(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】極超短波電磁エンジン
(51)【国際特許分類】
B64G 1/40 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
B64G1/40 900
(21)【出願番号】P 2019539725
(86)(22)【出願日】2017-09-25
(86)【国際出願番号】 MX2017000105
(87)【国際公開番号】W WO2018062983
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】MX/A/2016/012856
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MX
(73)【特許権者】
【識別番号】519112933
【氏名又は名称】デーアズ アリアス,ヘルマン
(73)【特許権者】
【識別番号】519112944
【氏名又は名称】ピエルロメロ,マ イサベル デ イエス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】デーアズ アリアス,ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ピエルロメロ,マ イサベル デ イエス
【審査官】米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-129607(JP,A)
【文献】特開2007-154734(JP,A)
【文献】特開2002-332957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0152227(US,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02795457(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次
フォースフィールドパルス
を発生するエミッターと、
このエミッターから距離(L)だけ離れて配置された少なくとも1つのターゲットと、上記エミッターおよび
上記ターゲットを強固に固定支持する支持構造体
とを含み、
上記エミッターは持続時間(t)の
一次フォースフィールドパルスを生成し、
上記持続時間(t)は上記
距離(L)を(C)で割った値以下であり、
この(C)を光の速度
とすることで上記一次フォースフィールドパルスをエミッターからリンク解除することを特徴とする超高周波電磁エンジンまたはスラスター。
【請求項2】
上記エミッタがチューブ状構造の中空円形コイルで
あり、この中空円形コイル中にその全長にわたって導体が延び、この導体は1端部を除いてチューブの内側と接触しないように絶縁され、
上記導体はオーバーシュート制御回路を形成する超高速ダイオードに接続され、この超高速ダイオードは電力制御装置に接続され、この電力制御装置はパルスの持続時間と同期を設定するマイクロコントローラによって制御され、
キャパシタ
のバンクに蓄積されたエネルギーを放電することで
パルスが放出され、
上記キャパシタ
のバンクは電源によって再充電され、上記コイルの表面上で生じる放電で高電力か
つ短持続時間の磁気パルスが発生し、
上記ターゲットは
上記エミッタを支持している上記支持構造体上に強固に固定された導電性材料のプレートであり、
上記電力制御装置は超高速トランジスターまたは冷陰極管のような超高速遮断装置であ
る請求項1に記載の超高周波電磁エンジンまたはスラスター。
【請求項3】
上記ターゲット
が電力回路に接続されたパルスを放出するためのコイルであり、
このコイルは,上記エミッタが生成したターゲットに向かって進む上記
一次フォースフィールドパルスがそれを発生させた
エミッタから開放され
た後に、上記コイルはフォースフィールドパルス
を生成するようにマイクロコントローラによって同期されかつ制御され、
生成されたコイルのフォースフィールドパルス
は上記一次
フォースフィールドパルスと相互作用して、2つのコイルの間の空間を移動するフィールドに対して吸引力または反発力を生じ、
この吸引力または反発力によってマイクロ推進力を生成し、マイクロ推進力の発生プロセスを毎秒数十億回繰り返すことによって
マイクロ推進力の合計が上記ターゲットコイル上、従って上記支持構造上に加えられ
る請求項
2に記載の超高周波電磁エンジンまたはスラスター。
