(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】ダイヤモンド材料を含む放射線で駆動される装置、および放射線で駆動される装置のための電源
(51)【国際特許分類】
G21H 1/06 20060101AFI20220509BHJP
C30B 29/04 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G21H1/06
C30B29/04 Z
(21)【出願番号】P 2019562264
(86)(22)【出願日】2018-05-10
(86)【国際出願番号】 GB2018051258
(87)【国際公開番号】W WO2018206958
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-12-03
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】300002942
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ブリストル
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スコット,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,ニール
(72)【発明者】
【氏名】ペイン,リアム
(72)【発明者】
【氏名】ハトソン,クリス
(72)【発明者】
【氏名】ドミンゲス アンドラーデ,ヒューゴ
【審査官】井海田 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0026879(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0380582(US,A1)
【文献】特表2012-520466(JP,A)
【文献】国際公開第2009/044882(WO,A1)
【文献】特開2015-049111(JP,A)
【文献】特表2002-510035(JP,A)
【文献】特開2008-058137(JP,A)
【文献】特開2008-296089(JP,A)
【文献】特開2011-155189(JP,A)
【文献】特開平07-113870(JP,A)
【文献】特開昭62-093679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0279491(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0233518(US,A1)
【文献】国際公開第99/036967(WO,A1)
【文献】特開平06-263594(JP,A)
【文献】特表2007-522438(JP,A)
【文献】特開平09-127298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21H 1/00
C30B 29/04
G01T 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線で駆動される装置であって、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された半導体と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の前記半導体を通る電子の流れを生成するように構成される放射線源と、を含み、
前記半導体はダイヤモンド材料を含み、
前記放射線源は前記ダイヤモンド材料内に埋め込まれて
おり、
前記ダイヤモンド材料は前記ダイヤモンド材料の連続結晶格子内の層の形態である複数の領域を含み、
前記ダイヤモンド材料の少なくとも1つの層は放射線源を含み、前記ダイヤモンド材料の少なくとも1つの層は放射線源を含まず、
前記放射線源はベータ線放出放射性同位体を含み、前記放射性同位体の原子は、前記ダイヤモンド材料内に置換的にまたは格子間に組み込まれている、放射線で駆動される装置。
【請求項2】
半導体を含む電源であって、前記半導体は、ダイヤモンド材料と、前記ダイヤモンド材料内に埋め込まれた放射線源と、を含み、前記放射線源は、ベータ線放出放射性同位体を含み、前記放射性同位体の原子は、前記ダイヤモンド材料に置換的にまたは格子間に組み込まれて
おり、
前記ダイヤモンド材料は前記ダイヤモンド材料の連続結晶格子内の層の形態である複数の領域を含み、
前記ダイヤモンド材料の少なくとも1つの層は放射線源を含み、前記ダイヤモンド材料の少なくとも1つの層は放射線源を含まない、電源。
【請求項3】
前記ダイヤモンド材料内に埋め込まれた前記放射線源は、トリチウム、
14C、
10Be、およびリン-33のうちの1つまたは複数で形成される;ならびに/または
前記放射線源は
14Cおよび/もしくはトリチウムである;ならびに/または
前記放射線源は
14Cである、請求項1
または2に記載の放射線で駆動される装置または電源。
【請求項4】
前記層構造は、前記放射線源を含む複数の層と、前記放射線源を含まない複数の層と、を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の放射線で駆動される装置または電源。
【請求項5】
前記放射線源は、50ナノメートルから150マイクロメートル、任意選択で500ナノメートルから50マイクロメートルの範囲の厚さを有するダイヤモンドの層に設けられている、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の放射線で駆動される装置または電源。
【請求項6】
前記ダイヤモンド材料は、天然の同位体存在量と比較して増加した
13C含有量を有する同位体精製ダイヤモンド材料を含む
13Cダイヤモンド領域を含む、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の放射線で駆動される装置または電源。
【請求項7】
前記
13Cダイヤモンド領域は、2ナノメートルから2ミリメートルの範囲の厚さを有する層の形態である;および/または
前記
13Cダイヤモンド領域の
13C原子濃度は、少なくとも2%、3%、4%、5%、10%、20%、50%、75%、85%、95%、99%、または99.9%である、
請求項
6に記載の放射線で駆動される装置または電源。
【請求項8】
前記ダイヤモンド材料は
12Cダイヤモンド層を含み、
前記
12Cダイヤモンド層は、ホウ素がドープされた
12Cダイヤモンド層であってもよい;および/または
前記
12Cダイヤモンド層は、200ナノメートルから2ミリメートル、任意選択で1マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲の厚さを有してもよい、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の放射線で駆動される装置または電源。
【請求項9】
前記ダイヤモンド材料の前記層は、前記ダイヤモンド材料内の同位体層である、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の放射線で駆動される装置または電源。
【請求項10】
前記ダイヤモンド材料は、ダイヤモンドを含む
14Cの層、
12Cダイヤモンドの層、および
13Cダイヤモンドの層を含む三層構造を含む;および/または
前記放射線源は、少なくとも0.1%、1%、5%、10%、20%、50%、75%、85%、95%、99%、または99.9%の原子濃度で前記ダイヤモンド材料内に設けられている;および/または
前記ダイヤモンド材料は、その少なくとも1つの領域において5ppm、1ppm、500ppb、300ppbまたは100ppb以下の単一置換窒素濃度を有する;および/または
前記ダイヤモンド材料は、20マイクロメートルから25ミリメートル、任意選択で20マイクロメートルから20ミリメートル、任意選択で50マイクロメートルから1500マイクロメートルの範囲の厚さを有する、
請求項1~
9のいずれか1項に記載の放射線で駆動される装置または電源。
【請求項11】
前記第1の電極はオーミックコンタクトを形成し、前記第1の電極は、炭化物形成材料の層と貴金属層とを含んでもよい;および/または
前記第2の電極はショットキーコンタクトを形成し、前記第2の電極は、金属または金属合金で形成され、前記金属または金属合金は、20以下の原子番号zを有する1つまたは複数の金属で形成されてもよく、任意選択で前記第2の電極は、AlまたはLiAlで形成される、
請求項
1に記載の放射線で駆動される装置。
【請求項12】
前記放射線で駆動される装置は、前記第1の電極と前記第2の電極との間に熱バイアスを提供するように構成される;および/または
前記ダイヤモンド材料から流出する電荷を蓄積するために、前記第1および前記第2の電極に結合された電荷蓄積装置をさらに含む、
請求項
1に記載の放射線で駆動される装置。
【請求項13】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された半導体と、を含み、
前記半導体は、放射線にさらされたときに前記第1の電極と前記第2の電極との間に電子の流れを生成するダイヤモンド材料を含み、
前記ダイヤモンド材料は、放射線源を含む少なくとも1つの層と、放射線源を含まない少なくとも1つの層と、を含む層構造を有し、
前記
放射線源は、
13
Cダイヤモンドを含み、前記放射線源を含む層は、天然の同位体存在量と比較して増加した
13C含有量を有する同位体精製ダイヤモンド材料を含む
13Cダイヤモン
ドを含む、
放射線で駆動される装置。
【請求項14】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された半導体と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の前記半導体を通る電子の流れを生成するように構成される放射線源と、を含み、
前記半導体はダイヤモンド材料を含み、
前記ダイヤモンド材料は、放射線源を含む少なくとも1つの層と、放射線源を含まない少なくとも1つの層と、を含む層構造を有し、
前記放射線源は
14Cで形成される、
放射線で駆動される装置。
【請求項15】
放射線で駆動される装置であって、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された半導体と、を含み、
前記半導体は、バイアス電圧を印加せずに放射線にさらされると、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電子の流れを生成するダイヤモンド材料を含み、
前記ダイヤモンド材料は、放射線源を含む少なくとも1つの層と、放射線源を含まない少なくとも1つの層と、を含む層構造を有し、
前記放射線で駆動される装置は、前記ダイヤモンド材料から流出する電荷を蓄積するために、前記第1および第2の電極に結合された電荷蓄積装置をさらに含む、放射線で駆動される装置。
【請求項16】
放射性廃棄物をダイヤモンド材料に封入することを含み、
その結果得られた材料を利用して、請求項1~15のいずれか1項に記載の放射線で駆動される装置または電源を構築し、前記放射性廃棄物は
14Cまたはトリチウムであ
りうる、放射性廃棄物を処理する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド材料を含む放射線で駆動される装置(radiation powered devices)、および放射線で駆動される装置のための電源を対象とする。
