(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】フライホイールを用いた無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 15/00 20060101AFI20220509BHJP
H02J 9/08 20060101ALI20220509BHJP
H02J 3/30 20060101ALI20220509BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
H02J15/00 A
H02J9/08
H02J3/30
H02J9/06 160
(21)【出願番号】P 2022020901
(22)【出願日】2022-02-15
【審査請求日】2022-02-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)発行者名 一般社団法人電気学会 (2)刊行物名 2021年電気学会産業応用部門大会論文集 (3)巻数 号数 1-5 I-35頁「長時間運転可能なフライホイール式停電対策装置の設計と試作」 (4)発行年月日 令和3年8月18日(水)※PDFファイルにてダウンロード方式で頒布。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】714003922
【氏名又は名称】嶋田 隆一
(73)【特許権者】
【識別番号】520032099
【氏名又は名称】株式会社シグマエナジー
(74)【代理人】
【識別番号】100114269
【氏名又は名称】五十嵐 貞喜
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】川口 卓志
(72)【発明者】
【氏名】塩島 大輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修平
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-103838(JP,A)
【文献】特開2018-007500(JP,A)
【文献】特開2006-042405(JP,A)
【文献】米国特許第5821630(US,A)
【文献】特開2001-190036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 15/00
H02J 3/30
H02J 9/06
H02J 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の電圧低下又は停電等の電力障害時に、電気負荷に対して交流電力を継続して供給するフライホイールを用いた無停電電源装置(以下単に「無停電電源装置」という。)において、
前記電力障害の発生を検知する 電力障害検知手段と、
前記電力障害が発生した時に前記電力系統と前記電気負荷との接続を遮断する遮断器と、
前記電力系統からの電力の供給を受けて回転駆動され、電動機と発電機の両方の機能を有する誘導電動機と、
前記誘導電動機と並列に接続される電圧発生用コンデンサと、
前記誘導電動機の回転軸に結合され、前記誘導電動機の電気エネルギーを機械エネルギーとして蓄えるフライホイールと、
燃料で駆動される原動機と、
前記誘導電動機と前記原動機の回転軸とを連結する回転軸連結手段と、
前記遮断器の開閉及び前記回転軸連結手段による前記回転軸の接続/切離しを制御する制御手段とを備えるとともに、
前記制御手段は、
前記電力障害検知手段が電力障害発生を検知すると、前記遮断器を開極して前記電力系統と前記電気負荷との接続を遮断し、さらに、前記電力障害が所定の条件に達した時に、前記回転軸連結手段により前記誘導電動機と前記原動機の回転軸とを連結させて前記原動機を慣性起動させ、
前記電力障害検知手段が電力障害の解除を検知すると、前記遮断器を閉極して前記電力系統と前記電気負荷とを再接続し、さらに、前記回転軸連結手段により前記誘導電動機と前記原動機の回転軸とを切り離すように制御することを特徴とする無停電電源装置。
【請求項2】
前記電力障害検知手段が前記電力系統の電圧をリアルタイムで計測する電圧センサを備え、前記電力障害検知手段における電力障害発生の判定条件が、前記電圧センサで計測した電圧が予め設定した所定の電圧以下になったときに電力障害が発生したと判定し、前記電圧が予め設定した所定の電圧を超えた時に電力障害が解除されたと判定することを特徴とする請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項3】
