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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20220509BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20220509BHJP
   B60W 20/10 20160101ALI20220509BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20220509BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20220509BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20220509BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/442 ZHV
B60W20/10
B60L15/20 S
B60L50/16
B60L9/18 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020566116
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2019043742
(87)【国際公開番号】W WO2020148974
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2019007160
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(72)【発明者】
【氏名】安部 洋則
(72)【発明者】
【氏名】半田 和功
(72)【発明者】
【氏名】荻野 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】竹内 均
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-000815(JP,A)
【文献】特開2008-247155(JP,A)
【文献】特開2007-296975(JP,A)
【文献】特開2002-171607(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103213490(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/442
B60W 20/10
B60L 15/20
B60L 50/16
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと第一の回転電機と第二の回転電機とが搭載され、前記エンジンの動力及び前記第一の回転電機の動力を互いに異なる動力伝達経路から個別に駆動輪に伝達するとともに前記エンジンの動力を前記第二の回転電機にも伝達して発電する車両の制御装置において、
前記車両には、前記第一の回転電機の動力を前記駆動輪に伝達する動力伝達経路上に断接機構が設けられ、
前記制御装置は、前記車両に対する要求駆動力を算出するとともに、前記断接機構が切断されている状態であって前記エンジンの動力にて前記駆動輪を駆動している際に、算出した前記要求駆動力の一部を、前記断接機構を切断状態から係合状態に移行させるとともに前記第一の回転電機を力行させて前記第一の回転電機で賄う場合、及び、前記断接機構を切断状態のままとして前記第二の回転電機を力行させて前記第二の回転電機で賄う場合のいずれか一方において、前記第一の回転電機、又は、前記第二の回転電機で、前記要求駆動力の一部の駆動力を発生させるための発生期間を、予め設定された前記車両の運転状況と前記発生期間との関係を適用して推定し、推定した前記発生期間に基づいて選択した前記一方の回転電機を力行させる
ことを特徴とする、車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記発生期間が所定値未満であれば前記第二の回転電機を選択し、前記発生期間が前記所定値以上であれば前記第一の回転電機を選択する
ことを特徴とする、請求項1記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記運転状況には、前記要求駆動力の増加率及び前記車両の周辺状況の少なくとも一方が含まれる
ことを特徴とする、請求項1又は記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、アクセルペダルの踏み込み速度が所定速度以上であれば前記第二の回転電機を選択し、前記踏み込み速度が前記所定速度未満であれば前記第一の回転電機を選択する
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記断接機構が切断されている状態であって前記エンジンの駆動中に、前記要求駆動力が前記エンジンの最大駆動力よりも大きくなったら前記要求駆動力の一部を前記第一の回転電機及び前記第二の回転電機のいずれか一方で賄う
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源としてのエンジン及び第一の回転電機と、エンジンの動力で発電する第二の回転電機とが装備された車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンと回転電機(モータ,ジェネレータ,モータジェネレータ)とを装備したハイブリッド車両において、走行モードを切り替えながら走行する車両が実用化されている。走行モードには、バッテリの充電電力を用いてモータのみで走行するEVモード、エンジンによってジェネレータを発電させながらモータのみで走行するシリーズモード、エンジン主体で走行しつつ必要があればモータでアシストするパラレルモード等が含まれる。
