を含み、前記抵抗ブロックは、直列に接続された複数の放電抵抗からなり、前記故障診断装置は、前記蓄電素子の放電中において、前記放電抵抗の接続点の電圧又は、電流に基づいて、前記抵抗回路の故障を診断する。本構成では、放電回路の動作中に、抵抗回路の故障を診断できる。そのため、故障診断のため、放電回路を停止する必要がないことから、放電回路による放電能力の低下を抑制できる。
【0010】
故障診断装置は、前記放電抵抗の接続点の抵抗ブロック間の電圧差を検出して、検出信号を出力する検出素子と、前記検出素子の出力する検出信号に基づいて、前記抵抗回路の故障の有無を判定する判定部と、を備えるとよい。本構成では、判定部は、検出素子から出力される検出信号の有無のみを監視することで、抵抗回路の故障を診断できる。そのため、判定部に高度な演算機能を持つ必要がなく、安価な構成で抵抗回路の故障診断を行うことが出来る。
【0011】
複数の前記抵抗ブロックに対応して複数の前記検出素子を有し、複数の前記検出素子は、前記判定部に対して共通接続されているとよい。本構成では、判定部と各検出素子とを接続する検出ラインが1本で済むので、回路構成がシンプルである。また、判定部は、抵抗回路の故障の有無を判定するにあたり、1つの入力のみ監視していればよく、監視負担が小さい。
【0012】
前記検出素子は、前記抵抗回路から絶縁した状態で、前記検出信号を前記判定部に対して伝達する光絶縁素子である。本構成では、判定部を過電圧から保護することが可能である。また、判定部に故障が起き難くなることから、抵抗回路の故障診断の信頼性が高い。
【0013】
前記蓄電素子は48V系のバッテリ用である。48V系のバッテリでは、12V系に比べて電圧が4倍であり、判定部が故障し易い。本術を適用することで、判定部を過電圧から効果的に保護することが可能であり、また、判定部に故障が起き難くなることから、抵抗回路の故障診断の信頼性が高い。
【0014】
前記放電回路は、前記抵抗回路に対して直列に接続された直列スイッチを含み、前記判定部は、前記放電抵抗の接続点の電圧値に基づいて、前記直列スイッチの故障の有無を判定するとよい。本構成では、抵抗回路の故障だけでなく、直列スイッチの故障を検出することが出来る。
【0015】
前記放電回路は、前記蓄電素子は、直列に複数設けられ、前記放電回路は、複数の前記蓄電素子に対応してそれぞれ設けられ、複数の前記蓄電素子の電圧を均等化するバランサ回路であることが好ましい。本構成では、故障診断のため、放電回路を停止する必要がないことから、バランサ回路(放電回路)のバランシング能力が高くなる。
【0016】
<実施形態1>
1.バッテリの説明
図1は自動車の側面図、図2はバッテリの斜視図、図3はバッテリの分解斜視図、図4はバッテリの電気的構成を示すブロック図である。
【0017】
自動車1は、図1に示すように、バッテリ(蓄電装置)20を備えている。バッテリ20は、図2に示すように、ブロック状の電池ケース21を有しており、電池ケース21内には、複数の二次電池31からなる組電池30や制御基板28が収容されている。以下の説明において、図2および図3を参照する場合、電池ケース21が設置面に対して傾きなく水平に置かれた時の電池ケース21の上下方向をY方向とし、電池ケース21の長辺方向に沿う方向をX方向とし、電池ケース21の奥行き方向をZ方向をとして説明する。
【0018】
電池ケース21は、図3に示すように、上方に開口する箱型のケース本体23と、複数の二次電池31を位置決めする位置決め部材24と、ケース本体23の上部に装着される中蓋25と、中蓋25の上部に装着される上蓋26とを備えて構成されている。ケース本体23内には、図3に示すように、各二次電池31が個別に収容される複数のセル室23AがX方向に並んで設けられている。
【0019】
位置決め部材24は、図3に示すように、複数のバスバー27が上面に配置されており、位置決め部材24がケース本体23内に配置された複数の二次電池31の上部に配置されることで、複数の二次電池31が、位置決めされると共に複数のバスバー27によって直列に接続されるようになっている。
