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特許7067597情報提供方法、情報提供装置、移動端末の動作方法、移動端末およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】情報提供方法、情報提供装置、移動端末の動作方法、移動端末およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 67/52 20220101AFI20220509BHJP
   G06Q 50/30 20120101ALI20220509BHJP
【FI】
H04L67/52
G06Q50/30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020183526
(22)【出願日】2020-11-02
(62)【分割の表示】P 2015060687の分割
【原出願日】2015-03-24
(65)【公開番号】P2021036444
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】特許業務法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山浦 敦
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 裕之
【審査官】岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-301969(JP,A)
【文献】特開2007-053811(JP,A)
【文献】特開平11-355316(JP,A)
【文献】特開2007-079922(JP,A)
【文献】特開2002-101461(JP,A)
【文献】特開2014-164418(JP,A)
【文献】特開2009-147458(JP,A)
【文献】特開2005-329835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 67/52
G06Q 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報提供装置が、
特定の場所における情報画像の撮像により移動端末が取得した案内識別情報を当該移動端末から受信し、
前記案内識別情報について当該移動端末を登録し、
前記特定の場所における案内音声の放音毎に、当該場所に対応する案内識別情報について登録された移動端末に対して、前記案内音声に関連するコンテンツを提供する
情報提供方法。
【請求項2】
特定の場所における情報画像の撮像により移動端末が取得した案内識別情報を当該移動端末から受信した場合に、前記案内識別情報について当該移動端末を登録する登録処理部と、
前記特定の場所における案内音声の放音毎に、当該場所に対応する案内識別情報について登録された移動端末に対して、前記案内音声に関連するコンテンツを提供する情報配信部と
を具備する情報提供装置。
【請求項3】
移動端末から受信した案内識別情報について当該移動端末を登録し、特定の場所における案内音声の放音毎に、当該場所に対応する案内識別情報について登録された移動端末に対して、前記案内音声に関連するコンテンツを提供する情報提供装置と通信可能な移動端末の動作方法であって、
前記特定の場所における情報画像の撮像により案内識別情報を取得し、
前記取得した案内識別情報を前記情報提供装置に送信し、
前記コンテンツを前記情報提供装置から受信する
移動端末の動作方法。
【請求項4】
移動端末から受信した案内識別情報について当該移動端末を登録し、特定の場所における案内音声の放音毎に、当該場所に対応する案内識別情報について登録された移動端末に対して、前記案内音声に関連するコンテンツを提供する情報提供装置と通信可能な移動端末であって、
前記特定の場所における情報画像の撮像により案内識別情報を取得し、当該案内識別情報を前記情報提供装置に送信する情報取得部と、
前記情報提供装置から受信したコンテンツを再生する再生制御部と
を具備する移動端末。
【請求項5】
移動端末から受信した案内識別情報について当該移動端末を登録し、特定の場所における案内音声の放音毎に、当該場所に対応する案内識別情報について登録された移動端末に対して、前記案内音声に関連するコンテンツを提供する情報提供装置と通信可能な移動端末の処理装置を、
前記特定の場所における情報画像の撮像により案内識別情報を取得し、当該案内識別情報を前記情報提供装置に送信する情報取得部、および、
前記情報提供装置から受信したコンテンツを再生する再生制御部
として機能させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内音声に関連するコンテンツを提供するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像や音声等のコンテンツを移動端末にて再生するための各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、配信対象として事前に登録された移動端末に対して、当該移動端末の位置に応じたコンテンツを配信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-351905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば電車やバス等の交通機関では、乗降や乗換等に関する情報を利用者に案内する案内音声が随時に再生される。案内音声の発音内容の文字列や翻訳文等のコンテンツを案内音声の放音毎に利用者の移動端末に提供できれば、例えば案内音声の聴取が困難な難聴者や案内音声の言語の理解が困難な外国人等の利用者も案内音声の内容を把握できて便利である。しかし、特許文献1の技術のもとでは、実際の案内音声の放音に連動したコンテンツの提供は想定されていない。以上の事情を考慮して、本発明は、案内音声の放音に連動したコンテンツの利用を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明のひとつの態様に係る情報提供方法は、情報提供装置が、特定の場所で提供される案内識別情報を移動端末から受信し、前記案内識別情報について当該移動端末を登録し、前記特定の場所における案内音声の放音毎に、当該場所に対応する案内識別情報について登録された移動端末に対して、前記案内音声に関連するコンテンツを提供する。
