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特許7067573粘着剤、粘着シート、および積層体およびこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】粘着剤、粘着シート、および積層体およびこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20220509BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220509BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220509BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220509BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/06
C09J7/38
B32B27/00 M
B32B27/40
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020001500
(22)【出願日】2020-01-08
(62)【分割の表示】P 2019103957の分割
【原出願日】2017-12-14
(65)【公開番号】P2020059860
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 恵子
(72)【発明者】
【氏名】田邉 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】戸根 嘉孝
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 秀平
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-176068(JP,A)
【文献】特開2016-186062(JP,A)
【文献】特開2017-179084(JP,A)
【文献】特開2015-091922(JP,A)
【文献】特開2001-216844(JP,A)
【文献】特開2001-192636(JP,A)
【文献】特許第6536664(JP,B2)
【文献】特許第6645607(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00,27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブタジエン変性ポリオールを含むポリオール(a)とポリイソシアネート(b)との反応物である重量平均分子量が10万~50万のウレタンポリオール(A)、イソシアネート硬化剤(B)、酸化防止剤(D)、帯電防止剤(E)および多官能ポリオール(F)を含み、
ウレタンポリオール(A)100質量部に対して、酸化防止剤(D)を0.5~10質量部含有し、
多官能ポリオール(F)は、数平均分子量が500~6000であり、且つ一分子中の水酸基数が3以上である粘着剤。
【請求項2】
前記帯電防止剤(E)は、25℃で液体または固体である請求項1に記載の粘着剤。
【請求項3】
さらに、可塑剤(C)を含む、請求項1または2に記載の粘着剤。
【請求項4】
前記ウレタンポリオール(A)100質量部に対して、前記可塑剤(C)を0.1~100質量部含む、請求項3に記載の粘着剤。
【請求項5】
前記ウレタンポリオール(A)100質量部に対して、前記多官能ポリオール(F)を2~50質量部含む、請求項1~4いずれか1項に記載の粘着剤。
【請求項6】
前記多官能ポリオール(F)は、末端に一級水酸基を有する、請求項1~5いずれか1項に記載の粘着剤。
【請求項7】
前記ウレタンポリオール(A)100質量部に対して、前記イソシアネート硬化剤(B)を0.1~30質量部含む、請求項1~のいずれか1項に記載の粘着剤。
【請求項8】
ポリオール(a)の数平均分子量が、200~6,000である請求項1~いずれか1項に記載の粘着剤。
【請求項9】
基材、および請求項1~いずれか1項に記載の粘着剤の硬化物である粘着層を備える、粘着シート。
【請求項10】
透明導電フィルム、ガラス、アクリル板、ポリカーボネート板、オレフィン板、および無機バリア層からなる群より選択される部材、および請求項に記載の粘着シートを備える、積層体。
【請求項11】
前記無機バリア層が窒化ケイ素である請求項1に記載の積層体。
【請求項12】
ポリブタジエン変性ポリオールを含むポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させて、重量平均分子量が10万~50万のウレタンポリオール(A)を得、
ウレタンポリオール(A)、イソシアネート硬化剤(B)、酸化防止剤(D)、帯電防止剤(E)および多官能ポリオール(F)を含む粘着剤を調製し、
酸化防止剤(D)は、ウレタンポリオール(A)100質量部に対して0.5~10質量部含有させ、
多官能ポリオール(F)は、数平均分子量が500~6000であり、一分子中の水酸基数が3以上である、
粘着剤の製造方法。
【請求項13】
基材上に、請求項1~いずれか1項に記載の粘着剤を塗工して塗工層を得、
前記塗工層を硬化して硬化物である粘着層を形成する、粘着シートの製造方法。
【請求項14】
透明導電フィルム、ガラス、アクリル板、ポリカーボネート板、オレフィン板、および無機バリア層からなる群より選択される部材と、請求項に記載の粘着シートを積層する、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性を有する粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネセンス(OLED)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)、フラットパネルディスプレイとタッチパネルとを組み合わせたタッチパネルディスプレイ(TSP)等の表示装置は、テレビ(TV)、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯情報端末等に広く使用されている。
【0003】
従来から表示装置に使用される光学部材を傷や埃の付着等から保護するために表面保護シートが広く用いられてきた。
【0004】
表面保護シートの粘着層には、ウレタン樹脂を含む粘着剤(以下、ウレタン粘着剤という)がガラスを代表とする各種被着体に対して、適度な粘着力と再剥離性に優れていることから使用されている。加えて被着体から表面保護シートを剥離する際に発生する静電気は、FPDやTSPの内部の電子機器を破壊する場合があるため帯電防止性能が必要になることがある。
【0005】
特許文献1には、水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、水酸基及びイソシアネート基を含有しない分子量250~1000の化合物(C)並びにイオン化合物(D)を含有し、(D)成分を(A)~(C)成分の合計100重量部に対して0.05~5重量部含有することを特徴とするウレタン系粘着剤組成物が開示されている。
【0006】
特許文献2には、ポリウレタン系樹脂を含むウレタン系粘着剤であって、該ポリウレタン系樹脂が、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)とを含有する組成物を硬化させて得られるポリウレタン系樹脂であり、該ポリオール(A)と該多官能イソシアネート化合物(B)における、NCO基とOH基の当量比が、NCO基/OH基として、1.0を超えて5.0以下であり、該ウレタン系粘着剤が、フルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含む、ウレタン系粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-105866号公報
【文献】特開2015-098503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の粘着剤は、帯電防止剤を含むことで所望の帯電防止性が得られたが、粘着剤中の金属触媒が帯電防止剤と配位して、イソシアネート硬化剤の反応速度を低下させるため、硬化速度が低下していた。また、表面保護シートを枚葉ではなく、ロールtoロールで製造すると、表面保護シートの先頭を塗工装置の巻き取りロールに貼り付ける際に生じる段差が巻き取り圧力により粘着層に加わり、巻き取られていくため前記段差の影響が粘着層に圧痕として残るため、当該圧痕が消失するまで表面保護シートを廃棄する必要があった。さらに、帯電防止剤の配合による硬化速度の低下は、塗工直後の粘着層の凝集力を低下させるため、前記圧痕が消失するまでのシート長さが増えてしまい表面保護シートの歩留まりが低下する問題があった。また、前記硬化速度の低下は、粘着層の架橋密度の低下を引き起こし、高温経時後の粘着力が高くなり再剥離性が低下する問題があった。さらに特許文献2の粘着剤は、ウレタンポリオールを使用しない、いわゆるワンショット法で製造するため、塗工直後の粘着層の凝集力が低く、歩留まりが悪かった。
