IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インターオリゴ・コーポレイションの特許一覧

特許7067802アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途
<>
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図1
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図2
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図3
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図4
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図5
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図6
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図7
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図8
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図9
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図10
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図11
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図12
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図13
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図14
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図15
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図16
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図17
  • 特許-アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】アプタマー-薬物コンジュゲート及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/56 20170101AFI20220509BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20220509BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20220509BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
A61K47/56 ZNA
A61K38/08
A61K31/7068
A61K31/704
A61K31/4745
A61K38/12
A61K31/495
A61K31/551
A61K31/702
A61P35/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019555545
(86)(22)【出願日】2017-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 KR2017014060
(87)【国際公開番号】W WO2018124512
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-11-06
(31)【優先権主張番号】10-2016-0179111
(32)【優先日】2016-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519232334
【氏名又は名称】インターオリゴ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INTEROLIGO CORPORATION
【住所又は居所原語表記】(PYEONGCHON STATION HIFIELD, GWANYANG-DONG) #907, F, A-DONG, 66, BEOLMAL-RO, DONGAN-GU, ANAYANG-SI, GYEONGGI‐DO, 14058, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジュン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジョン・フン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン・イン
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0213636(US,A1)
【文献】特開平03-086897(JP,A)
【文献】特表2002-538080(JP,A)
【文献】特表2006-518753(JP,A)
【文献】国際公開第2015/184224(WO,A1)
【文献】特表2014-514329(JP,A)
【文献】J. Biomed. Biotechnol. (2010), Vol. 2010, Article ID 168306
【文献】PLoS ONE (2015), 10(11), e0136673
【文献】Int. J. Mol. Sci. (2015), 16, p.23784-23822
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 38/00-38/58
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物-リンカー-AS1411の構造を含み、
前記薬物は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、シタラビン、ゲムシタビン、メイタンシン、下記化学式1で表されるDM1、下記化学式2で表されるDM4、カリケアミシン、アシル化されたカリケアミシン、ドキソルビシン、デュオカルマイシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、下記化学式3で表されるSN-38またはα-アマニチンであり、
前記リンカーは、X-Yで構成され、前記Yは、マレイミドカプロイル-バリン‐シトルリン-p-アミノベンゾイルオキシカルボニル(MC-Val-Cit-PAB)、マレイミドカプロイル-グリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン(MC-Gly-Phe-Leu-Gly)、ヒドラゾン、ジスルフィド、チオエーテル、バリン‐シトルリン、N-マレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシレート(MCC)、マレイミドカプロイル、メルカプトアセトアミドカプロイル、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)またはN-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPDB)であり、前記Xは、5’-チオール-改質剤C6、チオール-改質剤C6 S-S、ジチオールセリノール、PCアミノ-改質剤、5’-アミノ-改質剤C3、5’-アミノ-改質剤C6、5’-アミノ-改質剤C12、アミノ-改質剤C2 dT、アミノ-改質剤C6 dTS-Bz-チオール-改質剤C6-dTまたは下記化学式4で表される化合物であり、前記XがAS1411と結合し、前記Yが薬物と結合し、
前記リンカーは、AS1411の12または13の位置、若しくは12と13の位置の両方に連結され、
