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特許7067569コンテンツ配信装置及びコンテンツ配信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】コンテンツ配信装置及びコンテンツ配信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 67/00 20220101AFI20220509BHJP
   H04W 40/34 20090101ALI20220509BHJP
【FI】
H04L67/00
H04W40/34
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019562717
(86)(22)【出願日】2017-12-29
(86)【国際出願番号】 JP2017047409
(87)【国際公開番号】W WO2019130597
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末光 祐希
【審査官】小林 義晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-288208(JP,A)
【文献】特開2004-128785(JP,A)
【文献】特開2007-129690(JP,A)
【文献】国際公開第2017/030180(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0222245(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 67/00
H04W 40/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御データ又はコンテンツデータの送信を第1のコンテンツ受信装置に対して第1の周波数帯の所与の無線通信チャネルで行う第1の通信部と、
前記コンテンツデータの送信を第2のコンテンツ受信装置に対して行う第2の通信部と、
前記第2の通信部により前記第2のコンテンツ受信装置に対して前記コンテンツデータを送信できないと判断する場合に、前記第1の通信部を用いて、既に確立されている前記無線通信チャネルで、前記第1のコンテンツ受信装置に対する前記制御データ又は前記コンテンツデータの送信を維持しつつ、前記第2のコンテンツ受信装置に対する前記コンテンツデータの送信を開始する制御部と、
を含むコンテンツ配信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコンテンツ配信装置において、
前記制御部は、前記第2の通信部による前記第2のコンテンツ受信装置に対する前記コンテンツデータの送信中、前記第2の通信部による通信状況に応じて、前記第1の通信部により前記第2のコンテンツ受信装置に対する前記コンテンツデータの送信を継続する、コンテンツ配信装置。
【請求項3】
請求項1に記載のコンテンツ配信装置において、
前記第2の通信部は、有線で、又は前記第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯の所与の無線通信チャネルで、前記コンテンツデータの送信を行う、コンテンツ配信装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のコンテンツ配信装置において、
前記第1のコンテンツ受信装置及び前記第2のコンテンツ受信装置と、前記コンテンツデータを同期再生する、コンテンツ配信装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のコンテンツ配信装置において、
前記制御部は、第1のデータ形式の前記コンテンツデータを前記第2の通信部により前記第2のコンテンツ受信装置に対して送信し、前記第1のデータ形式よりデータ量の少ない第2のデータ形式の前記コンテンツデータを前記第1の通信部により前記第2のコンテンツ受信装置に対して送信する、コンテンツ配信装置。
【請求項6】
請求項5に記載のコンテンツ配信装置において、
前記制御部は、前記第1の周波数帯の前記無線通信チャネルでの通信量の指標に応じて、複数のデータ形式のうちいずれかを前記第2のデータ形式として選択する、コンテンツ配信装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のコンテンツ配信装置において、
前記制御部は、前記第1の通信部により当該コンテンツ配信装置から前記コンテンツデータを送信する装置の台数に応じて、前記複数のデータ形式のうちいずれかを前記第2のデータ形式として選択する、コンテンツ配信装置。
【請求項8】
請求項5又は6に記載のコンテンツ配信装置において、
前記制御部は、前記第1の周波数帯の前記無線通信チャネルで通信している装置の台数に応じて、前記複数のデータ形式のうちいずれかを前記第2のデータ形式として選択する、コンテンツ配信装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のコンテンツ配信装置において、
前記制御部は、前記第2のコンテンツ受信装置に対して前記コンテンツデータを前記第1の通信部により送信する場合、前記第1の通信部により前記第1のコンテンツ受信装置に対して送信するデータの形式を変更する、コンテンツ配信装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のコンテンツ配信装置において、
前記制御部は、前記第2のコンテンツ受信装置に対して前記コンテンツデータを前記第1の通信部により送信する場合、前記第1の通信部による所定データのダウンロードを制限する、コンテンツ配信装置。
【請求項11】
第1の通信部により、制御データ又はコンテンツデータの送信を第1のコンテンツ受信装置に対して第1の周波数帯の所与の無線通信チャネルで行う第1ステップと、
第2の通信部により、前記コンテンツデータの送信を第2のコンテンツ受信装置に対して行う第2ステップと、
前記第2の通信部により前記第2のコンテンツ受信装置に対して前記コンテンツデータを送信できないと判断する場合に、前記第1の通信部を用いて、既に確立されている前記無線通信チャネルで、前記第1のコンテンツ受信装置に対する前記制御データ又は前記コンテンツデータの送信を維持しつつ、前記第2のコンテンツ受信装置に対する前記コンテンツデータの送信を開始する第3ステップと、
を含むコンテンツ配信方法。
【請求項12】
請求項11に記載のコンテンツ配信方法において、
前記第3ステップは、前記第2の通信部による前記第2のコンテンツ受信装置に対する前記コンテンツデータの送信中、前記第2の通信部による通信状況に応じて、前記第1通信部を用いて、前記第2のコンテンツ受信装置に対する前記コンテンツデータの送信を継続する、コンテンツ配信方法。
【請求項13】
請求項11に記載のコンテンツ配信方法において、
