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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】超音波霧化栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20220509BHJP
   B05B 17/06 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
A01G31/00 601C
B05B17/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018055407
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019165659
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507289715
【氏名又は名称】株式会社アイ電子工業
(73)【特許権者】
【識別番号】515085923
【氏名又は名称】株式会社カセダ
(73)【特許権者】
【識別番号】515086218
【氏名又は名称】株式会社ドライ・アップ・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100167047
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸典
(74)【代理人】
【識別番号】100085785
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 昌典
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 桂一
(72)【発明者】
【氏名】向坂 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】磯部 宅司
(72)【発明者】
【氏名】加世田 光義
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 幸三郎
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-022122(JP,A)
【文献】特開2014-000517(JP,A)
【文献】特表2009-530074(JP,A)
【文献】特開2008-269543(JP,A)
【文献】実開平05-037368(JP,U)
【文献】特開2005-224648(JP,A)
【文献】特開平11-117833(JP,A)
【文献】実開平03-047064(JP,U)
【文献】特開2012-034581(JP,A)
【文献】特開平03-224420(JP,A)
【文献】特開2015-053905(JP,A)
【文献】国際公開第2015/174493(WO,A1)
【文献】実開昭60-151352(JP,U)
【文献】実開昭50-075934(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
B05B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の苗を保持するパネルで上面が構成され、前記植物の根部が内部に下垂する中空の栽培管と、
前記栽培管の内部に下垂する前記根部に対応する、穴径が4mmの噴き出し穴が側面に設けられ、前記栽培管の内部に設けられる霧供給管と、
養液を貯留する霧化液槽と、前記養液を超音波振動で霧化する超音波振動子と、前記超音波振動子を振動させる発振器とを有し、霧化した前記養液を前記霧供給管に供給する超音波霧化器とを備え、
霧化された前記養液を前記栽培管の内部へ噴き出す前記噴き出し穴が皿座ぐり状に形成されていることを特徴とする超音波霧化栽培装置。
【請求項2】
前記噴き出し穴が、60度以上120度以下の範囲の座ぐり角度で皿座ぐり状に形成されている請求項1に記載の超音波霧化栽培装置。
【請求項3】
前記噴き出し穴が、垂直上方向から水平方向へ45度以上の位置に設けられている請求項1又は2に記載の超音波霧化栽培装置。
【請求項4】
前記栽培管と前記超音波霧化器とを連通させ、前記噴き出し穴から前記栽培管の内部に供給された霧を前記超音波霧化器に循環させる霧循環ダクトをさらに備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の超音波霧化栽培装置。
【請求項5】
前記栽培管と前記霧供給管との組み合わせからなる栽培ユニットを複数備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の超音波霧化栽培装置。
