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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】揚げ油の回収装置及びフライヤー
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/12 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
A47J37/12 321
A47J37/12 351
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020165651
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057408
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2021-12-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315002601
【氏名又は名称】クールフライヤー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 光二
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-209763(JP,A)
【文献】特開平10-248725(JP,A)
【文献】国際公開第2013/039007(WO,A1)
【文献】実開昭57-032622(JP,U)
【文献】特開2013-202402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライヤーの油槽から調理済みの揚げ油を回収する装置であって、
揚げ油を回収又は排出するための蓋付き開口を有し、内部に回収した揚げ油を貯蔵するタンクと、
一端が前記油槽に差し込まれると共に、他端が前記タンクに接続される油送管と、
前記油管を介して前記油槽内の揚げ油を前記タンク内に吸引するポンプと、
前記油送管の一端に装着されて前記油槽内に差し込まれると共に、先端部から離れた所定の位置に通気口を有するノズル管と、を備えることを特徴とする揚げ油回収装置。
【請求項2】
前記ノズル管に設けられた通気口は、前記ノズル管の先端部に向けて開放すると共に、当該ノズル管の軸方向に沿ってスリット状に設けられていることを特徴とする請求項1記載の揚げ油回収装置。
【請求項3】
前記ノズル管には、当該ノズル管の軸方向に沿ってスライド可能な管状のスリーブが設けられ、前記スリーブをスライドさせることで前記スリット状の通気口の軸方向の長さが調節されることを特徴とする請求項2記載の揚げ油回収装置。
【請求項4】
前記ポンプは、タイマー設定可能な電動ポンプであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の揚げ油回収装置。
【請求項5】
揚げ油を収容する油槽と、前記油槽内の揚げ油を加熱するヒータと、を備えたフライヤーにおいて、
前記油槽内の側壁に形成されると共に、前記油槽の底面に対して間隔をあけた所定の位置に設けられた排油口と、
前記排油口を開閉するためのコックと、
一端が前記排油口に接続されると共に、他端が前記油槽の底面に向かって屈曲している油送管と、
前記油送管の先端に設けられると共に、先端部から離れた所定の位置に通気口を有するノズル管と、を備えることを特徴とするフライヤー。
【請求項6】
前記ノズル管は前記油槽の側壁に対して回転自在に設けられていることを特徴とする請求項5記載のフライヤー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材の揚げ調理を行うフライヤーにおいて、揚げ調理を行った後の揚げ油を回収する揚げ油回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店の厨房等で食材の揚げ調理を行う際には、調理器具としてフライヤーが使用されている。揚げ調理が行われている食材からは、水や衣等の揚げカスが発生し、揚げ油中に放出される。これにより、油槽内の揚げ油の劣化が進行する。また、揚げ油中に放出された水や揚げカスは、油槽内の揚げ油中を沈降していき、油槽底部に沈殿する。そして、調理済みの揚げ油を回収し再利用するための技術として、調理済みの揚げ油を濾過するための装置が開示されている(例えば、特許文献1,2)
【0003】