前記AS1411は、配列番号1の塩基配列で前記リンカーと連結される部位がウラシルに置換された配列からなることを特徴とする、がん標的治療剤。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【請求項2】
前記薬物は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、および、シタラビンから選択されることを特徴とする、請求項1に記載のがん標的治療剤。
【請求項3】
前記Yは、マレイミドカプロイル-バリン‐シトルリン-p-アミノベンゾイルキシカルボニル(MC-Val-Cit-PAB)またはマレイミドカプロイル-グリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン(MC-Gly-Phe-Leu-Gly)であり、前記Xは、下記化学式4で表される化合物であり、前記Yは、マレイミドカプロイル側がと結合し、その他側が薬物と結合することを特徴とする、請求項1に記載のがん標的治療剤。
【化5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的がん治療のための[抗-ヌクレオリン GRO アプタマー]-毒素コンジュゲート([Anti-Nucleolin GRO Aptamer]-Toxin Conjugate)及びその合成に関する。特に、本発明は、それらのin vitro/vivo効能を検証したものであり、がんの治療に優れた効果を示す[抗-ヌクレオリンアプタマー]-毒素コンジュゲート([Anti-Nucleolin Aptamer]- Toxin Conjugate)の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
今まで抗がん剤をはじめとする数多くの治療剤が開発されて臨床を経て薬として開発されたが、標的抗がん剤のように、治療効果のある物質を目的の発症部位まで選択的かつ効果的に伝達することに関する分野は、更なる研究を必要とする新しい分野である。抗がん剤(anticancer drugs)は、臨床治療の効果を得るために、一般的に最大耐用量(maximum tolerated dose)の近くで使用されるが、急速に増殖する細胞を殺すだけで、正常細胞と腫瘍細胞又は腫瘍組織とを区別することができない。この化学療法(chemotherapy)は、非-腫瘍特異的(non-tumor specific)全身毒性(systemic toxicity)と細胞毒性のため、抗がん剤の治療指数(therapeutic index)と治療濃度域(therapeutic window)が非常に低い欠点を持っている。また、長期治療の際、抗がん剤に対する耐性ができてしまうことがあるため、細胞毒性薬物をがん細胞のみに正確に伝達して死滅させる、向上した新しい治療法が切実に求められている。
【0003】
過去30年間、薬物をターゲットに効率よく送ることで薬効を高めようとする試みが数多く行われたが、従来の抗体(naked antibody)よりも効能を向上させるために、抗体と薬物を結合した抗体-薬物コンジュゲート(Antibody-Drug Conjugate)(ADC)の臨床への試みが成功可能性が高いと考えられる。ADC(抗体-薬物コンジュゲート)は、最近、Seattle Genetics社とImunog社で臨床第3相を成功的に終えて、FDAの許可を受けて市場に出市し、新しい治療剤の章を開いたと言える。しかし、抗体は、巨大タンパク質で構成されているため、薬物(drug)をつける位置、ついた薬物(drug)の数(1~6個、平均3.5個)及びつく位置など、QCにおいて多くの問題点を有する。抗体と比較できる標的指向性を有するアプタマーとその治療剤との結合体(アプタマー-薬物コンジュゲート(Aptamer-Drug Conjugate)の開発は、化学的な反応が容易で、治療剤の数及びつける位置を自由に調節可能である利点がある。このため、抗体に対するアプタマーの優位性を組み合わせることで、臨床成功の可能性を高めることができると考えられる。
【0004】
アプタマー-薬物コンジュゲート(Aptamer-Drug Conjugates:ApDCs)は、強い毒性のため実際の臨床での使用が難しかった薬物を、標的指向的なアプタマーを薬物(Drug)につけてがん細胞のみに正確に伝達させることにより、副作用なしで治療効果を最大化できると期待される。
【0005】
下記のように今まで開発されたADC技術(抗体-薬物コンジュゲート技術(Antibody-Drug Conjugate Technology))を分析したところ、抗体を薬物に結合させることの技術的な難しさと欠点を知ることができた。アプタマー(aptamer)により、より容易にかつより効率よくアプタマーが結合した治療剤の開発が可能であったので、標的抗がん剤として治療に適用しようとする。
【0006】
ADC技術(Antibody-Drug Conjugate Technology)
ADCは、抗体の利点(特異性(specificity)、循環中での非毒性(non-toxicity in circulation)、および薬物動態(pharmacokinetics))を最大に活用して、薬物が具体的にがん細胞のみをターゲティングすることに焦点を合わせたテクノロジーである。ADCは、単クローン抗体薬物、そして抗体と薬物を連結するリンカー(linker)を含む3つの構成要素で構成されており、ADCテクノロジーは、がん細胞の表面に発現された特定の抗原に特異的に結合する抗体を使用して薬物を腫瘍細胞に伝達する方法である。
【0007】
ほとんどのADCは、ターゲットに特異的に結合する抗体がターゲットに結合(binding)することにより細胞内に入る。細胞内へ移動したADCは、ターゲットから離れて細胞内の他の小胞(vesicles)と融合し、エンドソーム(endosome)-リソソーム(lysosome)の経路で進行する。次いで、エンドソーム(endosomes)の酸性環境にあるプロテアーゼ(proteases)がリンカーを切断し、活性化(active)された「遊離(free)」薬物は、リソソーム膜(lysosomal membrane)を通過して細胞質(cytoplasm)に移動した後、薬物の分子(molecular)ターゲットに結合することにより、腫瘍細胞の細胞周期が停止され、アポトーシス(apoptosis)によりがん細胞が死滅することになる。この中で、一定量の薬物は、細胞で受動的に拡散するか(passive diffusion)、能動的に輸送されるか(active transport)、または死んだ細胞を通じて細胞外に流出される。このとき、流出した薬物が細胞膜透過性を有していれば、周辺の細胞にも入り込み、いわゆるバイスタンダー細胞死(by-stander cell killing)という現象が起き、患者に副作用を発生させることがある。
【0008】
ADC開発の難しさ(QC)
ADC(Antibody-Drug Conjugate)の開発は、1980年から始まったが、実際の臨床に適用するにあたり、臨床のための安定したリンカーの開発のほか、ADC合成プロセスにおけるQCが簡単ではない問題を有している。つまり、抗体(antibody)(huJ591)にDM1(薬物(drug))を結合するとき、1つの抗体(antibody)(huj591)にDM1薬物(drug)が1~7個までついた混合物が得られると、その分離/精製ができず、平均3.5個のDM1薬物(drug)が結合したADCを臨床で使用する。
【0009】
また、抗体(antibody)(Tmab)は、薬物(drug)(DM1)を付けることができるリジン(lysine)が88個もある。88個のリジン(lysine)の中で、平均3.5個の薬物(drug)(DM1)がどの位置のリジン(lysine)につくのかコンジュゲーション部位(conjugation site)を究明する方法は容易ではない。つまり、コンジュゲーション部位(conjugation site)を調べるために、トリプシン消化(trypsin digestion)およびAsp-N プロテアーゼ消化(Asp-N protease digestion)を行い、それらのフラグメント(fragment)をESI-TOFMSで分析した結果を比較することにより、薬物(Drug)(DM1)がコンジュゲーション(conjugation)される位置をある程度決定することができる。
