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特許7067747コンクリート養生シートおよびコンクリート養生シートを用いたコンクリート構造物の製造方法
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  • 特許-コンクリート養生シートおよびコンクリート養生シートを用いたコンクリート構造物の製造方法 図1
  • 特許-コンクリート養生シートおよびコンクリート養生シートを用いたコンクリート構造物の製造方法 図2
  • 特許-コンクリート養生シートおよびコンクリート養生シートを用いたコンクリート構造物の製造方法 図3
  • 特許-コンクリート養生シートおよびコンクリート養生シートを用いたコンクリート構造物の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】コンクリート養生シートおよびコンクリート養生シートを用いたコンクリート構造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 9/10 20060101AFI20220509BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
E04G9/10 101B
E04G21/02 104
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019215235
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021085236
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2019-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】503275129
【氏名又は名称】りんかい日産建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595136519
【氏名又は名称】丸信化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】中出 睦
(72)【発明者】
【氏名】野原 貴純
(72)【発明者】
【氏名】荒川 浩一
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-144064(JP,A)
【文献】特開2013-100688(JP,A)
【文献】特開平05-016126(JP,A)
【文献】特開平07-026712(JP,A)
【文献】特表2001-501143(JP,A)
【文献】特開2017-166290(JP,A)
【文献】特開2017-106319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/10
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設されたコンクリートと前記コンクリートの形状を規定する型枠との間に配置されるコンクリート養生シートであって、
水分を透過する通水層と、
水分を保持する保水層と、
通気性を有し、かつ、前記保水層よりも平滑な表面を有する保護層と、が順次積層され、
前記保護層及び前記保水層は、それぞれ樹脂製不織布であ
前記通水層は、前記型枠に接するように配置され、
前記通水層は、前記コンクリート養生シートと前記型枠との間に注入された水をコンクリートに供給するように透過させる、
コンクリート養生シート。
【請求項2】
コンクリートの上面から前記コンクリート養生シートの上端までの距離は、10cm以上である、請求項1に記載のコンクリート養生シート。
【請求項3】
前記通水層は、樹脂製ネットである、請求項1または2に記載のコンクリート養生シート。
【請求項4】
前記樹脂製ネットは、第1の方向に平行に配置される第1糸群を構成する複数の第1糸のそれぞれが連続的に当接する第1面と、前記第1の方向と異なる第2の方向に平行に配置される第2糸群が当接する第2面とを有する、請求項に記載のコンクリート養生シート。
【請求項5】
前記樹脂製ネットの網目のピッチは1.5mm以上5.0mm以下である、請求項またはに記載のコンクリート養生シート。
【請求項6】
前記保水層は、厚さが0.1mm以上0.4mm以下である、請求項1ないしのいずれか一項に記載のコンクリート養生シート。
【請求項7】
前記保水層の保水量は、160g/m2以上である、請求項1ないしのいずれか一項に記載のコンクリート養生シート。
【請求項8】
前記保護層の通気量は、20cm3/(cm2・sec)以上である、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のコンクリート養生シート。
【請求項9】
前記保護層の厚さは、0.05mm以上である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載のコンクリート養生シート。
【請求項10】
前記保水層と前記保護層とが、点状または線状に配置された接着剤により接着される、請求項1ないし9のいずれか一項に記載のコンクリート養生シート。
【請求項11】
打設されたコンクリートと前記コンクリートの形状を規定する型枠との間に配置されるコンクリート養生シートであって、水分を透過する通水層と、水分を保持する保水層と、通気性を有し、かつ、前記保水層よりも平滑な表面を有する保護層と、が順次積層され、前記保護層及び前記保水層は、それぞれ樹脂製不織布である、コンクリート養生シートを、前記通水層が前記型枠に接するように配置し、
前記コンクリート養生シートの前記保護層に接するように、かつ、前記コンクリート養生シートの上端がコンクリートの上面から10cm以上露出するようにコンクリートを打設し、