前記電力障害検知手段が瞬時電力計測手段を備えるとともに、該瞬時電力の計測結果に基づいて逆潮流の発生を検出し、該逆潮流が所定のサイクル数連続して発生した時に電力障害が発生したと判定することを特徴とする請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項4】
さらに、前記フライホイールの回転速度を計測する速度センサを備えるとともに、
前記所定の条件が、前記フライホイールの回転速度が所定の速度以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の無停電電源装置。
【請求項5】
前記電圧センサが前記誘導電動機における発電電圧を計測する機能をさらに備えるとともに、
前記所定の条件が、前記誘導電動機における発電電圧が所定の電圧以下であることを特徴とする請求項2に記載の無停電電源装置。
【請求項6】
前記所定の条件が、前記遮断器の開極からの経過時間が所定の時間を超過したことであることを特徴とする請求項2又は3に記載の無停電電源装置。
【請求項7】
電力系統の電圧低下又は停電等の電力障害時に、電気負荷に対して交流電力を継続して供給する無停電電源装置において、
前記電力障害の発生を検知する 電力障害検知手段と、
前記電力障害が発生した時に前記電力系統と前記電気負荷との接続を遮断する遮断器と、
前記電力系統からの電力の供給を受けて回転駆動され、電動機と発電機の両方の機能を有する誘導電動機と、
前記誘導電動機と並列に接続される電圧発生用コンデンサと、
前記誘導電動機の回転軸に結合され、前記誘導電動機の電気エネルギーを機械エネルギーとして蓄えるフライホイールと、
燃料で駆動される原動機と、
前記誘導電動機と前記原動機の回転軸とを連結する回転軸連結手段と、
前記遮断器の開閉及び前記回転軸連結手段による前記回転軸の接続/切離しを制御する制御手段とを備えるとともに、
前記制御手段は、
前記電力障害検知手段が電力障害発生を検知すると、前記遮断器を開極して前記電力系統と前記電気負荷との接続を遮断すると同時に、前記回転軸連結手段により前記誘導電動機と前記原動機の回転軸とを連結させて前記原動機を慣性起動させ、
前記電力障害検知手段が電力障害の解除を検知すると、前記遮断器を閉極して前記電力系統と前記電気負荷とを再接続し、さらに、前記回転軸連結手段により前記誘導電動機と前記原動機の回転軸とを切り離すように制御することを特徴とする無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統の電圧の瞬時低下(瞬低)や停電などの電力障害発生時に、フライホイールに貯蔵された機械エネルギーを放出し電気エネルギーに変換して電源に電力を無停電・無瞬断で供給するフライホイールを用いた無停電電源装置に関し、特に、電力障害の時間が長く(1秒以上)なった場合においても、持続して電力を供給可能なフライホイールを用いた無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、
図7に示すような従来のフライホイールを用いた無停電電源装置が開示されている。すなわち、電源系統より供給される電力の電圧を検出する電圧検出器と、電力系統からの電力の供給を受けて回転駆動され、電動機と発電機の両方の機能を有するかご型誘導電動機12と、かご型誘導電動機12の回転軸に結合され、かご型誘導電動機12の電気エネルギーを機械エネルギーとして蓄えるフライホイール13と、かご型誘導電動機12と並列に接続される電圧発生用コンデンサ14と、電力系統から負荷への電力供給のON/OFFを行う逆流防止スイッチSW1と、かご型誘導電動機12と電力系統との接続のON/OFFを行う再接続スイッチSW2と、電圧検出器の電圧を監視し、所定の電圧になったときに逆流防止スイッチSW1及び再接続スイッチSW2のON/OFFを制御する制御手段15とを備えるとともに、制御手段15が、電圧が瞬間的に低下し所定の電圧以下となった時に、逆流防止スイッチSW1をOFFにすると同時に、既にONになっている再接続スイッチSW2を通して負荷に対して発電した電力を供給し、電圧が復帰して所定の電圧を超えた時に逆流防止スイッチSW1をONにすると同時に再接続スイッチSW2をOFFにし、その後、電力系統が安定した後に位相を合わせて再接続スイッチSW2をONに切り換えるように制御することを特徴とするフライホイールを利用した無停電電源装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の無停電電源装置は、我が国の配電系統でその頻度の多い0. 3秒程度以下の短時間の停電や電圧の瞬時低下に対しては、効果的な手段で負荷の運転に支障がないようにできるが、停電等の電力障害の時間が長く(1秒以上)なった場合においては、フライホイールの回転数減少に伴い発電電圧が低下するため、対処できない。
