(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20220509BHJP
G02B 30/27 20200101ALI20220509BHJP
G02B 30/30 20200101ALI20220509BHJP
H04N 13/302 20180101ALI20220509BHJP
H04N 13/346 20180101ALI20220509BHJP
G02B 5/124 20060101ALI20220509BHJP
G03B 35/00 20210101ALI20220509BHJP
【FI】
G02B30/56
G02B30/27
G02B30/30
H04N13/302
H04N13/346
G02B5/124
G03B35/00
(21)【出願番号】P 2020201377
(22)【出願日】2020-12-03
(62)【分割の表示】P 2016170376の分割
【原出願日】2016-08-31
【審査請求日】2021-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2015238993
(32)【優先日】2015-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「超高速視覚情報提示サブシステムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕紹
(72)【発明者】
【氏名】徳田 雄▲嵩▼
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀征
(72)【発明者】
【氏名】黒川 菜緒
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-040944(JP,A)
【文献】特開2004-294668(JP,A)
【文献】特開2006-309115(JP,A)
【文献】特開2006-030507(JP,A)
【文献】欧州特許第00460873(EP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0248014(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/00 - 30/60
H04N 13/30 - 13/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S波偏光を出射するS波出射部とP波偏光を出射するP波出射部とを備え、前記S波偏光と前記P波偏光とを含む光を出射するディスプレイと、
入射する光の電界振動方向に(π/2)の位相差を与えて当該光を透過させる第一波長板と、
前記ディスプレイ側から入射した光を透過させ、前記ディスプレイ側とは反対側から入射した光を再帰反射する第一再帰反射部と、
入射する光の電界振動方向に(π/2)の位相差を与えて当該光を透過させる第二波長板と、
前記ディスプレイ側から入射した光を反射光と透過光とに分岐する光分岐部と、
を備え、
前記ディスプレイ、前記第一波長板、前記第一再帰反射部、前記第二波長板、及び前記光分岐部がこの順に配置され、
前記ディスプレイから出射された光が前記第一波長板、前記第一再帰反射部、及び前記第二波長板を透過して、前記光分岐部に入射し、
前記光分岐部で反射された光が前記第二波長板を透過して前記第一再帰反射部で再帰反射される、
表示装置。
【請求項2】
S波偏光を出射するS波出射部とP波偏光を出射するP波出射部とを備え、前記S波偏光と前記P波偏光とを含む光を出射するディスプレイと、
透過型視差バリア、透過型パララックスバリア、及び透過型レンチキュラーレンズのうち少なくとも何れかを備える3次元フィルムと、
前記ディスプレイ側から入射した光を透過させ、前記ディスプレイ側とは反対側から入射した光を再帰反射する第一再帰反射部と、
前記ディスプレイ側から入射した光を反射光と透過光とに分岐する光分岐部と、
を備え、
前記ディスプレイ、前記3次元フィルム、前記第一再帰反射部、及び前記光分岐部がこの順に配置され、
前記ディスプレイから出射された光が前記3次元フィルム及び前記第一再帰反射部を透過して、前記光分岐部に入射し、
前記光分岐部で反射された光が前記第一再帰反射部で再帰反射される、
表示装置。
【請求項3】
前記3次元フィルムは、前記ディスプレイから出射された前記S波偏光を第1観測位置に向けて出射し、前記ディスプレイから出射された前記P波偏光を前記第1観測位置とは異なる第2観測位置に向けて出射する、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記ディスプレイの面内の所定の領域毎に当該領域から出射される前記S波偏光又は前記P波偏光が調節可能である、
請求項1から3の何れか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信・放送、エンターテイメント、アート、医療等をはじめとする分野において、環境や空間を利用し、特殊なメガネ等をかけなくても見える像を三次元空間内に表示可能な空中表示技術が注目されている。前述のように三次元空間内に像を表示する方法の一つとして、再帰反射を用いた空中表示(Aerial Imaging by Retro-Reflection:AIRR)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
図51に示す表示装置101は、AIRRの構成の一例であり、ディスプレイD1等に設けられた光源Sと、ハーフミラー104と、再帰反射部106と、を備える。光源Sから出射された光L1のうち、光L101の一部は、ハーフミラー104によって反射光L102として反射される。反射光L102は、再帰反射部106に入射し、再帰反射部106によって入射方向と同じ方向に反射され、反射光L103としてハーフミラー104に入射すると共に、ハーフミラー104を透過し、ハーフミラー104に対してディスプレイD1の面対称となる位置Q1に空中像Iを形成する。ユーザには、ハーフミラー104に対して光源Sとは反対側の観察方向E0から空間A(即ち、ハーフミラー104に対してユーザがいる空間)内に表示された空中像Iが見える。ここで、ユーザが観察できる空中像Iは、ユーザの視点位置からハーフミラー104を通して再帰反射部106が見える範囲に限られる。空中像Iが形成されていても、ユーザーにはある領域Z1内の空中像しか観察できない。
【0004】
また、特許文献1には、部品数を抑えた構成の一例として、対象物(光源)からの光の通路に置かれるビーム分割装置、及びビーム分割装置により透過または反射させられる対象物からの光の通路に置かれる再帰反射手段を有する表示装置が開示されている。特許文献1に記載の表示装置において、ビーム分割装置は、不透明な表面における開口部に装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】H.Yamamoto,Y.Tomiyama,S,Suyama,“Floating aerial LED signage based on aerial imaging by retro-reflection (AIRR)”,Optics Express,Vol.22,No.22,pp.26919-26924(2014).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図51に示す表示装置101では、光L1のうち、光L105,L108の一部は、ハーフミラー104によって反射された後、反射光L106,L109としてディスプレイDに入射し、空中像Iの形成に寄与しない。即ち、従来のAIRRに基づく表示装置では、光L1において空中像Iを形成しない光105が含まれるため、空中像Iが見える角度θ101が小さくなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、空中に形成される像(空中像)をより広い角度から観察可能とする表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る表示装置は、S波偏光を出射するS波出射部とP波偏光を出射するP波出射部とを備え、前記S波偏光と前記P波偏光とを含む光を出射するディスプレイと、入射する光の電界振動方向に(π/2)の位相差を与えて当該光を透過させる第一波長板と、前記ディスプレイ側から入射した光を透過させ、前記ディスプレイ側とは反対側から入射した光を再帰反射する第一再帰反射部と、入射する光の電界振動方向に(π/2)の位相差を与えて当該光を透過させる第二波長板と、前記ディスプレイ側から入射した光を反射光と透過光とに分岐する光分岐部と、を備え、前記ディスプレイ、前記第一波長板、前記第一再帰反射部、前記第二波長板、及び前記光分岐部がこの順に配置され、前記ディスプレイから出射された光が前記第一波長板、前記第一再帰反射部、及び前記第二波長板を透過して、前記光分岐部に入射し、前記光分岐部で反射された光が前記第二波長板を透過して前記第一再帰反射部で再帰反射される。
【0010】
本発明に係る表示装置は、S波偏光を出射するS波出射部とP波偏光を出射するP波出射部とを備え、前記S波偏光と前記P波偏光とを含む光を出射するディスプレイと、透過型視差バリア、透過型パララックスバリア、及び透過型レンチキュラーレンズのうち少なくとも何れかを備える3次元フィルムと、前記ディスプレイ側から入射した光を透過させ、前記ディスプレイ側とは反対側から入射した光を再帰反射する第一再帰反射部と、前記ディスプレイ側から入射した光を反射光と透過光とに分岐する光分岐部と、を備え、前記ディスプレイ、前記3次元フィルム、前記第一再帰反射部、及び前記光分岐部がこの順に配置され、前記ディスプレイから出射された光が前記3次元フィルム及び前記第一再帰反射部を透過して、前記光分岐部に入射し、前記光分岐部で反射された光が前記第一再帰反射部で再帰反射される。
【0011】
本発明に係る表示装置では、前記3次元フィルムは、前記ディスプレイから出射された前記S波偏光を第1観測位置に向けて出射し、前記ディスプレイから出射された前記P波偏光を前記第1観測位置とは異なる第2観測位置に向けて出射してもよい。
【0012】
本発明に係る表示装置では、前記ディスプレイの面内の所定の領域毎に当該領域から出射される前記S波偏光又は前記P波偏光が調節可能であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の表示装置及び空中像の表示方法では、第一光源から出射された第一光の少なくとも一部の光が、第一光分岐部によって第一反射光として反射された後、第一再帰反射部によって第一光分岐部に向けて反射され、第一光分岐部を透過し、空中像を形成することができる。即ち、従来の表示装置では空中像が形成されなかった位置にも第一反射光が到達するので、空中像を形成することができる。従って、本発明によれば、空中像をより広い角度から観察可能とする表示装置及び空中像の表示方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る第一実施形態の表示装置の構成を示す概略図である。