前記第2ステップは、前記第2の通信部により、有線で、又は前記第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯の所与の無線通信チャネルで、前記コンテンツデータの送信を行う、コンテンツ配信方法。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれかに記載のコンテンツ配信方法において、
前記第1の通信部及び前記第2の通信部を有するコンテンツ配信装置が、前記第1のコンテンツ受信装置及び前記第2のコンテンツ受信装置と、前記コンテンツデータを同期再生するステップを更に含む、コンテンツ配信方法。
【請求項15】
請求項11乃至14のいずれかに記載のコンテンツ配信方法において、
前記第3ステップは、第1のデータ形式の前記コンテンツデータを前記第2の通信部により前記第2のコンテンツ受信装置に対して送信し、前記第1のデータ形式よりデータ量の少ない第2のデータ形式の前記コンテンツデータを前記第1の通信部により前記第2のコンテンツ受信装置に対して送信する、コンテンツ配信方法。
【請求項16】
請求項15に記載のコンテンツ配信方法において、
前記第3ステップは、前記第1の周波数帯の前記無線通信チャネルでの通信量の指標に応じて、複数のデータ形式のうちいずれかを前記第2のデータ形式として選択するステップを含む、コンテンツ配信方法
【請求項17】
請求項15又は16に記載のコンテンツ配信方法において、
前記第3ステップは、前記第1の通信部によりコンテンツ配信装置から前記コンテンツデータを送信する装置の台数に応じて、前記複数のデータ形式のうちいずれかを前記第2のデータ形式として選択するステップを含む、コンテンツ配信方法。
【請求項18】
請求項15又は16に記載のコンテンツ配信方法において、
前記第3ステップは、前記第1の周波数帯の前記無線通信チャネルで通信している装置の台数に応じて、前記複数のデータ形式のうちいずれかを前記第2のデータ形式として選択するステップを含む、コンテンツ配信方法。
【請求項19】
請求項11乃至18のいずれかに記載のコンテンツ配信方法において、
前記第3ステップは、前記第2のコンテンツ受信装置に対して前記コンテンツデータを前記第1の通信部により送信する場合、前記第1の通信部により前記第1のコンテンツ受信装置に対して送信するデータの形式を変更するステップを含む、コンテンツ配信方法。
【請求項20】
請求項11乃至19のいずれかに記載のコンテンツ配信方法において、
前記第3ステップは、前記第2のコンテンツ受信装置に対して前記コンテンツデータを前記第1の通信部により送信する場合、前記第1の通信部による所定データのダウンロードを制限するステップを含む、コンテンツ配信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンテンツ配信装置及びコンテンツ配信方法に関し、特に、複数の通信部を用いるコンテンツ配信に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ネットワークを介して接続された一次ゾーンプレイヤと、サテライトゾーンプレイヤと、を含むオーディオシステムが開示されている。一次ゾーンプレイヤは、第1周波数帯(例えば2.4GHz帯)インタフェース及び第2周波数帯(例えば5GHz帯)インタフェースを備えており、いずれかのインタフェースを用いて、オーディオデータをサテライトゾーンプレイヤに無線送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-528227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、コンテンツ配信のための複数の通信部の利用を最適化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係るコンテンツ配信装置は、制御データ又はコンテンツデータの送信を第1のコンテンツ受信装置に対して第1の周波数帯の所与の無線通信チャネルで行う第1の通信部と、前記コンテンツデータの送信を第2のコンテンツ受信装置に対して行う第2の通信部と、前記第2の通信部により前記第2のコンテンツ受信装置に対して前記コンテンツデータを送信できないと判断する場合に、前記第1の通信部を用いて、既に確立されている前記無線通信チャネルで、前記第1のコンテンツ受信装置に対する前記制御データ又は前記コンテンツデータの送信を維持しつつ、前記第2のコンテンツ受信装置に対する前記コンテンツデータの送信を開始する制御部と、を含む。
【0006】
本開示に係るコンテンツ配信方法は、第1通信部により、制御データ又はコンテンツデータの送信を第1のコンテンツ受信装置に対して第1の周波数帯の所与の無線通信チャネルで行うステップと、第2の通信部により、前記コンテンツデータの送信を第2のコンテンツ受信装置に対して行うステップと、前記第2の通信部により前記第2のコンテンツ受信装置に対して前記コンテンツデータを送信できないと判断する場合に、前記第1の通信部を用いて、既に確立されている前記無線通信チャネルで、前記第1のコンテンツ受信装置に対する前記制御データ又は前記コンテンツデータの送信を維持しつつ、前記第2のコンテンツ受信装置に対する前記コンテンツデータの送信を開始するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るコンテンツ再生システムの全体構成を示す図であり、第2の通信周波数帯でのデータ通信が利用できる状況を示す図である。
図2】コンテンツ配信装置及びコンテンツ受信装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】第2の通信周波数帯でのデータ通信が利用できる状況で、コンテンツ配信装置、第1のコンテンツ受信装置及び第2のコンテンツ配信装置で保持される通信設定データを模式的に示す図である。
図4】実施形態に係るコンテンツ再生システムの全体構成を示す図であり、第2の通信周波数帯でのデータ通信が利用できない状況を示す図である。
図5】第2の通信周波数帯でのデータ通信が利用できない状況で、コンテンツ配信装置、第1のコンテンツ受信装置及び第2のコンテンツ配信装置で保持される通信設定データを模式的に示す図である。
図6A】実施形態に係るコンテンツ再生システムの動作を示すシーケンス図である。
図6B】実施形態に係るコンテンツ再生システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、実施形態に係るコンテンツ再生システム1の全体構成図である。
【0009】
コンテンツ再生システム1は、コンテンツ配信装置100と、第1のコンテンツ受信装置100Aと、第2のコンテンツ受信装置100B、を含む。コンテンツ配信装置100、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bは、ネットワークに接続可能な通信機能を有しており、ルータ等のアクセスポイント20を介してコントローラ10、コンテンツサーバ30と通信可能な状態にある。
【0010】