濾過装置を使用する際には、油槽内の下方に設けられたバルブを開ける。当該バルブを開けると、油槽底部に沈殿している揚げカス等と揚げ油とが同時に流れ出す。流れ出した揚げ油は、濾過フィルタを介してフライヤーの油槽からタンクに流入する。その後、タンク内に貯留された揚げ油を濾過したうえでポンプにより油槽内に戻す。この工程を複数回繰り返すことにより、揚げ油から揚げカス等をできる限り取り除き、濾過処理された再生油として再度揚げ調理に使用される。また、この濾過作業は、高温の油を複数回流し込むことにより、揚げ油の回収のみならず、フライヤーの油槽の清掃作業も兼ねている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-20835
【文献】特開2012-206712
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような濾過装置は、フィルタを介して揚げ油貯留タンクに流し込む作業、流し込んだ揚げ油を再度フライヤーの油槽内に戻す作業を人の手で繰り返さなければならない。そして、この揚げ油の回収作業は、油槽内の清掃も兼ねているため、揚げ油の回収作業と油槽の清掃作業を同時に行う必要があり、従業員の作業時間を多く要する。そのため、揚げ物料理を提供する飲食店等では、閉店後に残ってこの作業を行わなければならず、その分の人件費が発生してしまうことになる。
【0006】
また、揚げ油は温度が低いと粘度が高くなり、フィルタを通過する際に詰まりやすくなるため、濾過に適さなくなってしまう。このことから、濾過作業は揚げ調理を行った後、揚げ油の温度が高いうちに行う必要がある。そのため、濾過作業の各工程は従業員により行わなければならないため、油が高温のままであると油ハネ等による危険を伴う。
【0007】
さらに、近年のフライヤーでは、揚げ油の劣化の進行を抑えるために、揚げ調理中に発生した水や揚げカス等を油槽の下部に沈降させる技術が多く利用されている。これに上述した濾過装置を使用してしまうと、せっかく水や揚げカス等を沈殿させたにもかかわらず、劣化が進んでいる下部油槽の劣化油と劣化の進行が抑えられている上部油槽の揚げ油とが混ざり合ってしまうことになる。そのため、温度の高い油と水分が接することで濾過作業中に油ハネや油煙が生じ、また、油の劣化も進行してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、揚げ調理を行う飲食店等による調理済み揚げ油の回収作業を短時間で行うことができ、かつ劣化の進行が抑えられている揚げ油のみを回収することが可能な揚げ油回収装置、及びフライヤーを提供することにある。
【0009】
すなわち本発明は、フライヤーの油槽から調理済みの揚げ油を回収する装置であって、揚げ油を回収又は排出するための蓋付き開口を有し、内部に回収した揚げ油を貯蔵するタンクと、一端が前記油槽に差し込まれると共に、他端が前記タンクに接続される油送管と、前記油槽管を介して前記油槽内の揚げ油を前記タンク内に吸引するポンプと、前記油送管の一端に装着されて前記油槽内に差し込まれると共に、先端部から離れた所定の位置に通気口を有するノズル管と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の揚げ油回収装置によれば、ノズル管の所定の位置に通気口が設けられていることによって、油面が通気口の位置まで下がったところで油槽内の揚げ油の吸引が停止する。そのため、油槽底部に存在する揚げカスが含まれた劣化油を油槽内に残した状態で、揚げカスや水が沈殿していない部分の揚げ油のみを上抜きすることが可能である。これにより、調理済み揚げ油の回収に濾過作業を必要としないので、人為的な作業を要することなく劣化の進行が抑えられている揚げ油の回収を行うことができる。また、油槽内の揚げ油を上抜きし、濾過作業を必要としない関係上、揚げ油の回収作業と油槽の清掃作業を分離することができるため、油槽の清掃作業を翌日に行うことができる。そのため、揚げ油の回収作業を容易に行うことができると共に、人件費の削減が可能となる。
【0011】
また、本発明の揚げ油回収装置は、濾過を行うものではないため、温度が高いうちに揚げ油の回収を行う必要がない。そのため、揚げ油の温度がある程度低くなってから揚げ油の回収を行うことができ、従業員の安全性を確保しつつ揚げ油の回収を行うことが可能となる。
【0012】
更に、本発明によれば、水や揚げカスが沈殿している油槽底部の劣化油を残しつつ、油槽上部の揚げ油を回収することが可能であるため、劣化が進んでいる油槽底部の劣化油と劣化の進行が抑えられている油槽上部の揚げ油とが混ざり合うことなく揚げ油の回収を行うことができる。