【0009】
本発明は、歩留まりが良く、高温経時後に再剥離性が低下し難い粘着層を形成できる粘着剤、および粘着シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に粘着剤は、ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)との反応物である重量平均分子量が10万~50万のウレタンポリオール(A)、イソシアネート硬化剤(B)、酸化防止剤(D)、帯電防止剤(E)および多官能ポリオール(F)を含む。
【発明の効果】
【0011】
上記の本発明によれば、歩留まりが良く、高温経時後に再剥離性が低下し難い粘着層を形成できる粘着剤、および粘着シートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の説明の前に用語を定義する。本明細書で被着体とは、粘着テープを貼り付ける相手をいう。
本明細書で粘着シートとは、基材と、本明細書の粘着剤の硬化物からなる粘着層とを含む。
本明細書で「テープ」、「フィルム」、および「シート」は同じ意味を持つ。
本明細書で主成分は、複数配合する成分の中で最も配合量が多い成分をいう。
【0013】
本明細書において、特に明記しない限り、「分子量」は、数平均分子量(Mn)を意味するものとする。なお、「Mn」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0014】
本明細書の粘着剤は、ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)との反応物である重量平均分子量が10万~50万のウレタンポリオール(A)、イソシアネート硬化剤(B)、酸化防止剤(D)、帯電防止剤(E)および多官能ポリオール(F)を含む。
本明細書の粘着剤は、塗工により粘着層を形成し、粘着シートとして使用することが好ましい。前記粘着シートは、基材を備えることが好ましい。
【0015】
本明細書の粘着剤は、ウレタンポリオール(A)の重量平均分子量を高く設定し、多官能ポリオール(F)を組合せることで、帯電防止剤(E)の配合に生じる硬化速度の低下によるデメリットを打消し、歩留まりの低下を改善できる。さらに、本明細書の粘着剤は、酸化防止剤(D)を含むことで、高温経時後に再剥離性が低下し難い粘着層が得られる。
【0016】
本明細書の粘着剤は、例えば、平坦部や曲面部を有する液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネセンス(OLED)等のディスプレイ、係るディスプレイを使用したタッチパネルに使用できる。また、このようなディスプレイないしタッチパネルを搭載した、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末の携帯端末、コンピューター等の電子機器の表面保護用途に幅広く使用できる。
また、被着体の素材は、ガラスに限らず、例えば、ポリオレフィン、金、銀、銅、ITO等の傷つきやすい素材の保護にも使用できる。
【0017】
また、粘着剤の用途は、ディスプレイ以外に、例えば窓ガラス、LED、車両、配線等の部材、これらの積層体に使用できる。
また、本明細書の粘着シートは、各種部材の製造工程中の保護、ならびに製造後の製品にも使用できる。なお、本明細書の粘着剤が表面保護用途以外に使用できることは言うまでもない。
【0018】
(ウレタンポリオール(A))
ウレタンポリオール(A)は、1種以上のポリオール(a)と1種以上のポリイソシアネート(b)とをウレタン化反応させた反応生成物である。ポリイソシアネート(b)は、1分子中に2つのイソシアネート基を有する2官能イソシアネート(b1)(ジイソシアネートともいう)が好ましい。また、ポリオール(a)は、1分子中に2つ以上の水酸基を有するポリオール(a1)が好ましい。ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基(イソシアナト基)は、ポリオール(a)の水酸基よりも少なくなるようなモル比(NCO/OH比)で使用する。これにより、水酸基を有するウレタンポリオールが得られる。ウレタン反応には、反応促進のため触媒を使用することが好ましい。ウレタン化反応には必要に応じて、溶媒を用いることができる。
ウレタンポリオール(A)は、単独または2種以上を併用できる。
【0019】
<ポリオール(a)>
ポリオール(a)は、水酸基を2つ以上有する化合物である。ポリオール(a)は、ポリエーテルポリオール、ポリエチステルポリオール、ポリブタジエン変性ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油ポリオール等のポリオールが好ましく、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエン変性ポリオールがより好ましい。
本明細書においてポリオール(a)は、1種類でも構わないところ、2種類以上を併用すると粘着層の凝集力および粘着力を調整し易い。ポリオール(a)を1種類使用する場合は、水酸基を3以上有するポリオールを使用することが好ましい。また、ポリオール(a)を2種類以上使用する場合は、水酸基を2つ有するポリオールと水酸基数を3つ以上有するポリオールを併用することが好ましい。また、水酸基を3つ以上有するポリオールを併用する場合は、ポリイソシアネート(b)とポリオール(a)は、NCO/OH比(モル比)が0.80以下に設定することが好ましい。NCO/OH比(モル比)を適切な範囲で使用するとウレタンポリオール(A)の合成で反応を制御し易い。
【0020】
ポリエーテルポリオールは、例えば、1分子中に2つ以上の活性水素を有する活性水素含有化合物を開始剤として用い、1種以上のオキシラン化合物を付加重合させた反応物が挙げられる。
【0021】
活性水素含有化合物は、水酸基含有化合物およびアミン等が好ましい。
水酸基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール等の2官能活性水素含有化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能活性水素含有化合物;ペンタエリスリトール等の4官能活性水素含有化合物等が挙げられる。
アミンは、例えば、N-アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の2官能活性水素含有化合物;トリエタノールアミン等の3官能活性水素含有化合物;エチレンジアミン、芳香族ジアミン等の4官能活性水素含有化合物;ジエチレントリアミン等の5官能活性水素含有化合物等が挙げられる。
【0022】
オキシラン化合物は、例えば、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、およびブチレンオキシド(BO)等のアルキレンオキシド(AO);テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。
【0023】
ポリエーテルポリオールは、分子内に活性水素含有化合物に由来するアルキレンオキシ基を有することが好ましい(このポリオールを「ポリオキシアルキレンポリオール」ともいう)。ポリオキシアルキレンポリオールを構成する水酸基含有化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールが好ましく、特に結晶性が低く柔軟性が発現し易いポリプロピレングリコールが好ましい。
【0024】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)は、特に制限されないが、透明性や柔軟性が発現し易いことから、200~6,000が好ましく、400~5,000がより好ましく、600~4,000がさらに好ましい。Mnを200以上にすることでウレタンポリオール(A)合成時の反応制御がし易い。また、Mnを6,000以下にすることでウレタンポリオール(A)の凝集力を適度な範囲に調整し易い。
【0025】
ポリエステルポリオールは、例えば、1種以上のポリオール成分と1種以上の酸成分とをエステル化反応させ化合物(エステル化物)、またはラクトンを開環重合して合成した化合物(開環重合物)等が好ましい。
【0026】
ラクトンは、例えば、ポリカプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、およびポリバレロラクトン等が挙げられる。
【0027】
ポリオール成分は、例えば、上記の活性水素含有化合物の他に、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、ヘキサントリオール等が挙げられる。
【0028】
