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  • 特許-試料注出補助具及び試料注出方法 図1
  • 特許-試料注出補助具及び試料注出方法 図2
  • 特許-試料注出補助具及び試料注出方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】試料注出補助具及び試料注出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20220509BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20220509BHJP
   B01L 3/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G01N1/00 101F
G01N1/10 N
G01N1/10 H
B01L3/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020528697
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 JP2019017579
(87)【国際公開番号】W WO2020008715
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2018126645
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一平
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-289844(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122372(WO,A1)
【文献】特公昭45-007226(JP,B1)
【文献】米国特許第04774962(US,A)
【文献】米国特許第07387899(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48
B01L 3/00
A61B 10/00-10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開放されたマイクロ流路内に試料を保持する試験片から注出された試料を収容するためのウエルを有する注出容器上に載置される試料注出補助具であって、
前記試験片から注出された試料を前記ウエルの底面へ導くための開口を有し、前記試験片から注出されて前記ウエルの底面に貯留された試料に当該試験片を接触させない位置で、前記マイクロ流路の一端を前記ウエルの底面へ向けて前記試験片を保持する試験片保持部を備えており、
前記注出容器は複数の前記ウエルが同一平面内に設けられているウエルプレートであり、
前記試料注出補助具は、前記注出容器の各ウエルに対応した前記試験片保持部を有するプレート状の部材である、試料注出補助具。
【請求項2】
前記開口は前記試験片保持部の下端において前記試験片を通過させない大きさで設けられており、前記試験片から注出された試料を前記開口へ導くように前記試験片保持部の内面の少なくとも一部が傾斜している、請求項1に記載の検体注出補助具。
【請求項3】
両端が開放されたマイクロ流路内に試料を保持する試験片から注出された試料を収容するためのウエルを有する注出容器上に、前記試験片から注出された試料を前記ウエルの底面へ導くための開口を有し、前記試験片から注出されて前記ウエルの底面に貯留された試料に当該試験片を接触させない位置で、前記マイクロ流路の一端を前記ウエルの底面へ向けて前記試験片を保持する試験片保持部を備えている試料注出補助具を載置する補助具載置ステップと、
前記試料注出補助具の前記試験片保持部に前記試験片を保持させるデバイス設置ステップと、
前記注出容器の前記ウエルの上面から底面へ向かう方向に遠心力が作用するように前記注出容器を旋回させ、前記試験片から前記ウエルの底面に試料を注出する試料注出ステップと、をその順に備え、
前記注出容器は複数の前記ウエルが同一平面内に設けられているウエルプレートであり、
前記試料注出補助具は、前記注出容器の各ウエルに対応した前記試験片保持部を有するプレート状の部材である、試料注出方法。
【請求項4】
前記試料注出ステップの後で、前記試料注出補助具を前記注出容器上から移動させることにより、前記試験片を前記注出容器の前記ウエルから取り出す試験片取出しステップを備えている、請求項3に記載の試料注出方法。
【請求項5】
前記試料注出補助具の前記開口は前記試験片保持部の下端において前記試験片を通過させない大きさで設けられており、前記試験片から注出された試料を前記開口へ導くように前記試験片保持部の内面の少なくとも一部が傾斜している、請求項3に記載の試料注出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロサンプリングデバイスから切り取られた一片やマイクロ流路を内部に有するサンプリング用のキャピラリから、遠心力を利用して試料を注出するために用いられる試料注出補助具と、その試料注出補助具を用いた試料注出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液,涙液や尿などの生体試料を採取する器具として、毛細管力を利用して吸入口から内部のマイクロ流路内に試料を吸入するマイクロサンプリングデバイスが提案されている(特許文献1参照。)。特許文献1に開示されているマイクロサンプリングデバイスは、試料を保持したマイクロ流路の一部を含む一片を切り取って一定量の試料を分析に供することができる。また、試料の採取には、マイクロ流路を内部に有するキャピラリが用いられる場合もある。
【0003】
以下では、分析に供する試料を保持するマイクロサンプリングデバイスの一片やキャピラリを総じて試験片と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2017/122372A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
試験片内に保持された試料に対して、分析対象成分の抽出や除タンパク、希釈といった前処理が施される場合がある。前処理を施す場合、例えば、密閉可能な蓋のついたマイクロチューブなどの容器に試験片と有機溶剤を入れ、容器内を撹拌することによって試料と有機溶剤を混合して均質にするという手法が採られることがある。しかし、この手法は、密閉可能な容器を用いる必要があり、96ウエルプレートなど上方の開放された容器では実施することができない。また、上記の手法は、試験片内の試料を拡散現象で均質化されるため時間がかかるという問題もある。
【0006】
別の手法として、遠心力を利用して試験片から試料を注出することが考えられる。その場合、試験片を注出用の容器に入れて容器の上面から底面へ向かう方向に遠心力が作用するように容器を旋回させることで、試験片内の試料を容器内に注出することができる。しかし、試料を試験片から注出した後も試験片が容器の底面に接するため、注出された試料の一部が毛細管現象によって試験片内に再吸入されてしまい、試料の定量性が損なわれる懸念がある。
【0007】
