(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】異方性導電フィルム
(51)【国際特許分類】
H01R 11/01 20060101AFI20220509BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20220509BHJP
C09J 7/00 20180101ALI20220509BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220509BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
H01R11/01 501C
H01R43/00 H
C09J7/00
C09J201/00
C09J9/02
(21)【出願番号】P 2020088028
(22)【出願日】2020-05-20
(62)【分割の表示】P 2015211452の分割
【原出願日】2015-10-28
【審査請求日】2020-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2014219790
(32)【優先日】2014-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石松 朋之
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-286457(JP,A)
【文献】特開2010-033793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/01
H01R 43/00
C09J 7/00
C09J 201/00
C09J 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性接着ベース層に導電粒子が平面格子パターンの格子点に配置された構造の異方性導電フィルムであって、
導電粒子が配置されていない格子点を抜けとし、複数の導電粒子が凝集して配置されている格子点を凝集としたときに、
異方性導電フィルムの基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する抜けの割合が、20%未満であり、
異方性導電フィルムの基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する凝集の割合が、15%以下であり、抜けと凝集の合計が25%未満であ
り、
基準領域が、異方性導電フィルムの平面中央部の以下の関係式(A)、(2)及び(3):
【数1】
を満たす辺X及び辺Yからなる略方形の領域であり、ここで、Dは導電粒子の平均粒子径であり、辺Yは異方性導電フィルムの長手方向に対し±45°未満の範囲の直線であり、辺Xは辺Yに垂直な直線である異方性導電フィルム。
【請求項2】
更に、絶縁性接着カバー層が絶縁性接着ベース層に積層されている請求項1記載の異方性導電フィルム。
【請求項3】
更に、絶縁性接着カバー層が絶縁性接着ベース層
に積層され、それらの界面近傍に導電粒子が平面格子パターンの格子点に配置された構造
を有し、
異方性導電フィルムの基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する凝集の割合が、5%以下である請求項1記載の異方性導電フィルム。
【請求項4】
基準領域が、異方性導電フィルムの平面中央部の以下の関係式(1)~(3):
【数2】
を満たす辺X及び辺Yからなる略方形の領域であり、ここで、Dは導電粒子の平均粒子径であり、辺Yは異方性導電フィルムの長手方向に対し±45°未満の範囲の直線であり、辺Xは辺Yに垂直な直線である請求項1
~3のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項5】
異方性導電フィルムの基準領域の面積に対する、その面積中に存在する全導電粒子の粒子面積占有率が15~35%である請求項1~4のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項6】
導電粒子の平均粒子径が1~10μmであり、平面格子パターンの隣接格子点間距離が導電粒子の平均粒子径の0.5倍より大きい請求項1~5のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項7】
基準領域が、異方性導電フィルムの平面中央部の以下の関係式:
【数3】
を満たす辺X及び辺Yからなる略方形の領域であり、ここで、Dは導電粒子の平均粒子径であり、辺Yは異方性導電フィルムの長手方向に対し±45°未満の範囲の直線であり、辺Xは辺Yに垂直な直線である請求項1
~3のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項8】
異方性導電フィルムの任意の基準領域の面積に対する、その面積中に存在する全導電粒子の粒子面積占有率が0.15%以上である請求項7記載の異方性導電フィルム。
【請求項9】
導電粒子の平均粒子径が1~30μmであり、平面格子パターンの隣接格子点間距離が導電粒子の平均粒子径の0.5倍以上である請求項7または8記載の異方性導電フィルム。
【請求項10】
絶縁性接着ベース層に導電粒子が平面格子パターンの格子点に配置された構造の異方性導電フィルムであって、
導電粒子が配置されていない格子点を抜けとし、複数の導電粒子が凝集して配置されている格子点を凝集としたときに、
異方性導電フィルムの基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する抜けの割合が、20%未満であり、
異方性導電フィルムの基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する凝集の割合が、15%以下であり、抜けと凝集の合計が25%未満であり、