酸成分は、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、ダイマー酸、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-エチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、および4,4’-ビフェエルジカルボン酸、ダイマー酸、トリマー酸ならびにこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0029】
ポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)は、200~6,000が好ましく、500~6,000がより好ましく、500~4,000がさらに好ましく、500~3,000が特に好ましい。Mnを200以上にすることでウレタンポリオール(A)合成時の反応制御がし易い。また、Mnを6,000以下にすることでウレタンポリオール(A)の凝集力を適度な範囲に調整し易い。
【0030】
ポリブタジエン変性ポリオールは、例えば、2つ以上の水酸基末端を有し、1,2-ビニル部位、1,4-シス部位、1,4-トランス部位またはそれらが水素化された構造を有し、直鎖状若しくは分岐状のポリブタジエンである。
【0031】
ポリブタジエン変性ポリオールの数平均分子量(Mn)は、200~6,000が好ましく、500~6,000がより好ましく、500~4,000がさらに好ましく、500~3,000が特に好ましい。Mnを200以上にすることでウレタンポリオール(A)合成時の反応制御がし易い。また、Mnを6,000以下にすることでウレタンポリオール(A)の凝集力を適度な範囲に調整し易い。
【0032】
ポリブタジエン変性ポリオールを水素化する程度は、水素化する前に存在する二重結合部位の全てが水素化されていることが好ましいが、本発明においては、若干の二重結合部位が残存していても良い。
【0033】
上記以外のその他ポリオールは、例えば、ポリカーボネートポリオール、ひまし油ポリオール等が挙げられる。その他ポリオールは、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールと併用して使用することが好ましい。
その他ポリオールの数平均分子量(Mn)は、200~6,000程度である。
【0034】
なお、ポリオール(a)は、カルボキシル基、スルホ基等の酸性官能基を含有すると、被着体を腐食させる場合があるため、酸性官能基を有しないポリオールを使用することが好ましい。
【0035】
これらの中もポリオール(a)は、脂肪族が好ましい。これにより高温試験後の再剥離性がより向上する上、粘着層の透明性を維持し易い。
【0036】
<ポリイソシアネート(b)>
ポリイソシアネート(b)は、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、および脂環族ポリイソシアネート等公知のポリイソシアネートを使用できる。
【0037】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、および4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0039】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、および1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0041】
上記のポリイソシアネートは、ジイソシアネートであるが、上記ジイソシアネートを変性したトリイソシアネートも使用できる。トリイソシアネートは、例えば、上記ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビュウレット体、および3量体(この3量体はイソシアヌレート環を含む。)等が挙げられる。
【0042】
ポリイソシアネート(b)は、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、および、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)等が好ましい。
【0043】
ポリイソシアネート(b)は、単独または2種以上を使用できる。
【0044】
<触媒>
触媒は、例えば、3級アミン系化合物および有機金属系化合物等が好ましい。
【0045】
3級アミン系化合物は、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、および1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)等が挙げられる。
【0046】
有機金属系化合物は、錫系化合物および非錫系化合物等が好ましい。
錫系化合物は、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、および2-エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
非錫系化合物は、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、およびブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系化合物;オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、およびナフテン酸鉛等の鉛系化合物;2-エチルヘキサン酸鉄および鉄アセチルアセトネート等の鉄系化合物;安息香酸コバルトおよび2-エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系化合物;ナフテン酸亜鉛および2-エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系化合物;ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム系化合物が挙げられる。これらの中でも錫系化合物は、反応速度向上や着色が少ないためより好ましい。
【0047】
触媒は、単独または2種以上を使用できる。
【0048】
触媒は、ポリイソシアネート(b)とポリオール(a)との合計100質量部に対して、0.01~1.0質量部を使用することが好ましい。
【0049】
<溶剤>
ウレタンポリオール(A)の製造には、必要に応じて、1種以上の溶剤を用いることができる。溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの中でもウレタンポリオール(A)の溶解性および溶剤の沸点等の点から、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、等が好ましい。
【0050】
<ウレタンポリオール(A)の製造方法>
ウレタンポリオール(A)の製造方法は、特に制限されず、塊状重合法、溶液重合法等の公知の重合方法により製造することができる。
製造方法の手順は、例えば、
(手順1)1種以上のポリオール(a)、1種以上のポリイソシアネート(b)、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤を一括してフラスコに仕込む手順;
(手順2)1種以上のポリオール(a)、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤をフラスコに仕込み、これに1種以上のポリイソシアネート(b)を滴下添加する手順;が挙げられる。
(手順3)1種以上のポリオール(a)のうち最終滴下分を余らせた残り、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤をフラスコに仕込み、これに1種以上のポリイソシアネート(b)を滴下添加し、その後余らせておいた分の1種以上のポリオール(a)を追って滴下する手順;が挙げられる。
これらの中でも反応熱の制御が容易な(手順2)(手順3)が好ましい。
【0051】
反応温度は、触媒を使用する場合、100℃未満が好ましく、70~95℃がより好ましい。反応温度を100℃未満にするとウレタン反応以外の副反応を抑制できるため所望のウレタンポリオール(A)を得易い。反応温度は、触媒を使用しない場合、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましい。
【0052】
ウレタンポリオール(A)を製造する際のポリイソシアネート(b)のイソシアネート基(NCO)およびポリオール(a)の水酸基(OH)は、NCO/OHのモル比でいうと0.3~0.95が好ましく、0.4~0.90がより好ましく、0.5~0.80がさらに好ましい。NCO/OH比が上記の範囲内にあることで適度な分子鎖を有するウレタンポリオールが形成できるため、濡れ性および生産性がより向上する。
【0053】