【0006】
本発明のひとつの態様に係る情報提供装置は、特定の場所で提供される案内識別情報を移動端末から受信した場合に、前記案内識別情報について当該移動端末を登録する登録処理部と、前記特定の場所における案内音声の放音毎に、当該場所に対応する案内識別情報について登録された移動端末に対して、前記案内音声に関連するコンテンツを提供する情報配信部とを具備する。
【0007】
本発明のひとつの態様に係る移動端末の動作方法は、移動端末から受信した案内識別情報について当該移動端末を登録し、特定の場所における案内音声の放音毎に、当該場所に対応する案内識別情報について登録された移動端末に対して、前記案内音声に関連するコンテンツを提供する情報提供装置と通信可能な移動端末の動作方法であって、前記特定の場所で提供される案内識別情報を取得し、前記取得した案内識別情報を前記情報提供装置に送信し、前記コンテンツを前記情報提供装置から受信する。
【0008】
本発明のひとつの態様に係る移動端末は、移動端末から受信した案内識別情報について当該移動端末を登録し、特定の場所における案内音声の放音毎に、当該場所に対応する案内識別情報について登録された移動端末に対して、前記案内音声に関連するコンテンツを提供する情報提供装置と通信可能な移動端末であって、前記特定の場所で提供される案内識別情報を取得し、当該案内識別情報を前記情報提供装置に送信する情報取得部と、前記情報提供装置から受信したコンテンツを再生する再生制御部とを具備する。
【0009】
本発明のひとつの態様に係るプログラムは、移動端末から受信した案内識別情報について当該移動端末を登録し、特定の場所における案内音声の放音毎に、当該場所に対応する案内識別情報について登録された移動端末に対して、前記案内音声に関連するコンテンツを提供する情報提供装置と通信可能な移動端末の処理装置を、前記特定の場所で提供される案内識別情報を取得し、当該案内識別情報を前記情報提供装置に送信する情報取得部、および、前記情報提供装置から受信したコンテンツを再生する再生制御部、として機能させる。
【0010】
また、以上の課題を解決するために、本発明の信号生成装置は、放音装置に供給される音響信号を生成する信号生成装置であって、案内音声を表す原音響信号のうち放音装置による再生帯域の上限値から低域側の所定幅にわたる利用帯域の音響成分を抑圧して第1音響信号を生成する成分抑圧手段と、案内音声に関連するコンテンツの識別情報を利用帯域内の音響成分として含有する第2音響信号を生成する変調処理手段と、成分抑圧手段が生成した第1音響信号と変調処理手段が生成した第2音響信号とを合成する混合処理手段とを具備する。以上の構成では、案内音声を表す第1音響信号と、案内音声に関連するコンテンツの識別情報を示す第2音響信号との合成で音響信号が生成される。したがって、放音装置に対する音響信号の供給で案内音声を放音するとともに、音響信号内の識別情報で指定されるコンテンツを利用することが可能である。また、案内音声を表す原音響信号のうち放音装置による再生帯域の上限値から低域側の所定幅にわたる利用帯域の音響成分を抑圧した第1音響信号と、識別情報を利用帯域内の音響成分として含有する第2音響信号との合成で音響信号が生成されるから、案内音声を聴取する利用者に識別情報の音響成分が知覚される可能性を低減しながら、音響信号から識別情報を高精度に抽出できるという利点がある。
【0011】
利用者が案内音声の内容を認識するために特に重要なのは概ね4kHz以下の音響成分である、という傾向を前提とすると、5kHz以上かつ8kHz以下の周波数帯域に利用帯域が包含され、利用帯域の帯域幅が2kHz以上かつ3kHz以下である態様が格別に好適である。以上の態様によれば、利用者による案内音声の認識を阻害することなく識別情報を音響信号に含有させることが可能である。
【0012】
本発明の好適な態様において、変調処理手段は、第1音響信号が表す案内音声の音圧レベルに対して-80dB以上かつ-50dB以下の範囲内の音圧レベルの第2音響信号を生成する。以上の態様では、第2音響信号の音圧レベルが案内音声の音圧レベルに対して-50dB以下に設定されるから、案内音声を聴取する利用者に識別情報の音響成分が知覚される可能性を低減できるという効果は顕著である。また、第2音響信号の音圧レベルが案内音声の音圧レベルに対して-80dB以上に設定されるから、音響信号の解析で識別情報を高精度に抽出できるという利点がある。
【0013】
本発明に係る音声案内装置は、音響信号に応じた音響を放音する放音装置と、案内音声を表す原音響信号のうち放音装置による再生帯域の上限値から低域側の所定幅にわたる利用帯域の音響成分を抑圧した第1音響信号と、案内音声に関連するコンテンツの識別情報を利用帯域内の音響成分として含有する第2音響信号とを合成した音響信号を、放音装置と、当該音響信号の解析で識別情報を抽出可能な情報抽出手段とに供給する再生処理手段とを具備する。以上の態様では、案内音声を表す第1音響信号と、案内音声に関連するコンテンツの識別情報を示す第2音響信号との合成で音響信号が生成されるから、放音装置に対する音響信号の供給で案内音声を放音するとともに、音響信号内の識別情報で指定されるコンテンツを利用することが可能である。また、案内音声を表す原音響信号のうち放音装置による再生帯域の上限値から低域側の所定幅にわたる利用帯域の音響成分を抑圧した第1音響信号と、識別情報を利用帯域内の音響成分として含有する第2音響信号との合成で生成された音響信号を利用するから、案内音声を聴取する利用者に識別情報の音響成分が知覚される可能性を低減しながら、音響信号から識別情報を高精度に抽出できるという利点がある。
【0014】