【0003】
エンジンの動力とモータの動力とを個別に出力可能なハイブリッド車両では、エンジンから駆動輪までの動力伝達経路とモータから駆動輪までの動力伝達経路とが別々に設けられる。また、こうしたハイブリッド車両では一般的に、高車速ではエンジン主体で走行するモード(パラレルモード)が選択される。パラレルモードにおいて、モータアシストが不要な場合、すなわちエンジンの動力のみで走行可能な場合には、モータが駆動輪に連れ回されて回転する。このときのモータの連れ回りによって生じた誘起電圧が駆動用バッテリの電圧を上回ると、車両に対して回生ブレーキが働くことになるため、運転者に違和感を与えかねない。
【0004】
従来は、このような違和感を与えないように、弱め磁束制御を実施することで高速走行時に意図しない回生ブレーキが生じることを防いでいた。しかし、弱め磁束制御の実施には電力を消費するため、電費向上の観点からはこの制御の実施は好ましくない。このような課題に対し、エンジン走行中にモータアシストが不要であれば、モータを動力伝達経路から切り離すクラッチ(断接機構)を設けることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/217067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の特許文献1のように、モータと駆動軸との間の動力伝達経路上にクラッチを備えた車両では、エンジン走行中にモータアシストが必要であると判断されると、クラッチを接続するための制御が実施される。例えば、エンジン走行中にアクセルペダルが踏み込まれ、要求駆動力が大きく増加した際には、クラッチが接続されてモータアシストが実施される。
【0007】
しかしながら、切断状態のクラッチを接続するためには、クラッチ接続のための動力(油圧や電力)が必要になることに加え、クラッチの接続が完了するまでの間は要求駆動力を実現しにくいという課題がある。このため、クラッチ接続の要否を適切に判断した上でクラッチを接続し、要求される駆動力を効率よく実現するためには、改良の余地がある。
【0008】
本件の制御装置は、このような課題に鑑み案出されたもので、回転電機の駆動力及びエンジンの駆動力のそれぞれで走行可能なハイブリッド車両において、切断状態の断接機構を適切に接続し、要求される駆動力を効率よく実現することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)ここで開示する制御装置は、エンジンと第一の回転電機と第二の回転電機とが搭載され、前記エンジンの動力及び前記第一の回転電機の動力を互いに異なる動力伝達経路から個別に駆動輪に伝達するとともに前記エンジンの動力を前記第二の回転電機にも伝達して発電する車両に設けられる。前記車両には、前記第一の回転電機の動力を前記駆動輪に伝達する動力伝達経路上に介装された断接機構が設けられる。前記制御装置は、前記車両に対する要求駆動力を算出するとともに、前記断接機構が切断されている状態であって前記エンジンの動力にて前記駆動輪を駆動している際に、算出した前記要求駆動力の一部を、前記断接機構を切断状態から係合状態に移行させるとともに前記第一の回転電機を力行させて前記第一の回転電機で賄う場合、及び、前記断接機構を切断状態のままとして前記第二の回転電機を力行させて前記第二の回転電機で賄う場合のいずれか一方において前記第一の回転電機、又は、前記第二の回転電機で、前記要求駆動力の一部の駆動力を発生させるための発生期間を、予め設定された前記車両の運転状況と前記発生期間との関係を適用して推定し、推定した前記発生期間に基づいて選択した前記一方の回転電機を力行させる。
【0010】
なお、前記第一の回転電機とは、回転する電機子又は界磁を有し、少なくとも電動機能を有する電動発電機(モータジェネレータ)又は電動機を意味する。また、前記第二の回転電機とは、回転する電機子又は界磁を有し、少なくとも発電機能を有する電動発電機(モータジェネレータ)又は発電機を意味する。また、前記断接機構としては、例えば、多板クラッチやドグクラッチといったクラッチ機構,係合部材(スリーブ)を用いたシンクロ機構,サンギヤとキャリアとリングギヤとを用いた遊星歯車機構が挙げられる。
【0012】
)前記制御装置は、前記発生期間が所定値未満であれば前記第二の回転電機を選択し、前記発生期間が前記所定値以上であれば前記第一の回転電機を選択することが好ましい。
)前記運転状況には、前記要求駆動力の増加率及び前記車両の周辺状況の少なくとも一方が含まれることが好ましい。
【0013】
)前記制御装置は、アクセルペダルの踏み込み速度が所定速度以上であれば前記第二の回転電機を選択し、前記踏み込み速度が前記所定速度未満であれば前記第一の回転電機を選択することが好ましい。
)前記制御装置は、前記断接機構が切断されている状態であって前記エンジンの駆動中に、前記要求駆動力が前記エンジンの最大駆動力よりも大きくなったら前記要求駆動力の一部を前記第一の回転電機及び前記第二の回転電機のいずれか一方で賄うことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
開示の車両の制御装置によれば、切断状態の断接機構を適切に接続でき、効率よく要求駆動力を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る制御装置が搭載されるハイブリッド車両の構成を例示する模式図である。