【背景技術】
【0002】
現在の電池技術に代わるものの1つは、原子電池、核電池、放射性同位体電池、または放射性同位体発電機としても知られている放射線で駆動される電池の使用である。これらの装置は、核崩壊生成物(例えば、アルファ粒子またはベータ粒子またはガンマ線)を直接電気に変換する。
【0003】
核源から電気エネルギーを抽出するために、様々な装置構造と材料が開発されている。一般に、方法は、熱と非熱の2つの主なタイプに分類できる。熱装置では、放射線源がカソード電極を加熱し、電子の放出を引き起こし、その電子が電気を生成するより冷たいアノード電極、例えば熱電生成器または熱電子生成器に流れる。非熱装置では、放射線源からの放射性崩壊生成物は、電気を生成するために、放射線源に隣接して配置された半導体、例えばアルファボルタ装置またはベータボルタ装置に電子-正孔対を生成する。熱と非熱のプロセスは、熱勾配と放射線誘起電子-正孔対生成の両方を使用して装置構造で組み合わせて、電気を生成することもできる。
【0004】
化学電池技術と比較して、放射性同位体電池は出力が低い傾向がある。ただし、長寿命、小型化、高エネルギー密度という利点がある。そのため、特に宇宙船、医療用インプラント(ペースメーカーなど)、水中システム、世界の遠隔地にある自動科学ステーション、高放射線環境、過酷な化学的または物理的環境などのアクセスが難しい環境で長時間動作する必要がある機器の電源として有用である。また、電源のサイズが重要な小型システムの電源としても有用である。いくつかの従来技術の放射性同位体電池の例を、以下に簡単に説明する。
【0005】
米国特許出願公開第2013264907(A1)号は、ベータ粒子を提供するように構成されたベータ粒子源と、ベータ粒子の少なくとも一部を低エネルギー電子に変換するように構成されたダイヤモンド減速材(moderator)を含むベータボルタ電池を開示している。ベータボルタ電池は、電子を受け取り、負荷に電力を供給するように構成されたPN接合をさらに含む。ダイヤモンド減速材は、ベータ粒子源とPN接合との間にある。ベータ線源は、トリチウム、ニッケル、クリプトン、プロメチウム、またはストロンチウム-イットリウム同位体で構成され、これらはダイヤモンド減速材に隣接する基板に埋め込むことができる。PN接合は、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、窒化ホウ素などの半導体、または適切なp型およびn型ドーパントを含む他の材料を使用して形成される。
【0006】
米国特許出願公開第2013033149(A1)号は、炭化ケイ素(SiC)、シリコン(Si)、砒化ガリウム(GaAs)、砒化インジウムガリウム(InGaAs)、窒化ガリウム、(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、またはダイヤモンドを含むがこれらに限定されない半導体を使用して製造されたベータボルタ電池を開示しており、スルーウェハビアホールまたはその他の製造技術を使用して、セルの前面と背面に正(+ve)と負(-ve)の両方の接点を形成する。ベータ線源は、別個の層として設けられるか、半導体に隣接する基板に組み込まれる。ベータ線源は、リン-33、Ni-63、プロメチウム、およびトリチウムから選択される。
【0007】
米国特許出願公開第2011031572(A1)号は、Si、GaAs、GaP、GaN、ダイヤモンド、およびSiCを含むがこれらに限定されない半導体を含むベータボルタ電池を開示している。トリチウムは例示的なベータ線源として参照され、SiCは例示的な半導体材料として参照されている。ベータ線源は、別の層として設けられるか、半導体に隣接する基板に組み込まれる。ベータ線源は、リン-33、Ni-63、プロメチウム、およびトリチウムから選択される。
【0008】
「Designing CVD Diamond Betavoltaic Batteries」(https://www.researchgate.net/publication/235130192)は、ダイヤモンドは、優れた物理的特性を特徴とするワイドバンドギャップ半導体であり、高エネルギー(hv)放射線と電子の強力なビームの使用を含む用途に適した材料であることを開示している。高エネルギー放射線を電力に変換するための装置が設計されていることが開示されている。具体的には、放射性同位体ではなく電子ビームを使用してシミュレートされるダイヤモンドとベータ粒子間の相互作用に努力が集中していることが開示されている。
【0009】
「Single crystal CVD diamond membranes for betavoltaic cells」(http://dx.doi.org/10.1063/1.4954013)は、pドープ/イントリンシック/金属(PIM)構造として組み立てられ、ベータボルタ構成で使用される単結晶ダイヤモンド大面積薄膜を開示している。ベータ粒子は、放射性同位体ではなく電子ビームを使用してシミュレートされる。
【0010】
「Comparative study of different metals for Schottky barrier diamond betavoltaic power converter by EBIC technique」(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/pssa.201533060/abstract)は、合成IIbダイヤモンドショットキー構造に基づくベータボルタ変換器を開示している。放射性同位体ではなく電子ビームを使用してその構造をテストした。
【0011】
ロシア特許第2595772(C1)号は、作動ガスキセノン、放射性同位体ラジエータ、光および熱電変換器、熱除去プレートおよび放射器を備えた閉鎖気体力学回路を含む放射性同位体光熱電生成器を開示している。
【0012】
米国特許第5859484(A)号は、放射性同位体で駆動される半導体電池を開示している。この電池は、結晶性半導体材料の基板と、少なくとも1つの放射性元素を含む放射性電源を含む。この電源は、放出された粒子が基板に衝突できるように、基板に対して配置される。放射性元素は、好ましくは半導体材料内または半導体材料のすぐ近くに含浸されることが開示されている。半導体材料は、III-VおよびII-VI半導体材料およびそれらの混合物からなる群から選択される。放射性元素は、トリチウム、プロメチウム-147、アメリシウム-241、炭素-14、クリプトン-85、セシウム-137、ラジウム-226または-228、キュリウム-242または-244、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0013】
韓国特許第20140129404(A)号は、半導体層、半導体層上に形成されたシード層、シード層上に形成された放射性同位体層、および放射性同位体層上に形成され、放射性同位体層の放射を外部から遮蔽する放射遮蔽層を含む放射性同位体電池を開示している。Ni-63は線源として使用される。
【0014】
上記に照らして、様々な材料および装置構造が当技術分野で提案されてきたことは明らかである。ただし、電気効率、電力出力、安全性および/または放射線漏れ、不活性、毒性および/または生体適合性、および寿命のうちの1つまたは複数を含む性能が改善された放射性同位体電池を提供する必要性は依然としてある。
【発明の概要】
【0015】
本発明者らは、ダイヤモンドが多くの点で、放射性同位体電池および関連する装置などの放射線で駆動される装置で使用するための理想的な材料であることを特定した。第1に、ダイヤモンドは非常に耐放射線性が高いため、安定性と寿命を改善する他の半導体材料よりも電離放射線に対する耐性が高くなっている。第2に、ダイヤモンドの大きなバンドギャップは、装置の内部効率の大幅な改善を可能にする。第3に、ダイヤモンドは化学的に不活性で無毒であり、熱伝導率が高く、非常に高い温度まで安定している。例えば、非毒性は、ペースメーカーおよび/または補聴器を含む用途の装置の人間の取り扱いおよび皮下埋め込みにとって非常に重要である。
【0016】
背景技術のセクションで説明したように、放射性同位体電池にダイヤモンド材料を使用する可能性は、他の半導体材料と組み合わせた減速材料として、または装置の活性半導体構成要素として、いくつかの文書ですでに提案されている。しかし、本発明者らは、以下で説明するように、従来技術の構成に関するいくつかの問題を特定した。
【0017】
第1に、背景技術のセクションで説明したダイヤモンドベースの装置は、放射線源がダイヤモンド半導体材料の外側に配置されるように構成されている。これは、放射線をダイヤモンド材料内の電子流に変換するという点で、ダイヤモンドベースの装置にとって非効率的な構成であることが分かっている。損失は、表面の界面と空隙で発生する。さらに、ダイヤモンド構造内の密な原子充填は、アルファ線またはベータ線などの放射線がダイヤモンド構造を効果的に遠くまで透過しないことを意味する。
【0018】
第2に、放射線源はダイヤモンド材料の外側に配置されているため、このような構成では放射線が漏れやすくなる。
【0019】
第3に、放射線源はダイヤモンド材料の外側に配置されているため、放射性同位体材料成分が損傷し、装置から漏れる可能性がある。これは、装置の性能の低下、化学的不活性の欠如、毒性の増加、および/または生体適合性の問題につながる可能性がある。
【0020】
第4に、ダイヤモンドベースの装置はトリチウムまたは重金属の放射源を利用する。これらは漏れやすく、および/または非常に有毒である。
【0021】
第5に、背景技術のセクションで説明した構成は、出力電圧が低い。
【0022】
本発明の特定の実施形態の目的は、これらの問題の1つまたは複数を少なくとも部分的に解決することである。
【0023】
本明細書では、「ダイヤモンド材料」という用語は、ダイヤモンドで構成される材料を指すために使用される。当業者は、ダイヤモンドは結晶材料(多結晶材料または単結晶材料)として説明できることを理解している。当業者はまた、ダイヤモンドは、炭素原子が4原子四面体モチーフが置かれた立方ブラベ格子に配置された炭素のダイヤモンド同素体として説明できることを理解している。特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、n型ダイヤモンド(例えば、窒素がドープされたダイヤモンドまたはリンがドープされたダイヤモンド)および/またはp型ダイヤモンド(例えば、ホウ素がドープされたダイヤモンド)を含んでもよい。特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、ホウ素がドープされたダイヤモンドを含んでもよい。
【0024】
ダイヤモンド材料は、少なくとも約90%のsp3結合、例えば少なくとも約95%のsp3結合、少なくとも約97%のsp3結合、少なくとも約98%のsp3結合、少なくとも約99%のsp3結合、少なくとも約99.5%のsp3結合、少なくとも約99.9%のsp3結合、または約100%のsp3結合を含んでもよい。ダイヤモンド材料中のsp3結合含有量は、例えばX線光電子分光法(XPS)を使用して、当業者に公知の方法によって決定することができる(例えば、Yan et al.,“Quantitative study on graphitization and optical absorption of CVD diamond films after rapid heating treatment”,Diamond and Related Materials,14 April 2018(https://doi.org/10.1016/j.diamond.2018.04.011からオンラインで入手可能)、またはTaki et al.,“XPS structural characterization of hydrogenated amorphous carbon thin films prepared by shielded arc ion plating”,Thin Solid Films,Volume 316,Issues 1-2,21 March 1998,Pages 45-50に記載されている)。