本発明に係る音声案内装置の好適例において、再生処理手段は、当該音声案内装置とは別体の管理端末に搭載された情報抽出手段に対して音響信号を有線で送信する。以上の態様では、案内音声の音響成分と識別情報の音響成分とを含有する音響信号が有線で再生処理手段から管理端末に送信される。したがって、識別情報の音響成分が知覚され難くなるように当該音響成分の音量を充分に抑制した場合でも音響信号から高精度に識別情報を特定できるという利点がある。
【0015】
以上の各態様に係る信号生成装置および音声案内装置は、専用の電子回路で実現されるほか、CPU(Central Processing Unit)等の汎用の演算処理装置とプログラムとの協働によっても実現される。本発明のプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体や磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、例えば、本発明のプログラムは、通信網を介した配信の形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る情報提供システムの構成図である。
図2】音声案内装置の構成図である。
図3】信号生成装置の構成図である。
図4】信号生成装置の動作の説明図である。
図5】信号生成装置の動作のフローチャートである。
図6】管理端末の構成図である。
図7】移動端末の構成図である。
図8】情報提供装置の構成図である。
図9】情報提供システムの動作の説明図である。
図10】第2実施形態における移動端末の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る情報提供システム100の構成図である。第1実施形態の情報提供システム100は、電車やバス等の交通機関の利用者HAに情報を提供するコンピュータシステムであり、音声案内装置12と管理端末14と情報提供装置16とを具備する。交通機関の車輌M内に位置する各利用者HAは移動端末20を携帯する。移動端末20は、携帯電話機やスマートフォン等の可搬型の通信端末である。実際には車輌M内には複数の移動端末20が存在し得るが、以下の説明では便宜的に任意の1個の移動端末20に着目する。
【0018】
音声案内装置12および管理端末14は車輌M内に設置され、情報提供装置16は、移動通信網やインターネット等を含む通信網18に接続される。移動端末20および管理端末14は、通信網18を介して情報提供装置16と通信可能である。音声案内装置12は、交通機関に関する案内用の音声(以下「案内音声」という)を車輌M内の利用者HAに対して放音する。案内音声は、例えば交通機関の乗降(電車の駅やバスの停留所等の停車地点の名称)や乗換,運賃,運行状況(例えば遅延の有無),周辺の観光地等を案内する音声である。
【0019】
第1実施形態の情報提供システム100では、概略的には、図1に例示される通り、音声案内装置12による案内音声の放音毎に、当該案内音声に関連するコンテンツCの提供指示Pが管理端末14から情報提供装置16に送信され、提供指示Pで指定されたコンテンツCを含む配信情報Qが情報提供装置16から移動端末20に送信される。情報提供装置16から移動端末20に配信されるコンテンツCは、案内音声に関連する音声または画像(例えば静止画,動画,文字列)である。例えば、案内音声の発音内容を表現した文字列や当該発音内容の言語を他言語に翻訳した文字列または音声等の各種の情報がコンテンツCとして移動端末20に提供される。なお、第1実施形態では、複数の案内対象に関する案内の提供を想定する。案内対象は、案内の客体を意味し、典型的には案内が提供される場所である。図1では交通機関の車輌Mを案内対象として例示したが、実際には複数の案内対象の各々について(例えば同種の交通機関の車輌M毎に)音声案内装置12と管理端末14とが設置される。他方、情報提供装置16は複数の案内対象にわたり共用される。
【0020】
<音声案内装置12>
図2は、音声案内装置12の構成図である。図2に例示される通り、音声案内装置12は、再生処理部32と放音装置34とを具備する。再生処理部32は、案内音声を表す音響信号Sを放音装置34に供給し、放音装置34(例えばスピーカ)は、再生処理部32から供給される音響信号Sに応じた案内音声を車輌M内に放音する。
【0021】
図2に例示される通り、再生処理部32は、制御部322と記憶部324と操作部326とを具備する。記憶部324は、磁気記録媒体や半導体記録媒体等の公知の記録媒体であり、発音内容が相違する案内音声に対応する複数の音響信号Sを記憶する。例えば、車輌Mが停車する複数の地点(例えば電車の駅やバスの停留所等の停車地点)の各々について、当該地点に対する到着や当該地点での乗換、当該地点の周辺の情報を案内する案内音声の音響信号Sが記憶部324に記憶される。操作部326は、交通機関の管理者(典型的には車輌Mの運転者)HBによる操作を受付ける入力機器である。例えば管理者HBは、操作部326を適宜に操作することで、記憶部324に記憶された複数の案内音声のうち任意の1個の案内音声を選択することが可能である。
【0022】
制御部322は、例えばCPU等の処理装置で構成され、音声案内装置12の各要素を統括的に制御する。第1実施形態の制御部322は、記憶部324に記憶された複数の音響信号Sのうち操作部326に対する操作で管理者HBが選択した案内音声の音響信号Sを放音装置34に供給する。したがって、管理者HBによる指示毎に放音装置34から案内音声が放音される。車輌M内の利用者HAは、放音装置34から放音される案内音声を聴取することが可能である。
【0023】
任意の1個の案内音声の音響信号Sには、当該案内音声に関連するコンテンツCを一意に識別するための識別情報Dが含有される。図2に図示された信号生成装置200は、識別情報Dを含有する音響信号Sを生成する装置である。相異なる案内音声について信号生成装置200が生成した複数の音響信号Sが、例えば通信網18や可搬型の記録媒体を介して音声案内装置12に転送されたうえで記憶部324に格納される。
【0024】