【請求項6】
霧化した前記養液の供給を制御するバルブを前記栽培ユニット毎にさらに備える請求項5に記載の超音波霧化栽培装置。
【請求項7】
複数の前記栽培ユニットが階段状に設けられる請求項5に記載の超音波霧化栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動子を用いて霧化した養液を施用して植物を栽培する超音波霧化栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、超音波振動子を用いて霧化した養液を施用して植物を栽培する超音波霧化栽培装置が提案されている。
【0003】
特許文献1に示される超音波霧化栽培装置は、超音波霧化器で発生した養液の霧をファンを用いて栽培管に送出し、栽培管の内部に伸びる植物の根部に養液を施用して植物を栽培させる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるように長さのある栽培管の内部に一方から霧を供給した場合、霧を供給する供給口に近いほど霧の濃度が高くなり、また、霧の移動が植物の生育に伴って伸びる根に阻まれることから、栽培管の内部における霧の濃度分布を均一に保つことが困難という課題が存在していた。
【0005】
かかる課題を解決する方法として、栽培管の内部に霧を供給するにあたって栽培管の一方から霧を供給するのではなく、植物の根部に近い位置に噴き出し穴を有するパイプを栽培管の内部に設け、そのパイプに霧を供給する方法が挙げられる。
【0006】
例えば、特許文献2には、養液をミスト状に噴霧するノズルを有する養液供給管を栽培管の内部に備えた植物栽培装置が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2の植物栽培装置のようにポンプによって加圧した養液をノズルから噴霧する場合と異なり、超音波霧化器で発生した霧をファンで送出して供給する超音波霧化栽培装置の場合は、噴き出し穴から噴き出す霧に対して大きな圧力を加えることが難しい。
【0008】
そのため、特許文献1に示されるような栽培管を備える超音波霧化栽培装置に上述のパイプを適用した場合、復水して水滴になった霧によって噴き出し穴が目詰まりしてしまう。
【0009】
噴き出し穴の目詰まりは、超音波霧化栽培装置で複数の植物を同時に栽培する場合に生育のばらつきを引き起こすため、霧の噴き出し穴の目詰まりを防ぐことができる超音波霧化栽培装置が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2012-034581号公報
【文献】再表2015/174493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、霧化した養液を植物の根部に供給する噴き出し穴を有する霧供給管を栽培管の内部に備える超音波霧化栽培装置において、復水して水滴になった霧によって噴き出し穴が目詰まりすることを防ぐ超音波霧化栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するために、本発明に係る超音波霧化栽培装置は、植物の苗を保持するパネルで上面が構成され、植物の根部が内部に下垂する中空の栽培管と、栽培管の内部に下垂する根部に対応する噴き出し穴が側面に設けられ、栽培管の内部に設けられる霧供給管と、養液を貯留する霧化液槽と、養液を超音波振動で霧化する超音波振動子と、超音波振動子を振動させる発振器とを有し、霧化した養液を霧供給管に供給する超音波霧化器とを備え、霧化された養液を栽培管の内部へ噴き出す噴き出し穴が皿座ぐり状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
噴き出し穴は、60度以上120度以下の範囲の座ぐり角度で皿座ぐり状に形成されても良い。
【0014】
噴き出し穴は、垂直上方向から水平方向へ45度以上の位置に設けられても良い。
【0015】
栽培管と超音波霧化器とを連通させ、噴き出し穴から栽培管の内部に供給された霧を超音波霧化器に循環させる霧循環ダクトをさらに備えても良い。
【0016】
栽培管と霧供給管との組み合わせからなる栽培ユニットを複数備えても良い。
【0017】
霧化した養液の供給を制御するバルブを栽培ユニット毎にさらに備えても良い。
【0018】