【0020】
中蓋25は、図2に示すように、平面視略矩形状をなし、Y方向に高低差を付けた形状とされている。中蓋25のX方向両端部には、図示しないハーネス端子が接続される一対の端子部22P、22Nが設けられている。一対の端子部22P、22Nは、例えば鉛合金等の金属からなり、22Pが正極側端子部、22Nが負極側端子部である。
【0021】
中蓋25は、図3に示すように、制御基板28が内部に収容されており、中蓋25がケース本体23に装着されることで、二次電池31と制御基板28とが接続されるようになっている。
【0022】
図4を参照して、バッテリ20の電気的構成を説明する。バッテリ20は、組電池30と、電流センサ41と、電流遮断装置37と、組電池30を管理する電池管理装置(以下、BM)50とを有する。
【0023】
図4を参照して、バッテリ20の電気的構成を説明する。バッテリ20は、組電池30と、電流遮断装置37と、電流センサ41と、電圧検出部45と、温度センサ47と、放電回路60と、組電池30を管理する電池管理装置(以下、BM)50とを有する。
【0024】
組電池30は、直列接続された複数の二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)31から構成されている。組電池30、電流センサ41、電流遮断装置37は、通電路35を介して、直列に接続されている。電流センサ41を負極側、電流遮断装置37を正極側に配置しており、電流センサ41は負極側端子部22N、電流遮断装置37は、正極側端子部22Pにそれぞれ接続されている。
【0025】
二次電池31の電池電圧Eは約3.5[V]、組電池30の総電圧は約14Vであり、バッテリ20の電圧階級は12V系である。バッテリ20はエンジン始動用である。図4に示すように、バッテリ20には、自動車1に搭載されたエンジンを始動するためのセルモータ15が接続されており、セルモータ15はバッテリ20から電力の供給を受けて駆動する。バッテリ20には、セルモータ15の他に、電装品などの車両負荷(図略)やオルタネータ17が接続されている。オルタネータ17の発電量が車両負荷の電力消費より大きい場合、バッテリ20はオルタネータ17による充電される。また、オルタネータ17の発電量が車両負荷の電力消費より小さい場合、バッテリ20は、その不足分を補うため、放電する。
【0026】
電流センサ41は、電池ケース21の内部に設けられており、二次電池31に流れる電流を検出する。電流センサ41は、信号線によってBM50に電気的に接続されており、電流センサ41の出力は、BM50に取り込まれる。
【0027】
電圧検出部45は、電池ケース21の内部に設けられており、各二次電池31の電圧及び組電池30の総電圧を検出する。電圧検出部45は、信号線によってBM50に電気的に接続されており、電圧検出部45の出力は、BM50に取り込まれる。
【0028】
温度センサ47は、電池ケース21の内部に設けられており、二次電池31の温度を検出する。温度センサ47は、信号線によってBM50に電気的に接続されており、温度センサ47の出力は、BM50に取り込まれる。
【0029】
電流遮断装置37は、リレーなどの有接点スイッチ(機械式)やFETやトランジスタなどの半導体スイッチにより構成することが出来る。電流遮断装置37は、組電池30の通電路35上に配置されており、二次電池31の通電路35を開閉する。
【0030】
BM50は、演算機能を有するCPU51、各種情報を記憶したメモリ53、通信部55など備えており、制御基板28上に設けられている。通信部55には、自動車1に搭載された車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が接続されており、BM50は、エンジンの動作状態など車両に関する情報を、車両ECU100から受信できるようになっている。
【0031】