【0013】
また更に、油槽上部の揚げ油を吸引している際には、前記通気口からもノズル管の内部に揚げ油が流入するため、ノズル管先端部における揚げ油の流入速度が低下し、揚げ油と一緒に揚げカス等の固形物を吸引してしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用した揚げ油回収装置をフライヤーに使用した際の第一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明を適用した揚げ油回収装置のノズル管を示す斜視図である。
図3】タンク内における空気の流れを示す断面図である。
図4】ノズル管によって油槽内の揚げ油を吸引する際の拡大断面図である。
図5】本発明を適用した揚げ油回収装置付きフライヤーの第二実施形態を示す断面図である。
図6】第二実施形態において、油槽内の揚げ油を吸引する際の拡大断面図である。
図7】第二実施形態において、ノズル管の位置変化を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を用いて本発明の揚げ油回収装置及びフライヤーを詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明を適用した揚げ油回収装置(以下、「回収装置」という)の第一実施形態を示す図である。この回収装置2はフライヤーの油槽から揚げ油を回収する際に使用されるものであり、この第一実施形態の回収装置は持ち運び自在に構成されている。
【0017】
前記フライヤー1は、筐体11の内部に揚げ油13を貯留する油槽16が設けられている。前記油槽16内には、前記貯留する揚げ油13を加熱するヒータ12が設けられている。前記フライヤー1は、比較的小型のフライヤーであり、前記油槽16内に貯留した前記揚げ油13を前記ヒータ3で加熱し、当該揚げ油13の中で食材の揚げ調理を行うものである。例えば、飲食店等で揚げ物を提供する場合等に使用される。前記フライヤーの筐体11は、略矩形状に形成され、底部には複数の脚部15が設けられると共に、当該筐体11の上部には主電源スイッチを有する操作部14が設けられている。また、前記操作部14には揚げ油の現在温度などを表示する液晶ディスプレイが設けられている。
【0018】
前記回収装置2は、タンク20と、油送管27と、ポンプ21と、から構成されている。前記回収装置2は、前記フライヤー1よりも下方に設けられている。前記回収装置2は、前記ポンプ21を作動させることによって、前記油槽16内の揚げ油を回収することができる。
【0019】
前記タンク20は、内部に揚げ油を貯留するための空間を有する。図1に示す前記タンク20の右側上部には、前記油槽16内の揚げ油13を回収又は排出するための蓋付き開口22が設けられている。当該蓋付き開口22を閉めることによって、前記タンク20内を密閉状態にする。前記蓋付き開口22の蓋の中央には、前記油送管27が貫通するための油送管貫通孔29が設けられている。前記タンク20の中央上部には、把手26が設けられている。当該把手26は、前記回収装置2を持ち運ぶ際に使用する。図1に示す前記タンク20の左側上部には、前記タンク20内の空気を吸引するための吸気口28が設けられている。前記吸気口28には後述する吸気管25を固定するための蓋が設けられている。前記タンク20内の空気は、前記吸気口28から外部に放出する。尚、吸気口28は、後述するポンプ21によって前記タンク20内の空気を外部に排出することができれば適宜設計変更することができる。例えば、ポンプ21をタンク20と一体に設け、当該タンク20内の空気を外部に排出するように構成したものでも良い。
【0020】
図2に示すように、前記油送管27の一端にはノズル管3が設けられている。前記ノズル管3の先端部には通気口31が設けられている。他方、前記油槽管27の他端は、前記油送管貫通孔29を挿通し、前記タンク20に接続される。前記油送管27は、耐熱ホース等の柔軟性に富んだ材質から形成されている。フライヤー1で使用した調理済みの揚げ油13を前記回収装置2によって回収する際には、前記油送管27の一端が前記フライヤー1の油槽16内に差し込まれて使用される。前記揚げ油13の回収後は、前記油槽16から前記油送管27の一端を取り外し、前記タンク20に設けられた蓋付き開口22から前記油槽16内に揚げ油を戻す。
【0021】