異方性導電フィルムの基準領域の面積に対する、その面積中に存在する全導電粒子の粒子面積占有率が15~35%である異方性導電フィルム。
【請求項11】
更に、絶縁性接着カバー層が絶縁性接着ベース層に積層されている請求項10記載の異方性導電フィルム。
【請求項12】
更に、絶縁性接着カバー層が絶縁性接着ベース層に積層され、それらの界面近傍に導電粒子が平面格子パターンの格子点に配置された構造を有し、
異方性導電フィルムの基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する凝集の割合が、5%以下である請求項10記載の異方性導電フィルム。
【請求項13】
基準領域が、異方性導電フィルムの平面中央部の以下の関係式(1)~(3):
【数4】
を満たす辺X及び辺Yからなる略方形の領域であり、ここで、Dは導電粒子の平均粒子径であり、辺Yは異方性導電フィルムの長手方向に対し±45°未満の範囲の直線であり、辺Xは辺Yに垂直な直線である請求項10~12のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項14】
導電粒子の平均粒子径が1~10μmであり、平面格子パターンの隣接格子点間距離が導電粒子の平均粒子径の0.5倍より大きい請求項10~13のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項15】
基準領域が、異方性導電フィルムの平面中央部の以下の関係式:
【数5】
を満たす辺X及び辺Yからなる略方形の領域であり、ここで、Dは導電粒子の平均粒子径であり、辺Yは異方性導電フィルムの長手方向に対し±45°未満の範囲の直線であり、辺Xは辺Yに垂直な直線である請求項10~12のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項16】
異方性導電フィルムの任意の基準領域の面積に対する、その面積中に存在する全導電粒子の粒子面積占有率が0.15%以上である請求項15記載の異方性導電フィルム。
【請求項17】
導電粒子の平均粒子径が1~30μmであり、平面格子パターンの隣接格子点間距離が導電粒子の平均粒子径の0.5倍以上である請求項15または16記載の異方性導電フィルム。
【請求項18】
第1の電子部品の端子と、第2の電子部品の端子とが、請求項1~
17のいずれかに記載の異方性導電フィルムにより異方性導電接続された接続構造体。
【請求項19】
第1の電子部品の端子と、第2の電子部品の端子とを、請求項1~
17のいずれかに記載の異方性導電フィルムにより異方性導電接続する、接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性樹脂バインダに導電粒子を分散させた異方性導電フィルムが、ICチップ等の電子部品を配線基板等に実装する際に広く使用されているが、このような異方性導電フィルムにおいては、導電粒子同士が連結もしくは凝集した状態で存在していることが知られている。このため、異方性導電フィルムを、電子機器の軽量小型化に伴い狭ピッチ化しているICチップの端子と配線基板の端子との接続に適用した場合、異方性導電フィルム中に連結もしくは凝集した状態で存在している導電粒子により、隣接する端子間で短絡が生ずる場合があった。
【0003】
従来、このような狭ピッチ化に対応した異方性導電フィルムとして、フィルム中に導電粒子を規則配列させたものが提案されている。例えば、延伸可能なフィルムに粘着層を形成し、その粘着層表面に導電粒子を単層で密集充填した後、このフィルムを導電粒子間距離が所期の距離になるまで2軸延伸処理して導電粒子を規則配列させ、その後、導電粒子に対し異方性導電フィルムの構成要素となる絶縁性接着ベース層を押し当て、導電粒子を絶縁性接着ベース層に転写させて得た異方性導電フィルムが提案されている(特許文献1)。また、凹部を表面に有する転写型の凹部形成面に導電粒子を散布し、凹部形成面をスキージして凹部に導電粒子を保持させ、その上から転写用の粘着層が形成された粘着フィルムを押し当て、粘着層に導電粒子を一次転写させ、次に、粘着層に付着した導電粒子に対し、異方性導電フィルムの構成要素となる絶縁性接着ベース層を押し当て、導電粒子を絶縁性接着ベース層に転写させて得た異方性導電フィルムも提案されている(特許文献2)。これらの異方性導電フィルムについては、一般に、導電粒子側表面に、導電粒子を覆うように絶縁性接着カバー層が積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2005/054388号
【文献】特開2010-33793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導電粒子は静電気等により凝集して二次粒子化し易いため、導電粒子を一次粒子として常時単独で存在させることは困難である。このため、特許文献1や特許文献2の技術には以下のような問題が生ずる。即ち、特許文献1の場合には、延伸可能フィルムの全面に導電粒子を欠陥なく単層で密集充填することが難しく、導電粒子が凝集状態で延伸可能フィルムに充填され、ショートの原因となったり、充填されない領域(いわゆる「抜け」)が生じ、導通不良の原因になったりするという問題があった。また、特許文献2の場合、転写型の凹部が粒子径の大きな導電粒子で覆われると、その後のスキージにより取り除かれて、導電粒子を保持していない凹部が生じ、異方性導電フィルムに導電粒子の「抜け」が生じて導通不良の原因になったり、反対に凹部に多数の小さな導電粒子が押し込まれると、絶縁性接着ベース層に転写させた際、導電粒子の凝集が生じたり、また、凹部の底部側に位置している導電粒子が、絶縁性接着ベース層と接触していないため、絶縁性接着ベース層の表面に散らばり、規則配列が損なわれ、ショートや導通不良の原因になったりするという問題があった。
【0006】
このように、特許文献1や2では、異方性導電フィルムに規則的パターンで配列されるべき導電粒子の「抜け」と「凝集」とをどのように制御すべきか、ということについては、十分に考慮されていないというのが実情である。