合成する際に触媒を用いる場合、上記触媒を不活性化させることが好ましい。反応停止剤は、例えばアセチルアセトン等を配合すればよい。
【0054】
反応停止剤は、単独または2種類以上を使用できる。
【0055】
ウレタンポリオール(A)の重量平均分子量(Mw)は、100,000~500,000が好ましく、100,000~400,000がより好ましく、150,000~400,000がさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)を上記範囲に調整することで、巻き取り直後から粘着層は、一定の凝集力を有するため圧痕を抑制し、歩留まりを向上できる。
【0056】
<イソシアネート硬化剤(B)>
イソシアネート硬化剤(B)は、イソシアネート基を複数有する公知の化合物である。イソシアネート硬化剤(B)は、上記ポリイソシアネート(b)が好ましく、その中でも芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、および脂環族ポリイソシアネート、ならびにこれらのトリメチロールプロパンアダクト体、ならびにこれらのビュウレット体、ならびにこれら3量体である3官能イソシアネート等がより好ましい。
【0057】
イソシアネート硬化剤(B)は、単独または2種以上を使用できる。
【0058】
イソシアネート硬化剤(B)の配合量は、ウレタンポリオール(A)100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、1~25質量部がより好ましく、3~20質量部がさらに好ましく、5~15質量部が特に好ましい。イソシアネート硬化剤(B)を適量配合すると適度な粘着力、凝集力を得易い。
【0059】
<可塑剤(C)>
本明細書の粘着剤は、さらに可塑剤(C)を含むことができる。可塑剤(C)を含むことで被着体に対する粘着層の濡れ性がより向上する。可塑剤(C)は、他の成分との相溶性等の観点から、炭素数8~30の脂肪酸エステル、またはリン酸エステル等が好ましい。
【0060】
炭素数8~30の脂肪酸エステルは、化合物全体の炭素数が8~30であり、例えば、炭素数6~18の一塩基酸または多塩基酸と炭素数18以下の分岐アルコールとのエステル、炭素数14~18の不飽和脂肪酸または分岐酸と4価以下のアルコールとのエステル、炭素数6~18の一塩基酸または多塩基酸とポリアルキレングリコールとのエステル、不飽和部位を過酸化物等でエポキシ化した脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0061】
炭素数6~18の一塩基酸または多塩基酸と炭素数18以下の分岐アルコールとのエステルとしては、例えば、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソステアリル、セバシン酸ジイソセチル、トリメリット酸トリオレイル、トリメリット酸トリイソセチル等が挙げられる。
【0062】
炭素数14~18の不飽和脂肪酸または分岐酸と4価以下のアルコールとのエステルを構成する炭素数14~18の不飽和脂肪酸および分岐酸と4価以下のアルコール以下の通りである。炭素数14~18の不飽和脂肪酸または分岐酸は、例えば、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。4価以下のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン等が挙げられる。
【0063】
炭素数6~18の一塩基酸または多塩基酸とポリアルキレングリコールとのエステルとしては、例えば、ジヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジ-2-エチルヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジラウリル酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、アジピン酸ジポリエチレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
【0064】
不飽和部位を過酸化物等でエポキシ化した脂肪酸エステルは、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油等のエポキシ化油脂や炭素数8~18の不飽和脂肪酸をエポキシ化した化合物と、炭素数1~6の直鎖または分岐アルコールとのエステル化合物等が挙げられる。
【0065】
リン酸エステルは、例えば、亜リン酸またはリン酸と炭素数2~18の直鎖または分岐アルコールとのエステル化合物が挙げられる。
【0066】
可塑剤(C)は、単独または2種以上を使用できる。
【0067】
可塑剤(C)の式量ないし数平均分子量(Mn)は、濡れ速度向上等の観点から、300~1000が好ましく、300~900がより好ましく、350~850がさらに好ましい。
【0068】
可塑剤(C)の配合量は、ウレタンポリオール(A)100質量部に対して0.1~100質量部が好ましく、1~80質量部がより好ましく、5~60質量部がさらに好ましい。可塑剤(C)を適量配合すると濡れ性がより向上する。
【0069】
<酸化防止剤(D)>
本明細書の粘着剤は、酸化防止剤(D)を含む。酸化防止剤(D)を含むとウレタンポリオール(A)とイソシアネート硬化剤(B)との架橋ネットワークの熱分解を抑制できることで、高温経時後に再剥離性が低下し難い粘着層が得られる。
酸化防止剤(D)は、例えば、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤等のラジカル連鎖禁止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中でもフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0070】
フェノール系酸化防止剤は、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、およびステアリン-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;
2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、および3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のビスフェノール系酸化防止剤;
1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、および1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H、3H、5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0071】
硫黄系酸化防止剤は、例えば、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、およびジステアリル3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0072】
リン系酸化防止剤は、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、およびフェニルジイソデシルホスファイト等が挙げられる。
【0073】
酸化防止剤(D)は、単独または2種以上を使用できる。
【0074】
酸化防止剤(D)の配合量は、ウレタンポリオール(A)100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.3~5質量部がより好ましく、0.5~3質量部が更に好ましい。
【0075】
<帯電防止剤(E)>
本明細書の粘着剤は、帯電防止剤(E)を含む。帯電防止剤(E)を含むと粘着シートを剥離する際の静電気放電を抑制し、例えば、ディスプレイ等に組み込まれた電子部品等の破損を防止し易い。
帯電防止剤は、例えば、無機塩、イオン液体、イオン固体、界面活性剤等が挙げられる。これらの中でもイオン液体が好ましい。なお、「イオン液体」は、常温溶融塩ともいい、25℃で液体の性状を示す。
【0076】
無機塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、塩化アンモニウム、塩素酸カリウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびチオシアン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0077】
イオン液体は、カチオンとアニオンの塩であり、カチオンは、例えば、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン等が好ましい。
【0078】