図2】車速及び要求駆動力に応じた走行モードを設定したマップ例である。
図3】動力伝達について説明するための図であり、パラレルモードかつモータクラッチが切断されている状態を示す。
図4図1の制御装置で実施される制御内容を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、実施形態としての車両の制御装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0017】
[1.全体構成]
本実施形態の制御装置1は、図1に示す車両10に適用され、この車両10に搭載されるエンジン2,モータ3,ジェネレータ4,クラッチ7,8等を制御する。この車両10は、駆動源としてのエンジン2と走行用のモータ3(第一の回転電機)と発電用のジェネレータ4(第二の回転電機)とを装備したハイブリッド車両である。なお、本実施形態では、これらの機器2,3,4が車両10の前側に搭載されているものとする。
【0018】
ジェネレータ4はエンジン2に連結され、モータ3の作動状態とは独立して作動可能である。車両10にはEVモード,シリーズモード,パラレルモードの三種類の走行モードが用意される。これらの走行モードは、制御装置1によって、車両状態や走行状態,運転者の要求駆動力等に応じて択一的に選択され、その種類に応じてエンジン2,モータ3,ジェネレータ4が使い分けられる。
【0019】
図2は、車速及び要求駆動力に応じて走行モードを選択するときに用いられるマップの一例である。EVモードは、エンジン2及びジェネレータ4を停止させたまま、駆動用のバッテリ9(図1参照)の充電電力を用いてモータ3のみで車両10を駆動する走行モードである。EVモードは、要求駆動力及び車速がいずれも低い場合やバッテリ9の充電レベルが高い場合に選択される。シリーズモードは、エンジン2でジェネレータ4を駆動して発電しつつ、その電力を利用してモータ3で車両10を駆動する走行モードである。シリーズモードは、要求駆動力が高い場合やバッテリ9の充電レベルが低い場合に選択される。パラレルモードは、おもにエンジン2の駆動力で車両10を駆動し、必要に応じてモータ3で車両10の駆動をアシストする走行モードであり、車速が高い場合や要求駆動力が高い場合に選択される。
【0020】
図1に示すように、駆動輪5には、複数のギヤやクラッチを内蔵したトランスアクスル20を介してエンジン2及びモータ3が並列に接続され、エンジン2及びモータ3のそれぞれの動力が互いに異なる動力伝達経路から個別に伝達される。すなわち、エンジン2及びモータ3のそれぞれは、車両10の駆動軸6を駆動する。また、エンジン2には、トランスアクスル20を介してジェネレータ4及び駆動輪5が並列に接続され、エンジン2の動力が、駆動輪5に加えてジェネレータ4にも伝達される。
【0021】
トランスアクスル20は、デファレンシャルギヤ18(差動装置、以下「デフ18」と呼ぶ)を含むファイナルドライブ(終減速機)とトランスミッション(減速機)とを一体に形成した動力伝達装置であり、駆動源と被駆動装置との間の動力伝達を担う複数の機構を内蔵する。
【0022】
エンジン2は、ガソリンや軽油を燃料とする内燃機関(ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン)である。このエンジン2は、クランクシャフト2aの向きが車両10の車幅方向に一致するように横向きに配置されたいわゆる横置きエンジンであり、トランスアクスル20の右側面に対して固定される。クランクシャフト2aは、駆動軸6に対して平行に配置される。エンジン2の作動状態は、制御装置1で制御されてもよいし、制御装置1とは別の電子制御装置(図示略)で制御されてもよい。
【0023】
本実施形態のモータ3及びジェネレータ4はいずれも、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えた電動発電機(モータ・ジェネレータ)である。モータ3は、バッテリ9と電力の授受を行なう駆動源であり、おもに電動機として機能して車両10を駆動し、回生時には発電機として機能する。
【0024】
ジェネレータ4は、エンジン2を始動させる際に電動機(スターター)として機能し、エンジン2の作動時にはエンジン動力で駆動されて発電する。さらにジェネレータ4は、力行状態では車両10の駆動軸6に駆動力を伝達する。モータ3及びジェネレータ4の各周囲(又は各内部)には、直流電流と交流電流とを変換するインバータ(図示略)が設けられる。モータ3及びジェネレータ4の各回転速度及び各作動状態(力行運転,回生・発電運転)は、インバータを制御することで制御される。
【0025】
車両10には、車両10に搭載される各種装置を統合制御する制御装置1が設けられる。制御装置1は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成された電子制御装置であり、車両10に搭載される各種装置を統合制御する。制御装置1の入力側には、アクセル開度センサ31,車速センサ32,カメラ33,レーダ34,ナビゲーション装置35,ウィンカーレバー36が接続される。以下、これらを総称して入力装置31~36とも呼ぶ。入力装置31~36は、車両10の運転状況を取得するものである。
【0026】