複数の栽培ユニットは階段状に設けられても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、霧化した養液を植物の根部に供給する噴き出し穴を有する霧供給管を栽培管の内部に備える超音波霧化栽培装置において、復水して水滴になった霧によって噴き出し穴が目詰まりすることを防ぐ超音波霧化栽培装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に係る超音波霧化栽培装置を示した全体図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る栽培管及び霧供給管を示した断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る栽培管及び霧供給管を示した断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る栽培管を示した平面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る栽培管及び霧供給管を示した平面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る超音波霧化器を示した断面図である。
図7図7は、従来の実施形態に係る霧供給管を示した断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る霧供給管を示した断面図である。
図9図9は、植物の根部の生長の特性を示した図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る栽培管及び霧供給管を示した断面図である。
図11図11は、本発明の実施形態に係る超音波霧化栽培装置の変形例を示した概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る超音波霧化栽培装置の実施形態を詳細に説明する。なお、全ての図を通して、同一の参照符号は、同一の物又は同等の物を示すものとする。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る超音波霧化栽培装置100を示した全体図である。図1に示されるように、超音波霧化栽培装置100は、栽培管101と、超音波霧化器102と、ファン103と、霧供給ダクト104と、霧循環ダクト105とを備えている。植物106は、栽培管101の上面を構成するパネル(パネル121)に定植されている。
【0023】
まず、栽培管101の構成について、図2を参照しながら説明する。
【0024】
図2は、栽培管101及び霧供給管120を示した断面図である。図2に示されるように、栽培管101は筒状の部材であり、内部に霧供給管120を備えている。栽培管101の上面は取り外し可能なパネル121で構成されており、パネル121には、植物106の苗を保持する培地122をはめ込むための培地穴123が形成されている。栽培管101及びパネル121の素材については特に限定されず、プラスチックなど種々の素材から任意に選択して良い。なお、パネル121は必ずしも取り外し可能である必要はなく、メンテナンス性が求められない場合などは、栽培管101とパネル121とが一体に構成されていても良い。
【0025】
次に、栽培管101の内部に備えられている霧供給管120について、同じく図2を参照しながら説明する。
【0026】
図2に示されるように、霧供給管120は、栽培管101の内部に設けられる円筒状の部材であり、霧供給管120の側面には、霧供給管120の内部に導入された養液208の霧126(霧化された養液208)を噴き出すための噴き出し穴124が、パネル121に定植される植物106の個数に応じて植物106の根部125の近傍に形成されている。霧供給管120の素材については特に限定されず、プラスチックなど種々の素材から任意に選択して良い。例えば、霧供給管120として汎用の塩化ビニルパイプを用いることができる。
【0027】
次に、霧供給管120と霧供給ダクト104との連通部について、図3を参照しながら説明する。
【0028】
図3は、栽培管101及び霧供給管120を示した長手方向の断面図である。図3に示されるように、霧供給管120は、その一端に霧導入口141を備えている。霧導入口141には霧供給ダクト104が連結され、超音波霧化器102で発生した養液208の霧126が、霧供給ダクト104を経て霧供給管120の内部に導入される。なお、霧供給管120は、霧導入口141とは反対側の閉止している他端が、栽培管101の内部端面(図3では向かって右側の内部端面)に形成された溝部142にはめ込まれているが、霧供給管120を栽培管101の内部に固定する方法はこれに限られず、霧供給管120の他端が栽培管101の端面から飛び出すようにして固定されていても良い。
【0029】
次に、栽培管101と霧循環ダクト105との連通部について、同じく図3を参照しながら説明する。