<信号生成装置200>
図3は、信号生成装置200の構成図である。図3に例示される通り、信号生成装置200は、制御部42と記憶部44とを具備する。信号生成装置200の制御部42は、例えばCPU等の処理装置で構成され、記憶部44に記憶されたプログラムを実行することで、音響信号Sを生成するための複数の要素(成分抑圧部422,変調処理部424,混合処理部426)として機能する。記憶部44は、例えば磁気記録媒体や半導体記録媒体等の公知の記録媒体である。第1実施形態の記憶部44には、相異なる複数の案内音声の各々について、当該案内音声を表す音響信号(以下「原音響信号」という)S0と、当該案内音声に関連するコンテンツCに固有の識別情報Dとが記憶される。原音響信号S0が表す案内音声は、例えば、特定の発声者が実際に発音した音声の収録音や、公知の音声合成技術で生成された音声である。
【0025】
図4は、信号生成装置200の動作の説明図である。図4に例示される通り、原音響信号S0は、放音装置34が再生可能な音響の周波数帯域(以下「再生帯域」という)B0の略全域にわたる音響成分を含有する。第1実施形態では、約20Hzから20kHzまでの可聴帯域のうち高域側の周波数帯域の音響成分を再生できない低性能な放音装置34を想定する。具体的には、放音装置34の再生帯域B0の上限値Fが8kHzである場合を例示する。
【0026】
図3の成分抑圧部422は、図4に例示される通り、記憶部44に記憶された原音響信号S0のうち放音装置34による再生帯域B0の上限値Fから低域側の所定の帯域幅Wにわたる周波数帯域(以下「利用帯域」という)BAの音響成分を抑圧することで音響信号(第1音響信号)SAを生成する。例えば、上限値Fと比較して利用帯域BAの帯域幅Wだけ低い周波数FCを遮断周波数とする低域通過フィルタが成分抑圧部422として利用される。
【0027】
図3の変調処理部424は、記憶部44が記憶する識別情報Dを利用帯域BA内の音響成分として含有する音響信号(第2音響信号)SBを生成する。識別情報Dを含有する音響信号SBの生成には公知の方法が任意に採用され得るが、例えば国際公開第2010/016589号に開示された方法が好適である。具体的には、変調処理部424は、拡散符号を利用した識別情報Dの拡散変調と利用帯域BA内の搬送波を利用した周波数変調とを順次に実行することで、識別情報Dを利用帯域BA内の音響成分として含有する音響信号SBを生成する。
【0028】
図3の混合処理部426は、成分抑圧部422による処理後の音響信号SAと変調処理部424による処理後の音響信号SBとを合成することで音響信号Sを生成する。例えば混合処理部426は、音響信号SAと音響信号SBとの加算で音響信号Sを生成する。以上の説明から理解される通り、任意の1個の案内音声の音響信号Sは、当該案内音声の音響成分(音響信号SA)と、当該案内音声に関連するコンテンツCの識別情報Dの音響成分(利用帯域BAの音響信号SB)とを含有する。
【0029】
利用帯域BAの帯域幅Wは、音響信号Sから識別情報Dを抽出するために必要な適切な数値に設定される。具体的には、帯域幅Wを2kHz以上かつ3kHz以下の範囲内の所定値に設定した構成が好適である。したがって、前述のように放音装置34の再生帯域B0の再生帯域B0の上限値Fが8kHzである場合を想定すると、利用帯域BAは、5kHz以上かつ8kHz以下の周波数帯域に包含される。第1実施形態では、帯域幅Wを2kHzに設定した場合を例示する。したがって、利用帯域BAは、可聴帯域に内包される6kHz以上かつ8kHz以下の周波数帯域である。
【0030】
第1実施形態の変調処理部424は、音響信号SBを音響信号SAと比較して充分に小さい音量に調整する。具体的には、音響信号SBの音圧レベルは、音響信号SAが表す案内音声の音圧レベルに対して-80dB以上かつ-50dB以下の範囲内に調整される。
【0031】
図5は、信号生成装置200の動作のフローチャートである。なお、図4には、図5の各ステップの符号(S1~S3)が便宜的に図示されている。図5に例示される通り、信号生成装置200の成分抑圧部422は、複数の案内音声のうち任意の1個の案内音声(以下「対象案内音声」という)の原音響信号S0を記憶部44から取得し、対象案内音声の原音響信号S0のうち利用帯域BA内の音響成分を抑圧することで音響信号SAを生成する(S1)。他方、変調処理部424は、対象案内音声に関連するコンテンツCの識別情報Dを記憶部44から取得し、当該識別情報Dを利用帯域BA内の音響成分として含有する音響信号SBを生成する(S2)。混合処理部426は、成分抑圧部422が生成した音響信号SAと変調処理部424が生成した音響信号SBとを合成することで対象案内音声の音響信号Sを生成する(S3)。複数の案内音声の各々について以上の処理が順次に実行されることで、相異なる案内音声に対応する複数の音響信号Sが生成されて音声案内装置12の記憶部324に転送される。なお、音響信号SAの生成(S1)と音響信号SBの生成(S2)との先後は逆転され得る。
【0032】
以上の説明から理解される通り、第1実施形態において音声案内装置12の放音装置34から放音される音響信号Sには、可聴帯域内の利用帯域BAの音響成分(音響信号SB)として識別情報Dが含有される。ただし、前述の通り、音響信号SAの案内音声と比較して音響信号SBは充分に音量が小さいから(-80dB~-50dB)、車輌M内の利用者HAは、案内音声を明確に知覚する一方、利用帯域BA内の識別情報Dの音響成分は殆ど知覚できない。また、第1実施形態では、放音装置34の再生帯域B0のうち高域側の端部に位置する利用帯域BAに識別情報Dの音響成分が含有されるから、例えば再生帯域B0内の中間の周波数帯域に識別情報Dの音響成分を含有させた構成と比較して、識別情報Dの音響成分が利用者HAに知覚され難いという効果は顕著である。
【0033】
