(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】高圧放電ランプ
(51)【国際特許分類】
H01J 61/56 20060101AFI20220509BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220509BHJP
H05B 47/20 20200101ALI20220509BHJP
H05B 41/14 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
H01J61/56 B
G03F7/20 501
H05B47/20
H05B41/14
(21)【出願番号】P 2018032217
(22)【出願日】2018-02-26
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 洋徳
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-217336(JP,A)
【文献】特開昭56-167256(JP,A)
【文献】特開2010-198972(JP,A)
【文献】特開2001-307680(JP,A)
【文献】特開2004-006360(JP,A)
【文献】特開平07-014552(JP,A)
【文献】米国特許第06536918(US,B1)
【文献】国際公開第2018/186371(WO,A1)
【文献】特開平9-172145(JP,A)
【文献】特開2001-77310(JP,A)
【文献】特開2014-157671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/56
G03F 7/20
H05B 47/20
H05B 41/00
H05B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源となる発光管と、放物面状の反射面を有し前記発光管から出射された光を反射するリフレクタと、前記発光管及び前記リフレクタが固定された碍子と、を備える高圧放電ランプであって、
少なくとも1つ以上の抵抗体が直列接続された複数の抵抗体列が並列接続されてなり、前記各抵抗体列の合成抵抗値がそれぞれ異なる抵抗体ユニットを
さらに備え
、
前記抵抗体ユニットに電力を供給する電源の電流又は電圧を変えることで、前記抵抗体ユニット中の抵抗体が選択的に溶断されることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
全ての前記抵抗体の抵抗値は同じであり、
前記各抵抗体列の前記抵抗体の個数は、前記抵抗体列ごとにそれぞれ異なることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
前記抵抗体ユニットの抵抗値に基づいて前記高圧放電ランプの履歴を管理可能とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の高圧放電ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電ランプに関し、より詳細には、露光装置の多灯の光源部を構成する高圧放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイ装置のカラーフィルタや、プリント配線基板を製造する際に使用される露光装置では、露光領域の拡大が求められていることから、光源部の出力も高めることが求められている。このため、製造コストなどで有利な、比較的低照度の高圧放電ランプを複数用いて、光源部を構成するようにしたものが種々知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の光源装置では、ランプの碍子内に埋め込まれた抵抗体(白熱灯)の抵抗値を測定し、予め測定しておいた基準抵抗値と比較することにより、ランプが正規品であるか否かを判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の放電ランプは、同じ照度を維持するため、点灯時間に伴って印加電圧を大きくする必要がある。また、複数のランプが1つのフレームに固定されて使用される場合、各ランプの照度が異なると、照度バランスが均一でなくなり、露光結果に影響を及ぼす虞がある。このため、純正ランプ、未使用ランプ、使用済みランプ、などのランプごとの履歴で管理することが要望される。
【0006】