【0010】
また、ADCの製造において、毎生産バッチ別抗体につく薬物(Drug)の平均組成が変わるため、QCが困難である。つまり、抗体(juJ591)にDOTAをつけた後のMALDI-TOF MS spectraにおいて、バッチ(batch)Aでは5.0個、バッチ(batch)Bでは8.9個のDOTAがつくことを確認することができる。他のバッチ(batch)では、6.0及び6.2個のDOTAがつく。以上のように、ADC(Antibody-Drug Conjugate)の合成は、抗体(antibody)自体の特性上、薬物(Drug)を結合する過程での正確なQCの難しさなどの改善すべき多くの問題を内包しており、ADCプロセスでそれを解決するために研究を行っている。
【0011】
ADC(Antibody-Drug Conjugate)の限界:
抗体(antibody)がターゲット指向的に結合した薬物(drug)をガン細胞まで到達させて薬物(drug)による治療効果を示すが、抗体(antibody)に結合してがん細胞に到達する薬物(drug)はわずか2%以下に過ぎない、非常に低い効率を示すことが問題である。これを解決するために、ドキソルビシン(Doxorubicine)のような臨床許可を受けた安全な抗がん剤は、安定な代わりに薬効が低いため、100~1,000倍以上の高い毒性を有する高毒物(highly toxic agents)を抗体に結合する薬物(drug)として選択する。
【0012】
アプタマー(aptamer)
アプタマー(aptamer)は、抗体(antibody)と類似した性質で、がんなどの病気を引き起こすバイオマーク(biomark)に非常に選択的に結合することにより、診断や標的治療が可能なDNAまたはRNAオリゴヌクレオチド(oligonucleotide)である。つまり、アプタマー(aptamer)は、標的物質によってユニークな3次元構造(3-dimensional structures)を有し、この3次元構造がタンパク質タグ(がん誘発タンパク質、バイオマーク)に非常に選択的に強く結合して、標的治療、カスタム診断またはミサイル療法を可能にする新しいBio-capturing物質である。
【0013】
アプタマー(aptamer)と抗体(antibody)との比較
標的治療剤として最も成功したものは抗体であり、現在30種の抗体標的治療剤がFDAの承認を受けて市販されており、300種余りが臨床段階を進行中である。しかし、その開発コストが非常に高く、飽和状態であるため、先進製薬会社は既に新しい治療剤の開発に転換している。
【0014】
抗体(antibody)は、タンパク質(protein)からなっていて、生体内で生成しなければならないなどの困難がまだある。これに対し、アプタマーは、試験管で抗体よりも早くリード化合物(lead compound)を発掘し、合成および変形が容易であるため、「化学抗体(chemical antibody)」と呼ばれる新しいbio-capturing reagentとして期待を集めている。
【0015】
アプタマー治療剤の開発傾向
2006年、Eyetech社で最初のアプタマー治療剤であるMacugenを、FDAの許可を受けてPfizerにライセンスして市販を開始した。Macugenは、老眼による失明の原因となる黄斑変性(AMD、Age-related Macular Degeneration)の治療剤であり、VEGF(血管内皮成長因子)による異常な血管の成長を、VEGF(血管内皮成長因子)を抑制することで治療効果を示す。その後、アプタマーの治療剤としての可能性が高まり、Merck Serono、Takeda、Pfizer、Elan、Eli Lilly、GlaxoSmithKline、Ribomicなどがアプタマーの新薬開発に挑み、現在、約10種のアプタマーが臨床中である。
【0016】
アプタマーは、「化学的抗体(chemically antibody)」と呼ばれるほど抗体に比べて高いターゲット結合力および選択性を有し、生物学的な方法で生産する抗体に比べて化学合成的な方法で生産するため、薬物(drug)をつけることがより効率的であり、QCが非常に簡単である利点を有する。抗体の低いターゲット到達率をアプタマーにより解決することができれば、従来のADC(Antibody-Drug Conjugate)の低い効率性を克服できると考えられる。
【0017】
アプタマー-薬物コンジュゲート(Aptamer-Drug Conjugate)もまた、新たな治療剤としての可能性が期待されるが、治療剤として開発するための研究はまだ初期段階にある。最近、フロリダ大学のWeihong Tangroupでアプタマー(aptamer)(Sgc8c)にドキソルビシン(Doxorubicin)(Dox)抗がん剤を結合したアプタマー-薬物コンジュゲート(Aptamer-Drug Conjugate)(Sgc8c-Doxコンジュゲート)を作成してDoxorubicinと抗がん効果を比較したが、ほとんど差がなかった。Sgc8c-Doxコンジュゲートを合成するにおいて、naked aptamerであるSgc8cとの分離/精製が難しくて高純度のSgc8c-Doxコンジュゲートが得られず、Sgc8c-Doxコンジュゲート及びドキソルビシンのいずれも類似した細胞毒性効果(20%)を示した。
【0018】
GROアプタマー
GRO(Guanine-Rich Oligonucleotide)アプタマー(Aptamer)は、199年Louisville大学のPaula J. Bates教授が最初に合成して、がん患者に多く発現されるヌクレオリンタンパク質に特異的に結合するメカニズムを明らかにすることにより、抗がん剤治療剤の開発可能性を提示した。現在、GROアプタマーの一つとして、Antisoma社(英)でAS1411というコードの腎臓および非小細胞がん(AML)治療剤を開発中であり、非小細胞がん(AML)に対しては最近、臨床第2相を終えた。
【0019】
一般的に、アプタマーは、生体内で非常に不安定であるため、ヌクレアーゼ耐性(nuclease residence)を高めたり、生体内での循環時間(circulation time)を高めるために、アプタマーの3’位置にidT(invert dT)を5’位置にPEGylationしたアプタマー製剤(PEG-aptamer-idT)を臨床で使用する。
【0020】
GROアプタマーは、G-quardruplexというユニークな構造をなして非常に安定しており、がん細胞に多く発現されるヌクレオリンに特異的に結合する。つまり、GROアプタマーは、核(nucleus)、細胞質(cytoplasma)、および、膜(membrane)にあるヌクレオリンの分子間相互作用(molecular interactions)と機能(function)を妨げることでヌクレオリンの発現を抑制して、抗増殖効果(antiproliferative effect)により腫瘍抑制タンパク質であるp53の発現を促進させることにより、がん細胞の壊死を誘発する。
【0021】
AS1411は、現在、(英)Antisoma社で非小細胞がんと腎臓がんに対する臨床第2相を終え、臨床第3相の開始を目前に控えているGRO アプタマー(aptamer)であり、ほぼすべての癌で発現されるヌクレオリンに特異的に結合して、様々な癌に対する抗がん効果を持っている非常に安定したアプタマーである。
【0022】
従来の研究の問題点および展望:現在、Antisoma(英)で抗-ヌクレオリンアプタマー(aptamer)薬物として開発中であるAS1411は、ggtggtggtggttgtggtggtggtg塩基配列を有するGRO DNAアプタマー(aptamer)である。現在、腎臓および非小細胞肺がんの治療剤として臨床第2相を成功的に終えたが、薬効検証での不確実性によりAntisoma(英)が非小細胞がんに対して臨床第3相を進行せず、Advanced Cancer Therapeutics Inc.に移転して、ACT-GRO-777(renamed AS1411)として臨床第3相を準備中である。
【0023】