【
図2】本発明に係る第一実施形態の表示装置に用いられる再帰反射部の構造の第一例を示す側面図である。
【
図3】本発明に係る第一実施形態の表示装置に用いられる再帰反射部の構造の第二例を示す側面図である。
【
図4】本発明に係る第二実施形態の表示装置の構成を示す概略図である。
【
図5】本発明に係る第三実施形態の表示装置の構成を示す概略図である。
【
図6】本発明に係る第三実施形態の表示装置の変形例の構成を示す概略図である。
【
図7】本発明に係る第四実施形態の表示装置の構成を示す概略図である。
【
図8】本発明に係る第五実施形態の表示装置の構成を示す概略図である。
【
図9】本発明に係る第六実施形態の表示装置の構成を示す概略図である。
【
図10】
図9に示す表示装置の第四ディスプレイの平面図である。
【
図11】本発明に係る第六実施形態の第一変形例である表示装置の構成を示す概略図である。
【
図12】本発明に係る第六実施形態の第二変形例である表示装置の構成を示す概略図である。
【
図13】本発明に係る第七実施形態の表示装置の構成を示す概略図である。
【
図14】本発明に係る第八実施形態の表示装置の構成を示す概略図である。
【
図15】本発明に係る第九実施形態の表示装置の構成を示す概略図である。
【
図16】本発明に係る第九実施形態の第一変形例である表示装置の構成を示す概略図である。
【
図17】本発明に係る第九実施形態の別の変形例である表示装置の構成を示す概略図である。
【
図18】本発明に係る第九実施形態の第二変形例である表示装置の構成を示す概略図である。
【
図19】本発明に係る第十実施形態の表示装置の構成を示す概略図である。
【
図20】本発明に係る第十実施形態の表示装置の別の構成を示す概略図である。
【
図21】本発明に係る第十実施形態の表示装置のさらに別の構成を示す概略図である。
【
図22】本発明に係る第十実施形態の表示装置の他の構成を示す概略図である。
【
図23】本発明に係る第十実施形態の表示装置のさらに他の構成を示す概略図である。
【
図24】本発明に係る表示装置の第一変形例の構成を示す概略図である。
【
図25】本発明に係る表示装置の第二変形例の構成を示す概略図である。
【
図26】本発明に係る表示装置であって、筐体に収められた表示装置の構成を示す概略図である。
【
図27】本発明に係る表示装置の使用例を示す概略図である。
【
図28】実施例1の表示装置1Aによって表示された空中像及び光源による直接透過光の写真である。
【
図29】実施例2の表示装置1Eによって表示された空中像及び光源による直接透過光の写真である。
【
図30】実施例3の表示装置1Gによって表示された空中像及び光源による直接透過光の写真である。
【
図31】実施例3の表示装置1G´によって表示された空中像及び光源による直接透過光の写真である。
【
図32】実施例4の表示装置1Hによって表示された空中像及び光源による直接透過光の写真である。
【
図33】実施例5の表示装置1Kによって表示された空中像及び光源による直接透過光の写真である。
【
図34】実施例6の表示装置1Pによって表示された空中像の写真である。
【
図35】実施例6の表示装置1Qによって表示された空中像の写真である。
【
図36】実施例7及び比較例1で用いられた特殊カラーディスプレイの出射像である。
【
図37】比較例1の表示装置CTによって表示された空中像の写真である。
【
図38】実施例7の表示装置1T(1)によって表示された空中像の写真である。
【
図39】実施例7の表示装置1T(2)によって表示された空中像の写真である。
【
図40】実施例7の表示装置1T(3)によって表示された空中像の写真である。
【
図41】実施例7の表示装置1T(4)によって表示された空中像の写真である。
【
図42】実施例8の表示装置1T(2)によって表示された空中像を、空中像に対して正対する向きの左側で撮影した写真である。
【
図43】実施例8の表示装置1T(2)によって表示された空中像を、空中像に対して正対する向きの正面で撮影した写真である。
【
図44】実施例8の表示装置1T(2)によって表示された空中像を、空中像に対して正対する向きの右側で撮影した写真である。
【
図45】実施例8の表示装置1T(2)によって表示された別の空中像を、空中像に対して正対する向きの左で撮影した写真である。
【
図46】実施例8の表示装置1T(2)によって表示された別の空中像を、空中像に対して正対する向きの正面で撮影した写真である。
【
図47】実施例8の表示装置1T(2)によって表示された別の空中像を、空中像に対して正対する向きの右側で撮影した写真である。
【
図48】実施例9の表示装置の構成を示す概略図である。
【
図49】実施例9の表示装置において波長板53を配置する前に表示された空中像の写真である。
【
図50】実施例9の表示装置において波長板53を配置した際に表示された空中像の写真である。
【
図51】従来の表示装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る表示装置及び空中像の表示方法の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものであり、長さ、幅、及び厚みの比率等は実際のものと同一とは限らず、適宜変更できる。
【0029】
(第一実施形態)
図1に示すように、第一実施形態の表示装置1Aは、第一光源S1と、第一再帰反射部2Aと、第一光分岐部4と、第二再帰反射部6と、を備えている。
【0030】
第一光源S1は、例えばLEDであるが、特に限定されない。第一実施形態の表示装置1Aの第一光源S1は、第一ディスプレイD1の板面と平行に複数配列され、互いに光の出射方向を揃えて設けられている。なお、第一光源S1の数及び相対配置は、特に制限されない。
【0031】
本発明において、第一再帰反射部2は、第一光源S1から出射される第一光L1の出射方向E1を示す第一出射軸J1上の位置P2に配置されている。
第一実施形態の第一再帰反射部2Aは、第一出射軸J1上の第一光源S1を基準として出射方向E1に配置されている。第一再帰反射部2Aは、第一出射軸J1上において、第一ディスプレイD1(即ち、第一光源S1の位置PS1)の近傍に配置されていることが好ましい。第一再帰反射部2Aは、第一ディスプレイD1の第一光源S1の出射方向E1側に貼着され、第一ディスプレイD1と一体化されていてもよい。
【0032】
第一再帰反射部2Aは、公知の再帰反射構造を備えている。第一再帰反射部2Aの再帰反射構造としては、例えば、
図2及び
図3に示すように、少なくとも一以上の反射面12を有する単位構造10を複数備えた再帰反射構造3A,3Bが挙げられる。
【0033】
図2に示す再帰反射構造3Aの表面3a(即ち、光が入射する面)は平坦に形成されている。一方、再帰反射構造3Aの表面3bには、側面視した際に単位構造10を構成する三角形状が表面3bに沿って互いに隣接するように複数形成されている。
表面3aに入射した光L10aは、表面2aを透過し、単位構造10の反射面12aに光L10bとして入射する。光L10bは反射面12aよって反射され、光L10cとして単位構造10の反射面12cに向かって進む。再帰反射構造3Aにおいて、単位構造10の反射面12a,12cがなす内角は、所定の角度(即ち、略90°)に設定されている。従って、反射面12cに入射した光L10cは、反射面12cによって光L10bと平行する方向に光L10dとして反射され、表面3aから反射光L10eとして出射される。
なお、
図2では、表面3aを境界とする光10aから光10bへの屈折及び光10dから光10eへの屈折角の図示は省略する。
【0034】
図3に示す再帰反射構造3Bの表面3a,3bには、それぞれ側面視した際に単位構造10を構成する半円形状が表面3a,3bに沿って互いに隣接するように複数形成されている。即ち、再帰反射構造3Bは、微小な円柱体或いは球体を一方向に沿って互いに隣接するように複数並べられた構造である。
表面3aに入射した光L10aは、表面3aを透過し、表面3aによってその曲率に応じた屈折角で屈折し、光L10bとして単位構造10の反射面12aに向かって進む。反射面12aに入射した光L10bは、反射面12aによって反射し、反射光L10dとして表面3aに向かって進む。表面3a及び反射面12aが互いに対応して球をなすように形成されているので、反射面12aによって反射された光L10dは、表面3aによって光L10aと平行する方向に屈折され、表面3aから反射光L10eとして出射される。
【0035】
再帰反射構造3A,3Bを備えた第一再帰反射部2Aによれば、入射角と出射角が等しくなるので、第一再帰反射部2Aに入射する光は、再帰反射構造3Aの素材の屈折率によらず、入射方向と同じ方向に反射される。第一再帰反射部2Aは、再帰反射構造3A又は再帰反射構造3Bの表面3b側を第一光源S1に向けて配置されている。
【0036】
第一再帰反射部2Aの素材は、第一光L1を透過可能とし、第一再帰反射部2Aに第一光分岐部4側(即ち、出射方向E1の反対側)から入射する光を再帰反射可能であれば、特に限定されない。第一光L1が可視光であれば、第一光L1を再帰反射構造3A,3Bの内部でより高効率に透過させることが可能である点から、第一再帰反射部2Aの素材としては、例えば光学ガラス、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等が挙げられる。また、表面3b側、即ち反射面12a,12cには、不図示の反射物質が当接して設けられている。反射物質としては、第一光L1を出射方向E1に透過可能であって、第一再帰反射部2Aに対して出射方向E1の反対方向に入射する光(例えば、光L16等)を反射可能な物質が用いられ、例えば誘電体物質等が挙げられる。
【0037】
なお、第一再帰反射部2に入射する光を入射方向と同じ方向に反射させることができれば、第一再帰反射部2の構造及び素材は特に限定されない。
例えば、第一再帰反射部2としては、フルコーナーキューブ、キャットアイ再帰性反射材、レンチキュラーレンズと反射板とを組み合わせたもの、単レンズが縦横に接して配列されたレンズ(所謂、ハエの目レンズ、フライアイレンズ)と反射板とを組み合わせたもの、再帰性反射性能をコピーしたホログラム、空間光変調器(Spatial Light Modulator:SLM)や音響光変調器(Acoust Optic Modulator:AOM)等で構成可能であって再帰性反射機能をプログラムしたデジタルホログラム、位相共役鏡等が挙げられる。フルコーナーキューブとしては、例えば公知のプリズム型反射シート(例えば、http://www.yao-sangyo.co.jp/sign/prism_4090.html等参照)やクリスタルグレード(登録商標、例えば、http://www.carbide.co.jp/jp/viewer/file/product/4c74f1d8ac72dfc26d1e3587c0358529.pdfsurasshu4c74f1d8ac72dfc26d1e3587c0358529.pdf等参照)が挙げられる。
【0038】