【請求項4】
上記支持構造の他端に配置された第3コイルで構成され
た第2のターゲットをさらに有し、
上記エミッタを中心にして
配置された2つのターゲット
は中心から等距離(L)の所に配置され、3つのコイルは支持構造体上を縦方向に位置し、第3コイルは請求項2に記載のターゲットコイルと同じ方法で給電および制御されるが、この最後のコイルは他方のターゲットコイルに対して逆向きに給電され、一方のコイルが一次
フォースフィールドパルスに対して吸引力を生じる
フォースフィールドを作り、他方のコイルが反発力を生じる
フォースフィールドを作る請求項2
または3に記載の超高周波電磁エンジンまたはスラスター。
【請求項5】
上記エミッタが、放出された
フォースフィールドパルスの力線を圧縮するヘルムホルツ
配置の2つのコイルで構成される請求項1~4のいずれか一項に記載の超高周波電磁エンジンまたはスラスター。
【請求項6】
上記エミッタ
および上記ターゲットが電力制御回路に接続された導電プレートで構成され、この電力制御回路は対応するそれぞれに対応するマイクロコントローラを有し、このマイクロコントローラを電力制御要素の動作を制御し、同期してプレートに高電圧パルスを発生し、プレートを高電圧の異なる極性に帯電させ、
上記エミッタはプレートの面に垂直に両方向に伝播する電界パル
スを発生し、このパルスは短い持続時間の間にそのパルスを生じさせたプレートから開放され、2つのプレートの間の空間通って移動し、第2のプレートは高電圧の第2パルスで帯電するように同期され、この第2パルスは一次電界フィールドと相互作用した時に極性に応じて吸引力または反発力を生じ
、一次電界パルスが持続する持続時間(t)の間に作用してマイクロ推進力を生じ、
このマイクロ推進力の発生プロセスを毎秒数百万回繰り返すことで生成された全てのマイクロパルスの合計
が最終的な合計推進力
が上記支持構造体二加わる請求項1に記載の超高周波電磁エンジンまたはスラスター。
【請求項7】
上記支持構造体の他端に配置された第3プレートによって構成され
た第2ターゲットをさらに有し、
2つのターゲット
はエミッタを中心として中心から等距離(L)離れた所に配置
され,これら3枚のプレートは支持構造体に沿って長手方向に配置され、
上記第3プレートは請求項6号に記載のように制御されるが、他のターゲットプレートに対して逆に帯電され、一つのプレートは吸引力を生じるフィールドを作り、他のプレートは反発力を生じるフィールドを作る請求項1~6のいずれか一項に記載の超高周波電磁エンジンまたはスラスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気工学および物理学の分野、特に、電磁理論に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、宇宙空間で使用でき、通信衛星の寿命を延ばし、宇宙船で使用できる、作動に電源の供給のみを必要とするというコンセプトのエンジン(motor)またはスラスターに関するものである。
【0003】
現在、宇宙空間で使用可能なエンジンまたはスラスターで太陽電池または原子力電池から電力を供給するだけで作動するものはない。イオンエンジンは電気をベースにした推進システムとして本発明に近いが、イオン化された物質(通常はガス)を必要とする。このイオンは電場によって加速される。イオンの質量は非常に小さいが、推進速度が極めて大きく、化学的エンジンよりも効率が良い。このエンジンはニュートンの第3法則に基づいて作動し、一定量の質量で所定の速度が得られ、出力速度と質量の積が一定の運動量およびモーメントと成り、それに比例して一方向および逆方向にエンジンが加速される。これは反動エンジンの一種で、排出材料は電気的に加速されるもので、従来のジェットエンジンのような化学的作用によるものではない。しかし、イオンエンジンの問題はガスの供給が終了するとエンジンの仕事が停止してしまうことである。
【0004】
他の電気推進エンジン、例えばMHD推進エンジンも設計されているが、このエンジンはエンジン(すなわち船舶や潜水艦)を取り囲む海水中に磁気を作るものであるので、海でしか働かない。従って、このシステムは水の外では作動しないことは明らかである。
【0005】