現在開発されて臨床に使用しているGROアプタマー(aptamer)をはじめとするオリゴ薬物は、生体内で血漿に大量存在するヌクレアーゼ(nuclease)分解酵素により非常に急速に分解される。特に注射による治療剤の場合は、化学的に安定な処理が行われない場合に、より急速に破壊されることが知られている。この分解速度を調節するために、オリゴヌクレオチドを化学的に変化させるか、または適切な運搬体と結合した複合体を形成することにより、破壊速度を減少させることができる。ヌクレアーゼ(nuclease)に抵抗するためのリボース(ribose) 2’-OHを2’Fや2’OMe基で置換するか、またはphospho backboneをPOからPSに変化させるなどの様々な化学的変更は、アンチセンス(antisense)やsiRNAなどの応用に成功的に使用されてきた。2004年にFDAの許可を受けて市販されている最初のアプタマー治療剤であるMacugenもまた、アプタマー発掘後に最適化を行った。
【0024】
GROアプタマー(aptamer)もまた、ヌクレオリン標的化(targeting)の特異性(specificity)が治療効果を高めるのに非常に重要なものであり、ヌクレオリンタンパク質ではない他のタンパク質に結合して薬効を減少させる「Off-target効果」を最小限に抑える必要がある。最近、Antisoma(英)が、最初のGROアプタマー(aptamer)治療剤であるAS1411の非小細胞がん(AML)に対する臨床第2相を終えたにもかかわらず、臨床第3相に進むことができなかったのは、副作用や毒性の原因よりは、投与量が多く、最適の抗がん効果を示さない欠点のためであると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
そこで、本発明者らは、AS1411にDrugを成功的にコンジュゲーション(conjugation)してAS1411-薬物コンジュゲートを合成し、AS1411のがん細胞に過剰発現されたヌクレオリンに対するターゲティング能力と、がん細胞のみに伝達されて付いている薬物を単独で使用する時よりも、AS1411-薬物(Drug)コンジュゲートがin vitroおよびin vivoでのがん標的治療にさらに効果的であることを確認した。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明のがん標的治療剤は、次のような薬物(R)-リンカー(L)-AS1411(Drug(R)-Linker(L)-AS1411)の構造を有する。
【0027】
【化1】
【0028】
薬物が連結される位置は、12と13の位置、若しくは12や13の位置が特に好ましい。
【0029】
【化2】
【0030】
ここで使用される薬物であるRは、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、シタラビン、ゲムシタビン、メイタンシン、DM1、DM4、カリケアミシン及びその誘導体、ドキソルビシン、デュオカルマイシン及びその誘導体、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、SN-38、α-アマニチン、ツブリシン類似体(Tubulysin analog)などが好ましい。
【0031】
【化3】
【0032】
MMAE
【0033】
【化4】
【0034】
MMAF
【0035】
【化5】
【0036】
MMAD
【0037】
【化6】
【0038】
アウリスタチン(Auristatin) E
【0039】
【化7】
【0040】
アウリスタチン(Auristatin) F
【0041】
【化8】
【0042】
DM1
【0043】
【化9】
【0044】
DM4
【0045】
【化10】
【0046】
ネモルビシン(Nemorubicin)
【0047】
【化11】
【0048】
PNU-159682
【0049】
【化12】
【0050】
ツブリシンM
【0051】
【化13】
【0052】
カリケアミシン
【0053】
【化14】
【0054】
アシル化されたカリケアミシン
【0055】
【化15】
【0056】
タルトブリン
【0057】
前記式中、Lは、X-Yで構成され[R-Y-X-AS1411]、
Yは、マレイミドカプロイル-バリン‐シトルリン-p-アミノベンゾイルオキシカルボニル(MC-Val-Cit-PAB)、ヒドラゾン、ペプチド、ジスルフィド、チオエーテル、バリン‐シトルリン、N-マレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシレート(MCC)、マレイミドカプロイル、メルカプトアセトアミドカプロイル、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)、SMCC、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPDB)、ホスホジエステル結合、およびヌクレオチドからなる群より選択され、
Xは、5’-チオール-改質剤C6、チオール-改質剤C6 S-S、ジチオールセリノール、PCアミノ-改質剤、5’-アミノ-改質剤C3、5’-アミノ-改質剤C6、5’-アミノ-改質剤C12、5’-アミノ-改質剤TEG、アミノ-改質剤C2 dT、アミノ-改質剤C6 dT、S-Bz-チオール-改質剤C6-dT、ホスホジエステル結合、およびヌクレオチドからなる群より選択される。
【発明の効果】
【0058】
本発明のAS1411-薬物コンジュゲートは、薬物のみを単独で使用する時よりもin vitroおよびin vivoにおけるがん標的治療にさらに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】HS-C6-T-AS1411とMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411のゲル ラン データ(gel run data)およびMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411のESI-MS。
図2】HS-C6-T-CROとMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-CROのゲル ラン データ(gel run data)およびMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-CROのESI-MS。
図3】12,13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411のESI-MS。
図4】12又は13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411のESI-MS。
図5】MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411とMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-CROのA549細胞株に対するMTTアッセイの結果。
図6】シタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411とシタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-CROのMv4-11細胞株に対するMTTアッセイの結果。
図7】A549肺がん細胞株注入マウスに対して治療前に施行したFDG PET画像(左太もも部分にFDG摂取を有する腫瘍が観察)。
図8】A549肺がん細胞株注入マウスにMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411治療30日後に得られたFDG PET画像(腫瘍のFDG摂取が減少したことを確認)。
図9】A549肺がん細胞株注入マウスに対して治療前に施行したFDG PET画像(左太もも部分にFDG摂取を有する腫瘍が観察)。
図10】A549肺がん細胞株注入マウスに対してMMAE治療30日後に得られたFDG PET画像(腫瘍のFDG摂取が増加したことを確認)。
図11】A549腫瘍モデルにおけるMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411とMMAE治療後に測定した腫瘍の大きさの比較。
