(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】磁気センサを校正する校正ツール
(51)【国際特許分類】
G01R 35/00 20060101AFI20220509BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G01R35/00 M
G01R33/02 X
G01R33/02 U
(21)【出願番号】P 2017197406
(22)【出願日】2017-10-11
【審査請求日】2020-08-14
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512092667
【氏名又は名称】セニス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ブラゴイェビッチ,マルヤン
(72)【発明者】
【氏名】ポポビッチ,ラディボエ
(72)【発明者】
【氏名】スパシッチ,サーシャ
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-243723(JP,A)
【文献】特表2001-526920(JP,A)
【文献】特開2000-357608(JP,A)
【文献】特開平4-346089(JP,A)
【文献】特開2004-304173(JP,A)
【文献】特開平6-290934(JP,A)
【文献】米国特許第5635889(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01R 33/20
G01R 35/00
G01B 7/00
G01D 5/00
H01F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサを校正する校正ツール(1)であって、
直方体形状のハウジング(2);及び
所定の数の2つ又は4つの永久磁石であって、
該2つ又は4つの永久磁石(3、4;3~6)は、軸(7)に沿って配置されるとともに前記ハウジング(2)内に位置決めされ、
該2つ又は4つの永久磁石(3、4;3~6)は、動作容積部において、一定の
磁界強度を有する均質な磁場を提供する、所定の数の2つ又は4つの永久磁石、又は
所定の数の1つ又は2つの永久磁石(23;25)であって、
該1つ又は2つの永久磁石(23;25)のそれぞれは、中空の円筒の形状、及び、4つの穴を有する外側面を有し、
該1つ又は2つの永久磁石のそれぞれは前記ハウジング(2)内に位置決めされ、
該1つ又は2つの永久磁石(23;25)は、動作容積部において、一定の
磁界強度を有する均質な磁場を提供する、所定の数の1つ又は2つの永久磁石(23;25)、又は
ハルバッハ配列を形成するように配置される複数の永久磁石(26)であって、
該永久磁石(26)は前記ハウジング(2)内に位置決めされ、
該永久磁石(26)
によって形成される前記ハルバッハ配列は、動作容積部において、一定の
磁界強度を有する均質な磁場を提供する、複数の永久磁石(26)
を備え、
前記ハウジング(2)は6つの位置合わせ平面を提供するように構成されており、
前記位置合わせ平面は、互いに対して平行に又は90°の角度で延び、
互いに対して90°の角度で延びる6つの前記位置合わせ平面のうち少なくとも2つは穴(8)を有し、前記動作容積部において提供される前記均質な磁場に対して異なる方向で磁気センサ(22)を前記動作容積部に位置決めすること
ができる、校正ツール。
【請求項2】
磁気センサを校正する校正ツール(1)であって、
直方体形状のハウジング(2);及び
所定の数の2つの永久磁石(3、4)
を備え、
前記2つの永久磁石(3、4)は平坦な形状を有し、
前記2つの永久磁石(3、4)は同じ磁化方向を有し、
前記2つの永久磁石(3、4;3~6)は、軸(7)に沿って配置されるとともに前記ハウジング(2)内に位置決めされ、
前記2つの永久磁石(3、4;3~6)は、動作容積部において、一定の
磁界強度を有する均質な磁場を提供し、
前記ハウジング(2)は6つの位置合わせ平面を提供するように構成されており、
前記位置合わせ平面は、互いに対して平行に又は90°の角度で延び、