イミダゾリウムイオンを含むイオン液体は、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、および1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0079】
ピリジニウムイオンを含むイオン液体は、例えば、1-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-オクチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチルピリジニウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、および1-メチルピリジニウムビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0080】
アンモニウムイオンを含むイオン液体は、例えば、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、およびトリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド等が挙げられる。
【0081】
その他、カチオンがピロリジニウムイオン、ホスホニウムイオン、およびスルホニウムイオン等である公知のイオン液体を適宜使用できる。
【0082】
イオン固体は、イオン液体同様、カチオンとアニオンの塩であるが、常圧下25℃において固体の性状を示す。カチオンは、例えば、アルカリ金属イオン、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン等が好ましい。
【0083】
アルカリ金属イオンを含むイオン固体は、例えば、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、リチウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、リチウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、リチウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、ナトリウムビスフルオロスルホニルイミド、ナトリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、ナトリウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、ナトリウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、ナトリウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、カリウムビスフルオロスルホニルイミド、カリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、カリウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、カリウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、カリウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0084】
ホスホニウムイオンを含むイオン固体は、例えば、テトラブチルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0085】
ピリジニウムイオンを含むイオン固体は、例えば、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスフルオロスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0086】
アンモニウムイオンを含むイオン固体は、例えば、トリブチルメチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリブチルメチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、トリブチルメチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、トリブチルメチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、オクチルトリブチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、テトラブチルビスフルオロスルホニルイミド、テトラブチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラブチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラブチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、テトラブチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0087】
その他、カチオンがピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、およびスルホニウムイオン等である公知のイオン固体を適宜使用できる。
【0088】
界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、および両性のタイプに分類できる。
【0089】
非イオン性界面活性剤は、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル、肪酸ジエタノールアミド、ポリエーテルエステルアミド型、エチレンオキシド-エピクロルヒドリン型、およびポリエーテルエステル型等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤(ただし、イオン液体およびイオン固体を除く)は、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート、およびポリスチレンスルホン酸型等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤は、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、および第4級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体型等が挙げられる。
両性界面活性剤は、例えば、アルキルベタインおよびアルキルイミダゾリウムベタイン、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、および高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0090】
帯電防止剤(E)は、25℃で液体または固体で区別する。
25℃で液体の帯電防止剤(E)は、固体と比較して、粘着層と被着体との界面に移行し易いため、より良好な帯電防止性が得易い。
【0091】
また、25℃で固体の帯電防止剤(E)は、液体と比較して、粘着層中に一部が海島構造の島として存在し易い。これにより粘着層の応力緩和性が向上するため、良好な基材密着性が得易い。
【0092】
これらの中でも帯電防止剤(E)は、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミドまたはテトラブチルホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルニルイミド)が好ましい。
【0093】
帯電防止剤(E)は、単独または2種以上を使用できる。
【0094】
帯電防止剤(E)の配合量は、ウレタンポリオール(A)100質量部に対して、0.01~3質量部が好ましく、0.03~2質量部がより好ましく、0.06~1質量部が更に好ましい。帯電防止剤(E)を適量配合すると高温経時後の再剥離性が低下し難くなり、粘着シート製造の時の歩留まりがより向上する。
【0095】
<多官能ポリオール(F)>
本明細書において多官能ポリオール(F)は、ウレタンポリオール(A)とともにイソシアネート硬化剤(B)と反応して、粘着層の架橋構造の中で架橋密度の高いセグメントを形成する。この架橋密度の高いセグメントは、反応直前の分子量の低さから表面配向性に優れ、塗膜表面を強固にし、圧痕を低減する効果を発揮する。多官能ポリオール(F)は、ウレタンポリオール(A)を合成する際の残留ポリオール(a)の利用、または新規に配合することができる。なお、残留ポリオール(a)と新規配合を併用しても良い。
【0096】
多官能ポリオール(F)は、既に説明したポリオール(a)の内、一分子中の水酸基数が3以上であるポリオールを使用できる。一分子中の水酸基数を3以上とすることで粘着層表面に架橋密度の高いセグメントを適切に調整できるため圧痕がより低減する。