図12】A549腫瘍モデルにおけるMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411とMMAE治療30日後に摘出した腫瘍の大きさの比較。
図13】Mv4-11 AML細胞株注入マウスに対して治療前に施行したFDG PET画像(左太もも部分にFDG摂取を有する腫瘍が観察)。
図14】Mv4-11 AML細胞株注入マウスに対してシタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411治療30日後に得られたFDG PET画像(腫瘍のFDG摂取が減少したことを確認)。
図15】Mv4-11 AML細胞株注入マウスに対して治療前に施行したFDG PET画像(左太もも部分にFDG摂取を有する腫瘍が観察)。
図16】Mv4-11 AML細胞株注入マウスに対してMMAE治療30日後に得られたFDG PET画像(腫瘍のFDG摂取が増加したことを確認)。
図17】濃度別MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411、12又は13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411、および12,13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411のA549細胞生存能力(cell viability)。
図18】MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411、12又は13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411、および12,13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411のA549細胞株に対するMTTアッセイの結果。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0061】
[GROアプタマー]-薬物([GRO Aptamer]-Drug)コンジュゲートの合成
実施例1
MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411[AS1411-MMAEコンジュゲート]の合成
マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンゾイルオキシカルボニルモノメチルアウリスタチンE[MC-Val-Cit-PAB-MMAE]にHS-C6-tttggtggtggtggttgtggtggtggtgg[HS-C6-T-AS141]を反応して、モノメチルアウリスタチンE-p-アミノベンゾイルオキシカルボニル-シトルリン-バリン-Mal-S-C6-tttggtggtggtggttgtggtggtggtgg[MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411]を合成した。つまり、RSS-C6-tttggtggtggtggttgtggtggtggtgg[RSS-C6-T-AS141])をDTTの存在下で約3時間還元反応した後、残っているDTTを遠心分離器で除去し、SB17緩衝液に交換して、HS-C6-tttggtggtggtggttgtggtggtggtgg[HS-C6-T-AS141]を得た。少量のDMSOに溶かしたMC-Val-Cit-PAB-MMAEを入れて一晩振とうさせた。逆相HPLC(Waters-Xbridge OST C18 10×50mm、65、TEAE/ CAN 緩衝液(buffer))により分離/精製した。
【0062】
【化16】
【0063】
MC-Val-Cit-PAB-MMAEとHS-C6-T-AS1411の反応によるMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411の合成
【0064】
Gel runでHS-C6-T-AS1411からMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411の合成を確認し、ESI-MSによりMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411の分子量を確認した(図1)。C36447912020229S[Cal.MW=10697.69、Obs.MW=10697.0]
【0065】
実施例2
MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-CROの合成
マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンゾイルオキシカルボニルモノメチルアウリスタチンE[MC-Val-Cit-PAB-MMAE]にHS-C6-tttcctcctcctccttctcctcctcctcc[HS-C6-T-CRO]を反応して、モノメチルアウリスタチンE-p-アミノベンゾイルオキシカルボニル-シトルリン-バリン-Mal-S-C6-tttcctcctcctccttctcctcctcctcc[MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-CRO]を合成した。つまり、RSS-C6-tttcctcctcctccttctcctcctcctcc[RSS-C6-T-CRO)をDTTの存在下で約3時間還元反応した後、残っているDTTを遠心分離器で除去し、SB17緩衝液に交換しHS-C6-tttcctcctcctccttctcctcctcctcc[HS-C6-T-CRO]を得た。少量のDMSOに溶かしたMC-Val-Cit-PAB-MMAEを入れて一晩振とうさせた。逆相HPLC(Waters-Xbridge OST C18 10×50mm、65、TEAE/CAN 緩衝液(buffer))により分離/精製した。
【0066】
【化17】
【0067】
MC-Val-Cit-PAB-MMAEとHS-C6-T-CROの反応によるMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-CROの合成
【0068】
Gel runでHS-C6-T-CROからMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-CROの合成を確認し、ESI-MSによりMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-CRO分子量を確認した(図2)。C3474798620229S[Cal.MW=10018.03、Obs.MW=10017.28]
【0069】
実施例3
12,13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411、および12又は13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411の合成
マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンゾイルオキシカルボニルモノメチルアウリスタチンE[MC-Val-Cit-PAB-MMAE]に、ggtggtggtggu[5-N-(6-(3-チオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]u[5-N-(6-(3-チオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]gtggtggtggtgg[12,13-(HS-C6)-AS1411]を反応し、ggtggtggtggu[5-N-(6-(3-モノメチルアウリスタチン-p-アミノベンゾイルオキシカルボニル-シトルリン-バリン-Mal-チオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]u[5-N-(6-(3-モノメチルアウリスタチン-p-アミノベンゾイルオキシカルボニル-シトルリン-バリン-Mal-チオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]gtggtggtggtgg[12,13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411]およびggtggtggtggu [5-N-(6-(3-モノメチルアウリスタチン-p-アミノベンゾイルオキシカルカルボニル-シトルリン-バリン-Mal-チオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]ugtggtggtggtgg][12又は13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411]を合成した。