(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】ウレタン塗膜防水用トップコート組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20220509BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20220509BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20220509BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20220509BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20220509BHJP
C09D 175/06 20060101ALI20220509BHJP
C09D 175/08 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C09D175/04
C08G18/79 080
C08G18/75
C08G18/73
C08G18/10
C09D175/06
C09D175/08
(21)【出願番号】P 2020207259
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000116301
【氏名又は名称】亜細亜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 聡志
(72)【発明者】
【氏名】河野 令
(72)【発明者】
【氏名】森山 明祐
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-091474(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111777938(CN,A)
【文献】特開平07-258379(JP,A)
【文献】特開2002-309156(JP,A)
【文献】特開2004-263121(JP,A)
【文献】特開2013-139559(JP,A)
【文献】特表2000-514469(JP,A)
【文献】国際公開第2020/127439(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/070531(WO,A1)
【文献】米国特許第04232608(US,A)
【文献】Progress in Organic Coatings,1998年,Vol.34,pp.227-235
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
C08G 18/79
C08G 18/75
C08G 18/73
C08G 18/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートよりなる
群から選ばれる少なくとも1種のダイマー体を30質量%以上含有
する1分子中に2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネートと、(A2)平均官能基数が2.2以上、かつ数平均分子量が300~3,500である、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリカーボネートポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールとを反応させて得られたポリイソシアネート樹脂(A)
と、
ポリオール樹脂(B)とを含み、
上記ポリイソシアネート(A1)およびポリオール(A2)の反応モル比([NCO]/[OH])が、3.0以上であるウレタン塗膜防水用トップコート組成物。
【請求項2】
上記脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、およびノルボルナンジイソシアネートよりなる
群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のウレタン塗膜防水用トップコート組成物。
【請求項3】
上記ポリオール(A2)が、平均官能基数2.2~4、数平均分子量400~3,000である請求項1または2記載のウレタン塗膜防水用トップコート組成物。
【請求項4】
上記ポリイソシアネート(A1)およびポリオール(A2)の反応モル比([NCO]/[OH])が、3.0~12.0である請求項1~3のいずれか1項記載のウレタン塗膜防水用トップコート組成物。
【請求項5】
上記ポリオール樹脂(B)が、アクリル系ポリオールまたはフッ素系ポリオールである請求項1~4のいずれか1項記載のウレタン塗膜防水用トップコート組成物。
【請求項6】
上記ポリイソシアネート樹脂(A)およびポリオール樹脂(B)の配合割合〔ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基およびポリオール成分中の水酸基のモル比([NCO]/[OH])〕が、0.8以上である請求項1~5のいずれか1項記載のウレタン塗膜防水用トップコート組成物。
【請求項7】
さらに、有機溶剤を含む請求項1~6のいずれか1項記載のウレタン塗膜防水用トップコート組成物。
【請求項8】
(A1)脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種のダイマー体を30質量%以上含有
する1分子中に2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネートと、(A2)平均官能基数が2.2以上、かつ数平均分子量が300~3,500である、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリカーボネートポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールとを反応させて得られたポリイソシアネート樹脂(A)を含み、