【0025】
当業者は、ダイヤモンドが1332cm-1で単一のアクティブラマンモードを有し得ることを理解している。
【0026】
ダイヤモンド材料は、室温(約25℃)で約5.3eVより大きい、または約5.4eV以上、または約5.5eVのバンドギャップを有してもよい。
【0027】
ダイヤモンド材料は、室温(約25℃)で測定した熱伝導率が約100W/mKを超える場合があり、例えば、約500W/mKを超える、約1000W/mKを超える、約1500W/mKを超える、または約2000W/mKを超える、または約2200W/mKを超える場合がある。ダイヤモンドの熱伝導率は、3ω法により決定することができる(Frank et al.,in“Determination of thermal conductivity and specific heat by a combined 3ω/decay technique”,Review of Scientific Instruments 64,760(1993)に記載されている)。
【0028】
ダイヤモンド材料は、約3300kg/m3を超える、例えば約3400kg/m3を超える、または約3500kg/m3を超える密度を有する場合がある。
【0029】
第1の構成によれば、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体と、
第1の電極と第2の電極との間の半導体を通る電子の流れを生成するように構成される放射線源と、を含み、
半導体はダイヤモンド材料を含み、
放射線源はダイヤモンド材料内に埋め込まれている、放射線で駆動される装置が提供される。
【0030】
第2の構成によれば、電源(例えば、放射性同位体電源またはベータ線放出(beta-emitting)放射性同位体電源)が提供される。電源は半導体を含んでもよく、半導体は、ダイヤモンド材料と、ダイヤモンド材料内に埋め込まれた放射線源と、を含み、放射線源は、ベータ線放出放射性同位体を含み、放射性同位体の原子は、ダイヤモンド材料に置換的にまたは格子間に組み込まれている。
【0031】
電源は、本明細書に記載のオーミックコンタクト(ohmic contact)をさらに含んでもよい。オーミックコンタクトは、半導体と接触する第1の電極を含んでもよい。
【0032】
電源は、本明細書に記載のショットキーコンタクト(Schottky contact)をさらに含んでもよい。ショットキーコンタクトは、半導体と接触する第2の電極を含んでもよい。
【0033】
本明細書に記載の放射線で駆動される装置および電源は、第1の電極および第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体と、を含んでもよい。半導体は、電子が半導体を介して第1の電極と第2の電極との間を流れることができるように、第1の電極と第2の電極との間に配置されてもよい。
【0034】
特定の実施形態では、半導体は、第1および第2の対向面を含んでもよく、(例えば、第1の電極と第2の電極との間に配置される半導体が第1の電極と第2の電極とに挟まれるように)第1の電極は第1の面に接触し、第2の電極は第2の面に接触する。
【0035】
特定の実施形態では、半導体は、半導体を介して第1の電極と第2の電極との間で電子が流れることを可能にする任意の配置で第1の電極と第2の電極との間に配置されてもよい。例えば、半導体は、第1および第2の対向面を含んでもよく、第1および第2の電極は両方とも半導体の第1の面に接触してもよい。
【0036】
特定の実施形態では、本明細書に記載の電源を含む放射線で駆動される装置が本明細書で提供される。
【0037】
特定の実施形態では、放射線で駆動される装置は、電池であり、例えばベータボルタ電池である。
【0038】
また、本明細書に記載されているのは、本明細書に記載の電源を含む電池であり、例えばベータボルタ電池である。
【0039】
特定の実施形態では、半導体がp-n接合を含むように、半導体は、p型ダイヤモンドを含むダイヤモンド材料と、n型ダイヤモンドを含むダイヤモンド材料と、を含む。
【0040】
第3の構成によれば、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体と、
を含む放射線で駆動される装置が提供され、
半導体は、放射線にさらされたときに第1の電極と第2の電極との間に電子の流れを生成するダイヤモンド材料を含み、
ダイヤモンド材料は、天然の同位体存在量と比較して増加した13C含有量を有する同位体精製(isotopically purified)ダイヤモンド材料を含む13Cダイヤモンド領域を含む。
【0041】
第4の構成によれば、ダイヤモンド材料と、ダイヤモンド材料内に埋め込まれた放射線源と、を含む半導体を含む電源が提供され、放射線源はベータ線放出放射性同位体を含み、放射性同位体の原子はダイヤモンド材料に置換的にまたは格子間に組み込まれ、ダイヤモンド材料は、天然の同位体存在量と比較して増加した13C含有量を有する同位体精製ダイヤモンド材料を含む13Cダイヤモンド領域を含む。
【0042】
第5の構成によれば、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体と、
第1の電極と第2の電極との間の半導体を通る電子の流れを生成するように構成される放射線源と、
を含む放射線で駆動される装置が提供され、
半導体はダイヤモンド材料を含み、
放射線源は14Cで形成される。
【0043】
第6の構成によれば、ダイヤモンド材料と、ダイヤモンド材料内に埋め込まれた放射線源と、を含む半導体を含む電源が提供され、放射線源は、ダイヤモンド材料に置換的に組み込まれた14C原子を含む。
【0044】
第7の構成によれば、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体と、を含む放射線で駆動される装置が提供され、
半導体は、バイアス電圧を印加せずに放射線にさらされると、第1の電極と第2の電極との間に電子の流れを生成するダイヤモンド材料を含み、
放射線で駆動される装置は、ダイヤモンド材料から流出する電荷を蓄積するために、第1および第2の電極に結合された電荷蓄積装置をさらに含む。
【0045】
放射線源は、放射性同位体、例えばベータ線放出放射性同位体を含んでもよい。ベータ線放出放射性同位体の例は、トリチウム、14C、10Be、および33Pである。
【0046】
特定の実施形態では、放射線源は、トリチウム、14C、10Be、および/または33Pを含む。特定の実施形態では、放射線源は、トリチウム、14C、および/または10Beを含む。特定の実施形態では、放射線源は、14Cおよび/または10Beを含む。特定の実施形態では、放射線源は、14Cおよび/またはトリチウムを含む。特定の実施形態では、放射線源は14Cを含む。
【0047】
放射線源は、例えば、放射線源の放射性同位体の原子が、ダイヤモンド材料内に置換的にまたは格子間に組み込まれるように、ダイヤモンド材料内に埋め込まれてもよく、それは、ダイヤモンド材料の結晶格子内に置換的にまたは格子間に組み込まれて、ダイヤモンド材料の構成部分を形成する。例えば、半導体は、14Cおよび/または10Beが置換的にダイヤモンド材料に組み込まれたダイヤモンド材料を含んでもよく、かつ/あるいは、トリチウムがダイヤモンド材料の格子間に組み込まれたダイヤモンド材料を含んでもよい。特定の実施形態では、放射性同位体の原子、例えば、放射線源のトリチウムも、ダイヤモンド材料内の粒界(存在する場合)に閉じ込められてもよい。
【0048】
特定の実施形態では、放射線源が埋め込まれるダイヤモンド材料は、ダイヤモンド材料の形成中に放射線源(例えば放射性同位体原子)が組み込まれる合成ダイヤモンド材料である。例えば、トリチウムおよび/または14Cは、ダイヤモンド材料の形成中にダイヤモンド結晶格子に組み込まれてもよい。
【0049】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、ダイヤモンド材料の13C含有量が13Cの天然同位体存在量と比較して増加した13C含有量を含むように、13Cを含んでもよい。
【0050】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、天然の同位体存在量と比較して増加した13C含有量を有する同位体精製ダイヤモンド材料を含む13Cダイヤモンド領域を含む。
【0051】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は13Cダイヤモンド層を含み、13Cダイヤモンド層は13Cを含むダイヤモンド材料の層であり、13Cダイヤモンド層の13C含有量は13Cの天然同位体存在量と比較して増加した13C含有量を含む。特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、ダイヤモンド材料の外面に位置する13Cダイヤモンド層を含む。
【0052】
特定の実施形態では、13Cを含むダイヤモンド材料は、ダイヤモンド材料の形成中に13Cが組み込まれた合成ダイヤモンド材料である。特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、ダイヤモンド材料の形成中に13Cおよび放射線源(例えば放射性同位体原子)が組み込まれた合成ダイヤモンド材料である。
【0053】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、12Cダイヤモンド領域を含む。特定の実施形態では、12Cダイヤモンド領域は12Cダイヤモンド層である。特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、12Cダイヤモンド層を含む。「12Cダイヤモンド」という用語は、実質的に天然の炭素同位体を含むダイヤモンド材料を指すために本明細書で使用することができる。特定の例では、12Cダイヤモンド領域/層はホウ素がドープされた12Cダイヤモンドを含む、すなわち、ダイヤモンド材料はホウ素がドープされた12Cダイヤモンド領域/層を含んでもよい。
【0054】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は14Cダイヤモンドを含む。特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、14Cダイヤモンド領域を含む。特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、14Cダイヤモンド層を含む。本明細書では、「14Cダイヤモンド」という用語は、14Cダイヤモンドの14C含有量が14Cの天然同位体存在量と比較して増加した14C含有量を含むように、ダイヤモンド構造内に置換的に組み込まれた14C原子を含むダイヤモンド材料を指すために使用することができる。特定の実施形態では、14Cダイヤモンドは、13Cの天然同位体存在量と比較して増加した13C含有量も含む。