つまり、ggtggtggtggu[5-N-(6-(3-benzoylチオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]u[5-N-(6-(3-benzoylチオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]gtggtggtggtgg[12,13-(Bz-S-C6)-AS1411]をDTTの存在下で約3時間還元反応した後、残っているDTTを遠心分離器で除去し、SB17緩衝液に交換してggtggtggtggu[5-N-(6-(3-チオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]u[5-N-(6-(3-チオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]gtggtggtggtgg[12,13-(HS-C6)-AS1411]を得た。少量のDMSOに溶かしたMC-Val-Cit-PAB-MMAEを入れて一晩振とうさせた。逆相HPLC(Waters-Xbridge OST C18 10×50mm、65、TEAE/CAN 緩衝液(buffer))により精製し、12,13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411、および12又は13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411を得た。
【0070】
【化18】
【0071】
MC-Val-Cit-PAB-MMAEと12,13-(HS-C6)-AS1411の反応による12,13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411、および12又は13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411の合成
【0072】
ESI-MSにより12,13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411、および12又はr13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411の分子量を確認した(図3及び図4)。12,13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411、C41856812919725[Cal.MW=11390.21、Obs.MW=11390.0]、12又は13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411、C35046311818225[Cal.MW=10073.58、Obs.MW=10073.0]
【0073】
実施例4
シタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411コンジュゲートの合成
マレイミドカプロイル-(Gly-Phe-Leu-Gly)-シタラビン[MC-GFLG-シタラビン]に、HS-C6-tttggtggtggtggttgtggtggtggtgg[HS-C6-T3-AS1411]を反応し、シタラビン-(Gly-Leu-Phe-Gly)-Mal-S-C6-tttggtggtggtggttgtggtggtggtgg[シタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411]を合成した。つまり、RSS-C6-tttggtggtggtggttgtggtggtggtgg[RSS-C6-T-AS141])をDTTの存在下で約3時間還元反応した後、残っているDTTを遠心分離器で除去し、SB17緩衝液に交換した。少量のDMSOに溶かしたMal-GPLG-シタラビンを入れて一晩振とうさせた。逆相HPLC(Waters-Xbridge OST C18 10×50mm、65、TEAE/CAN 緩衝液)により精製してシタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411を得た。ESI-MSによりシタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411の分子量を確認した。C33442411719929S[Cal.MW=10191.91、Obs.MW=10190.88]
【0074】
【化19】
【0075】
C-GFLG-シタラビンとHS-C6-T-AS1411の反応によるシタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411の合成
【0076】
実施例5
12,13-(シタラビン-GLFG-MC-S-C6)-AS1411コンジュゲート、および12又は13-(シタラビン-GLFG-MC-S-C6)-AS1411コンジュゲートの合成
マレイミドカプロイル-(Gly-Phe-Leu-Gly)-シタラビン[MC-GFLG-シタラビン]に、ggtggtggtggu[5-N-(6-(3-チオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]u[5-N-(6-(3-チオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]gtggtggtggtgg[12,13-(HS-C6)-AS1411]を反応し、ggtggtggtggu[シタラビン-Gly-Leu-Phe-Gly-Mal-チオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]u[シタラビン-Gly-Leu-Phe-Gly-Mal-チオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]gtggtggtggtgg[12,13-(シタラビン-GLFG-MC-S-C6)-AS1411]およびggtggtggtggu[シタラビン-Gly-Leu-Phe-Gly-Mal-チオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]ugtggtggtggtgg][12又は13-(シタラビン-GLFG-MC-S-C6)-AS1411]を合成した。つまり、ggtggtggtggu[5-N-(6-(3-benzoylチオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]u[5-N-(6-(3-benzoylチオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]gtggtggtggtgg[12,13-(Bz-S-C6)-AS1411]をDTTの存在下で約3時間還元反応した後、残っているDTTを遠心分離器で除去し、SB17緩衝液に交換して、ggtggtggtggu[5-N-(6-(3-チオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]u[5-N-(6-(3-チオプロパノイル)-アミノヘキシル)-3-アクリルアミド]gtggtggtggtgg[12,13-(HS-C6)-AS1411]を得た。少量のDMSOに溶かしたMC-GFLG-シタラビンを入れて一晩振とうさせた。逆相HPLC(Waters-Xbridge OST C18 10×50mm、65、TEAE/CAN 緩衝液)により精製して、12,13-(シタラビン-GLFG-MC-S-C6)-AS1411、および12又は13-(シタラビン-GLFG-MC-S-C6)-AS1411を得た。ESI-MSにより、それぞれの分子量を確認した。12,13-(シタラビン-GLFG-MC-S-C6)-AS1411、C35845812319125[Cal.MW=10378,66 Obs.MW=10379.23]、12又は13-(シタラビン-GLFG-MC-S-C6)-AS1411、C32040811517925[Cal.MW=9567.81、Obs.MW=9568.09]