【0007】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、規則的パターンで配列されるべき導電粒子の「抜け」と「凝集」の観点から、ショートや導通不良の発生が大きく抑制された異方性導電フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、平面格子の格子点に導電粒子を配置する際に、異方性導電フィルムの基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する、「導電粒子が配置されていない格子点の割合」と「導電粒子が凝集して配置されている格子点の割合」とを制御することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、そのような異方性導電フィルムが、転写体の凹部に導電粒子を配置するのではなく、表面に柱状の凸部が形成された転写体の当該凸部の先端に導電粒子を付着させて転写を行うことにより製造できることを見出し、本発明の製造方法を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、絶縁性接着ベース層に導電粒子が平面格子パターンの格子点に配置された構造の異方性導電フィルムであって、
異方性導電フィルムの基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する導電粒子が配置されていない格子点の割合が、20%未満であり、
該平面格子パターンの全格子点に対する複数の導電粒子が凝集して配置されている格子点の割合が、15%以下であり、抜けと凝集の合計が25%未満である異方性導電フィルムを提供する。
【0010】
また、本発明は、絶縁性接着ベース層と絶縁性接着カバー層とが積層され、それらの界面近傍に導電粒子が平面格子パターンの格子点に配置された構造の異方性導電フィルムであって、
異方性導電フィルムの基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する導電粒子が配置されていない格子点の割合が、20%未満であり、
該平面格子パターンの全格子点に対する複数の導電粒子が凝集して配置されている格子点の割合が、5%以下である異方性導電フィルムを提供する。この場合も、抜けと凝集の合計は好ましくは25%未満である。
【0011】
また、本発明は、絶縁性接着ベース層と絶縁性接着カバー層とが積層され、それらの界面近傍に導電粒子が平面格子パターンの格子点に配置された構造の異方性導電フィルムの製造方法であって、以下の工程(イ)~(ホ):
<工程(イ)>
平面格子パターンの格子点に相当する柱状の凸部が表面に形成された転写体を用意する工程;
<工程(ロ)>
該転写体の凸部の少なくとも天面を微粘着層とする工程;
<工程(ハ)>
該転写体の凸部の微粘着層に導電粒子を付着させる工程;
<工程(ニ)>
該転写体の導電粒子が付着した側の表面に絶縁性接着ベース層を重ねて押圧することにより、絶縁性接着ベース層に導電粒子を転着させる工程;及び
<工程(ホ)>
導電粒子が転着した絶縁性接着ベース層に対し、導電粒子転着面側から絶縁性接着カバー層を積層する工程
を有する製造方法を提供する。
【0012】
更に、本発明は、第1の電子部品の端子と、第2の電子部品の端子とが、本発明の異方性導電フィルムにより異方性導電接続された接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の異方性導電フィルムにおいては、基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する「導電粒子が配置されていない格子点」の割合が20%未満に設定され、「複数の導電粒子が凝集して配置されている格子点」の割合が15%以下に設定され、しかも抜けと凝集の合計が25%未満に設定されている。このため、本発明の異方性導電フィルムを異方性導電接続に適用した場合、良好な初期導通抵抗値とエージング後の良好な導通信頼性とを実現でき、ショートの発生も抑制できる。また、COGのみならず、バンプ面積や距離が十分に大きい電子部品、例えばFOG等に対して、経済性に優れる。
【0014】
本発明の好ましい異方性導電フィルムにおいては、基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する「導電粒子が配置されていない格子点」の割合が20%未満に設定され、しかも「複数の導電粒子が凝集して配置されている格子点」の割合が5%以下である。このため、本発明の異方性導電フィルムを異方性導電接続に適用した場合、良好な初期導通抵抗値とエージング後の良好な導通信頼性とを実現でき、ショートの発生も抑制できる。
【0015】
また、本発明の異方性導電フィルムの製造方法においては、平面格子パターンの格子点に相当する柱状の凸部が表面に形成された転写体を使用し、その凸部の天面に形成した微粘着層に導電粒子を付着させた後に、その導電粒子を絶縁性接着ベース層に転写する。このため、異方性導電フィルムの基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する「導電粒子が配置されていない格子点」の割合を20%未満とし且つ平面格子パターンの全格子点に対する「複数の導電粒子が凝集して配置されている格子点」の割合を5%以下にすることができる。よって、本発明の製造方法は、経済的に有利に異方性導電フィルムを製造することができ、この異方性導電フィルムを用いれば、狭ピッチ化したICチップと配線基板とを、ショートや導通不良の発生を大きく抑制しつつ、異方性導電接続が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の異方性導電フィルムの断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の異方性導電フィルムの平面透視図である。