現在、長時間(1秒以上)の電力障害の対策装置はバッテリを用いた方式が主流である。ただ、このバッテリ方式は数年程度の短寿命、廃棄時にリサイクルできないという環境負荷の高さ、利用時には極めて厳密な温度管理が必要といった弱点を抱えている。そのため東南アジアでは導入が進んでおらず、電力障害の対策が日本企業進出に向けた大きな障壁のひとつになっている。
【0005】
一方、フライホイール方式では、長時間の電力障害の際にバッテリと同等の数時間単位での電力供給を行うには、その発電機にインバータ・コンバータと呼ばれる巨大で高価な電気部品を接続し、なおかつ、フライホイールを毎分数万回転させるミクロン単位の超精密機構や大掛かりな真空装置が必要という課題があった。
そこで、本発明は、かかる従来のフライホイール方式の無停電電源装置の問題点を解決するためになされたものであり、毎分数万回転を避けるべくインバータ・コンバータを不要としつつも数時間の電力供給を可能とする、フライホイールを用いた無停電電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電力系統の電圧低下又は停電等の電力障害時に、電気負荷に対して交流電力を継続して供給するフライホイールを用いた無停電電源装置(以下単に「無停電電源装置」という。)に関し、本発明の上記目的は、前記電力障害の発生を検知する電力障害検知手段と、前記電力障害が発生した時に前記電力系統と前記電気負荷との接続を遮断する遮断器と、前記電力系統からの電力の供給を受けて回転駆動され、電動機と発電機の両方の機能を有する誘導電動機と、前記誘導電動機と並列に接続される電圧発生用コンデンサと、
前記誘導電動機の回転軸に結合され、前記誘導電動機の電気エネルギーを機械エネルギーとして蓄えるフライホイールと、燃料で駆動される原動機と、前記誘導電動機と前記原動機の回転軸とを連結する回転軸連結手段と、前記遮断器の開閉及び前記回転軸連結手段による前記回転軸の接続/切離しを制御する制御手段とを備えるとともに、前記制御手段は、前記電力障害検知手段が電力障害発生を検知すると、前記遮断器を開極して前記電力系統と前記電気負荷との接続を遮断し、さらに、前記電力障害が所定の条件に達した時に、前記回転軸連結手段により前記誘導電動機と前記原動機の回転軸とを連結させて前記原動機を慣性起動させ、前記電力障害検知手段が電力障害の解除を検知すると、前記遮断器を閉極して前記電力系統と前記電気負荷とを再接続し、さらに、前記回転軸連結手段により前記誘導電動機と前記原動機の回転軸とを切り離すように制御することを特徴とする無停電電源装置によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る無停電電源装置によれば、短時間(1秒未満)の瞬時電圧低下(瞬低)や瞬時の停電はフライホイールで電力を供給し、長時間(1秒以上)の電力障害が生じたときに、電磁クラッチを介して(フライホイールの慣性力で)原動機を慣性起動させて、原動機によってフライホイールの回転をアシストし、誘導発電機で発電を行い、長期的に電力を供給することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る無停電電源装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】制御手段における制御フローを示すフローチャートの一例である。
【
図3】各部の電力及びフライホイールの回転数の推移を示すタイムチャートである。
【
図4】本発明に係る無停電電源装置の試作機の諸元表である。
【
図5】本発明に係る無停電電源装置の試作機の装置写真である。
【
図6】原動機及び電磁クラッチを除いた構成による、無停電電源装置の試験結果を示すグラフである。
【
図7】従来のフライホイールを用いた無停電電源装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る無停電電源装置について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る無停電電源装置の構成の一例を示すブロック図である。電力系統1に、半導体を用いた遮断器(以下単に「遮断器」という。)2を介して電気負荷(以下単に「負荷」という。)3が接続されている。また、電力系統1には、遮断器2を介して電動機と発電機の両方の機能を有する誘導電動機4が接続され、電力系統1からの電力の供給を受けて回転駆動される。
さらに、誘導電動機4と並列に電圧発生用コンデンサ5が接続されている。