帆(セイル)を使用した推進システムもある。この推進システムは地球表面上または軌道上で太陽やレーザービームからのエネルギーを利用して宇宙空間で使用できるという利点がある。しかし、シップ(宇宙船)を所望方向に向ける点に問題があり,帆の寸法が巨大になる等の多くの問題がある。この推進システムは運動転換プロセスをベースにしたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明のデザインはガス噴射剤を必要とせず、運動転換または作用・反作用の作用にも頼らないものである。電力のみで作動するエンジンには多数のデザインが存在するが、真空中または宇宙空間で推進要素として作動するものはない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエンジンはいくつかの作動モードを有する。
第1の実施形態では、本発明エンジンはヘルムホルツコイルアレイのような磁界エミッタと、この磁界エミッタから所定距離(L)離れた位置に配置された導電性材料で作られたプレートから成るターゲットと、上記磁界エミッタおよびプレートを固定する支持構造体とを有し、磁界エミッタの発電コイルによって極めて短い時間(t)の間だけ高強度の磁場パルスを発生し、この時間(t)は磁界エミッタとプレートとの間の距離(L)を光速で割ったものよりも小さく、生成された極めて強い磁場はエンジン周囲の空間中を進む。この磁場は上記時間(t)の経過後にはそれを発生させた要素から解放(desarraigado)され、空間と組合わされ(asociado)、それを発生させた要素から解放(desarraigado)された状態で空間中を移動する。この磁場が上記ターゲットに達すると上記ターゲット中に誘導磁界が生じる。この誘導磁界によって今度はこの誘導磁界を発生させた上記磁場とは反対向きの別の磁場が生じ、それによって空間とターゲットとしての上記プレートとの間に反発力が発生する。この反発力は磁場パルスの持続時間の間、推進力(impulso)を与え、この推進力が上記プレートを加速する。このプレートは上記磁界エミッタと一体な支持構造体に固定されており、支持構造体は導電性材料ではなく且つ磁気的に透明である。組立体全体に小さな推進力が得られ、これが毎秒数百万回から数千回繰り返されて全体として大きな推進力となる。
【0008】
上記コイルによって生じるパルスの繰り返し動作は電子回路によって制御される。この電子制御はUHF発振器として働き、コイルを駆動する電流信号は全体をより効率的にする共振回路の一部で形成される。この場合、UHFの周波数は(L)を(C)で割ったものより小さくければならない。ここで、(C)は光の速度であり、(L)はエミッタとターゲットの役目をするプレートとの間の距離である。この構成はエンジンのパッシブ(受動)磁気バージョンである。エンジンのアクティブ(能動)磁気バージョンではターゲットの役目をするプレートがコイルに置き換え、それを発電コイルまたは発電コイル配置と同期させる。磁気パルスが発生すると、その磁気パルスはターゲットコイルに到達する直前に、送信コイルから開放される。ターゲットコイルはそれに近づく磁気パルスと反対方向の磁界を生成する。このアクションはパルス送信器とは反対側で同じの支持構造に支持された別のコイルによって補足(complementarse)させることができる。この別のコイルは同期磁場を生じ、生成した磁気パルスに対して吸引力を生じる。磁気パルスは生成要素の両方向に広がる。ヘルムホルツコイルのアレイを使用することで支持構造に対してより平行、より集中した力線を拡大させることができる。2つのターゲットコイルまたは二次コイルを使用することで同じ磁気パルスで2つのコイル上に反発力と吸引力の両方の力を加え、その合力が組立体を同じ方向に加速することができる。
【0009】
同エンジンの別のモードでは電場のみを使用する。磁気バージョンと同じように、電界パルス発生プレートが極めて短い時間の電界パルスを生成するが、ここで使用するプレートは、発生し、開放され、発生プレートとターゲットプレートまたは二次プレートとの間の空間を伝播してきたパルスに対して吸引力または反発力作用を生じる。この場合、フィールドはより集中し、指向性をもって拡散する。
【0010】
フィールドの開放(desarraigo del campo)という概念はこのエンジンの動作の基礎であり、非常に短いフィールドパルスを生成することができる要素が有り、その後、そのエミッタが消えると考えるとより簡単に説明できる。それによって空間中を伝搬するフィールドパルスが得られる。このフィールドパルスは導電性プレートまたはコイルまたは二次フィールドジェネレータ等の適切な装置に影響を及ぼしたり、それと相互作用する。こうした超高周波場を発生させるのに必要な部品および電子デバイスは冷陰極管や高出力窒化ガリウムトランジスタとして現在では入手可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のエンジンの基本的構造を示す図で、発電要素とターゲットの両方が支持構造体上に支持されていること、一つのパルスフィールドが作られ、それがエミッターから開放(desarraigado)され、離れた後はターゲットに向かって移動することが見られる。