上記ポリイソシアネート(A1)およびポリオール(A2)の反応モル比([NCO]/[OH])が、3.0以上であるウレタン塗膜防水用トップコート組成物用の硬化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン塗膜防水用トップコート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルの屋上、ベランダ、バルコニー、開放廊下等の防水施工方法として塗膜防水工法が広く行われている。
この工法では、コンクリートやモルタルなどの基材表面にプライマー層を形成し、その上にウレタン系防水材層を形成し、さらにその上にトップコート層を形成することで、多層防水構造体とすることが一般的である。
【0003】
この場合、トップコートは、ウレタン系防水材層の保護と美観向上とを目的として施工されるものであり、アクリルウレタン系塗料が汎用されている(特許文献1~3参照)。防水材層を長期に亘って保護するためには、下地の挙動に追従し、確かな防水性能を確保する観点から、トップコートの伸張性が重要となる。また、通常、防水層にはベタつき(タック)があり、タックが強すぎる場合は、その上をスムーズに歩行することができず、ゴミが付着した際には清掃が困難になる。そのため、メンテナンス性の観点から、トップコートのタック性を低減する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-309156号公報
【文献】特開2004-263121号公報
【文献】特開2007-720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた伸張性を有するとともに、タック性が低減されたトップコートを与えるウレタン塗膜防水用トップコート組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種のダイマー体を所定割合で含有し、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネートと、所定のポリオールとを所定の比率で反応させて得られたポリイソシアネート樹脂をトップコート用組成物の一成分として用いることで、得られるトップコートの伸張性を著しく向上させるとともに、そのタック性を低減させ得ることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記のウレタン塗膜防水用トップコート組成物を提供する。
1. (A1)脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種のダイマー体を30質量%以上含有し、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネートと、(A2)平均官能基数が2.2以上、かつ数平均分子量が300~3,500である、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリカーボネートポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールとを反応させて得られたポリイソシアネート樹脂(A)を含み、上記ポリイソシアネート(A1)およびポリオール(A2)の反応モル比([NCO]/[OH])が、3.0以上であるウレタン塗膜防水用トップコート組成物。
2. 上記脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、およびノルボルナンジイソシアネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種である1のウレタン塗膜防水用トップコート組成物。
3. 上記ポリオール(A2)が、平均官能基数2.2~4、数平均分子量400~3,000である1または2のウレタン塗膜防水用トップコート組成物。
4. 上記ポリイソシアネート(A1)およびポリオール(A2)の反応モル比([NCO]/[OH])が、3.0~12.0である1~3のいずれかのウレタン塗膜防水用トップコート組成物。
5. 2液型である1~4のいずれかのウレタン塗膜防水用トップコート組成物。
6. (A1)脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種のダイマー体を30質量%以上含有し、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネートと、(A2)平均官能基数が2.2以上、かつ数平均分子量が300~3,500である、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリカーボネートポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールとを反応させて得られたポリイソシアネート樹脂(A)を含み、上記ポリイソシアネート(A1)およびポリオール(A2)の反応モル比([NCO]/[OH])が、3.0以上であるウレタン塗膜防水用トップコート組成物用の硬化剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明のウレタン塗膜防水用トップコート組成物は、上述した特定のポリイソシアネートと特定のポリオールとを所定の比率で反応させて得られたポリイソシアネート樹脂を一成分として用いているため、得られるトップコートの伸張性を著しく向上させるとともに、そのタック性を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るウレタン塗膜防水用トップコート組成物は、(A1)脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種のダイマー体を30質量%以上含有し、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネートと、(A2)平均官能基数が2.2以上、かつ数平均分子量が300~3,500である、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリカーボネートポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールとを反応させて得られたポリイソシアネート樹脂(A)を含み、上記ポリイソシアネート(A1)およびポリオール(A2)の反応モル比([NCO]/[OH])が、3.0以上であることを特徴とする。