なお、利用者HAが案内音声の内容を認識するために特に重要なのは、概ね4kHz以下の音響成分である。すなわち、案内音声のうち約4kHz以上の音響成分を抑圧しても、案内音声の音質の低下が利用者HAに認識される可能性はあるものの、案内音声の内容を認識することは充分に可能である。第1実施形態では、利用帯域BAが5kHz以上かつ8kHz以下の周波数帯域に包含されるから、利用者による案内音声の認識を阻害することなく識別情報Dを音響信号Sに含有させることが可能である。以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、可聴帯域のうち案内音声の内容の認識に過度に影響しない利用帯域BAを利用して識別情報Dを送信する、とも換言され得る。
【0034】
図1に例示される通り、管理端末14は、信号線(ケーブル)13を介して音声案内装置12の再生処理部32に接続される。再生処理部32の制御部322は、操作部326に対する管理者HBからの操作(案内音声の選択)を契機として、記憶部324に記憶された音響信号Sを前述の通り放音装置34に供給して案内音声を放音させるとともに、当該音響信号Sを信号線13から管理端末14に送信する。すなわち、放音装置34および管理端末14の双方に対して音響信号Sが並列に供給される。したがって、放音装置34による案内音声の放音毎に、当該案内音声に関連するコンテンツCの識別情報Dを含有する音響信号Sが有線で管理端末14に送信される。ただし、音響信号Sを無線(例えば近距離無線通信)で音声案内装置12から管理端末14に送信することも可能である。
【0035】
なお、放音装置34および管理端末14に対する音響信号Sの供給の契機は操作部326に対する管理者HBからの操作に限定されない。例えば、事前に設定された時刻(例えば車輌Mが特定の地点に到着する予定時刻)の到来を契機として音響信号Sを放音装置34および管理端末14に供給する構成や、車輌Mに設置された検出器(センサ)が特定の地点に対する車輌Mの到達を検知したことを契機として音響信号Sを放音装置34および管理端末14に供給する構成も採用され得る。
【0036】
以上に説明した通り、第1実施形態では、案内音声の音響信号SAと識別情報Dの音響信号SBとを合成した音響信号Sが信号生成装置200により生成されるから、放音装置34に対する音響信号Sの供給で案内音声を放音するとともに、音響信号S内の識別情報Dで指定されるコンテンツCを利用することが可能である。また、原音響信号S0のうち放音装置34による再生帯域B0の上限値Fから低域側の利用帯域BAの音響成分を抑圧した音響信号SAと、識別情報Dを利用帯域BA内の音響成分として含有する音響信号SBとの合成で音響信号Sが生成されるから、案内音声を聴取する利用者HAに識別情報Dの音響成分が知覚される可能性を低減しながら、管理端末14では音響信号Sから識別情報Dを高精度に抽出できるという利点がある。
【0037】
また、原音響信号S0のうち識別情報Dの音響成分が含有される音響信号SBは音響信号SAと比較して充分に低い音圧レベル(音量)に抑制される。したがって、案内音声を聴取した利用者HAが音響信号SBの音響成分を知覚し難い(音響信号SBの音響成分の聴取により利用者HAが聴感的な違和感を知覚する可能性が低減される)という利点もある。
【0038】
<管理端末14>
図6は、管理端末14の構成図である。管理端末14は、例えば管理者HBが使用する携帯電話機やスマートフォン等の可搬型または据置型の通信端末であり、図6に例示される通り、制御部51と記憶部52と通信部53と操作部54と受信部55とを具備する。通信部53は、通信網18を介して情報提供装置16と通信する。操作部54は、管理者HBによる操作を受付ける入力機器である。
【0039】
記憶部52は、磁気記録媒体や半導体記録媒体等の公知の記録媒体であり、制御部51が実行するプログラムや制御部51が使用する各種のデータを記憶する。第1実施形態の記憶部52は、当該管理端末14を利用した案内の案内対象を一意に識別するための識別情報(以下「案内識別情報」という)Gを記憶する。受信部55は、音声案内装置12の再生処理部32から信号線13を介して有線で供給される音響信号Sを受信する。
【0040】
制御部51は、例えばCPU等の処理装置で構成され、記憶部52に記憶されたプログラムを実行することで情報抽出部512および提供指示部514として機能する。
【0041】
情報抽出部512は、受信部55が受信した音響信号Sから識別情報Dを抽出する。具体的には、情報抽出部512は、音響信号Sのうち識別情報Dを含有する利用帯域BAの音響成分を例えば高域通過フィルタで抽出し、識別情報Dの拡散変調に使用された拡散符号を係数とする整合フィルタを通過させることで識別情報Dを抽出する。なお、音響信号SAの案内音声を基準(0dB)として音響信号SBの音圧レベルが-80dBを下回ると、例えば信号線13を介した伝送中に付加される雑音成分や音声案内装置12および管理端末14に固有の熱雑音等の雑音成分に起因して、情報抽出部512が音響信号Sから識別情報Dを高精度に抽出することが困難となる。第1実施形態では、前述の通り、音響信号SBの音圧レベルが案内音声に対して-80dB以上に設定されるため、音響信号Sから識別情報Dを高精度に抽出できるという利点がある。
【0042】
提供指示部514は、情報抽出部512が抽出した識別情報Dで指定されるコンテンツCの提供指示Pを生成する。具体的には、提供指示部514は、情報抽出部512が音響信号Sから抽出した識別情報Dと記憶部52に記憶された案内識別情報Gとを含む提供指示Pを生成して通信部53から情報提供装置16に送信する。情報抽出部512による識別情報Dの抽出と提供指示部514による提供指示Pの生成とは、音声案内装置12の再生処理部32から音響信号Sを受信するたびに実行される。前述の通り、再生処理部32は放音装置34および管理端末14に並列に音響信号Sを供給する。したがって、放音装置34による案内音声の放音毎に、当該案内音声に関連するコンテンツCの識別情報Dの抽出と、当該識別情報Dで指定されるコンテンツCの提供指示Pの生成とが実行される。
【0043】
<移動端末20>