【
図2】上記パルスがターゲットに到達した時に生じるフィールドと相互作用して支持構造体に推進力(インパルス)が生ずることを示す図。
【
図3】ターゲットに向かって空間内を移動してきた上記の開放されフィールドパルスと相互作用して生じた二次フィールドが、今度は一次パルス発生器の方向へ移動することを示す図。この場合、二次フィールドは一次パルス発生器とは相互作用しない。
【
図4】ヘルムホルツ型コイル装置の使用方法を示す図で、より集中した磁場を生成することができ、平坦または凹状なターゲットプレートとの相互作用を増加させことができる。
【
図5】エンジンの4つの基本モード、すなわちパッシブモード、アクティブ磁気モード、ヘルムホルツ型磁気モードおよび電場モード示す図。
【
図6】ハイパワーの高周波磁場パルスを放出するためのブロック図。
【
図7】UHF-SHF発振器と2つのエミッターコイルを同期させる制御遅延回線とを使用して、アクティブ磁気モードでエンジンを運転するためのブロック図。
【
図8】一次フィールドと二次フィールドとを同期させるための位相調整方法を示す図。
【
図9】3つのコイルを有するエンジンの一回の作動サイクルの3つの異なる時間での状態(1つは一次ジェネレータの状態、2つは二次ジェネレータの状態)を示す図。
【
図10】磁気パルス発生器コイルと、その作動に必要な回路の一部を示す図。
【
図11】電界モードの3枚のプレート(1つは一次プレート、2つは二次プレートである)を有するエンジンの基本構造を示す図。
【
図12】電場エンジンまたはスラスターの一つの作動サイクルの3つの異なるステージでの作動方法を示す図。
【
図13】エミッタをエミッタアレイおよびアンテナに置換し、ターゲットにはプレートまたは共振回路を使用した電磁波を用いたエンジンの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の対象である超高周波数電磁エンジンまたはスラスターは、非常に短い持続時間(ナノ秒範囲)のパルス状の電気的または磁気的フィールドを生成することをベースにしている。このフィールドパルスは周囲空間中に放出され、ターゲットに達するまでにソースおよびエンジンの支持構造体から開放される。すなわち、超短時間のフィールドと考えることができるこのフィールドパルスは空間中を移動してターゲットに達し、このターゲットと相互作用する。この相互作用の結果、力が生じる。最初に発生したフィールドは周囲空間と組み合わさる(asociado)が、本発明エンジンまたはスラスターの他の成分とは組み合わされない。フィールドパルスはターゲット上に非常に短い推進力(インパルス)を発生させることができる。この推進力はターゲットおよびフィールドパルスを発生させたエミッタが取付けられているエンジンまたはスラスターに全て伝達される。このプロセスが何百万、数千回繰り返されて、ターゲット、従って、エンジンにトータルの推進力が加わる。この統合された1秒当たりの全推進力(F×dT)は部分的推進力の和であり、値(F×dT)の積分値に等しい。ここで、dTは各パルスが持続する微分時間である。各サイクルの推進力の持続時間は非常に短いが、パルスフィールドの強度が非常に大きい場合には、有意な最終推進力を得ることができる。エミッタ要素とターゲットとの間の距離は20cm~120cmの範囲内にするのが好ましい。この距離(L)にすることで全ての電子機器および電源要素を容易に一体化できる。生じる力と距離とは互いに逆比例の関係にあるので、電子機器とパルス放出制御要素が許す限り,(L)を可能な限り短くするのが好ましい。
【0013】
要約すると、本発明エンジンまたはスラスターの作動は、極端に短い強力な電気的、磁気的または電磁パルスを発生させ、このパルスをそれを発生させたソース(これに支持構造体に取り付けられた他の要素も固定されている)から開放または分離し、フィールドパルスがターゲットに到達するまでの時間の間、フィールドパルスからソースを非結合状態に維持し、フィールドパルスがターゲットに到達した時にターゲットは新しい極性を有するパルスフィールドを放出し、その結果、ターゲットに対してオリジナルのフィールドパルスを吸引または反発する力が生じ、従って、支持構造によって互いに連結されたエミッタとターゲットの両方を含むユニットとしてのエンジンまたはスラスターに力が生じることをベースにしている。