【
図3F】
図3Fは、本発明の製造方法の工程説明図であると同時に、本発明の異方性導電フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の異方性導電フィルムは、絶縁性接着ベース層と絶縁性接着カバー層とが積層され、それらの界面近傍に導電粒子が平面格子パターンの格子点に配置された構造を有する。この異方性導電フィルムの基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する導電粒子が配置されていない格子点の割合は、20%未満であり、該平面格子パターンの全格子点に対する複数の導電粒子が凝集して配置されている格子点の割合は、15%以下であり、抜けと凝集の合計が25%未満である。以下、本発明の異方性導電フィルムを図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
<異方性導電フィルム>
図1(断面図)と
図2(平面透視図)に示すように、本発明の異方性導電フィルム10は、絶縁性接着ベース層11と絶縁性接着カバー層12とが積層され、それらの界面近傍に導電粒子13が平面格子パターン(
図2の点線)の格子点に配置された構造を有する。
図1及び
図2では、平面格子パターンは、異方性導電フィルム10の長手方向とそれに直交する方向(短手方向)に沿って想定されているが、長手方向と短手方向とに対し全体が傾斜して想定されてもよい。ここで、矢印Aは、平面格子の格子点に導電粒子が配置されていない位置、いわゆる導電粒子が「抜け」ている位置を示している。なお、矢印Bは、導電粒子同士が接触して凝集している位置を示しており、矢印Cは、導電粒子同士が非接触で凝集している位置を示している。ここで、「非接触で凝集」するとは、導電粒子同士が導電粒子の平均粒子径の25%を超えない範囲で近接していることを意味する。
【0019】
(導電粒子の「抜け」)
本発明の異方性導電フィルムにおいては、異方性導電フィルムの基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する「導電粒子が配置されていない格子点」(
図2のA)の割合(導電粒子が抜けている格子の割合)を20%未満、好ましくは18%以下、より好ましくは10~18%に設定する。これにより、本発明の異方性導電フィルムを異方性導電接続に適用した場合に、良好な初期導通性とエージング後の良好な導通信頼性とを実現でき、ショートの発生も抑制できる。
【0020】
(平面格子パターン)
平面格子パターンとしては、斜方格子、六方格子、正方格子、矩形格子、平行体格子が挙げられる。中でも、最密充填可能な六方格子が好ましい。
【0021】
ここで、異方性導電フィルムの基準領域として、異方性導電フィルム全面を選択することも可能であるが、通常、異方性導電フィルムの平面中央部の以下の関係式(A)、好ましくは関係式(1)と、関係式(2)及び(3)とを満たす辺X及び辺Yからなる略方形の領域を基準領域として選択することが好ましい。
【0022】
【0023】
なお、接続面積を比較的大きく取れるFOG接続に適用する場合には、フィルム中の導電粒子の存在量を少なくすることが可能であり、そのような場合には、以下に示すように、XとYとの値をそれぞれ大きくすること、好ましくは20D以上とすることが好ましく、「X+Y」の数値も100Dから400D近傍の数値、最終的には400Dとすることが好ましい。
【0024】
【0025】
式(A)及び(1)~(3)、上記式において、Dは、導電粒子の平均粒子径である。導電粒子の平均粒子径は、画像型の粒度分布計により測定することができる。面観察から計測してもよい。また、辺Yは異方性導電フィルムの長手方向(
図2参照)に対し±45°未満の範囲の直線であり、辺Xは辺Yに垂直な直線である。
【0026】
このように基準領域を規定することにより、基準領域を導電粒子が押圧されるバンプの形状に相似ないしは近似させることができ、結果的に、導電粒子の平面格子パターンからのズレの許容範囲を大きくすることができ、異方性導電接続を経済的に且つ安定して行えるようになる。換言すれば、この基準領域の最小の辺を導電粒子径の5倍以上とすることにより、この範囲内で想定される範囲内で導電粒子の位置ズレや抜け、近接があっても、いずれかのバンプで捕捉され、且つバンプ間スペースで過度に凝集することがないため、異方性導電接続を確実に行うことができる。
【0027】
なお、最小の辺を導電粒子径の5倍以上とする理由は、一般的に、異方性導電接続されるバンプの少なくとも1辺において捕捉を確実にするため導電粒子の平均粒子径よりも大きくする必要があり、しかもバンプ間スペースについてもショート防止の理由から、導電粒子の平均粒子径の望ましくは2倍以上の大きさを設ける必要があるからである。換言すれば、一つの基準となる円形の導電粒子に着目したときに、この導電粒子の平均粒子径Dにその径の4倍の長さ(4D)を足した長さ(即ち5D)を直径とする同心円内で想定外の不良が生じなければ、上記の要件を満たすことができると考えられるからである。また、ファインピッチとする場合のバンプ間の最小距離が、一例として、導電粒子径の4倍未満となるからでもある。
【0028】
(導電粒子の凝集)
また、本発明の異方性導電フィルムにおいては、平面格子パターンの全格子点に対する複数の導電粒子が凝集して配置されている格子点(
図2のB及びC)の割合は、好ましくは15%以下、より好ましくは5%以下である。0%になることが理論上最も好ましいことから、0.1%未満でもよい。凝集配置格子点の割合が5%以下であれば、本発明の異方性導電フィルムを異方性導電接続に適用した場合にも、より良好な初期導通性とエージング後の導通信頼性とを実現でき、ショートの発生もいっそう抑制できる。ここで、一つの格子点に対する導電粒子の凝集の程度は、ショート抑制の観点から小さい方が好ましく、2個を超えないことが好ましい。なお、