前記通気口31は、前記ノズル管3の軸方向に沿って開放していると共に、前記ノズル管3の軸方向に沿ってスリット状に設けられている。前記通気口31は、図4に示すように、揚げカス等が沈殿し混在している劣化油40の油面Bよりも高い位置に設けられている必要がある。前記ノズル管3には、前記通気口31よりも他端側にスリーブ32が設けられている。このスリーブ32によって、スリット状に設けられた前記通気口31の長さを調節することができる。前記油槽16内の揚げ油13は、前記油送管27を介して前記タンク20内に吸引される。この際、前記通気口31は空気を吸い込むために設けられているものの、実際には前記通気口31からも前記ノズル管3の内部に揚げ油が流入するため、これによって前記ノズル管3の先端部における揚げ油の流入速度が低下する。尚、前記通気口31は、油面が下がったときにノズル管3に空気が入り込むことができればスリット状に設けられている必要はなく、先端部から離れた所定の位置に円状の孔等を設けても良い。
【0022】
前記ポンプ21は、バルブ23と、ポンプ本体24と、から構成されている。前記ポンプ本体24は、図1に示す前記タンク20の左側面に取り付けられている。前記ポンプ本体24は吸気管25を介して前記タンク20と接続されている。前記バルブ23は、前記ポンプ本体24の下部に設けられている。前記タンク20内の空気は、前記ポンプ21を起動し、前記吸気管25から吸引することにより前記バルブ23から外部へと放出する。尚、前記ポンプ21は、手動ポンプ又は電動ポンプのいずれであっても良いが、タイマー設定が可能な電動ポンプであると好ましい。
【0023】
次に、第一実施形態の回収装置の使用方法について説明する。
【0024】
まず、フライヤーの油槽16内の揚げ油13を加熱し、食材を油槽16内に投入することにより当該食材の揚げ調理が行われる。食材の揚げ調理が行われると、投入した食材から水や揚げカスが発生する。当該水や揚げカスは、時間が経つにつれて油槽下部へと沈降していき、油槽最底部近傍に集積する。そして、食材の揚げ調理が終了し、飲食店等が閉店した後に、前記揚げ油13の前記回収装置2を使用した回収作業が開始される。
【0025】
まず、前記油送管27の一端を前記油槽16に差し込むと共に、前記油送管27の前記ノズル管3の先端部を前記油槽16の最深部に当接させる。そして、前記ポンプ21を作動させる。この際、前記揚げ油13が高温のまま回収作業を開始すると、回収装置全てに高度な耐熱性が必要とされるが、前記揚げ油13の温度が低下するまで待機した後に作業することを前提とすれば、高度な耐熱性は不要であり、その分だけ装置を安価に製作可能である。また、前記ポンプ21としてタイマー設定が可能な電動ポンプを使用し、スイッチをオンにするのみで一定時間経過後に電動ポンプを起動させた後、更に一定時間経過後に停止するように設定することで、従業員による待機時間を要することなく回収作業が可能である。
【0026】
図3に示すように、前記ポンプ21を作動させると、前記タンク20内及び前記油送管27内の空気が前記ポンプ21により吸引され、前記吸気管25を通じて前記バルブ23から外部へと排出する。
【0027】
前記タンク20内の空気が吸引されると、前記タンク20内の空気は負圧となる。前記タンク20内の空気が負圧になると、前記タンク20と連通している前記油送管27の内部の空気が負圧になる。前記油送管27内が負圧になると、前記油送管27に前記油槽16内に貯留されている前記揚げ油13が流入する。そして、前記油送管27に流入した揚げ油13は、前記油送管27と連通している前記タンク20内に流入する。
【0028】
一旦前記揚げ油13の流入が開始され、前記タンク20内への流入が開始された後は、前記ポンプ21を停止させたとしても、前記油槽16内の揚げ油13は、前記タンク20内へ流入していく揚げ油13に引っ張られることによって前記油槽16内の揚げ油13の流入が継続される。すなわち、本実施形態は所謂サイホン現象を利用することによって、揚げ油の回収を実現している。サイホン現象を利用する場合、前記タンク20は必ず前記油槽16内の揚げ油の油面よりも下方に設置されている必要がある。
【0029】
図4に示すように、前記油槽16内の前記揚げ油13が油面Aの状態では、前記揚げ油13の流入が継続される。他方、前記揚げ油13が油面Bの状態になったときは、前記通気口31から空気が入り込み、前記油送管27に対する前記揚げ油13の流入が終了する。すなわち、前記通気口31に空気が入り込むことによってサイホン現象が終了する。これによると、前記油槽16内の揚げ油13の回収は、前記揚げ油13が前記油面Bの油面高さまで下がった時点で人為的作業を要することなく自然に終了する。
【0030】
前述のとおり、サイホン現象は前記通気口31から空気が入り込むことによって終了する。そのため、サイホン現象が終了するタイミング、換言すれば、前記タンク20内への流入が終了するタイミングについては前記通気口31の長さによって決まることになる。