誘導電動機4の回転軸には、誘導電動機4の電気エネルギーを機械エネルギーとして蓄えるフライホイール6が結合され、電源と同じ周波数50Hz又は60Hz(3,000又は3,600rpm)で回転維持される。
【0010】
またさらに、ガスやガソリンを燃料とする原動機8が備えられ、原動機8は回転軸連結手段(例えば電磁クラッチ)7でフライホイール6と機械的に接続/切り離すことが可能な構成となっている。
一方、電力系統1の電圧/電流、及び誘導発電機4の電圧/電流をリアルタイムで監視する電圧センサ(電流検知機能も備えている。)9と、フライホイール6の回転速度(毎分の回転数rpm)を検出する速度センサ10が備えられている。なお、電圧センサ9とは別に電流センサ(不図示)を設置してもよいことは言うまでもない。
さらにまた、遮断器2の開閉や電磁クラッチ7のオン/オフを制御する制御手段11が備えられている。
制御手段11は、後述のように、電圧センサ9で計測した電圧/電流や、速度センサ10で計測した回転速度に基づいて遮断器2の開閉や電磁クラッチ7のオン/オフを制御する。
電圧センサ9は電力障害検知手段の一例である。制御手段11としては、汎用のパソコン又は、マイクロプロセッサを備えた専用の電子回路を用いることが可能である。
また、遮断器2としては、高速スイッチングが可能な半導体式スイッチが好ましい。例えば、サイリスタやパワーMOSFET等である。電磁クラッチ7は市販(多数あり)のものが利用可能である。
【0011】
次に、
図1に記載した無停電電源装置の制御手段11による制御フローについて、
図2に示すフローチャートを参照しつつ詳細に説明する。
制御手段11の電源ON等のトリガ等の入力により制御がスタートすると、電圧センサ9で計測(ステップS1)された電力系統1の電圧V(以下単に「電圧V」という。)、及び速度センサ10で計測(ステップS2)されたフライホイールの回転速度R(以下単に「回転速度R」という。)がリアルタイムに制御手段11に入力される。
電圧Vが所定値E(例えばAC90V)以上の場合(S3がNOの場合)は正常と判断してステップS1に戻って、電圧V及び回転速度の監視を続ける。
【0012】
ステップS3において、電圧Vが所定値E未満に下がった場合は(S3がYESの場合)、電力障害が発生したと判定し、遮断器2を開極して電力系統1と負荷3(及び誘導電動機4)との接続を遮断する(ステップS4)。
そうすると、誘導電動機4は自動的に発電機に切り替わり、発電を開始して負荷3に電力を供給する(ステップS5)。
誘導電動機4はフライホイール6の慣性力で回転して発電しているので、時間とともにフライホイール6の回転速度が落ちると、発電電圧も低下する。
このため、フライホイール6の回転速度Rが所定の速度(例えば、電力正常時の速度の95%)以下になった場合、又は誘導電動機4の発電電圧が所定の電圧(前記の所定値Eと同じでもよいし、異なる電圧でもよい。)以下になった場合には(S6のYES)、電磁クラッチ7をオンしてフライホイール6を原動機8に接続して、フライホイール6の慣性力を利用して原動機8を慣性起動させる(ステップS7)。なお、慣性起動とは、セルモーターを使わずに原動機の回転シャフトをフライホイール6の慣性力を用いて回転させることによって起動させることを意味している。
なお、ステップS6において、フライホイール6の回転速度Rが所定の速度以下になった場合、又は誘導電動機4の発電電圧が所定の電圧以下になった場合に電磁クラッチ7を接続するのではなく、電力障害が長時間(例えば1秒以上)続いた場合に電磁クラッチ7を接続するように構成してもよい。
こうすることにより、セルモーターによって起動する場合よりも速く(1秒未満)起動させることができ、かつ、セルモーター用のバッテリも不要になるという効果がある。
そして、起動した原動機8の回転力によりフライホイール6の回転をアシストすることにより、フライホイール6の回転数を元の状態(3,000又は3,600rpm)に戻して維持する(ステップS8)。この場合、原動機8はガバナ等の燃料噴射量制御により、回転数が一定に保たれる。
このように、フライホイール6は原動機8によりアシストを受けることができるので、フライホイールの容量が小さくても済むという効果もある。
【0013】
もし、この間に電力系統1の電力障害が解除になれば、これ以上原動機8によるアシストは不要になるので、電力系統1が復帰したか否かを判定する必要がある。
これは、電圧Vが所定値E以上になったか否かで判断する(ステップS9)。電圧Vが所定値未満であれば(S9のNO)、ステップS8に戻り、原動機8によるアシストを継続する。
一方、電圧Vが所定値E以上になった場合は(S9のYES)、電力障害が解除になったと判定し、遮断器2を閉極して電力系統1と負荷3(及び誘導電動機4)とを再接続する(ステップS10)。
