(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】耐波浪性土木工事用袋体
(51)【国際特許分類】
E02B 3/04 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
E02B3/04 301
(21)【出願番号】P 2017089745
(22)【出願日】2017-04-28
【審査請求日】2020-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】392031572
【氏名又は名称】キョーワ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶原 幸治
(72)【発明者】
【氏名】川村 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】小山 裕文
(72)【発明者】
【氏名】木下 勝尊
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-319842(JP,A)
【文献】特開2003-129444(JP,A)
【文献】特開平06-298260(JP,A)
【文献】実開昭63-031126(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0274519(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維で編成し、
中詰め材を充填した袋材を含む、袋体であって、
前記袋材は開口部と前記開口部の反対側に位置する底部とを含み、
前記底部に接続され、前記袋材の内部を通り、かつ、充填された前記中詰め材の間を通って、網目から外部へ取り出し可能な第1のロープと、を含む、耐波浪性土木工事用袋体。
【請求項2】
前記底部に接続され、前記開口部から外部へ取り出し可能な第2のロープをさらに含む、請求項1に記載の耐波浪性土木工事用袋体。
【請求項3】
前記第1のロープは複数設けられる、請求項1または2に記載の耐波浪性土木工事用袋体。
【請求項4】
前記耐波浪性土木工事用袋体は複数設けられ、
前記第1のロープは、外部の袋体と連結するための結束施工用ロープである、請求項1~3のいずれかに記載の耐波浪性土木工事用袋体。
【請求項5】
前記第1のロープの袋材の網目を通って外部に取り出される位置は、袋材の底部から開口部までの、底部から1/2~2/3の位置である、請求項1~4のいずれかに記載の耐波浪性土木工事用袋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は耐波浪性土木工事用袋材および耐波浪性土木工事用袋材の製造方法に関し、特に、相互の連結が容易な、耐波浪性土木工事用袋材および耐波浪性土木工事用袋材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水流や波浪による中詰め材の移動を防止し、せん断変形の生じない土木工事用の袋材が提供されており、それが例えば、特開2003-129444号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
図7は特許文献1に開示された袋材を示す斜視図である。
図7を参照して、袋材101は、合成繊維で編成した網で形成し、中詰め材を充填して使用する。袋材101は、袋材部102に連結し、袋材101の開口を閉じた口部103から外に引き出される、底部104と口部103とを連結する中繋ぎ材105を有する耐波浪性土木工事用袋材と、中繋ぎ材105として底部の網を束ねて引き上げた網集合体を用いる袋材101と、これ等の袋材101に図示のない中詰め材と、底部104に連結され、袋材部102の外周に伸びる複数の連結結束用の施工用ロープ107とを含む袋体として使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-129444号公報(要約等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の水流や波浪による中詰め材の移動を防止し、せん断変形の生じない土木工事用の袋材は、上記のように構成されていた。しかしながら、従来の袋材101では、複数の連結結束用の施工用ロープ107が袋材の外周に存在したため、袋材101を載置場所で引きずられた場合に施工用のロープ107が損傷し、連結が離れる場合があった。
【0006】
また、従来の袋材101では施工用のロープ107の接続部が袋体の外側の上部に位置し、袋体の上部位置で袋体同士をつなげるため、連結緊結できなく、袋体の変形や隙間の発生があり、位置の固定抑制ができなかった。
【0007】
この発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、複数の袋材が引きずられても、相互に離れることなく連結可能な袋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る、耐波浪性土木工事用袋材(以下、「袋材」と省略する)は、合成繊維で編成した網で形成し中詰め材を充填して使用する袋材である。
【0009】