コンテンツ配信装置100、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bが取り扱うコンテンツには、例えば音楽、音声、テキスト、画像及び映像等が含まれる。本実施形態においては、そのうちの音楽をコンテンツとして取り扱う。また、コンテンツ配信装置100、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bが、それぞれ別の部屋に配置されており、コンテンツ配信装置100から第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bに対して、コンテンツデータをストリーミング配信することにより、これら3台の装置により音楽再生を同期して行う例について説明する。すなわち、コンテンツ配信装置100、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bは、グループ化されており、それら装置が同一グループに属することがコンテンツ配信装置100やコントローラ10に記憶されている。このグループの構成を示すグループ情報は、例えばコントローラ10によりユーザが任意に設定・変更できるようにしてよい。
【0011】
コントローラ10は、例えばスマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータに、コンテンツ配信システム1に対応するアプリケーションをインストールすることにより実現されている。ただし、コントローラ10は専用機として実現されてもよい。いずれの場合も、コントローラ10はネットワークに接続可能な通信機能を有している。コントローラ10は、ユーザの操作に基づいて、コンテンツ配信装置100、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bに対し、それらを制御するための制御データを送信する。制御データは、例えば音楽再生の開始や停止を指示するコマンドや、再生楽曲を指定するコマンドであってよい。コントローラ10から送信された制御データは、ルータなどのアクセスポイント20を経由し、コンテンツサーバ30、コンテンツ配信装置100、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bに送信される。
【0012】
本実施形態においては、コントローラ10は、例えばタッチパネルを備えており、ユーザがタッチパネルを操作することにより、制御データがネットワークに送信される。なお、コントローラ10の記憶部には、上述のグループ情報として、コンテンツ配信装置100、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bの識別情報や、配置された部屋の識別情報などを記憶させておいてよい。
【0013】
コンテンツサーバ30は、コンテンツ配信装置100、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bが再生するコンテンツを保存し、それを管理するサーバであり、ネットワークに接続可能な通信機能を有している。コンテンツサーバ30は、例えば音楽ストリーミングサービスを提供するクラウドサーバであってよい。或いは、家庭内のNAS(Network Attached Storage)であってもよい。
【0014】
コンテンツサーバ30は、コントローラ10やコンテンツ配信装置100から受信した制御データに応じて、音楽コンテンツデータ(例えば音楽ストリーミングデータ)を配信する。音楽コンテンツデータは、アクセスポイント20を経由してコンテンツ配信装置100に配信される。なお、コンテンツサーバ30は、アクセスポイント20を経由して、第1のコンテンツ受信装置100Aや第2のコンテンツ受信装置100Bに対してコンテンツデータを配信してもよい。
【0015】
ネットワークは、無線LAN(Local Area Network)、有線LAN、WAN(Wide Area Network)などを含んでよい。すべての機器が家庭内に配置されていれば、ネットワークは無線LAN及び有線LANを含んで構成されてよい。コンテンツサーバ30がインターネット上に配置されている場合には、WANであるインターネットがアクセスポイント20とコンテンツサーバ30との間、すなわち通信経路15上に位置する。なお、無線LANには、Wi-Fi(Wireless-Fidelity、登録商標)が用いられてよい。
【0016】
無線LANで用いる通信周波数帯には、第1の通信周波数帯と、第2の通信周波数帯とが含まれている。第1の通信周波数帯は、制御データ及びコンテンツデータの通信に利用され、特にアクセスポイント20を介した通信において用いられる。また、第2の通信周波数帯は、主に高品質なコンテンツデータの配信に利用される。第2の通信周波数帯は、ここではアクセスポイント20を介さず、例えばWi-Fi Direct(登録商標)などの技術を用いて、コンテンツ配信装置100と第1のコンテンツ受信装置100Aとの間、又はコンテンツ配信装置100と第2のコンテンツ受信装置100Bとの間で、コンテンツデータを直接送受信するのに用いられる。図1においては、通信経路10,11,12及び13が、第1の通信周波数帯での無線通信によるものであり、通信経路14が、第2の通信周波数帯での無線通信によるものである。また、通信経路15は上述のようにインターネットを含んでいる。
【0017】
本実施形態においては、第1の通信周波数帯が2.4GHz帯であり、第2の通信周波数帯が5GHz帯である例について説明する。第1の通信周波数帯は、第2の通信周波数帯よりも低く、電波到達距離が長い。一方、第2の通信周波数帯である5GHz帯は、2.4GHz帯の電磁波を使用して食品の加熱・調理を行う電子レンジが使用されている場合であっても、電子レンジから漏れた電磁波がノイズとなることなく、通信を行うことができるというメリットがある。一方で、5GHz帯は、第1の通信周波数帯と比較して電波到達距離が短い。また、5GHz帯の電波は相対的に直進性が高い。このため、例えば、コンテンツ配信装置100から第2のコンテンツ受信装置100Bに対して、第2の通信周波数帯を用いてコンテンツデータの配信を行う場合、コンテンツ配信装置100と第2のコンテンツ受信装置100Bとの距離が離れている場合や、コンテンツ配信装置100と第2のコンテンツ受信装置100Bとの間に障害物が介在する場合には、コンテンツデータの配信を良好に行うことが困難となる可能性がある。また、コンテンツ配信装置100から第2のコンテンツ受信装置100Bへのコンテンツデータの配信を行っている最中に、コンテンツ配信装置100または第2のコンテンツ受信装置100Bの配置場所を移動させた場合には、コンテンツ配信装置100からのコンテンツデータの配信が途中で切断されてしまう可能性がある。
【0018】
コンテンツ配信装置100から第2のコンテンツ受信装置100Bに対するコンテンツデータの送信には、電子レンジなどの他の電子機器から漏れた電磁波がノイズとなりにくい、第2の通信周波数帯を用いることが望ましい。しかし、この第2の通信周波数帯を用いたコンテンツデータの送受信を行っている最中に、コンテンツ配信装置100と第2のコンテンツ受信装置100Bとの距離が離れてしまった場合、又はなんらかの障害物が介在するようになってしまった場合に、コンテンツデータの配信に用いる周波数帯を第2の通信周波数帯から第1の通信周波数帯に切り替えて、データ配信を継続することが望ましい。