【0014】
パルスフィールド放出の適切な同期は電子回路によって制御される。この電子回路は電源モジュールと、マイクロコントローラ、電源、コンデンサバンクおよびオーバショット抑制回路をベースにした制御装置とから成るセットにすることができる。これら全ての回路は組み合わされてUHFおよびSHF帯で働くルス発生器または連続信号発生装置を構成する。
【0015】
現時点では、我々はUHF帯下部の磁場と周波数でしかテストをしていないが、数グラムの力を生成することに成功している。この力は取るに足りないように見えるかもしれないが、エンジンが一定の加速度を長時間発生させることができなくても、軌道上の衛星の保守のような用途には非常に有用であると考える。作動周波数を増加させることができれば、得られる力ははるかに大きくなる。
【0016】
[
図1]は本発明のエンジンの基本的な組立体を示し、この場合には支持構造(3)上に一次フィールドエミッタ(emisor de campo primario)(1)と、ターゲットを構成する反射エミッタ(reflector emisor)または二次フィールドエミッタ(emisor de campo secundario)(2)とが取り付けられている。図を簡単にするために、パルスまたはフィールドパルス(pulso de campo)(4)は矢印で表されており、生成したフィールドパルス(4)は両方向([
図1]の場合には左右)に広がる。
【0017】
[
図1]の場合、一次フィールドエミッタ(1)と反射エミッタ(2)とは左右方向に距離(L)だけ離れている。例えば、一次フィールドエミッタ(1)はコイルターンで、生成したフィールドパルス(4)は持続時間(t)を有し、この(t)は距離(L)を(C)で割ったものより短い。ここで、(C)はフィールドの拡大速度である光速である。
【0018】
[
図1]に示すように、上記フィールドパルスが移動すると一次フィールドエミッタ(1)からは完全に開放される。支持構造(3)を形成する材料は非導電性且つフィールドに対して透明であるので、フィールドパルス(4)は空間とのみ関係(asociado)し、ターゲット(この場合は反射エミッタ(2))に達するまでエンジンを構成する要素とは関係がなくなる。反射プレートは導電性材料のプレートで、フィールドパルス(4)はこのプレートに影響を与え、プレート上に誘導電流を発生させる。生成した誘導電流はフィールドパルス(4)に対抗する磁場を発生させる。
【0019】
[
図2]に示すように、反応フィールドまたは反動フィールド(5)によって、時間(t)の間にフィールドパルス(4)と反対方向の積力(6)が生じる。これによって力積(インパルス、推進力)(F×t)が生じる。このプロセスが毎秒数十億回繰り返される。各サイクルで生成されるマイクロインパルスの全てが総合されて有意な合計推進力が形成される。後で発生した反応フィールド(5)は初期フィールドパルス(4)よりも強度が小さいので、その逆効果的相互作用はない。
【0020】
[
図3]に示すように、反応フィールドの一部は一次フィールドエミッタ(1)およびその他のエンジン部品の方向に移動する。従って、この反応フィールド(5)の通過によってエンジンの一部である他の要素やその他のコンポーネントに望ましくない反応が生じるのを避ける必要がある。そのため、一次フィールドエミッタ(1)を構成するコイルを一時的に無効にし、反応フィールド(5)と電磁的相互作用をする可能性を無くす。
【0021】
パワフルなフィールドパルスを発生させるために、電子回路はフィールドエミッタ(ここでは、エミッターコイル)で、高電圧且つ極超短波および超高周波レンジの高周波(UHF、SHF)を取り扱えるものでなければならない。
【0022】
上記説明では、説明を簡単にするためにフィールドの移動(変位)を「矢印」で表現したが、実際の磁場および磁力線は[
図4]の上側に示すトロイドの外観に類似できる。
【0023】
ここでは一次磁場エミッタ(1)は極めて分散したフィールドパルスを発生する単純なコイルである。このタイプのフィールドの利点を最大にするために、凹面反射鏡(9)またはリフレクターを使用することができる。
【0024】
[