打設から第1の時間経過後に、前記通水層を通り前記保水層に吸収されるように、前記コンクリート養生シートと前記型枠との間に注水し、
打設から前記第1の時間より長い第2の時間経過後に前記型枠および前記コンクリート養生シートを前記打設されたコンクリートから取り外す、
ことを含む、コンクリート構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート養生シートおよびコンクリート養生シートを用いたコンクリート構造物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートが硬化する際の水和反応には、コンクリートに含まれるセメントの重量の約40%の水が必要とされている。コンクリートを打設する際には型枠の隅々まで均等にコンクリートを充填する必要がある。そのため、打設時のコンクリートに求められる水セメント比は40%より高く、一般に45~65%程度である。
【0003】
コンクリートに含まれる余剰の水により、コンクリート表面にブリーディングが発生する場合がある。コンクリート表面でのブリーディングは、コンクリート強度の低下やひび割れの原因となるため、好ましくない。
【0004】
一方、余剰の水が十分でないと、コンクリートの水和反応に必要な水が不足し、コンクリートを十分に硬化させることができなくなる。
【0005】
特許文献1には、コンクリートの表面を覆う給水層に、給水層の裏側に沿って形成された中空のせき板から水を浸出させ、コンクリートの表面に水を供給するコンクリート型枠が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-048609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のコンクリート型枠が備える芯材は、打設コンクリートの圧力に対して変形することがない強度・剛性を有している。すなわち、特許文献1に記載のコンクリート型枠は、既存のコンクリート型枠に代えて使用することが前提とされている。このようなコンクリート型枠を使用するにあたっては、コンクリート打設作業の変更が必要となり、導入が容易ではない。
【0008】
本発明は、既存のコンクリート型枠を使用する場合であっても、打設したコンクリートの水和反応を適切に進行させることができる、コンクリート養生シートおよびコンクリート養生シートを用いたコンクリート構造物の製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるコンクリート養生シートは、打設されたコンクリートとコンクリートの形状を規定する型枠との間に配置されるコンクリート養生シートであって、水分を透過する通水層と、水分を保持する保水層と、通気性を有し、かつ、保水層よりも平滑な表面を有する保護層と、が順次積層されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、通水層は、樹脂製ネットであることが好ましい。
【0011】
また、本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、樹脂製ネットは、第1の方向に平行に配置される第1糸群を構成する複数の第1糸のそれぞれが連続的に当接する第1面と、第1の方向と異なる第2の方向に平行に配置される第2糸群が当接する第2面とを有することが好ましい。
【0012】
また、本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、樹脂製ネットの網目のピッチは1.5mm以上5.0mm以下であることが好ましい。
【0013】
また、本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、保水層は、厚さが0.1mm以上0.4mm以下であることが好ましい。
【0014】
また、本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、保水層の保水量は、160g/m 2 以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、保水層は、樹脂製不織布であることが好ましい。
【0016】
また、本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、保護層の通気量は、20cm 3 cm 2 ・sec以上であることが好ましい。
【0017】
また、本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、保護層の厚さは、0.05mm以上であることが好ましい。
【0018】
また、本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、保護層は、樹脂製不織布であることが好ましい。
【0019】
また、本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、保水層と保護層とが、点状または線状に配置された接着剤により接着されることが好ましい。
【0020】
本発明にかかるコンクリート構造物の製造方法は、上述のコンクリート養生シートを、通水層が型枠に接するように配置し、コンクリート養生シートの保護層に接するように、かつ、コンクリート養生シートの上端がコンクリートの上面から10cm以上露出するようにコンクリートを打設し、打設から第1の時間経過後に、通水層に注水し、打設から第1の時間より長い第2の時間経過後に型枠およびコンクリート養生シートを打設されたコンクリートから取り外す、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のコンクリート養生シートおよびコンクリート構造物の製造方法によれば、既存のコンクリート型枠を使用する場合であっても、打設したコンクリートの水和反応を適切に進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】コンクート養生シートを使用したコンクリート構造物の製造方法の概要を説明する図である。