【0031】
前記油面Bは劣化油40の油面高さを示しているものの、揚げカス等がどの程度沈殿しているかについては、常に一定ではない。そのため、劣化油40の油面高さも常に一定ではなく、異なる油面の高さにも対応できるとより利便性に優れる。そこで、劣化油40の油面高さに応じて前記ノズル管3に設けられているスリーブ32をスライドさせ、前記通気口31の長さを油面Bの油面高さに合わせると良い。これにより、劣化の進行が抑えられている揚げ油13を無駄なく回収することができる。
【0032】
揚げ油13の回収完了後、揚げカスや水を含んだ劣化油40は油槽16内に薄く広く存在するのみである。これをキッチンペーパー等で拭き取ることによって、水や揚げカスを含んだ劣化油40を除去する。劣化油40の除去が完了した後、前記回収装置2によって回収した揚げ油13を再度油槽16内に戻す。このように、水や揚げカスを含む劣化油40を除去し、前記油面Bよりも上方の揚げ油13のみを回収することによって、劣化の進行が抑えられている高品質の揚げ油13の再利用をすることが可能となる。尚、この劣化油40の除去から揚げ油13を再度油槽16内に戻す作業は、飲食店等の従業員は翌日に行うこともできる。
【0033】
以上説明してきたように、本発明を適用した揚げ油回収装置によれば、油面Bよりも下方に存在する劣化油40を油槽16内に残したまま劣化の進行が抑えられている前記揚げ油13のみを上抜きすることができるため、劣化が進行している揚げ油と劣化の進行が抑えられている揚げ油とが混ざり合うことなく揚げ油13の回収が可能である。
【0034】
また、本実施形態の回収装置2は、前記劣化油40を残した状態で油槽16内の揚げ油13のみを上抜きするものであるから、濾過装置を使用する場合と異なり、揚げ油の回収作業が油槽16内の清掃作業を兼ねているものではない。そのため、前記揚げ油13の回収作業と前記油槽16内の清掃作業を完全に分離して行うことができる。これにより、飲食店等の閉店後には当日に前記揚げ油13の回収作業のみを行い、翌日に油槽16内の清掃作業を行うことができる。また、油槽壁面の汚れは調理終了時にスクレイパー等で除去しておけば、翌日の油槽の清掃作業をより容易に行うことができる。
【0035】
この回収装置2によれば、飲食店等の閉店後、従業員はタイマーがセットされたポンプ21の電源を起動するのみで揚げ油の回収作業を完了することができる。そのため、揚げ物を提供する飲食店等では使用した揚げ油の回収作業を短時間で効率的に行うことができる。また、揚げ油の回収作業と油槽の清掃作業を分離することができるうえ、前述の如くタイマー設定可能な電動ポンプを用いれば、揚げ油の回収には人が立ち会う必要がないため、油槽に残った揚げカスと少量の油の処理を翌日に行うことによって人が行う作業時間を大幅に短縮することが可能である。更に、劣化が進んでいる油槽最下層の劣化油40と劣化の進行が抑えられている上部油槽の揚げ油13とが混ざり合うことがないため、上部油槽の揚げ油13の品質を落とすことなく揚げ油の回収作業を行うことができる。また更に、前記揚げ油13の吸引時に前記ノズル管3の先端部における揚げ油の流入速度が下がるため、揚げカス等の固形物を吸引してしまうことを防ぐことができる。
【0036】
図5は本発明を適用したフライヤーの断面図を示すものである。
【0037】
フライヤー1は、フライヤーの油槽16よりも下方にタンク20を設置したものである。前記フライヤー1は飲食店等のキッチンに備え付けられる中型又は大型のフライヤーであって、主に事業者に使用されるものである。前記フライヤー1は、筐体51の内部に油槽16が設けられており、前記油槽16内の側壁には、揚げ油13を排出するための排油口18が設けられている。排油口18から排出された揚げ油13は、前記油槽16の下方に配置されたタンク20に回収される。
【0038】
前記油槽16内に配置されているヒータ12、揚げ油13、及び筐体51の下部に設置されたタンク20は、前述した第一実施形態と同じなので、図5中に第一実施形態と同一の符号を付して、ここではその詳細な説明は省略する。
【0039】