BM50は、電流センサ41の出力に基づいて、二次電池31の電流を監視する。電圧検出部45の出力に基づいて、各二次電池31の電圧や組電池30の総電圧を監視する。温度センサ47の出力に基づいて、二次電池31の温度を監視する。
【0032】
BM50は、二次電池31の電圧、電流、温度に異常がある場合、電流遮断装置37に指令を送って、電流を遮断することにより、バッテリ20を保護する。
【0033】
また、BM50は、下記の(2)式で示すように、電流センサ41により検出される電流Iの時間に対する積分値に基づいて、バッテリ20のSOC(state of charge:充電状態)を推定する。尚、電流の符号を、充電時はプラス、放電はマイナスとする。(1)式はSOCの定義を示す。
【0034】
SOC=Cr/Co×100・・・・・・・・・・(1)
Coは二次電池の満充電容量、Crは二次電池の残存容量である。
【0035】
SOC=SOCo+100×∫Idt/Co・・・(2)
SOCoは、SOCの初期値、Iは電流である。
【0036】
2.放電回路60と故障診断
放電回路60は、各二次電池31に対して個別に設けられている。放電回路60は、図5に示すように、抵抗回路61と、第4トランジスタQ4と、から構成されている。
【0037】
抵抗回路61は、並列に接続された複数の抵抗ブロックB1~B3からなる。図5では、3つの抵抗ブロックB1~B3を並列に接続した構成になっている。各抵抗ブロックB1~B3は、直列に接続された2つの放電抵抗Ra、Rbから構成されている。2つの放電抵抗Ra、Rbの抵抗値は、等しい。
【0038】
抵抗回路61を、直並列接続された複数の抵抗Ra、Rbから構成する理由は、抵抗回路61の放電容量を大きくするためである。
【0039】
第4トランンジスタQ4は、NPNトランジスタである。第4トランジスタQ4は、コレクタを抵抗回路61に接続し、エミッタを二次電池31の負極に接続している。第4トランジスタQ4のベースには、信号線を介して、BM50に接続されている。
【0040】
第4トランンジスタQ4のベースに動作信号を与えて、第4トランジスタQ4をオンすると、抵抗回路61に電流が流れ、二次電池31を放電させることが出来る。第4トランジスタQ4は、本発明の「直列スイッチ」の一例である。
【0041】
BM50は、電圧検出部45の出力に基づいて、組電池30を構成する各二次電池31の電圧を監視する。二次電池31の電圧差(例えば、最高電圧と最低電圧の差)が閾値を超えると、電圧の高い二次電池31を、放電回路60を用いて放電させることで、組電池30を構成する二次電池31の電圧を均等化する。このように、放電回路60は、二次電池31の電圧を均等化するバランサ回路である。
【0042】
図5に示すように、バッテリ20は、3つの抵抗ブロックB1~B3に対応して、3つのトランジスタQ1~Q3を備えている。第1トランジスタQ1は、PNPトランジスタであり、エミッタを、抵抗ブロックB1の2つの放電抵抗RaとRbの接続点P1に接続し、ベースを、抵抗ブロックB2の2つの放電抵抗RaとRbの接続点P2に接続している。
【0043】
第2トランジスタQ2は、PNPトランジスタであり、エミッタを、抵抗ブロックB2の2つの放電抵抗RaとRbの接続点P2に接続し、ベースを、抵抗ブロックB3の2つの放電抵抗RaとRbの接続点P3に接続している。また、第3トランジスタQ3は、PNPトランジスタであり、エミッタを、抵抗ブロックB3の2つの放電抵抗RaとRbの接続点P3に接続し、ベースを、抵抗ブロックB1の2つの放電抵抗RaとRbの接続点P1に接続している。
【0044】
第1トランジスタQ1のコレクタ、第2トランジスタQ2のコレクタ、第3トランジスタQ3のコレクタは、検出ラインLoに対して、共通接続されている。
【0045】
第1トランジスタQ1~第3トランジスタQ3は、エミッタとベース間の電圧差が、動作電圧(一例として、0.6V)よりも高くなると、オンする。第1トランジスタQ1~第3トランジスタQ3は、本発明の「検出素子」の一例である。
【0046】