図7は、任意の1個の移動端末20の構成図である。図7に例示される通り、移動端末20は、制御部61と記憶部62と通信部63と操作部64と再生部65と撮像部66とを具備する。記憶部62は、磁気記録媒体や半導体記録媒体等の公知の記録媒体であり、制御部61が実行するプログラムや制御部61が使用する各種のデータを記憶する。例えば移動端末20を一意に識別するための識別情報(以下「端末識別情報」という)Tが記憶部62に記憶される。操作部64は、利用者HAによる操作を受付ける入力機器である。
【0044】
通信部63は、通信網18を介して情報提供装置16と通信する。例えば通信部63は、案内音声に関連するコンテンツCを含む配信情報Qを情報提供装置16から受信する。再生部65は、情報提供装置16から提供されるコンテンツCを再生する。具体的には、コンテンツCの画像を表示する表示装置(例えば液晶表示パネル)やコンテンツCの音響を放音する放音装置(例えばスピーカやヘッドホン)が再生部65として利用される。
【0045】
制御部61は、例えばCPU等の処理装置で構成され、記憶部62に記憶されたプログラムを実行することで再生制御部612および情報取得部614として機能する。再生制御部612は、情報提供装置16から受信した配信情報Qに含まれるコンテンツCを再生部65に再生させる。他方、情報取得部614は、案内音声が放音される場所(すなわち車輌M内)で提供される案内識別情報Gを取得する。
【0046】
第1実施形態では、案内対象である車輌M内に情報画像Xが設置される。例えば、車輌M内に貼付された広告等の印刷物に情報画像Xが印刷される。情報画像Xは、案内対象に固有の案内識別情報Gを表象する光学的に読取可能な平面図像(例えばQRコード(登録商標))である。図7の撮像部66は、例えば画像を撮像可能な撮像素子を含んで構成され、操作部64に対する利用者HAからの指示を契機として情報画像Xを撮像する。情報取得部614は、撮像部66が撮像した情報画像Xの復調で案内識別情報Gを特定し、当該案内識別情報Gと当該移動端末20の端末識別情報Tとを包含する登録要求Rを通信部63から情報提供装置16に送信する。登録要求Rは、案内識別情報Gで指定される案内対象の案内音声に関連するコンテンツCの提供対象として当該移動端末20を登録(いわばチェックイン)することを要求する信号である。任意の1個の案内対象の案内識別情報Gは、当該案内対象の案内音声が放音される場所で限定的に提供されるから、特定の案内対象の案内識別情報Gを含む登録要求Rを送信した移動端末20は、当該案内対象の案内音声が放音される場所(例えば車輌M内)に位置すると推定される。
【0047】
<情報提供装置16>
図8は、情報提供装置16の構成図である。情報提供装置16は、例えば通信網18に接続されたサーバ装置(典型的にはウェブサーバ)であり、図8に例示される通り、制御部72と記憶部74と通信部76とを具備する。通信部76は、通信網18を介して移動端末20および管理端末14の各々と通信する。第1実施形態の通信部76は、管理端末14が送信した提供指示Pと移動端末20が送信した登録要求Rとを通信網18を介して受信する。記憶部74は、例えば磁気記録媒体や半導体記録媒体等の公知の記録媒体であり、複数のコンテンツCと登録情報Eとを記憶する。図8に例示される通り、複数のコンテンツC(C11,C12,……)の各々には、当該コンテンツCに固有の識別情報D(D11,D12,……)と、当該コンテンツCに対応する案内音声が放音される案内対象(車輌M)に固有の案内識別情報G(G1,G2,……)とが付加される。
【0048】
登録情報Eは、各案内対象の案内音声に関連するコンテンツCの提供対象となる移動端末20を指定する。具体的には、登録情報Eは、図8に例示される通り、案内対象に固有の案内識別情報G(G1,G2,……)と、当該案内対象の案内音声に関連するコンテンツCの提供対象となる1個以上の移動端末20の端末識別情報T(T11,T12,……)とを対応させたデータテーブルである。
【0049】
制御部72は、例えばCPU等の処理装置で構成され、記憶部74に記憶されたプログラムを実行することで登録処理部722および情報配信部724として機能する。登録処理部722は、移動端末20から送信された登録要求Rに応じて登録情報Eを更新する。具体的には、登録処理部722は、登録情報Eに含まれる複数の案内識別情報Gのうち登録要求Rで指定される案内識別情報Gについて、当該登録要求Rで指定される端末識別情報Tを対応させる。すなわち、登録要求R内の案内識別情報Gが指定する案内対象のコンテンツCの配信対象として、当該登録要求Rで指定された端末識別情報Tの移動端末20が登録される。
【0050】
情報配信部724は、配信情報Qを生成して通信部76から移動端末20に送信する。具体的には、情報配信部724は、管理端末14から受信した提供指示Pで指定された識別情報DのコンテンツCを、当該提供指示Pで指定された案内識別情報Gについて登録情報Eに登録された各移動端末20(すなわち当該案内対象について登録されたコンテンツCの配信対象)に送信する。前述の通り、特定の案内対象の案内識別情報Gを含む登録要求Rを送信した移動端末20は、当該案内対象の案内音声が放音される場所に位置すると推定される。したがって、案内対象の案内音声が放音される場所に位置する移動端末20には、当該案内対象の案内音声に対応するコンテンツCが提供される。
【0051】
<全体動作>
図9は、情報提供システム100の全体的な動作の説明図である。車輌Mに乗車した利用者HAは、自身の移動端末20の操作部64を適宜に操作することで、当該車輌M内に設置された情報画像Xの撮像を指示する。利用者HAからの指示に応じて撮像部66が情報画像Xを撮像すると(SA1)、移動端末20の情報取得部614は、当該情報画像Xから特定される案内識別情報Gと当該移動端末20の端末識別情報Tとを含む登録要求Rを通信部63から情報提供装置16に送信する(SA2)。
【0052】
移動端末20が送信した登録要求Rを通信部76が受信すると、情報提供装置16の登録処理部722は、登録情報Eのうち登録要求Rで指定された案内識別情報Gについて、当該登録要求Rで指定された端末識別情報Tを登録する(SA3)。すなわち、案内対象である車輌M内で放音される案内音声に関連するコンテンツCの配信対象として当該車輌M内の移動端末20が追加される。