【0055】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、12Cダイヤモンド領域、14Cダイヤモンド領域、および/または13Cダイヤモンド領域を含む。ダイヤモンド材料の12Cダイヤモンド、14C領域、および/または13Cダイヤモンド領域は、連続ダイヤモンド結晶格子内の同位体領域として説明できる(すなわち、異なる領域間に物理的境界/不連続構造を有する異なる領域を有する構造とは対照的である)。
【0056】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は二層構造を含む。ダイヤモンド材料の二層構造は、連続ダイヤモンド結晶格子内の同位体層として説明できる(すなわち、2つの層にまたがる不連続構造(または物理的境界)を含む二層構造とは対照的である)。
【0057】
特定の実施形態では、二層構造を有するダイヤモンド材料は、放射線源が埋め込まれたダイヤモンドの層(例えば、放射性同位体の原子(14Cなど)が置換的または格子間に組み込まれたダイヤモンドの層)および12Cダイヤモンドの層を含んでもよい。
【0058】
特定の実施形態では、二層構造を有するダイヤモンド材料は、14Cダイヤモンド層および12Cダイヤモンド層(例えば、ホウ素がドープされた12Cダイヤモンド層)を含んでもよい。
【0059】
特定の実施形態では、二層構造を有するダイヤモンド材料は、放射線源が埋め込まれたダイヤモンドの層(例えば、放射性同位体の原子(14Cなど)が置換的または格子間に組み込まれたダイヤモンドの層)および13Cダイヤモンド層を含んでもよい。
【0060】
特定の実施形態では、二層構造を有するダイヤモンド材料は、14Cダイヤモンド層および13Cダイヤモンド層を含んでもよい。
【0061】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は三層構造を含む。ダイヤモンド材料の三層構造は、連続ダイヤモンド結晶格子内の同位体層として説明できる(すなわち、3つの層にまたがる不連続構造(または物理的境界)を含む三層構造とは対照的である)。
【0062】
特定の実施形態では、三層構造を有するダイヤモンド材料は、放射線源が埋め込まれたダイヤモンドの層(例えば、放射性同位体の原子(14Cなど)が置換的または格子間に組み込まれたダイヤモンドの層)、12Cダイヤモンド層(例えばホウ素がドープされた12Cダイヤモンド層)および13Cダイヤモンド層を含んでもよい。特定の実施形態では、三層構造を有するダイヤモンド材料は、14Cダイヤモンド層、12Cダイヤモンド層、および13Cダイヤモンド層を含んでもよい。特定の実施形態では、三層構造は、放射線源が埋め込まれたダイヤモンド層(例えば、14Cダイヤモンド層)と13Cダイヤモンド層との間に12Cダイヤモンド層が位置するように配置されてもよい。
【0063】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、埋め込まれた放射線源を含む領域(例えば、14Cダイヤモンド領域または14Cダイヤモンド層)を含む。特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、埋め込まれた放射線源を含む領域(例えば、14Cダイヤモンド領域または14Cダイヤモンド層)を含み、第1の電極は、半導体のダイヤモンド材料の埋め込まれた放射線源を含む領域に接触し(例えば、第1の電極は14Cダイヤモンド領域に接触する)、例えばオーミックコンタクトを形成する。
【0064】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、二領域構造を含む。ダイヤモンド材料の二領域構造は、連続ダイヤモンド結晶格子内の同位体領域として説明できる(すなわち、2つの領域にまたがる不連続構造(または物理的境界)を含む二領域構造とは対照的である)。
【0065】
特定の実施形態では、二領域構造を有するダイヤモンド材料は、放射線源が埋め込まれたダイヤモンドの領域(例えば、放射性同位体の原子(14Cなど)が置換的または格子間に組み込まれたダイヤモンドの領域)および12Cダイヤモンドの領域を含んでもよい。
【0066】
特定の実施形態では、二領域構造を有するダイヤモンド材料は、14Cダイヤモンド領域および12Cダイヤモンド領域(例えば、ホウ素がドープされた12Cダイヤモンド領域)を含んでもよい。
【0067】
特定の実施形態では、二領域構造を有するダイヤモンド材料は、放射線源が埋め込まれたダイヤモンドの領域(例えば、放射性同位体の原子(14Cなど)が置換的または格子間に組み込まれたダイヤモンドの層)および13Cダイヤモンド領域を含んでもよい。
【0068】
特定の実施形態では、二領域構造を有するダイヤモンド材料は、14Cダイヤモンド領域および13Cダイヤモンド領域を含んでもよい。
【0069】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は三領域構造を含む。ダイヤモンド材料の三領域構造は、連続ダイヤモンド結晶格子内の同位体領域として説明できる(すなわち、3つの領域にまたがる不連続構造(または物理的境界)を含む三領域構造とは対照的である)。
【0070】
特定の実施形態では、三領域構造を有するダイヤモンド材料は、放射線源が埋め込まれたダイヤモンドの領域(例えば、放射性同位体の原子(14Cなど)が置換的または格子間に組み込まれたダイヤモンドの領域)、12Cダイヤモンド領域(例えばホウ素がドープされた12Cダイヤモンド領域)および13Cダイヤモンド領域を含んでもよい。特定の実施形態では、三領域構造を有するダイヤモンド材料は、14Cダイヤモンド領域、12Cダイヤモンド領域、および13Cダイヤモンド領域を含んでもよい。特定の実施形態では、三領域構造は、放射線源が埋め込まれたダイヤモンド領域(例えば、14Cダイヤモンド領域)と13Cダイヤモンド領域との間に12Cダイヤモンド領域が位置するように配置されてもよい。
【0071】
特定の実施形態では、12Cダイヤモンド領域は12Cダイヤモンド層である。
【0072】
特定の実施形態では、13Cダイヤモンド領域は13Cダイヤモンド層である。
【0073】
特定の実施形態では、放射線源が埋め込まれたダイヤモンドの領域は、放射線源が埋め込まれたダイヤモンドの層である。
【0074】
特定の実施形態では、14Cダイヤモンド領域は14Cダイヤモンド層である。
【0075】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、13Cダイヤモンド領域(例えば、13Cダイヤモンド層)を含み、第2の電極は、半導体のダイヤモンド材料の13Cダイヤモンド領域に接触し、例えばショットキーコンタクトを形成する。
【0076】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、12Cダイヤモンド領域(例えば、12Cダイヤモンド層)を含み、第2の電極は、半導体のダイヤモンド材料の12Cダイヤモンド領域に接触し、例えばショットキーコンタクトを形成する。
【0077】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、放射線源が埋め込まれた領域(例えば、14Cダイヤモンド領域または層)を含み、第1の電極は、半導体のダイヤモンド材料の放射線源が埋め込まれた領域(例えば、14Cダイヤモンド領域または層)と接触し、例えばオーミックコンタクトを形成する。
【0078】
特定の実施形態では、半導体のダイヤモンド材料は14Cダイヤモンドを含み、第1の電極はダイヤモンド材料の14Cダイヤモンドと接触してオーミックコンタクトを形成し、第2の電極はダイヤモンド材料の14Cダイヤモンドと接触してショットキーコンタクトを形成する。
【0079】
特定の実施形態では、半導体のダイヤモンド材料は、放射線源が埋め込まれたダイヤモンド領域(例えば、14Cダイヤモンド領域または層)、12Cダイヤモンド領域(例えば、ホウ素がドープされた12Cダイヤモンド領域)を含み、第1の電極は放射線源が埋め込まれたダイヤモンド領域(例えば14Cダイヤモンド領域または層)に接触してオーミックコンタクトを形成し、第2の電極は12Cダイヤモンド領域に接触してショットキーコンタクトを形成する。
【0080】
特定の実施形態では、半導体のダイヤモンド材料は、放射線源が埋め込まれたダイヤモンド領域(例えば、14Cダイヤモンド領域または層)、13Cダイヤモンド領域を含み、第1の電極は放射線源が埋め込まれたダイヤモンド領域(例えば14Cダイヤモンド領域または層)に接触してオーミックコンタクトを形成し、第2の電極は13Cダイヤモンド領域に接触してショットキーコンタクトを形成する。
【0081】
特定の実施形態では、半導体のダイヤモンド材料は、放射線源が埋め込まれたダイヤモンド領域(例えば、14Cダイヤモンド領域または層)、12Cダイヤモンド領域(例えば、ホウ素がドープされた12Cダイヤモンド領域)、および13Cダイヤモンド領域を含み、第1の電極は、放射線源が埋め込まれたダイヤモンド領域(例えば、14Cダイヤモンド領域または層)に接触してオーミックコンタクトを形成し、第2の電極は、13Cダイヤモンド領域に接触してショットキーコンタクトを形成する。
【0082】
本発明者らは、放射線源、例えばベータ線放出放射性同位体をダイヤモンド材料に埋め込むことにより、放射線源の放射性同位体の原子がダイヤモンド材料に置換的にまたは格子間に組み込まれ(それは、ダイヤモンド材料の構成部分を形成するために、ダイヤモンド材料の結晶格子に置換的にまたは格子間に組み込まれる)、密封された(したがって安全な)長寿命の電源を有利に提供することを発見した。本発明者らはまた、放射線源と集電材料の間に物理的なギャップまたは不連続構造を示す従来のシステムと比較して、放射線源の放射性同位体の原子が置換的にまたは格子間にダイヤモンド材料に組み込まれるようにダイヤモンド材料に放射線源を埋め込むことも、(放射材料と集電材料との間に原子構造に破損がない構造を提供するダイヤモンド材料の連続結晶格子内に配置されている放射線源の放射性同位体の原子により)効率が改善された電源を提供することを見いだした。
【0083】
前述の構成は、要件に従って様々な方法で組み合わせることができ、いくつかの特定の構成の詳細は、本明細書の詳細な説明に記載されている。ダイヤモンドベースの放射線で駆動される装置の特定の特徴が本発明者らによって開示されていることにも留意されたい[例えば、http://www.bristol.ac.uk/news/2016/November/diamond-power.html、およびhttps://en.wikipedia.org/wiki/Diamond_batteryを参照]。しかし、本発明を実施するための詳細は、本明細書の提出前に本発明者らによって開示されていなかった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して例としてのみ説明される。
【
図1】外部放射線電源を利用した放射線で駆動される装置の構成を示す図である。
【
図2a】内部放射線電源を利用した放射線で駆動される装置の構成を示す図である。
【
図2b】内部放射線電源を利用した放射線で駆動される装置の構成を示す図である。
【
図3】
13Cダイヤモンド領域を含む放射線で駆動される装置の構成を示す図である。
【
図4】