BM50は、抵抗回路61による二次電池31の放電中に、検出ラインLoからの入力電圧Vinを監視することで、抵抗回路61の故障を診断する。BM50は、本発明の「判定部」の一例である。
【0047】
以下、抵抗回路61の故障診断方法を具体的に説明する。
第4トランジスタQ4をオンすると、二次電池31から、抵抗回路61に放電電流が流れる。二次電池31の電圧をE[V]とすると、放電回路61が正常な場合、各抵抗ブロックB1~B3の接続点P1~P3の電圧は、全てE/2[V]となる。
【0048】
そのため、図6に示すように、各トランジスタQ1~Q3は全てオフし、BM50への入力電圧Vinはゼロ[V]になる。
【0049】
次に、抵抗ブロックB1の放電抵抗Raが、断線等によりオープン故障している場合、抵抗ブロックB1の接続点P1の電圧は0[V]、抵抗ブロックB2、B3の接続点P2、P3の電圧はE/2[V]となる。これにより、第3トランジスタQ3のエミッタとベース間に、トランジスタQの動作電圧よりも高い、正の電圧差が生じる。そのため、トランジスタQ1~Q3のうち、第3トランジスタQ3がオンし、BM50への入力電圧VinはE/2[V]となる。すなわち、第3トランジスタQ3から、BM50に対してE/2[V]の検出信号が入力される。
【0050】
抵抗ブロックB1の放電抵抗Raがショート故障している場合、抵抗ブロックB1の接続点P1の電圧はE[V]、抵抗ブロックB2、B3の接続点P2、P3の電圧はE/2[V]となる。これにより、第1トランジスタQ1のエミッタとベース間に、トランジスタQの動作電圧よりも高い、正の電圧差が生じる。そのため、トランジスタQ1~Q3のうち、第1トランジスタQ1がオンし、BM50への入力電圧VinはE[V]となる。すなわち、第1トランジスタQ1から、BM50に対してE[V]の検出信号が入力される。
【0051】
次に、抵抗ブロックB1の放電抵抗Rbが、断線等によりオープン故障している場合、抵抗ブロックB1の接続点P1の電圧はE[V]、抵抗ブロックB2、B3の接続点P2、P3の電圧はE/2[V]となる。これにより、第1トランジスタQ1のエミッタとベース間に、トランジスタQの動作電圧よりも高い、正の電圧差が生じる。そのため、トランジスタQ1~Q3のうち、第1トランジスタQ1がオンし、BM50への入力電圧VinはE[V]となる。すなわち、第1トランジスタQ1からBM50に対してE[V]の検出信号が入力される。
【0052】
抵抗ブロックB1の放電抵抗Rbがショート故障している場合、抵抗ブロックB1の接続点P1の電圧は0[V]、抵抗ブロックB2、B3の接続点P2、P3の電圧はE/2[V]となる。これにより、第3トランジスタQ3のエミッタとベース間に、トランジスタQの動作電圧よりも高い、正の電圧差が生じる。そのため、トランジスタQ1~Q3のうち、第3トランジスタQ3がオンし、BM50への入力電圧VinはE/2[V]となる。すなわち、第3トランジスタQ3からBM50に対してE/2[V]の検出信号が入力される。
【0053】
抵抗ブロックB2の放電抵抗Ra、Rbのどちらかが故障している場合、第1トランジスタQ1、第2トランジスタQ2のいずれかがオンし、BM50への入力電圧VinはE[V]、またはE/2[V]になる。すなわち、第1トランジスタQ1、第2トランジスタQ2のいずれかから、BM50に対して、E[V]又はE/2[V]の検出信号が入力される。
【0054】
抵抗ブロックB3の放電抵抗Ra、Rbのどちらかが故障している場合、第2トランジスタQ2、第3トランジスタQ3のいずれかがオンし、BM50への入力電圧VinはE[V]、またはE/2[V]になる。すなわち、第2トランジスタQ2、第3トランジスタQ3のいずれかから、BM50に対して、E[V]又はE/2[V]の検出信号が入力される。
【0055】
以上のことから、BM50は、放電回路60による二次電池61の放電中に、入力電圧Vinを監視することで、放電抵抗Ra、Rbの故障を診断することが出来る。
【0056】