図6に示すように、前記油槽16内の側壁に設けられた排油口18には、油送管27が設けられている。前記油送管27の一端は、前記排油口18を貫通し、前記油槽16の外部に突出している。そして、突出した油送管27の一端は、蓋つき開口22の中央に設けられている油送管貫通孔29を挿通し前記タンク20に接続される。他方、前記油槽16内の前記油送管27の先端は、前記油槽16の底面に向かって折れ曲がっている。前記油槽16の外部の前記油送管27には、コック17が設けられている。前記コック17を捻ることによって、前記油送管27の開閉を行うことができる。尚、図7に示すように、第二実施形態では、前記油送管27は、支軸60を介して前記排油口18に接続されており、前記油槽16の側壁に対して回転自在に設けられている。これにより、前記油送管27は、フライヤー1の使用場面によって、使用位置α又は退避位置βに変更することができる。
【0040】
前記油送管27の先端には、円筒状のノズル管3が設けられている。そのため、前記油送管27と前記ノズル管3は連通している。前記ノズル管3は、先端部に通気口31が設けられている。尚、前記ノズル管3は、第一実施形態と同じように、先端部にスリーブを設けているものであっても良い。
【0041】
次に、第二実施形態のフライヤーの使用方法について説明する。
【0042】
第二実施形態においても、第一実施形態と同じように、食材の揚げ調理が終了した後に前記揚げ油13の回収作業を開始する。
【0043】
調理実施時には前記油槽16内に設けられている油送管27が使用位置αにあるため、調理終了後に前記コック17を捻り、前記油送管27を開状態にする。これにより、前記油層16内の揚げ油13は、自重によって前記油送管27を通じて前記タンク20内に流入する。前記揚げ油13は、前記排油口18の位置の油面高さになるまで自重により前記排油口18から流出する。前記揚げ油13の油面高さが排油口18の位置まで下がると、前記揚げ油13は、第一実施形態と同様に、サイホン現象によって前記排油口18から流出し続ける。そのため、前記揚げ油13の油面高さが油面Aの状態では、サイホン現象によって前記揚げ油13が前記タンク20内に流入する。他方、前記揚げ油13の油面高さが前記ノズル管3に設けられた通気口31の位置、すなわち油面Bの状態になると、前記通気口31から空気が入り込むことによって前記揚げ油13の流入が終了する。このように、第二実施形態のフライヤーは、揚げ油13の自重、及び、第一実施形態と同じサイホン現象を利用して揚げ油13の回収を行っていることから、前記揚げ油13の回収作業は前記油面Bの油面高さまで下がった時点で人為的作業を要することなく終了する。また、油面Bよりも下方に存在する劣化油40を残したまま油面Bよりも上方に存在する揚げ油13を回収するため、品質の高い揚げ油を再利用することができる。
【0044】
また、油面Bは劣化油40の油面高さを示しているものの、揚げカス等がどの程度沈殿しているかについては、フライヤー1の使用頻度や揚げ調理を行う食材の量等によって異なる。そのため、油面Bの高さは常に一定ではなく、異なる油面高さに対応できると利便性に優れる。そこで、前記油送管27を僅かに退避位置βに向かって回転、固定させることによって、前記通気口31の高さを適宜調節することも可能である。これによって、劣化の進行が抑えられている揚げ油13を無駄なく回収することができる。
【0045】
前記揚げ油13の回収が終了した後は、前記油送管27が前記油槽16の清掃時に妨げにならないように、前記油送管27を側壁に対して回転させ、退避位置βで固定する。前記油槽16内の底部に薄く広く存在する劣化油40はキッチンペーパー等で除去し、前記油槽16内の清掃をする。油槽16の清掃後、前記タンク20内に回収した前記揚げ油13は、従来技術と同じように図示しない電動ポンプによって前記油槽16内に戻す。前記油送管27は、側壁に対して回転させ、使用位置αで固定する。これにより、前記フライヤー1は、再度使用可能になる。
【0046】
以上説明してきたように、本発明を適用した第二実施形態のフライヤーによれば、劣化の進行した揚げ油と劣化の進行が抑えられている揚げ油とが混ざり合うことなく回収作業を完了させることができるため、再利用される揚げ油13の品質を落とすことなく油槽内の揚げ油の回収作業を行うことができる。また、前記コック17を開状態にするのみで揚げ油の回収を完了することができるため、人為的な労力を抑えつつ短時間で効率的に揚げ油の回収を行うことができると共に、揚げ油の回収作業と油槽の清掃作業を分離することができる。更に、揚げ油の回収作業と油槽内の清掃作業が分離していることから、油槽の清掃作業を翌日に行うことによってその分の人件費が余分に発生することがない。
【符号の説明】
【0047】
1…フライヤー、2…揚げ油回収装置、3…ノズル管、13…揚げ油、17…コック、20…タンク、27…油送管、31…通気口、40…劣化油
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7