【0010】
上記ダイマー体における脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートとしては、従来公知の各種ポリイソシアネートから適宜選択して用いることができる。
【0011】
脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0012】
脂環式イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート、水添化キシレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0013】
これらの中でも、上記ダイマー体としては、得られるトップコートのタック性を低減させることを考慮すると、ヘキサメチレンジイソシアネートのダイマー体を含むものが好ましい。
【0014】
上記のダイマー体の含有量は、(A1)成分中30質量%以上であるが、得られるトップコートの伸張性およびタック性をより改善させることを考慮すると、好ましくは35質量%以上、より好ましくは45質量%以上、より一層好ましくは50質量%以上である。また、その上限は、特に限定されるものではないが、通常、70質量%以下である。
【0015】
また、(A1)成分には、残部として上述した脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネート以外のその他のイソシアネートを含んでもよい。このようなイソシアネートとしては、芳香族イソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。これらのイソシアネートは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、それらのアダクト体、アロファネート体およびトリマー体等も用いてもよい。
【0016】
芳香族イソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0017】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0018】
本発明において、ポリイソシアネート(A1)は、得られるトップコートの伸張性を著しく向上させるとともに、そのタック性を低減させる観点から、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含むが、ポリオール(A2)との反応時のゲル化の抑制や、使用時における取り扱い性を良好にするということを考慮すると、2~4個が好ましく、2~3個がより好ましい。
また、ポリイソシアネート(A1)の粘度は特に限定されるものではないが、使用時における取り扱い性等を考慮すると、25℃で50~900mPa・sが好ましく、100~700mPa・sがより好ましい。
【0019】
ポリイソシアネート(A1)としては、市販品を用いることもでき、具体例としては、EXCELHARDENER X-19(亜細亜工業(株)製)、コロネート 2365(東ソー(株)製)、Desumodur N 3400(住化コベストロウレタン(株)製)等が挙げられる。
【0020】
ポリオール(A2)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリカーボネートポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールを含む。これらのポリオールとしては、従来公知の各種ポリオールを用いることができる。
【0021】
ポリエーテルポリオールとしては、低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合して得られる、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等、およびこれらの共重合体等が挙げられる。
【0022】
ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、トリメット酸等のポリカルボン酸、酸エステル、または酸無水物の1種以上と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上との脱水縮合で得られるポリオールが挙げられる。
【0023】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状エステルモノマーの開環重合で得られるポリオールが挙げられる。
【0024】
ポリカーボネートポリオールとしては、上記の低分子ポリオール類と、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との反応により得られるポリオールが挙げられる。
【0025】
本発明では、これらの中でも、伸張性に優れるトップコートを与え得るポリエーテルポリオールが好ましく、特に、タック性をより低減させる点からポリオキシプロピレントリオールが好適である。
【0026】
本発明において、ポリオール(A2)の平均官能基数は、得られるトップコートの伸張性を著しく向上させるとともに、そのタック性を低減させる観点から、2.2以上であるが、ポリイソシアネート(A1)との反応時のゲル化の抑制や、主剤との相溶性を良好にするということを考慮すると、2.2~4が好ましく、2.2~3がより好ましい。
【0027】
また、ポリオール(A2)の数平均分子量は、得られるトップコートの伸張性を著しく向上させるとともに、そのタック性を低減させる観点から、300~3,500であり、好ましくは400~3,000である。