具体的には、入力電圧Vinがゼロ[V]の場合、抵抗回路61は正常、すなわち、抵抗回路61を構成する放電抵抗Ra、Rbは全て正常と判定できる。一方、入力電圧Vinが、E[V]またはE/2[V]の場合、抵抗回路61は故障していると判定できる。すなわち、抵抗回路61を構成する各放電ブロックB1~B3の放電抵抗Ra、Rbのいずれかが故障していると判定できる。
【0057】
本構成では、第1トランジスタQ1~第3トランンジスタQ3から出力される検出信号(E[V]又はE/2[V]のHレベルの電圧信号)に基づいてBM50が、抵抗回路61の故障診断を行う。3つのトランジスタQ1~Q3とBM50は、抵抗回路61の故障診断を行う故障診断装置を構成している。
【0058】
3.効果説明
本構成では、放電回路60の動作中に、抵抗回路61の故障を診断することが出来る。そのため、故障診断中も、放電回路60を停止する必要がないことから、放電回路60による放電能力の低下を抑制できる。
【0059】
本構成では、BM50は、入力電圧Vinのみを監視することで、放電回路61の故障を診断できる。そのため、BM50に高度な演算機能を持つ必要がなく、安価な構成で、抵抗回路61の故障診断を行うことが出来る。
【0060】
本構成では、BM50と各トランジスタQ1~Q3を接続する検出ラインLoが1本で済むので、回路構成がシンプルである。また、BM50は、抵抗回路61の故障の有無を判定するにあたり、1つの入力電圧Vinのみ監視していればよく、監視負担が小さい。
【0061】
本構成では、放電回路60の放電能力が高いことから、例えば、急速充電器による充電時など、比較的高い電流により充電が行われ、過充電になり易い状態で、バッテリ20が使用される場合に有効である。すなわち、放電回路60が高い放電能力を有していることで、二次電池31の電圧を短時間で下げることが可能となり、二次電池31が過充電になることを抑制できる。
【0062】
<実施形態2>
実施形態2は、図7に示すように、実施形態1の回路構成に対して、第5トランジスタQ5を追加した構成となっている。第5トランジスタQ5は、抵抗回路61ごとに、設けられている。第5トランジスタQ5は、NPNトランジスタであり、エミッタを、二次電池31の負極に接続し、コレクタを、第3トランジスタQ3のベースに接続している。ベースは、信号線を介して、BM50に接続されている。
【0063】
BM50から、第5トランジスタQ5のベースに動作信号を入力すると、第5トランジスタQ5がオンして第3トランジスタQ3のベース電圧が下がる。これにより、第3トランジスタQ3がオフからオンに切り換わることから、抵抗ブロックB3の接続点P3の電圧が、第3トランジスタQ3を介して、BM50に対して入力される。
【0064】
BM50は、第4トランジスタQ4をオンした時とオフした時の、接続点P3の電圧に基づいて、第4トランジスタQ4の故障の有無を判定する。具体的には、BM50から第4トランジスタQ4に対してオフの動作信号を与え、第5トランジスタQ5に対してオンの動作信号を与えた場合、図8に示すように、第4トランジスタQ4が正常動作している場合(オフしている場合)、BM50への入力電圧Vinは、E[V]になる。一方、第4トランジスタQ4がショート故障している場合、BM50への入力電圧Vinは、E/2[V]になる。従って、BM50は、入力電圧Vinの値から第4トランジスタQ4のショート故障を判定できる。
【0065】
BM50から第4トランジスタQ4に対してオンの動作信号を与え、第5トランジスタQ5に対してオンの動作信号を与えた場合、図8に示すように、第4トランジスタQ4が正常動作している場合(オンしている場合)、BM50への入力電圧Vinは、E/2[V]になる。一方、第4トランジスタQ4がオープン故障している場合、BM50への入力電圧Vinは、E[V]になる。従って、BM50は、入力電圧Vinの値から第4トランジスタQ4のオープン故障を判定できる。
【0066】
実施形態3では、抵抗回路61の故障だけでなく、直列スイッチである第4トランジスタQ4の故障を判定出来る。
【0067】