図4]の下側に示す図は、ヘルムホルツコイルアセンブリとして知られている構成の2つのコイル(7,8)を使用したもので、この配置を用いることで2つのコイル(7、8)の磁力線をコリニアーな状態へ容易に整列できる。2つのコイル(7、8)はコイルの半径に等しい距離だけ離れて配置されている。これによって平面反射アンテナ(2)の使用が容易になり、エンジンの性能をより効率化できる。
【0025】
上記の全ての説明は本発明エンジンの基本作動原理を説明するためのもので、効率および構造の容易さを向上させるために、上記と同じ作動原理と基本構造の電界(campos electricos)および磁界(campos magneticos)の両方あるいは電磁界(campos electromagneticos)で作動する種々の方法で改良することができる
【0026】
[
図5]は異なる4つのモードを示している。図の(c)は基本的に上記のモデルに対応し、これは「パッシブ磁気モデル」とよばれる。この場合、一次磁場エミッター(1)は磁気パルスを生成するトランスミッターまたは磁場発生コイルで、反射ミッタ(2)に影響を与える。この一次磁場エミッター(1)はこの場合には導電プレートであり、反対のフィールドを作り、このフィールドは推進力(インパルス)に翻訳される。これは最もシンプルなエンジン組立体である。
【0027】
図の(a)は磁場パルス(4)を発生するコイルから成る一次電界エミッタ(1)のモードを示し、この場合のターゲットは二次電界エミッタ(11)によって構成され、磁場パルス(4)に対抗する磁場を生成する。二次電界エミッタ(11)は反動フィールド(5)が生成される正確な時間を決定する電子回路によって同調してトリガーされる。このアッセンブリーは図の(a)に示した磁気パッシブアセンブリモデルより効率的で、より大きな力を発生させる。これは「アクティセブ磁気モデル」とよばれる。
【0028】
図の(c)はフィールドエミッタとしてコイル(7,8)で形成されるヘルムホルツ・アレイを使用したアクティセブ磁気アッセンブリーを示す。この場合に生じるパルスフィールド(4)は、コイル(7,8)および二次フィールドエミッタ(11)を通る中心軸線により整合するので、発生した磁気パルス(4)をより良く使用することができる。
【0029】
図の(d)は完全電場エンジン(completamente electrico del motor)のアッセンブリ(ensamble)を示す。この場合には一次電場エミッタ(12)が使用される。この一次電場エミッタ(12)は電場パルス(14)を生成し、それが二次電場エミッタ(13)と相互作用する。磁界の作用をベースにした場合のアセンブリと同様に、この場合にも、図を簡単にするために、電場パルス(14)は二次電場エミッタ(13)の方に向かう矢印で示されている。電場パルス(14)はこの方向とその反対方向の両方の方向に同時に広まる。二次電場エミッタ(13)はプレートで、このエミッタは実質的にプレートの面に垂直なフィールドラインを有する電場を発生させるので、生成されたフィールドパルス中に含まれる大部分のエネルギーを取り出せるという利点がある。これを「基本的電気モデル」という。これは磁気モデルよりも効率的であるが、非常に高電圧の電気パルスを取り扱う必要がある。
【0030】
このシステムのアーキテクチャは磁気アセンブリまたは電気アセンブリを使用するものに限定されない。両方のアセンブリをアンテナによって電磁フィールドを放射発生させて一体化することもできる。この場合も電磁フィールドが上記で述べたものと同様に共通構造体上に取り付けたターゲットと相互作用する。この場合、ターゲットは放出された放射フィールドを最大限に利用できるアンテナである。アンテナはターゲットに向かう放出信号の各波長成分の指向性と集中度を処理する所定長さのメインアンテナと、距離を開けて配置された複数のマルチアンテナである。
【0031】
エンジンの一部を成す電界エミッタの励起制御回路の基本的なアーキテクチャは基本的に2つの作動モードを有し、その最初の一つの作動モードはエミッタの種類に応じて大電流または電圧のパルスを生成する回路で構成され、[
図6]に示すように、これは必要なレベルに電圧を上昇させ、制御する電源(10)と、瞬間的に十分な電流と電圧を与えるキャパシタバンク(15)と、エンジンの全作動の調整および同期に関する基本的マイクロコントローラ(16)とを含む。すなわち、各パルスを同調して出す時に、電界エミッタに必要なエネルギーを供給する発射指令がマイクロコントローラ(16)から電力制御装置(17)に出される。
【0032】