第一光分岐部4は、第一再帰反射部2Aを透過した第一光L1の一部を第一反射光L2として第二再帰反射部6に向けて反射し、第二再帰反射部6によって反射された第一反射光L2の少なくとも一部を透過する。第一光分岐部4は、第一光源S1及び第一再帰反射部2Aよりユーザの観察位置側の所定の位置に配置されている。第一光分岐部4は、例えばハーフミラーであるが、上述のように第一光L1の一部を反射し、第一再帰反射部2Aによって反射された第一反射光L2の少なくとも一部を透過させることができれば、特に限定されない。このような第一光分岐部4としては、ハーフミラーの他に、例えばアクリルやガラスからなる板状部材、或いはこれらの素材から構成されて中空に水が収容された中空体、パンチングメタル等の開口列を有する板、ワイヤーグリッドフィルム、反射型偏光フィルム、その他、一般にビームスプリッターと呼ばれるもの等が挙げられる。
【0039】
第二再帰反射部6は、第一光分岐部4によって反射された第一反射光L2の出射方向E2を示す第二出射軸J2上の位置P6に配置されている。第二再帰反射部6の位置P6は、出射方向E2にあって、第一ディスプレイD1の位置PS1、第一再帰反射部2Aの位置P2、第一光分岐部4の位置P4を勘案し、第一反射光L2が入射可能な位置に、適切に設定されている。
【0040】
第二再帰反射部6は、公知の再帰反射構造を備えている。即ち、第二再帰反射部6の構造及び素材としては、前述した第一再帰反射部2と同様の構造及び素材が挙げられるが、第二再帰反射部6に入射する光を入射方向と同じ方向に反射させることができれば、特に限定されない。但し、第二再帰反射部6では第一反射光L2が透過する必要がないため、例えば再帰反射構造3A,3Bを採用した場合、表面3b側、即ち反射面12a,12cに設けられる反射物質としては、前述の誘電体物質等の他に、例えばアルミ、金、銀等が挙げられる。
【0041】
第一実施形態の表示装置1Aでは、第一光源S1から出射される第一光L1のうち、光L11の一部は、第一光分岐部4によって反射光L12(第一反射光L2)として反射される。反射光L12は、第二再帰反射部6に入射し、第二再帰反射部6によって入射方向と同じ方向に反射され、反射光L13として第一光分岐部4に入射すると共に、第一光分岐部4を透過し、第一光分岐部4の板面(即ち、反射面)に対して、第一光源S1と対称な位置Q1に空中像Iを形成する。
また、第一光L1のうち、光L15は、第一光分岐部4によって反射された後、反射光L16(第一反射光L2)として第一再帰反射部2Aに入射し、第一再帰反射部2Aによって入射方向と同じ方向に反射され、第一光分岐部4を透過し、第一光分岐部4の板面(即ち、反射面)に対して、第一光源S1と対称な位置Q1に空中像Iを形成する。
そして、例えば第一ディスプレイD1の一方の端部に配置された第一光源S1から出射された光L18(第一光L1)は、第一光分岐部4によって反射された後、反射光L19(第一反射光L2)として第一再帰反射部2Aに入射し、第一再帰反射部2Aによって入射方向と同じ方向に反射され、第一光分岐部4を透過し、第一光分岐部4の板面(即ち、反射面)に対して、第一光源S1と対称な位置Q2に空中像Iを形成する。
【0042】
以上説明した第一実施形態の表示装置1Aによれば、ユーザーは、空間A(即ち、第一光分岐部4に対してユーザがいる空間)内のある領域Z1に加えて、従来の表示装置では像が観察できなかった領域Z2にも空中像Iを観察することができる。従って、ユーザは、第一光分岐部4に対して第一光源S1とは反対側の観察方向E0から領域Z1及び領域Z2に表示された空中像Iを観察することができる。これにより、表示装置1Aにおいて空中像Iが見える角度θ1Aを大きくすることができる。また、
図1を参照するとわかるように、第一ディスプレイD1における第一光源S1の位置によらず、第一光源S1から出射された第一光L1の略全部を像Iの形成に寄与させることができるため、空中像Iの明るさの向上を図ることができる。
【0043】
(第二実施形態)
次いで、本発明に係る第二実施形態の表示装置1Bについて説明する。なお、
図4に示す第二実施形態の表示装置1Bの構成要素において、
図1等に示す第一実施形態の表示装置1Aの構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図4に示すように、表示装置1Bは、第一光源S1と、第一再帰反射部2Aと、第一再帰反射部2Aに対向するように配置された第一光分岐部4と、第一波長板21と、第二波長板22と、第一偏光分岐部25と、を備えている。
また、表示装置1Bでは、第一反射光L2が第一再帰反射部2Aに入射するように構成されている。
【0045】
第一再帰反射部2Aの配置については、ユーザが第一再帰反射部2Aによって形成される空中像Iと第一光源S1(即ち、直接透過光)とを一つに見ることができれば、特に限定されない。具体的には、ユーザの眼の位置と空中像Iとの距離(即ち、観察距離)をVとし、光源S1の位置PS1と第一再帰反射部2Aの位置P2との間隔をTとすると、T<(V/50)であることが好ましい。
【0046】
第一波長板21は、第一出射軸J1上の第一光源S1と第一再帰反射部2との間に配置されている。第二波長板22は、第一出射軸J1上の第一再帰反射部を基準として第一光L1の出射方向E1に配置されている。
第一波長板21及び第二波長板22は、各々に入射する光の電界振動方向に(π/2)の位相差を与えるように構成され、所謂λ/4板である。
【0047】
第一偏光分岐部25は、第一出射軸J1上の第一光源S1と第一波長板21との間に配置されている。従って、表示装置1Bでは、第一光L1の出射方向E1に沿って、第一光源Sを含む第一ディスプレイD1、第一偏光分岐部25、第一波長板21、第一再帰反射部2A、第二波長板22、第一光分岐部4が互いに対向するように配置されている。このうち、第一ディスプレイD1、第一偏光分岐部25、第一波長板21、第一再帰反射部2A、第二波長板22については、互いに極めて近接していることが好ましく、互いに当接して一体化されていてもよい。
第一偏光分岐部25は、P偏光を透過可能且つS偏光を反射可能に構成され、例えば反射型偏光ビームスプリッターである。
【0048】
第二実施形態の表示装置1Bでは、第一光源Sから出射される第一光L1のうち、P偏光の第一光L1のみが第一偏光分岐部25を透過して出射方向E1に沿って出射し、第一波長板21、第一再帰反射部2、第二波長板22をこの順に透過してS偏光の第一光L1となり、出射する。第二波長板22から出射されたS偏光の第一光L1の一部は、第一光分岐部4によって第一反射光L2として反射される。S偏光の第一反射光L2は、第二波長板22を透過し、第二再帰反射部6に入射し、第二再帰反射部6によって入射方向と同じ方向に反射され、再び第二波長板22を透過してP偏光の反射光L3として第一光分岐部4に入射すると共に、第一光分岐部4を透過し、第一光分岐部4の板面(即ち、反射面)に対して、第一光源S1と対称な位置Q1に空中像Iを形成する。
【0049】
以上説明した第二実施形態の表示装置1Bによれば、ユーザは、第一光分岐部4に対して第一光源S1とは反対側の観察方向E0から空中像Iを観察することができる。これにより、第二実施形態の表示装置1Bにおいて空中像Iが見える角度θ1Bは第一ディスプレイD1に配置されている第一光源S1の領域全体に亘ることになり、角度θ1Bを大きくすることができる。また、
図4を参照するとわかるように、第一ディスプレイD1における第一光源S1の位置によらず、第一光源S1から出射されたP偏光の第一光L1の略全部を空中像Iの形成に寄与させることができる。
【0050】
また、第二実施形態の表示装置1Bによれば、第一光源S1及び第一ディスプレイD1に対して第一光L1の出射方向E1に第一再帰反射部2が設けられ、第一光分岐部4として反射型偏光フィルム、偏光板やハーフミラーに偏光フィルムを設けたもの等を用いることで第一光分岐部4によって直接透過光が遮断されるため、ユーザには第一光源S及び第一ディスプレイD1(即ち、直接透過光)が見えない。従って、空中像Iと第一光源S1との混在による空中像Iの視認度の低下を防ぐことができる。
【0051】
また、第二実施形態の表示装置1Bによれば、第二再帰反射部6を省略し、第一光L1の出射方向E1に沿って、第一光源S1、第一偏光分岐部25、第一波長板21、第一再帰反射部2A、第二波長板22、第一光分岐部4を配置することができ、装置全体のコンパクト化及び省スペース化を図ることができる。
【0052】
(第三実施形態)
次いで、本発明に係る第三実施形態の表示装置1Cについて説明する。なお、
図5に示す第三実施形態の表示装置1Cの構成要素において、
図1等に示す第一実施形態の表示装置1Aの構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図5に示すように、表示装置1Cは、第一光源S1と、第一再帰反射部2Aと、第一光分岐部4と、第一波長板21と、第二波長板22と、第一偏光分岐部25と、第二光源S2と、第二再帰反射部7と、第二光分岐部5と、第三波長板23と、第四波長板24と、第二偏光分岐部26と、を備えている。
【0054】
第二光源S2は、第一光源S1と同様に、例えばLEDであるが、特に限定されない。また、第三実施形態の表示装置1Cの第二光源S2は、第二ディスプレイD2の板面と平行に複数配列され、互いに光の出射方向を揃えて設けられている。なお、第二光源S2の数は、特に制限されない。但し、第二光源S2は、第一反射光L2の出射方向E2の反対側の方向E3(以下、出射方向E3とする)に第二光L21を出射可能に配置されている。
【0055】
第二再帰反射部7は、第二光L21の出射方向E3を示す第三出射軸J3上の位置P7に配置され、第一反射光L2を再帰反射可能、且つ第二光L21の少なくとも一部を透過可能に構成されている。第二再帰反射部7の構造及び素材としては、前述した第一再帰反射部2と同様の構造及び素材が挙げられる。
【0056】
第二光分岐部5は、第二再帰反射部7を透過した第二光L21の一部を透過し、第二再帰反射部7を透過した第二光L21の少なくとも一部を第二反射光L22として反射する。
【0057】
第三波長板23は、第三出射軸J3上の第二光源S2と第二再帰反射部7との間に配置されている。第四波長板24は、第三出射軸J3上の第二再帰反射部7を基準として第二光L21の出射方向E3の位置に配置されている。
第三波長板23及び第四波長板24は、第一波長板21及び第二波長板22と同様に、各々に入射する光の電界振動方向に(π/2)の位相差を与えるように構成され、所謂λ/4板である。
【0058】
第二偏光分岐部26は、第三出射軸J3上の第二光源S2と第三波長板23との間に配置されている。従って、表示装置1Cでは、第二光L21の出射方向E3に沿って、第二光源S2を含む第二ディスプレイD2、第二偏光分岐部26、第三波長板23、第二再帰反射部7、第四波長板24、第二光分岐部5が適宜配置されている。このうち、第二ディスプレイD2、第二偏光分岐部26、第三波長板23、第二再帰反射部7、第四波長板24については、互いに極めて近接していることが好ましく、互いに当接して一体化されていてもよい。
第二偏光分岐部26は、P偏光を反射可能且つS偏光を透過可能に構成され、例えば反射型偏光ビームスプリッターである。
【0059】