【0019】
ここで、コンテンツ配信装置100のハードウェア構成について、図2を用いて説明する。図2は、コンテンツ配信装置100のハードウェア構成例を示す図である。なお、ここでは、コンテンツ配信装置100のハードウェア構成例を図示するが、第2のコンテンツ受信装置100Bも同一構成である。また、第1のコンテンツ受信装置100Aは、第2無線LAN通信部102を備えない点を除き、コンテンツ配信装置100と同一のハードウェア構成を有する。
【0020】
コンテンツ配信装置100は、オーディオを再生するオーディオ機器であり、コンピュータを中心に構成されている。すなわち、バスに接続されたCPU(Central Processing Unit)150a、メモリ150b、第1無線LAN通信部101、第2無線LAN通信部102、有線LAN通信部103及びコンテンツ再生部151を有している。CPU150aとメモリ150bとで制御部150が構成される。コンテンツ再生部151には外部のスピーカ160が接続されている。ただし、コンテンツ再生部151がスピーカ160を内蔵してもよい。
【0021】
メモリ150bには本実施形態に係る制御プログラムが格納されており、CPU150aはこの制御プログラムを実行することにより、コンテンツ配信装置100の各部を制御する。この制御プログラムはプログラム配信装置100の出荷時にメモリ150bに格納されてもよいし、光学的、磁気的等の各種記録媒体から出荷後にメモリ150bにインストールされてもよい。或いは、制御プログラムは出荷後にインターネットからメモリ150bにダウンロードされてもよい。なお、メモリ150bには、他のプログラムやデータも格納されてよい。またメモリ150bには、CPU150aの作業領域も確保される。
【0022】
第1無線LAN通信部101は、上述した第1の通信周波数帯で無線通信を行う通信モジュールであり、パケットの形態で、アクセスポイント20を介して制御データ及びコンテンツデータの送受信を行う。具体例としては、第1無線LAN通信部101は、コントローラ10から送信された制御データを、アクセスポイント20を介して受信する。また、第1無線LAN通信部101は、コンテンツサーバ30から送信されるコンテンツデータを、アクセスポイント20を介して受信する。また、第1無線LAN通信部101は、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bに対してコンテンツデータ及び制御データの送信を行うことができる。第1無線LAN通信部101は、例えば通信規格IEEE802.11g、IEEE802.11nに対応しており、2.4GHz帯である第1の通信周波数帯を用いた通信を行うことができる。第1の通信周波数帯における使用無線通信チャネルはアクセスポイント20により設定される。たとえば、周辺の電波状況をチェックし、周辺のアクセスポイントにより使用されていない無線通信チャネルを選択する。あるいは、手動により使用無線通信チャネルが選択されてもよい。
【0023】
また、第1無線LAN通信部101は、特にCODEC101aを備えており、コンテンツデータに可逆圧縮又は不可逆圧縮を施し、圧縮済みのコンテンツデータをパケット形式で送信することができる。また、圧縮済みのコンテンツデータを受信した場合、CODEC101aにより展開することができる。すなわち、CODEC101aは、コンテンツデータを可逆圧縮形式で送受信する動作モードと、不可逆圧縮形式で送受信する動作モードと、を有しており、制御部150によりいずれかの動作モードを設定できるようになっている。
【0024】
第2無線LAN通信部102は、上述した第2の通信周波数帯で無線通信を行う通信モジュールであり、パケットの形態で、アクセスポイント20を介さず、第1のコンテンツ受信装置100Aや第2のコンテンツ受信装置100Bとの間で、直接、コンテンツデータの送受信を行う。第2無線LAN通信部102は、コンテンツデータ送受信にのみ用いられ、制御データの送受信には用いられない。これにより、高品質のコンテンツデータ配信を実現できる。第2無線LAN通信部102は、例えば通信規格IEEE802.11a、IEEE802.11acに対応しており、5GHz帯である第2の通信周波数帯を用いた通信を行うことができる。第2の通信周波数帯における使用無線通信チャネルは第2無線LAN通信部102により設定される。たとえば、周辺の電波状況をチェックし、周辺のアクセスポイントにより使用されていない無線通信チャネルを選択する。あるいは、手動により使用無線通信チャネルが選択されてもよい。なお、ここでは第2無線LAN通信部102を第1無線LAN通信部101とは別体のハードウェアとしたが、1つのハードウェアで第1無線LAN通信部101と第2無線LAN通信部102の機能を実現してもよい。例えば、1つの通信ハードウェアで、第1の通信周波数帯での無線通信と、第2の通信周波数帯での無線通信と、を時分割で行う構成としてもよい。
【0025】
有線LAN通信部103は、ケーブルコネクタを有し、コンテンツ配信装置100を家庭内の有線LANネットワークに接続することができる。これにより、他のネットワーク装置との間でLANケーブルを用いた有線通信を行うことができる。例えば、第2のコンテンツ受信装置100Bも有線LANネットワークに接続されていれば、有線LAN通信部103により、コンテンツ配信装置100から第2のコンテンツ受信装置100Bにコンテンツデータを有線送信できる。
【0026】
制御部150は、他のコンテンツ受信装置にコンテンツデータを送信する際、第1無線LAN通信部101、第2無線LAN通信部102、有線LAN通信部103のうち、どれを用いるかを決定する。具体的には、有線LAN通信部103、第2無線LAN通信部102、第1無線LAN通信部101の順で、そのうち1つをコンテンツデータの送信手段として選択する。有線LAN通信は、無線LAN通信に比べて信頼性が高く、伝送速度が速いからである。また2.4GHz帯と5GHz帯とを比較すれば、上述のように、5GHz帯の方が低ノイズであり、しかもアクセスポイント20を経由しないので、レイテンシが低く、またアクセスポイント20を利用する他の無線機器からの影響も受けないからである。このような理由から、有線LAN通信部103及び第2無線LAN通信部102ではコンテンツデータを非圧縮形式で配信する。一方、第1無線LAN通信部101ではコンテンツデータを圧縮形式で配信する。なお、後述するように、第1無線LAN通信部101は、第1の通信周波数帯の選択された通信チャネルにおける通信トラフィックに応じて、可逆圧縮形式か、品質は劣化するが圧縮率がより高い(データ量がより少ない)不可逆圧縮形式かを選択する。
【0027】
ここでは、コンテンツ配信装置100も第2のコンテンツ受信装置100Bも有線LANネットワークに接続されておらず、図1の通信経路15に示すように、コンテンツ配信装置100から第2のコンテンツ受信装置100Bに、第2無線LAN通信部102によりコンテンツデータが直接配信されるものとする。また、制御データは第1無線LAN通信部101により、通信経路12、アクセスポイント20及び通信経路13を経由して送受信されるものとする。