オーバーシュートサプレッサー(18)は、マイクロコントローラ(16)がパルス放出の終了を指令した時に、システムが慣性でエネルギーをエミッタに送信し続けないようにする。すなわち、生成したエネルギーの過剰分を迂回させて、継続してエミッタに供給され続けないようにし、さらには、パルスの放出を抑制することもできる。このパルス放出抑制器は[
図10]に見ることができる。この場合には、一次磁場エミッタ(1)が中空チューブで形成された単一ループの筒状コイルで、この中空チューブ中には導体が収容され、この導体と超高速ダイオードとでオーバーシュート防止器が形成される。マイクロコントローラ(16)がパルスの遮断を電力制御装置(17)に指令した時に、一次磁場エミッタ(1)を通って流れる電流が慣性作用で流れ続けるが、電力制御装置(17)がパルスを止めた時に、コイルの外側を通って流れていた電流でダイオードを直接分極させ、この残りの電流が今度は管状コイルの内側に配置されたケーブルを通って前とは反対方向に流れ、磁場パルスの放出を停止させる役目をする。
【0033】
コイルを中空にした理由は二重の役目、オーバーシュートを抑制する役目と非常に高い周波数での性能を最適化する役目のためである。すなわち、固体導体を非常に高い周波数の伝送に使用した場合、電流はチューブと同等になるまで固体導体の表面または外側領域を電導し、導体のコアや中心部は決して使われない。これは一般に表皮効果とよばれ、特にUHFの用途で表れる。コイルを管状形状にすることで電流が数百アンペアに達した時に内部に冷却液を流すのに使用できる。
【0034】
エンジンを制御する電子回路のアーキテクチャの第2の作動モードは周波数信号を使用することをベースにしたもので、UHFバンドとSHFバンドの間で作動する共振回路で生成された周波数信号を使用するのが好ましい。この発振器は非常に高いレベルの電圧と電流を扱う高パワーの発振器である。実用的な目的でギガヘルツオーダーの高い周波数で作動させる場合、この発振器で生成される山と谷がパルスと考えることができる。この信号の波長を一次電界エミッタ(1)とターゲットとの間の距離である大きさ(L)で調節することで、強力でオーバーシュートの無いシステムが達成できる。
【0035】
[
図7]はその構成を示すブロック図で、UHF-SHF発振器(19)が一次磁場フィールドエミッタ(1)に供給する。この一次磁場フィールドエミッタ(1)は二次磁場フィールドエミッタ(11)からの距離(L)の所に配置されている。二次磁場フィールドエミッタ(11)には同じUHF-SHF発振器(19)かち間接的に供給されるが、その位相は遅延線(20)によって調整され、遅延制御(21)によって自己調整される。
【0036】
[
図8]には、一次フィールドエミッタ(1)と二次フィールドエミッタ(11)によって生成された一次フィールドおよび二次フィールドの供給電流を見ることができる。この図から位相の調整を行うことでコイルの各々の励磁を制御する(斜線部)ことができ、パルスの半分の時間に相当する時間(t)を両方のエミッタの間の距離(L)を(C)で割った値以下となるのに必要な調整を電子的に行うことができることが理解できる。ここで、(C)は光の速度で、電界が伝播するのと同じ速度である。
【0037】
[
図9]は磁気推進エンジンの最も効率的な配置を示している。この配置は同一の支持構造体(3)上に配置された3つの磁界発生コイルを有する。支持構造体(3)は図を分かり易くするために図示していない。この構成では中央のコイルが一次フィールドエミッタ(1)であり、支持構造体(3)は第1反応コイル(23)と第2反応コイル(22)とをさらに有している。これら3つのコイルには電子回路によって上記2つのアーキテクチャに第3コイル用の追加の電力制御(17)および追加の遅延制御装置を単に加えたものからパルスまたは連続発振が供給される。
【0038】
[
図9]はさらに、エンジンの作動サイクルの3つの異なるステージも示してある。時間(ta)では、一次フィールドエミッタ(1)によってフィールドパルス(4)が既に生成されており、このフィールドパルス(4)は一次フィールドエミッタ(1)には拘束されない自由な状態で、一次フィールドエミッタ(1)と第1反応コイルおよび第2反応コイル(23、22)と間の空間中を移動している。第1反応コイルおよび第2反応コイル(23、22)と一次フィールドエミッタ(1)は距離(L)を隔てて配置されてきる。この時点で、フィールドパルス(4)は空間中を移動し、エンジンの全ての要素をルーツとするものではなくなっている。フィールドは左にNの極性を有し、右にSの極性を有する。