図2のCのように、凝集している導電粒子同士が互いに接触していない場合には、その間隔は導電粒子の平均粒子径の25%以内が好ましく、より好ましくは15%以内である。
【0029】
(導電粒子の配置)
導電粒子は、フィルムの長手方向と垂直な方向に、11個以上連続で配置されていることが好ましく、13個以上連続で配置されていることがより好ましい。これは、バンプの長手方向に対して導電粒子の欠落が生じると、異方性導電接続に支障をきたすおそれが生じるためである。この場合、フィルムの長手方向に沿って連続した3列全てで上の条件を満たすことが好ましく、5列全てで上の条件を満たすことがより好ましい。これにより、バンプに捕捉される導電粒子数を一定以上にすることができ、安定な異方性導電接続を行うことができる。
【0030】
導電粒子が凝集している場合、2個凝集した導電粒子の周囲には、2個連結した導電粒子の組みが3つ以下であることが好ましく、より好ましくは2つ以下、更により好ましくは1つ以下である。2個凝集した導電粒子が密集して存在すると、ショート発生の要因になるからである。
【0031】
また、導電粒子の欠落は、フィルムの長手方向に4個以上連続するものと、フィルムの長手方向と垂直な方向に4個以上連続するものが交わっていないことが好ましく、4個以上連続する何れかの欠落が、一つ以上の格子点になる導電粒子を介して隣接していないことがより好ましく、4個以上連続する何れかの欠落が、二つ以上の格子点になる導電粒子を介して隣接していないことが更により好ましい。このような欠落の交わりは、一つの方向の欠落に対して3列まで同時に交わっても問題はない。欠落がこれ以上に連続していなければ、その近傍の導電粒子によってバンプに捕捉されるからである。
【0032】
なお、このように連続する欠落が交わった領域が近傍に複数あることは、一般に好ましくないが、欠落した領域と同数以上の導電粒子の配列を介していれば異方性導電接続の安定性には問題はない。
【0033】
(粒子面積占有率)
更に、異方性導電フィルムの基準領域の面積に対する、その面積中に存在する全導電粒子の粒子面積占有率は、FOG接続のように、バンプサイズやバンプ間距離が比較的大きいものに対しては、通常0.15%以上、好ましくは0.35%以上、より好ましくは1.4%以上が有効である。この場合の上限は35%以下が好ましく、32%以下がより好ましい。また、バンプサイズやバンプ間距離が比較的小さくなる場合(例えばCOG接続)には、更に好ましくは15~35%、特に好ましくは16~20%である。この範囲であれば、本発明の異方性導電フィルムを異方性導電接続に適用した場合にも、より良好な初期導通性とエージング後の導通信頼性とを実現でき、ショートの発生もいっそう抑制できる。ここで、粒子面積占有率は、基準領域の面積Sに対する、その基準領域内に存在する全導電粒子が占有する面積の割合である。全導電粒子が占有する面積とは、導電粒子の平均粒子径をRとし、導電粒子の数をnとした時に(R/2)2×π×nで表される。従って、粒子面積占有率(%)=[{(R/2)2×π×n}/S]×100で表される。
【0034】
ちなみに、導電粒子の平均粒子径が2μm、個数密度500個/mm2(0.0005個/μm2)、X=Y=200D、X+Y=400Dとした場合の計算上の粒子面積占有率は、0.157%となる。導電粒子の平均粒子径が3μm、個数密度500個/mm2(0.0005個/μm2)、X=Y=200D、X+Y=400Dとした場合の計算上の粒子面積占有率は、0.35325%となる。導電粒子の平均粒子径が3μm、個数密度2000個/mm2(0.002個/μm2)、X=Y=200D、X+Y=400Dとした場合の計算上の粒子面積占有率は、1.413%となる。また、導電粒子の平均粒子径が30μm、個数密度500個/mm2(0.0005個/μm2)、X=Y=200D、X+Y=400Dとした場合の計算上の粒子面積占有率は、35.325%となる。
【0035】
(導電粒子)
導電粒子としては、公知の異方性導電フィルムにおいて使用されているものを適宜選択して使用することができる。例えば、ニッケル、銅、銀、金、パラジウムなどの金属粒子、ポリアミド、ポリベンゾグアナミン等の樹脂粒子の表面をニッケルなどの金属で被覆した金属被覆樹脂粒子等を挙げることができる。また、導電粒子の平均粒子径は、製造時の取り扱い性の観点から、好ましくは1~30μm、より好ましくは1~10μm、特に好ましくは2~6μmである。平均粒子径は、前述したように、画像型粒度分布計により測定することができる。面観察から計測してもよい。
【0036】
異方性導電フィルム中の導電粒子の存在量は、平面格子パターンの格子ピッチ並びに導電粒子の平均粒子径に依存しており、通常は、300~40000個/mm2である。
【0037】
(隣接格子点間距離)
また、異方性導電フィルムに想定される平面格子パターンにおける隣接格子点間距離は、導電粒子の平均粒子径の好ましくは0.5倍より大きく、より好ましくは1倍以上、更に好ましくは1~20倍である。この範囲であれば、本発明の異方性導電フィルムを異方性導電接続に適用した場合にも、より良好な初期導通性とエージング後の導通信頼性とを実現でき、ショートの発生もいっそう抑制できる。
【0038】
(絶縁性接着ベース層)
絶縁性接着ベース層11としては、公知の異方性導電フィルムにおいて絶縁性接着ベース層として使用されているものを適宜選択して使用することができる。例えば、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合性樹脂層、アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合性樹脂層、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合性樹脂層、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合性樹脂層等、又はそれらの硬化樹脂層を使用することができる。また、これらの樹脂層には、必要に応じてシランカップリング剤、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を適宜選択して含有させることができる。