14Cダイヤモンド領域と
13Cダイヤモンド領域を含む放射線で駆動される装置の構成を示す図である。
【
図5】繰り返し構造の
13Cダイヤモンド領域および
14Cダイヤモンド領域を含む放射線で駆動される装置の別の構成を示す図である。
【
図6】
13Cダイヤモンド領域と、スーパーキャパシタ層構造およびベータボルタ層構造を含む
14Cダイヤモンド領域と、を含む放射線で駆動される装置の別の構成を示す図である。
【
図7】熱電子ダイヤモンドエネルギー変換器の構成を示す図である。
【
図8】熱電子ベータショットキーエミッタ構成を示す図である。
【
図9】電荷を蓄積するためのキャパシタを含む、ダイヤモンドショットキーダイオードのベータボルタ構成を示す図である。
【0085】
図面では、様々な装置構成の共通の特徴を示すために、対応する構成要素に同様の符号が使用されていることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0086】
装置構成
図1は、
第1の電極10と、
第2の電極12と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体14と、を含む放射線で駆動される装置を示し、
半導体は、放射線にさらされたときに第1の電極と第2の電極との間に電子の流れを生成するダイヤモンド材料を含む。
【0087】
ガンマ線源などの外部線源18は、電子-正孔対がダイヤモンド材料に生成されるように放射線場に置かれた装置とともに
図1の構成で示されている。装置は、線源18に隣接して配置されてもよく、または、例えば線源が配置される円筒形の装置構造を設けることにより線源を囲むように構成されてもよい。
【0088】
外部線源に代わるものは、
図2aに示すように層状装置構造内に放射性同位体を提供することであり、
図2aは、
第1の電極10と、
第2の電極12と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体14と、
第1電極と第2電極との間の半導体を通る電子の流れを生成するように構成された放射線源20と、を含み、
半導体はダイヤモンド材料を含む、放射線で駆動される装置を示す。
【0089】
放射線源20は、別個の材料層として設けられるのではなく、ダイヤモンド材料内に埋め込むことができる(例えば、
図10および
図11に示す半導体の図的記述を参照)。放射線源がダイヤモンド材料内に埋め込まれている場合、表面界面、空隙、およびダイヤモンド構造への制限された浸透に関連する損失が減少することが分かっている。これにより、以前の装置よりもはるかに高いエネルギー変換効率が得られる。さらに、ダイヤモンド構造内の密な原子充填は、放射線がダイヤモンド材料から効果的に逃げないことを意味し、放射線の漏れを低減する。埋め込まれた放射線源は、例えば、トリチウム、
14C、
10Be、またはリン-33であってもよく、あるいはトリチウム、
14C、または
10Be、より好ましくはトリチウムおよび/または
14Cであってもよい。トリチウム、
14C、
10Be、リン-33などの比較的小さな放射性同位体をダイヤモンド格子に封入することは可能であるが、本発明者らは、ダイヤモンド結晶構造に大きな損傷を与えて電荷輸送性能にマイナスの影響を与えることなく、大きな原子を高い原子数密度のダイヤモンド格子に組み込むことは難しいことを見いだした。本発明者らは、
14C、
10Beおよび/またはトリチウムをダイヤモンド材料に埋め込むことは、ダイヤモンド結晶構造を維持しながら放射線源が埋め込まれたダイヤモンド材料を提供するという点で特に有利であることを見いだした。
【0090】
図2bは、
図2aで説明した装置と同様の放射線で駆動される装置を示しているが、
図2bの装置は代替的な構成を有している。
図2bの装置は、放射線源が埋め込まれたダイヤモンド材料を含む半導体14を含む。
図2aおよび
図2bに示す装置は両方とも、第1および第2の対向面を有する半導体を含む。
図2aに示す装置では、第1の電極10は半導体の第1の面に接触し、第2の電極12は半導体の第2の面に接触する。
図2bに示す装置では、第1および第2の電極10、12の両方が半導体の第1の面に接触する。
図2aおよび
図2bに示す両方の配置により、電子が半導体を介して第1の電極と第2の電極との間を流れることができる。
【0091】
さらに、化学的に不活性な硬質のダイヤモンド構造内に放射性同位体材料を封入することで、装置からの放射性材料の損傷や漏れの可能性が減り、装置の安定性と性能が向上し、装置の堅牢性と化学的不活性が高まり、毒性および/または生体適合性に関連する問題が軽減される。
【0092】
トリチウムまたは14Cを使用する追加の利点は、水素と炭素の両方がダイヤモンド合成プロセスで従来から使用されており、合成中にダイヤモンド格子に容易に組み込まれることである。したがって、トリチウム(水素同位体)および/または14Cをダイヤモンド合成プロセスに導入しても、ダイヤモンド合成化学に過度の影響はない。
【0093】
トリチウムまたは14Cを使用することのさらなる利点は、これらが両方とも原子力発電所の副産物であることである。この手法を使用すると、原子力発電所の放射性副産物をダイヤモンド材料に封入して安全性を高め、得られたダイヤモンド材料を放射性同位体電池の構築に利用して、問題になる廃棄物を有用な電源に変換することができる。
【0094】
ダイヤモンド材料は、放射線源を含む少なくとも1つの層と、放射線源を含まない少なくとも1つの層と、を備えた層構造を有してもよい。層構造は、放射線源を含む複数の層と、放射線源を含まない複数の層と、を有してもよい。そのような層構造は、放射線源を有さないダイヤモンド層によって分離された放射線源を含むダイヤモンド材料の薄層の提供を可能にする。これは、放射線がダイヤモンド格子を遠くまで透過しないため、層構造が電荷生成材料と電荷伝搬および/または電荷増倍材料の交互層を提供できるので有利になる。例えば、放射線源は、50ナノメートルから150マイクロメートル、任意選択で500ナノメートルから50マイクロメートルの範囲の厚さを有する1つまたは複数のダイヤモンド層で提供することができる。
【0095】
放射線源を含むダイヤモンド材料の層は、放射線源の放射性同位体の原子がダイヤモンド材料に置換的にまたは格子間に組み込まれたダイヤモンド材料の層であってもよい(ダイヤモンド材料の結晶格子に置換的にまたは格子間に組み込まれて、ダイヤモンド材料の構成部分を形成する)。
【0096】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は複数の領域を含み、複数の領域はダイヤモンド材料内の同位体領域(すなわち、ダイヤモンド材料の連続結晶格子内の同位体領域)である。
【0097】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は複数の層を含み、複数の層はダイヤモンド材料内の同位体層(すなわち、ダイヤモンド材料の連続結晶格子内の同位体層)である。
【0098】
炭素同位体の天然の存在量は、約98.9%の12C、1.1%の13C、および微量の14C(1兆分の1)であることが理解される。ダイヤモンド材料を通る電子の流れを生成するように構成された14Cについて述べるときに、14Cの濃度は、天然に発生する微量の1兆分の1よりもかなり高くなければならない。例えば、放射線源は、少なくとも0.1%、1%、5%、10%、20%、50%、75%、85%、95%、99%または99.9%の原子濃度でダイヤモンド材料内に提供できる。14Cのベータ領域はダイヤモンド格子内の長距離を貫通しないため、材料の比較的薄い層を提供できる。これにより、生産コストも削減できる可能性がある。しかし、必要な電力出力を生成するには、十分な14Cを用意する必要がある。
【0099】
図3は、別の放射線で駆動される装置の構成を示し、それは、
第1の電極10と、
第2の電極12と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体14と、
を含み、
半導体は、放射線にさらされたときに第1の電極と第2の電極との間に電子の流れを生成するダイヤモンド材料を含み、
ダイヤモンド材料は、天然の同位体存在量と比較して増加した
13C含有量を有する同位体精製ダイヤモンド材料を含む
13Cダイヤモンド領域16を含む。
【0100】
ガンマ線源などの外部線源18は、電子-正孔対がダイヤモンド材料に生成されるように放射線場に置かれた装置とともに、
図3の構成で示されている。装置は、線源18に隣接して配置されてもよく、または、例えば線源が配置される円筒形の装置構造を設けることにより線源を囲むように構成されてもよい。外部線源に代わるものは、
図4に示すように、層状装置構造内に放射性同位体を提供することであり、それは、
第1の電極10と、
第2の電極12と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体14と、
第1の電極と第2の電極の間の半導体を通る電子の流れを生成するように構成された放射線源と、を含み、
半導体14は、ダイヤモンド材料を含み、放射線源が埋め込まれた領域20と、天然同位体存在量と比較して増加した
13C含有量を有する同位体精製ダイヤモンド材料を含む
13Cダイヤモンド領域16と、を含む。
【0101】
驚くべきことに、13Cを増加させるために同位体精製された少なくとも1つの領域を有するダイヤモンド材料の提供は、そのような13Cダイヤモンド層を含まない対応する装置と比較した場合、出力電圧の大幅な増加をもたらすことが分かった。13Cによる12Cの同位体置換は、ダイヤモンドのバンドギャップエネルギーを増加させることが知られている[例えば、H Watanabe,“Isotope composition dependence of the band-gap energy in diamond”Phys.Rev.B,88,2013を参照]。ダイヤモンド材料のより大きなバンドギャップ領域を提供することにより、放射線で駆動される装置の出力電圧が大幅に増加し、電子増倍領域または層として機能することが分かった。例えば、出力電圧が1.4Vのダイヤモンドベータボルタ装置は、薄い13Cダイヤモンド終端層の導入により増加した2.1Vの出力電圧を有することが分かった。
【0102】
例として、出力の半分をダイオードに放射する0.343gのC-14を含む、1.47×10-6m3(厚さ15μm×直径25mm)の有効体積を有する単一のダイオード装置の場合は、開回路電圧は約2.0Vであり、短絡電流は、積分49keV放射性同位体ベータ線源を使用したダイヤモンドダイオードで10μAと推定される。単一の装置でダイヤモンド装置構造が何度も繰り返されると、高強度のガンマ放射線場にさらされたときに、装置が効率的なガンマボルタとして機能する能力が与えられる。
【0103】
理論に拘束されるわけではないが、ベータボルタ電池の電圧はダイオードのリーク電流に依存し、これはショットキー障壁の高さとその均一性に依存する。高純度C-13の選択は、C-13のバンドギャップがC-12よりも17meV大きいため、ショットキー障壁の高さに影響し、これもダイオードのリーク電流の大きさに影響する。
【0104】
13Cダイヤモンド領域は、2nmから2mmの範囲の厚さ、任意選択で200ナノメートルから2ミリメートルの厚さを有する層の形態で設けることができる。同位体精製された炭素源材料は比較的高価であり、したがって、同位体精製された13Cの厚い層を製造することは望ましくない。これに関して、そのような同位体精製されたダイヤモンド材料の薄層は、出費を過度に増やすことなく、出力電圧の大幅な増加を提供できることが分かった。