【0028】
また、第1のコンテンツ受信装置100Aは、上述のように第2無線LAN通信部102に相当する通信モジュールを備えていない。また、第1のコンテンツ受信装置100Aは有線LANネットワークに接続されていないものとする。このため、コンテンツ配信装置100は、第1のコンテンツ受信装置100Aに対し、通信経路12、アクセスポイント20及び通信経路11を経由して、第1無線LAN通信部101によりコンテンツデータを配信する。また、第1のコンテンツ受信装置100Aとの間で、第1無線LAN通信部101により、通信経路12、アクセスポイント20及び通信経路11を経由して制御データを送受信する。
【0029】
図3は、図1に示す通信状況で、コンテンツ配信装置100、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bに保持される通信設定データを模式的に示している。コンテンツ配信装置100は、図3(a)に示すように、コンテンツデータの配信先の1つである第1のコンテンツ受信装置100Aに対して、第1無線LAN通信部101を用いて、可逆圧縮形式のコンテンツデータを送信すること、配信先の他の1つである第2のコンテンツ受信装置100Bに対して、第2の無線LAN通信部102を用いて、非圧縮形式のコンテンツデータを送信すること、を記憶している。また、第1のコンテンツ受信装置100Aは、図3(b)に示すように、コンテンツ配信装置100から、第1の無線LAN通信部101を用いて可逆圧縮形式のコンテンツデータを受信することを記憶している。また、第2のコンテンツ受信装置100Bは、図3(c)に示すように、コンテンツ配信装置100から、第2の無線LAN通信部102を用いて非圧縮形式のコンテンツデータを受信することを記憶している。
【0030】
以上の状況において、コンテンツ配信装置100と第2のコンテンツ受信装置100Bとの距離が離れてしまった場合や、コンテンツ配信装置100と第2のコンテンツ受信装置100Bとの間に障害物が介在してしまった場合など、第2の通信周波数帯による通信が困難ないし不可能となる。コンテンツ配信装置100の制御部150は、コンテンツデータの配信中、第2のコンテンツ受信装置100Bに対し、エコー要求を送信しており、これに応じたエコー応答が所定時間内に受信できなければ、エコー要求を再送する。そして、この再送に応じたエコー応答も所定時間内に受信できなければ、第2の通信周波数帯における通信ができなくなったと判断し、通信を中断する。なお、上述のように第2の通信周波数帯における通信が困難となった状況では、通信品質の各種指標も悪化する。例えば、第2無線LAN通信部102が検知する受信信号レベルも低下し、第2無線LAN通信部102が検知する受信エラーも増加する。また、SN比(信号対干渉比)も低下する。そこで、制御部150は、受信レベルが所定値以下となった場合、受信エラーが所定回数以上連続した場合、SN比が所定値以下となった場合など、通信品質の指標が所定条件を充足する場合に、第2の通信周波数帯における通信ができなくなったと判断し、通信を中断してもよい。第2の通信周波数帯における通信を中断すると、コンテンツ配信装置100の制御部150は、第2のコンテンツ受信装置100Bに対するコンテンツデータの送信に、第1無線LAN通信部101を用いることを決定する。この場合、第1無線LAN通信部101を用いた第1のコンテンツ受信装置100Aとの通信は維持する。
【0031】
その際、制御部150は、第1の通信周波数帯において既に設定済みである周波数チャネルを、第2のコンテンツ受信装置100Bに対するコンテンツデータの送信に用いる。上述のように第1のコンテンツ受信装置100Aに対しては、第1無線LAN通信部101はパケットの形態でコンテンツデータや制御データを送信している。また、第2のコンテンツ受信装置100Bに対しても、第1無線LAN通信部101はパケットの形態で制御データを送信している。そこで、制御部150は、第1無線LAN通信部101に対して、第2のコンテンツ受信装置100Bに対するコンテンツデータを送信し、第1無線LAN通信部101はこのコンテンツデータをパケット化し、それらパケットを第2のコンテンツ受信装置100Bに宛てて送信する。第1無線LAN通信部101は、第1のコンテンツ受信装置100Aに対する制御データ及びコンテンツデータから生成されるパケット、第2のコンテンツ受信装置100Bに対する制御データ及びコンテンツデータから生成されるパケットを所定順で送信する。このように第1無線LAN通信部101はパケット形式でデータ送信するので、同じ通信チャネルで通信が既に行われていても、第2のコンテンツ受信装置100Bに対するコンテンツデータの送信を速やかに開始できる。すなわち、コンテンツ配信装置100、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bにより、アクセスポイント20に設定された無線通信チャネルが共有される。もちろん、アクセスポイント20の同無線通信チャネルは、図示しない他の無線機器も使用している場合がある。
【0032】
このように、アクセスポイント20の無線通信チャネルは複数の無線機器により共有されているので、ネットワーク遅延が発生する可能性がある。そして、こうしたネットワーク遅延によりコンテンツの再生音が途切れる可能性がある。そのため、コンテンツ配信装置100の制御部150が、第2のコンテンツ受信装置100Bへのコンテンツデータの送信に使用する周波数帯を、第2の通信周波数帯から第1の通信周波数帯に切り替えるに際し、第2のコンテンツ受信装置100Bへのコンテンツデータのデータ方式を、非圧縮形式から圧縮形式に切り替える。このようにすることにより、通信量を削減することができ、ネットワーク遅延の発生を抑制することができる。
【0033】
ここで、コンテンツ配信装置100の制御部150は、第1の周波数帯の無線通信チャネルでの通信量の指標に応じて、圧縮形式として、可逆圧縮形式を用いるのか不可逆圧縮形式を用いるのかについて決定する。たとえば、通信量の指標が閾値未満の場合には可逆圧縮形式を用い、閾値以上の場合には音質は低下するものの圧縮率がより高い不可逆圧縮形式を用いる。通信量の指標は第1の周波数帯の無線通信チャネルにおける通信内容を第1無線LAN通信部101及び制御部150により監視することで取得できる。たとえば、その指標として、第1の周波数帯の無線通信チャネルで単位時間あたりに送受信される総パケット数を採用してよい。また、所定時間内に送受信されるパケットの宛先の数、すなわちアクセスポイント20の通信相手となる無線機器の台数を採用してもよい。或いは、コンテンツ配信装置100から第1の通信部101によりコンテンツデータを送信しているコンテンツ受信装置の台数(ここでは最大2台)を採用してもよい。
【0034】
また制御部150は、第1のコンテンツ受信装置100Aに対して送信するコンテンツデータについても、そのデータ形式を、可逆圧縮形式から、より圧縮率の高い不可逆圧縮形式に変更してよい。たとえば、上述の通信量の指標が閾値未満の場合には可逆圧縮形式を引き続き用い、閾値以上の場合には音質は低下するものの圧縮率がより高い不可逆圧縮形式に変更する。こうすることにより、ネットワーク遅延が発生する可能性をより低減することができる。