【0030】
図3に示されるように、栽培管101は、一方の端面に霧循環口140を備えている。霧循環口140には霧循環ダクト105が連結され、栽培管101の内部に供給されて植物106の根部125に施用された霧126を、霧循環ダクト105を経て超音波霧化器102に循環させる。なお、図3では向かって左側の端面に霧循環口140が形成されているが、向かって右側の端面に霧循環口140を形成しても良い。また、栽培管101の内部に供給されて植物106の根部125に施用された霧126は、一部が復水して水滴になる場合がある。そこで、例えば超音波霧化器102が栽培管101よりも低い高さに設けられる場合には、霧循環口140の下端を栽培管101の内部底面と同じ高さとすることで、霧126だけでなく霧126が復水して栽培管101の底面に水滴として溜まった養液208も超音波霧化器102に循環させることができる。なお、植物106の根部125に施用された霧126や栽培管101の底面に水滴として溜まった養液208を超音波霧化器102に循環させる必要がない場合、又は、循環させない場合には、霧循環口140及び霧循環ダクト105は省略して良い。なお、その場合には、後述する霧循環用開口部205も省略する。
【0031】
次に、パネル121に形成されている培地穴123の構成について、図4を参照しながら説明する。
【0032】
図4は、栽培管101を示した平面図である。図4に示されるように、栽培管101の上面を構成するパネル121には、培地穴123が霧供給管120の中心から所定の距離Aを置いて霧供給管120に沿うように並列に複数形成されている。なお、図4では、12個の培地穴123がパネル121に形成されているが、培地穴123の個数はこれに限定されず、例えば、2列×16個で合計32個の培地穴123が形成されても良い。
【0033】
次に、霧供給管120に形成されている噴き出し穴124の構成について、図5を参照しながら説明する。
【0034】
図5は、パネル121を取り外した状態の栽培管101及び霧供給管120を示した平面図である。図5に示されるように、噴き出し穴124が霧供給管120に複数形成されており、それぞれの噴き出し穴124は、培地穴123にはめ込まれる培地122が保持する植物106の根部125のそれぞれに対応している。
【0035】
次に、超音波霧化器102の構成について、図6を参照しながら説明する。
【0036】
図6は、超音波霧化器102を示した断面図である。図6に示されるように、超音波霧化器102は、筐体200と、内部空間201と、超音波振動子202と、発振器203と、霧送出用開口部204と、霧循環用開口部205と、反射板206と、養液208を貯留する霧化液槽207とを備えている。
【0037】
筐体200は、超音波霧化器102を構成する各要素を内部に備えている。筐体200の大きさ及び形状については特に限定されず、必要な霧化能力などに応じて任意に決定して良い。筐体200の素材については特に限定されず、合成樹脂やステンレスなど種々の素材から任意に選択して良い。
【0038】
超音波振動子202は、霧化液槽207に貯留された養液208に対して超音波振動を与えて、養液208を霧化する。
【0039】
発振器203は、電源(図示せず)から供給される電力によって駆動し、超音波振動子202に対して電力を供給する。なお、図6では発振器203を筐体200の内部に備えているが、発振器203を備える場所はこれに限定されず、筐体200の外部に備えても良い。
【0040】
霧送出用開口部204は、超音波霧化器102の内部空間201から霧供給管120へ霧供給ダクト104を介して霧126を送出するための開口部である。霧送出用開口部204には、霧供給ダクト104が連結される。また、霧126を霧供給管120に効率良く供給できるよう、ファン103が霧送出用開口部204に設けられている。なお、ファン103を設ける位置は霧送出用開口部204に限定されず、例えば、超音波霧化器102の内部空間201でも良い。
【0041】
霧循環用開口部205は、霧循環ダクト105を介して霧126や水滴になった養液208を栽培管101から回収するための開口部である。霧循環用開口部205には、霧循環ダクト104が連結される。
【0042】
反射板206は、超音波振動子202から発せられた超音波振動を反射してその向きを変化させるための板状の部材である。反射板206を設けることにより、図6に示されるように、振動面を垂直にして超音波振動子202を固定することができる。振動面を垂直にして超音波振動子202を固定することにより、超音波振動子202の振動面に不純物や沈殿物が沈殿・付着することを防ぐ効果が得られる。反射板206は、霧化液槽207に貯留された養液208に浸る部材であるため、ステンレスなど耐腐食性を持つ素材であることが好ましい。反射板206を傾斜させて固定する際の傾斜角度については特に限定されず、例えば、霧化液槽207の形状や養液208の水深に応じて任意に決定して良い。なお、超音波振動子202の振動面を垂直にする必要がない場合、又は、垂直にしない場合は、超音波振動子202の振動面を水平に固定して反射板206を省略することができる。