袋材は開口部と前記開口部の反対側に位置する底部とを含み、底部に接続され、袋材の内部を通って、網目から外部へ取り出し可能な第1のロープと、を含む。
【0010】
好ましくは、底部に接続され、開口部から外部へ取り出し可能な第2のロープをさらに含む。
【0011】
第1のロープは複数設けられるのが好ましい。
【0012】
耐波浪性土木工事用袋材は複数設けられ、第1のロープは、外部の袋体と連結するための結束施工用ロープであってもよい。
【0013】
第1のロープの袋材の網目を通って外部に取り出される位置は、袋材の底部から開口部までの、底部から1/2~2/3の位置であるのが好ましい。
【0014】
この発明の他の局面においては、開口部を有する製作枠を用いて袋体を製作する方法は、上記のいずれかに記載の袋材のうち、少なくとも第1のロープを有する袋材を製作枠に投入し、第1のロープが接続された底部を製作枠底部中心近傍の第1の位置に保持し、袋材の開口部を製作枠外側に垂れ下がるように載置し、複数の第1のロープを製作枠内で放射状に配置し、その端部は袋材の網目を通って袋材の外部で、製作枠の外側に垂れ下がるように載置した状態で、製作枠内の袋材に砕石を投入し、製作枠を取り外して、袋材を取り出す。
【0015】
この発明のさらに他の局面においては、開口部を有する製作枠を用いて袋体を製作する方法は、上記のいずれかに記載の袋材のうち第1および第2のロープを有する袋材を製作枠に投入し、第1のロープ及び前記第2のロープが接続された底部を製作枠底部中心近傍の第1の位置に保持し、袋材の開口部を製作枠外側に垂れ下がるように載置し、第2のロープを製作枠の開口部の、第1の位置より高い第2の位置に保持し、複数の第1のロープを製作枠内で放射状に配置し、その端部は袋材の網目を通って袋材の外部で、製作枠の外側に垂れ下がるように載置した状態で、製作枠内の袋材に砕石を投入し、投入後、第2のロープおよび袋材の開口部が一体化するように結束し、製作枠を取り外して、袋材を取り出す。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る袋材は、底部に接続され袋材の内部を通って、網目から外部へ取り出し可能な第1のロープを含むため、第1のロープは袋材の底部の外部を通ることなく、その上部で外部の袋材との接続用に使用できる。
【0017】
その結果、複数の袋材が離れることなく連結可能な袋材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の一実施の形態に係る袋材を示す斜視図である。
【
図3】袋材の製造の初期状態を示す、袋材を製作枠に収納した状態を示す断面図である。
【
図4】袋材から袋体を製造する製造工程を段階ごとに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1はこの発明の一実施の形態に係る袋材を示す斜視図であり、
図2は袋材の元の構成を示す図である。
図2を参照して、直線状の底部分18を有し、合成繊維で編成した網目11を有する円筒形状の袋材19を準備し、その底部分18を構成する編目に閉じロープ24を通して底部分18を一体化した底部15として、
図1に示すような底部15を有する全体として逆円錐状の袋材10を形成する。
【0020】
なお、ここで袋材の元の構成は矩形状であるが、任意の形状であってもよい。
【0021】
図1を参照して、このようにして形成された袋材10は、円形の開口部14と、その下部につながる網目11を有する逆円錐状の全側面部が終結した底部15とを含む。開口部14には吊ロープ12が通され、その下部近傍の網目11に開口部14を閉じるための口絞りロープ13が通される。
【0022】
底部15には、袋材10を吊上げるための第2のロープ16と、底部15を中心として袋材10の内面に放射状に配置され、網目11を通って外部の袋材と接続するための結束施工用の6本の第1のロープ17a~17fが接続されている。第2のロープ16と第1のロープ17a~17fの先端部にはそれぞれ、接続用の輪16a、18a~18fが設けられている。
【0023】
次に、
図1に示した袋材10を用いて砕石を収容した袋体40の製造方法について説明する。
図3は袋体40の製造の初期状態で、袋材10を製作枠30に収納した状態を示す断面図を示す図であり、
図4は袋材11の製造工程を段階ごとに示す図である。なお、
図3は
図4(A)において、矢印III-IIIで示した製作枠30の中央部を通る部分の断面図に対応する。
【0024】
図3および
図4(A)を参照して、上下端に開口部を有する直方体状の製作枠30の矩形状の開口部31に
図1に示した袋材10を載置し、その底部15が製作枠30の中央部の地面33に接するとともに、吊ロープ12および口絞りロープ13が製作枠30の外周の下端部近傍に位置するように配置する。
【0025】
製作枠30の開口部31には、その対向する2辺に支持棒34を配置する。そこに、底部15に接続された第2のロープ16の輪16aを通る両端部に吊上げ用の輪21a,21bを有するワイヤロープ21を通して、支持棒34上で吊上げ用の輪21a,21bに図示の無いフックを用いて袋材10を吊上げ可能に配置する。
【0026】