【0105】
13Cダイヤモンド領域は、少なくとも1.1%、5%、10%、20%、50%、75%、85%、95%、99%、または99.9%の13Cの原子濃度を有することができる。13Cダイヤモンド領域は、少なくとも1.5%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、50%、75%、85%、95%、99%、または99.9%の13C原子濃度を有することができる。ダイヤモンドのバンドギャップを大きくして出力電圧の望ましい増加を実現するには、十分な13Cをダイヤモンド格子に組み込む必要がある。ただし、同位体精製を増やすと、ダイヤモンド合成プロセスで使用される炭素源材料の高度な同位体分離を必要とし、費用も増加する。
【0106】
ダイヤモンド材料には、例えば1.1%以内の天然の炭素同位体を有する(または、少なくとも13Cダイヤモンド領域よりも低い13C含有量および/または14Cダイヤモンド領域よりも低い14C含有量を有する)ダイヤモンド材料の層(または領域)を含む12Cダイヤモンド層(または領域)を含めることもできる。12Cダイヤモンド層(または領域)は、存在する場合、例えば各炭素同位体の自然存在量の1.1%以内の実質的に天然の存在量の炭素を有するダイヤモンド材料の層(または領域)を含むことができる。例えば、ダイヤモンド材料は、ダイヤモンドを含む14Cの層、12Cのダイヤモンドの層、および13Cのダイヤモンドの層を含む三層構造を含むことができる。あるいは、放射性同位体が埋め込まれた層と従来の12Cダイヤモンドの層を含むダイヤモンド材料を含む、より単純な二層装置構造が設けられてもよい。上述のように、ダイヤモンド材料の層(または領域)は、ダイヤモンド材料内の同位体層(または領域)(すなわち、ダイヤモンド材料の連続結晶格子内の同位体層)であってもよい。
【0107】
12Cダイヤモンド層は、200ナノメートルから2ミリメートルの範囲の厚さ、任意選択で1マイクロメートルから10マイクロメートルの厚さを有することができる。特定の層の厚さは、装置の構成と用途にある程度依存する。例えば、ベータボルタ構成では、ベータ線が厚いダイヤモンド材料を透過しないため、ダイヤモンド層を薄くすることができる。あるいは、ガンマボルタ構成では、ガンマ線がより長い距離を貫通するため、ダイヤモンド層は有利に厚くすることができ、ダイヤモンド材料が大量にあると、生成される電子-正孔対が増え、電荷出力が大きくなる。例えば、ダイヤモンド材料は、20マイクロメートルから25ミリメートル、任意選択で20マイクロメートルから20ミリメートル、任意選択で50マイクロメートルから1500マイクロメートルの範囲の厚さを有してもよい。
【0108】
ダイヤモンド材料は、好ましくは、前述の領域の少なくとも1つにおいて、5ppm、1ppm、500ppb、300ppbまたは100ppb以下の単一置換窒素濃度を有する。不純物は、その中で窒素が最も重要であるが、例えば国際公開第0196633号から知られているように、ダイヤモンド格子内の電荷キャリア性能を低下させる。そのため、ダイヤモンド材料を設計して、電荷生成を高め、電荷移動度と寿命を向上させることができる。
【0109】
電極は、ショットキー効果を介して第1の電極から第2の電極への電子の流れのバイアスを生成する材料で形成されてもよい。第1の電極は、オーミックコンタクトを形成することができる。そのような電極は、炭化物形成材料の層と貴金属層を含むことができる。第2の電極は、ショットキーコンタクトを形成することができる。そのような電極は、低い原子番号の金属または合金で形成することができる。例えば、20以下の原子番号zを有する金属または複数の金属から形成された金属または金属合金、例えば、AlまたはLiAlである。特定の実施形態では、第2の電極はショットキーコンタクトを形成することができ、原子番号zが40以下の1つまたは複数の金属で形成された金属または金属合金、例えばZr、Al、またはLiAlで形成することができる。
【0110】
ショットキーコンタクトを構成するために使用される金属の選択は、装置の性能に大きな影響を与える可能性があることに留意されたい。さらに、金属とダイヤモンドの界面の品質も重要である。例えば、障壁の高さが低い理由の1つは、ショットキー金属界面と酸素終端ダイヤモンド表面の均一性の欠如である。
【0111】
特定の金属は、ダイヤモンド材料に結合してショットキーバイアス効果を提供する能力に基づいて選択できるが、導電性のホウ素をドープしたダイヤモンドを、第1および第2の電極の一方または両方として、またはダイヤモンド層構造内の層として使用できることも想定される。電子バイアスはまた、第1の電極と第2の電極との間に熱バイアスを提供するように放射線で駆動される装置を構成することにより提供または強化されてもよい。
【0112】
これまでの構成は、電子増倍層として機能して出力電圧を増加させることができる13Cダイヤモンドの層を含む装置構造に関連して説明されてきたが、特定の装置が、そのような13Cダイヤモンドの領域なしに、本明細書で説明される特徴の1つまたは複数を含み得ることも想定される。例えば、1つの構成によれば、放射装置が提供され、それは、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体と、
第1の電極と第2の電極との間の半導体を通る電子の流れを生成するように構成される放射線源と、を含み、
半導体はダイヤモンド材料を含み、
放射線源はダイヤモンド材料内に埋め込まれている。
【0113】
前述のように、線源は、例えば、トリチウム、14C、10Be、またはリン-33であってもよい。13Cダイヤモンドの領域が設けられない場合でも、放射線源をカプセル化することは、表面界面、空隙、ダイヤモンド構造への制限された浸透に関連する損失を減らし、放射線漏れと、装置からの放射性物質の損傷と漏れの可能性を減らして、装置の安定性と性能を改善し、装置の堅牢性と化学的不活性を高め、毒性および/または生体適合性に関連する問題を軽減するという利点が依然としてある。とはいえ、放射線源が埋め込まれ、13Cダイヤモンドの領域が電子増倍層として機能し、出力電圧を増加させる領域を有するダイヤモンド材料を提供するように、封入構成を性能強化13Cダイヤモンド層と組み合わせると有利である。
【0114】
さらに別の構成によれば、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体と、
第1の電極と第2の電極との間の半導体を通る電子の流れを生成するように構成される放射線源と、
を含み、
半導体はダイヤモンド材料を含み、
放射線源は14Cで形成される、放射線で駆動される装置が提供される。
【0115】
この構成では、14Cがダイヤモンド格子内に埋め込まれていない場合でも、放射線源と半導体の両方が炭素材料で形成される、例えばダイヤモンド材料に隣接するグラファイトを含む14Cの層として設けられるように、外部放射線源を14Cの形の低毒性放射性同位体に置き換えることにより、いくつかの有利な特徴を実現することもできることに留意している。そのような「全炭素」線源および半導体構造は、例えば、別個の重金属放射性同位体を使用するものよりも好ましい。しかし、最も好ましくは、放射線源は両方ともダイヤモンド格子構造の少なくとも一部を形成するダイヤモンド材料内に埋め込まれ、最も好ましくは13Cダイヤモンド層または電荷増倍および電圧出力増加のための領域と組み合わせて使用される。
【0116】
単一層スタックに複数の層構造を設けることにより、複数の装置構造を提供することが可能である。このような構成の一例を
図5に示しており、これは、単一の層スタック内に2つのベータボルタ構造を含み、共通の中央電極を共有している。この構成は、中央電極10、端部電極12、炭素-14ダイヤモンド層20、炭素-12ダイヤモンド層14、および炭素-13ダイヤモンド層16を含む。したがって、この構造は、電極/
14Cダイヤモンド/
12Cダイヤモンド/
13Cダイヤモンド/電極という層構造を含む2つのベータボルタ装置を提供する。ガンマ放射線は厚いダイヤモンド層を透過し、電荷生成を増加させるため、多層積層装置構造および/またはダイヤモンド材料の厚い層の使用は、外部ガンマ線源と組み合わせて特に有用である。
【0117】
図6は、スーパーキャパシタ層構造とベータボルタ層構造を含む放射線で駆動される装置の別の構成を示している。層構造は
図5に示したものと似ているが、2つのベータボルタ装置の1つが
13C層と
12C層を反転させて変更し、装置の1つがスーパーキャパシタに変換される点が異なる。この構成は、中央電極10、端部電極12、炭素-14ダイヤモンド層20、炭素-12ダイヤモンド層14、および炭素-13ダイヤモンド層16を含む。したがって、この構造は、電極/
14Cダイヤモンド/
12Cダイヤモンド/
13Cダイヤモンド/電極の層構造を含むベータボルタ装置24を提供する。この構造は、電極/
14Cダイヤモンド/
13Cダイヤモンド/
12Cダイヤモンド/電極の層構造を含むスーパーキャパシタをさらに含む。
【0118】
図7に、熱電子ダイヤモンドエネルギー変換器の構成を示す。装置構成は、
図4に示すものと類似しており、第1の電極10、
14Cダイヤモンド層20、
12Cダイヤモンド層14、
13Cダイヤモンド層16、および第2の電極12を含む。電気負荷26もまた、第1の電極と第2の電極との間に結合されて示され、電気負荷26との間の矢印で示されるように電流が流れる。この構成では、第1の電極10は加熱22され、第2の電極12は冷却24される。したがって、カソード12とコレクタ12との間に熱バイアスを提供するために、熱カソード12および冷却されたコレクタ12が提供される。一構成では、太陽熱電子ダイヤモンドエネルギー変換器を提供するために、太陽光によるカソードの加熱が提供される。
【0119】
図8は、熱電子ベータショットキーエミッタ構成を示している。この場合も、装置構成は、
図4に示すものと類似しており、第1の電極10、
14Cダイヤモンド層20、
12Cダイヤモンド層14、
13Cダイヤモンド層16、および第2の電極12を含む。ここでの違いは、ホットエレクトロン28が真空ギャップまたはチャンバに放出されるように、第2の電極に貫通孔が設けられていることである。
【0120】
図9は、電荷を蓄積するためのキャパシタを含む、ダイヤモンドショットキーダイオードのベータボルタ構成を示す。この場合も、装置構成は、
図4に示すものと類似しており、第1の電極10、
14Cダイヤモンド層20、
12Cダイヤモンド層14、
13Cダイヤモンド層16、および第2の電極12を含む。キャパシタ30は、その後の使用のために有用な量の電荷を蓄積することができるように、層構造から少量の電荷を収集するために設けられる。
【0121】
一般的には、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体と、
を含み、
半導体は、バイアス電圧を印加せずに放射線にさらされると、第1の電極と第2の電極との間に電子の流れを生成するダイヤモンド材料を含み、
放射線で駆動される装置は、ダイヤモンド材料から流出する電荷を蓄積するために、第1および第2の電極に結合された電荷蓄積装置をさらに含む、装置構造を提供することができる。
【0122】