アクセル開度センサ31は、アクセルペダルの踏み込み操作量(アクセル開度)を検出し、車速センサ32は車速を検出する。カメラ33は、車両10の周囲の画像(静止画や動画などの映像)を撮像する装置であり、例えば撮像素子を内蔵したビデオカメラである。レーダ34は、レーザレーダやミリ波レーダ等であって、車両10の前端部や後端部等に設置され、車両10の前方や後方にレーザ波等を送出し、その反射波を受信することで車両10の前方や後方に存在する物体の情報を検出する。アクセル開度センサ31,車速センサ32,レーダ34はいずれも、検出した情報を制御装置1に伝達する。また、カメラ33は、撮像した画像を制御装置1に伝達する。
【0027】
ナビゲーション装置35は、詳細な地図データを有しており、GPS受信部によって受信されたGPS衛星からの信号と地図データとを使って、車両10の現在位置の検出(認識)や目的地への経路案内等を行う。GPS受信部は、衛星測位システムの情報端末機であって、GPS衛星から車両10の現在位置に関する情報を取得する。ナビゲーション装置35は、取得した情報を制御装置1に伝達する。また、ウィンカーレバー36は、ウィンカー(方向指示器)の作動状態を制御するためのスイッチであり、運転者によって操作されるとともにウィンカーの作動状態を制御装置1に伝達する。
【0028】
制御装置1の出力側には、エンジン2(あるいはエンジン制御装置),モータ3のインバータ,ジェネレータ4のインバータ,クラッチ7,8が接続される。なお、出力側の信号線の図示は省略している。本実施形態の制御装置1は、運転者の要求駆動力等に応じて走行モードを選択し、選択した走行モードに応じて各種機器(例えばエンジン2や回転電機3,4)を制御するとともにトランスアクスル20内のクラッチ7,8の断接状態を制御する。
【0029】
本実施形態のトランスアクスル20には、互いに平行に配列された六つの軸11~16が設けられる。以下、クランクシャフト2aと同軸上に接続される回転軸を入力軸11と呼び、駆動軸6と同軸上に接続される回転軸を出力軸12と呼ぶ。また、モータ3の回転軸,ジェネレータ4の回転軸のそれぞれと同軸上に接続される回転軸を、モータ軸13,ジェネレータ軸14と呼ぶ。また、モータ軸13と出力軸12との間の動力伝達経路上に配置された回転軸を第一カウンタ軸15と呼び、入力軸11と出力軸12との間の動力伝達経路上に配置された回転軸を第二カウンタ軸16と呼ぶ。六つの軸11~16はいずれも、両端部が軸受(図示略)を介してトランスアクスル20のケーシングに軸支される。
【0030】
トランスアクスル1の内部には、図1中に模様付き太矢印で示す三つの動力伝達経路が形成される。具体的には、モータ3と駆動軸6(出力軸12)とを繋ぐ第一の動力伝達経路(以下「第一経路41」と呼ぶ),エンジン2と駆動軸6(出力軸12)とを繋ぐ第二の動力伝達経路(以下「第二経路42」と呼ぶ),エンジン2とジェネレータ4とを繋ぐ第三の動力伝達経路(以下「第三経路43」と呼ぶ)の三つが形成される。第一経路41及び第二経路42は駆動用の動力伝達経路であり、第三経路43は発電用の動力伝達経路である。
【0031】
第一経路41は、モータ3の駆動力を駆動軸6に伝達する動力伝達経路である。第一経路41上には、モータ3と同期して回転することで動力が伝達されるモータ軸13と、モータ軸13の動力が伝達される第一カウンタ軸15とが設けられる。また、第一経路41の中途(本実施形態では第一カウンタ軸15上)には、その動力伝達を断接するクラッチ7(断接機構)が介装される。以下、このクラッチ7を「モータクラッチ7」と呼ぶ。第一カウンタ軸15には、右側から順に、モータ軸13のギヤ13aと噛み合うギヤ15aと、モータクラッチ7と、出力軸12に設けられたデフ18のリングギヤ18bと噛み合うギヤ15bとが設けられる。
【0032】
モータクラッチ7は、例えば湿式の多板クラッチやドグクラッチである。モータクラッチ7よりも動力伝達経路の上流側の動力(すなわちモータ3の駆動力)は、モータクラッチ7が係合状態であれば出力軸12を通じて駆動軸6に伝達され、切断(開放)状態であれば遮断される。なお、モータクラッチ7の断接状態は、制御装置1によって制御される。
【0033】
第二経路42は、エンジン2の駆動力を駆動軸6に伝達する動力伝達経路である。第二経路42上には、ジェネレータ4と同期して回転することで動力が伝達される入力軸11及び入力軸11の動力が伝達される第二カウンタ軸16が設けられる。また、第二経路42の中途(本実施形態では第二カウンタ軸16上)には、その動力伝達を断接するクラッチ8が介装される。以下、このクラッチ8を「エンジンクラッチ8」とも呼ぶ。第二カウンタ軸16には、右側(エンジン2に近い側)から順に、入力軸11のギヤ11aと噛み合うギヤ16aと、エンジンクラッチ8と、デフ18のリングギヤ18bと噛み合うギヤ16bとが設けられる。
【0034】
エンジンクラッチ8は、例えば湿式の多板クラッチやドグクラッチである。エンジンクラッチ8よりも動力伝達経路の上流側(エンジン2及びジェネレータ4側)の動力は、エンジンクラッチ8が係合状態であれば出力軸12を通じて駆動軸6に伝達され、切断(開放)状態であれば遮断される。なお、エンジンクラッチ8の断接状態は、制御装置1によって制御される。
【0035】
第三経路43は、エンジン2からジェネレータ4への動力伝達及びジェネレータ4からエンジン2への動力伝達に係る経路であり、ジェネレータ4が電動機及び発電機のそれぞれとして作動した場合の動力伝達を担うものである。ジェネレータ4が電動機として作動する場合には、ジェネレータ4の駆動力により入力軸11を回転させることができる。エンジン2及びジェネレータ4は、クラッチを介すことなく、互いに噛み合うギヤ11a,14aを介して直結されている。なお、ジェネレータ4が電動機として作動する場合には、ジェネレータ4の駆動力は第三経路43の一部と第二経路42の一部とを介して駆動軸6に伝達される。
【0036】