互いに対して90°の角度で延びる6つの前記位置合わせ平面のうち少なくとも2つは穴(8)を有し、前記動作容積部において提供される前記均質な磁場に対して異なる方向で磁気センサ(22)を前記動作容積部に位置決めすること
ができる、校正ツール。
【請求項3】
磁気センサを校正する校正ツール(1)であって、
直方体形状のハウジング(2);及び
所定の数の4つの永久磁石(3~6)を備え、該4つの永久磁石(3~6)は、第1の永久磁石(3)、第2の永久磁石(4)、第3の永久磁石(5)及び第4の永久磁石(6)であり;
前記4つの永久磁石(3~6)は平坦な形状を有し、
前記4つの永久磁石(3~6)は、軸(7)に沿って配置されるとともに前記ハウジング(2)内に位置決めされ、
前記第1の永久磁石(3)及び前記第2の永久磁石(4)は第1の対の永久磁石を形成し、
前記第3の永久磁石(5)及び前記第4の永久磁石(6)は、前記第1の対の永久磁石の外側に位置決めされ、
前記第1の永久磁石(3)及び前記第2の永久磁石(4)は、動作容積部において、一定の
磁界強度を有する均質な磁場を提供するために同じ第1の磁化方向を有し、
前記第3の永久磁石(5)及び前記第4の永久磁石(6)は、前記動作容積部において、一定の
磁界強度を有するとともに、第2の方向を向く付加的な均質な磁場を提供するために同じ第2の磁化方向を有し、
前記第1の永久磁石(3)及び前記第2の永久磁石(4)は、前記磁場の第1の温度係数を有する同じ材料から作られ、
前記第3の永久磁石(5)及び前記第4の永久磁石(6)は、前記第1の温度係数とは異なる前記磁場の第2の温度係数を有する同じ材料から作られ、
前記第1の磁化方向及び前記第2の磁化方向は、前記第1の温度係数及び前記第2の温度係数が同じ符号を有する場合には互いに反対であり、前記第1の温度係数及び前記第2の温度係数が異なる符号を有する場合には同じであり、
前記軸(7)に沿う前記4つの永久磁石(3~6)の位置は、前記動作容積部における前記磁場及び前記付加的な磁場の強度の和
の温度係数がゼロであるように選択され、
前記ハウジング(2)は6つの位置合わせ平面を提供するように構成されており、
前記位置合わせ平面は、互いに対して平行に又は90°の角度で延び、
互いに対して90°の角度で延びる6つの前記位置合わせ平面のうち少なくとも2つは穴(8)を有し、前記動作容積部において提供される前記均質な磁場に対して異なる方向で磁気センサ(22)を前記動作容積部に位置決めすること
ができる、校正ツール。
【請求項4】
前記4つの永久磁石(3~6)のそれぞれは、穴を有する中心を有し、
前記軸(7)は、前記4つの永久磁石(3~6)の前記穴を通って延びる、請求項3に記載の校正ツール。
【請求項5】
前記第1の磁化方向は、前記位置合わせ平面の第1の位置合わせ平面に対して平行に、前記位置合わせ平面の第2の位置合わせ平面及び第3の位置合わせ平面に対して直交して延びる、請求項3又は4に記載の校正ツール。
【請求項6】
前記ハウジング(2)は6つの側壁を有し、該6つの側壁は前記6つの位置合わせ平面を形成する、請求項1~5のいずれか一項に記載の校正ツール。
【請求項7】
前記ハウジング(2)は6つの側壁を有し、
前記側壁のうちの1つ又は複数は、前記それぞれの側壁から突出する1つ又は複数の調整可能な要素を含み、
前記側壁の1つ又は複数の調整可能な要素は、前記6つの位置合わせ平面のうちの対応する1つを画定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の校正ツール。
【請求項8】
前記ハウジング(2)は6つの側壁を有し、
前記側壁のうちの1つ又は複数は、該側壁にねじ留めされる3つのねじ(16)を含み、
側壁の前記ねじ(16)の1つ又は複数の端が、前記6つの位置合わせ平面のうちの対応する1つを画定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の校正ツール。
【請求項9】