これに関して、バイアス電圧なしで放射線にさらされると、ダイヤモンドベースの構成が電荷の流れを提供できることが分かった。しかし、特定の用途では電荷の流れは依然として比較的小さいため、ダイヤモンド材料から流れ出る電荷を蓄積するために、第1および第2の電極に結合されたキャパシタなどの電荷蓄積装置を設けることが有利である。したがって、電荷を蓄積して利用することができる。電荷蓄積装置を充電するために、電荷の流れを強化することもできる。例としては、電極/ダイヤモンド界面を介したショットキーバイアス効果の使用、および/または第1の電極の加熱および/または第2の電極の冷却による熱バイアスが挙げられる。線源は装置の外部にあってもよく、使用中、装置はガンマ照射場などの放射線場に配置される。あるいは、線源は、例えば前述の方法で装置に組み込まれてもよい。
【0123】
図示されている装置構造は、平面の層構造で示されているが、特定の用途のために非平面の層構造が設けられ得ることも想定される。例えば、シリンダーに保存された放射性廃棄物の場合、本明細書に記載の装置構造は、それらが放射性シリンダーを取り囲むように円筒状に組み上げられ得ることが想定される。
【0124】
また、前述の構成はすべて、用途の要件に応じて様々な方法で組み合わせることができることも理解されよう。
【0125】
電源
図10は、本明細書に記載の電源100の図的記述を提供する。電源100は、ダイヤモンド材料を含む半導体14と、ダイヤモンド材料内に埋め込まれた放射線源と、を含む放射性同位体電源である。
図10に示す構成では、放射線源は
14Cであり、これはダイヤモンド材料、この例ではホウ素がドープされたダイヤモンド材料に置換的に組み込まれている。放射線源
14Cがベータ放射(e
ー)を介して崩壊するにつれて、電源100は電力を供給する。
【0126】
図11は、本明細書に記載の電源100の図的記述を提供する。電源100は、ダイヤモンド材料を含む半導体14と、ダイヤモンド材料内に埋め込まれた放射線源と、を含む放射性同位体電源である。
図10に示す構成では、放射線源は
14Cであり、これはダイヤモンド材料、この例ではホウ素がドープされたダイヤモンド材料に置換的に組み込まれている。放射線源
14Cがベータ放射(e
ー)を介して崩壊するにつれて、電源100は電力を供給する。
【0127】
図12は、本明細書に記載の電源100の略図である。電源100は、ダイヤモンド材料を含む半導体14と、ダイヤモンド材料内に埋め込まれた放射線源と、を含む放射性同位体電源である。
図12に示す電源100はまた、ショットキーコンタクトを提供するショットキー金属層12を含む。
【0128】
製造方法
本明細書に記載の様々な構成に従って装置に組み込むためのダイヤモンド材料を製造するために、化学蒸着(CVD)技術を使用することができる。CVDダイヤモンド合成は、当技術分野で周知である。国際公開第0196633号には、高純度の電子グレードの単結晶CVDダイヤモンド材料を製造する一例が記載されている。このような高純度の合成ダイヤモンド材料は、不純物が電荷トラップとして機能する低純度のダイヤモンド材料と比較して、電荷移動度と電荷寿命特性が優れているため、ここで説明する装置に特に有用である。しかしながら、例えば窒素がドープされた単結晶ダイヤモンド材料、ホウ素がドープされた単結晶CVDダイヤモンド材料、および多結晶ダイヤモンド材料を製造するものを含む他の周知のダイヤモンド合成技術を使用できることも想定される。
【0129】
製造技術は、成長中のダイヤモンド格子に組み込まれる同位体精製された出発物質を利用することにより、標準的なダイヤモンド合成プロセスと比較して改変されている。例えば、メタンまたは代替的炭素含有ガスをC-12、C-13、および/またはC-14の形で提供して、炭素同位体濃度が変化する層構造の連続単結晶CVDダイヤモンド格子を提供することができる。単結晶CVDダイヤモンド材料の同位体精製された層の製造は、当技術分野で公知である。ここで異なるのは、C-12、C-13、およびC-14ダイヤモンド層の特定の組み合わせを使用して、例えば出力電圧を向上させた放射線で駆動される装置を改善できるという発見である。
【0130】
放射線源が埋め込まれたダイヤモンド材料は、合成ダイヤモンド材料の形成中に放射性同位体の原子が例えば化学蒸着(CVD)によって(例えば、置換的にまたは格子間に)組み込まれる、ダイヤモンド材料を合成的に生成することによって提供されてもよい。
【0131】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料は、
炭素原子を含む炭素含有ガスと、放射性同位体源原子を含む放射性同位体源ガスを提供するステップと、
化学蒸着により炭素原子と放射性同位体源原子を堆積させ、ダイヤモンド材料を形成するステップと、によって合成的に得ることができる。
【0132】
炭素含有ガスは、12C、13C、および/または14Cを含んでもよい。特定の実施形態では、炭素含有ガスは12Cおよび/または13Cを含む。特定の実施形態では、炭素含有ガスは12Cを含む。
【0133】
放射性同位体源ガスは、重水素、トリチウム、13C、14C、および/または33Pを含んでもよい。特定の実施形態では、放射性同位体源ガスは、放射性同位体含有ガスである。放射性同位体含有ガスは、トリチウム、14C、および/または33Pを含んでもよい。放射性同位体含有ガスは、トリチウムおよび/または14Cを含んでもよい。放射性同位体含有ガスは14Cを含んでもよい。
【0134】
放射性同位体源ガスは、放射性同位体原子(すなわち、放射性同位体含有ガス)の原子または中性子照射により放射性同位体に変換され得る非放射性同位体の原子を含んでもよい。例えば、放射性同位体源ガスは、放射性同位体原子としてトリチウム、14C、および/または33Pを、ならびに/あるいは中性子照射で放射性同位体に変換される原子として13Cおよび/または重水素を含んでもよい(重水素は中性子照射を使用してトリチウムに変換でき、13Cは中性子照射を使用して10Beに変換できる)。
【0135】
特定の実施形態では、炭素含有ガスは12Cおよび/または13Cを含み、放射性同位体源ガスは14C、重水素および/またはトリチウムを含む。
【0136】
特定の実施形態では、炭素含有ガスは12Cおよび/または13Cを含み、放射性同位体源ガスは14Cおよび/またはトリチウムを含む。特定の実施形態では、炭素含有ガスは12Cを含み、放射性同位体源ガスは14Cおよび/またはトリチウムを含む。
【0137】
特定の実施形態では、炭素含有ガスは12Cを含み、放射性同位体源ガスは13Cおよび/または重水素を含む。
【0138】
特定の実施形態では、ダイヤモンド材料を合成的に生成するプロセスは、化学蒸着によって生成されたダイヤモンド材料に中性子を照射して、放射線源が埋め込まれたダイヤモンド材料を生成することをさらに含む。例えば、プロセスは、12Cを含む炭素含有ガスと、13Cおよび/または重水素を含む放射性同位体源ガスとを提供すること、化学蒸着により炭素原子と放射性同位体源原子を堆積させて、ダイヤモンド材料を形成すること、および化学蒸着によって堆積されたダイヤモンド材料に中性子を照射して、放射線源が埋め込まれたダイヤモンド材料を形成することを含んでもよく、放射線源は10Be、14C、および/またはトリチウムである。
【0139】
物理蒸着法(PVD)プロセスを使用してダイヤモンド材料に電極コンタクトを提供し、電気回路への接続を可能にする。繰り返しになるが、ダイヤモンド材料への電気コンタクトを提供するための金属化技術は、当技術分野で公知である。本発明の特定の実施形態は、バイアス電圧を印加せずに放射線にさらされたときにダイヤモンド材料を通る電荷流をバイアスする能力に基づいて、電極に特定の金属を選択する。
【0140】
放射性同位体としてトリチウムおよび/または14Cを使用する利点は、これらが両方とも原子力発電所の副産物であることである。トリチウムは原子力発電所の冷却水で形成され、通常、トリチウムを含む水は制御され監視された条件下で原子力発電所から放出される。このトリチウム含有水は、トリチウムを含む酸素と水素ガスに電解分解できる。その後に、水素ガスを含むトリチウムは、水素プラズマ化学蒸着(CVD)ダイヤモンド合成プロセスで使用することができる。水素プラズマCVDダイヤモンド合成プロセスは、ダイヤモンド格子内にかなりの量の水素を取り込む傾向があるため、この手法を使用すると、かなりの量のトリチウムをダイヤモンド格子に取り込むことができる。いくつかの例では、CVDダイヤモンド合成用の水素プラズマは重水素を含んでもよい。ダイヤモンド格子に組み込まれた重水素は、中性子照射によってトリチウムに変換され得る。
【0141】
14Cは、原子力発電所の副産物でもあり、核反応を緩和するために使用される中性子照射グラファイト棒またはブロックの表面層として形成されることが分かっている。14Cはブロックから抽出され、次に、例えば水素との反応または水蒸気との触媒反応を介してメタンに変換される。メタンは従来、水素プラズマCVDダイヤモンド合成プロセスの炭素源として使用されている。そのようなものとして、14Cはそのような水素プラズマCVDダイヤモンド合成プロセスで炭素源として使用でき、14Cを組み込んだダイヤモンド格子が得られる。
【0142】
あるいは、グラファイトを含む固体14Cを、プラズマがグラファイトをエッチングするような位置のCVD反応器内に置くことができ、その後グラファイトは成長中のダイヤモンド格子に組み込まれる。
【0143】
あるいは、14Cを含む固体グラファイト材料は、従来のように金属触媒組成物を使用して高圧および高温下でグラファイトをダイヤモンドに変換する高圧高温ダイヤモンド合成プロセスで使用することができる。
【0144】
前述の手法を使用すると、原子力発電所の放射性副産物をダイヤモンド材料に封入して安全にすることができ、その結果得られたダイヤモンド材料を利用して、例えば放射性同位体電池を構築し、問題になる廃棄物を有用な電源に変換することができる。
【0145】
14Cをダイヤモンド格子に組み込む別の手法は、合成中にダイヤモンド材料に窒素をドープし、次に窒素をドープしたダイヤモンド材料に中性子を照射して14Nを14Cに変換することである。例えば、窒素をドープしたダイヤモンドのC-13層を成長させ、照射して14Nを14Cに変換することができる。この手法でダイヤモンドのC-13層を使用する利点は、C-13のごく一部がC-14に変換されることである。あるいは、合成中に天然の同位体存在量のダイヤモンド材料に窒素ドープしてから、窒素をドープしたダイヤモンド材料に中性子を照射して14Nを14Cに変換すれば十分であろう。
【0146】
あるいは、CVDダイヤモンド合成中に13C含有種を成長プラズマに導入し、13Cを含むダイヤモンド材料に中性子を照射して10Beを形成することにより、ベリリウム-10をダイヤモンド格子内に組み込むことができる。
【0147】
あるいは、CVDダイヤモンド合成中にリン含有種を成長プラズマに導入することにより、またはその後のイオン注入により、リンをダイヤモンド格子内に組み込むことができることも知られている。しかし、これらのドーピング/変換/注入の手法では、同位体精製された出発物質を使用した場合と同じレベルの同位体純度が得られないことに留意されたい。
【0148】
用途
本明細書に記載の技術は、核廃棄物を使用して原子力電池で電気を生成するために開発された。本発明者らは、放射性場、例えばガンマ線場に置かれたときに有用な電流を生成できる合成ダイヤモンドサンプルを成長させた。さらに、例えば、ダイヤモンド格子内にベータ放射14Cの形で独自の電源を組み込んだ合成ダイヤモンドサンプルを成長させた。
【0149】