【0039】
時間(tb)の図に見られるように、フィールドパルス(4)が両方の反応コイルに十分近付いた時に、極性のあるフィールドパルスを生成し始め、同じ極性面対面になった時に第1反応コイル(23)に左反発力が生じ、第2反応コイル(22)には、この状態では空間に属するフィールドパルス(4)に対してこのコイルを引付ける力が生じる。その結果として、3つのコイルとそれを支持する支持構造に左側へ合計推進力が生じる。
【0040】
時間(tc)では、上記の全てフィールドパルス(4)と第1反応コイル(23)および第2反応コイル(22)とが相互作用してフィールドパルス(4)に対する合計反発力とフィールドパルス(4)に対する合計吸引力(26)とが生じる。
【0041】
[
図11]は純粋に電気的なエンジンの基本構造を示し、この場合には支持構造体(3)上に三枚のプレートすなわちエミッタプレート(28)、反応プレート(29)および第2反応コイル(27)が配置されている。これらのプレートには電子制御回路を用いて高電圧が供給され、これらのプレートに電荷が蓄えられる。各極性の電場が生じる要素として機能するように正または負に帯電される。しかし、磁場を生成する場合とは異なって、プレートの帯電に起因する電場はプレートの面に垂直なフィールドラインまたは伝播ラインを有し、同じ極性でプレートの一方の側に伝播する点に注意することが重要である。この場合にも各プレート間の距離(L)は磁場での解決策と同じことを考慮する。
【0042】
[
図12]は電場ベースのみで作動するエンジンの一つの作動サイクルを示している。時間(td)では、エミッタプレート(28)を用いて初期電場(33)を生成する。この初期電場(33)はエミッタプレート(28)の両側でそれに垂直に移動する。このパルスの持続時間は各プレートを隔てる距離(L)を光の速度(C)で割ったもの以下の時間である
【0043】
初期電場パルス(33)はエミッタプレート(28)から開放され、他のプレートすなわち第1反応プレート(29)および第2反応プレート(27)に移動これらへ向かって移動する。初期電場パルス(33)がこれらの反応プレート(27,29)に近づくと、[
図12]に見られるように、それらから2つの電場パルス(34,35)が出される。
【0044】
初期電場パルス(33)は左側に同じ極性のフィールド、第1電場パルス(34)を見つける。これは初期電場パルス(33)(これは、この時点では空間のみと組み合わされている)と、上記電場パルス(34)との間に、時間(te)の図に示すように、反発力を生じさせる。一方、図の右側では、初期電場パルス(33)は第2反応プレート(27)によって生成された二次電場パルス(35)を見つける。これは初期電場パルス(33)と第2反応プレート(27)との間の吸引力を生じさせる。
【0045】
[
図12]の一番下の行は時間(tf)の状態に相当する。このフィールド相互作用によって第1反応プレート(29)には初期電場パルス(33)に対して反発力が生じ、第2反応プレート(27)には初期電場パルス(33)に対して吸引力が生じる。初期電場パルス(33)は両方のエミッタ、支持構造およびエンジン部品から完全に開放されているので、空間から反応プレート(27、29)へ向かう推進力が生じ、反発力と吸引力(31および30)を加えた最終的な推進力は同じ方向、この場合には左向きに生じる。この力は初期電場パルス(33)と組み合わされた周囲空間の吸引力30)と反発力(31)の和である。
【0046】
上記の説明から分かるように、本発明のエンジンまたはスラスターは作動に電気エネルギー以外を必要とせず、完全真空中または宇宙空間で使用でき、この電気エネルギーは太陽電池、原子力電池等から得ることができ、操作のために流体を必要とせず、電気パワーに変換可能なエネルギーを提供することができる任意のエネルギー源から無限に作動させ続けることができる。
【0047】
[
図13]も上記と同じ概念のエンジンを示しているが、エミッタによって生成される電磁パルスをマイクロ波アンテナのアレイ(36)を使用して発生させる。このマイクロ波アンテナアレイ(36)は電磁パルス(38)を生成する。ターゲットは導電性のプレート(37)である。これは第一の配列から距離(L)の所に配置され、共振回路または他のエミッタ、マイクロ波アンテナに代えることができ、反対方向すなわち第1のアンテナエミッタ構成の方向を向き、対応する送信アンテナは同じ電力制御回路および同期回路によって制御される。