本実施形態では、走行モードがEVモード又はシリーズモードである場合には、モータクラッチ7が係合状態とされ、エンジンクラッチ8が切断状態とされる。また、走行モードがパラレルモードであってモータアシスト(モータ3の駆動力)が不要な場合には、モータクラッチ7が切断状態とされ、エンジンクラッチ8が係合状態とされる。また、走行モードがパラレルモードであってモータアシストが必要な場合には、モータクラッチ7及びエンジンクラッチ8の双方が係合状態とされる。
【0037】
[2.制御構成]
本実施形態の制御装置1は、モータクラッチ7が切断されている状態であってエンジン2の動力にて駆動輪5を駆動している際に、要求駆動力の一部をモータ3及びジェネレータ4のいずれか一方(すなわちエンジン2の駆動力以外の駆動力)で賄う場合に、車両10の運転状況に基づいて選択した一方の回転電機3又は4を力行させる選択制御を実施する。選択制御は、車両10に対する要求駆動力を、エンジン2の駆動力及びモータ3の駆動力、又は、エンジン2の駆動力及びジェネレータ4の駆動力によって実現するための制御である。選択制御は、走行モードがパラレルモードに設定されており、かつ、モータアシストがない状態のときに行われる。
【0038】
制御装置1は、選択制御において、モータ3を選択した場合には、モータクラッチ7を切断状態から係合状態に移行させるとともにモータ3を力行させる(力行状態に制御する)。モータ3が選択される場合、モータクラッチ7の接続が完了するまでの間はモータ3の駆動力が駆動軸5に伝達されないが、モータクラッチ7の接続が完了すれば(係合状態への移行完了以後は)効率よく要求駆動力を実現できる。これは、一般的にモータ3の方がジェネレータ4よりも駆動(走行)に適した仕様の電動発電機が採用されるためである。
【0039】
一方、制御装置1は、選択制御において、ジェネレータ4を選択した場合には、モータクラッチ7を切断状態のままとし、ジェネレータ4を力行させる(力行状態に制御する)。ジェネレータ4が選択される場合、ジェネレータ4の駆動力が第三経路43の一部と第二経路42の一部とを介して駆動軸6に伝達される。この動力伝達とモータクラッチ7の断接状態とは無関係である。言い換えると、モータクラッチ7を接続させることなく、速やかに要求駆動力を実現できる。
【0040】
本実施形態の運転状況には、要求駆動力の増加率と車両10の周辺状況との少なくとも一方が含まれる。運転状況に要求駆動力の増加率が含まれる場合、この増加率の大小によって車両10に対する運転者の加速要求度合いを把握できる。具体的には、増加率が大きいほど加速要求の度合いが高く、反対に、増加率が小さいほど加速要求の度合いが低い。なお、加速要求の度合いは、単純にアクセルペダルの踏み込み速度(アクセル開速度)からも把握可能である。すなわち、アクセルペダルの踏み込み速度が運転状況に含まれてもよい。また、要求駆動力の増加率に代えて、又は、加えて、要求駆動力の大きさやアクセル開度が運転状況に含まれていてもよい。
【0041】
また、周辺状況としては、例えば、車両10の前方に先行車を含む物体(先行物体)が存在するか否か,先行物体との距離,先行車の走行状態(車速,車線変更の有無等),車両10の車線変更要求,車両10の走行路面の勾配(上り坂が否か)などが挙げられる。これらはいずれも、車両10がより大きな駆動力を必要とする状況であるか否かを判断する要素である。言い換えると、周辺状況は、車両10がより大きな駆動力を要する状況であるか否かを判断しうる要素であればよい。
【0042】
これらの運転状況は、上記の入力装置31~36で取得される。具体的には、要求駆動力の大きさや増加率はアクセル開度センサ31及び車速センサ32から取得可能であり、先行物体に関する情報はカメラ33及びレーダ34から取得可能である。また、車両10の車線変更要求はウィンカースイッチ36から取得可能であり、走行路面の勾配はナビゲーション装置35から取得可能である。制御装置1は、入力装置31~36から伝達された各種情報を処理することで、運転状況を取得する。なお、上記の入力装置31~36以外の装置から運転状況を取得してもよい。言い換えると、運転状況の取得方法や取得装置は特に限られない。
【0043】
本実施形態の制御装置1には、上記の選択制御を実施する機能に加え、要求駆動力を算出する機能と、車速,要求駆動力,バッテリ9の充電状態等に基づいて走行モードを選択して設定する機能とが設けられる。本実施形態では、要求駆動力を算出する機能要素を「算出部1A」と呼び、走行モードを設定する機能要素を「設定部1B」と呼び、選択制御を実施する機能要素を「選択制御部1C」と呼ぶ。これらの要素は、制御装置1で実行されるプログラムの一部の機能を示すものであり、ソフトウェアで実現されるものとする。ただし、各機能の一部又は全部をハードウェア(電子回路)で実現してもよく、あるいはソフトウェアとハードウェアとを併用して実現してもよい。
【0044】
算出部1Aは、例えばアクセル開度センサ31で検出されたアクセル開度(APS)と車速センサ32で検出された車速とに基づいて、車両10に対する要求駆動力(要求出力)を算出する。なお、算出部1Aは、前後加速度や横加速度,ステアリング角度や車体の傾きといったパラメータを考慮して、より正確な要求駆動力を算出してもよい。算出部1Aは、選択制御時に限らず、例えば車両10の主電源が投入されている状態や車速が0でない状態で常に要求駆動力を算出する。
【0045】
設定部1Bは、例えば図2に示すマップに対し、現在の車速及び要求駆動力を適用することで走行モードを選択し、その走行モードを設定する。本実施形態の設定部1Bは、バッテリ9の充電状態(充電率)に応じて、図2に例示したマップの各領域を変更する。例えば、バッテリ9の充電率が低くなるにつれ、EVモードよりもシリーズモードが選択されやすくなるよう、マップの領域が変更される。なお、設定部1Bがマップの領域を変更する代わりに、バッテリ9の充電率ごとに異なる領域が設定されたマップを複数記憶しておき、充電率に対応するマップを選択する構成としてもよい。