また、特許文献1によれば、正規品と非正規品とを判別することはできるものの、使用済み品か否か、使用済み品の場合は累積点灯時間を判別することができず、ランプの状態を詳細に知ることが望まれる。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ランプの状態をより詳細に管理可能な高圧放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 光源となる発光管と、放物面状の反射面を有し前記発光管から出射された光を反射するリフレクタと、前記発光管及び前記リフレクタが固定された碍子と、を備える高圧放電ランプであって、
少なくとも1つ以上の抵抗体が直列接続された複数の抵抗体列が並列接続されてなり、前記各抵抗体列の合成抵抗値がそれぞれ異なる抵抗体ユニットを備えることを特徴とする高圧放電ランプ。
(2) 全ての前記抵抗体の抵抗値は同じであり、
前記各抵抗体列の前記抵抗体の個数は、前記抵抗体列ごとにそれぞれ異なることを特徴とする(1)に記載の高圧放電ランプ。
(3) 前記抵抗体ユニットの抵抗値に基づいて前記高圧放電ランプの履歴を管理可能とすることを特徴とする(1)又は(2)に記載の高圧放電ランプ。
なお、本発明において、「少なくとも1つ以上の抵抗体が直列接続された」抵抗体列とは、抵抗体列に1つの抵抗体が接続される場合も含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高圧放電ランプによれば、少なくとも1つ以上の抵抗体が直列接続された複数の抵抗体列が並列接続されてなり、前記各抵抗体列の合成抵抗値がそれぞれ異なる抵抗体ユニットを備えるようにしたので、抵抗体ユニットの合成抵抗値を測定することで、ランプが新品か否か、累積点灯時間などの履歴を詳細に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る高圧放電ランプの斜視図である。
【
図3】
図1に示す高圧放電ランプに組み込まれた抵抗体ユニットの回路図である。
【
図4】本実施形態の高圧放電ランプがランプホルダに取り付けられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る高圧放電ランプの一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び
図2に示すように、高圧放電ランプ10は、放電して光を発光するガラス製の発光管20と、発光管20からの光に指向性を持たせて出射するリフレクタ30と、発光管20とリフレクタ30とをそれぞれ固定する碍子40と、を主に備える。
【0012】
発光管20は、一対の電極21,22が対向して配置される楕円体状の発光管部23と、該発光管部23の両端部に連接され、一対の電極21,22の長手方向に沿って延びる一対の側管部24,25と、を有する。発光管部23の内部空間内には、ハロゲンガス、水銀、始動用アルゴン等が封入されている。
【0013】
発光管20は、一方の側管部24内に延びる一方の電極21をアノード(陽極)とし、他方の側管部25内に延びる他方の電極22をカソード(陰極)としている。一方の側管部24の先端部、及び他方の側管部25の基端部から延びる電線は、一対のワイヤ26,27にそれぞれ接続されて外部から電力が供給される。なお、一方の側管部24の電極21と接続されたワイヤ26は、リフレクタ30に取り付けられた受け台34を介して外部に導出される。
【0014】
リフレクタ30は、一方の側管部24が突出する開口部31と、放物面状の反射面32と、他方の側管部25が隙間を持って挿入可能な挿入孔33と、を有し、椀状に形成されている。リフレクタ30の放物面状の反射面32の焦点近傍には、発光管部23が配置されて発光管部23から発光する光を略平行光線として出射する。
【0015】
碍子40は、ベース部41とカバー部42とを備える。リフレクタ30は、椀状の底部にベース部41を被せ、その接合部を接着剤で固着している。また、ベース部41の筒状の中央部分は、他方の側管部25の基端側部分を保持する保持部43を備え、他方の側管部25が、保持部43で碍子40と接着剤で固定される。
【0016】
したがって、リフレクタ30及び発光管20の他方の側管部25は、碍子40にそれぞれ固定されている。また、リフレクタ30と発光管20とは接着されておらず、他方の側管部25とリフレクタ30の挿入孔33との間の隙間は、空間sを形成する。
【0017】
碍子40のベース部41は、他方の側管部25とリフレクタ30の挿入孔33との間の空間sと外部とを連通すると共に、他方の側管部25を外部に開放した2つの開放部44を有する(
図1参照)。ベース部41とカバー部42で画成された内部空間45には、後述する抵抗体ユニット50が収容されている。
【0018】