図2】各層を分離させた状態におけるコンクリート養生シートの概略構成を示す模式図である。
図3】(a)は通水層のX-X′方向の断面模式図であり、(b)は通水層のY-Y′方向の断面模式図である。
図4】保護層において保水層と接着される面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照してコンクリート養生シートおよびコンクリート構造物の製造方法について詳細に説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0024】
図1は、コンクリート養生シートを使用したコンクリート構造物の製造方法の概要を説明する図である。
【0025】
工程100において、コンクリート養生シート1が型枠2に接するように配置される。部分拡大図1bは、コンクリート養生シートの部分1aに対応している。部分拡大図1bに示すように、コンクリート養生シート1は、通水層11と、保水層12と、保護層13とを備える。そして、コンクリート養生シート1は、通水層11が型枠2に接するように配置される。コンクリート養生シート1の詳細な構成は後述する。
【0026】
工程100の後の工程200では、コンクリート養生シート1が配置された型枠2の内側に、コンクリート3が打設される。コンクリート3が打設された後、コンクリート3は、第1の時間(例えば24時間)が経過するまで養生される。第1の時間が経過するまでに、コンクリート3に含まれる余剰水は、コンクリート養生シート1の保護層13を介して保水層12に吸収される。また、保水層12の保水量を超過した余剰水は、通水層11を通って排出される。このようにコンクリート3に含まれる余剰水を排出することにより、コンクリート3の表面でのブリーディングの発生が抑制される。
【0027】
工程200でコンクリート3が打設されてから第1の時間が経過した後の工程300では、コンクリート養生シート1と型枠2との間に注水が行われる。注入された水は、コンクリート養生シート1の通水層11を通り、保水層12に吸収される。また、保水層12に吸収された水は、コンクリート養生シート1の保護層13を介してコンクリート3に吸収され、水和反応に使用される。このように打設されてから第1の時間が経過した後に注水を行うことにより、コンクリート3の水和反応に必要な水分を供給することができ、水和反応を適切に進行させることができる。
【0028】
工程300で注水を行うにあたり、コンクリート3の上面からコンクリート養生シート1の上端までの距離hは、10cm以上とすることが好ましい。距離hを10cm以上とすることにより、コンクリート養生シート1と型枠2との間に注入された水のコンクリート3側に入ることを抑制できる。なお、距離hを15cm以下とすると、コンクリート養生シート1の上端がコンクリート打設現場での作業の妨げになりにくい。
【0029】
工程200でコンクリート3が打設されてから第2の時間が経過した後の工程400では、適切に水和反応が進行したコンクリート3からコンクリート養生シート1および型枠2が取り外される。コンクリート構造物が製造される。第2の時間は第1の時間よりも長い時間である。そのため、工程400は工程300の後の工程である。
【0030】
工程100から工程400までの工程を経て製造されるコンクリート構造物では、水和反応中の水の供給により適切に水和反応が進行しているため、コンクリート3が十分に硬化している。また、コンクリート3の表面は、コンクリート養生シート1の保護層13と当接することで平滑に形成される。
【0031】
図2は、各層を分離させた状態におけるコンクリート養生シートの概略構成を示す模式図である。
【0032】
コンクリート養生シート1は、通水層11と、保水層12と、保護層13とが順次積層されている。
【0033】
通水層11は、水分を透過する層である。通水層11は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの樹脂製ネットである。
【0034】
樹脂製ネットである通水層11において、網目のピッチは1.5mm以上5.0mm以下であることが好ましい。網目のピッチが1.5mm以上である通水層11は、コンクリート3に含まれる余剰水およびコンクリート3の水和反応に用いられる水を、十分に透過することができる。一方、網目のピッチが5.0mm以下の通水層11は、網目の形状がコンクリート3の表面に影響しにくい。また、網目のピッチが3.5mm以下の通水層11は、網目の形状がコンクリート3の表面にさらに影響しにくいため、好ましい。
【0035】
また、通水層11を構成する樹脂製ネットは、所定の形状を有していることが好ましい。通水層11は、第1の方向D1に平行に配置される複数の樹脂糸である第1糸群111と、第2の方向D2に平行に配置される複数の樹脂糸である第2糸群112とを有する。
【0036】
図3(a)は通水層のX-X′方向の断面模式図であり、図3(b)は通水層のY-Y′方向の断面模式図である。
【0037】
図3(a)に示す通水層11では、第1糸群111は連続的に第1面113に当接する。そして、第2糸群112は第1糸群111の上に配置され、第1面の反対側である第2面114に離散的に当接する。
【0038】
図3(b)に示す通水層11では、第2糸群112は、第1面113に当接する第1糸群111上では第2面114に当接し、第1糸群111のない場所では第1面113に当接する。
【0039】