図5を参照するとわかるように、第三実施形態の表示装置1Cは、第二実施形態の表示装置1Bにおいて、第一光源S1を含む第一ディスプレイD1、第一偏光分岐部25、第一波長板21、第一再帰反射部2A及び第二波長板22を含む構成と、第一光分岐部4との相対位置を、第一実施形態の表示装置1Aにおける第一ディスプレイD1及び第一再帰反射部2Aと、第一光分岐部4との相対位置と同様にし、これらの構成に対して対向するように同様の構成を配置したものである。
【0060】
第三実施形態の表示装置1Cでは、第一光源S1から出射される第一光L1のうち、P偏光の第一光L1のみが第一偏光分岐部25を透過して出射方向E1に沿って出射し、第一波長板21、第一再帰反射部2、第二波長板22をこの順に透過してS偏光の第一光L1となり、出射する。第二波長板22から出射されたS偏光の第一光L1の一部は、第一光分岐部4によって第一反射光L2として反射される。S偏光の第一反射光L2は、第二波長板22を透過し、第二再帰反射部6に入射し、第二再帰反射部6によって入射方向と同じ方向に反射され、再び第二波長板22を透過してP偏光の反射光L3として第一光分岐部4に入射すると共に、第一光分岐部4を透過し、第一光分岐部4の板面(即ち、反射面)に対して、第一光源S1と対称な位置Q1に空中像I1を形成する。
【0061】
一方、第二光源S2から出射される第二光L21のうち、S偏光の第二光L21のみが第二偏光分岐部26を透過して出射方向E3に沿って出射し、第三波長板23、第二再帰反射部7、第四波長板24をこの順に透過してP偏光の第一光L21となり、出射する。第四波長板24から出射されたP偏光の第一光L1の一部は、第二光分岐部5によって第一反射光L2として反射される。P偏光の第一反射光L2は、第四波長板24を透過し、第二再帰反射部7に入射し、第二再帰反射部7によって入射方向と同じ方向に反射され、再び第四波長板24を透過してS偏光の反射光L3として第二光分岐部5に入射すると共に、第二光分岐部5を透過し、第二光分岐部5の板面(即ち、反射面)に対して、第二光源S2と対称な位置Q10に空中像I2を形成する。
【0062】
以上説明した第三実施形態の表示装置1Cによれば、ユーザは、第一光分岐部4に対して第一光源S1とは反対側の観察方向E0からは、空中像I1(例えば、文字像「A」)を観察することができる。一方、ユーザは、第二光分岐部5に対して第二光源S2とは反対側の観察方向E10からは、空中像I2(例えば、文字像「B」)を観察することができる。このように、第三実施形態の表示装置1Cによれば、空中像I1,I2のマルチビュー化を図ることができる。
以上に説明した第一光分岐部4と第二光分岐部5における透過光の偏光方向が直交する配置においては、観察方向E0からは空中像I1の背後に第二光源S2及び第二ディスプレイD2(即ち、直接透過光)を第一光分岐部4を通して観察でき、観察方向E10からは空中像I10の背後に第一光源S1及び第一ディスプレイD1(即ち、直接透過光)を第二光分岐部5を通して観察できる。即ち、空中像と背景となる直接透過光の二層のマルチビュー化がなされる。
一方、第一光分岐部4と第二光分岐部5における透過光の偏光方向が平行になるように配置する場合、たとえば、第二光分岐部5においてP偏光成分のみを透過するように配置して、それに対応させて第二偏光分岐部26においてもP偏光成分のみを透過するように配置する場合には、第一光源S1及び第一ディスプレイD1(即ち、直接透過光)並びに第二光源S2及び第二ディスプレイD2(即ち、直接透過光)は観察されず、観察方向E1においては空中像I1のみが観察され、観察方向E10においては空中像I10のみが観察されるマルチビュー化がなされる。
図5は二方向のマルチビュー化を示しているが、観察方向毎に対向する形で表示装置1Bを設置することで三以上の方向のマルチビュー化が可能である。
空中像I1,I2が見える角度は、第一ディスプレイD1に配置されている第一光源S1の領域全体や第二ディスプレイD2に配置されている第二光源S2の領域全体に亘ることになり、より大きくすることができる。また、第一ディスプレイD1における第一光源S1の位置や第二ディスプレイD2における第二光源S2の位置によらず、第一光源S1から出射されたP偏光の第一光L1、第二光源S2から出射されたS偏光の第二光L21の略全部を空中像I1,I2の形成に寄与させることができる。
【0063】
また、第三実施形態の表示装置1Cによれば、第一光分岐部4及び第二光分岐部5として反射型偏光フィルム、偏光板やハーフミラーに偏光フィルムを設けたもの等を用いることで第一光分岐部4及び第二光分岐部5によって直接透過光が遮断されるため、ユーザには第一光源S及び第一ディスプレイD1(即ち、直接透過光)が見えない。従って、空中像Iと第一光源S1や第二光源S2との混在による空中像Iの視認度の低下を防ぐことができる。
【0064】
第三実施形態の表示装置1Cの変形例である表示装置1Dでは、
図6に示すように、表示装置1Cの第一光源S1、第一再帰反射部2、第一光分岐部4、第一波長板21及び第二波長板22を含む構造と、第一偏光分岐部25、第二光源S2、第二再帰反射部7と、第三波長板23と、第四波長板24と、第二偏光分岐部26を含む構成と、を互いに近接させた構成を備えている。従って、表示装置1Dでは、第二光分岐部5は省略されている。
【0065】
第三実施形態の変形例である表示装置1Dによれば、空中像Iが見える角度は、第一ディスプレイD1に配置されている第一光源S1或いは第二ディスプレイD2に配置されている第二光源S2の領域全体に亘ることになり、大きくすることができる。また、第一ディスプレイD1の直接光が第一光分岐部4を透過するように第一偏光分岐部25を設置することで、ユーザは、第一光分岐部4に対して第二光源S2の反対側のある方向E0からは、空中像I3(例えば、文字像「O」)の背後に直接光による背景(例えば、文字像「U」)を見ることができる。このように、第三実施形態の変形例である表示装置1Dによれば、空中像Iと直接像の二層化を図ることができる。
【0066】
(第四実施形態)
次いで、本発明に係る第四実施形態の表示装置1Eについて説明する。なお、
図7に示す第四実施形態の表示装置1Eの構成要素において、
図1等に示す第一実施形態の表示装置1Aの構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図7に示すように、表示装置1Eは、第一光源S1と、第一再帰反射部2と、第一光分岐部4と、第二光源S2と、第二再帰反射部7と、を備えている。表示装置1Eは、表示装置1Aの構成において、第二再帰反射部6の位置に第二再帰反射部7を設け、第二反射光L2の出射方向E2に第二ディスプレイD2を配置したものである。
【0068】
第四実施形態の表示装置1Eでは、第一光源S1から出射される第一光L1の一部は、第一光分岐部4によって第一反射光L2として反射される。第一反射光L2は、第二再帰反射部6に入射し、第二再帰反射部6によって入射方向と同じ方向に反射され、反射光L3として第一光分岐部4に入射すると共に、第一光分岐部4を透過し、第一光分岐部4の板面(即ち、反射面)に対して、第一光源S1と対称な位置Q1に空中像I1を形成する。
第二光源S2から出射される第二光L21の一部についても、第一光分岐部4によって第一反射光L2として反射される。第一反射光L2は、第二再帰反射部6に入射し、第二再帰反射部6によって入射方向と同じ方向に反射され、反射光L3として第一光分岐部4に入射すると共に、第一光分岐部4を透過し、第一光分岐部4の板面(即ち、反射面)に対して、第二光源S2と対称な位置Q10に空中像I2を形成する。
【0069】
以上説明した第四実施形態の表示装置1Eによれば、ユーザは、第一光分岐部4に対して第一光源S1とは反対側のある方向E0からは、空中像I1と、ディスプレイD2の第二光源S2(即ち、直接透過光)の両方を見ることができる。一方、ユーザは、第二光分岐部5に対して第二光源S2とは反対側の観察方向E10からは、空中像I2と、ディスプレイD1の第一光源S1(即ち、直接透過光)の両方を見ることができる。このように、第三実施形態の表示装置1Cによれば、空中像IとディスプレイD1,D2(即ち、光源S1,S2)とを組み合わせたマルチビュー化を図ることができる。
空中像I1,I2が見える角度θ1Eは、それぞれ第一ディスプレイD1,D2に配置されている第一光源S1,S2の領域全体に亘ることになり、大きくなる。また、第一ディスプレイD1における第一光源S1の位置や第二ディスプレイD2における第二光源S2の位置によらず、第一光源S1から出射された第一光L1、第二光源S2から出射された第二光L21の略全部を空中像I1,I2の形成に寄与させることができる。
【0070】
(第五実施形態)
次いで、本発明に係る第五実施形態の表示装置1Fについて説明する。なお、
図8に示す第五実施形態の表示装置1Fの構成要素において、
図1等に示す第一実施形態の表示装置1Aの構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0071】
図8に示すように、表示装置1Fは、第一光源S1と、第一再帰反射部2Bと、第一光分岐部4と、第二再帰反射部6と、を備えている。
【0072】
表示装置1Fにおいて、第一再帰反射部2Bは、第一光源S1から出射される第一光L1の出射方向E1を示す第一出射軸J1上の第一光源S1を基準として出射方向E1の反対側に配置されている。
第二再帰反射部6は、第一再帰反射部2Bの外周縁と第一光分岐部4の外周縁とを連結するように配置されている。
但し、第一再帰反射部2Bでは第一光L1や第一反射光L2を透過させる必要がないため、例えば再帰反射構造3A,3Bを採用した場合、表面3b側、即ち反射面12a,12cに設けられる反射物質としては、前述の誘電体物質等の他に、例えばアルミ、金、銀等が挙げられる。つまり、第一再帰反射部2B及び第二再帰反射部6は、同様の再帰反射構造を備えていてもよい。
【0073】
上述の配置では、第一光源S1は、第一再帰反射部2Bと第一光分岐部4と第二再帰反射部6によって囲まれた空間X内に配置されている。
第一光源S1を有する第三ディスプレイD3、即ち、第一光源S1の位置PS1において、第一光源S1の非配置部NSは、第一光及び第一反射光L2を透過可能とされている。このような第三ディスプレイD3としては、例えば透明ディスプレイやシースルーディスプレイと呼ばれるものが挙げられ、具体的には、例えばカラーフィルターのない透明画素付き液晶ディスプレイ、有機ELで一部を透明化することで非配置部NSが透けて見えるもの、或いはストライプ状に互いに間隔をあけて配置された複数のLEDからなるパネル(所謂、リボンLED等)が挙げられる。
【0074】
第五実施形態の表示装置1Fでは、第一光源S1から出射される第一光L1の一部は、第一光分岐部4によって第一反射光L2として反射される。第一反射光L2は、第一再帰反射部2Bに入射し、第一再帰反射部2Bによって入射方向と同じ方向に反射され、部分的に第三ディスプレイD3の非配置部NSを透過し、第一光分岐部4に入射すると共に、第一光分岐部4を透過し、第一光分岐部4の板面(即ち、反射面)に対して、第一光源S1と対称な位置Q1に空中像Iを形成する。