<実施形態3>
実施形態1のバッテリ20はエンジン始動用で、電圧階級は12V系であった。実施形態3のバッテリ20は、電動エアコンやパワーステアリングなどの電装品の駆動用であり、電圧階級は48V系(組電池の総電圧が約48V)である。
【0068】
実施形態3では、図9に示すように、実施形態1の回路構成に対して、第1トランジスタQ1~第4トランジスタQ4を、第1フォトカプラPC1~第4フォトカプラPC4に置き換えた構成となっている。第1フォトカプラPC1~第4フォトカプラPC4は、本発明の「光絶縁素子」の一例である。
【0069】
フォトカプラPC1~PC3は、発光ダイオードD1~D3と、フォトトランジスタTr1~Tr3から構成されている。各発光ダイオードD1~D3は、2つの接続点P1~P3の間にそれぞれ接続されている。また、各フォトトランジスタTr1~Tr3は、コレクタを電源Vccに共通接続し、エミッタをBM50に共通接続している。
【0070】
フォトカプラPC4は、発光ダイオードD4と、フォトトランジスタTr4から構成されている。発光ダイオードD4はアノードをBM50に接続し、カソードをグランドに接続している。フォトトランジスタTr4は、コレクタを抵抗回路61に接続し、エミッタを二次電池31の負極に接続している。BM50から発光ダイオードD4に動作信号を入力すると、フォトカプラPC4はオンすることから、放電回路61に電流が流れ、二次電池31を放電する。
【0071】
抵抗回路61による二次電池31の放電中、各抵抗ブロックB1~B3の放電抵抗Ra、Rbに故障がない場合、各接続点P1~P3の電圧はE/2[V]で、等しくなる。そのため、各フォトカプラPC1~PC3はいずれもオフし、BM50の入力電圧Vinはゼロ[V]となる。
【0072】
一方、抵抗ブロックB1~B3のいずれかに放電抵抗Ra、Rbの故障がある場合、いずれかのフォトカプラPC1~PC3がオンし、BM50の入力電圧VinはVcc[V]となる。例えば、抵抗ブロックB1の放電抵抗Rbがオープン故障した場合、接続点P1と接続点P2の電圧差がE/2[V]になる。これにより、フォトカプラPC1がオンすることから、BM50の入力電圧VinはVcc[V]となる。
【0073】
以上のことから、BM50は、実施形態1と同様に、抵抗回路61による二次電池31の放電中において、入力電圧Vinを監視することで、放電抵抗Ra、Rbの故障を診断できる。
【0074】
実施形態3では、第1トランジスタQ1~第4トランジスタQ4を、第1フォトカプラPC1~第4フォトカプラPC4に置き換えている。そのため、二次電池31や抵抗回路61など高圧側の回路から、BM50を絶縁できる。従って、BM50を過電圧から保護することが出来る。BM50に故障が起き難くなることから、抵抗回路61の故障診断について信頼性が高く、放電回路60によるバランサ能力も維持できる。
【0075】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0076】
(1)実施形態1~3では、蓄電素子の一例に、二次電池を例示した。蓄電素子は、二次電池に限定されるものではなく、電気二重層コンデンサなどもよい。また、バッテリ20の用途は車両に限定されるものではなく、UPSや、太陽光発電システムの蓄電部などの他の用途でもよい。
【0077】
(2)実施形態1~3では、放電抵抗Ra、Rbの直列数を「2」とした。放電抵抗Ra、Rbの直列数は「2」に限定されるものではなく、「3」など「2」以上でもよい。また、抵抗ブロックBの並列数も「3」に限定されず、「2」や「4」などでもよい。また、放電抵抗Ra、Rbの抵抗値は、必ずしも、同じ値でなくてもよい。2つの放電抵抗R、Rbは、抵抗ブロックB1~B3間で抵抗比が等しい関係になっていれば、抵抗値が異なっていてもよい。
【0078】
(3)実施形態1では、検出素子の一例に、第1トランジスタQ1~第3トランジスタQ3を用いた。検出素子は、電圧差を検出して検出信号を出力する素子であれば適用でき、電界効果トランジスタ(FET)などを使用することが出来る。