【0097】
多官能ポリオール(F)は、末端に一級水酸基を有するポリオールを使用した場合、イソシアネート硬化剤(B)との硬化速度が上り、圧痕が抑制され歩留まりがより向上しやすい。
【0098】
多官能ポリオール(F)は、分子末端に二級水酸基を有するポリオールを使用した場合、架橋完了まで時間がかかるため硬化歪が少ない粘着層が形成できる。これによりコロナ処理等の易接着処理を行っていない基材に対して、粘着層が充分に密着できる場合が有る。
【0099】
多官能ポリオール(F)は、ウレタンポリオール(A)100質量部に対して、2~50質量部含むことが好ましく、2~30質量部がより好ましく、4~20質量部が更に好ましい。多官能ポリオール(F)を2~50質量部含むことで粘着層表面に架橋密度の高いセグメントの割合を適切に調整できるため圧痕がより低減する。
【0100】
多官能ポリオール(F)は、上記ポリオール(a)に列挙した中で、一分子中の水酸基数が3以上であり、かつ分子末端に一級または二級水酸基を有するものを使用することができる。特にポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールが好ましい。
【0101】
多官能ポリオール(F)の数平均分子量(Mn)は、500~6,000の範囲のものが好ましく、1,000~5,000がより好ましく、1,000~4,000がさらに好ましい。500以上であればイソシアネート硬化剤(B)と局所的に反応したミクロゲルの生成を抑制でき、6,000以下であれば架橋間分子量を小さくできるため、圧痕を抑制し、高温経時後の再剥離性がより向上する。
【0102】
<溶剤>
溶剤は、上記ウレタンポリオール(A)の製造に際して使用できる溶剤を使用することができるが、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤等が好ましい。溶剤は、単独または2種以上を使用できる。
【0103】
<その他添加剤>
本明細書の粘着剤は、課題を解決できる範囲内であれば必要に応じて、その他添加剤を含むことができる。その他添加剤は、例えば、樹脂、充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、消泡剤、および滑剤等が挙げられる。
【0104】
充填剤は、例えば、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0105】
紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、およびトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0106】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、およびビス(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)メタン等が挙げられる。
【0107】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’,-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、および[2(2’-ヒドロキシ-5’-メタアクリロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0108】
サリチル酸系紫外線吸収剤は、例えば、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、およびp-オクチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0109】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤は、例えば、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、およびエチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0110】
光安定剤は、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線安定剤等が挙げられる。
【0111】
ヒンダードアミン系光安定剤は、例えば、[ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート]、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、およびメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート等が挙げられる。
【0112】
紫外線安定剤は、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、[2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェノラート)]-n-ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-リン酸モノエチレート、ニッケル-ジブチルジチオカーバメート、ベンゾエートタイプのクエンチャー、およびニッケル-ジブチルジチオカーバメート等が挙げられる。
【0113】
レベリング剤は、アクリル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、シリコン系レベリング剤等が挙げられる。レベリング剤の市販品を挙げるとアクリル系レベリング剤は、例えば、ポリフローNo.36、ポリフローNo.56、ポリフローNo.85HF、ポリフローNo.99C(いすれも共栄社化学社製)等が挙げられる。フッ素系レベリング剤は、例えば、メガファックF470N、メガファックF556(いずれもDIC社製)等が挙げられる。シリコン系レベリング剤は、例えば、グランディックPC4100(DIC社製)等が挙げられる。
【0114】
<粘着シート>
本明細書の粘着シートは、基材、および粘着剤の硬化物である粘着層を備えている。粘着層は、基材の片面または両面に形成することができる。なお、粘着層の基材と接していない面は、異物の付着を防止するため、通常、使用する直前まで剥離シートで保護している。
【0115】
基材は、柔軟なシート、および板材が制限なく使用できる。基材は、例えば、プラスチック、紙、および金属箔、ならびにこれらの積層体等が挙げられる。
基材の粘着層と接する面には密着性向上のため、例えば、コロナ放電処理等の乾式処理やアンカーコート剤塗布等の湿式処理といった易接着処理を予め行うことができる。
【0116】
基材のプラスチックは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびシクロオレフィンポリマー(COP)等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂;ナイロン66等のアミド系樹脂;ウレタン系樹脂(発泡体を含む);等が挙げられる。
【0117】
基材の厚みは、通常10~300μm程度である。また、基材にポリウレタンシート(発泡体を含む)を使用する場合の厚みは、通常20~50,000μm程度である。紙は、例えば、普通紙、コート紙、およびアート紙等が挙げられる。金属箔は、例えば、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。
【0118】
剥離シートは、プラスチックまたは紙等の表面にシリコーン系剥離剤等の公知の剥離処理が施された公知の剥離シートを使用できる。
【0119】
粘着シートの製造方法は、例えば、基材の表面に粘着剤を塗工して、塗工層を形成し、次いで塗工層を乾燥および硬化して、粘着層を形成する方法が挙げられる。加熱および乾燥温度は、通常60~150℃程度である。粘着層の厚みは、通常0.1~200μm程度である。
【0120】
塗布方法は、例えば、ロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、およびグラビアコーター法等公知の方法が挙げられる。
【0121】
また、上記方法とは逆に、剥離シートの表面に粘着剤を塗工して塗工層を形成し、次いで塗工層を乾燥および硬化して本明細書の粘着剤の硬化物からなる粘着層を形成し、最後に粘着層の露出面に基材を貼り合わる方法が挙げられる。上記方法で基材の代わりに剥離シートを貼り合わせると剥離シート/粘着層/剥離シートのキャスト粘着シートが得られる。
【0122】
<積層体>
本明細書の積層体は、透明導電フィルム、ガラス、アクリル板、ポリカーボネート板オレフィン板、および無機バリア層からなる群より選択される部材、および粘着シートを備える。
積層体は、本明細書の粘着剤から形成される粘着シートを備えるため、例えば、ディスプレイを製造する際に、破損し易いディスプレイの部材を保護し、製造後は容易に剥離できる。ディスプレイは、例えば、LCD、OLED等であり、他の部材としてタッチパネルを備えることが多い。