磁気センサ(22)を校正する校正設定であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の校正ツール(1)、基準部材(18)、及び、磁気センサ(22)を保持するように構成されているホルダ(17)を含み、基準部材(18)は、校正ツール(1)を位置合わせする基準壁(19)を含み、ホルダ(17)は、一定の機械的な関係で基準部材(18)に固定可能である、校正設定。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサを校正する校正ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサの感度は、感度ベクトルSによって規定される。感度ベクトルSは、測定される磁場が存在する基準座標系のx、y及びz軸を有する、その成分Sx、Sy及びSzの平行性を達成するために校正される必要がある。特に多軸磁場センサに関して、個々のセンサ素子の感度ベクトル間の相互の直交性の校正が、磁場のかなり正確な測定を達成する必要がある。感度ベクトルSの校正は、一定の電界強度を有する安定した均質な磁場を生成する磁場源、すなわち、規定された磁場ベクトルBを生成する基準磁場源を必要とする。この要件を満たすために、一般的にはヘルムホルツコイル又は電磁石を有する設定が磁場源として使用される。
【0003】
校正は、磁場ベクトルBの方向がセンサの座標系の軸のうちの1つに対して平行に位置合わせされることも必要とする。しかし、完全な平行性は、実際には達成するのが非常に難しく、たいていは校正の不十分な正確さを生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記で述べた欠点を克服する、磁気センサを校正する校正ツールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
磁気センサを校正する校正ツールは、直方体形状のハウジング、及び、ハウジング内に位置決めされる1つ又は複数の永久磁石を備える。ハウジングは6つの位置合わせ平面を提供するように構成されている。位置合わせ平面は、互いに対して平行に又は90°の角度で延びる。1つ又は複数の永久磁石は、動作容積部において、一定の電界強度を有する均質な磁場を提供する。ハウジングは、磁気センサを動作容積部に位置決めすることを可能にする1つ又は複数の穴を有する。1つ又は複数の永久磁石も、磁気センサを動作容積部に位置決めすることを可能にするそのような穴を含むことができる。
【0006】
1つ又は複数の永久磁石は、例えば、所定の数の2つ又は4つの永久磁石、すなわち、第1の永久磁石及び第2の永久磁石、又は、第1の永久磁石、第2の永久磁石、第3の永久磁石及び第4の永久磁石を含むことができる。
【0007】
第1の実施形態では、校正ツールは、所定の数の2つの永久磁石を備え、
2つの永久磁石は平坦な形状を有し、
2つの永久磁石は同じ磁化方向を有し、
2つの永久磁石は、軸に沿って配置されるとともにハウジング内に位置決めされ、
2つの永久磁石は、動作容積部において、一定の電界強度を有する均質な磁場を提供する。
【0008】
第2の実施形態では、校正ツールは、所定の数の4つの永久磁石を備え、4つの永久磁石は、第1の永久磁石、第2の永久磁石、第3の永久磁石及び第4の永久磁石であり、
4つの永久磁石は平坦な形状を有し、
4つの永久磁石は、軸に沿って配置されるとともにハウジング内に位置決めされ、
第1の永久磁石及び第2の永久磁石は第1の対の永久磁石を形成し、
第3の永久磁石及び第4の永久磁石は、第1の対の永久磁石の外側に位置決めされ、
第1の永久磁石及び第2の永久磁石は、動作容積部において、一定の電界強度を有する均質な磁場を提供するために同じ第1の磁化方向を有し、
第3の永久磁石及び第4の永久磁石は、動作容積部において、一定の電界強度を有するとともに、第2の方向を向く付加的な均質な磁場を提供するために同じ第2の磁化方向を有し、
第1の永久磁石及び第2の永久磁石は、磁場の第1の温度係数を有する同じ材料から作られ、
第3の永久磁石及び第4の永久磁石は、第1の温度係数とは異なる磁場の第2の温度係数を有する同じ材料から作られ、
第1の磁化方向及び第2の磁化方向は、第1の温度係数及び第2の温度係数が同じ符号を有する場合には互いに反対であり、第1の温度係数及び第2の温度係数が異なる符号を有する場合には同じであり、