【0077】
【化20】
【0078】
MC-GFLG-シタラビンと12,13-(HS-C6)-AS1411の反応による12,13-(シタラビン-GLFG-MC-S-C6)-AS1411、および12又は13-(シタラビン-GLFG-MC-S-C6)-AS1411の合成
【0079】
実施例6
In vitro効能の検証
MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411およびMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-CROのA549細胞株に対するMTTアッセイ
ヌクレオリンタンパク質が過剰発現された肺がん細胞株であるA549細胞株におけるMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411の細胞阻害(cell inhibition)効能の検証をMTT アッセイによりin vitroで確認した。MMAE、AS1411、MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411とMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-CROを、MTTアッセイにより細胞の細胞生存能力(cell viability)及び増殖(proliferation)を比較したところ、MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411がMMAEとほぼ同様の効果を示すことを確認した。A549細胞(cell)(ATCC、IMDM+10%FBS)は、適正細胞濃度を決定する細胞試験(cell test)により定められた細胞数(cell number)2.5~5×10個/wellを96ウエルプレート(96well Plate)に蒔種(seeding)した後、一日育てた。MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411とMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-CROは、95℃で5分間熱処理(heating)して常温で徐々に冷却した後、濃度別に各ウエル(well)にすぐに処理した。処理されたA549細胞(cell)は、5%COインキュベーター(incubator)で72時間の間インキュベーション(incubation)した後、MTTアッセイ用試薬液(reagent solution)(Cell Proliferation kit II、Roche)を20uLずつ処理し、時間別(10分、30分、1時間)でインキュベーション(incubation)した後、ELISAリーダー(reader)機で490nm吸光度を測定した(図5)。
【0080】
実施例7
シタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411およびシタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-CROのMv4-11細胞株に対するMTTアッセイ
ヌクレオリンタンパク質が過剰発現された肺がん細胞株であるMv4-11細胞株におけるシタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411の細胞阻害(cell inhibition)効能の検証をMTTアッセイによりin vitroで確認した。シタラビン、AS1411、シタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411およびシタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-CROを、MTTアッセイにより細胞の細胞生存能力(cell viability)及び増殖(proliferation)を比較したところ、シタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411コンジュゲートがシタラビンとほぼ同様の効果を示すことを確認した。Mv4-11細胞(cell)(ATCC、IMDM+10%FBS)は、適正細胞濃度を決定する細胞試験(cell test)により定められた細胞数(cell number)2.5~5×10個/ウエル(well)を96ウエルプレート(96well plate)に蒔種(seeding)した後、一日育てた。シタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411とシタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-CROは、95℃で5分間熱処理(heating)して常温で徐々に冷却(cooling)した後、濃度別に各ウエル(well)にすぐに処理した。処理されたA549細胞(cell)は、5%COインキュベーター(incubator)で72時間の間インキュベーション(incubation)した後、MTTアッセイ用試薬液(reagent solution)(Cell Proliferation kit II、Roche)を20uLずつ処理し、時間別(10分、30分、1時間)にインキュベーション(incubation)した後、ELISAリーダー(reader)機で490nm吸光度を測定した(図6)。
【0081】
実施例8
In vivo効能の検証
MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411のA549肺がん細胞株注入マウスに対するin vivo治療効果の検証
A549肺がん細胞株注入マウスに対して静脈注射(IV injection)でMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411とMMAEをそれぞれ30日間投与した後、PET imageから腫瘍サイズ(tumor size)を確認した。A549肺がん細胞6.1x10細胞(cell)/mlをヌードマウスの右太ももに皮下注入した。注射してから3~4週間後に腫瘍の大きさを測定し、直径0.8cmに達した時に治療前のmicroPET撮影を行った。PET画像のために、F-18 FDG 0.2mCiを腹腔内に注射した後の画像を得た。(Siemens Inveon)画像から腫瘍のFDG摂取を確認した後、実験群5匹のマウスにMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411を5日間隔で4回静脈内注射した(7.5mg/kg、0.5mg/kg of MMAE)。治療開始30日後に、治療前と同じ方法でmicroPETを撮影した。A549肺がん細胞株注入マウスに対して、静脈注射(IV injection)でMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411を30日間投与した後にPET imageを確認したとき、腫瘍のFDG摂取が著しく減少したことを確認した(図7及び図8)。
【0082】
実施例9
MMAEのA549肺がん細胞株注入マウスに対するin vivo治療効果の検証
A549肺がん細胞株注入マウスに対して、静脈注射(IV injection)でMMAEを30日間投与した後、PET imageを確認した。A549肺がん細胞6.1×10細胞(cell)/mlをヌードマウスの右太ももに皮下注入した。注射してから3~4週間後に腫瘍の大きさを測定し、直径0.8cmに達した時に治療前のmicroPET撮影を行った。PET画像のために、F-18 FDG 0.2mCiを腹腔内に注射した後の画像を得た。(Siemens Inveon)治療前の画像から腫瘍のFDG摂取を確認した後、5匹のマウスにMMAEを5日間隔で4回静脈内注射した(0.5mg/kg)。治療開始30日後に治療前と同じ方法でmicroPETを撮影した。MMAE治療前と比較して、治療後にもFDG PET画像から腫瘍のFDG摂取が増加したことを確認した(図9及び図10)。