なお、電力系統1に再接続する時は、誘導電動機4から負荷3に供給される電力(P2)の電圧及び電流の位相と、電力系統1から供給される電力(P1)の電圧及び電流の位相をそれぞれ合わせてから接続することは当業者に自明であるので、接続方法等の詳細な説明は省略する。
その後、電磁クラッチ7をオフし、原動機8をフライホイール6から切り離す(ステップS11)。そして、初めのステップS1に戻る。
電磁クラッチ7を切り離した後は、原動機8を停止する。原動機8は手動で止めてもよいし、制御手段11にその機能を追加して、それを利用して止めてもよい。適宜選択可能である。
【0014】
図3は、各部の電力及びフライホイールの回転数の推移を示すタイムチャートである。
図3において、(A)~(D)で示すタイミングは、次のとおりである。
(A) 誘導電動機起動開始時
(B) 誘導電動機起動完了時
(C) 電力障害発生時
(D) 電磁クラッチ接続時
図3における(1)~(3)について以下説明する。
(1)電力系統1に障害が発生していない場合、電磁クラッチ7をオフして原動機8をフライホイール6と切り離しておき、
図1のP1→P2→P3の経路で誘導電動機4によりフライホイール6を50Hz又は60Hz(3,000又は3,600rpm)で回転維持させる。
(2)電力障害発生時には遮断器2によりシステムを電力系統1から切り離し、フライホイール6に蓄積したエネルギーを用いて誘導電動機4を介して負荷3へ無瞬断の電力供給(
図1のP5→P6→P7の経路)を行う。
(3)この直後に電磁クラッチ7をオンしてフライホイール6と原動機8とを機械的に接続し、フライホイール6の慣性力で原動機8を慣性起動させ、以後は燃料の続く限り原動機8から負荷3へ電力供給(
図1のP4→P5→P6→P7の経路)を行う。
【0015】
本発明者らは、過去に、
図1の構成から原動機8及び電磁クラッチ7を除いた構成による、無停電電源装置の試験を行っている。その試験結果を
図6に示すが、フライホイール6の蓄積エネルギーにより、短時間(0.3秒未満)であれば電力障害発生後も無瞬断で負荷3へ電力供給(
図3における(1)から(2)までの動作確認)が可能であることが分かった。この後も長時間にわたり負荷3への電力供給を継続するには、周波数の低下が継続し、発電能力が失われる前に原動機8を接続・起動し、
図3における「(3)原動機による駆動」モードに切り替える必要がある。
【0016】
本発明に係る無停電電源装置の動作確認および有用性の検証のため、新たに小容量システムの設計・試作を行った。定格負荷11kWを想定し、原動機8の未接続時に11kwを1秒間出力可能(この時、回転数低下が10%以内、かつ、接続時のクラッチ損失を考慮した容量)とするようフライホイールを設計した。
その構成要素の諸元を
図4に、試作した装置写真を
図5に示す。
【0017】
以上で実施形態の説明を終了するが、この発明において、装置の具体的な構成は実施形態で説明したものに限るものではない。
例えば、上述の実施形態では電力障害の発生を電圧Vの低下で判断しているが、電力系統の瞬時電力を計測(算出)することによって、瞬時電力の計測結果に基づいて逆潮流の発生を検出し、逆潮流が所定のサイクル数(例えば10サイクル)連続した時に電力障害が発生したと判定して遮断器2を開極するようにしてもよい。瞬時電力の算出に当たっては、電圧センサ9で計測した電圧及び電流の値が用いられる。
また、上記の実施形態では、フライホイール6と原動機8との(電磁クラッチ7による)接続のタイミングを、フライホイール6の回転速度Rの低下、誘導電動機4の発電電圧の低下又は電力障害の発生時からの経過時間で判断したが、それには限らず、遮断器2の開極と同時に電磁クラッチ7をオンするように制御してもよいことは勿論である。この場合は原動機8の起動が遅れる心配がない。
【符号の説明】
【0018】
1:電力系統
2:遮断器
3:電気負荷
4:誘導電動機
5:電圧発生コンデンサ
6:フライホイール
7:電磁クラッチ(回転軸連結手段の例)
8:原動機
9:電圧センサ(電力障害検知手段の例)
10:速度センサ
11:制御手段
【要約】
【課題】瞬低対策にも利用でき、かつ、数時間の電力供給を可能とするフライホイールを用いた無停電電源装置を提供すること。
【解決手段】電力系統の電圧低下又は停電等の電力障害時に、電気負荷に対して交流電力を継続して供給するフライホイールを用いた無停電電源装置において、フライホイールの回転数低下時に、燃料で駆動する原動機をフライホイールとクラッチ接続し、フライホイールの回転力を利用して原動機を慣性起動して、原動機によってフライホイールの回転を維持することにより、連続して発電することを可能とする。
【選択図】
図1