なお、数平均分子量は、示差屈折率計検出によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する)測定による測定値(ポリスチレン換算値)である。
【0028】
ポリオール(A2)としては、市販品を用いることもでき、具体例としては、サンニックス GP-400(三洋化成(株)製)、サンニックス GP-1000(三洋化成(株)製)、サンニックス GP-3000(三洋化成(株)製)、クラレポリオール F-1010((株)クラレ製)、ポリライト OD-X-2588(DIC(株)製)、PCP-100L(東ソー(株)製)等が挙げられる。
【0029】
ポリイソシアネート樹脂(A)は、上述したポリイソシアネート(A1)と、ポリオール(A2)とを、溶媒の存在下または非存在下で反応させて得ることができる。
ポリイソシアネート(A1)と、ポリオール(A2)との反応条件は特に限定されるものではなく、例えば、必要に応じてウレタン化触媒の存在下、20~150℃で過剰量のポリイソシアネート(A1)と、ポリオール(A2)とを反応させる手法が挙げられる。
【0030】
この際、ポリイソシアネート(A1)の[NCO]と、ポリオール(A2)の[OH]との反応モル比([NCO]/[OH])は、得られるトップコートの伸張性を著しく向上させるとともに、そのタック性を低減させる観点から、3.0以上であるが、使用時の取り扱い性等を考慮すると、好ましくは5.0以上、より好ましくは7.0以上である。上記反応モル比の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは12.0以下、より好ましくは10.0以下である。
【0031】
上記ウレタン化触媒は、公知のものから適宜選択することができる。その具体例としては、ジブチル錫ラウレート、ジオクチル錫ラウレート等が挙げられる。
【0032】
ポリイソシアネート(A1)とポリオール(A2)との反応は、無溶媒でも、溶媒の存在下でも行うことができる。
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はない。その具体例としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族または脂環族炭化水素;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、低沸点芳香族ナフサ、高沸点芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-アミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類;N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
得られるポリイソシアネート樹脂(A)のイソシアネート含有量は、得られるトップコートのタック性を低減させる観点から、好ましくは2.0~6.0質量%であり、伸張性に優れるトップコートを与え得る点を考慮すると、より好ましくは2.2~5.0質量%、より一層好ましくは2.2~4.5質量%である。
【0034】
また、得られるポリイソシアネート樹脂(A)の固形分濃度は、貯蔵安定性の観点から、好ましくは15~40質量%、より好ましくは20~30質量%である。
【0035】
本発明のウレタン塗膜防水用トップコート組成物は、上述したポリイソシアネート樹脂(A)を一成分として含むものであるが、当該ポリイソシアネート樹脂(A)に特徴があるため、これと反応硬化させるもう一方の成分(ポリオール樹脂(B))としては、当該用途に一般に用いられているものから適宜選択すればよい。その具体例としては、アクリル系ポリオール、フッ素系ポリオール等が挙げられ、これらの中でも、耐候性とコスト面のバランスからアクリル系ポリオールが好適である。
また、上述したポリイソシアネート樹脂(A)は、得られるウレタン樹脂に優れた伸張性を与えるとともに、タック性も低減させ得るため、ウレタン塗膜防水用トップコート組成物用の硬化剤として好適である。
【0036】
アクリル系ポリオールとしては、水酸基を有するアクリルモノマーと、不飽和二重結合を有するその他の重合性モノマーとをラジカル共重合して得られる各種アクリルポリオールを用いることができる。
【0037】
水酸基を有するアクリルモノマーの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N-メチロール化アクリルアミド、ε-カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、カーボネート変性メタクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、HEMAC)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
不飽和二重結合を有する重合性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボン酸基含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デカニル(メタ)アクリレート、ウンデカニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のC1~C24のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系モノマー、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、不飽和二重結合を有する重合性モノマーとして、アルキル(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましい。
【0039】
上記ラジカル共重合は、無溶媒または適当な有機溶媒存在下、重合開始剤を用いて行われる。
有機溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はない。その具体例としては、ポリイソシアネート(A1)とポリオール(A2)との反応で例示したものが挙げられる。