軸に沿う4つの永久磁石の位置は、動作容積部における磁場及び付加的な磁場の強度の和の温度係数がゼロであるように選択される。
【0009】
別の実施形態では、1つ又は複数の磁石は中空の円筒であるものとすることができ、同心円状に配置され、それらの磁場の異なる温度係数を提供する異なる材料から作られる場合、動作容積部内の全磁場の温度係数はゼロである。
【0010】
また別の実施形態では、1つ又は複数の永久磁石は、ハルバッハ配列で配置することができる。
【0011】
磁気センサを校正する校正設定は、そのような校正ツール、基準部材、及び、磁気センサを保持するように構成されているホルダを含むことができる。基準部材は、校正ツールを位置合わせする基準壁を含み、ホルダは、一定の機械的な関係で基準部材に固定可能である。
【0012】
本明細書に組み込まれるとともに本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の1つ又は複数の実施形態を示し、詳細な説明とともに、本発明の原理及び実施態様を説明する役割を果たす。図面は一定の縮尺ではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による校正ツールの第1の実施形態の斜視図である。
【
図2】軸に沿って位置決めされる4つの磁石の斜視図である。
【
図4】一対の磁石の断面、及び、軸に沿う磁石の磁場の電界強度を示す図である。
【
図5】軸に沿って位置決めされる4つの磁石の磁場を示す図である。
【
図7】校正ツール及び基準部材の使用を示す図である。
【
図8】校正ツールの好ましい実施形態を示す図である。
【
図9】円筒形の磁石を有する校正ツールの一実施形態を示す図である。
【
図10】円筒形の磁石を有する校正ツールの一実施形態を示す図である。
【
図11】ハルバッハ配列の磁石を有する校正ツールの一実施形態を示す図である。
【
図12】磁気センサを校正するための校正ツールの使用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
磁気センサの校正は通常、磁気センサが、x方向に向く磁場Bxに、次にy方向に向く磁場Byに、及び次に、z方向に向く磁場Bzに暴露される必要がある。本発明は、互いに完全に直交して延びる3つの磁場成分Bx、By及びBzを提供するように校正設定において使用することができる校正ツールに関し、Bx=By=Bzである。
【0015】
図1は、本発明による校正ツール1の第1の実施形態の斜視図を示している。校正ツール1は、ハウジング2、第1の永久磁石3及び第2の永久磁石4を備える。任意選択的に、校正ツール1は、(示されているような)第3の永久磁石5及び第4の永久磁石6を更に備える。分かりやすくするために、永久磁石3~6は、以下では磁石3~6と称される。ハウジング2は、6つの側壁を有する直方体形状のハウジングである。好ましくは、直方体形状のハウジング2は(示されているように)立方体である。
【0016】
磁石3~6は、平坦な形状を有し、対称中心も有する。好ましくは、磁石3~6はディスク形状である。磁石3~6はリング形状であってもよい。磁石3~6は、軸7に沿ってハウジング2内に位置決めされ、ハウジング2に固定される。2つの内側の磁石3及び4は、ハウジング2の幾何学的中心から第1の距離D1にそれぞれ位置付けられ、存在する場合、2つの外側の磁石5及び6は、幾何学的中心から第2の距離D2にそれぞれ位置付けられる。
【0017】
ハウジング2は1つ又は複数の穴8を有し、磁石3~6は、直方体形状のハウジング2の幾何学的中心の周りに延びる動作容積部に磁気センサを位置決めすることを可能にする対応する穴を有する。ハウジング2の穴8及び磁石3~6の穴は、ハウジング2の外側から動作容積部への1つ又は複数の通路を形成する。ハウジング2の穴8は、側壁の中心に配置され、磁石3~6の対応する穴は、磁石3~6の対称中心に配置される。軸7は、ハウジング2の幾何学的中心及び磁石3~6の対称中心を通って延びる。磁石3~6がそれらの中心に穴8を有する場合、軸7は穴8を通って延びる。
【0018】
図2は、4つの磁石3~6の斜視図を示しており、