【0039】
なお、絶縁性接着ベース層11は、上述したような樹脂を含むコーティング組成物を塗布法により成膜し乾燥させることや、更に硬化させることにより、あるいは予め公知の手法によりフィルム化することにより形成することができる。
【0040】
このような絶縁性接着ベース層11の厚みは、好ましくは1~30μm、より好ましくは2~15μmである。
【0041】
(絶縁性接着カバー層)
絶縁性接着カバー層12としては、公知の異方性導電フィルムにおいて絶縁性接着カバー層として使用されているものを適宜選択して使用することができる。また、先に説明した絶縁性接着ベース層11と同じ材料から形成したものも使用することができる。
【0042】
なお、絶縁性接着カバー層12は、上述したような樹脂を含むコーティング組成物を塗布法により成膜し乾燥させることや、更に硬化させることにより、あるいは予め公知の手法によりフィルム化することにより形成することができる。
【0043】
このような絶縁性接着カバー層12の厚みは、好ましくは1~30μm、より好ましくは2~15μmである。
【0044】
更に、絶縁性接着ベース層11や絶縁性接着カバー層12には、必要に応じてシリカ微粒子、アルミナ、水酸化アルミニウム等の絶縁性フィラーを加えてもよい。絶縁性フィラーの配合量は、それらの層を構成する樹脂100質量部に対して3~40質量部とすることが好ましい。これにより、異方性導電接続の際に絶縁接着剤層10が溶融しても、溶融した樹脂で導電粒子2が不要に移動することを抑制することができる。
【0045】
(絶縁性接着ベース層と絶縁性接着カバー層との積層、導電粒子の埋め込み)
なお、導電粒子13を挟んで絶縁性接着ベース層11と絶縁性カバー層12とを積層する場合、公知の手法により行うことができる。この場合、導電粒子13は、これらの層の界面近傍に存在する。ここで、「界面近傍に存在」とは、導電粒子の一部が一方の層に食い込み、残部が他方の層に食い込んでいることを示している。また、導電粒子を絶縁性接着ベース層に埋め込んでもよい。この場合、絶縁性接着カバー層を積層しなくとも形成することができる。
【0046】
<異方性導電フィルムの製造>
次に、絶縁性接着ベース層と絶縁性接着カバー層とが積層され、それらの界面近傍に導電粒子が平面格子パターンの格子点に配置された構造の本発明の異方性導電フィルムの製造方法を説明する。この製造方法は、以下の工程(イ)~(ホ)を有する。図面を参照しながら、工程毎に詳細に説明する。なお、本発明は特にこの製造方法に限定されるものではない。
【0047】
(工程(イ))
まず、
図3Aに示すように、平面格子パターンの格子点に相当する柱状の凸部101が表面に形成されている転写体100を用意する。ここで、柱状とは、円柱状もしくは角柱状(三角柱、四角柱、六角柱等)である。この柱状は錐体を含む。好ましくは円柱状である。凸部101の高さは、異方性導電接続すべき端子ピッチ、端子巾、スペース巾、導電粒子の平均粒子径等に応じて決定することができるが、使用する導電粒子の平均粒子径の好ましくは1.2倍以上2倍未満である。また、凸部101の巾(半分の高さでの巾)は、導電粒子の平均粒子径の好ましくは0.7倍以上1.3倍以下である。この高さと巾がこれらの範囲であれば、脱落と抜けが連続的に発生することが避けられるという効果が得られる。
【0048】
更に、凸部101は、導電粒子が安定的に付着していられるようなレベルの平坦な天面を有する。
【0049】
*転写体の具体例
この工程(イ)で用意すべき転写体は、公知の手法を利用して作成することができ、例えば、金属プレートを加工して原盤を作成し、それに硬化性樹脂を塗布し、硬化させて作成することができる。具体的には、平坦な金属板を切削加工して、凸部に対応した凹部を形成した転写体原盤も作成し、この原盤の凹部形成面に転写体を構成する樹脂組成物を塗布し、硬化させた後、原盤から引き離すことにより転写体が得られる。
【0050】
(工程(ロ))
次に、
図3Bに示すように、表面に複数の凸部101が平面格子パターンで形成された転写体100の凸部101の少なくとも天面を微粘着層102とする。
【0051】
*転写体の微粘着層
微粘着層102は、異方性導電フィルムを構成する絶縁性接着ベース層に導電粒子が転着されるまで、導電粒子を一時的に保持できる粘着力を示す層であり、凸部101の少なくとも天面に形成される。従って、凸部101全体が微粘着性であってもよい。微粘着層102の厚みは、微粘着層102の材質、導電粒子の粒子径等に応じて適宜決定することができる。また、“微粘着”とは、絶縁性接着ベース層に導電粒子を転着する際に、絶縁性接着ベース層よりも粘着力が弱いという意味である。
【0052】
このような微粘着層102は、公知の異方性導電フィルムに使用されている微粘着層を適用することができる。例えば、シリコーン系の粘着剤組成物や絶縁性接着ベース層や絶縁性接着カバー層と同材質の粘着層を、凸部101の天面に塗布することにより形成することができる。
【0053】
(工程(ハ))
次に、
図3Cに示すように、転写体100の凸部101の微粘着層102に導電粒子103を付着させる。具体的には、転写体100の凸部101の上方から導電粒子103を散布し、微粘着層102に付着しなかった導電粒子103をブロアを用いて吹き飛ばせばよい。もしくは
図3Cから面の方向を逆転させ、導電粒子を一面に敷き詰めた面に突起の天面を付着させてもよい。導電粒子に不要な応力を加えないためである。このように配置に必要な導電粒子のみを突起天面に付着させることで導電粒子を回収し再利用しやすくなり、開口部に導電粒子を充填し取り出す方法に比べ、経済性にも優れることになる。なお、開口部に導電粒子を充填し取り出す方法の場合、充填されなかった導電粒子には不要な応力がかかりやすくなることが懸念される。