図4に示すように、このように構成された高圧放電ランプ10は、縦方向及び横方向に複数ずつ、ランプホルダ80に装着されることで、露光装置用の光源部として適用される。また、図示しない排気装置により、ランプホルダ80の背面側のエアを排気することで、ランプホルダ80の前面側からのエアを、各高圧放電ランプ10の空間sを冷却路として高圧放電ランプ10に取り込むことで、各高圧放電ランプ10を冷却することができる。なお、ランプホルダ80の背面側は、不図示のランプ押さえカバーと協働して密閉空間を構成し、該密閉空間からエアを排気するようにしてもよい。
【0019】
図3に示すように、抵抗体ユニット50は、並列接続されたi列(i=1,2,3・・n)の抵抗体列60と、電源部70とを備える。また、i列の抵抗体列60は、直列接続されたj個(j=1,2,3・・m)の抵抗体Rijから構成されている。
【0020】
例えば、n=m=4の場合、
図3に示すように、抵抗体ユニット50は、電源部70に接続されたワイヤ51,52と連結されて並列接続された4列の抵抗体列61,62,63,64を備える。第1の抵抗体列61は、1つの抵抗体R11を有し、第2の抵抗体列62は、直列接続された2つの抵抗体R21、R22を有し、第3の抵抗体列63は、直列接続された3つの抵抗体R31、R32、R33を有し、第4の抵抗体列64は、直列接続された4つの抵抗体R41、R42、R43、R44を有する。そして、各抵抗体列61,62,63,64の合成抵抗値Riは、抵抗体列61,62,63,64ごとに異なるものとする。
【0021】
抵抗体Rij(R11~R44)としては、電源部70から電力が供給されたとき、電気エネルギを消費するものであればよく、金属皮膜抵抗、炭素抵抗、金属ワイヤ、熱電対、バイメタル、ヒューズなどの抵抗器、ニクロム線、タングステン線、ランプのフィラメントなどが使用可能である。
【0022】
これにより、高圧放電ランプ10の新品・中古の判断や、累積点灯時間などの履歴は、抵抗体ユニット50の合成抵抗値を測定することで認識可能とされる。例えば、累積点灯時間が所定の時間に達したとき、抵抗体ユニット50に流す電流を所定の電流値に上昇させて任意の抵抗体Rijを溶断させるようにし、累積点灯時間と、抵抗体ユニット50の合成抵抗値とを対応付けることで、高圧放電ランプ10の累積点灯時間の履歴を記憶させて管理可能とする。また、高圧放電ランプ10を最初に使用する際に、抵抗体ユニット50に流す電流を所定の電流値に上昇させて任意の抵抗体Rijを溶断させるようにすれば、抵抗体ユニット50の合成抵抗値を測定することで、新品と中古の判断も容易に行うことができる。
【0023】
以下にその作用について説明する。
i列の抵抗体列60の合成抵抗値Riは、
として表される。
【0024】
説明を簡単にするため、各抵抗体列60の合成抵抗値Riがすべて等しい(Ri=R)とすると、抵抗体ユニット50の回路を流れる全電流Ioは、
となる。但し、Vは電源部70の電圧であり、rは電源部70の内部抵抗値である。
【0025】
従って、
図3に示すように、各抵抗体列60(61,62,63,64)に流れる電流値は、Io/nとなるので、このとき各抵抗体列60(61,62,63,64)に発生するジュール熱Piは、Pi=R(Io/n)
2となる。
【0026】
そして、累積点灯時間が所定の時間に達したとき、抵抗体ユニット50に流す電流を上昇させて発生するジュール熱Piが周囲への放熱量νを超えると、抵抗体Rijの温度が上昇して最終的には溶断する。例えば、抵抗値Rの抵抗体Rijが1つ(m=1)の抵抗体列60(
図3では抵抗体列61)が、電流Icで溶け始めるとすると、RIc
2≒νが成立する。
【0027】
このとき、他の抵抗体列60(
図3では抵抗体列62,63,64)の抵抗体Rijの数がm個(m>1)とすると、各抵抗体Rijが発するジュール熱Piは、
Pi=R(Io/n)
2/mとなり、他の抵抗体列60(62,63,64)の抵抗体Rijが溶断することはない。
【0028】
更に、例えば、次の所定の累積点灯時間に達したとき、上記と同様に抵抗体ユニット50に流す電流をさらに上昇させると、発生するジュール熱Piが大きな抵抗体Rijから順に溶断する。
【0029】
抵抗体ユニット50に流す電流値を上げるタイミングは、所定の累積点灯時間に達したときに手動で行ってもよく、或いは、不図示の制御装置により所定の累積点灯時間に到達するごとに電流値を上げるようにしてもよい。また、電流値を上げるタイミングは、累積点灯時間以外の管理値であってもよい。
【0030】
従って、抵抗体ユニット50の合成抵抗値を測定することで、溶断している抵抗体Rijを知ることができ、高圧放電ランプ10の新品・中古の判別や累積点灯時間などの履歴を確認することができる。