【0046】
選択制御部1Cは、図3に示すように、設定部1Bによりパラレルモードが設定されており、かつ、モータクラッチ7が切断状態である場合に、選択制御を実施するか否かを判定する。具体的には、選択制御部1Cは、算出部1Aで算出される要求駆動力に基づき、要求駆動力の一部をモータ3及びジェネレータ4のいずれか一方で賄う必要があるか否かを判断し、必要であれば選択制御を実施し、不要であれば選択制御を実施しない。なお、図3中の模様付き太矢印は、動力の伝わり方を示す。図3に示す状態ではエンジンクラッチ8が接続されていることから、エンジン2の駆動力のみで車両10は走行している。
【0047】
本実施形態の選択制御部1Cは、要求駆動力とエンジン2の最大駆動力とを比較し、前者が後者よりも大きければ「モータ3又はジェネレータ4で駆動力の一部を賄う必要がある」と判定し、前者が後者以下であれば「モータ3又はジェネレータ4で駆動力の一部を賄う必要はない」と判定する。つまり、本実施形態では、エンジン2の駆動力だけでは要求駆動力を実現できない状況になると、モータ3の駆動力及びジェネレータ4の駆動力のいずれか一方を付加するために選択制御が実施される。
【0048】
要求駆動力がエンジン2の最大駆動力よりも大きくなる状況としては、例えば運転者が加速のためにアクセルペダルを踏み込んだときが挙げられる。なお、エンジン2の最大駆動力は、例えば車速に応じて変化する可変値として制御装置1に予め設定されている。選択制御部1Cは、上記の要否判定の時点における車速を取得し、この車速に応じた値(最大駆動力)を判定に用いる。
【0049】
選択制御部1Cは、選択制御を実施する場合には、モータ3又はジェネレータ4で、要求駆動力の一部の駆動力を発生させるための時間の長さ(以下「発生期間」と呼ぶ)を運転状況から予め推定する。本実施形態では、この発生期間がモータ3の駆動力又はジェネレータ4の駆動力を付加する付加時間となる。発生期間の推定手法は特に限られない。例えば、運転状況に要求駆動力の増加率や大きさが含まれる場合には、要求駆動力の大きさ又は増加率と発生期間との関係を予め記憶しておき、選択制御部1Cが、算出部1Aで算出される要求駆動力をこの関係に適用することで発生期間を推定してもよい。また、運転状況に周辺状況が含まれる場合には、上述した周辺状況ごとに発生期間との関係を予め設定しておき、選択制御部1Cが、取得した周辺状況をその関係に適用することで発生期間を推定してもよい。
【0050】
選択制御部1Cは、予め推定した発生期間に基づいて一方の回転電機3又は4を選択する。本実施形態の選択制御部1Cは、発生期間が所定値未満であればジェネレータ4を選択し、発生期間がこの所定値以上であればモータ3を選択する。これは、上述したように、ジェネレータ4の方がモータ3よりも速やかな要求駆動力の実現に適し、モータ3の方がジェネレータ4よりも効率的な要求駆動力の実現に適しているためである。
【0051】
つまり、発生期間が短いのであれば、モータクラッチ7をわざわざ接続させなくても、一時的にジェネレータ4の駆動力を駆動軸6に伝達する方がより早く加速を実現できる。反対に、発生期間が長いのであれば、モータクラッチ7の接続が完了してからもエンジン2以外の駆動力を駆動軸6に伝達する必要があるため、駆動に適したモータ3を利用した方が長期的に要求駆動力を効率よく実現できる。なお、上記の所定値は、例えばモータクラッチ7の接続を開始してから接続が完了するまでの時間よりも短い時間に予め設定されている。
【0052】
また、運転状況にアクセルペダルの踏み込み速度が含まれる場合に、選択制御部1Cがこの踏み込み速度に基づいて(すなわち上記の発生期間を推定せずに)、一方の回転電機3又は4を選択してもよい。この場合、選択制御部1Cは、踏み込み速度が所定速度以上であればジェネレータ4を選択し、踏み込み速度がこの所定速度未満であればモータ3を選択することができる。所定速度は、より強い加速が要求されているか否かを判断する閾値速度であり、予め設定されている。
【0053】
選択制御部1Cは、モータ3を選択した場合にはモータクラッチ7を接続し、モータクラッチ7の係合状態への移行が完了した以後にモータ3を力行状態に制御する。そして、モータ3によるアシストを実施している時間が発生期間に達したら、モータクラッチ7を切断し、モータ3を無負荷状態に制御する。一方、選択制御部1Cは、ジェネレータ4を選択した場合にはモータクラッチ7に対する制御は特に実施せず、ジェネレータ4を力行状態に制御し、ジェネレータ4によるアシストを実施している時間が発生期間に達したら、ジェネレータ4を無負荷状態に制御する。
【0054】
[3.フローチャート]
図4は、上述した制御装置1で実施される制御内容を説明するためのフローチャート例である。このフローチャートは、車両10の主電源が投入されている状態で所定の演算周期で実施される。なお、制御装置1の設定部1Bによる走行モードの設定は、このフローチャートとは別に実行されるものとし、設定される走行モードの情報は選択制御部1Cに伝達されるものとする。
【0055】
ステップS1では、上記の入力装置31~36で検出,取得された情報と設定部1Bでの走行モードの設定情報とが伝達される。ステップS2では、設定中の走行モードがパラレルモードであるか否かが判定される。現在の走行モードがパラレルモードでない場合はこのフローチャートをリターンする。現在の走行モードがパラレルモードである場合はステップS3に進み、フラグFがF=0であるか否かが判定される。