図3は、磁石3~6の磁化を示している。文字Nは磁石のN極を示し、文字SはS極を示す。
【0019】
第1の実施形態では、校正ツール1は、第1の磁石3及び第2の磁石4のみを備える。第2の実施形態では、校正ツール1は4つの磁石3~6を備え、それによって、第1の磁石3及び第2の磁石4は第1の内側の対を形成し、第3の磁石5及び第4の磁石6は第2の外側の対を形成する。
【0020】
磁石3及び4は、同じような向きにされ、すなわち、同じ磁化方向を有する。したがって、磁石3及び4は、第1の方向に向くとともに、少なくとも動作容積部のサイズである容積部内に実質的に一定の電界強度B1を有する第1の磁場になる磁場を生成する。動作容積部における磁場の電界強度Bはこの場合、B=B1である。
【0021】
存在する場合に、磁石5及び6は、同じような向きにされ、すなわち、磁石3及び4の磁化方向と同じであるか又は反対であり得る、同じ磁化方向を有する。したがって、磁石5及び6は、第2の方向に向くとともに、少なくとも動作容積部のサイズである容積部内に実質的に一定の電界強度B2を有する第2の磁場になる磁場を生成する。磁石3~6の記載した配置から、第1の方向及び第2の方向が互いに同じであるか又は反対であることになる。動作容積部において、全磁場の電界強度Bはこの場合、B=B1+B2である。
【0022】
第1の磁石3及び第2の磁石4のみを有する第1の実施形態では、磁石3及び4は、動作容積部において、実質的に軸7に沿う向きであり、一定の電界強度B1を有する第1の磁場を生成する。しかし、電界強度B1は温度に依存する。
【0023】
4つの磁石3~6を有する第2の実施形態では、磁石3及び4は、第1の温度係数k1を有する第1の磁性材料から作られる。磁石5及び6は、第2の温度係数k2を有する第2の磁性材料から作られる。第1の材料及び第2の材料は、第2の温度係数k2が第1の温度係数k1とは異なるように選択される。さらに、距離D1及びD2は、電界強度B=B1+B2の温度依存が消滅するように選択される。
【0024】
磁石3及び4の磁化方向並びに磁石5及び6の磁化方向は、第1の温度係数k
1及び第2の温度係数k
2が同じ符号を有する場合には互いに反対であり、第1の温度係数k
1及び第2の温度係数k
2が異なる符号を有する場合には同じである。今日では、市販の永久磁石は全てマイナスの温度係数を有する。したがって、この場合、2つの磁化方向は、
図3において示されているように、互いに反対である。
【0025】
図4は、磁石3及び4の断面、並びに、軸7に沿うそれらの磁場の電界強度を示している。磁石3及び4は距離2D
1だけ離間する。磁石3によって生成される磁場の電界強度は、線9で示されており、磁石4によって生成される磁場の電界強度は、線10で示されている。2つの磁場の和の電界強度は線11で示されている。分かるように、ここでは点A1から点A2に及ぶ所与の範囲において、全体的に生じる磁場の強度は、一定であり、値B
1を有する。
【0026】
図5は、第1の磁性材料及び第2の磁性材料の双方がマイナスの温度係数を有する、すなわち、k
1<0及びk
2<0である場合の、軸7に沿う4つの磁石3~6の磁場を示している。磁石3及び4の磁化方向は、磁石5及び6の磁化方向とは反対である。4つの磁石3~6のそれぞれによって生成される磁場の電界強度は、線9、10、12及び13によって示されている。磁石5及び6によって生成される磁場は、第2の所与の範囲に一定の電界強度B
2を有する。そのため、4つ全ての磁石3~6によって生成される磁場の電界強度Bは、ハウジング2の幾何学的中心の周りに位置付けられる所与の容積部内では一定である。この容積部は、少なくとも校正ツール1の動作容積部のサイズを有しなければならない。その範囲において磁石3及び4によって生成される磁場の電界強度B
1は、線11によって示されており、第2の範囲において磁石5及び6によって生成される磁場の電界強度B
2は、線14によって示されており、4つ全ての磁石3~6によって生成される磁場の電界強度Bは、線15によって示されている。
【0027】