【0123】
タッチパネルは、例えば、透明電極フィルムを備えている。透明電極フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明フィルムの表面に、ITO(酸化インジウム錫)等の導電層を0.1~0.3μm程度にスパッタないし蒸着で形成するフィルムである。ITO等で形成された導電層(電極層)は、破損し易い。そこで、前記粘着シートを備えると、搬送、加工等の取扱いで導電層が破損し難い。
【0124】
OLEDは、劣化し易い発光素子を保護するため無機バリア層を備える。無機バリア層は、例えば、窒化ケイ素等の無機化合物を蒸着ないしスパッタリングで形成する厚さ15~100nm程度の層である。そこで、前記粘着シートを備えると、OLEDの搬送、加工等の取扱いで無機バリア層が破損し難い。
【0125】
ガラス、アクリル板、ポリカーボネート板およびオレフィン板は、LCDやOLED等ディスプレイを構成する積層体の一部を構成する光学部材である、前記光学部材は、例えば、液晶素子を保護や、タッチパネルの最表面等に使用する。タッチパネルは、薄さが要求されるため光学部材も薄く、破損し易い。そこで、前記粘着シートを備えると、タッチパネルの搬送、加工等の取扱いで光学部材が破損し難い。また、前記光学部材は、ハードコート、位相差、偏光板等の光学機能を有していても良い。光学部材の厚みは、10~1000μm程度である。
【実施例
【0126】
以下、本発明の実施態様について実施例によって説明する。なお、本発明の実施態様が
実施例に限定されないことはいうまでもない。以下、「部」は「質量部」を意味する。ま
た、「%」は「質量%」を意味する。なお、表中の配合量は、質量部である。
また、後述する実施例6は、請求項1に係る発明と整合させるために参考例と読み替えるものとする。
【0127】
[ウレタンポリオール(A)の合成例]
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにクラレポリオールP-1010(2官能ポリエステルポリオール、クラレ社製)500部、クラレポリオールF-1010(3官能ポリエステルポリオール、クラレ社製)500部、ヘキサメチレンジイソシアネート140部、トルエン760部、触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.05部を仕込み、75℃まで徐々に昇温して、3時間反応を行った。IRチャートのNCO特性吸収(2,270cm-1)が消失していることを確認した後に30℃まで冷却し、反応を終了した。このウレタンポリオール(A1)の重量平均分子量(Mw)は150,000、転化率は99%超であった。
【0128】
(合成例2~36、38、39)
実施例1の材料および配合比を表1~4に示す通りに変更した以外は、合成例1と同様に行うことで、合成例2~36、38、39のウレタンポリオール(A)をそれぞれ得た。得られたウレタンポリオール(A)のMwと転化率を表1に示す。なお、表中にある原料の配合量は不揮発分換算であり、特に断りのない数値の単位は[部]である。
【0129】
(合成例37)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにクラレポリオールP-1010(2官能ポリエステルポリオール、クラレ社製)200部、エクセノール240(3官能ポリエーテルポリオール、旭硝子社製)550部、ヘキサメチレンジイソシアネート70部、トルエン547部、触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.05部を仕込み、90℃まで徐々に昇温して、30分間反応を行った。その後、滴下漏斗からクラレポリオールP-1010を100部、エクセノール240を150部、トルエン167部の混合溶液を30分かけて滴下した。IRチャートのNCO特性吸収(2,270cm-1)が消失していることを確認した後に30℃まで冷却し、反応を終了した。このウレタンポリオール(A37)のMwは210,000、転化率は90%であった。
【0130】
[材料]
表で使用した材料は、以下の通りである。
<ポリオール(a)>
(a1):P1010(「クラレポリオール P-1010」、ポリエステルポリオール、Mn1000、水酸基数2、一級水酸基、クラレ社製)
(a2):P3199(「プリプラスト 3199」、ポリエステルポリオール、Mn2000、水酸基数2、一級水酸基、CRODA社製)
(a3):PP1000(「サンニックス PP-1000」、ポリオキシプロピレングリコール、Mn1000、水酸基数2、二級水酸基、三洋化成工業社製)
(a4):PP2000(「サンニックス PP-2000」、ポリオキシプロピレングリコール、Mn2000、水酸基数2、二級水酸基、三洋化成工業社製)
(a5):エクセ510(「エクセノール 510」、ポリエーテルポリオール、Mn4000、水酸基数2、一級水酸基、旭硝子社製)
(a6):GI1000(「NISSO-PB GI-1000」、両末端水酸基水素化ポリブタジエン、Mn1500、水酸基数2、一級水酸基、日本曹達社製)
(a7):GI3000(「NISSO-PB GI-3000」、両末端水酸基水素化ポリブタジエン、Mn3100、水酸基数2、一級水酸基、日本曹達社製)
(a8):HLBH P2000(「Krasol(登録商標) HLBH P2000」、末端水酸基変性液状ポリブタジエン、Mn2000、水酸基数1.95、一級水酸基、CRAY VALLEY社製)
(a9):F1010(「クラレポリオール F-1010」、ポリエステルポリオール、Mn1000、水酸基数3、一級水酸基、クラレ社製)
(a10):F3010(「クラレポリオール F-3010」、ポリエステルポリオール、Mn3000、水酸基数3、一級水酸基、クラレ社製)
(a11):エクセ1030(「エクセノール 1030」、ポリエーテルポリオール、Mn1000、水酸基数3、二級水酸基、旭硝子社製)
(a12):エクセ240(「エクセノール 240」、ポリエーテルポリオール、Mn3000、水酸基数3、一級水酸基、旭硝子社製)
(a13):エクセ4030(「エクセノール 4030」、ポリエーテルポリオール、Mn4000、水酸基数3、二級水酸基、旭硝子社製)
(a14):エクセ828(「エクセノール 828」、ポリエーテルポリオール、Mn5000、水酸基数3、一級水酸基、旭硝子社製)
(a15):P3010(「クラレポリオール P-3010」、ポリエステルポリオール、Mn1000、水酸基数3、一級水酸基、クラレ社製)
(a16):GP3000(「サンニックス GP-3000」、ポリエーテルポリオール、Mn3000、水酸基数3、二級水酸基、三洋化成工業社製)
(a17):AM302(「アデカポリエーテル AM-302」、ポリエーテルポリオール、Mn3000、水酸基数3、一級水酸基、ADEKA社製)
(a18):PTMG1000(「PTMG1000」、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、Mn1000、水酸基数2、一級水酸基、三菱ケミカル社製)
(a19):S3011(「プレミノール S-3011」、ポリエーテルポリオール、Mn10000、水酸基数3、二級水酸基、旭硝子社製)
(a20):GP1000(「サンニックス GP-1000」、ポリエーテルポリオール、Mn1000、水酸基数3、二級水酸基、三洋化成工業社製)
【0131】
<ポリイソシアネート(b)>
(b1):HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート、住化コベストロウレタン社製「デスモジュールH」)、
(b2):TDI(トリレンジイソシアネート、住化コベストロウレタン社製「デスモジュールT-80」)、
【0132】
<イソシアネート硬化剤(B)>
(B1):HDIアダクト(「スミジュールHT」、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、住化コベストロウレタン社製)
(B2):HDIヌレート(「スミジュールN3300」、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、住化コベストロウレタン社製)
【0133】
<可塑剤(C)>
(C1):M182A(「ユニスターM182A」、オレイン酸メチル、日油社製)
(C2):W262(「モノサイザーW262」、エーテルエステル系可塑剤、DIC社製)
(C3):D55(「アデカサイザーD-55」、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル、ADEKA社製)
(C4):TOP(「TOP」、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、大八工業化学社製)