【0056】
フラグFは、要求駆動力の一部がモータ3又はジェネレータ4のいずれか一方で賄われているか否か(エンジン2に対するアシストの有無)を示すとともに、アシストがある場合にはその種類(モータ3又はジェネレータ4)を示す変数である。具体的には、F=0は「アシスト無し」,F=1は「ジェネレータ4によるアシスト有り」,F=2は「モータ3によるアシスト有り」であることを表す。ステップS3では、フラグF=0であるか否か、つまり、アシストの有無が判定される。F=0であれば(モータ3及びジェネレータ4がエンジン2をアシストしていなければ)ステップS4に進む。
【0057】
ステップS4では要求駆動力が算出され、続くステップS5では、算出された要求駆動力がエンジン2の最大駆動力よりも大きいか否かが判定される。要求駆動力≦エンジン最大駆動力であれば、エンジン2の駆動力のみで要求駆動力を賄うことができるため、このフローチャートをリターンする。反対に、要求駆動力>エンジン最大駆動力であればステップS6に進み、発生期間が推定される。すなわちこの場合は、エンジン2の駆動力だけでは要求駆動力を満足できず、モータ3又はジェネレータ4の駆動力を付加する必要があるため、ステップS6以降の処理によってどちらを用いるのかを決定する。
【0058】
ステップS7では、ステップS6で推定された発生期間が所定値未満であるか否かが判定される。発生期間<所定値であればジェネレータ4が選択されるため、ステップS8に進んでジェネレータ4が力行状態に制御される。次いで、タイマカウントが開始されるとともに(ステップS9)、フラグFがF=1に設定される(ステップS10)。さらに、ステップS11では、ステップS9でカウントが開始されたタイマの値が、ステップS6で推定された発生期間以上であるか否かが判定される。
【0059】
タイマカウント値<発生期間であればこのフローチャートをリターンする。この場合(ジェネレータ4の力行運転中)は、次の演算周期においてステップS3からステップ12に進み、F=1であるか否かが判定される。この場合、フラグFはF=1であるため、ステップS12からステップS11に進む。すなわち、タイマカウント値が発生期間に達するまではステップS11の判定が繰り返し実施される。
【0060】
タイマカウント値≧発生期間になると、ステップS11からステップS13に進み、力行運転中のジェネレータ4が無負荷状態に制御される。すなわち、この時点でジェネレータ4による駆動力のアシストが終了する。そして、ステップS14ではタイマカウントが停止されるとともに値がリセットされ、ステップS15ではフラグFがF=0に設定されて、このフローチャートをリターンする。
【0061】
一方、ステップS7において、発生期間≧所定値であればモータ3が選択されるため、ステップS16に進んでモータクラッチ7が接続されるとともに、ステップS17においてモータ3が力行状態に制御される。次いで、タイマカウントが開始されるとともに(ステップS18)、フラグFがF=2に設定される(ステップS19)。さらに、ステップS20では、ステップS18でカウントが開始されたタイマの値が、ステップS6で推定された発生期間以上であるか否かが判定される。
【0062】
タイマカウント値<発生期間であればこのフローチャートをリターンする。この場合(モータ3の力行運転中)は、次の演算周期においてステップS3からステップ12に進み、F=1であるか否かが判定される。この場合、フラグFはF=2であるため、ステップS12からステップS20に進む。すなわち、タイマカウント値が発生期間に達するまではステップS20の判定が繰り返し実施される。
【0063】
タイマカウント値≧発生期間になると、ステップS20からステップS21に進み、モータクラッチ7が切断されるとともに力行運転中のモータ3が無負荷状態に制御される。すなわち、この時点でモータ3による駆動力のアシストが終了する。そして、上述したステップS14,S15の処理がされ、このフローチャートをリターンする。
【0064】
[4.効果]
(1)上述した車両10には、モータ3からの動力とエンジン2からの動力とが駆動軸6に個別に伝達されるよう二つの動力伝達経路41,42が設けられており、さらにエンジン2の動力がジェネレータ4にも伝達されるとともに、ジェネレータ4が力行状態に制御された際にジェネレータ4の動力が駆動軸6に伝達される。このような車両10に設けられた制御装置1では、モータクラッチ7の切断状態でのパラレルモード中であって要求駆動力の一部をモータ3及びジェネレータ4のいずれか一方で賄う場合に、運転状況に基づいて選択した一方の回転電機3又は4を力行させる。このため、切断状態のモータクラッチ7を適切に接続でき、効率よく要求駆動力を実現することができる。
【0065】
(2)モータ3で要求駆動力の一部を賄う場合には、ジェネレータ4を発電機として待機させておくことができる。一方、ジェネレータ4で要求駆動力の一部を賄う場合にはモータクラッチ7を接続する必要がなく、速やかに駆動力を発生させることができる。上述した制御装置1は、このような観点から、要求駆動力の一部の駆動力を発生させるための発生期間を運転状況から予め推定し、この発生期間に基づき一方の回転電機3又は4を選択する。このため、モータクラッチ7の断接状態を適切に制御できるとともに、効率よく要求駆動力を実現することができる。
【0066】
(3)上述した制御装置1によれば、発生期間が短い(発生期間<所定値である)場合にはジェネレータ4が選択されるため、速やかに駆動力を駆動軸6に伝えることができる。一方、発生期間が長い(発生期間≧所定値である)場合にはモータ3が選択されるため、比較的長い発生期間のあいだ、継続して効率よく駆動力を駆動軸6に伝達することができる。さらにこの場合はジェネレータ4を発電機として待機させておくこともできる。