動作容積部は、直方体形状のハウジング2の中心の周りに延び、磁石3及び4間の中間、並びに、磁石5及び6間の中間にも位置付けられる。動作容積部において磁石3及び4によって生成される磁場の電界強度B1は、以下の方程式(1)によって与えられ、
一方で、動作容積部において磁石5及び6によって生成される磁場の電界強度B2は、以下の方程式(2)によって与えられ、C1及びC2はそれぞれ、それぞれの磁石の対の幾何学的形状、及び、距離D1又はD2にそれぞれ依存する幾何学的な形状因子を示す。Br1は、磁石3及び4によって生成される磁場の温度依存因子を示し、Br2は、磁石5及び6によって生成される磁場の温度依存因子を示す。方程式(2)におけるマイナスの符号は、磁石5及び6の磁化方向が、磁石3及び4の磁化方向とは反対であることから生じる。
【0028】
【0029】
【0030】
Br1及びBr2の温度依存性は、以下の方程式(3)によって与えられる。
【0031】
【0032】
図1において示されている校正ツール1の動作容積部における磁場の電界強度Bはしたがって、以下の方程式(4)によって与えられる。
【0033】
【0034】
全体的な磁場Bは、以下の方程式(5)が満たされる場合に、温度Tから独立する。
【0035】
【0036】
C1は、2D1である磁石3及び4間の距離に依存し、C2は、2D2である磁石5及び6間の距離に依存する。したがって、距離D1及びD2は、方程式(5)が満たされるように選択される。
【0037】
校正ツール1の動作容積部における磁場の電界強度Bは、例えばNMRテスラメータを用いて校正することができる。
【0038】
本発明の校正ツール1は、
図6及び
図7において示されているように、B
x=B
y=B
zで互いに対して完全に直交して延びる、3つの磁場成分B
x、B
y及びB
zを生成するように校正設定において使用することができる。校正設定は、校正ツール1、磁気センサのホルダ17、及び、ホルダ17に対して、したがって磁気センサに対して校正ツール1を正確に位置合わせする基準部材18を備える。ホルダ17は、校正手順中に磁気センサを定位置に保持する。基準部材18及び磁気センサのホルダ17は、一定の機械的な関係にあり、すなわち、ホルダ17及び基準部材18は、同じベース又は装置、例えば磁場マッパに固定される。基準部材18は基準壁19を含む。校正ツール1は、基準部材18に又は基準部材18上に、その側壁(又は、それぞれ以下で更に示すように位置合わせ平面)のうちの1つが基準壁19に接触するように配置される。ホルダ17は、ホルダ17が校正ツール1の穴8のうちの1つに突出することで、磁気センサが校正ツール1の動作容積部内に位置決めされるように、構成及び配置される。
【0039】
基準部材18は好ましくは、
図6において示されているように3D角部の形状である。3D角部は、互いに対しておよそ90°の向きである床20及び2つの側壁21を有し、その2つの側壁21のうちの一方が基準壁19である。3D角部は、校正ツール1を、その側壁(又は位置合わせ平面)のうちのいずれかが基準壁19に接触した状態で位置決めすることを容易にする。校正ツール1の付加的な別の側壁が3D角部の他の側壁に接触する場合、校正ツール1の動作容積部は常に同じ位置にある。
【0040】
校正ツール1及び基準部材18は、校正ツール1の90°の回転によって、動作容積部において、デカルト座標系の方向x、y、z、-x、-y及び-zのいずれかを向く磁場を生成すること、すなわち、互いに対して完全に直交して延びる磁場成分Bx、By及びBz、並びに、それぞれの成分Bx、By又はBzに対して完全に平行な-Bx、-By及び-Bzのうちの1つを生成することを可能にする。
【0041】
図1において示されている実施形態では、ハウジング2は、所望の程度の精度で互いに対して平行に及び直交して延びる6つの側壁を有する精密に機械加工されたハウジング2である。校正手順中に、校正ツール1の側壁のうちの1つは、基準部材18の基準壁19に接触する。したがって、この場合、6つの側壁は位置合わせ平面である。
【0042】