また、第一光L1のうち、第一光分岐部4に比較的小さい入射角で入射した第一光L18は、第一光分岐部4によって反射された後、反射光L28(第一反射光L2)として第二再帰反射部6に入射し、第二再帰反射部6によって入射方向と同じ方向に反射され、第一光分岐部4を透過し、第一光分岐部4の板面(即ち、反射面)に対して、第一光源S1と対称な位置Q1に空中像Iを形成する。
【0075】
以上説明した第五実施形態の表示装置1Fによれば、ユーザは、第一光分岐部4に対して第一光源S1とは反対側のある方向E0から空中像Iを観察することができる。表示装置1Fにおいて空中像Iが見える角度は、第一光分岐部4の板面の略全体に亘るので、従来の表示装置等よりも大きくすることができる。また、
図8を参照するとわかるように、第一ディスプレイD1における第一光源S1の位置によらず、第一光源S1から出射された第一光L1の略全部を空中像Iの形成に寄与させることができるため、空中像Iの明るさの向上を図ることができる。
【0076】
(第六実施形態)
次いで、本発明に係る第六実施形態の表示装置1Gについて説明する。なお、
図9に示す第六実施形態の表示装置1Gの構成要素において、
図1等に示す第一実施形態の表示装置1Aの構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
図9に示すように、表示装置1Gは、第一光源S1と第一再帰反射部2Cとを備えた第四ディスプレイD4と、第一光分岐部4と、第二再帰反射部6と、を備えている。
また、表示装置1Gでは、第一反射光L2が第一再帰反射部2Cに入射するように構成されている。
【0078】
表示装置1Gにおいて、第四ディスプレイD4は、基板35の表面35a上に、互いに間隔をあけて配置された第一光源S1と、第一光源S1同士の間(即ち、第一光源S1の非配置部NS)に第一再帰反射部2Cが配置されている。このような構成により、第一再帰反射部2Cは、第一第一光源S1と第一光源S1から出射される第一光L1の出射方向E1を示す第一出射軸J1上の位置P2に配置されている。即ち、互いに同一の位置PS1,P2において、
図10に示すように、複数の光源S1及び第一再帰反射部2Cは空間分割で配置されている。
なお、第一再帰反射部2Cでは第一光L1や第一反射光L2を透過させる必要がないため、例えば再帰反射構造3A,3Bを採用した場合、表面3b側、即ち反射面12a,12cに設けられる反射物質としては、前述の誘電体物質等の他に、例えばアルミ、金、銀等が挙げられる。
【0079】
第六実施形態の表示装置1Gでは、
図9に示すように、第一光源S1から出射される第一光L1の一部は、第一光分岐部4によって第一反射光L2として反射される。第一再帰反射部2Cに入射した第一反射光L2は、第一再帰反射部2Cによって入射方向と同じ方向に反射され、第一光分岐部4を透過し、第一光分岐部4の板面(即ち、反射面)に対して、第一光源S1と対称な位置Q1に空中像Iを形成する。
また、第一光L1のうち、第一光分岐部4に比較的小さい入射角で入射した第一光L18は、第一光分岐部4によって反射された後、反射光L28(第一反射光L2)として第二再帰反射部6に入射し、第二再帰反射部6によって入射方向と同じ方向に反射され、第一光分岐部4を透過し、第一光分岐部4の板面(即ち、反射面)に対して、第一光源S1と対称な位置Q1に空中像Iを形成する。
【0080】
以上説明した第六実施形態の表示装置1Gによれば、ユーザは、第一光分岐部4に対して第一光源S1とは反対側のある方向E0から空中像Iを観察することができる。表示装置1Gにおいて空中像Iが見える角度は、第一光分岐部4の板面の略全体に亘るので、従来の表示装置等よりも大きくすることができる。また、
図9を参照するとわかるように、第四ディスプレイD4における第一光源S1の位置によらず、第一光源S1から出射された第一光L1の略全部を空中像Iの形成に寄与させることができるため、空中像Iの明るさの向上を図ることができる。
【0081】
第六実施形態の表示装置1Gの第一変形例である表示装置1Hでは、
図11に示すように、第一光分岐部4が第四ディスプレイD4(即ち、第一光源S1及び第一再帰反射部2C)の面に対し、略45°をなして傾斜するように配置されている。
【0082】
第六実施形態の第一変形例である表示装置1Hによれば、第六実施形態の表示装置1Gと同様の作用効果を得ることができ、さらに空中像Iを第四ディスプレイD4の面に対し、略直交する方向に形成することができる。
なお、第一光分岐部4と第四ディスプレイD4の各面同士がなす角は、略45°に限定されず、任意の角度に設定可能であり、その角度に応じた位置に空中像Iが形成される。
【0083】
第六実施形態の表示装置1Gの第二変形例である表示装置1Kは、
図12に示すように、表示装置1Hの構成に加えて偏光板40を備えている。但し、第一再帰反射部2Cは、水平方向において第一光源S1と空間分割している相対関係を保ち、且つ第一出射軸J1上の第一光源S1を基準として第一光L1の出射方向E1の位置P2に配置されている。偏光板40は、第一出射軸J1上の第一光源S1と第一再帰反射部2Cとの間に配置されている。
【0084】
第六実施形態の第二変形例である表示装置1Kでは、第一光源S1から出射される第一光L1のうち所定の偏光のみが偏光板40を透過し、偏光板40を透過した第一光L1は、第一光分岐部4によって第一反射光L2として反射される。第一再帰反射部2Cに入射した第一反射光L2は、第一再帰反射部2Cによって入射方向と同じ方向に反射され、第一光分岐部4を透過し、第一光分岐部4の板面(即ち、反射面)に対して、第一光源S1と対称な位置Q1に空中像Iを形成する。
【0085】
第六実施形態の第二変形例である表示装置1Kによれば、第六実施形態の第一変形例である表示装置1Gと同様の作用効果を得ることができる。また、第六実施形態の第二変形例である表示装置1Kによれば、偏光板40が設けられ、第一光分岐部4として反射型偏光フィルム、偏光板やハーフミラーに偏光フィルムを設けたもの等を用いることで第一光分岐部4によって直接透過光が遮断されるため、ユーザには第一光源S1(即ち、直接透過光)及び第四ディスプレイD4が見えない。従って、空中像Iと第一光源S1との混在による空中像Iの視認度の低下を防ぐことができる。
なお、
図9に示す第六実施形態の表示装置1Gにおいても、第一再帰反射部2Cが第一出射軸J1上の第一光源S1を基準として第一光L1の出射方向E1の位置P2に配置され、偏光板40が第一出射軸J1上の第一光源S1と第一再帰反射部2Cとの間に配置されれば、上述のように直接透過光が遮断され、空中像Iのみが観察される。
【0086】
(第七実施形態)
次いで、本発明に係る第七実施形態の表示装置1Vについて説明する。なお、
図13に示す第七実施形態の表示装置1Vの構成要素において、
図1等に示す第一実施形態の表示装置1Aの構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0087】
図13に示すように、表示装置1Vは、第一光源S1を備えた第一ディスプレイD1と、第一光分岐部4と、第一再帰反射部2Aと、を備えている。
【0088】
表示装置1Vでは、第一再帰反射部2Aは、第一反射光L2の出射方向E2を示す第二反射軸J2上の位置に配置されている。
また、第一光分岐部4は、外周縁から中央に向かうに従い、第一光分岐部4に対して第一光源S1及び第一再帰反射部2Aが配置されている側とは反対側に凸状に湾曲している。
【0089】
以上説明した第七実施形態の表示装置1Vによれば、第一実施形態の表示装置1Aと同様に、ユーザーは、空間A(即ち、第一光分岐部4に対してユーザがいる空間)内に空中像Iを観察することができる。また、第七実施形態の表示装置1Vによれば、第二再帰反射部6を用いずに済み、第一実施形態の表示装置1Aに比べて装置の構成を簡素にすることができる。さらに、第七実施形態の表示装置1Vでは、空中像Iを湾曲する第一光分岐部4の頂点を通る接線に対して略直角に配置し易くなる。これにより、観察方向E0から第一光源S1及び第一再帰反射部2Aを外して、観察方向E0から空中像Iを見た際に、第一光源S1や第一光源S1の虚像を見えないようにし、空中像Iを視認し易くすることができる。
【0090】
(第八実施形態)
次いで、本発明に係る第八実施形態の表示装置1Wについて説明する。なお、
図14に示す第八実施形態の表示装置1Wの構成要素において、
図1等に示す第一実施形態の表示装置1Aの構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0091】
図14に示すように、表示装置1Wは、第一光源S1を備えた第一ディスプレイD1と、第一波長板21と、第一再帰反射部2Aと、第一反射板50Aと、第一光分岐部4と、第二反射板50Bと、を備えている。
【0092】
表示装置1Wでは、第一波長板21は、第一ディスプレイD1の側端部(第一光源の一方の側部)e1から、第一光L1の出射方向E1を示す第一出射軸J1に沿って延在する。第一再帰反射部2Aは、第一波長板21において第一ディスプレイD1に向く側とは反対側に、第一波長板21に沿って設けられている。第一反射板50Aは、第一ディスプレイD1の側端部(第一光源の他方の側部)e2から、第一出射軸J1に沿って延在する。第一反射板50Aは、例えば公知の全反射ミラー等が該当するが、第一光L1を反射可能なものであれば特に限定されない。第一光分岐部4は、第一波長板21の先端部e3と第一反射板50Aの先端部e4との間を接続するように配置されている。
【0093】
第二反射板50Bは、第一反射板50Aの先端部e4から第一光分岐部4を挟んで第一反射板50Aの延在方向と同一の方向に延在し、第一反射板50Aとは面一になっている。また、第二反射板50Bは、第一再帰反射部2Aによって反射された第一反射光L2の少なくとも一部を反射させ、該一部以外は透過させる。第二反射板50Bには、例えば公知のハーフミラー等が該当するが、第一反射光L2を反射可能なものであれば特に限定されない。なお、第二反射板50Bは、第一再帰反射部2Aによって反射された第一反射光L2を全て反射する全反射ミラーであっても構わない。また、第二反射板50Bは、第一反射光L2の少なくとも一部の光を反射さえすればよく、透明板(ガラス製のデスクマット等)であってもよい。例えば、第二反射板50Bとしてデスクマットを用いた場合には、机の木目のようなものが見えつつ、その上に空中像Iが浮んで見える。
【0094】
以上説明した第八実施形態の表示装置1Wでは、第一ディスプレイD1のそれぞれの第一光源S1から出射された第一光L1のうち、第一反射板50Aに向かうものは、第一反射板50Aによって反射され、さらに反射型偏光板等からなる第一光分岐部4によって第一波長板21に向けて反射される。第一光L1のP偏光又はS偏光のうち一方は、第一波長板21を透過し、第一再帰反射部2Aによって第一反射光L2として再帰反射され、第一光分岐部4を透過する。第一光分岐部4を透過した第一反射光L2は、第二反射板50Bによって再帰反射光(反射光)L13として反射され、第一再帰反射部2Aから直接照射された第一反射光L2と共に空中像Iを形成する。また、