【0035】
図4は、図1に示す状況の後、コンテンツ配信装置100と第2のコンテンツ受信装置100Bとの間で第2の通信周波数帯でのデータ通信が利用できなくなった状況を示している。図1の状況においては、第2のコンテンツ受信装置100Bに対して、第2無線LAN通信部102により非圧縮形式でコンテンツデータが配信されていたのに対して、図4の状況では、第1無線LAN通信部101により不可逆圧縮形式で配信される。可逆圧縮形式ではなく、不可逆圧縮形式が適用されるのは、コンテンツ配信装置100からの配信先が第1のコンテンツ受信装置100Aと第2のコンテンツ受信装置100Bの2台となったからである。
【0036】
また、図1の状況においては、第1のコンテンツ受信装置100Aに対して、第1無線LAN通信部101により可逆圧縮形式でコンテンツデータが配信されていたのに対して、図4の状況では、第1無線LAN通信部101により不可逆圧縮形式で配信される。可逆圧縮形式から不可逆圧縮形式に変更となったのは、コンテンツ配信装置100からの配信先が第1のコンテンツ受信装置100Aと第2のコンテンツ受信装置100Bの2台となったからである。
【0037】
図5は、図4に示す状況で、コンテンツ配信装置、第1のコンテンツ受信装置及び第2のコンテンツ配信装置で保持される通信設定データを模式的に示している。コンテンツ配信装置100は、図5(a)に示すように、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bに対して、第1無線LAN通信部101を用いて、不可逆圧縮形式のコンテンツデータを送信することを記憶している。また、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bは、図5(b)(c)にそれぞれ示すように、コンテンツ配信装置100から、第1の無線LAN通信部101を用いて不可逆圧縮形式のコンテンツデータを受信することを記憶している。
【0038】
コンテンツ再生部151は、デジタルアナログ変換器151a及びアンプ151bを有している。デジタルアナログ変換器151aには、非圧縮形式のコンテンツデータが入力され、そこで該コンテンツデータからアナログ楽音信号が生成される。生成されるアナログ楽音信号はアンプ151bにより増幅され、スピーカ160から楽音が出力される。制御部150は、第1無線LAN通信部101、第2無線LAN通信部102又は有線LAN通信部103を用いて、コンテンツサーバ30や他のコンテンツ配信装置100等からコンテンツデータを受信し、コンテンツ再生部151に受信したコンテンツデータを入力してよい。また、制御部150は、コンテンツ配信装置100に挿入された光ディスクやUSB(Universal Serial Bus:登録商標)などの記憶媒体(不図示)からコンテンツデータを取得してもよく、ハードディスクなどのコンテンツ配信装置100の内蔵記憶デバイス(不図示)からコンテンツデータを取得してもよい。こうして取得されるコンテンツデータもコンテンツ再生部151に入力され、スピーカ160からその楽音が出力される。
【0039】
次に、コンテンツ再生システム1の具体的な動作について説明する。
【0040】
図6A及び図6Bは、コンテンツ再生システム1の動作を示すシーケンス図である。これらの図は、コンテンツ配信装置100から、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bに対して、コンテンツデータをストリーミング配信する動作を示している。配信されるコンテンツデータは、コンテンツ配信装置100に予め記憶されていてもよいし、コンテンツ配信装置100がリアルタイムにコンテンツサーバ30から受信してもよい。
【0041】
まず、コンテンツ配信装置100の制御部150は、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bのそれぞれに対して、通信部及びデータ形式の設定要求を送信する(S101,S102)。コンテンツ配信装置100が、未だコンテンツ受信装置100A及び100Bにコンテンツデータを配信していない場合には、それらコンテンツ受信装置100A及び100Bがどのような通信部を実装しているかについて、コンテンツ配信装置100は情報を有していない。そこで、初回の設定要求は、通信部の指定を含まない。また、データ形式として非圧縮又は可逆圧縮を要求する。
【0042】
本実施形態においては、第1のコンテンツ受信装置100Aは、第1無線LAN通信部101及び有線LAN通信部103を備えているが、有線LANには接続されておらず、第1無線LAN通信部101のみが利用可能とする。また、第2のコンテンツ受信装置100Bは、第1無線LAN通信部101、第2無線LAN通信部102及び有線LAN通信部103のすべてを備えているが、有線LANには接続されておらず、第1無線LAN通信部101及び第2無線LAN通信部102だけが利用可能とする。
【0043】
コンテンツ配信装置100から設定要求を受信した第1のコンテンツ受信装置100Aは、自機で利用可能な通信部のうち優先順位が最も高い通信部として、第1無線LAN通信部101を選択する。また、第1無線LAN通信部101で利用可能なデータ形式のうち、最も優先順位が高い可逆圧縮形式を選択する(S103)。そして、S103で選択した通信部及びデータ形式から、図3(b)に示す通信設定データを生成し、それをメモリ150bに保存するとともに、該通信設定データに従ってCODEC101aを可逆圧縮モードに設定する(S104)。その後、設定完了通知を第1無線LAN通信部101によりコンテンツ配信装置100に送信する(S105)。この設定完了通知には、第1のコンテンツ受信装置100Aにおいて第1無線LAN通信部101及び可逆圧縮形式が選択されたことを示す情報が含まれる。
【0044】
また、コンテンツ配信装置100から設定要求を受信した第2のコンテンツ受信装置100Bは、自機で利用可能な通信部のうち優先順位が最も高い通信部として、第2無線LAN通信部102を選択する。また、第2無線LAN通信部101で利用可能な唯一のデータ形式として、非圧縮形式を選択する(S106)。そして、S106で選択した通信部及びデータ形式から、図3(c)に示す通信設定データを生成し、それをメモリ150bに保存する(S107)。その後、設定完了通知を第1無線LAN通信部101によりコンテンツ配信装置100に送信する(S108)。この設定完了通知には、第2のコンテンツ受信装置100Bにおいて第2無線LAN通信部102及び非圧縮形式が選択されたことを示す情報が含まれる。
【0045】