【0053】
他方、音声案内装置12の再生処理部32は、操作部326に対する操作で管理者HBが選択した案内音声の音響信号Sを、放音装置34に供給する(SA4)とともに信号線13を介して管理端末14に送信する(SA5)。音響信号Sの供給により放音装置34からは案内音声が放音され、車輌M内に位置する利用者HAは当該案内音声を聴取する。他方、管理端末14の情報抽出部512は、再生処理部32から供給される音響信号Sを解析することで、当該案内音声に関連するコンテンツCの識別情報Dを抽出する(SA6)。提供指示部514は、情報抽出部512が抽出した識別情報Dと記憶部52が保持する案内識別情報Gとを含む提供指示Pを通信部53から情報提供装置16に送信する(SA7)。
【0054】
管理端末14から送信された提供指示Pを通信部76が受信すると、情報提供装置16の情報配信部724は、記憶部74に記憶された複数のコンテンツCのうち提供指示Pで指定された識別情報Dに対応するコンテンツCを特定し(SA8)、提供指示Pで指定された案内識別情報Gに対応する1個以上の端末識別情報T(すなわち、案内対象のコンテンツCの配信対象として登録された移動端末20)を登録情報Eから特定する(SA9)。そして、情報配信部724は、ステップSA8で特定したコンテンツCを含む配信情報Qを、ステップSA9で特定した各端末識別情報Tの移動端末20を宛先として通信部76から送信する(SA10)。
【0055】
情報提供装置16から送信された配信情報Qを通信部63が受信すると、移動端末20の再生制御部612は、配信情報Qに含まれるコンテンツCを再生部65に再生させる(SA11)。以上の説明から理解される通り、案内対象である車輌M内では、案内対象に関する案内音声が車輌M内の放音装置34から順次に放音される一方、案内音声の放音毎に、当該案内音声に関連するコンテンツCが移動端末20の再生部65にて順次に再生される。すなわち、案内音声に関連するコンテンツCが当該案内音声の放音に連動して順次に移動端末20で再生される。したがって、車輌M内の利用者HAは、案内音声を順次に聴取するとともに、当該案内音声に関連するコンテンツCを順次に視聴することが可能である。
【0056】
なお、情報提供装置16の登録処理部722は、端末識別情報Tを登録情報Eに追加してから所定の時間(利用者HAが車輌M内に位置すると見込まれる時間)が経過したことを条件に、当該端末識別情報Tを登録情報Eから削除する。すなわち、当該端末識別情報Tの移動端末20は配信情報Qの送信対象から除外される。したがって、車輌Mから降車した利用者HAの移動端末20に配信情報Qは送信されない。なお、端末識別情報Tを登録情報Eから削除するための条件は以上の例示(所定時間の経過)に限定されない。例えば、操作部64に対する利用者HAからの操作に応じて移動端末20から情報提供装置16に送信される削除要求を契機として当該移動端末20の端末識別情報Tを登録情報Eから削除することも可能である。
【0057】
以上に説明した通り、第1実施形態では、案内音声に関連するコンテンツの提供指示Pが放音装置34による案内音声の放音毎に生成され、登録情報Eで配信対象として登録された移動端末20に対して当該提供指示Pに係るコンテンツCの配信情報Qが送信される。したがって、案内対象の各案内音声に関連するコンテンツCを当該案内音声の放音に連動して移動端末20にて再生させることが可能である。
【0058】
また、第1実施形態では、案内音声が放音される場所(車輌M内)で取得可能な案内識別情報Gを含む登録要求Rを情報提供装置16が移動端末20から受信した場合に、当該案内音声に関連するコンテンツCの提供対象として当該移動端末20が登録される。したがって、案内音声に関連するコンテンツCの提供対象を、当該案内音声が放音される場所に位置する移動端末20に制限することが可能である。第1実施形態では特に、案内音声が放音される場所に設置された情報画像Xの撮像により移動端末20が取得した案内識別情報Gを含む登録要求Rが移動端末20から送信されるから、移動端末20に案内識別情報Gを取得させるための構成や手順が簡素化されるという利点がある。
【0059】
また、第1実施形態では、音響信号Sの供給により放音装置34から案内音声が放音される一方、当該音響信号Sに音響成分として含有される識別情報Dが管理端末14にて抽出されたうえで提供指示Pが生成される。すなわち、放音装置34による案内音声の放音と管理端末14による識別情報Dの抽出とに音響信号Sが共用される。したがって、放音装置34による案内音声の放音と提供指示部514による提供指示Pの送信(ひいては移動端末20に対するコンテンツCの提供)とを容易に連動させることが可能である。
【0060】
ところで、音響信号Sに含有された識別情報Dを管理端末14にて抽出するための構成としては、例えば、放音装置34から放音された音響を管理端末14にて収音した音響信号から識別情報Dを抽出する構成(以下「対比例」という)も想定され得る。しかし、対比例では、放音装置34から管理端末14までの経路上で音響に雑音が重畳されるから、結果的に管理端末14にて識別情報Dを高精度に抽出することが困難となり得る。第1実施形態では、識別情報Dを含有する音響信号Sが有線で音声案内装置12から管理端末14に送信されるから、音響信号Sに対する雑音の影響が低減される。したがって、第1実施形態によれば、対比例と比較して、音響信号Sから高精度に識別情報Dを抽出できるという利点がある。識別情報Dの抽出のために必要な音響信号SBの音圧レベルが低減されるから、案内音声を聴取した利用者HAが音響信号SBの音響成分を知覚し難いとも換言され得る。もっとも、以上の説明は本発明の範囲から対比例を除外する趣旨ではなく、対比例は本発明の範囲に包含され得る。
【0061】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0062】