図14に示すように、第一反射板50A,50Bのそれぞれを挟んで第一ディスプレイD1の反対側に第一ディスプレイD1の虚像が生成される。
【0095】
従って、第八実施形態の表示装置1Wによれば、第一実施形態の表示装置1Aと同様に、ユーザーは、空間A(即ち、第一光分岐部4に対してユーザがいる空間)内に空中像Iを観察することができる。例えば、第一反射板50A及び第二反射板50Bをテーブル等の台上に設置すれば、前述の台から略垂直に立ち上がる空中像Iが得られ、空中像Iを観察し易くなる。また、第二反射板50Bとしてハーフミラーを用い、透明な台を用いれば、空中像Iと同時に虚像も観察することができる。
【0096】
(第九実施形態)
次いで、本発明に係る第九実施形態の表示装置1Pについて説明する。なお、
図15に示す第九実施形態の表示装置1Pの構成要素において、
図1等に示す第一実施形態の表示装置1Aの構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0097】
図15に示すように、表示装置1Pは、第一光源S1と、第一光分岐部4Aと、第二光分岐部4Bと、第一再帰反射部2Aと、を備えている。
【0098】
表示装置1Pでは、第一光分岐部4A及び第二光分岐部4Bは、第一光源S1を挟んで互いに対向するように配置されている。言い換えれば、第一光源S1は、互いに対向配置された第一光分岐部4A及び第二光分岐部4Bの間に配置されている。第一光源S1の出射部(図示略)は、第一光分岐部4Aと第二光分岐部4Bとの間に形成された空間に向けられている。第一光分岐部4A及び第二光分岐部4Bは、第一光L1の少なくとも一部を第一反射光L2として反射させると共に、第一反射光L2の少なくとも一部を反射させる。第二光分岐部(一方の光分岐部)4Bにおいて第一光分岐部4Aに対向する面(側)とは反対側の面には、第一再帰反射部2Aが設けられている。
【0099】
第九実施形態の表示装置1Pでは、第一光源S1から出射された第一光L1が第一光分岐部4A及び第二光分岐部4Bの間に形成された空間を通り、第一光分岐部4A又は第二光分岐部4Bに当たり、透過する。第一光L1は第一再帰反射部2Aに照射された時点で、第二光分岐部4Bの表面に沿った方向において、再帰反射光13として第一光源S1側に戻される。これにより、第一光分岐部1Aを挟んで第一光源S1に対向する位置に、第一光分岐部1Aの表面に対して略直交する方向に、複数の空中像Iが形成される。
【0100】
なお、第二光分岐部4Bで反射された光L111を第一再帰反射部2Aの側に延ばした仮想線L113上に、虚像が形成される。即ち、第二光分岐部1Bを挟んで第一光源S1に対向する位置に、複数の虚像が形成される。
【0101】
従って、第九実施形態の表示装置1Pによれば、第一実施形態の表示装置1Aと同様に、ユーザーは、空間A(即ち、第一光分岐部4に対して第一光源S1が設けられている側とは反対側の空間)内に複数の空中像Iを観察することができる。これにより、表示装置1Pを用いて多数段の空中像Iを容易に形成することができ、表示装置1Pの応用展開の範囲が広がる。
【0102】
図16に、第九実施形態の表示装置1Pの第一変形例である表示装置1Qを示す。表示装置1Qは、表示装置1Pにおいて、第一光分岐部4A及び第二光分岐部4Bの間に形成された空間内に、第一光源S1と間隔をあけて第二光源S2を配置したものである。第二光源S2の出射部(図示略)は、第一光分岐部4Aと第二光分岐部4Bとの間に形成された空間に向けられ、第二光源S2の出射部が向けられた方向とは反対の方向に向けられている。言い換えれば、表示装置1Qは、表示装置1Pの第一光源S1側に、表示装置1Nを第一光分岐部4A及び第二光分岐部4Bの表面に直交する方向を中心に反転させつつ連接させたものである。
【0103】
第九実施形態の表示装置1Pの第一変形例の表示装置1Qによれば、第一光源S1及び第二光源S2を用いることにより、それぞれの光源から空中像Iを生成し、空中像Iの数を容易に増やすことができる。それぞれの光源の虚像も活かせば、さらに空中像Iの数を増やすことができる。
【0104】
なお、表示装置1Pでは第一再帰反射部2Aが第二光分岐部4Bに接しているが、
図17に示す表示装置1P´のように、第一再帰反射部2Aは第二光分岐部4Bに対して所定の間隔をあけて配置されていても構わない。このように表示装置1Pには、構成要素の配置の自由度がある。また、表示装置1Pには、1枚の透明アクリル板もしくは透明ガラス板の両面を4Aと4Bとして用いることができる。例えば、ガラス窓のサッシ上にLEDを配置し、ガラス窓に再帰反射シートのカーテンをつければ、外側から多重化された空中像Iを観察できるようになる。さらに、第一光分岐部4A側で空中像Iの観察の妨げにならない場所にっ別の再帰反射部を配置することで、光線L111についても空中像Iの形成が可能になる。
【0105】
図18に、第九実施形態の表示装置1Pの第二変形例である表示装置1Rを示す。表示装置1Rでは、表示装置1Nの第一光分岐部4Aの表面を、第二光分岐部4Bの表面に沿った方向に対して傾斜させている。
図18に示す構成例では、紙面の左側から右側に進むに従って第一光分岐部4Aが第二光分岐部4Bから離間している。
【0106】
第九実施形態の表示装置1Pの第二変形例の表示装置1Rによれば、第一光源S1の複数の実像及び虚像が第一光分岐部4A及び第二光分岐部4Bのそれぞれの表面の延長線が交差する仮想交点を中心とした仮想円周上に形成される。表示装置1Rは一例であるが、このように第一光分岐部4Aと第二光分岐部4Bとの対向配置及び角度を調整することで、空中像Iの位置、即ち第一光源S1の複数の実像及び虚像が形成される位置を容易に変更することができる。なお、第九実施形態の表示装置1Pには、第一光分岐部4A及び第二光分岐部4Bの配置や角度を調整可能な調節部が設けられていてもよい。
【0107】
また、図示していないが、表示装置1P及びその変形例の表示装置1Q,1P´,1Rは、スポット状の第一光L1を出射可能な光源(例えば、点光源、LED等)を用いて複数の空中像Iを形成することができるので、万華鏡として応用することができる。従来、複数人向けの万華鏡を実現するためには、複数名が同時に覗くことが可能な程度に万華鏡自体を大型化する必要があった。しかしながら、表示装置1P等を用いて、空中像Iを万華鏡で見えるパターンのように配置することで、万華鏡パターンを空中に形成し、複数人で同時に観察することができるようになる。
【0108】
(第十実施形態)
次いで、本発明に係る第十実施形態の表示装置1Tについて説明する。なお、
図20から
図23に示す第十実施形態の表示装置1Tの構成要素において、
図1等に示す第一実施形態の表示装置1Aの構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図19には、公知の表示装置CTを示す。
【0109】
第十実施形態の表示装置1Tは、第一光源S1を複数備えたバックライト55と、第一液晶パネル51と、第一偏光板40Aと、第一光分岐部4と、第一再帰反射部2Aと、を備えている。
【0110】
表示装置1Tでは、バックライト55は、第一光L1の出射方向E1を示す第一出射軸J1の後方から第一液晶パネル51及び第二液晶パネル52を照明するためのものである。バックライト55には、出射部を第一偏光板40A側に向けて第一光源S1が配置されている。但し、第一出射軸J1に沿って積層される液晶パネルの数は、二枚に限定されるものではなく,三枚以上であってもよい。また、第一出射軸J1に沿って積層される液晶パネルの間には、位相差フィルムが含まれていてもよい。
【0111】
第一液晶パネル51は、第一出射軸J1上の位置に配置されている。第一偏光板40Aは、第一出射軸J1上の第一ディスプレイD1と第一液晶パネル51との間に配置されている。
【0112】
第一光分岐部4は、第一光L1の少なくとも一部を第一反射光L2として反射し、第一再帰反射部2Aによって再帰反射された再帰反射光L13の少なくとも一部を透過させる。第一再帰反射部2Aは、第一反射光L2の出射方向E2を示す第二出射軸J2上の位置に配置されている。
【0113】
図19に示すように、従来の表示装置CTでは、上述の構成に加えて、第一出射軸J1上の第一偏光板40Aと第一液晶パネル51との間に第二液晶パネル52が配置され、第一出射軸J1上の第一液晶パネル51の前方に第二偏光板40Bが配置されている。第二液晶パネル52は、所謂、背面液晶パネルである。表示装置CTでは、第一偏光板21と第二偏光板22が第一光分岐部4に対して、バックライト55側に配置されている。即ち、バックライト55と、第一偏光板21と、第一液晶パネル51と、第二液晶パネル52と、第二偏光板22は、多層液晶(又は積層型液晶)を構成している。第一光分岐部4には、ハーフミラーを用いることができる。
【0114】
表示装置CTでは、第一ディスプレイD1の第一光源S1からバックライト55を通して出射された第一光L1のうち、P偏光又はS偏光のうち一方が第一偏光板40Aを透過し、第一液晶パネル51及び第二液晶パネル52に照明される。第二偏光板40Bを透過し、第一液晶パネル51から発せられた第一光L1は、第一光分岐部4によって第一反射光L2として反射される。第一反射光L2は、第一再帰反射部2Aによって再帰反射光L13として再帰反射され、第一光分岐部4を透過し、第一光分岐部4を挟んで空中像Iを形成する。
【0115】
上述の表示装置CTに対し、
図20に示すように、第十実施形態の表示装置1T(2)では、上述の表示装置1T(2)の構成において、第二出射軸J2上の第一再帰反射部2Aの後方に第一波長板21が配置されている。第一波長板21は所謂λ/4板であり、第一光分岐部4には反射型偏光板が用いられている。第一光分岐部4をなす反射型偏光板の向きは、第一偏光板40Aの向きに平行とされている。即ち、第一光分岐部4と第一偏光板40Bとは、パラレルニコル(又は、平行ニコル)の関係をなすように配置されている。このような配置により、第二偏光板40Bから出射した第一光L1は、第一光分岐部4に対してクロスニコルの関係になり、第一光分岐部4を殆ど透過せずに、第一光分岐部4によって第一反射光L2として反射される。第一波長板21を通過し、第一再帰反射部2Aに入射した後、第一再帰反射部2Aによって反射された再帰反射光L13は、第一光分岐部4に対してパラレルニコルの関係になり、第一光分岐部4を透過し、空中像Iを形成する。
【0116】
図21に示すように、第十実施形態の別の例である表示装置1T(2)では、上述の表示装置1T(1)の構成において、第二偏光板40Bが削除され、第一波長板21の光学軸が第一光源S1を含むバックライト55の幅方向に対して平行となるように、即ち、第一偏光板40Aの偏光方位に対して45度をなす方向に沿って配置されている。従って、表示装置1T(2)では、第一光分岐部4と第一偏光板40Aは互いにパラレルニコル(又は、平行ニコル)の関係をなすように配置されている。第一液晶パネル51から出射した第一光L1は、第一光分岐部4に対してパラレルニコルの関係を保持する。第一光分岐部4によって反射された第一反射光L2は、第一波長板21を通過し、第一再帰反射部2Aに入射する。その後、第一再帰反射部2Aによって反射された再帰反射光L13は、第一光分岐部4に対して再びパラレルニコルの関係になり、第一光分岐部4を透過し、空中像Iを形成する。