【0054】
なお、
図3Cでは、左半分の凸部101の巾を、右半分の凸部101よりも狭く調整している。この結果、左半分と右半分では、
図3Cに示すように、導電粒子103の凝集の態様に相違点が生ずることがある。
【0055】
(工程(ニ))
次に、
図3Dに示すように、転写体100の導電粒子103が付着した側の表面を、異方性導電フィルムを構成すべき絶縁性接着ベース層104を重ねて押圧することにより、絶縁性接着ベース層104の片面に導電粒子103を転着させる(
図3E)。この場合、転写体100を、その凸部101が下向きになるように絶縁性接着ベース層104に重ねて押圧することが好ましい。下向きにしてブロアすることで、凸部の天面に貼着されていない導電粒子を除去し易くさせるためである。
【0056】
(工程(ホ))
図3Fに示すように、導電粒子103が転着した絶縁性接着ベース層104に対し、導電粒子転着面側から絶縁性接着カバー層105を積層する。これにより本発明の異方性導電フィルム200が得られる。
【0057】
なお、この異方性導電フィルム200においては、平面格子パターンの一つの格子点に複数の導電粒子同士が水平方向に接触してあるいは近接して凝集配置される場合がある。これは、導電粒子を転写体の凸部の微粘着層に付着させる際に、凸部の幅(微粘着層の幅)と導電粒子の平均粒子径とが略同等の大きさのため、一つの凸部上に導電粒子が複数存在すること考え難いものの、余分な導電粒子が微粘着層の端部に付着したり、凸部から脱落しブロアーしきれなかったものが転写体の凸部間隙に残存する場合があり得るからである。
【0058】
<接続構造体>
本発明の異方性導電フィルムは、第1の電子部品(例えば、ICチップ)の端子(例えばバンプ)と、第2の電子部品(例えば配線基板)の端子(例えばバンプ、パッド)との間に配置し、第1又は第2の電子部品側から熱圧着により本硬化させて異方性導電接続することにより、ショートや導通不良が抑制された、いわゆるCOG(chip on glass)やFOG(film on glass)等の接続構造体を与えることができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0060】
実施例1
厚さ2mmのニッケルプレートを用意し、四方格子パターンで円柱状の凹部(内径5μm、深さ6μm)を形成し、転写体原盤とした。隣接凹部中心間距離は8μmであった。従って、凹部の密度は16000個/mm2であった。
【0061】
得られた転写体原盤に、フェノキシ樹脂(YP-50、新日鉄住金化学(株))60質量部、アクリレート樹脂(M208、東亞合成(株))29質量部、光重合開始剤(IRGCUR184、BASFジャパン(株))2質量部を含有する光重合性樹脂組成物を、乾燥厚みが30μmとなるようにPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布し、80℃で5分間乾燥後、高圧水銀ランプにて1000mJ光照射することにより転写体を作成した。
【0062】
転写体を原盤から引き剥がし、凸部が外側になるように直径20cmのステンレス製のロールに巻き付け、このロールを、回転させながらエポキシ樹脂(jER828、三菱化学(株))70質量部とフェノキシ樹脂(YP-50、新日鉄住金化学(株))30質量部とを含有する微粘着剤組成物を、不織布に含浸させた粘着シートに接触させ、凸部の天面に微粘着剤組成物を付着させ、厚さ1μmの微粘着層を形成して転写体を得た。
【0063】
この転写体の表面に、平均粒子径4μmの導電粒子(ニッケルメッキ樹脂粒子(AUL704、積水化学工業(株)))を散布した後、ブロアすることにより微粘着層に付着していないで導電粒子を除去した。
【0064】
導電粒子が付着した転写体を、その導電粒子付着面から、絶縁性接着ベース層である厚さ5μmのシート状の熱硬化型の絶縁性接着フィルム(フェノキシ樹脂(YP-50、新日鉄住金化学(株))60質量部、エポキシ樹脂(jER828、三菱化学(株))40質量部、カチオン系硬化剤(SI-60L、三新化学工業(株))2質量部、及びシリカ微粒子(アエロジルRY200、日本アエロジル(株))20質量部を含有する絶縁性接着組成物から形成したフィルム)に対し、温度50℃、圧力0.5MPaで押圧することにより、絶縁性接着ベース層に導電粒子を転写させた。
【0065】
得られた絶縁性接着ベース層の導電粒子転着面に、透明な絶縁性接着カバー層として厚さ15μmのシート状の別の絶縁性接着フィルム(フェノキシ樹脂(YP-50、新日鉄住金化学(株))60質量部、エポキシ樹脂(jER828、三菱化学(株))40質量部、及びカチオン系硬化剤(SI-60L、三新化学工業(株))2質量部を含有する絶縁性接着組成物から形成されたフィルム)を重ね、温度60℃、圧力2MPaで積層した。これにより異方性導電フィルムが得られた。
【0066】
実施例2
導電粒子の散布量とブロア回数とを実施例1の場合に比べてそれぞれ2倍とすること以外、実施例1を繰り返すことにより異方性導電フィルムを得た。
【0067】
実施例3
転写体原盤の凹部の内径を3.6μm、隣接凹部中心間距離を6μmとして凹部の密度を28000個/mm2とし、且つ平均粒子径4μmの導電粒子に代えて平均粒子径3μmの導電粒子(AUL703、積水化学工業(株)))を使用すること以外、実施例1を繰り返すことにより異方性導電フィルムを得た。
【0068】
実施例4
導電粒子の散布量とブロア回数とを実施例3の場合に比べてそれぞれ2倍とすること以外、実施例3を繰り返すことにより異方性導電フィルムを得た。
【0069】
比較例1
転写体原盤の凹部の深さを4.4μm、凹部の内径を4.8μm、隣接凹部中心間距離を5.6μmとして凹部の密度を32000個/mm2とすること以外、実施例1を繰り返すことにより異方性導電フィルムを得た。
【0070】
比較例2