【0031】
(実施例)
全ての抵抗体Rijの抵抗値が同じであり、且つ抵抗体Rijの個数が抵抗体列60(61,62,63,64)ごとに異なる場合、具体的には、
図3に示すように、抵抗体Rijの抵抗値Rが全て同じ(Rij=R)であり、n=m=4の抵抗体ユニット50の場合、抵抗体ユニット50の合成抵抗値Rtは、
であるからRt=12R/25 となり、抵抗体ユニット50の回路を流れる全電流Ioは、
となる。
【0032】
このとき、各抵抗体列61,62,63,64に流れる電流値と発生するジュール熱は、表1のようになる。
【0033】
【0034】
表1から分かるように、第1の抵抗体列61に一番多くの電流が流れるので、電流値を上げていくと、最初に第1の抵抗体列61のR11が溶断する。
【0035】
また、第1の抵抗体列61のR11が溶断した後、残りの抵抗体列60(62,63,64)に流れる電流値と発生するジュール熱は、表2のようになる。第1の抵抗体列61のR11が溶断した後、さらに電流値をあげていくと、多くの電流が流れる第2の抵抗体列62のR21又はR22のいずれかが溶断する。
【0036】
【0037】
同様の操作を繰り返し行うことにより、各抵抗体列61,62,63,64の抵抗体Rijを順次溶断することが可能となり、これにより抵抗体ユニット50の合成抵抗値Rtが変化する。
【0038】
即ち、抵抗体ユニット50の合成抵抗値Rtを測定することで、各高圧放電ランプ10の状態を知ることができる。例えば、新品の高圧放電ランプ10か否かを判別することができ、新品の高圧放電ランプ10の抵抗体ユニット50の合成抵抗値Rtを測定する場合には、純正品か否かを判別することができ、また、使用済み高圧放電ランプ10の抵抗体ユニット50の合成抵抗値Rtを測定する場合には、該高圧放電ランプ10の概略累積点灯時間を知ることができる。
【0039】
従って、
図4に示すように、複数の高圧放電ランプ10をランプホルダ60に装着して露光装置用の光源部とする場合、各高圧放電ランプ10の抵抗体ユニット50の合成抵抗値Rtを測定し、新品か否かを判別し、或いは使用済みの高圧放電ランプ10を使用する際には、累積点灯時間に応じて、所定の照度になるように印加電圧を制御することで、各高圧放電ランプ10の照度バランスを均一にでき、良好な露光結果が得られる。また、同様の履歴を有する高圧放電ランプ10同士を組み合わせて装着すれば、高圧放電ランプ10の印加電圧を容易に制御することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の高圧放電ランプ10によれば、少なくとも1つ以上の抵抗体Rijが直列接続された複数の抵抗体列60(61,62,63,64)が並列接続されてなり、各抵抗体列60(61,62,63,64)の合成抵抗値Riがそれぞれ異なる抵抗体ユニット50を備えるようにしたので、抵抗体ユニット50の合成抵抗値Rtを測定することで、ランプが新品か否か、或いは累積点灯時間などのランプの状態を詳細に知ることができる。
【0041】
また、全ての抵抗体Rijの抵抗値Rは同じであり、各抵抗体列60(61,62,63,64)の抵抗体Rijの個数は、抵抗体列60(61,62,63,64)ごとにそれぞれ異なるので、電流を徐々に上げたときに抵抗体Rijが順次溶断する抵抗体ユニット50を容易に製作できる。
【0042】
また、抵抗体ユニット50の合成抵抗値Rtに基づいて高圧放電ランプ10の履歴を管理可能としたので、該高圧放電ランプ10を備える照明装置の信頼性が向上する。
【0043】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、抵抗体Rijは、高圧放電ランプ10の碍子40内部にあっても良いし、抵抗体ユニット50に電力を供給するワイヤ51,52と外部との電気的接触を図る、図示していないコネクタ部に接続されていても良い。この場合も、抵抗体Rijは、高圧放電ランプ10の一対の電極21,22に電力を供給する一対のワイヤ26,27とは別系統の電源部に接続されている必要がある。
【0044】
また、上記実施形態では、電流制御により任意の抵抗体Rijを溶断するように説明したが、電圧制御により任意の抵抗体Rijを溶断するようにしても同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0045】
10 高圧放電ランプ
20 発光管
30 リフレクタ
32 反射面
40 碍子
50 抵抗体ユニット
60,61,62,63,64 抵抗体列
R 抵抗体の抵抗値
Rij,R11~R44 抵抗体
Ri 抵抗体列の合成抵抗値
Rt 抵抗体ユニットの合成抵抗値