コンテンツ配信装置100の制御部150は、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bから受信した設定完了通知に基づき、それら装置にコンテンツデータを送信するのに用いる通信部及びデータ形式を決定する(S109)。具体的には、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bから受信した設定完了通知に基づき、第1無線LAN通信部101によりコンテンツデータを受信するコンテンツ受信装置が何台かを判断する。第1無線LAN通信部101によりコンテンツデータを受信するコンテンツ受信装置の台数が閾値(ここでは2台とする)未満であれば、可逆圧縮形式を選択する。また、第1無線LAN通信部101によりコンテンツデータを受信するコンテンツ受信装置の台数が閾値以上であれば、不可逆圧縮形式を選択する。この場合には、第1無線LAN通信部101によりコンテンツデータを受信する各コンテンツ受信装置に対して、データ形式として不可逆圧縮形式を採用する旨の要求を送信する。
【0046】
ここでは、第1無線LAN通信部101によりコンテンツデータを受信するのが第1のコンテンツ受信装置100Aの1台のみであるので、該第1のコンテンツ受信装置100Aに送信するコンテンツデータの形式として可逆圧縮形式を選択する。こうして決定した内容及び各コンテンツ受信装置から受信した設定完了通知に基づき、図3(a)に示す通信設定データを生成し、メモリ150bに保存する。さらに、コンテンツ配信装置100のCODEC101aを可逆圧縮モードに設定する(S110)。
【0047】
次にコンテンツ配信装置100は、通信設定データに従って、第1のコンテンツ受信装置100Aに対して、第1無線LAN通信部101により可逆圧縮形式のコンテンツデータを送信する(S111)。さらに、コンテンツ配信装置100は、通信設定データに従って、第2のコンテンツ受信装置100Bに対して、第2無線LAN通信部102により非圧縮形式のコンテンツデータを送信する(S112)。
【0048】
コンテンツ配信装置100は、事前に、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bの再生遅延時間を計測し、それらのうち長い方を最大遅延時間として保存している。そこで、コンテンツ配信装置100は、コンテンツデータの配信後、この最大遅延時間が経過してからコンテンツデータの楽音を再生出力している。また、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bのうち、再生遅延時間が短い方も、最大遅延時間が経過するタイミングまで待機してから、コンテンツデータの楽音を再生出力している。さらに、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bのうち、再生遅延時間が長い方は、コンテンツデータを受信して直ちにコンテンツデータを再生出力している。こうして、コンテンツ配信装置100、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bにより、コンテンツデータを同期再生できる。
【0049】
コンテンツ配信装置100は、コンテンツデータの配信を行いながら、第1のコンテンツ受信装置100Aに対して、定期的に第1無線LAN通信部101によりエコー要求を送信する(S113)。エコー要求を受信した第1のコンテンツ受信装置100Aは、コンテンツ配信装置100に対してエコー応答を第1無線LAN通信部101により返信する(S114)。エコー要求の送信から所定時間以内にエコー応答を受信すれば、コンテンツ配信装置100の制御部150は、第1無線LAN通信部101による第1のコンテンツ受信装置100Aとの通信が継続可能と判断する。
【0050】
同様に、コンテンツ配信装置100は、コンテンツデータの配信を行いながら、第2のコンテンツ受信装置100Bに対しても、定期的に第2無線LAN通信部102によりエコー要求を送信する(S115)。エコー要求を受信した第2のコンテンツ受信装置100Bは、コンテンツ配信装置100に対してエコー応答を第2無線LAN通信部102により返信する(S116)。エコー要求の送信から所定時間以内にエコー応答を受信すれば、コンテンツ配信装置100の制御部150は、第2無線LAN通信部102による第2のコンテンツ受信装置100Bとの通信が継続可能と判断する。
【0051】
しかし、例えばコンテンツ配信装置100と第2のコンテンツ受信装置100Bとの距離が離れた場合等、第2の通信周波数帯を用いた通信に何らかの不具合が生じ、コンテンツ配信装置100が、第2のコンテンツ受信装置100Bからのエコー応答をエコー要求の送信から所定時間以内に受信しなかった場合、エコー要求を再送信する(S117)。このエコー要求の再送信から所定時間以内にエコー応答を受信しない場合、コンテンツ配信装置100は、第2のコンテンツ受信装置100Bとの通信ができない判断する(S118)。ここでは、エコー応答の有無により、第2無線LAN通信部102による第2のコンテンツ受信装置100Bとの通信の可否を判断したが、上述のように各種の通信品質の指標が所定条件を満足するか否かにより判断してもよい。
【0052】
この場合、コンテンツ配信装置100の制御部150は、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bのそれぞれに対して、使用する通信部及びコンテンツデータを配信する際のデータ形式を再度決定する(S119)。
【0053】
具体的には、まずコンテンツ配信装置100の制御部150は、第2のコンテンツ受信装置100Bで利用可能な通信部のうち、次の優先順位である第1無線LAN通信部101により、第2のコンテンツ受信装置100Bに対してコンテンツデータを配信することを決定する。
【0054】
次に、第1無線LAN通信部101によりコンテンツ配信装置100とコンテンツデータを配信するコンテンツ受信装置を計数する。この事例では、第1無線LAN通信部101によりコンテンツデータを受信するのが、第1のコンテンツ受信装置100Aと第2のコンテンツ受信装置100Bの2台であり、閾値(ここでは2台とする)以上であるので、不可逆圧縮形式を選択する。そして、コンテンツ配信装置100の制御部150は、第1のコンテンツ受信装置100Aに対して、第1無線LAN通信部101によりコンテンツデータを受信すること、データ形式として不可逆圧縮形式を採用することを要求する(S120)。
【0055】
第1のコンテンツ受信装置100Aでは、この要求に従って図5(b)に示す通信設定データを生成し、それをメモリ150bに保存するとともに、該通信設定データに従ってCODEC101aを不可逆圧縮モードに設定する(S121)。その後、設定完了通知を第1の無線LAN通信部101によりコンテンツ配信装置100に送信する(S122)。この設定完了通知は、第1無線LAN通信部101によりコンテンツデータを受信すること、データ形式として不可逆圧縮形式を採用することの確認が含まれる。
同様に、コンテンツ配信装置100の制御部150は、第2のコンテンツ受信装置100Bに対して、第1無線LAN通信部101によりコンテンツデータを受信すること、データ形式として不可逆圧縮形式を採用することを要求する(S123)。
【0056】