底部15に接続された第1のロープ17a~17fは袋材10の網目11を通って袋材10の外部に取り出され、同様に製作枠30の開口部31を通って枠30の外部に垂らされる。このとき、第1のロープ17a~17fは上記したように、相互にほぼ60度の角度を開けて放射状に枠30の開口部31に配置されて、その状態に維持されるのが好ましい。具体的には、枠30の開口部31に第1のロープ17a~17fを番線等で固定するのが好ましい。
【0027】
次に、
図4(B)に示すように、この状態で袋材10の上から中詰め材としての砕石20を製作枠30に摺り切り一杯になるように投入する。このとき、製作枠30の中で袋材10が弛まないように、袋材10の口絞りロープ13側の部分を枠の外に配置して固定しておく。
【0028】
次に、ワイヤロープ21の輪21a,21bに重機のフック36をかけ、重機で仮吊して、網目11が張った状態になったら、フック36を若干下げて、角材34を取り除く。
【0029】
ワイヤロープ21の輪21a,21bと吊りロープ12を袋材開口部より6箇所引き出したループとを重機のフック36に掛けて仮吊りとし、袋材10の口絞りロープ13を絞って口閉じを行う(
図4(C)参照)。
【0030】
その後、重機のフック36で製作枠30の4隅を吊上げて、製作枠30を砕石の充填された袋体40と別にする(
図4(D)~(F)参照)。
【0031】
重機のフック36にワイヤロープ21の輪21a,21bを掛けて引き上げて第2のロープ16を袋体40内部から引き出す。第2のロープ16の輪16aと吊りロープ12のループとを吊り環(図示せず)に取付けて吊り上げると、形状が
図5(C)のようになる。
【0032】
最後に、6本の第1のロープ17a~17fが袋体40の側面から突出した砕石の充填された袋体40を重機のフック36を用いて吊上げて引き出し、所望の位置へ配置する(
図4(G))。
【0033】
次に、砕石が投入された袋体40について説明する。
図5はこの袋体を示す図であり、
図5(A)は袋体40の全体の斜視図であり、
図5(B)は
図5(A)に示した袋体の40の第2のロープ16を通る部分の断面図であり、袋体40を地面に載置した状態を示し、
図5(C)は
図5(A)、(B)に示した袋体40をその第2のロープ16および輪16aで吊上げた状態を示す図である。
【0034】
図5(A)~(C)を参照して、基本的に第2のロープ16に対して第1のロープ17a,17dは相互に180度離れた位置に配置され、第2のロープ16の輪16aを図示のないフックで持ち上げられることによって、底部15は袋体40の上端に位置し(
図5(C))、連結用の第1のロープ17a,17d等は袋体40内の砕石の間を通って袋体40の網目11から外部へ取り出される。このとき、第1のロープ17a,17dで隣接する袋体を連結する。
【0035】
第1のロープ17a~17fの袋材10の網目11を通って袋材10の外部に取り出される位置は、元の袋材10の底部15から開口部14までの、底部15から1/2~2/3の位置が好ましい。1/2より小さければ第1のロープ17a~17fの位置が袋体40同士が接する位置より下になり袋体40同士を結束するのが困難であり、2/3より大きければ袋体40の側面より上に位置して隣接する袋体40との接続が最短でなくなり袋体40が移動する可能性があるためである。
【0036】
次に、複数の袋体40を連結する方法について説明する。
図6は複数の袋体40a~40kを相互に接続した状態を示す図である。
図6を参照して、複数の袋体40は、相互に、それぞれの袋体40の中央部に位置する底部15a~15k同士を、袋体40内部を通って接続する第1のロープ17aと17dとで接続されるため、これらの複数の袋体40が移動されても、第1のロープ17a,17dが地面を引きずられることによって損傷することはない。また、高い位置で第2のロープの出口位置は袋体を地面に載置した状態で袋体40の周縁上端部の高い位置である。
【0037】
その結果、複数の袋材が離れることなく連結して移動し難くなり、袋体40の群体を提供できる。
【0038】
なお、上記実施の形態においては、第1のロープを6本設ける場合について説明したが、これに限らず、隣接して配置できるように少なくとも1本あればよい。
【0039】
また、上記実施の形態では、第1のロープと第2のロープとを用いた場合について説明したが、これに限らず、第2のロープを用いることなく、第1のロープのみを用いてもよい。この場合、
図3において、ワイヤロープ21は、吊りロープ12を袋材開口部より6箇所引き出したループに通して袋体を形成する。
【0040】
また、上記実施の形態では、製作枠が矩形の場合について説明したが、これに限らず、円形、楕円形、多角形でもよい。
【0041】
図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明によると、複数の袋体に移動する荷重が生じても、袋体が相互に離れることなく隣接して連結可能な袋体を提供できるため、連結可能な袋体として有利に利用される。
【符号の説明】
【0043】
10 袋材、11 網目、12 吊ロープ、13 口絞りロープ、14 開口部、15 底部、16 第2のロープ、16a 輪、17a~17f 第1のロープ、18a~18f 輪、21 ワイヤロープ、30 製作枠、31 開口部、33 地面、34 支持棒、36 フック。