図8は、ハウジング2の側壁が精密に機械加工されず、位置合わせ平面として働くことができない、校正ツール1の更なる実施形態を示している。各側壁には、ねじ16がねじ留めされる3つのねじ穴が設けられる。ねじ16の端は側壁から突出し、端は、ねじ16の頭部又は先端部であるものとすることができる。ねじ16のそれぞれを対応するねじ穴に多かれ少なかれねじ留めすることによって、ねじ16のそれぞれの端の突出を、個々の程度まで調整することができる。ねじ16は、ねじ16の端が、互いに対して平行に又は直交してそれぞれ延びる6つの位置合わせ平面を画定するように、ねじ穴にねじ留めされる。基準直交性校正済み磁気センサを使用して、ねじ16の突出を調整することができる。1つの側壁のねじ16が次々に調整され、それによって、動作容積部において4つの側壁は磁場の方向に対して平行に延び、2つの側壁は直交して延びる。
【0043】
磁気センサの校正中に、校正ツール1の側壁のうちの1つのねじ16の端は、基準部材18の基準壁19に接触し、したがって、基準部材18の基準壁19において校正ツール1を完全に位置合わせする。
【0044】
この実施形態は、磁石3及び4又は磁石3~6によってそれぞれ生成される磁場の方向も、位置合わせ平面に対してそれぞれ平行に又は直交して延びるように、位置合わせ平面の調整も可能にする。
【0045】
図9は、1つの磁石23を有する校正ツール1の一実施形態を示している。磁石23は中空の円筒の形状を有する。ハウジング2及び磁石23の外側面は、互いから90°だけ変位される4つの対の穴8及び24を有し、センサ22がツール1の外側から動作容積部にアクセスすることを可能にする。分かりやすくするために、4つの穴の対のうちの1つのみが示されている。
【0046】
図10は、中空の円筒形の磁石23及び第2の同軸に配置される中空の円筒形の磁石25を有する校正ツール1の一実施形態を示している。2つの磁石23及び25の磁化方向は、それらのN極N及びS極Sの配置から分かるように、互いに対して反対である。磁石23及び25は、異なる温度係数を有する異なる材料から作られ、それらのサイズは、動作容積部において生成される全磁場Bが温度に依存しないように選択される。分かりやすくするために、校正ツール1のハウジングは示されていない。
【0047】
図11は、所定の数の磁石26、例えば、4若しくは6若しくは8の数、又は、いわゆるハルバッハ配列若しくはハルバッハ円筒を形成するように配置される任意の他の数の磁石26を有する校正ツール1の一実施形態を示している。分かりやすくするために、校正ツール1のハウジングは示されていない。磁石26は、穴を含むことができるか、又は、互いから所定の距離に配置されることができ、それによって、穴を通して又は磁石26間の隙間を通して動作容積部にアクセスすることができる。この実施形態の温度Tからの全磁場Bの独立は、動作容積部における元のハルバッハ配列の磁場及び付加的な磁石の付加的な磁場の強度の和の温度係数がゼロであるように、異なる温度係数を有する異なる材料から作られる第2の同軸に配置されるハルバッハ配列の磁石によって、又は、ハルバッハ配列の異なる温度係数を有する異なる材料の付加的な磁石を挿入することによって達成することができる。
【0048】
磁気センサの校正
磁気センサは、1つ、2つ又は3つの軸の磁気センサ、すなわち、1つ、2つ又は3つの軸に沿って延びる磁場成分(複数の場合もあり)に対応する1つ、2つ又は3つの出力信号を送る磁気センサであるものとすることができる。磁気センサの校正は、複数の異なる校正を必要とする:
【0049】
1.オフセット校正
オフセットを校正するために、磁気センサをゼロガウスチャンバに配置する。オフセットの温度依存性は、ゼロガウスチャンバを加熱又は冷却するとともに、磁気センサの温度及び出力信号(複数の場合もあり)を測定することによって求められる。
【0050】
2.感度の温度依存性の校正
磁気センサの感度の温度依存性を求めるために、磁気センサを校正ツール1の動作容積部に配置する。次に、磁気センサを加熱又は冷却することによって温度を変化させ、磁気センサの温度及び出力信号(複数の場合もあり)を異なる温度において測定する。
【0051】
3.感度ベクトルの校正
磁気センサの感度ベクトル校正は、以下のように行うことができる:
1.磁気センサ22をホルダ17に固定する。
2.校正ツール1を、基準部材18上の第1の回転位置に配置する。