【0043】
次に、霧供給管120に形成されている噴き出し穴124の形状について、図7及び図8を参照しながら説明する。
【0044】
図7は、従来の噴き出し穴220を示した断面図である。霧供給管120に形成される噴き出し穴は、基本的には霧126が霧供給管120の内部から外部へ通過できる径を有していれば良く、図7に示される噴き出し穴220のように、単純な穴形状であっても良いと言える。しかしながら、単純な穴形状の噴き出し穴は、霧供給管120の内部から外部へ通過する霧126の一部が復水することで発生する水滴によって目詰まりしてしまう。参照符号221で示される水滴は、霧126が復水して水滴になった状態を示している。そこで、本実施形態に係る霧供給管120に形成されている噴き出し穴124は、図8に示されるように、皿座ぐり状となるように形成されている。
【0045】
図8は、本実施形態に係る噴き出し穴124を示した断面図である。本実施形態に係る噴き出し穴124は、皿座ぐり状、すなわち、霧供給管120の内部から外部に向かって径が漸次大きくなるように形成されている。
【0046】
本願出願人は、噴き出し穴124を皿座ぐり状に形成するときの座ぐり角度θ1について、様々な角度での目詰まりの発生率を検証する実験(実験1)を行った。実験1の実験条件は以下のとおりである。
【0047】
実験条件(実験1)
植物数:2列×16個=32個
霧供給管:硬質塩化ビニル管VP30(呼び径30mm,内径31mm,外径38mm)
距離A:35mm
噴き出し穴の穴径(下穴径):4mm
霧噴き出し時間:2時間
【0048】
なお、噴き出し穴の穴径(下穴径)は、霧供給管内の空気の圧力が抜け切らないよう、以下の計算に基づいて4mmとした。
霧供給管(硬質塩化ビニル管VP30)の内径=約31mm
霧供給管の内部断面積=(31/2)×π=754.77mm
噴き出し穴の面積×噴き出し穴の数<霧供給管の内部断面積
噴き出し穴の面積×32<754.77mm
噴き出し穴の面積<754.77/32=23.59mm
噴き出し穴の穴径<√(23.59/π)×2=5.48mm
【0049】
実験1の結果を表1に示す。
【表1】
【0050】
表1のとおり、座ぐり角度θ1が60度未満の場合では、霧126の噴き出しを開始してから2時間経過した時点で、32個の噴き出し穴124のうち50%にあたる16個の噴き出し穴124で水滴による目詰まりが確認された。それに対して、座ぐり角度θ1が60度の場合と120度の場合では、霧126の噴き出しを開始してから2時間経過した時点で、32個の噴き出し穴124の全てで目詰まりが確認されなかった。この結果より、座ぐり角度θ1は60度以上であると好ましいことが理解される。ただし、座ぐり角度θ1が大きくなるに従って加工の困難性が高まる他、座ぐり角度θ1が180度の場合は、噴き出し穴124が単純な穴形状になってしまう。従って、座ぐり角度θ1は180度未満である必要があり、加工の困難性を考慮すると、座ぐり角度θ1の上限として好ましい角度の一つとして、実験1において目詰まりが確認されなかった120度が挙げられる。
【0051】
以上のとおり、60度以上120度以下の座ぐり角度θ1で形成された皿座ぐり状の噴き出し穴124を有する超音波霧化栽培装置100によれば、霧供給管120に形成されている噴き出し穴124が復水して水滴になった霧126によって目詰まりすることを防ぐ効果が得られる。
【0052】
ところで、噴き出し穴124は、パネル121に定植される植物106の根部125の近傍に形成されるため、植物106が生長するにつれて根部125が噴き出し穴124に入り込みやすくなる(以下、植物106の根部125が噴き出し穴124に入り込むことで引き起こされる噴き出し穴124の詰まり現象を、根詰まりと表現する)。
【0053】
図9は、植物106の根部125の生長特性を示した図である。一般に、植物106の根部125は、正の屈地性によって重力の方向、即ち、参照符号260の矢印で示す方向に主に伸びていく。一方で、植物106の根部125は、水分屈性によって水分の多い方向、例えば、参照符号261の矢印で示す方向に伸びていく性質も併せ持つ。そこで、本願出願人は、噴き出し穴124が根詰まりすることなく植物106の根部125に対して霧126を安定的に供給できる噴き出し角度θ2を検証する実験(実験2)を行った。なお、噴き出し角度θ2とは、図10に示すように、霧供給管120の断面中心から見たときの垂直上方向から噴き出し穴124の中心までの水平方向への角度を意味する。実験2の実験条件は以下のとおりである。