転写体原盤の凹部の深さを3.3μm、凹部の内径を3.6μm、隣接凹部中心間距離を4.2μmとして凹部の密度を57000個/mm2とし、且つ平均粒子径4μmの導電粒子に代えて平均粒子径3μmの導電粒子(AUL703、積水化学工業(株))を使用すること以外、実施例1を繰り返すことにより異方性導電フィルムを得た。
【0071】
<評価>
(導電粒子の「抜け」と「凝集」)
実施例1~4及び比較例1~2の異方性導電フィルムについて、その透明な絶縁性接着カバー層側から光学顕微鏡(MX50、オリンパス(株))で1cm四方の領域を観察し、想定される平面格子パターンにおいて導電粒子が付着していない格子点の全格子点に対する割合(抜け[%])と、2個以上の導電粒子が凝集している格子点の全格子点に対する割合とを調べた。得られた結果を表1に示す。
【0072】
また、凝集した導電粒子同士の最大距離(凝集距離)を測定し、併せて表1に示した。なお、「凝集」方向は、いずれも異方性導電フィルムの水平方向であった。
【0073】
(粒子面積占有率)
導電粒子の平均粒子径と、転写体原盤の凹部密度(=転写体の凸部密度)とから、導電粒子の「抜け」と「凝集」とを考慮した上で、粒子面積占有率を計算した。得られた結果を表1に示す。
【0074】
(初期導通抵抗)
実施例及び比較例の異方性導電フィルムを用いて、バンプ間スペースが12μmで、高さ15μm、30×50μmの金バンプを有するICチップと、12μmスペースの配線が設けられたガラス基板とを180℃、60MPa、5秒という条件で異方性導電接続し、接続構造体を得た。得られた接続構造体について、抵抗測定器(デジタルマルチメーター7565、横河電気(株))を用いて初期導通抵抗値を測定した。得られた結果を表1に示す。0.5Ω以下であることが望まれる。
【0075】
(導通信頼性)
初期導通抵抗値の測定に使用した接続構造体を、温度85℃、湿度85%に設定されたエージング試験器中に投入し、500時間放置した後の導通抵抗値を、初期導通抵抗と同様に測定した。得られた結果を表1に示す。5Ω以下であることが望まれる。
【0076】
(ショート発生率)
初期導通抵抗で使用したものと同じ接続構造体を作成し、隣接する配線間のショートの発生の有無を調べた。得られた結果を表1に示す。ショート発生率が50ppm以下であることが望まれる。
【0077】
【0078】
表1の結果から、実施例1~4の異方性導電フィルムを使用した接続構造体は、初期導通抵抗、導通信頼性、ショート発生率の各評価項目について、良好な結果を示したことがわかる。
【0079】
他方、比較例1、2の異方性導電フィルムの場合、導電粒子の「抜け」の割合は少ないものの「凝集」の割合が高すぎるため、ショートの発生率の評価が低いものであった。
【0080】
実施例5
凹部密度が500個/mm2である転写原盤を使用するために隣接凹部中心間距離を調整すること以外、実施例2と同様にして転写体を作成し、更に異方性導電フィルムを作成した。得られた異方性導電フィルムについて、実施例2と同様に導電粒子の「抜け」と「凝集」とを測定し、更に粒子面積占有率を算出した。その結果、導電粒子の「抜け」と「凝集」とは実施例2と同等であった。また、粒子面積占有率は0.6%であった。
【0081】
また、得られた異方性導電フィルムを、ガラス基板(ITOベタ電極)とフレキシブル配線基板(バンプ幅:200μm、L(ライン)/S(スペース)=1、配線高さ10μm)との間に挟み、接続バンプ長さが1mmとなるように、180℃、80MPa、5秒という条件で異方性導電し、評価用の接続構造体を得た。得られた接続構造体について、その「初期導通抵抗値」と、温度85℃で湿度85%RHの恒温槽に500時間投入した後の「導通信頼性」とを、デジタルマルチメータ(34401A、アジレント・テクノロジー株式会社製)を使用して電流1Aで4端子法にて導通抵抗を測定し、「初期導通抵抗値」の場合には、測定値が2Ω以下の場合を良好、2Ωを超えるものを不良と評価し、「導通信頼性」の場合には、測定値が5Ω以下の場合を良好、5Ω以上の場合を不良と評価した。その結果、実施例5の接続構造体は、いずれも「良好」と評価された。また、実施例2と同様に「ショート発生率」を測定したところ、実施例2と同様に良好な結果が得られた。
【0082】
実施例6
凹部密度が2000個/mm2である転写原盤を使用するために隣接凹部中心間距離を調整すること以外、実施例2と同様にして転写体を作成し、更に異方性導電フィルムを作成した。得られた異方性導電フィルムについて、実施例2と同様に導電粒子の「抜け」と「凝集」とを測定し、更に粒子面積占有率を算出した。その結果、導電粒子の「抜け」と「凝集」とは実施例2と同等であった。また、粒子面積占有率は2.4%であった。
【0083】
また、得られた異方性導電フィルムを、実施例5と同様にガラス基板とフレキシブル配線基板との間に挟み異方性導電接続することにより評価用の接続構造体を得た。得られた接続構造体について、実施例5と同様に、「初期導通抵抗値」、「導通信頼性」、「ショート発生率」とを評価したところ、いずれも良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の好ましい異方性導電フィルムにおいては、基準領域に想定される平面格子パターンの全格子点に対する「導電粒子が配置されていない格子点」の割合が20%未満に設定され、しかも平面格子パターンの全格子点に対する「複数の導電粒子が凝集して配置されている格子点」の割合が5%以下である。このため、本発明の異方性導電フィルムを異方性導電接続に適用した場合、良好な初期導通性とエージング後の良好な導通信頼性とを実現でき、ショートの発生も抑制できるので、狭ピッチ化したICチップと配線基板とを、異方性導電接続する場合に有用である。
【符号の説明】
【0085】
10、200 異方性導電フィルム
11、104 絶縁性接着ベース層
12、105 絶縁性接着カバー層
13、103 導電粒子
100 転写体
101 凸部
102 微粘着層
A 導電粒子が抜けている格子点
B 導電粒子が互いに接して凝集している格子点
C 導電粒子が互いに離間して凝集している格子点