【0117】
図22に示すように、第十実施形態の別の例である表示装置1T(3)では、上述の表示装置1T(1)の構成において、第一出射軸J1上の第二偏光板40Bの前方に第一波長板21が配置されている。また、第二出射軸J2上の第一再帰反射部2Aの後方には、第二波長板22が配置されている。
図22の構成例では、第一波長板21は、第二偏光板40Bの第一光分岐部4側の面の近傍に配置されており、第二波長板22は第一光分岐部4の第一再帰反射部2A側の面の近傍に配置されている。さらに、第一光分岐部4をなす反射型偏光板の向きは、第一偏光板40Aの向きに直交している。即ち、第一光分岐部4と第一偏光板40Aとは、クロスニコル(又は、垂直ニコル)の関係をなすように配置されている。すなわち、第一波長板21及び第二波長板22の光学軸が第二偏光板40Bの偏光方位に対して45度をなすように配置されている。
【0118】
従って、表示装置1T(3)では、第一液晶パネル51から出射した第一光L1は、第二偏光板40B、第一波長板21、第二波長板22をそれぞれ通過し、第一光分岐部4に対してクロスニコルの関係をなす。第一光分岐部4によって反射された第一反射光L2は、第二波長板22を通過し、第一再帰反射部2Aに入射する。その後、第一再帰反射部2Aによって反射された再帰反射光L13は、再び第二波長板22を通過し、第一光分岐部4に対してパラレルニコルの関係になり、第一光分岐部4を透過し、空中像Iを形成する。
【0119】
図23に示すように、第十実施形態の別の例である表示装置1T(4)では、上述の表示装置1T(3)の構成において、第二偏光板40Bが削除され、第一出射軸J1上の第一液晶パネル51の前方に第一波長板21が配置されている。また、第一光分岐部4をなす反射型偏光板の向きは、第一偏光板40Aの向きに直交し、第一光分岐部4と第一偏光板40Aとは、クロスニコル(又は、垂直ニコル)の関係をなすように配置されている。一方、第一波長板21及び第二波長板22の光学軸が第1液晶パネル51の光軸に対して45度をなすように、第一波長板21及び第二波長板22が配置されている。
【0120】
従って、表示装置1T(4)では、第一液晶パネル51から出射した第一光L1は、第一波長板21、第二波長板22をそれぞれ通過し、第一光分岐部4に対してパラレルニコルの関係をなす。第一光分岐部4によって反射された第一反射光L2は、第二波長板22を通過し、第一再帰反射部2Aに入射する。その後、第一再帰反射部2Aによって反射された再帰反射光L13は、再び第二波長板22を通過し、第一光分岐部4に対してパラレルニコルの関係になり、第一光分岐部4を透過し、空中像Iを形成する。
【0121】
以上説明した第十実施形態の表示装置1Tによれば、第一実施形態の表示装置1Aと同様に、ユーザーは、空間A(即ち、第一光分岐部4に対してユーザがいる空間)内に空中像Iを観察することができる。また、通常の液晶ディスプレイでは、ユーザ側にも偏光板が配置され、この偏光板において光の一部が吸収されている。特に、第十実施形態の表示装置1T(2),1T(4)によれば、通常の液晶ディスプレイにおいてユーザ側に配置されている偏光板(即ち、第二偏光板40B)を削除した構成を実現することができる。これにより、偏光板による吸収による光の減衰がなくなるため、空中像Iの輝度が向上するため、ユーザが空中像Iを容易に視認可能になり、ユーザの目に優しいセキュアな空中表示や多層表示を実現することができる。
【0122】
また、本発明を適用した空中像の表示方法は、第一光源Sから第一光L1を出射させ、第一出射軸J1上の位置において第一光L1を第一再帰反射部2から透過させるステップと、第一再帰反射部2を透過した第一光L1の少なくとも一部を第一光分岐部4によって第一反射光L2として第一再帰反射部2に向けて反射させるステップと、第一再帰反射部2によって再帰反射された第一反射光L2の少なくとも一部を第一光分岐部4から透過させるステップと、を備える。
上述の空中像の表示方法によれば、空中像Iをより広い角度から観察可能とすることができる。
【0123】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0124】
例えば、
図4に示す表示装置1Bの構成を
図24に示すように変更してもよい。即ち、表示装置1Bの第一偏光分岐部25を省略し、第一ディスプレイD1に替えて第五ディスプレイD5を採用してもよい。第一光分岐部4には、例えば反射型偏光フィルム等を用いることができる。
【0125】
第五ディスプレイD5の面内は、S波偏光の第一光L1を発光するS波発光部SS1と、P波偏光の第一光L1を発光するP波発光部SP1に区画されている。S波発光部SS1は、例えばLED光源とS偏光を出射可能とする偏光板とを組み合わせたもの等を用いることができるが、特に限定されない。また、P波発光部SP1は、例えばLED光源とP偏光を出射可能とする偏光板とを組み合わせたもの等を用いることができるが、特に限定されない。また、第五ディスプレイD5においては、不図示の制御部によって、第五ディスプレイD5の面内の所定の領域毎に出射される偏光(S波又はP波)が調節可能とされている。
【0126】
上述の表示装置1Mによれば、第五ディスプレイD5の面内の所定の領域毎に第一光L1の偏光がS波又はP波で調節され、
図24に示すように、ユーザがS波偏光による空中像I又はP波偏光による空中像Iとともに、第五ディスプレイD5上におけるP波偏光又はS波偏光による直接像を見ることができる。空中像と直接像が画素ごとに分離されているため、単一のディスプレイD5を用いながら二層の映像を独立して表示可能である。従って、表示装置1Mを、S波発光部SS1及びP波発光部SP1の各々の輝度比に応じた位置に奥行きを知覚させるDFD(Depth-fused 3D)表示に適用することができる。
【0127】
また、表示装置1Mの変形例として、
図25に示す表示装置1Nが挙げられる。表示装置1Nは、表示装置1Mの構成のうち、第一波長板21及び第二波長板22を省略し、その代わりに第一出射軸J1上の第五ディスプレイD5(第一光源S1)と第一再帰反射部2Aとの間に3Dフィルム44が配置されている。3Dフィルム44としては、例えば、視差バリア、パララックスバリアやレンチキュラーレンズ等が挙げられる。
【0128】
上述の表示装置1Nによれば、第五ディスプレイD5の面内の所定の領域毎に第一光L1の偏光がS波又はP波で調節され、
図25に示すように、ユーザは右目でS波偏光及びP波偏光のうち一方による空中像Iを見ることができ、左目でS波偏光及びP波偏光のうち他方による空中像Iを見ることができる。従って、表示装置1Nを、S波発光部SS1及びP波発光部SP1の各々の輝度比に応じた位置に奥行きを知覚させるDFD表示に適用することができる。
【0129】
また、本発明に係る表示装置では、第一出射軸J1上の第一光源S1と第一再帰反射部2との間に結像素子が配置されていてもよい。結像素子としては、例えばレンチキュラーレンズやハエの目レンズ等が挙げられる。第一光源S1や第二光源S2を備えるディスプレイとして、三次元ディスプレイを用いても構わない。
【0130】
また、本発明に係る表示装置は、筐体等に収容されていてもよい。
図26には、本発明に係る表示装置1Bの構成の一部が筐体30に収容されている構成を例示する。具体的には、筐体30の内部に、表示装置1Bの第一光源S1、第一ディスプレイD1、第一再帰反射部2及び第一波長板21が収容されている。第一波長板21は、第一再帰反射部2の上面側に当接して設けられている。筐体30の上面には、第一光分岐部4として、反射型偏光板(又は、反射型偏光シート等)が設けられている。
第一光源S1から出射された第一光L1のP偏光又はS偏光のうち一方は、第一光分岐部4で反射され、第一波長板21を透過し、第一再帰反射部2によって再帰反射され、再び第一波長板21を透過する。この際、第一光L1の偏光が変わり、P偏光又はS偏光のうち他方として、第一光分岐部4に入射すると共に透過し、空中像Iを形成する。従って、ユーザはある方向E0から空中像Iを観察することができる。このような表示装置は、持ち運び可能であり、場所や設置条件に対しても柔軟に対応し、ユーザに空中像Iを見せることができる。
【0131】
また、本発明に係る表示装置では、第一出射軸J1上の第一光源S1や前述の光源を備えたディスプレイ等の前方にプリズムシートが配置されていてもよい。ここで、不図示のプリズムシートとは、基台となる部分(基材)の所定の方向に断面三角形のプリズム構造を複数並べたものである。プリズム構造としては、例えば基材側に直角部が接する断面直角三角形のもの、長辺が基材に接する断面直角三角形のもの、二等辺三角形のものが挙げられるが、プリズムとしての機能を発揮し得るものであれば、特に限定されない。このようなプリズムシートを第一出射軸J1に直交する方向に複数のプリズムが配置されるように、第一光源S1、第二光源S2やディスプレイ等に設けることができる。
【0132】
第一出射軸J1上の第一光源S1や前述の光源を備えたディスプレイ等の前方にプリズムシートを配置することで、プリズムの表面で第一光L1が所定の方向に屈折される。従って、基材から突出するプリズム構造の表面の角度を適切に設定することで、プリズムシートを設けない場合に比べて、空中像Iの形成位置に光を集め、空中像Iの輝度を向上させることができる。また、空中像Iのエッジ部分は、光の散乱や回折の影響によりぼやけることが考えられる。しかしながら、プリズムシートを用いることで、空中像Iの縁部をシャープにすることもできる。
【0133】
さらに、第一出射軸J1上の第一光源S1や前述の光源を備えたディスプレイ等の前方には、種類やプリズム構造のピッチが同一のもの、又は互いに異なるものを複数積層して設けてもよい。これにより、第一光L1の屈折方向を細かく設定することができる。
【0134】
また、本発明に係る表示装置は、例えば
図27に例示するように、
図26に示す表示装置のうち筐体30が省略された構成とすることができ、空中像Iのところにちょうど指(
図24におけるf)があれば、散乱光が多く検出されることに基づく接触判定装置として活用することができる。従来は、散乱光を検出しようとすると、
図24に破線で示す位置にカメラCCを配置して撮影が行われていたが、同図に実線で示す位置にカメラCCを配置することで、空中像Iへの何らかの物体の接触を敏感に検出及び判定することができる。
【実施例】
【0135】
次いで、本発明に係る各実施形態の表示装置の効果を裏付けるために行った実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0136】
(実施例1)
図1に示す表示装置1Aを構成するために、第一光源S1には、可視光を発するLEDを使用した。また、第一ディスプレイD1の表面に第一光源S1を複数並べた特殊ディスプレイを用意した。第一再帰反射部2には、単位構造10の大きさが約180μmであり、透明プラスチックから構成された再帰反射シート(製品名:ハイグロス反射トリム6160R、製造元:スリーエム)を用いた。第一光分岐部4には、ハーフミラーを使用した。