磁場は、方向x、y、z、-x、-y及び-zのうちの1つに向く。
3.磁気センサ22の出力電圧(複数の場合もあり)を測定する。
4.校正ツール1を取り外し、位置合わせ平面のうちの1つが基準壁19に接触するように、基準部材18上の別の回転位置に配置する。
磁場はここで、方向x、y、z、-x、-y及び-zのいずれか1つに向く。
5.磁気センサ22の出力電圧(複数の場合もあり)を測定する。
【0052】
校正に必要な磁場の任意の更なる方向について、ステップ4及び5を繰り返す。
図12は、3軸磁気センサのこの校正手順を示している。校正ツール1の異なる回転位置における磁気センサ22の出力信号、及び、校正ツール1の動作容積部における磁場の強度Bが、感度マトリックスSを計算する計算ユニット28に送られる。矢印27は、校正ツール1をステップ4において1つの位置から別の位置に回転させる方法を示している。
【0053】
基準部材18及び校正ツール1は、3つの直交する軸x、y及びzを有するデカルト座標系を画定する。
【0054】
校正の結果は、感度マトリックスSであり、これは、1軸磁気センサに関して、寸法1×3、すなわち以下の数式6を有し、2軸磁気センサに関して、寸法2×3、すなわち以下の数式7を有し、3軸磁気センサに関して、寸法3×3、すなわち以下の数式8を有する。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
校正が完了すると、校正された磁気センサを使用して、磁場の1つ、2つ又は3つの成分を求めることができる。1軸磁気センサの場合、センサは、3つの相互に直交する向きで位置決めされなければならず、測定は、3つの向きOA、OB及びOCのそれぞれにおいて行われなければならない。次に、磁場の成分Bx、By及びBzを、3つの方程式の系から計算することができる。方程式の系は、選択される向きに依存し、例えば、以下の数式9であるものとすることができ、式中、UAは、第1の向きOAにおける1軸磁気センサの出力信号であり、UBは、第2の向きOBにおける1軸磁気センサの出力信号であり、UCは、第3の向きOCにおける1軸磁気センサの出力信号である。量Sx1、Sy1及びSz1は校正から既知である。
【0059】
【0060】
2軸磁気センサの場合、相互に直交する磁気センサの2つの異なる向きOA及びOBは、3つの未知の成分Bx、By及びBzを有する3つの方程式の系を解くのに十分である。
【0061】
例えば、選択される向きに依存して、式の系は以下の数式10であるものとすることができ、式中、UxAは、第1の向きOAにおけるXチャネル(2軸磁気センサの第1の軸)の出力信号であり、UyAは、第1の向きOAにおけるYチャネル(2軸磁気センサの第2の軸)の出力信号であり、UXBは、第2の向きOBにおけるXチャネル(2軸磁気センサの第1の軸)の出力電圧であり、Sx1、Sx2、Sy1、Sy2、Sz1及びSz2は校正から既知である。他の向きを選択する場合、3つの方程式の系は異なる。方程式の上記系から、磁場成分Bx、By及びBzを計算することができる。
【0062】
【0063】
3軸磁気センサの場合、磁場成分Bx、By及びBzを以下の数式11のように計算することができ、式中、Ux、Uy及びUzは、3軸磁気センサの出力電圧であり、S-1は、マトリックスSの逆マトリックスを示す。
【0064】
【0065】
本発明の校正設定は以下の利点を提供する:
-校正ツール1は、所定の動作容積部において所定の電界強度を有する均質な磁場を生成する。
-校正ツール1は、互いに対して平行に又は直交して延びる方向である、磁気センサの位置において異なる方向を向く磁場を生成するように回転することができる。
-生成された磁場の電界強度は、温度変化とは独立する。
【0066】
本発明の実施形態及び用途を示し記載したが、本開示の恩恵を有する当業者には、本明細書における発明の概念から逸脱することなく、上記で述べたものよりもより多くの変更形態が可能であることが明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の主旨及びそれらの均等物における以外は、限定されるべきではない。