重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤から適宜選択することができ、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応温度は、通常、60~150℃程度である。反応時間は、通常、1~12時間程度である。
【0040】
また、アクリル系ポリオール、フッ素系ポリオールは、それぞれ市販品を用いることもできる。
アクリル系ポリオールの市販品としては、エクセロール290、エクセロール170(以上、亜細亜工業(株)製)、アクリディックA-801-P、アクリディックA-823(以上、大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。
フッ素系ポリオールの市販品としては、ルミフロンLF-100、ルミフロンLF-200(以上、旭硝子(株)製)等が挙げられる。
【0041】
本発明のウレタン塗膜防水用トップコート組成物において、ポリイソシアネート樹脂(A)とポリオール樹脂(B)との配合割合は特に限定されるものではないが、架橋密度を高めてトップコートの塗膜性能を十分に発揮させることを考慮すると、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基およびポリオール成分中の水酸基のモル比([NCO]/[OH])は、0.8以上が好ましい。特に、過剰のイソシアネート基と、水分との反応による発泡を考慮すると、好ましくは0.9~3.0、より好ましくは1.0~2.5である。
【0042】
本発明のウレタン塗膜防水用トップコート組成物には、必要に応じて有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤としては、従来、トップコート組成物に用いられる各種溶剤を用いることができる。その具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル等のエステル溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶剤;ミネラルスピリット等の石油系炭化水素溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、グリコールエーテルエステル類溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
また、本発明のウレタン塗膜防水用トップコート組成物には、必要に応じて、着色顔料、体質顔料、表面調整剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、触媒等の各種添加剤を配合してもよい。2液型の組成物の場合、これらの溶剤、各種添加剤は、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分のどちらか一方に配合しても、両者に配合してもよい。
【0044】
本発明のウレタン塗膜防水用トップコート組成物は、2成分を現場で調合し、塗装する2液常温硬化型の組成物として好適に用いることができる。
この場合、塗布法は特に限定されるものではなく、刷毛塗り、ローラ塗りなどの公知の手法から適宜選択すればよい。また、塗布量、塗膜の厚み、乾燥時間などは、ウレタン防水材の種類などに応じて適宜設定すればよい。
【実施例】
【0045】
以下、合成例、比較合成例、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
【0046】
使用した原料は、以下のとおりである。
EXCELHARDENER X-19:脂肪族系ダイマー変性ポリイソシアネート、亜細亜工業(株)製
コロネート 2612:脂肪族系アダクト変性ポリイソシアネート、東ソー(株)製
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート、東ソー(株)製
コロネート 2770:脂肪族系アロファネート変性ポリイソシアネート、東ソー(株)製
Desumodur N 3200:脂肪族系ビウレット変性ポリイソシアネート、住化コベストロウレタン(株)製
サンニックス GP-1000:ポリオキシプロピレントリオール、数平均分子量1,000、官能基数3.0、三洋化成(株)製
サンニックス PP-1000:ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量1,000、官能基数2.0、三洋化成(株)製
サンニックス GP-400:ポリオキシプロピレントリオール、数平均分子量400、官能基数3.0、三洋化成(株)製
サンニックス GP-3000:ポリオキシプロピレントリオール、数平均分子量3,000、官能基数3.0、三洋化成(株)製
クラレポリオール F-1010:ポリエステルポリオール、数平均分子量1,000、官能基数3.0、(株)クラレ製
ポリライト OD-X-2588:ポリカプロラクトンポリオール、数平均分子量1,250、官能基数3.0、DIC(株)製
PCP-100L:ポリカーボネートポリオール、数平均分子量1,000、官能基数3.0、東ソー(株)製)
サンニックス GP-250:ポリオキシプロピレントリオール、数平均分子量250、官能基数3.0、三洋化成(株)製
サンニックス GP-4000:ポリオキシプロピレントリオール、数平均分子量4,000、官能基数3.0、三洋化成(株)製
【0047】
[1]ポリイソシアネート樹脂の合成
(合成例1)ポリイソシアネート樹脂A-1の合成
撹拌装置、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応器に、EXCELHARDENER X-19(亜細亜工業(株)製、脂肪族系ダイマー含有ポリイソシアネート)170.0部、サンニックス GP-1000(三洋化成(株)製、ポリオキシプロピレントリオール:分子量=1,000)30.0部、キシレン800.0部を仕込み、80℃に昇温した。ジブチル錫ジラウレート0.1部を添加し、同温度で10時間反応させ、ポリイソシアネート樹脂A-1を得た。得られたポリイソシアネート樹脂A-1はイソシアネート含有量が3.9%、固形分濃度20.0%であった。