そこで、本発明は、分析に供される試料の定量性を確保しながら遠心力を利用した試験片からの試料の注出を行なうことを可能にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る試料注出補助具は、両端が開放されたマイクロ流路内に試料を保持する試験片から注出された試料を収容するためのウエルを有する注出容器上に載置されるものである。当該試料注出補助具は、前記試験片から注出された試料を前記ウエルの底面へ導くための開口を有し、前記試験片から注出されて前記ウエルの底面に貯留された試料に当該試験片を接触させない位置で、前記マイクロ流路の一端を前記ウエルの底面へ向けて前記試験片を保持する試験片保持部を備えている。
【0009】
本発明の試料注出補助具は、遠心力を利用して試験片内に保持された試料を注出容器の底面に注出することを前提としている。マイクロ流路の一端がウエルの底面を向くように試験片を試験片保持部に保持させ、ウエルの上面から底面へ向かう方向に遠心力が作用するように注出容器を旋回させると、試験片の一端から試料が流出し、試験片保持部に設けられた開口を介してウエルの底面に試料が注出される。このとき、試験片保持部によって試験片がウエルの底面に貯留された試料に接触しない位置で保持されているため、試験片から注出された試料が毛細管現象によって試験片に再吸入されることはない。
【0010】
本発明の試料注出補助具の好ましい実施形態では、前記開口は前記試験片保持部の下端に前記試験片を通過させない大きさで設けられており、前記試験片から注出された試料を前記開口へ導くように前記試験片保持部の内面の少なくとも一部が傾斜している。
【0011】
前記注出容器としては、複数の前記ウエルが同一平面内に設けられているウエルプレートを用いることができる。この場合、前記試料注出補助具は、前記注出容器の各ウエルに対応した前記試験片保持部を有するプレート状の部材とすることができる。
【0012】
本発明に係る試料注出方法は、両端が開放されたマイクロ流路内に試料を収容する試験片から注出された試料を収容するためのウエルを有する注出容器上に上述の試料注出補助具を載置する補助具載置ステップと、前記試料注出補助具の試験片保持部に前記試験片を保持させるデバイス設置ステップと、前記注出容器の前記ウエルの上面から底面へ向かう方向に遠心力が作用するように前記注出容器を旋回させ、前記試験片から前記ウエルの底面に試料を注出する試料注出ステップと、をその順に備えている。
【0013】
好ましい実施形態では、前記試料注出ステップの後で、前記試料注出補助具を前記注出容器上から移動させることにより、前記試験片を前記注出容器の前記ウエルから取り出す試験片取出しステップを備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る試料注出補助具では、注出容器の上面に装着され、試験片から注出されてウエルの底面に貯留された試料に当該試験片を接触させない位置で試験片を保持する試験片保持部を備えているので、試験片から注出された試料が毛細管現象によって試験片に再吸入されることを防止できる。これにより、分析に供される試料の定量性を確保しながら遠心力を利用した試験片からの試料の注出を行なうことができる。
【0015】
本発明に係る試料注出方法では、上記の試料注出補助具を使用して遠心力を利用した試料の注出を行なうので、分析に供される試料の定量性を確保しながら試料を注出容器に注出できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】試料注出補助具の一実施例を注出容器とともに示す断面図である。
図2】同実施例の試料注出補助具を用いた試料の注出工程をその順に示す断面図である。
図3】同実施例の試料注出補助具を用いた試料の注出方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、試料注出補助具の一実施例とその試料注出補助具を用いた試料注出方法の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1に示されているように、この実施例の試料注出補助具2は、上方が開放された複数のウエル12を有する注出容器10とともに用いられる。試料注出補助具2は、注出容器10の各ウエル12に対応する試験片保持部4を有するプレート上の部材である。試験片保持部4は、下方へいくにしたがって内径が小さくなる漏斗形状を有し、下端に開口6が設けられている。なお、試験片保持部4の形状は漏斗形状に限らず、試験片20から注出された試料を下端の開口6へ導くように内面の少なくとも一部が傾斜していればよい。
【0019】
図2(A)に示されているように、試料注出補助具2は注出容器10上に載置された状態で使用される。注出すべき試料を保持した試験片20は、試験片保持部4に上方から挿入される。試験片保持部4の開口6の内径は試験片20がウエル12の底面へ落下しないような大きさで設けられている。試験片保持部4内に挿入された試験片20は、一端がウエル12の底面を向いた状態で試験片保持部4の内側側面によって支持される。
【0020】
試験片20は、両端が開放されたマイクロ流路を内部に有し、そのマイクロ流路内に試料を保持するものである。試験片20は、特許文献1に開示されているようなマイクロサンプリングデバイスから切り取られた一片であってもよいし、キャピラリのような細管形状のものであってもよい。
【0021】
試料注出補助具2の各試験片保持部4内に試験片20を保持させた状態で、ウエル12の上面から底面に向かう方向に遠心力が作用するように試料注出補助具2と注出容器10との一体物を旋回させると、図2(B)に示されているように、試験片20の一端から試料が流出し、試験片保持部4の開口6を介してウエル12の底面へ試料が注出される。このとき、試験片20は試験片保持部4によってウエル12の底面に注出された試料と接触しない位置で保持されているため、注出された試料が試験片20に再吸入されることはない。
【0022】
その後、図2(C)に示されているように、試料注出補助具2を注出容器10上から移動させることで、すべての試験片20を各ウエル12から取り除くことができる。このため、各ウエル12の試料に対する処理が容易になる。
【0023】
すなわち、この実施例の試料注出補助具2を用いた試料注出方法は、図3に示されているように、以下の4つのステップからなる。
(ステップS1)試料注出補助具2を注出容器10上に載置する。
(ステップS2)試料注出補助具2の各試験片保持部4に試験片20を保持させる。
(ステップS3)上に試料注出補助具2を載置した状態の注出容器10を旋回させて遠心力を利用した試料の注出を行なう。
(ステップS4)試料注出補助具2を注出容器10上から移動させる。
【0024】
なお、上記実施例の試料注出補助具2は、複数のウエル12を有する注出容器10に対して適用されるものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つのウエルのみを有する注出容器に対しても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
2 試料注出補助具
4 試験片保持部
6 開口
10 注出容器
12 ウエル
20 試験片
22 マイクロ流路
図1
図2
図3