【0079】
(4)実施形態1では、各抵抗ブロックB1~B3の放電抵抗Ra、Rbの接続点P1~P3の電圧差に基づいて、放電回路61の故障を診断した。これ以外に、各抵抗ブロックB1~B3間の電流差に基づいて、放電回路61の故障の診断するようにしてもよい。二次電池31の放電中に、各抵抗ブロックB1~B3に流れる電流I1~I3を求め、それらの電流差から放電回路61の故障を診断してもよい。また、各抵抗ブロックB1~B3に流れる電流は、電流センサを専用に設けて計測してもいいし、各接続点P1~P3の電圧と放電抵抗Rbの値から算出してもよい。
【0080】
(5)実施形態1では、抵抗ブロックB1~B3の放電抵抗Ra、Rbの接続点P1~P3の電圧差を検出するため、第1トランジスタQ1~第3トランジスタQ3を設けた。第1トランジスタQ1~第3トランジスタQ3とは別の方法で、電位差を検出してもよい。
例えば、図10に示すように、BM50と各接続点P1~P3とを信号線でそれぞれ接続し、BM50にて抵抗ブロックB1~B3の各接続点P1~P3の電圧をそれぞれ監視する。BM50は抵抗回路61による二次電池31の放電中、各接続点P1~P3の電圧から、抵抗ブロック間の接続点P1~P3の電圧差を検出する。そして、検出した電位差に基づいて、放電回路61の故障を診断する。すなわち、放電ブロックB1~B3の各接続点P1~P3の電圧が等しい場合、放電回路61は正常と判定する。一方、放電ブロックB1~B3間で、接続点P1~P3に閾値以上の電圧差が発生している場合、放電回路61は故障していると判定する。この構成は、第1トランジスタQ1~第3トランジスタQ3を廃止できるというメリットがある。
【0081】
(6)実施形態3では、48系のバッテリ20において、光絶縁素子である第1フォトカプラPC1~第4フォトカプラPC4を用いて、二次電池31や抵抗回路61など高圧側の回路からBM50を絶縁した例を示した。バッテリ20の電圧階級は、48V系に限定されない。例えば、12V系のバッテリに、本技術を適用して、二次電池31や抵抗回路61など高圧側の回路からBM50を絶縁してもよい。
【0082】
(7)本発明は、4輪車両(自動車等)のエンジン始動用に限定されない。4輪車両の補器用や、2輪車両のエンジン始動用でもよい。AGV(Automated Guided Vehicle)駆動用の電池の管理装置に搭載されている放電抵抗に本発明が適用されてもよい。UPS(Uninterruptible Power Supply)に搭載されている電池の管理装置の放電抵抗に本発明が適用されてもよい。EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)の駆動用の電池の管理装置に搭載されている放電抵抗に本発明が適用されてもよい。EVやPHVを駆動する電池は容量が大きい。そのため、放電抵抗に流れる電流も大きく、放電抵抗に発生する熱も大きい。発生する熱が大きいと、放電抵抗は熱膨張と収縮を繰り返すことにより不具合が出る場合がある。例えば、放電抵抗の接触不良(半田クラック)がある。よって、本発明をEVやPHVに用いると、放電回路を停止せず故障検知ができるため、特に有用である。その他、上記に限らず、放電抵抗を有する蓄電装置であれば、用途は問わない。
【符号の説明】
【0083】
20...バッテリ 30...組電池
31...二次電池
50...BM(本発明の「判定部」に相当)
60...放電回路
61...抵抗回路
B1~B3...抵抗ブロック
P1~P3...接続点
Q1~Q3...トランジスタ(本発明の「検出素子」に相当)
Q4...トランジスタ(本発明の「直列スイッチ」に相当)
Ra、Rb...放電抵抗
図1
図2
図3
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図5
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図10