構築した表示装置1Aにおいて、第一ディスプレイD1で例えば「A」の文字を表示すると、
図28に示すように、「A」の文字の第一光源S1と空中像Iが観察されることを確認した。
【0137】
(実施例2)
図7に示す表示装置1Eを構成するために、実施例1と同様の第一ディスプレイD1を2台は使用した。第二再帰反射部6には、第一再帰反射部2と同様の再帰反射シートを用いた。
構築した表示装置1Eにおいて、第一ディスプレイD1で例えば「A」の文字を表示し、第一ディスプレイD1で例えば「B」の文字を表示すると、
図29に示すように、観察方向E0から見た場合には「A」の文字の空中像Iと第二ディスプレイD2の第二光源S2による「B」とが見え、観察方向E10から見た場合には「B」の文字の空中像Iと第一ディスプレイD1の第一光源S1による「B」が観察されることを確認した。
【0138】
(実施例3)
図9に示す表示装置1Gを構成するために、第一光源S1には、実施例1と同様に可視光を発するLEDを使用した。第一再帰反射部2Cには、再帰反射構造3Aを備えるコーナーキューブタイプの再帰反射シート(製品名:位相差フィルムつき再帰反射シートQR-1、製造元:エスエヌパートナーズ株式会社)を用いた。第一光分岐部4には、反射型偏光フィルム(製品名:SHM-2、製造元:エスエヌパートナーズ)を透明アクリル板に貼りつけたものを用いた。
構築した表示装置1Gにおいて、第四ディスプレイD4で例えば「T」の文字を表示すると、
図30に示すように、「T」の文字の第一光源S1と空中像Iが観察されることを確認した。
【0139】
また、再帰反射構造3Aを備える再帰反射シートに替えて、再帰反射構造3Bを備えるビーズタイプの再帰反射シート(製品名:超高輝度反射シート7610、製造元:株式会社スリーエム)を用いて表示装置1G´を構成した。
構築した表示装置1G´において、第四ディスプレイD4で例えば「A」の文字を表示すると、
図31に示すように、「A」の文字の第一光源S1と空中像Iが観察されることを確認した。
【0140】
(実施例4)
実施例3の表示装置1Gにおいて、第一光分岐部4が第四ディスプレイD4(即ち、第一光源S1及び第一再帰反射部2C)の面に対し、略45°をなして傾斜するように配置することで、
図11に示す表示装置1Hを構成した。
構築した表示装置1Hにおいて、第四ディスプレイD4で例えば「T」の文字を表示すると、
図32に示すように、「T」の文字の第一光源S1と空中像Iが観察されることを確認した。
【0141】
(実施例5)
実施例4の表示装置1Hにおいて、第一再帰反射部2Cを第一出射軸J1上の第一光源S1を基準として第一光L1の出射方向E1の位置P2に移動させ、第一出射軸J1上の第一光源S1と第一再帰反射部2Cとの間に偏光板40を配置することで、
図11に示す表示装置1Hを構成した。偏光板40には、偏光フィルム(製品名:偏光フィルムHN42、製造元:ポラロイド社)を用いた。
構築した表示装置1Hにおいて、第四ディスプレイD4で例えば「T」の文字を表示すると、
図33に示すように、第一光分岐部4及び偏光板40によって「T」の文字の第一光源S1(即ち、直接透過光)が遮断されるため、「T」の文字の空中像Iのみが観察されることを確認した。
【0142】
(実施例6)
図15に示す表示装置1Pを構成するために、第一光源S1には、実施例1と同様に可視光を発するLEDを使用した。このLEDが幅方向に互いに間隔をあけて三つ配置され、長さ方向に所定の間隔をあけて複数配列されてなるLEDテープを使用した。第一再帰反射部2Cには、再帰反射構造3Aを備えるコーナーキューブタイプの再帰反射シート(製品名:ニッカライトクリスタルグレード,製造元:日本カーバイド工業株式会社)を用いた。第一光分岐部4には、反射型偏光フィルム(製品名:SHM-2、製造元:エスエヌパートナーズ株式会社)を透明アクリル板に貼りつけたものを用いた。
構築した表示装置1Pにおいて、
図34に示すように、LEDテープに配列されたLEDに対応する複数のスポット光からなる空中像I及び虚像が観察されることを確認した。
【0143】
さらに、
図16に示すように第一光源S1及び第二光源S2を備えた表示装置1Qを構成するために、両面にLEDが配列されたLEDテープを使用した。このような両面式のLEDテープは、
図16に示す第一光源S1及び第二光源S2がテープ基材の厚み寸法の分だけ互いに離間して配置されているものに相当する。このようにテープの両面に光源を配置することで、
図35に示すように、LEDテープの両側から空中像I及び虚像が観察されることを確認した。
【0144】
(比較例1,実施例7)
図20から
図23に示す表示装置1Tを構成するために、第一光源S1として可視光を発するLEDを複数備えた特殊カラーディスプレイ(第一液晶ディスプレイ51及び第二ディスプレイ52)を用意した。具体的には、バックライト55、第一液晶ディスプレイ51及び第二ディスプレイ52として、高精細高輝度LEDパネル(ピッチ4mm、表面実装パッケージタイプ、製品名:P4-LED panel、販売元:WAN Color)、およびポリシリコンTFT液晶パネル(製品名:LTM10C348S,製造元:株式会社東芝)を分解したものを使用した。第一再帰反射部2Aには、単位構造10の大きさが約180μmであり、透明プラスチックから構成された再帰反射シート(製品名:ニッカライトクリスタルグレード、製造元:日本カーバイド工業株式会社)を用いた。第一光分岐部4には、市販のハーフミラー(反射率・透過率ともに約50%)又は反射型偏光フィルム(製品名:SHM-2、製造元:エスエヌパートナーズ株式会社)を透明アクリル板に貼りつけたものを使用した。第一偏光板40A及び第二偏光板40Bには、前述のポリシリコンTFT液晶パネルを分解して取り出した偏光板又は単体で市販されている偏光板(製品名:HN42、製造元:ポラロイド社)を使用した。第一波長板21及び第二波長板22には、市販のλ/4板を使用した。
【0145】
上述の各構成要素を用いて
図19に示す表示装置CT及び
図20から
図23に示すに示す表示装置1Tをそれぞれ構築し、特殊カラーディスプレイに表示された
図36に示すカラー像から形成されたそれぞれの空中像Iを撮像カメラ(製品名:D5500,製造元:株式会社ニコン)にレンズ(製品名: F-S DX NIKKOR 18-140mm f/3.5-5.6G ED VR,製造元:株式会社ニコン)を備えたもの)を用いて撮像した。撮像カメラのF値は4.8とし、撮像時のシャッタースピードは1/10(ISO:400)とした。
なお、
図36および
図41については、何れもグレースケール画像で示している。
【0146】
比較例として構築した表示装置CTでは、第一光分岐部4としてハーフミラーを用いて、
図37に示すように、特殊カラーディスプレイの像に対応する空中像Iが撮像された。
【0147】
実施例として構築した表示装置1T(1)では、第一光分岐部4としてハーフミラーではなく、反射型偏光板を用い、前述のような配置構成とすることで、
図38に示すように、
図37に示す空中像Iよりも明るい空中像Iが撮像された。
【0148】
また、構築した表示装置1T(2)では、第一偏光板40Aとして反射型偏光フィルム(製品名:SHM-2、製造元:エスエヌパートナーズ株式会社)を透明アクリル板に貼りつけたもの)を代用し、かつ、第二偏光板40Bを用いないことで、第一光L1の損失を抑え、
図39に示すように、
図38よりも鮮明な空中像Iが撮像された。
【0149】
また、構築した表示装置1T(3)では、
図40に示すように、
図38に示した表示装置1T(1)と同程度の明るさの空中像Iが撮像された。
さらに、構築した表示装置1T(4)では、第一偏光板40Aとして上述の反射型偏光フィルムを用い、かつ、第二偏光板40Bを用いず、第一波長板21及び第二波長板22を用いることで、
図41に示すように、
図40に示した表示装置1T(3)の空中像Iよりは明るいが、ややコントラストが低い空中像Iが撮像された。
【0150】
(実施例8)
実施例7で構築した表示装置1T(2)において、第一液晶パネル51に単色で構成された「F」の文字の画像を表示し、第二液晶パネル52に単色で構成された「B」の文字の画像を表示した際の空中像Iを撮影した。撮像カメラのF値は3.5に変更し、撮像時のシャッタースピードは1/10(ISO:400)のままとした。
【0151】
空中像Iに対して正対する向きに対して左方向、正面方向、右方向から撮影した結果、
図42、
図43、
図44に示すそれぞれの空中像Iが形成されることを確認した。正面方向から撮影された空中像Iが最も明るく鮮明であるが、左方向及び右方向から撮影した場合でも、「F」及び「B」の文字が明らかに読み取れる空中像Iが得られることを確認した。左右からは二層の間隔に対応した視差が観察され、奥行きのある空中像Iが形成されていることを確認した。
【0152】
上述の構成において、「F」及び「B」の文字に替えて、空中像Iに対して正対する向きに対して左右方向に濃度が連続的に変化する帯状の単色ドットパターン(図面)を表示させ、形成された空中像Iを撮影した。
図45、
図46、
図47に示すそれぞれの空中像Iが形成されることを確認した。また、単色ドットパターンが斜め方向に奥行きをもつように観察された。
【0153】
(実施例9)
実施例7で構築した表示装置1T(4)において、
図48に示すように、第一出射軸J1上の第一液晶パネル51と第二液晶パネル52との間に、波長板53を配置できるようにし、色調補正試験を行った。波長板53は、所謂λ/2板であり、入射する光の電界振動方向にπの位相差を与えるものである。
【0154】
図49に、波長板53を配置する前、すなわち表示装置1T(4)における空中像Iを撮影したものを示す。これに対し、
図50に、波長板53を第一出射軸J1上の第一液晶パネル51と第二液晶パネル52との間に配置し、波長板53の光学軸がバックライト55の幅方向に対して45度をなす方向に沿うように波長板53が配置した際の空中像Iを撮影したものを示す。
図50からわかるように、波長板53を配置した場合には、波長分散による着色現象が解消され、波長板53を配置する前の場合に赤色の空中像Iが形成されていた部分の色が消えている。即ち、
図49および
図50は何れもグレースケール画像で示しているが、
図49に示す「着色した部分」よりも
図50に示す「着色されていた部分」の方が暗くなっていることで、前述の着色現象の解消を確認することができる。
【0155】
以上説明した実施例からもわかるように、本発明を適用した表示装置によれば、空中像Iをより広い角度から観察可能であり、各種構成での作用効果が得られることがわかる。
【符号の説明】
【0156】
1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1K,1M,1N,1P,1P´,1Q,1R,1T(1),1T(2),1T(3),1T(4),1V,1W…表示装置
2…第一再帰反射部
4…第一光分岐部
5…第二光分岐部
6,7…第二再帰反射部
21…第一波長板
22…第二波長板
23…第三波長板
24…第四波長板
50A…第一反射板
50B…第二反射板
E1,E2…出射方向
L1…第一光
L2…第一反射光
L21…第二光
S1…第一光源
S2…第二光源