(C5):IPP(「エキセパール IPP」、パルミチン酸イソプロピル、花王社製)
【0134】
<酸化防止剤(D)>
(D1):Irg1010(「イルガノックス1010」、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、フェノール系酸化防止剤、BASF社製)
(D2):IrgL135(「イルガノックスL135」、ベンゼンプロパン酸3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-,C7-C9 側鎖アルキルエステル、フェノール系酸化防止剤、BASF社製)
【0135】
<帯電防止剤(E)>
(E1):TFSI・アンモニウム塩(トリ-n-ブチルメチルアンモニウム・ビストリフルオロメタンスルホンイミド、イオン性液体)
(E2):TFSI・リチウム塩(リチウム・ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、イオン性固体)
(E3):FSI・ピリジニウム塩(1-オクチル-4-メチルピリジニウム・ビスフルオロスルホニルイミド、イオン性液体)
(E4):FSI・イミダゾリウム塩(1-エチル-3-メチル-イミダゾリウム・ビスフルオロスルホニルイミド、イオン性液体)
(E5):TFSI・ホスホニウム塩(テトラブチルホスホニウム・ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、イオン性固体)
【0136】
<多官能ポリオール(F)>
上記(a9)~(a20)をそれぞれ多官能ポリオールとしても使用した。
【0137】
[重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定]
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した。測定条件は以下の通りである。なお、MwおよびMnはいずれも、ポリスチレン換算値である。
<測定条件>
装置:SHIMADZU Prominence(島津製作所社製)、
カラム:SHODEX LF-804(昭和電工社製)を3本直列に接続、
検出器:示差屈折率検出器
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.5mL/分
溶媒温度:40℃
試料濃度:0.1%
試料注入量:100μL
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
(実施例1)
合成例1で得られたウレタンポリオール(A1)100部、イソシアネート硬化剤(B1)2部、可塑剤(C1)30部、酸化防止剤(D1)0.7部、帯電防止剤(E1)0.1部、多官能ポリオール(F4=a12)10部、および溶剤の酢酸エチル100部を配合し、ディスパーで攪拌して、粘着剤を得た。なお、溶剤を除く各材料の使用量は、不揮発分換算値[部]を示す。
【0143】
基材に厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)(「ルミラーT-60」、東レ社製)を準備した。コンマコーター(登録商標)を用いて、上記基材上に、得られた粘着剤を塗工速度3m/分、幅30cmで乾燥後厚みが12μmになるように塗工し、塗工層を形成した。
次に、形成された塗工層を乾燥オーブンを使用して100℃1分間の条件で乾燥して、粘着層を形成した。この粘着層の上に、厚さ38μmの市販剥離シートを貼り合わせ、さらに23℃-50%RHの条件下で1週間養生を行うことで粘着シートを得た。
【0144】
(実施例2~73、比較例1~6)
実施例1の材料および配合比を表5~13に示す通りに変更した以外は実施例1と同様に行うことで、それぞれ実施例2~73、比較例1~6の粘着剤および粘着シートを得た。
【0145】
[評価項目および評価方法]
得られた粘着剤および粘着シートの評価項目および評価方法は、以下の通りである。
【0146】
(圧痕)
実施例1の塗工速度を30m/分に、幅を150cmに代えた以外は、実施例と同様に行い粘着シートを作製し、一定距離ごとに巻き取りロールと粘着シートを繋ぐテープの痕(圧痕)を目視にて評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:10m地点でテープ痕が認められない。優良。
○:25m地点でテープ痕が認められない。良好。
△:50m地点でテープ痕が認められない。実用可。
×:50m地点でテープ痕が認められる。実用不可。
【0147】
(高温経時後の再剥離性)
高温経時後の再剥離性を粘着力で評価した。
得られた粘着シートを幅25mm・長さ100mmの大きさに準備し、測定試料とした。次いで、23℃-50%RHの雰囲気下で、測定試料から剥離シートを剥離し、露出した粘着層を苛性ソーダガラス板に貼着し、2kgロールを1往復して圧着した。その後、100℃条件下で24時間放置した。次いで23℃-50%RHの雰囲気にて30分空冷した後、JISZ0237に準拠し、引張試験機(テンシロン:オリエンテック社製)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力を測定した。また、被着体をITOフィルム(「テトライトTCF」、尾池工業社製)、PET(「ルミラーT-60」、東レ社製)に変えた以外は上記同様に行い粘着力を測定した。
評価基準は以下の通りである。
◎:100mN/25mm未満。優良。
○:100mN/25mm以上200mN/25mm未満。良好。
△:200mN/25mm以上300mN/25mm。実用可。
×:300mN/25mm超。実用不可。
【0148】
(被着体汚染性)
上記「高温経時後の再剥離性」後のITO面について粘着剤由来の汚染性を評価した。
評価は、暗室で目視にてLEDライトで被着体を照らして行った。評価基準は以下の通りである。
○:汚染が全く認められない。良好。
△:若干の曇りが認められる。実用可。
×:はっきりとした曇りが認められる。実用不可。
【0149】
(基材密着性)
得られた粘着シートを幅50mm・長さ50mmの大きさに準備し、測定試料とした。次いで、23℃-50%RHの雰囲気下で、測定試料から剥離シートを剥離し、粘着層に刃物で基材に達するが切断しない程度の深さまで2mm間隔で11本の切れ目を入れた。次いで前記切れ目の直角方向に前記同様に11本の切れ目を入れることで碁盤目状に100個のマス目を形成した。その上から親指で強く10回擦った際に、粘着層が基材から取れずに残ったマス目の数を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:100マス残り。優良。
○:90マス以上100マス未満残り。良好。
△:75マス以上90マス未満残り。実用可。
×:残ったマスが75未満。実用不可。
【0150】
(帯電防止性)
得られた粘着シートを幅50mm・長さ50mmの大きさに準備し、測定試料とした。次いで、23℃-50%RHの雰囲気下で、測定試料から剥離シートを剥離し、表面抵抗値測定器(ハイレスタ-UX MCP-HT800、三菱ケミカルアナリテック社製)のプローブを粘着層に当てて表面抵抗値を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:表面抵抗値が1×10の8乗未満。優良。
○:表面抵抗値が1×10の8乗以上、1×10の9乗未満。良好。
△:表面抵抗値が1×10の9乗以上、1×10の10乗未満。実用可。
×:表面抵抗値が1×10の10乗以上。実用不可。
【0151】
【表5】
【0152】
【表6】
【0153】
【表7】
【0154】
【表8】
【0155】
【表9】
【0156】
【表10】
【0157】
【表11】
【0158】
【表12】
【0159】
【表13】
[付記1]
ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)との反応物である重量平均分子量が10万~50万のウレタンポリオール(A)、イソシアネート硬化剤(B)、酸化防止剤(D)、帯電防止剤(E)および多官能ポリオール(F)を含む粘着剤。
[付記2]
前記多官能ポリオール(F)は、一分子中の水酸基数が3以上である、付記1に記載の粘着剤。
[付記3]
さらに、可塑剤(C)を含む、付記1または2に記載の粘着剤。
[付記4]
前記ウレタンポリオール(A)100質量部に対して、前記可塑剤(C)を0.1~100質量部含む、付記3に記載の粘着剤。
[付記5]
前記ウレタンポリオール(A)100質量部に対して、前記多官能ポリオール(F)を2~50質量部含む、付記1~4いずれかに記載の粘着剤。
[付記6]
前記多官能ポリオール(F)は、末端に一級水酸基を有する、付記1~5いずれかに記載の粘着剤。
[付記7]
基材、および付記1~6いずれかに記載の粘着剤の硬化物である粘着層を備える、粘着シート。
[付記8]
透明導電フィルム、ガラス、アクリル板、ポリカーボネート板、オレフィン板、および無機バリア層からなる群より選択される部材、および付記7に記載の粘着シートを備える、積層体。