【0083】
実施例10
Ex-vivo検証
A549肺がん細胞株注入マウスにおいて、MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411が、MMAEを単独で投与した時よりも優れたがん抑制効果を示す。MMAE単独投与に比べて、MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411が80%さらに癌を抑制することを確認した。治療開始後5日間隔で腫瘍の大きさを横縦軸で測定し、治療開始から30日経過した後に各グループの腫瘍を摘出した。下記の写真のようにグループ別に分けて撮影して、MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411とMMAEの腫瘍サイズを比較した(図11及び図12)。
MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411とMMAEの肺がん(A549細胞ライン(cell line))に対するin vivo効能を検証したところ、MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411がMMAE単独投与に比べて優れた効能を示すことを確認した。
【0084】
実施例11
In vivo効能の検証
シタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411のMv4-11 AML細胞株注入マウスに対するin vivo治療効果の検証
Mv4-11 AML細胞株注入マウスに対して静脈注射(IV injection)でシタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411とMMAEをそれぞれ30日間投与した後、PET imageから腫瘍サイズ(tumor size)を確認した。Mv4-11 AML細胞6.1×10細胞(cell)/mlをヌードマウスの右太ももに皮下注入した。注射してから3~4週間後に腫瘍の大きさを測定し、直径0.8cmに達した時に治療前のmicroPET撮影を行った。PET画像のために、F-18 FDG 0.2mCiを腹腔内に注射した後の画像を得た。(Siemens Inveon)画像から腫瘍のFDG摂取を確認した後、実験群5匹のマウスにシタラビン-(GLFG-MC-S-C6)-T-AS1411を5日間隔で4回静脈内注射した(MMAEの7.5mg/kg、0.5mg/kg)。治療開始30日後に治療前と同じ方法でmicroPETを撮影した(図13図14)。
【0085】
実施例12
MMAEのMv4-11 AML細胞株注入マウスに対するin vivo治療効果の検証
Mv4-11 AML細胞株注入マウスに対して、静脈注射(IV injection)でMMAEを30日間投与した後、PET imageを確認した。Mv4-11 AML細胞6.1×10細胞(cell)/mlをヌードマウスの右太ももに皮下注入した。注射してから3~4週間後に腫瘍の大きさを測定し、直径0.8cmに達した時に治療前のmicroPET撮影を行った。PET画像のために、F-18 FDG 0.2mCiを腹腔内に注射した後の画像を得た。(Siemens Inveon)治療前の画像から腫瘍のFDG摂取を確認した後、5匹のマウスからMMAEを5日間隔で4回静脈内注射した(0.5mg/kg)。治療開始30日後に治療前と同じ方法でmicroPETを撮影した。MMAEの治療前と比較して、治療後にもFDG PET画像から腫瘍のFDG摂取が増加したことを確認した(図15図16)。
【0086】
実施例13
In vitro効能の検証
A549細胞株に対するMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411、12又は13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411、および12,13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411のMTTアッセイ
ヌクレオリンタンパク質が過剰発現された肺がん細胞株であるA549細胞株におけるMMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411、12又は13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411、および12,13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411の細胞阻害(cell inhibition)効能の検証をMTTアッセイによりin vitroで確認した。MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411、12又は13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411、および12,13-(MMAE- PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411をMTTアッセイにより細胞の細胞生存能力(cell viability)及び増殖(proliferation)を比較したところ、12,13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411が、MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411よりも優れた効能を示すことを確認した。A549細胞(cell)(ATCC、IMDM+10%FBS)は、適正細胞濃度を決定する細胞試験(cell test)により定められた細胞数(cell number)2.5~5×10個/ウエル(well)を96ウエルプレート(96well plate)に蒔種(seeding)した後一日育てた。MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411、12又は13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411、および12,13-(MMAE- PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411は、95℃で5分間熱処理(heating)して常温で徐々に冷却(cooling)した後、濃度別に各ウエル(well)にすぐに処理した。処理されたA549細胞(cell)は、5%COインキュベーター(incubator)で72時間の間インキュベーション(incubation)した後、MTTアッセイ用試薬液(reagent solution)(Cell Proliferation kit II、Roche)を20uLずつ処理し、時間別(10分、30分、1時間)に培養した後、ELISAリーダー(reader)機で490nm吸光度を測定した(図17)。図17のA、B、C、Dは、次のとおりである。
【0087】
【表1】
【0088】
図18は、MMAE-(PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-T-AS1411、12又は13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411、および12,13-(MMAE-PAB-Cit-Val-MC-S-C6)-AS1411のA549細胞株に対するMTTアッセイの結果を示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のAS1411-薬物コンジュゲートは、がん標的治療剤として有用に使用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
0007067802000001.app