これらの開発は、核廃棄物、クリーンな発電、電池寿命の問題のいくつかを解決する可能性を秘めている。エネルギーを使用してワイヤのコイルを通る磁石を移動させて電流を生成する大部分の発電技術とは異なり、合成ダイヤモンドのサンプルは、放射線源の近くに配置するだけおよび/または独自の放射性同位体源を組み込むだけで電荷を生成することができる。可動部品、排出物、メンテナンスは不要で、直接発電するだけである。放射性物質をダイヤモンドの内部に封入することにより、核廃棄物の長期的な問題は、原子力電池と長期のクリーンエネルギーの供給に変わった。
【0150】
初期の研究では、ニッケル-63を線源として使用したダイヤモンド電池のプロトタイプが実証された。しかし、原子力発電所での反応を緩和するために使用されるグラファイトブロックで生成される炭素の放射性バージョンである炭素-14を利用することにより、効率が大幅に向上した。研究により、放射性炭素-14はこれらのブロックの表面に集中し、それを処理して放射性物質の大部分を除去できることが示されている。抽出された炭素-14は、その後に、ダイヤモンド材料に組み込まれ、原子力電池を生産する。英国だけで現在、執筆時点で約95,000トンのグラファイトブロックを保持しており、これらのブロックから炭素-14を抽出することにより、放射能が低下し、この核廃棄物を安全に保管するコストと課題が削減される。
【0151】
特定の構成によれば、炭素-14は短距離放射を放出するため、放射源材料として選択され、この放射は固体材料にすばやく吸収される。これにより、摂取したり、裸の皮膚に触れたりすることは危険になるが、ダイヤモンド材料内に安全に保持されている場合、短距離放射線は逃げることができない。実際、ダイヤモンドは人間に知られている最も硬い物質であるため、放射性廃棄物を安全に保管するのに理想的な材料である。
【0152】
低電力にもかかわらず、現在の電池技術と比較して、ここで説明するダイヤモンド電池の寿命は、長期間にわたって装置の電源供給に革命をもたらす可能性がある。各電池の実際の炭素-14の量は、用途の要件によって異なる。1gの炭素-14を含む1つの電池は、1日あたり15ジュールを供給する。これは標準の単3電池よりも少ない。しかし、標準のアルカリ単3電池は短時間で放電するように設計されている。重量が約20gの1つの電池は、エネルギー貯蔵定格が700J/gである。連続して動作すると、これは24時間で切れるであろう。炭素-14を使用すると、電池が50%の電力に達するまでに5,730年かかる。これは、人間の文明が存在するのとほぼ同じである。
【0153】
これらの電池は、従来の電池の充電または交換が不可能な状況で使用されることが想定されている。用途には、ペースメーカー、衛星、高高度ドローン、宇宙船、海底通信、監視装置など、エネルギー源の長寿命が必要な低電力電気装置が含まれる。別の用途は、自己給電装置を使用して放射性廃棄物を監視するシステムである。これに関して、本明細書に記載の装置は、非電圧バイアスモードと電圧バイアスモードの動作を切り替えることにより、電池と検出器の両方として機能するように適合させることができる。例えば高放射線環境における放射線、湿度、温度、ガスの監視用に、自己給電センサ装置が想定されている。本質的に、この技術は、装置のオン/メモリの保持などのために常に低電力が必要な用途や、装置の場所が難しいために電池の交換が不可能/本質的に高価な用途のために設計されている。市場としては、限定はしないが、「モノのインターネット」、宇宙探査、車両のタイヤ空気圧監視、特定の埋め込み型医療装置が挙げられる。また、電子用途でダイヤモンド材料を使用する場合、ダイヤモンド材料を電源およびヒートスプレッダまたはヒートシンクの両方として使用できることも想定されている。
【0154】
さらに別の用途は、ダウンホール掘削である。ダイヤモンドは、ドリル性能を向上させるために、ドリルビットのカッターとしてすでに使用されている。また、ドリル性能を最適化するための多数のパラメータを検出するためのセンサがドリルビットまたはドリルストリングに装備されている。掘削中のダウンホールの物理的および化学的環境は困難である。したがって、そのような用途における堅牢な放射線で駆動されるダイヤモンド装置の提供は、いくつかの点でより標準的な電源よりも有利であろう。
【0155】
また、本明細書に記載の放射線で駆動される装置を超えて、他のダイヤモンド製品を提供できることも想定される。すなわち、一般的に、放射性廃棄物をダイヤモンド材料で封入することを含む放射性廃棄物の処理方法が提供される。次いで、ダイヤモンド材料は、当技術分野で知られているように、様々な用途に利用することができる。
【0156】
本発明を特定の実施形態に関して説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な代替実施形態を提供できることが理解されよう。
【0157】
特に明記しない限り、従属請求項の特徴は、他の従属請求項の特徴、および他の独立請求項の特徴と組み合わせることができる。
【0158】
本発明の態様は、以下の番号を付した記述で説明することができる。
【0159】
1.放射線で駆動される装置であって、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体と、
第1の電極と第2の電極との間の半導体を通る電子の流れを生成するように構成される放射線源と、を含み、
半導体はダイヤモンド材料を含み、
放射線源はダイヤモンド材料内に埋め込まれている、放射線で駆動される装置。
【0160】
2.ダイヤモンド材料内に埋め込まれた放射線源は、トリチウム、14C、およびリン-33のうちの1つまたは複数で形成される、記述1に記載の放射線で駆動される装置。
【0161】
3.放射線源は14Cおよび/またはトリチウムである、
記述2に記載の放射線で駆動される装置。
【0162】
4.放射線源は14Cである、
記述3に記載の放射線で駆動される装置。
【0163】
5.ダイヤモンド材料は、放射線源を含む少なくとも1つの層と、放射線源を含まない少なくとも1つの層と、を含む層構造を有する、
記述1から4のいずれかに記載の放射線で駆動される装置。
【0164】
6.層構造は、放射線源を含む複数の層と、放射線源を含まない複数の層と、を有する、
記述5に記載の放射線で駆動される装置。
【0165】
7.放射線源は、50ナノメートルから150マイクロメートル、任意選択で500ナノメートルから50マイクロメートルの範囲の厚さを有するダイヤモンドの層で設けられる、
記述1から6のいずれかに記載の放射線で駆動される装置。
【0166】
8.放射線源は、少なくとも0.1%、1%、5%、10%、20%、50%、75%、85%、95%、99%、または99.9%の原子濃度でダイヤモンド材料内に提供される、
記述1から7のいずれかに記載の放射線で駆動される装置。
【0167】
9.ダイヤモンド材料は、天然の同位体存在量と比較して増加した13C含有量を有する同位体精製ダイヤモンド材料を含む13Cダイヤモンド領域を含む、
記述1から8のいずれかに記載の放射線で駆動される装置。
【0168】
10.13Cダイヤモンド領域は、200ナノメートルから2ミリメートルの範囲の厚さを有する層の形態である、
記述9に記載の放射線で駆動される装置。
【0169】
11.13Cダイヤモンド領域の13C原子濃度は、少なくとも0.1%、1%、5%、10%、20%、50%、75%、85%、95%、99%、または99.9%である、
記述9または10に記載の放射線で駆動される装置。
【0170】
12.ダイヤモンド材料は、炭素同位体の天然存在量が1.1%以内であるダイヤモンド材料の層を含む12Cダイヤモンド層を含む、
記述1から11のいずれかに記載の放射線で駆動される装置。
【0171】
13.12Cダイヤモンド層は、200ナノメートルから2ミリメートル、任意選択で1マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲の厚さを有する、
記述12に記載の放射線で駆動される装置。
【0172】
14.ダイヤモンド材料は、ダイヤモンドを含む14Cの層、12Cダイヤモンドの層、および13Cダイヤモンドの層を含む三層構造を含む、
記述1から13のいずれかに記載の放射線で駆動される装置。
【0173】
15.ダイヤモンド材料は、その少なくとも1つの領域において5ppm、1ppm、500ppb、300ppbまたは100ppb以下の単一置換窒素濃度を有する、
記述1から14のいずれかに記載の放射線で駆動される装置。
【0174】
16.第1の電極はオーミックコンタクトを形成する、
記述1から15のいずれかに記載の放射線で駆動される装置。
【0175】
17.第1の電極は炭化物形成材料の層と貴金属層とを含む、
記述16に記載の放射線で駆動される装置。
【0176】
18.第2の電極はショットキーコンタクトを形成する、
記述1から17のいずれかに記載の放射線で駆動される装置。
【0177】
19.第2の電極は、金属または金属合金で形成され、金属または金属合金は、20以下の原子番号zを有する1つまたは複数の金属で形成される、
記述18に記載の放射線で駆動される装置。
【0178】
20.第2の電極はAlまたはLiAlで形成される、
記述19に記載の放射線で駆動される装置。
【0179】
21.ダイヤモンド材料は、20マイクロメートルから25ミリメートル、任意選択で20マイクロメートルから20ミリメートル、任意選択で50マイクロメートルから1500マイクロメートルの範囲の厚さを有する、
記述1から20のいずれかに記載の放射線で駆動される装置。
【0180】
22.放射線で駆動される装置は、第1の電極と第2の電極との間に熱バイアスを提供するように構成される、
記述1から21のいずれかに記載の放射線で駆動される装置。
【0181】
23.ダイヤモンド材料から流出する電荷を蓄積するために、第1および第2の電極に結合された電荷蓄積装置をさらに含む、
記述1から22のいずれかに記載の放射線で駆動される装置。
【0182】
24.放射線で駆動される装置であって、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体と、を含み、
半導体は、放射線にさらされたときに第1の電極と第2の電極との間に電子の流れを生成するダイヤモンド材料を含み、
ダイヤモンド材料は、天然の同位体存在量と比較して増加した13C含有量を有する同位体精製ダイヤモンド材料を含む13Cダイヤモンド領域を含む、
放射線で駆動される装置。
【0183】
25.放射線で駆動される装置であって、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体と、
第1の電極と第2の電極との間の半導体を通る電子の流れを生成するように構成される放射線源と、を含み、
半導体はダイヤモンド材料を含み、
放射線源は14Cで形成される、放射線で駆動される装置。
【0184】
26.放射線で駆動される装置であって、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間に配置された半導体と、を含み、
半導体は、バイアス電圧を印加せずに放射線にさらされると、第1の電極と第2の電極との間に電子の流れを生成するダイヤモンド材料を含み、
放射線で駆動される装置は、ダイヤモンド材料から流出する電荷を蓄積するために、第1および第2の電極に結合された電荷蓄積装置をさらに含む、放射線で駆動される装置。
【0185】
27.放射性廃棄物をダイヤモンド材料で封入することを含む放射性廃棄物を処理する方法。
【0186】
28.放射性廃棄物は14Cまたはトリチウムである、記述27に記載の方法。