第2のコンテンツ受信装置100Bでは、この要求に従って図5(c)に示す通信設定データを生成し、それをメモリ150bに保存するとともに、該通信設定データに従ってCODEC101aを不可逆圧縮モードに設定する(S124)。その後、設定完了通知を第1の無線LAN通信部101によりコンテンツ配信装置100に送信する(S125)。この設定完了通知にも、第1無線LAN通信部101によりコンテンツデータを受信すること、データ形式として不可逆圧縮形式を採用することの確認が含まれる。
また、第2のコンテンツ受信装置100Bは、受信した通信設定データをそのメモリ150bに保存するとともに、受信した通信設定データに従ってCODEC101aを不可逆圧縮モードに設定する(S120)。その後、設定完了通知を第1の無線LAN通信部101によりコンテンツ配信装置100に送信する(S121)。
【0057】
第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bから設定完了通知を受信すると、それら通知に基づき、図5(a)に示す通信設定データを生成し、メモリ150bに保存する。さらに、コンテンツ配信装置100のCODEC101aを不可逆圧縮モードに設定する(S126)。
【0058】
その後、コンテンツ配信装置100は、通信設定データに従って、第1のコンテンツ受信装置100Aに対して、第1無線LAN通信部101により不可逆圧縮形式のコンテンツデータを送信する(S127)。さらに、コンテンツ配信装置100は、通信設定データに従って、第2のコンテンツ受信装置100Bに対して、第1無線LAN通信部101により不可逆圧縮形式のコンテンツデータを送信する(S128)。コンテンツデータの送信に際して、第1の通信周波数帯で使用する通信チャネルは再設定せず、既に設定済みのものを継続して用いる。これにより、第1の通信周波数帯での第2のコンテンツ受信装置100Bに対するコンテンツデータの配信を速やかに開始できる。また、第1のコンテンツ受信装置100Aに対するコンテンツデータの配信を中断せずに済むか、或いは中断時間を最小化できる。
【0059】
以上説明したコンテンツ再生システム1によれば、コンテンツ配信装置100から第2のコンテンツ受信装置100Bに対するコンテンツデータ配信時に用いる通信周波数帯を変更する際、制御データの通信に用いている第1の通信周波数帯における周波数チャネルを、そのままコンテンツデータの通信に用いる。そうすることにより、新たなチャネルサーチを行っている間のコンテンツデータ配信の中断を回避し、或いは中断時間を最小化することができる。
【0060】
また、コンテンツ配信装置100は、第1の周波数帯でコンテンツデータを配信するコンテンツ受信装置の台数に応じて、圧縮率の異なる複数の圧縮形式の中から実際に第1のコンテンツ受信装置100Aや第2のコンテンツ受信装置100Bとの通信で適用するものを選択するので、第1の周波数帯の周波数チャネルの通信トラフィックを下げることができる。
【0061】
なお、コンテンツ配信装置100、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bは、有線LAN通信部103が利用可能でない場合には、第1無線LAN通信部101によりファームウェアをインターネットからダウンロードする。そこで、それら第1無線LAN通信部101によるコンテンツデータの通信量に応じて、最新ファームウェアのダウンロードタイミングを調整してよい。
【0062】
具体的には、コンテンツ配信装置100、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bの制御部150が、第1の周波数帯の通信チャネルを介してファームウェアアップデートを行う場合、同周波数チャネルでコンテンツデータの受信を行うコンテンツ受信装置の台数等、同周波数チャネルの使用状況と、更新しようとするファームウェアの重要度に応じて、当該ファームウェアのアップデートを即時に行うのか、所定時間経過後に行うのか、などの決定を行う構成としてよい。例えば、重要度の高いファームウェアアップデートであれば、コンテンツ受信装置の台数が規定値以上であったとしても、ファームウェアのアップデートを優先して即時に行う。逆に、重要度の低いファームウェアアップデートであれば、コンテンツ受信装置の台数が規定値未満であった場合のみ、即時にファームウェアのアップデートを行い、規定値以上であった場合には、所定時間経過後にアップデートを行ってよい。こうすれば、ファームウェアダウンロードに起因してネットワーク遅延が発生することを抑制できる。
【0063】
また、ファームウェアアップデートのタイミングの判断は、第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bの制御部150が行ってもよいが、コンテンツ配信装置100の制御部150が、それらを代表して行ってもよい。この場合、判断結果は、コンテンツ配信装置100から第1のコンテンツ受信装置100A及び第2のコンテンツ受信装置100Bに送信されてよい。
【0064】
また、以上の実施形態では、コンテンツ配信装置100と第2のコンテンツ受信装置100Bとの間で、第2無線LAN通信部102による通信を第1無線LAN通信部101による通信に切り替えたが、有線LAN通信部103による通信を第1無線LAN通信部101による通信に切り替える場合も、同様にして、コンテンツ配信装置100と第1のコンテンツ受信装置100Aとの間の既存の通信を維持してよい。
【0065】
また、コンテンツ配信装置100又は第2のコンテンツ受信装置100Bが、第2無線LAN通信部102による通信の可否を定期的に判断し、通信可能となった場合には、第1無線LAN通信部101による通信から第2無線LAN通信部102による通信に切り替えてよい。第2無線LAN通信部102による通信の可否は、例えばコンテンツ配信装置100から送信したエコー要求に対する第2コンテンツ受信装置100Bからのエコー応答の有無、コンテンツ配信装置100及び/又は第2のコンテンツ受信装置100Bにおいて取得される通信品質の指標が所定条件を満足するか否かにより、判断することができる。
【0066】
また、グループの構成が変更となった場合に、第2無線LAN通信部102による通信の可否を判断し、通信可能であれば、コンテンツ配信装置100と第2のコンテンツ受信装置100Bの間で、第2無線LAN通信部1002による通信を行ってよい。また、グループの構成が一旦解除され、同じ構成のグループが再度設定された場合にも、第2無線LAN通信部102による通信の可否を判断し、通信可能であれば、コンテンツ配信装置100と第2のコンテンツ受信装置100Bの間で、第2無線LAN通信部1002による通信を行ってよい。
【0067】
また、以上の実施形態では、第2無線LAN通信部102によるコンテンツデータ配信の開始後、通信状況に応じて、第2無線LAN通信部102による通信を第1無線LAN通信部101による通信に切り替えたが、コンテンツデータ配信を開始前、通信状況を調べ、その通信状況に応じて、第2無線LAN通信部102を用いることなく、第1無線LAN通信部101によりコンテンツデータ配信を開始してよい。

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B