【0067】
(4)運転状況に要求駆動力の増加率が含まれている場合、要求駆動力の増加率によって短時間での加速が必要な状況であるか否かを判断できる。また、運転状況に周辺状況(例えば先行車の有無や路面の勾配など)が含まれている場合、この周辺状況によって短時間での加速が必要な状況であるか否かを判断できる。したがって、少なくともこれら二つのうちの一方が運転状況に含まれていれば、モータ3及びジェネレータ4のどちらを使用した方が、より効率よく要求駆動力を実現できるかを正確に判断することができる。
【0068】
(5)また、運転状況にアクセルペダルの踏み込み速度が含まれている場合、このアクセルペダルの踏み込み速度を選択する際の判定に用いることで、より強い加速が必要な場面ではジェネレータ4を選択でき、それほど加速が必要ではない場面ではモータ3を選択することができる。これにより、モータクラッチ7の断接状態を適切に制御できるとともに、効率よく要求駆動力を実現することができる。
【0069】
(6)上述した制御装置1では、モータクラッチ7が切断されている状態であってエンジン2の動力にて駆動輪5を駆動している際(パラレルモード中)に、要求駆動力がエンジン2の最大駆動力よりも大きくなったら上記の選択制御が実施される。言い換えると、制御装置1は、エンジン2の最大駆動力を超える駆動力が要求された場合に限りモータ3又はジェネレータ4の駆動力を付加するため、要求駆動力の実現と電費向上とを両立させることができる。
【0070】
[5.その他]
上述した選択制御の内容は一例であって、上述したものに限られない。上述した制御装置1は、モータクラッチ7が切断されている状態であってエンジン2の駆動中(パラレルモード中)に、要求駆動力がエンジン2の最大駆動力よりも大きくなった場合に選択制御を開始しているが、選択制御の開始条件はこれに限られない。
【0071】
例えば、エンジン2の最大駆動力よりもやや小さな値に設定された判定閾値を設けておき、モータクラッチ7が切断されている状態であってパラレルモード中に要求駆動力がこの判定閾値を超えたら選択制御を実施する構成としてもよい。なお、この判定閾値は予め設定された固定値であってもよいし、車両10の走行状態等に応じて設定される可変値であってもよい。選択制御は、少なくとも、モータクラッチ7が切断されている状態であってエンジン2の動力で駆動輪5を駆動している際に、要求駆動力の一部をモータ3及びジェネレータ4のいずれか一方で賄う場合に実施されればよく、車両10の加速時以外の走行状態で実施されてもよい。
【0072】
上述した運転状況やその取得装置は一例であって、上述したものが全て含まれていなくてもよいし、上述したもの以外の要素が含まれていてもよい。運転状況には、少なくとも、モータ3及びジェネレータ4のどちらを選択すればよいかを判断できる要素が含まれていればよい。
【0073】
上述した制御装置1が制御するトランスアクスル20の構成は一例であって、上述したものに限られない。また、トランスアクスル20に対するエンジン2,モータ3,ジェネレータ4の相対位置は上述したものに限らない。これらの相対位置に応じて、トランスアクスル20内の六つの軸11~16の配置を設定すればよい。また、トランスアクスル20内の各軸に設けられるギヤの配置も一例であって、上述したものに限られない。
【0074】
上述した選択制御を実施する制御装置は、二つの回転電機(モータやモータジェネレータ等)及びエンジンを備えた車両であって、エンジンの動力及び第一の回転電機の動力を互いに異なる動力伝達経路から個別に駆動輪に伝達するとともに、エンジンの動力を第二の回転電機にも伝達して発電する車両に対して適用可能であり、車両には、第一の回転電機の動力を駆動輪に伝達する動力伝達経路上に断接機構が設けられていればよい。すなわち、上述したトランスアクスル20以外の変速装置を備えた車両に対して、上述した選択制御を実施する制御装置を適用してもよい。上記実施形態では、断接機構としてモータクラッチ7(クラッチ機構)を例示したが、断接機構はこれに限られない。例えば、断接機構として、係合部材(スリーブ)を用いたシンクロ機構や、サンギヤとキャリアとリングギヤとを用いた遊星歯車機構を採用してもよい。なお、エンジンクラッチ7も同様に、クラッチ機構に限られず、シンクロ機構や遊星歯車機構であってもよい。
【0075】
なお、上述した実施形態では、車両10の前側にエンジン2及びモータ3が搭載された前輪駆動のハイブリッド車両を例示したが、上記の選択制御は、車両の後側にリヤモータ(図示略)が搭載された四輪駆動のハイブリッド車両においても実施可能である。また、車両10に搭載される回転電機3,4は上記のモータ3,ジェネレータ4に限られない。第一の回転電機は、回転する電機子又は界磁を有し、少なくとも電動機能を有する電動発電機(モータジェネレータ)又は電動機であればよい。また、第二の回転電機は、回転する電機子又は界磁を有し、少なくとも発電機能を有する電動発電機(モータジェネレータ)又は発電機であればよい。
【符号の説明】
【0076】
1 制御装置
1A 算出部
1B 設定部
1C 選択制御部
2 エンジン
3 モータ(第一の回転電機)
4 ジェネレータ(第二の回転電機)
5 駆動輪
6 駆動軸
7 モータクラッチ(断接機構)
8 エンジンクラッチ
9 バッテリ
10 車両
20 トランスアクスル
41 第一経路(第一の動力伝達経路)
42 第二経路(第二の動力伝達経路)
43 第三経路(第三の動力伝達経路)
図1
図2
図3
図4