図10は、第2実施形態における移動端末20の構成図である。図10から理解される通り、第2実施形態の移動端末20は、第1実施形態の撮像部66を無線受信部67に置換した構成である。
【0063】
第2実施形態では車輌M内に無線送信部300が設置される。無線送信部300は、案内対象(車輌M)の案内識別情報Gを近距離無線通信により周期的に周囲に送信する通信機器である。車輌M内に位置する移動端末20の無線受信部67は、無線送信部300から送信された案内識別情報Gを受信する。無線送信部300と無線受信部67との間で実行される近距離無線通信の具体的な通信方式は任意であるが、電波や赤外線等の電磁波を伝送媒体とした無線通信や、空気振動たる音響を伝送媒体とした音響通信が好適に採用され得る。
【0064】
第2実施形態における移動端末20の情報取得部614は、無線受信部67が受信した案内識別情報Gを取得し、当該案内識別情報Gと移動端末20の端末識別情報Tとを含む登録要求Rを通信部63から情報提供装置16に送信する。第2実施形態における他の構成や動作は第1実施形態と同様である。第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。なお、図10に例示した無線送信部300を管理端末14に搭載することも可能である。
【0065】
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0066】
(1)前述の各形態では、情報提供装置16から移動端末20に送信される配信情報QがコンテンツCを包含する構成を例示したが、配信情報Qの内容は以上の例示に限定されない。例えば、移動端末20の記憶部62に複数のコンテンツCを事前に記憶した構成では、提供指示Pで指定されたコンテンツCの識別情報Dを含む(コンテンツC自体は含まない)配信情報Qを情報提供装置16から移動端末20に送信することも可能である。移動端末20の再生制御部612は、配信情報Qに含まれる識別情報Dに対応するコンテンツCを記憶部62から取得して再生部65に再生させる。以上の説明から理解される通り、前述の各形態における配信情報Qは、案内音声に関連するコンテンツCを移動端末20にて再生するための情報として包括的に表現され、配信情報QにコンテンツC自体が包含されるか否かは不問である。
【0067】
(2)端末識別情報Tを登録情報Eから削除(いわばチェックアウト)するための条件は任意である。例えば、第2実施形態の例示のように、無線送信部300との通信(案内識別情報Gの受信)を契機として移動端末20が情報提供装置16に登録要求Rを送信する構成では、無線送信部300からの無線信号が移動端末20に到達しなくなった場合(例えば受信強度が閾値未満まで低下した場合)に、当該移動端末20の端末識別情報Tを登録情報Eから削除することを要求する削除要求を移動端末20から情報提供装置16に送信することも可能である。
【0068】
なお、無線送信部300との間の通信状態を推定する機能を移動端末20に搭載した構成が想定される。通信状況の典型例は、例えば受信強度に応じて推定される無線送信部300からの距離であり、例えば近接(immediate),範囲内(near),範囲外(far),不明(unknown)の何れかの状態が判別される。以上の構成では、通信可能な状態(近接,範囲内,範囲外)が通信不能な不明(unknown)状態に遷移してから所定時間が経過した場合に、移動端末20が情報提供装置16に削除要求を送信することも可能である。また、例えばGPS(Global Positioning System)または近距離無線を利用して測位される移動端末20の位置を解析することで、移動端末20が無線送信部300から離間したか否かを定期的に判定し、移動端末20が離間したと判別した場合(例えば移動端末20を携行する利用者HAが車輌Mから降車することで無線送信部300から離間した場合)に、移動端末20が情報提供装置16に削除要求を送信することも可能である。
【0069】
(3)前述の各形態では、電車やバス等の交通機関の音声案内を例示したが、情報提供システム100が利用される案内対象は以上の例示に限定されない。例えば、車輌M以外に船舶または航空機等を包含する移動体(移動端末20を収容して移動する設備)の音声案内にも前述の各形態と同様の情報提供システム100が利用される。美術館や博物館等の展示施設、宿泊施設、または商業施設等の各種の施設の音声案内に情報提供システム100を利用することも可能である。各種の施設にて火災や地震等の災害が発生した場合の情報提供(例えば避難の案内や状況の通知)にも情報提供システム100を利用することが可能である。
【0070】
(4)前述の各形態では、音声案内装置12と管理端末14と情報提供装置16とを別体とした構成を例示したが、複数の装置の一体/別体や、各機能と各装置との関係は任意である。例えば、管理端末14および情報提供装置16の一方における一部の機能を他方に搭載した構成や、情報提供装置16および管理端末14の機能を単体の装置に搭載した構成も採用され得る。また、音声案内装置12の機能を管理端末14に搭載する(管理端末14を音声案内装置12として兼用する)ことも可能である。
【符号の説明】
【0071】
100……情報提供システム、200……信号生成装置、12……音声案内装置、14……管理端末、16……情報提供装置、18……通信網、20……移動端末、32……再生処理部、322……制御部、324……記憶部、326……操作部、34……放音装置、42……制御部、422……成分抑圧部、424……変調処理部、426……混合処理部、44……記憶部、51……制御部、512……情報抽出部、514……提供指示部、52……記憶部、53……通信部、54……操作部、55……受信部、56……収音部、61……制御部、612……再生制御部、614……情報取得部、62……記憶部、63……通信部、64……操作部、65……再生部、66……撮像部、67……無線受信部、72……制御部、722……登録処理部、724……情報配信部、74……記憶部、76……通信部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10