【0054】
実験条件(実験2)
植物数:2列×16個=32個
栽培種:小松菜,枝豆,人参,ピーマン
座ぐり角度θ1:90度
霧供給管:硬質塩化ビニル管VP30(呼び径30mm,内径31mm,外径38mm)
距離A:35mm
距離B(パネルの底面と霧供給管の中心の垂直距離):50mm(θ2=30度),33mm(θ2=45度),19mm(θ2=60度)
実験期間:2017年5月25日から2017年8月2日まで70日間(霧の噴き出しは24時間連続)
【0055】
実験2の結果を表2に示す。
【表2】
【0056】
表2のとおり、噴き出し角度θ2が30度の場合では、実験を終えた時点でいずれの栽培種も、32個の噴き出し穴124のうち50%にあたる16個の噴き出し穴124で根詰まりが確認された。それに対して、噴き出し角度θ2が45度の場合と60度の場合では、実験を終えた時点でいずれの栽培種も、32個の噴き出し穴124の全てで根詰まりが確認されなかった。従って、噴き出し角度θ2は45度以上であると好ましいことが理解される。
【0057】
以上のとおり、噴き出し穴124の噴き出し角度θ2が45度以上である超音波霧化栽培装置100によれば、霧供給管120に形成されている噴き出し穴124が生長した植物106の根部125によって根詰まりすることを防ぐ効果が得られる。
【0058】
次に、本発明の実施形態に係る超音波霧化栽培装置100の変形例について、図11を参照しながら説明する。
【0059】
図11は、本発明の実施形態に係る超音波霧化栽培装置100の変形例を示した概略平面図である。図11に示されるように、本変形例に係る超音波霧化栽培装置100は、栽培管101と霧供給管120との組み合わせからなる栽培ユニット300を複数備えている。霧供給ダクト104は、一端が超音波霧化器102の霧送出用開口部204に連結されて他端が分岐しており、各霧供給管120の霧導入口141は、分岐する霧供給ダクト104の他端にそれぞれ連結されている。また、霧循環ダクト105は、一端が超音波霧化器102の霧循環用開口部205に連結されて他端が分岐しており、各栽培管101の霧循環口140は、分岐する霧循環ダクト105の他端にそれぞれ連結されている。超音波霧化器102及びファン103は、共用の装置としてそれぞれ1台のみ備えている。
【0060】
本変形例に係る超音波霧化栽培装置100によれば、設置面積などの栽培環境や所望の栽培規模に応じて、栽培ユニット300の数を任意に調節することができる。
【0061】
また、本変形例に係る超音波霧化栽培装置100は、霧126の供給を制御するためのバルブ301を栽培ユニット300毎に備えることにより、栽培ユニット300への霧126の供給を個別に制御することができる。バルブ301は、例えば、図11に示されるように、各栽培ユニット300の霧供給管120へ分岐して伸びる霧供給ダクト104の途中にそれぞれ備えることができる。
【0062】
さらに、本変形例に係る超音波霧化栽培装置100は、栽培管101と霧供給管120との組み合わせからなる栽培ユニット300を同一の平面上に設けるだけでなく、例えば、所定の段差を持たせて階段状に設けることができる。複数の栽培ユニット300を階段状に設けるにより、例えば、建造物の壁面緑化用の装置として超音波霧化栽培装置100を活用することができる。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上記の各実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、各実施形態及びその変形例を組み合わせて良い他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
100 超音波霧化栽培装置
101 栽培管
102 超音波霧化器
103 ファン
104 霧供給ダクト
105 霧循環ダクト
106 植物
120 霧供給管
121 パネル
122 培地
123 培地穴
124 噴き出し穴
125 根部
126 霧
140 霧循環口
141 霧導入口
142 溝部
200 筐体
201 内部空間
202 超音波振動子
203 発振器
204 霧送出用開口部
205 霧循環用開口部
206 反射板
207 霧化液槽
208 養液
220 噴き出し穴
221 水滴
300 栽培ユニット
301 バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11