図3(a)および図3(b)に示す通水層11では、第1の方向D1にも第2の方向D2にも第2面114に空隙が形成されている。そのため、コンクリート養生シート1は、コンクリート3から排出される余剰水を良好に排出し、通水層11に注入された水を良好に拡散させることができる。
【0040】
また、図3(a)および図3(b)に示す通水層11では、第1糸群111は連続的に第1面113に当接する。そのため、通水層11の第1面113が保水層12に接するように積層されたコンクリート養生シート1によると、通水層11の形状がコンクリート3の表面に及ぼす影響が小さい。
【0041】
保水層12は、水分を保持する層である。保水層12は、例えばポリエステル、アクリルなどの樹脂からなるスパンボンド不織布である。スパンボンド不織布は、樹脂チップを溶融して糸を作り、長繊維のままウェブを形成し、熱ロールで熱圧着することにより製造される。保水層12は、スパンボンド不織布以外の樹脂製不織布であってもよい。
【0042】
保水層12は、160g/m 2 以上の保水量を有することが好ましい。160g/m 2 以上の保水量を有する保水層12は、コンクリート3から排出される余剰水および通水層11に注入された水を適切に保持することができる。
【0043】
保水量は、以下の手順による測定結果を以下の式に代入することにより算出される。
(手順)
1.10cm四方とした試料の初期質量(g)を測定する。
2.試料を水に5分間浸漬する。
3.試料を水から取り出し、網の上に1分間静置した後、浸漬後質量(g)を測定する。
(式)
保水量(g/m 2 )=(浸漬後質量 - 初期質量) × 100
【0044】
手順3で用いる網は、試料がはみ出さない十分な大きさ(例えば20cm四方)の金属製の網である。網目のピッチは、試料が落下しないように支持可能、かつ、水の滴下を妨げないような大きさであり、例えば2.5cmである。また、網には少なくとも3つの足が設けられており、網が設置面上に設置されたとき、設置面と網との間に空間が形成される。
【0045】
保水層12は、厚さが0.1mm以上0.4mm以下であることが好ましい。厚さが0.1mm以上の保水層12は、適切な保水量を確保することができる。また、厚さが0.4mm以下の保水層12を有するコンクリート養生シート1は、型枠2に接するように配置したときに、特に角部において寸法の誤差によるしわが生じにくい。
【0046】
保護層13は、通気性を有する層であり、保水層12よりも平滑な表面を有する。表面の平滑度は、例えばISO25178で規定される面粗さパラメータの数値により比較することができる。
【0047】
保護層13は、例えばポリエステルなどの樹脂からなる湿式不織布である。湿式不織布は、短い繊維を水と混ぜ合わせた後ワイヤ上で脱水することでウェブを形成し、ローラで圧力や熱を加えることにより製造される。湿式不織布の表面は、短い繊維を使用するため、例えばスパンボンド不織布よりも一般的に平滑である。保護層13は、湿式不織布以外の樹脂製不織布であってもよい。
【0048】
コンクリート3に当接する保護層13が保水層12よりも平滑な表面を有しているので、コンクリート養生シート1を使用すると、平滑な表面を有するコンクリート3を得ることができる。
【0049】
保護層13の通気量は、20cm 3 cm 2 ・sec以上であることが好ましい。通気量が20cm 3 cm 2 ・sec以上である保護層13は、コンクリート3と保水層12との間で水分を適切に通過させるため、打設したコンクリートの水和反応を適切に進行させることができる。
【0050】
また、保護層13の厚さは、0.05mm以上であることが好ましい。厚さが0.05mm以上である保護層13を有するコンクリート養生シート1を使用すると、通水層13の形状により生じる凹凸を適切に吸収するため、より平滑な表面を有するコンクリート3を得ることができる。また、保護層13の厚さが0.1mm以上であると、さらに平滑な表面を有するコンクリート3を得ることができ、好ましい。
【0051】
通水層11、保水層12および保護層13が、それぞれの間を接着剤により接着されることにより、コンクリート養生シート1が形成される。
【0052】
図4は、保護層において保水層と接着される面の模式図である。
【0053】
保護層13において保水層12と接着される面には、接着剤14が複数の点状に配置される。点状に配置される接着剤14どうしの間隔は、例えば1mmである。点状に配置される接着剤14で保護層13および保水層12を接着することにより、保護層13と保水層12との間の通気性を適切に維持することができる。なお、保護層13と保水層12とを接着する接着剤14は、線状に配置されてもよい。
【0054】
変形例によれば、上述の実施形態によるコンクリート養生シートにおいて、通水層11は、第1糸群111および第2糸群112の材料となる樹脂を保水層12の表面に印刷することにより形成されていてもよい。この場合、通水層11と保水層12とは、接着剤により接着されるのではなく、溶着される。印刷により形成される通水層11では、第1糸群111と第2糸群112とが一体に形成される。印刷により形成される通水層11においては、第1糸群111と第2糸群112との高さが異なるように形成されていてもよい。
【0055】
他の変形例によれば、上述の実施形態または変形例によるコンクリート養生シートにおいて、通水層11における第1糸群111と第2糸群112とは、第1の方向D1と第2の方向D2とそれぞれ平行でなくてもよい。また、通水層11における第1糸群111と第2糸群112とは、直交していなくてもよい。
【0056】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0057】
1 コンクリート養生シート
11 通水層
12 保水層
13 保護層
2 型枠
3 コンクリート
図1
図2
図3
図4