【0048】
(合成例2~9)
各成分の組成を表1に従い変更した以外は、合成例1と同様の方法で、ポリイソシアネート樹脂A-2~A-9を得た。
【0049】
【0050】
(比較合成例1)ポリイソシアネート樹脂A-10の合成
撹拌装置、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応器に、EXCELHARDENER X-19 126.5部、サンニックス GP-1000 73.5部、トルエン800.0部を仕込み、80℃に昇温した。ジブチル錫ジラウレート0.1部を添加し、同温度で10時間反応させ、ポリイソシアネート樹脂A-10を得た。得られたポリイソシアネート樹脂A-10はイソシアネート含有量が1.7%、固形分濃度20.0%であった。
【0051】
(比較合成例2~9)
各成分の組成を表2に従い変更した以外は、比較合成例1と同様の方法で、ポリイソシアネート樹脂A-11~A-18を得た。
【0052】
【0053】
[2]ウレタン塗膜防水用トップコート組成物の調製
(実施例1~9、比較例1~9)
上記ポリイソシアネート樹脂A-1~A-18を硬化剤として組み合わせる水酸基含有樹脂を使用した主剤は次のように調製した。
【0054】
攪拌装置、温度計、冷却管および滴下装置を備えた反応器に、キシレン400.0部、酢酸ブチル200.0部を仕込み、攪拌しながら110℃まで昇温した。そこに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート80.0部、スチレン100.0部、メチルメタクリレート320.0部、n-ブチルメタクリレート250.0部、n-ブチルアクリレート247.0部、アクリル酸3.0部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート18.0部、トルエン100.0部からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で1時間反応させた。さらに、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.0部、トルエン100.0部からなる混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で3時間反応させ、固形分濃度56.0%、粘度4000mPa・s(25℃)、水酸基価33.9mgKOH/g(固形分)、数平均分子量15,000、平均官能基数9.1の透明なアクリルポリオール樹脂溶液を得た。
続いて、このアクリルポリオール樹脂溶液256部、顔料CR-95(石原産業(株)製)88部、キシレン56部、ガラスビーズ400部を混合し、ペイントシェーカーで1時間分散を行った。分散終了後、ガラスビーズを取り除くことにより、固形分濃度57.8%、水酸基価12.1mgKOH/gの白色塗料を調製し、これを主剤とした。
主剤と硬化剤を[NCO]/[OH]モル比=1.1で調合し、よく混合してトップコート組成物を得た。
【0055】
上記実施例および比較例で得られた各トップコート組成物の性能を、以下の方法に従って測定した。結果を表3に示す。
(1)タック性
二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材(商品名:サラセーヌK、AGCポリマー建材(株)製)をスレート板(30cm×30cm)の表面に2kg/m2の割合で塗布し、その後、23℃、50%相対湿度の条件下で24時間養生を行った。この上に、上記で調製したトップコート組成物を、0.15kg/m2の割合で、中毛ローラを用いて塗装し、23℃、50%RHの条件下で24時間養生を行い、試験体を作製した。試験体の表面状態を指触により確認し、べとつきがないものをタック性に優れるものとして「○」と評価し、べとつきを有するものをタック性に劣るものとして「×」と評価した。
【0056】
(2)伸張性
二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材を、離形紙(30cm×30cm)の表面に2kg/m2の割合で塗布し、その後、23℃、50%相対湿度の条件下で24時間養生を行った。この上に、上記で調製したトップコート組成物を、0.15kg/m2の割合で、中毛ローラを用いて塗装し、23℃、50%RHの条件下で24時間養生を行った。養生後、塗膜を離形紙から剥離し、2号ダンベルを用いて打ち抜き作製した。伸張性は引張試験機((株)島津製作所製オートグラフAG-5000C)を用い、引張速度200mm/分でトップコートに裂け目が生じるまでの伸び率を測定し、以下の3段階で評価した。
<評価基準>
○:伸び率100%以上
△:伸び率50%以上100%未満
×:伸び率50%未満
【0057】
【0058】
表3に示されるように、実施例の各トップコート組成物から作製した塗膜は、比較例の各トップコート組成物から作製した塗膜に比べ、タック性および伸張性のいずれも良好であることがわかる。
【要約】
【課題】優れた伸張性を有するとともに、タック性が低減されたトップコートを与えるウレタン塗膜防水用トップコート組成物を提供すること。
【解決手段】(A1)脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種のダイマー体を30質量%以上含有し、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネートと、(A2)平均官能基数が2.2以上、かつ数平均分子量が300~3,500である、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリカーボネートポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールとを反応させて得られたポリイソシアネート樹脂(A)を含み、上記ポリイソシアネート(A1)およびポリオール(A2)の反応モル比([NCO]/[OH])が、3.0以上であるウレタン塗膜防水用トップコート組成物。
【選択図】なし